説明

導通劣化試験装置及び導通劣化試験方法

【課題】導電材料の材質の変化に起因する導電劣化を検査できるようにする。
【解決手段】導通劣化試験装置は、供試体Wを収容可能な試験室30と、試験室30に収容された供試体Wの導通部に給電可能な給電部18と、供試体Wの導通部における電気的特性を測定可能な電気特性測定部20と、供試体Wから放射される赤外線エネルギを検知可能な赤外線検知部16aと、温度及び湿度が調整された試験室30に収容されるとともに給電部18によって給電されている供試体Wの少なくとも導通部の温度を赤外線検知部16aの検知に基づいて測定して出力可能な測定制御部56及び表示部22dと、試験室30内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの計時を行う計時部55と、計時部55によって計時された時間と試験室30の温度及び湿度と前記導通部の温度とを関連付けて記録する記憶部60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通劣化試験装置及び導通劣化試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクスの分野では、プリント配線基板の実装検査が行われている。例えば、実装後のはんだ接合部のショート・オープン不良や、部品欠陥不良等の検査が挙げられる。はんだ接合部または配線パターンの検査としては、例えば端子と導体パターンとの間にプローブを当てて微小抵抗値の測定を行う検査法が行われているが、この方法では、各接合部に対してプローブを当てながら検査を行うために、測定時間を要し、しかも導通の有無のみしか検査できないという問題がある。
【0003】
この問題に対し、下記特許文献1及び2の検査装置では、はんだ接合部を含む所定箇所を赤外線カメラで撮像し、得られた画像を利用して検査を行うようにしている。具体的に、特許文献1の検査装置では、はんだ接合部に熱エネルギ(レーザ光)を照射して、はんだ接合部から放射される赤外線を赤外線カメラで撮像し、この撮像された熱画像を画像処理して得られたはんだ接合部の表面の温度分布から欠陥の有無を判断するようにしている。さらに、配線パターンの長さ又ははんだ接合部の大きさに応じて、温度範囲の閾値を調整することにより、判定誤差の低減化を図っている。
【0004】
一方、特許文献2の検査装置では、プリント基板上に実装された電子部品のはんだ接合部に電流を流して発熱させて、この発熱したはんだ接合部を赤外線カメラで撮像し、得られた画像と、予め得られている良品でのデータとを比較して良否判定を行うようにしている。このとき、良品データによって予め設定されているX方向及びY方向の温度分布と比較することにより、ショート不良、接合面積不足を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2530788号公報
【特許文献2】特開平10−335900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の検査装置は、配線パターンの長さ又ははんだ接合部の大きさに応じて、温度範囲の閾値を調整するので、検査精度を向上でき、しかも、正常な温度にある領域外の領域を抽出することにより、欠陥の種類(例えば、ボイド、はんだ不足、未接合等)と大きさを判別することができる。一方、前記特許文献2の検査装置では、ショート不良、接合面積不足を判定することができる。したがって、何れの検査装置でも接合状態に起因する欠陥を判別することができる。しかしながら、電子機器のユーザから導通不良として返品されるものの中には、導電材料の材質に起因する導通劣化があり、前記の検査装置においても、このような材質の劣化に起因する導通不良を検査することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、導電材料の材質の変化に起因する導電劣化を検査できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、供試体が有する導通部の導通劣化を試験する装置であって、供試体を収容可能な試験室と、前記試験室に収容された前記供試体の前記導通部に給電可能な給電部と、前記供試体の前記導通部における電気的特性を測定可能な電気特性測定部と、前記供試体から放射される赤外線エネルギを検知可能な赤外線検知部と、温度及び湿度が調整された前記試験室に収容されるとともに前記給電部によって給電されている前記供試体の少なくとも前記導通部の温度を前記赤外線検知部の検知に基づいて測定して出力可能な温度出力部と、を備えている導通劣化試験装置である。
【0009】
本発明では、試験室内の温度及び湿度が調整され、この試験室内に収容された供試体の導通部が給電される。そして、電気特性測定部が導通部の電気的特性を測定し、赤外線検知部が、供試体の導通部等から放射される赤外線エネルギを検知し、この検知に基づいて、温度出力部が供試体の少なくとも導通部における温度を測定して出力する。このため、所定の温湿度環境下におかれた供試体の導通部について、給電されたときの温度変化及びそのときの電気的特性を知ることができる。これにより、供試体の導通部における導通劣化を把握することが可能となる。したがって、導電材料の材質に起因する導通劣化の検査が可能となる。特に、導通部が、例えば有機系材料の導電性ペーストのように、湿度に対して劣化しやすい材料からなる場合には、この試験装置は有効なものとなる。また、試験室内の温度及び湿度が所定の温湿度に調整されるので、供試体の恒温恒湿試験を行うこともできる。なお、ここで言う導通部とは、供試体の中で導電体からなる部位を意味しており、導電体からなる配線自身や、この配線同士の接合部、配線と導電性ペーストとの接合部等が該当する。
