説明

導通検査装置

【課題】ガス導管の切断する部分の両側に接続するボンド線がガス導管に接続されたことを確実に検出し、ガス導管を切断するとき、防食電流や迷走電流によるスパークが発生することを防止する。
【解決手段】外部ボンド線17a,17bと電源ケーブル18a,18bの端部に取り付けた接続アダプタ19の絶縁部材22を介して設けたマグネットホルダ20と接続部材21をガス導管の切断する部分2cの両側のガス導管2a,2bに密着させ、マグネットホルダ20と接続部材22をガス導管2a,2bで導通させてリレー9a,9bのコイルX1,X2を励磁させ、外部ボンド線17a,17bと内部ボンド線10でガス導管の切断する部分2cの両側のガス導管2a,2bを短絡していることを確認して、切断作業の安全性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管からなるガス導管を切断するとき、切断個所の両側を接続する短絡線の接続確認を行う導通検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管からなるガス導管の一部を取り替えたり、不要になった分岐管を撤去するためガス導管の一部を切断するとき、切断するガス導管の元栓を閉じてガスの供給を一時中止したり、遮断装置やガスバック等で切断する部分のガスを遮断しても、切断する部分に微量のガスが滞留する危険性がある。電気防食を行っているガス導管や迷走電流の影響があるガス導管を切断するとき、切断する部分にガスが滞留していると、切断時の防食電流や迷走電流によるスパークにより滞留しているガスが引火する危険性がある。
【0003】
この危険性を未然に防ぐため、非特許文献1に示すように、防食電流が流れているガス導管や迷走電流の影響があるガス導管を切断する場合、図4に示すように、ガス導管2の切断する部分2cの両側のガス導管2a,2bに短絡線(以下、ボンド線という)24を接続し、防食電流や迷走電流を流すようにしている。このガス導管2a,2bにボンド線24を接続する場合、接続する鋼面を研磨して、ボンド線24の両端に設けた磁力がオン・オフできるマグネットホルダ20によりボンド線24をガス導管2a,2bに接続している。
【非特許文献1】供給管・内管指針(工事編) 社団法人日本ガス協会 平成11年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようにボンド線24をガス導管2a,2bに接続するためにマグネットホルダ20を接続する鋼面に吸着させる場合、接続する鋼面の表面に絶縁物の薄膜が存在していてもマグネットホルダ20は鋼面に吸着してしまう。このような場合、ガス導管1に流れている防食電流や迷走電流をボンド線3に流すことはできず、ガス導管1を切断するときのスパークによりガス導管1内に滞留しているガスが引火するおそれがある。
【0005】
この発明は、このような問題を確実に解消するために、ガス導管の切断する部分の両側に接続するボンド線がガス導管に接続されたことを確実に検出し、ガス導管を切断するとき、防食電流や迷走電流によるスパークが発生することを防止する導通検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の導通検査装置は、導通検出回路及び警報回路を有する導通検出器と2対の接続ケーブルを有し、前記導通検出回路は、電源としての電池と電源スイッチと2つのリレー及び両端が外部端子に接続された内部ボンド線を有し、前記電池のプラス側は前記電源スイッチを介して前記2つのリレーのコイルの一方の端子に接続され、各コイルの他方の端子はダイオードを介して外部端子に接続され、前記電池のマイナス側は内部ボンド線の中間部に接続され、前記警報回路は前記各リレーのコイルが励磁したとき開になる接点に接続された警報ランプと警報ブザーを有し、前記2対の接続ケーブルは、前記内部ボンド線が接続された外部端子に接続される外部ボンド線と、前記ダイオードが接続された外部端子に接続された電源ケーブルと、前記外部ボンド線と電源ケーブルの端部に設けられた接続アダプタとを有し、前記接続アダプタは、前記外部ボンド線が接続されたマグネットホルダと、前記電源ケーブルが接続された接続部材と、前記マグネットホルダと接続部材の間に設けられた絶縁部材を有することを特徴とする。