【0010】
ここで、前記温度出力部は、前記試験室内の温度及び湿度が調整された後の初期測定結果と、この初期測定から所定時間後の測定結果とを出力可能であってもよい。
【0011】
供試体が配置された環境の温度及び湿度が変化すれば導通部における導通特性も変化するが、この態様では、環境調整後の初期測定結果と、そこから所定時間後の測定結果とを出力可能なので、導通劣化の有無又は導通劣化の程度を正確に把握することができる。
【0012】
また、前記導通劣化試験装置は、前記試験室内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの計時を行う計時部と、前記計時部によって計時された時間と前記試験室の温度及び湿度と前記導通部の温度とを関連付けて記録する記憶部と、を備えていてもよい。
【0013】
この態様では、試験室内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの時間が試験室の温湿度と導通部の温度とに関連付けられて記憶部に記憶されるので、導通劣化の評価を行い易くなる。
【0014】
また、前記温度出力部は、表示部を備え、前記赤外線検知部による検知結果に応じた温度情報を前記表示部に表示可能であってもよい。
【0015】
この態様では、赤外線検知部が、供試体の導通部等から放射される赤外線エネルギを検知し、温度出力部は、この検知結果に応じた温度情報を表示部に表示する。このため、温度が分かる状態で表示部に表示された画像に基づいて、導通劣化に伴う温度変化を判別することが可能となる。換言すれば、表示部に表示された画像に基づいて、導通劣化の有無を判断することが可能となる。
【0016】
前記赤外線検知部は、赤外線カメラに設けられており、前記試験室内には、前記供試体を載置可能な載置部が設けられ、前記載置部と前記赤外線カメラとは、相対的な位置関係を変更可能であってもよい。
【0017】
この態様では、載置部に載置された供試体のうち、赤外線カメラによって撮影される部位を変更することが可能となる。このため、供試体をズームで撮影しつつ、所望の部位を表示部に表示させることが可能となる。したがって、温度分布画像から温度変化の顕著な部位を正確に特定することができるようになる。
【0018】
また、前記導通劣化試験装置は、前記温度出力部による出力結果に基づいて、前記供試体の前記導通部における導通劣化を判定する劣化判定部を備えていてもよい。
【0019】
この態様では、劣化判定部によって導通劣化が判定されるので、判定精度を安定させることができる。
【0020】
また、前記導通劣化試験装置は、前記電気特性測定部による測定結果に応じて前記温度出力部による温度出力を行うか否かを判定する予備判定部を備えていてもよい。
【0021】
この態様では、電気的特性によって温度出力部による温度出力を行うか否かを判定するので、導通劣化の可能性のない導通部について温度測定をすることを抑止することができる。このため、試験に要する時間・手間を削減することができる。
【0022】
また、前記導通劣化試験装置は、前記試験室内の温度及び湿度を調整可能な環境調整部を備え、前記環境調整部は、加熱器と調湿器と温湿度制御部とを備え、前記調湿器は、温度調整水が入れられた平皿容器をペルチエ素子で加熱することにより加湿し、冷却することにより除湿するようにしてもよい。
【0023】
この態様では、温湿度制御部によってペルチエ素子に印加される電流を制御することにより、平皿容器内の温度調整水の蒸発量を調整し、これにより試験室内の湿度を調節することができる。すなわち、加湿と除湿を1つの手段で構成することができる。また、温湿度制御部によって加熱器及び調湿器を制御することにより、試験室内の温度を調節することができる。
【0024】
また、前記導通劣化試験装置は、前記試験室内の温度及び湿度を調整可能な環境調整部を備え、前記環境調整部は、前記試験室の温度及び湿度をそれぞれ上げる時には、まず温度を上げ、その後湿度を上げる一方、温度及び湿度をそれぞれ下げる時には、まず湿度を下げ、その後温度を下げるようにしてもよい。
【0025】
この態様では、湿度を上げる前に温度を上げる一方で、除湿してから温度を下げるようにしているので、供試体に結露が発生することを抑制することができる。このため、試験の再現性が阻害されることを防止することができる。
【0026】
本発明は、供試体が有する導通部の導通劣化を試験する方法であって、試験室内に供試体を収容する収容工程と、試験室内の温度及び湿度を調整する環境調整工程と、前記導通部に給電したときの電気的特性を測定する電気特性測定工程と、温度及び湿度が調整された前記試験室内の前記供試体の前記導通部に給電したときの、少なくとも前記導通部における温度を、供試体から放射される赤外線エネルギの検知に基づいて測定して出力する出力工程と、が含まれている導通劣化試験方法である。
【0027】
前記導通劣化試験方法において、前記環境調整工程による試験室内の温度及び調整が行われた後、初期測定が行われる初期測定工程が含まれ、前記出力工程は、前記初期測定工程の後に行われるようにしてもよい。
【0028】
また前記導通劣化試験方法において、前記出力工程では、前記電気特性測定工程での測定結果に応じて当該導通部での温度の出力を行うか否かを判定するようにしてもよい。
【0029】
この試験方法では、導通部の電気的特性の測定結果に応じて導通部の温度の測定を行うことができる。したがって、導通劣化の可能性がある場合にのみ導通部の温度の出力を行うことができるので、無駄な測定を回避でき、試験の効率を向上することができる。
【0030】
前記導通劣化試験方法の前記環境調整工程において、前記試験室の温度及び湿度をそれぞれ上げる時には、まず温度を上げ、その後湿度を上げる一方、温度及び湿度をそれぞれ下げる時には、まず湿度を下げ、その後温度を下げるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、導電材料の材質の変化に起因する導電劣化を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る導通劣化試験装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】テストサンプルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る導通劣化試験方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】(a)〜(c)前記導通劣化試験方法を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る導通劣化試験装置10は、導通部W1(図2参照)を有する供試体Wの導通劣化を検査可能な試験装置である。この供試体Wとしては、例えばプリント基板、フレキシブル基板、ICカード、太陽電池パネル、表示器等のように配線パターンやはんだ接合部、導電性部材同士の接合部を有するものが挙げられる。そして、この供試体Wには、通電可能な導通部W1が導電性ペーストのような有機系材料で構成されるものもある。
【0035】
導通劣化試験装置10は、試験槽12と、環境調整部14と、赤外線カメラ16と、給電部18と、電気特性測定部20と、コントローラ22とを備えている。試験槽12は、上面が開放された槽本体26と、この槽本体26の上面開口を塞ぐように槽本体26に着脱可能な蓋体27とを有し、内側が空洞となっている。試験槽12内には、槽内空間を上下に分割する仕切り部材28が配設されている。仕切り部材28は、槽本体26の側壁部に架け渡されるように槽本体26に固定されている。試験槽12は、仕切り部材28の上側に位置する試験室30と、仕切り部材28の下側に位置する空調室31とを備えている。試験室30は、供試体Wを収納可能な試験空間を形成し、空調室31は、槽内空間の温度及び湿度を調整する調整空間を形成する。試験空間と調整空間とは、仕切り部材28に形成された2つの連通孔28a,28bを通して互いに連通している。
【0036】
試験室30には、供試体Wを設置するための載置部33が設けられている。載置部33には、供試体Wを1つのみ設置可能であってもよく、複数の供試体Wを設置可能であってもよい。
【0037】
試験室30には、送風機35が設けられている。送風機35を駆動することにより、槽内空間内の空気は、試験空間と調整空間との間で循環する。なお、送風機35は、空調室31に設けるようにしてもよい。
【0038】
槽本体26には、供試体Wに接続するための配線を試験室30内に引き込む引き込み口が形成されている。槽本体26には、このほか、空調用の配管を接続するための接続口39が形成されている。接続口39には、開閉弁40が設けられている。この接続口39は、例えば、窒素ガス等の低温ガス源、冷却器、加熱ガス源、加湿源、除湿源などを接続するのに利用できる。これらを利用することにより、空調速度を上げることができる。
【0039】
蓋体27は、中央部分(上から見て載置部をカバーする範囲の部分)が下方に凹んだ形状に形成されている。この凹んだ中央部分は、赤外線を透過可能な材質(例えば赤外線透過ガラス)で構成されている。例えば赤外線カメラ16が波長8〜12μmの遠赤外線を検出可能な構成である場合には、蓋体27の中央部分は、波長1.8〜20μmの赤外線を透過可能なゲルマニウムを主成分とする材質で構成することができる。載置部33の真上に位置する蓋体27の中央部分を下方に凹ませることにより、赤外線カメラ16を載置部上の供試体Wにより近づけることが可能となっている。
【0040】
試験槽12は、テーブル42上に設置されている。テーブル42は、XYステージ付きスタンド44上に設けられるものであり、水平面内で互いに直交する二方向に移動可能に構成されている。したがって、試験槽12も水平方向に移動可能となっている。スタンド44には、XYステージの移動量を微調整可能な移動量調整部(図示省略)と、移動量を検知する移動量検知部(図示省略)とが設けられている。移動量調整部には、アクチュエータと、このアクチュエータを駆動制御するドライバ等が含まれる。移動量検知部には、変位センサ等が含まれる。
【0041】
環境調整部14には、加熱器48と、調湿器49と、これら加熱器48及び調湿器49を制御するための温湿度制御部である温湿度調節器50と、が含まれる。加熱器48は空調室31に配設されている。調湿器49は、ペルチエ素子が内蔵された加熱冷却プレート49aと、この加熱冷却プレート49a上に設けられた平皿容器である加湿皿49bとを備えている。加湿皿49bには温度調整水が入っている。そして、ペルチエ素子を制御して加熱冷却プレート49aで加湿皿49bを加熱することにより室内を加湿でき、一方、加熱冷却プレート49aで加湿皿49bを冷却することにより室内を除湿できる。加熱冷却プレート49aは、テーブル42の上面に設置されるとともに、槽本体26の底面部に形成された貫通孔の内側に配置されている。したがって、加熱冷却プレート49aおよび加湿皿49bは空調室31内に配設されている。