【0007】
前記電池の残容量を検出する電圧計測手段を有すると良い。また、前記内部ボンド線に流れる電流を検出する電流計測手段を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、外部ボンド線と電源ケーブルの端部に取り付けた接続アダプタの絶縁部材を介して設けたマグネットホルダと接続部材をガス導管の切断する部分の両側のガス導管に密着させて、マグネットホルダと接続部材をガス導管で導通させてリレーのコイルを励磁させ、外部ボンド線がガス導管の切断する部分の両側のガス導管に接続されていることを確実に検出して、外部ボンド線と内部ボンド線でガス導管の切断する部分の両側のガス導管を短絡していることを確認することができ、切断作業の安全性を高めることができる。
【0009】
また、電圧計測手段で電池の残容量を検出することにより、安定して外部ボンド線がガス導管の切断する部分の両側のガス導管に接続されていること確認することができる。
【0010】
さらに、電流計測手段で内部ボンド線に流れる電流を検出することにより、ガス導管の切断する部分の両側のガス導管が外部ボンド線と内部ボンド線で短絡していることを確実に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はこの発明の導通検査装置の構成を示す回路図である。図に示すように、導通検査装置1は、ガス導管2の切断する部分2cの両側のガス導管2a,2bにボンド線が確実に接続されているか否を検出するものであり、導通検出器3と2対の接続ケーブル4a,4bを有する。導通検出器3は導通検出回路5及び警報回路6を有する。
【0012】
導通検出回路5は、電源としての電池7a,7bと電源スイッチ8と2つのリレー9a,9b及び内部ボンド線10を有する。電池7aのプラス側は電源スイッチ8を介して各リレー9a,9bの抵抗RとコンデンサCが並列に接続されたコイルX1,X2の一方の端子に接続され、各コイルX1,X2の他方の端子は、ガス導管2に流れる防食電流や迷走電流を阻止するダイオードD1,D2を介して外部端子11a,11bに接続され、電池7aのマイナス側は内部ボンド線10の中間部に接続されている。また、電池7aの残容量を検出する電圧計測手段12のプラス側が電源スイッチ8とコイルX1,X2の間に接続され、マイナス側がガス導管2に流れる防食電流や迷走電流を阻止するダイオードD3を介して電池7aのマイナス側に接続されている。また、例えば、電池7bから電源電圧を供給して内部ボンド線10に流れる電流を検出するカレントプローブからなる電流計測手段13を有する。内部ボンド線10は両端がそれぞれ外部端子14a,14bに接続されている
【0013】
警報回路6は一方のリレー9aのコイルX1が励磁したとき開になる接点X11に接続された警報ランプ15aと、他方のリレー9bのコイルX2が励磁したとき開になる接点X21に接続された警報ランプ15bと、コイルX1が励磁したとき開になる接点X12とコイルX2が励磁したとき開になる接点X22にそれぞれ接続された警報ブザー16を有する。
【0014】
接続ケーブル4a,4bは、内部ボンド線10が接続された外部端子14a,14bに接続された外部ボンド線17a,17bと、ダイオードD1,D2がそれぞれ接続された外部端子11a,11bに接続された電源ケーブル18a,18bと、外部ボンド線17aと電源ケーブル18aの端部に設けられた接続アダプタ19aと、外部ボンド線17bと電源ケーブル18bの端部に設けられた接続アダプタ19bを有する。接続アダプタ19a,19bは、外部ボンド線17a,17bがそれぞれ接続され、磁力がオン・オフできて導電性を有するマグネットホルダ20と、電源ケーブル18a,18bがそれぞれ接続された導電性を有する接続部材21と、マグネットホルダ20と接続部材21の間に設けられた絶縁部材22を有する。この2対の接続ケーブル4a,4bは色分けし、例えば接続ケーブル4aを赤色とし、接続ケーブル4bを青色として識別できるようになっている。