【0042】
温湿度調節器50は、図略の設定部を有しており、試験室30の目標温度及び目標湿度を設定可能となっている。温湿度調節器50には、試験室30内に配設された温湿度センサ52から出力された信号が入力される。温湿度調節器50は、温湿度センサ52からの信号に基づいて、加熱器48及び加熱冷却プレート49aを制御する。これにより、試験室30内は、設定された温度及び湿度に調整される。なお、温湿度調節器50を省略するとともに、温湿度制御機能をコントローラ22が有する構成としてもよい。
【0043】
赤外線カメラ16は、供試体Wに向けて下向きに配置されるとともに、図略のスタンドに上下方向に移動可能に支持されている。赤外線カメラ16には、赤外線を検知するとそれに応じて信号を出力する赤外線検知部16aが設けられている。したがって、赤外線検知部16aは、撮影された供試体Wの各部位から放射される赤外線を検知するとともに、それに応じた信号を出力する。赤外線カメラ16から出力された信号は、コントローラ22に入力される。
【0044】
給電部18は、試験室30内に設置される供試体Wに給電するためのものであり、例えば定電圧電源や定電流電源によって構成される電源部と、この電源部と供試体Wとを電気的に接続するための配線とを有する。供試体Wの導通部W1には、この給電部18から電力が供給される。
【0045】
電気特性測定部20は、給電部18から給電された導通部W1の電気的特性を測定可能なものであり、例えば抵抗計によって構成されている。電気特性測定部20は、導通部W1の電気的特性の変化をモニターするために用いられるものであり、測定結果に応じた信号を出力する。すなわち、はんだ接合部等の導通部W1において抵抗値が大きくなると、導通劣化したと判断できるので、導通部W1の電気的特性を測定する電気特性測定部20が設けられている。
【0046】
電気特性測定部20による電気的特性の測定は、所定の時間間隔で繰り返し行われる。供試体Wが電子製品等の場合のように、通電した状態で試験室30内に設置されている場合には、その通電電流の電流値及び/又は電圧値を測定すればいいが、テストサンプル等のように供試体Wが通電しない状態で設置される場合には、電気的特性の測定を行うときのみ定電流等の所定の電力を印加して電気的特性の測定を行う。なお、電気特性測定部20は、抵抗計に代え、電流計、電圧計等によって構成してもよい。
【0047】
コントローラ22は、CPU22a、ROM22b、RAM22c、表示部22d等を有し、ROMに格納されたプログラムを実行することにより所定の機能を発揮する。コントローラ22の機能には、少なくとも計時部55と測定制御部56と位置特定部57と予備判定部58と劣化判定部59と記憶部60と処理制御部61とが含まれる。表示部22dは、赤外線カメラ16による撮影画像等を表示可能となっている。
【0048】
計時部55は、試験槽12内の温度及び湿度が目標温度及び目標湿度に達した時点(初期時点)からの時間を計測する。すなわち、計時部55は、試験室30内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの計時を行う。なお、外部から入力された指令に基づいて、計時を開始するようにしてもよい(初期時点)。
【0049】
測定制御部56は、初期時点において赤外線カメラ16による供試体Wの撮影を行う(初期測定)とともに、予備判定部58によって、後述するように劣化の可能性ありと判定された場合に、赤外線カメラ16による供試体Wの撮影を行う(熱的測定)。初期時点においても供試体Wの撮影を行うのは、試験室30内の温度及び湿度が所定の温湿度になった時点での供試体Wの各導通部W1の温度を記録し、この初期測定値を基準値とするためである。
【0050】
測定制御部56は、赤外線カメラ16から出力された信号に応じて、表示部22dに熱画像を表示させる。熱画像は、検知された赤外線量に対応した温度を色情報に変換して表示した画像である。すなわち、表示部22dには、撮影された像の熱分布が色分けされて表示される。したがって、表示部22dに表示された熱画像を見れば、表示された各部位の温度が分かる。すなわち、表示部22dと測定制御部56とにより、赤外線検知部16aの検知に基づいて供試体Wの少なくとも導通部W1の温度を測定して出力可能な温度出力部が構成される。
【0051】
供試体Wの撮影は、各導通部W1の発熱を検出するために行われるものであり、供試体Wが有する所定のはんだ接合部等を順次ズームして撮影することにより行われる。なお、一度導通劣化と判定された導通部W1については、それを記憶し、その後の撮影を行わないようにしてもよい。
【0052】
位置特定部57は、表示部22dの各画素と供試体Wの各部位とを関連付ける。例えば、位置特定部57は、赤外線カメラ16によって撮影されて表示部22dに表示された供試体W上の所定の位置(一点でも複数点でもよい)と、表示部22dの画素とを対応させることにより、表示部22dの各画素が供試体Wのどの部位に対応するかを特定する。なお、位置特定部57は、XYステージ(テーブル42)の移動量や赤外線カメラ16のズーム倍率をも考慮して、表示部22dの各画素と供試体Wの各部位とを関連付けるようにしてもよい。
【0053】
予備判定部58は、電気特性測定部20によって測定された電気的特性を所定の閾値と比較することにより、劣化の有無を予備的に判定する。すなわち、供試体Wには複数の接合部等があるため、供試体Wに設けられた端子間の抵抗値を測定するだけでは、どの接合部が劣化したのか判断できない。このため、後述するように、劣化判定部59によって、接合部毎の温度を検出することにより、劣化箇所を特定することが可能となる。しかしながら、接合部毎に温度を検出するのは時間と手間がかかるため、供試体Wとしての電気的特性を測定することにより、導通劣化の有無についてのスクリーニングを行い、導通劣化した可能性があることが確認された供試体Wについてのみ接合部毎の温度を検出するようにしている。これにより、試験の手間を軽減しながら各接合部の導通劣化を検出することができる。
【0054】
電気的特性に対して設定された予備判定部58による判定の基準となる閾値は、予め設定された絶対値、初期時点における電気的特性値に対する変化率、あるいは初期時点における電気的特性値からの増加幅・減少幅等で表すことができる。
【0055】
劣化判定部59は、予備判定部58によって導通劣化の可能性があると判定された供試体Wを対象とし、測定制御部56によって測定された値が初期測定値に対してどの程度変化したか(温度変化率)を算出し、この算出された温度変化率が所定の値(閾値)以上であるか否かを判定することにより、導通劣化を判定する。すなわち、各画素に対して閾値に相当する画素の色の変化率が設定されており、劣化判定部59は、温度変化率の閾値に相当する色の変化率の有無を判定するとともに、閾値以上となっている領域を特定する。なお、劣化判定部59は、温度変化率に代え、予め設定された絶対値、初期測定値に対する変化率、あるいは初期測定値からの増加幅・減少幅等を算出し、これらに基づいて導通劣化の有無を判定するようにしてもよい。
【0056】
記憶部60は、計時部55によって計測された時間と、温湿度センサ52によって計測された温度及び湿度(又は設定された目標温度及び目標湿度)と、各導通部W1(又は表示部22dの各画素)の温度とを関連付けて記憶する。すなわち、記憶部60には、導通劣化と判定された導通部W1に対して、劣化と判定されたときの測定時の時間及びそのときの温湿度が関連付けて記憶される。導通部W1の温度は、表示部22dの各画素の色情報から割り出される温度情報又は赤外線カメラ16から出力された信号に基づいて算出される温度情報から導出される。
【0057】
処理制御部61は、各部位に対して得られた温度情報について統計的な情報処理を行う。例えば、各部位について温度と時間との相関図を作成して表示部22dに表示したり、温度情報を時系列でヒストグラム化して表示部22dに表示したり、供試体Wの中での温度分布を示すマッピング画像を表示するマッピング処理を行うことができる。
【0058】
以上のように構成された導通劣化試験装置10を用いた導通劣化試験方法について説明する。
【0059】
なお、ここでは、図2に例示するテストサンプル71を供試体Wとした場合の導通劣化試験を例に挙げて説明する。このテストサンプル71には、基板72上に形成された複数の配線パターン73,73を導電性接着剤74で結合した導通部W1が設けられている。各配線パターン73及び導電性接着剤(導電性ペースト)74は何れも導電性部材からなり、このテストサンプル71では、配線パターン73と導電性接着剤74との接合部75における導通劣化試験を行うことができる。このテストサンプル71の電気的特性の測定は、例えば、何れか2つの配線パターン73,73間に所定電圧を印加してそのときの電流値を測定してもよく、あるいは何れか2つの配線パターン73,73間に所定の定電流を印加してそのときの電圧を測定するようにしてもよい。
【0060】
また、テストサンプル71には、基板72上の既知位置を特定するためのパターン76が設けられており、このパターン76を利用して、画面において劣化と判定された位置(画素)からテストサンプル71の故障位置を検出することができる。このとき赤外線カメラ16によるズーム倍率やXYステージの移動量を加味して故障位置を特定するようにしてもよい。
【0061】
図3に示すように、導通劣化試験では、テストサンプル71を試験室30内の載置部33にセットした後、まず試験条件等の条件や設定値を入力する(ステップST1)。例えば、試験温度、試験湿度、試験時間、測定のインターバル等が入力される。なお、予備判定部58及び劣化判定部59で用いられる閾値は、このステップST1で入力するようにしてもよく、あるいは既定値としてコントローラ22に予め記憶されていてもよい。
【0062】
続いて、予備測定を行う(ステップST2)。この予備測定は、図4(a)〜(c)にも示すように、試験室30内の空調を開始する前に供試体Wとしてのテストサンプル71の電気的特性を測定するものである(時間t1)。この予備測定では、テストサンプル71の配線パターン73,73間の抵抗値等の測定を行う。予備測定を行うことにより、給電部18の配線がテストサンプル71にきっちり接続されているかどうかを確認することができる。そして、電気的特性が異常な値であれば試験者に接続関係を見直すきっかけを与えることができる。なお、予備測定において正常な値が出ないようであれば、テストサンプル71自体に問題があるので、そのような場合には、他のテストサンプル71に交換して試験を行う。
【0063】
また、予備測定において、赤外線カメラ16による供試体Wの撮影を行い、各接合部75の温度測定を行うようにしてもよい。図4(c)は、予備測定において温度測定を行う場合のチャートを示している。なお、図4(c)は、温度測定をするときのみ給電部18による電流印加することを示しているが、これは、テストサンプル71では、電子部品等のように動作電流を与えながら恒温恒湿試験を行うわけではないからである。供試体Wが電子部品等の場合には、供試体Wに常時、電流を印加しながら導通劣化試験を行うようにしてもよい。
【0064】
なお、予備測定に先立ち或いは予備測定に際し、テストサンプル71を表示部22dに表示させた上で、画面上におけるテストサンプル71中のパターン76の位置を記憶するとともに、そのときのテーブル位置を原点位置としてコントローラ22に記憶する。
【0065】
電気的特性がおよそ正常な値であることが確認されたら、試験室30内の温度及び湿度の調整を開始する(ステップST3、時間t2)。このステップST3では、設定された試験温度及び試験湿度になるように、加熱器48及び加熱冷却プレート49aを制御する。
【0066】
図4(a)は、高温高湿条件に加熱及び加湿する場合を例示している。このように加熱及び加湿する場合には、まず温度を上げ、温度が試験温度に達してから加湿するのが好ましい(時間t3)。そして、試験室30内の温度及び湿度が設定された試験温度及び試験湿度に達すると、初期測定を行う(ステップST4、時間t4)。この初期測定では、赤外線カメラ16による撮影を行い、テストサンプル71の各接合部75の温度測定を行う。この初期測定値は、記憶部60によって記憶される。
【0067】
試験室30内は、初期測定が行われた温湿度に維持され、恒温恒湿試験が開始される(ステップST5、時間t4)。恒温恒湿試験の最中に所定の時間ごとにテストサンプル71の電気的特性の測定を繰り返し行う(ステップST6、時間t5〜t7)。そして、電気的特性を測定した結果、予備判定部58によって導通劣化の可能性があると判定されると、テストサンプル71に定電流を印加した状態で赤外線カメラ16によって各接合部75を撮影して熱的測定を行う(ステップST7)。この熱的測定では、赤外線カメラ16の赤外線検知部16aで測定した素子ごとの赤外線エネルギから、撮影された各部位の温度情報を算出する。このときテーブル42を適宜駆動しながら各接合部75を表示部22dに表示させ、撮影された各部位と各接合部75とが位置特定部57によって対応付けられることにより、各接合部75の温度情報が取得される。そして、この各接合部75についての温度情報を時間及び試験室30内の温湿度と関連付けて記憶する。このとき、熱画像として表された接合部75と実際のテストサンプル71の接合部75とが位置特定部57によって対応付けられて記憶部60に記憶される。
【0068】
電気的特性の測定は所定の時間間隔で繰り返し行われるため、導通劣化の可能性ありと判定された場合には、熱的測定が繰り返し行われる。そして、各熱的測定において、各接合部75に対して導通劣化の有無が判定される(ステップST8)。ただし、各接合部75のうち、導通劣化と判定された接合部75については、以降の撮影をスキップする。そして、設定された試験時間が経過するまで、各接合部75に対し、導通劣化と判定されるまで繰り返し熱的測定が行われる。なお、全ての接合部75が導通劣化と判定された場合には、その時点で試験を終了するようにしてもよい。
【0069】
設定された試験時間が経過すると(時間t8)、試験室30内の湿度を下げ、所定の湿度まで下がると、試験室30内の温度を下げる(恒温恒湿試験の終了)。このとき、加熱冷却プレート49aのペルチエ素子への印加を切り換えることにより、空調室31内の冷却を行うことができる。そして、試験室30内が所定の温湿度に戻ると、その時点で再度熱的測定を行うようにしてもよい(時間t9)。そして、測定結果について、ヒストグラム化して表示部22dに表示したり、マッピング画像を表示部22dに表示したりする処理を行うことができ、この試験結果を記憶する(ステップST9)。その後、試験を終了する。
【0070】
なお、1つの供試体Wについて導通劣化試験を行うものに限られず、複数の供試体Wについて同時に平行して導通劣化試験を行うようにしてもよい。また、所定の設定時間で導通劣化が生じなければ、試験時間を延長することが可能であり、また試験条件を変更することで劣化を促進させるようにしてもよい。また、供試体Wは、擬似黒体化しておいてもよい。これにより、供試体Wの赤外線反射や透過による測定誤差の要因を低減することができる。なお、擬似黒体化とは、つや消し黒色塗料などを薄く均一に塗布するか、表面に放射率の高い薄膜物質(例えば黒色テープ)を貼り付けることによって放射率を一様に高めることをいう。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の導通劣化試験装置10では、試験室30内の温度及び湿度が調整され、この試験室30内に収容された供試体Wの導通部W1が給電される。そして、温度出力部が供試体Wの少なくとも導通部W1における温度を出力する。このため、所定の温湿度環境下におかれた供試体Wの導通部W1について、給電されたときの温度変化を知ることができる。これにより、供試体Wの導通部W1における導通劣化を把握することが可能となる。したがって、導電材料の材質に起因する導通劣化の検査が可能となる。特に、導通部W1が、例えば有機系材料の導電性ペーストのように、湿度に対して劣化しやすい材料からなる場合には、この試験装置10は有効なものとなる。また、試験室30内の温度及び湿度が所定の温湿度に調整されるので、供試体Wの恒温恒湿試験を行うこともできる。
【0072】
供試体Wが配置された環境の温度及び湿度が変化すれば導通部W1における導通特性も変化するが、本実施形態では、温湿度が調整された直後の初期測定結果と、そこから所定時間後の測定結果とを出力可能なので、導通劣化の有無又は導通劣化の程度を正確に把握することができる。
【0073】
また本実施形態では、試験室30内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの時間が試験室30の温湿度と導通部W1の温度とに関連付けられて記憶部60に記憶されるので、導通劣化の評価を行い易くなる。
【0074】
また本実施形態では、赤外線検知部16aが、供試体Wの導通部W1等から放射される赤外線エネルギを検知し、温度出力部は、この検知結果に応じた温度情報を表示部22dに表示する。このため、温度が分かる状態で表示部22dに表示された画像に基づいて、導通劣化に伴う温度変化を判別することが可能となる。換言すれば、表示部22dに表示された画像に基づいて、導通劣化の有無を判断することが可能となる。
【0075】
また本実施形態では、テーブル42がXY方向に移動可能に構成されているので、赤外線カメラ16に対して供試体Wを移動させることができる。したがって、供試体Wのうち、赤外線カメラ16によって撮影される部位を変更することが可能となる。このため、供試体Wをズームで撮影しつつ、所望の部位を表示部22dに表示させることが可能となる。したがって、温度分布画像から温度変化の顕著な部位を正確に特定することができるようになる。
【0076】
また本実施形態では、劣化判定部59によって導通劣化が判定されるようにしているので、判定精度を安定させることができる。
【0077】
また本実施形態では、熱的測定を行う前に電気的特性によって温度出力部による温度出力を行うか否かを予備判定部58によって判定するので、導通劣化の可能性のない導通部W1について熱的測定をすることを抑止することができる。このため、試験に要する時間・手間を削減することができる。
【0078】
また本実施形態では、加熱冷却プレート49aのペルチエ素子に印加される電流を温湿度調節器50によって制御することにより、試験室30内の湿度を調節することができる。すなわち、加湿と冷却を1つの手段で構成することができる。また、温湿度調節器50によって加熱器48及び調湿器49を制御することにより、試験室30内の温度を調節することができる。
【0079】
また本実施形態では、試験室30内を高温高湿にするときに湿度を上げる前に温度を上げる一方で、低温低湿にするときには除湿してから温度を下げるようにしているので、供試体Wに結露が発生することを抑制することができる。このため、試験の再現性が阻害されることを防止することができる。
【0080】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0081】
本実施形態では、試験槽12が水平方向に移動することにより、供試体Wと赤外線カメラ16との相対位置関係が変更される構成としたが、これに限られるものではない。例えば、試験槽12を固定する一方、赤外線カメラ16を固定するスタンド又は赤外線カメラ16自体が水平方向(直交2軸方向)に移動する構成としてもよい。
【0082】
また本実施形態では、赤外線カメラ16を下向きに設置したが、これに限られるものではなく、供試体Wを横向きに設置するとともに赤外線カメラ16を横向きに設置し、供試体Wの側方から撮影を行う構成としてもよい。この場合は、試験槽12内の試験空間と調整空間とが上下に区画されるのではなく、側方に並ぶように配置されるように仕切り部材28が設けられる構成としてもよい。
【0083】
また本実施形態では、供試体Wから放射される赤外線エネルギを検知する赤外線検知部16aが赤外線カメラ16に設けられる構成について説明したが、この構成に限られるものではない。
【0084】
また本実施形態では、試験槽12内を試験空間と調整空間とに区画する仕切り部材28が設けられる構成としたが、これに限られない。例えば仕切り部材28を省略した構成としてもよい。この構成では、試験槽12内の空間が試験空間となる。この場合、試験槽12内の空間に加熱器48及び調湿器49を配置してもよく、あるいは温度及び湿度が調整された空気が試験槽12外から導入される構成としてもよい。この構成では環境調整部14を有しない構成となる。
【0085】
また本実施形態では、ペルチエ素子が設けられた加熱冷却プレート49aを有する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、加熱冷却プレート49aに電熱式ヒータが内蔵された構成としてもよく、超音波式の加湿器が設けられる構成としてもよい。また、ヒートパイプ、ヒートシンク等の熱搬送手段を除湿器として用いてもよい。また、空調室31に冷凍機を配設するようにしてもよい。
【0086】
また本実施形態では、熱的測定の前に電気的特性の測定を行うようにしたが、熱的測定と同時に電気的特性の測定を行うことも可能である。例えば、はんだ接合部の数が限られる供試体W等については、電気的特性によるスクリーニングを事前に行うことなく、導通部W1の温度を測定するようにしてもよい。この場合、導通劣化と判定される導通部W1のみについて画像情報を記憶するようにしてもよい。
【0087】
また、劣化判定部59を省略してもよい。この場合、試験者が熱画像又は温度測定値に基づいて導通劣化の判定を行うことになる。
【0088】
また、位置特定部57を省略してもよい。この場合、試験者が画像から導通部W1を特定することになる。
【0089】
本実施形態では、試験室30内に供試体Wをセットし、その後、試験槽12内の温度及び湿度を調整するようにしたが、これに代え、温度及び湿度が調整された試験室30内に供試体Wを入れるようにしてもよい。つまり、環境調整工程を行った後に、収容工程が行われるようにしてもよい。この場合、試験室30外で予備測定を行い、この予備測定を行った供試体Wを試験室30内に導入するようにしてもよい。
【0090】
また本実施形態では、高温高湿条件に加熱及び加湿する際には、まず温度を上げ、温度が試験温度に達してから加湿するようにしたが、これに限られるものではない。つまり、供試体Wの温度が室内空気の露点よりも低くなって結露することを防止することが目的なので、この目的が達成される範囲で温湿度を調整してゆけばよい。したがって、室内の温度が試験温度(目標温度)に達していなくても、加湿を開始することは可能である。また、低温低湿条件にする場合においても、まず湿度を下げることになるが、試験室30内が完全に除湿される前に温度の低下を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
14 環境調整部
16 赤外線カメラ
16a 赤外線検知部
18 給電部
20 電気特性測定部
22d 表示部(温度出力部)
30 試験室
33 載置部
48 加熱器
49 調湿器
50 温湿度調節器(温湿度制御部)
52 温湿度センサ
55 計時部
56 測定制御部(温度出力部)
57 位置特定部
58 予備判定部
59 劣化判定部
60 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が有する導通部の導通劣化を試験する装置であって、
供試体を収容可能な試験室と、
前記試験室に収容された前記供試体の前記導通部に給電可能な給電部と、
前記供試体の前記導通部における電気的特性を測定可能な電気特性測定部と、
前記供試体から放射される赤外線エネルギを検知可能な赤外線検知部と、
温度及び湿度が調整された前記試験室に収容されるとともに前記給電部によって給電されている前記供試体の少なくとも前記導通部の温度を前記赤外線検知部の検知に基づいて測定して出力可能な温度出力部と、を備えている導通劣化試験装置。
【請求項2】
前記温度出力部は、前記試験室内の温度及び湿度が調整された後の初期測定結果と、この初期測定から所定時間後の測定結果とを出力可能である請求項1に記載の導通劣化試験装置。
【請求項3】
前記試験室内の温度及び湿度の調整開始後の所定時間からの計時を行う計時部と、
前記計時部によって計時された時間と前記試験室の温度及び湿度と前記導通部の温度とを関連付けて記録する記憶部と、を備えている請求項1又は2に記載の導通劣化試験装置。
【請求項4】
前記温度出力部は、表示部を備え、前記赤外線検知部による検知結果に応じた温度情報を前記表示部に表示可能である請求項1から3の何れか1項に記載の導通劣化試験装置。
【請求項5】
前記赤外線検知部は、赤外線カメラに設けられており、
前記試験室内には、前記供試体を載置可能な載置部が設けられ、
前記載置部と前記赤外線カメラとは、相対的な位置関係を変更可能である請求項4に記載の導通劣化試験装置。
【請求項6】
前記温度出力部による出力結果に基づいて、前記供試体の前記導通部における導通劣化を判定する劣化判定部を備えている請求項1から5の何れか1項に記載の導通劣化試験装置。
【請求項7】
前記電気特性測定部による測定結果に応じて前記温度出力部による温度出力を行うか否かを判定する予備判定部を備えている請求項1から6の何れか1項に記載の導通劣化試験装置。
【請求項8】
前記試験室内の温度及び湿度を調整可能な環境調整部を備え、
前記環境調整部は、加熱器と調湿器と温湿度制御部とを備え、
前記調湿器は、温度調整水が入れられた平皿容器をペルチエ素子で加熱することにより加湿し、冷却することにより除湿する請求項1から7の何れか1項に記載の導通劣化試験装置。
【請求項9】
前記試験室内の温度及び湿度を調整可能な環境調整部を備え、
前記環境調整部は、前記試験室の温度及び湿度をそれぞれ上げる時には、まず温度を上げ、その後湿度を上げる一方、温度及び湿度をそれぞれ下げる時には、まず湿度を下げ、その後温度を下げる請求項1から7の何れか1項に記載の導通劣化試験装置。
【請求項10】
供試体が有する導通部の導通劣化を試験する方法であって、
試験室内に供試体を収容する収容工程と、
試験室内の温度及び湿度を調整する環境調整工程と、
前記導通部に給電したときの電気的特性を測定する電気特性測定工程と、
温度及び湿度が調整された前記試験室内の前記供試体の前記導通部に給電したときの、少なくとも前記導通部における温度を、供試体から放射される赤外線エネルギの検知に基づいて測定して出力する出力工程と、が含まれている導通劣化試験方法。
【請求項11】
前記環境調整工程による試験室内の温度及び調整が行われた後、初期測定が行われる初期測定工程が含まれ、
前記出力工程は、前記初期測定工程の後に行われる請求項10に記載の導通劣化試験方法。
【請求項12】
前記出力工程では、前記電気特性測定工程での測定結果に応じて当該導通部での温度の出力を行うか否かを判定する請求項10又は11に記載の導通劣化試験方法。
【請求項13】
前記環境調整工程において、前記試験室の温度及び湿度をそれぞれ上げる時には、まず温度を上げ、その後湿度を上げる一方、温度及び湿度をそれぞれ下げる時には、まず湿度を下げ、その後温度を下げる請求項10から12の何れか1項に記載の導通劣化試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−2372(P2011−2372A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146594(P2009−146594)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】