【0015】
この導通検査装置1を使用してガス導管2の切断する部分2cの両側のガス導管2a,2bに接続ケーブル4a,4bを接続して外部ボンド線17a,17bとガス導管2a,2bの間が導通しているかどうかを検出するときの動作を説明する。
【0016】
まず、接続ケーブル4a,4bの外部ボンド線17a,17bを導通検出器3の外部端子14a,14bにそれぞれ接続し、電源ケーブル18a,18bを外部端子11a,11bにそれぞれ接続する。この状態で接続アダプタ19a,19bを1枚の鉄板に取り付けて電源スイッチ8をオンにする。電源スイッチ8をオンにすると、リレー9aのコイルX1に電池7aから内部ボンド線10とマグネットホルダ20と鉄板と接続部材21及び電源ケーブル18aを通って電流が流れリレー9aを励磁して各接点X11,X12を開にする。また、リレー9bのコイルX2にも電池7aから内部ボンド線10とマグネットホルダ20と鉄板と接続部材21及び電源ケーブル18bを通って電流が流れリレー9bを励磁して各接点X21,X22を開にする。このリレー9a,9bのコイルX1,X2に電流が流れたことを警報ランプ15aと警報ランプ15bが点灯しないで警報ブザー16も鳴らないことにより確認する。また、電圧計測手段12で計測した電池7aの電圧が所定の電圧以上であることを確認する。その後、一方の接続アダプタ19aを鉄板から取り外してリレー9aのコイルX1に流れている電流を遮断したとき警報ランプ15aが点灯し、警報ブザー16が鳴ることを確認する。そして接続アダプタ19aを鉄板に取り付け、他方の接続アダプタ19bを鉄板から取り外してリレー9bのコイルX2に流れている電流を遮断したとき警報ランプ15bが点灯し、警報ブザー16が鳴ることを確認して導通検査装置1が正常に動作していることを確認する。
【0017】
この導通検査装置1の動作を確認した後、ガス導管2a,2bの接続アダプタ19a,19bを取り付ける部分の鋼面を研磨し、研磨した部分に接続アダプタ19a,19bを密着させてマグネットホルダ20の磁力をオンにしてガス導管2a,2bにマグネットホルダ20を吸着させる。この状態で電源スイッチ8をオンにする。この電源スイッチ8をオンにしたとき、ガス導管2a,2bの研磨した部分に絶縁物等がなく接続アダプタ19a,19bのマグネットホルダ20と接続部材21がガス導管2a,2bの鋼面に直接接触していると、マグネットホルダ20と接続部材21の間はガス導管2a,2bの鋼面により導通する。したがってリレー9aのコイルX1に電源7aから内部ボンド線10とマグネットホルダ20とガス導管2aと接続部材21及び電源ケーブル18aを通って電流が流れてリレー9aを励磁する。また、リレー9bのコイルX2に電源7aから内部ボンド線10とマグネットホルダ20とガス導管2bと接続部材21及び電源ケーブル18bを通って電流が流れてリレー9bを励磁して各接点X11,X12,X21,X22を開にする。したがって警報ランプ15aと警報ランプ15bを点灯しないで警報ブザー16を鳴らさないとともに、電流計測手段13で内部ボンド線10に流れている防食電流等を検出することができ、マグネットホルダ20と接続部材21がガス導管2a,2bの鋼面に確実に接触して、外部ボンド線17a,17bと内部ボンド線10でガス導管2a,2bを短絡していることを確認することができ、切断作業の安全性を高めることができる。
【0018】
また、ガス導管2a,2bの研磨した部分のいずれか一方、例えば接続アダプタ19aを取り付ける部分に絶縁物等が存在し接続アダプタ19aのマグネットホルダ20と接続部材21がガス導管2aの鋼面に直接接触しないと、リレー9aのコイルX1には電流が流れなく、各接点X11,X12は閉のままで警報ランプ15aを点灯し、警報ブザー16を鳴らして、ガス導管2aに対する接触不良であることを知らせる。このようにしてガス導管2a,2bのいずれかに接続アダプタ19a,19bの接触不良があるかを検出することができる。また、ガス導管2の切断する部分2cを切断中に、何らかしらの原因によりガス導管2a,2bのいずれか一方に対する接触不良が生じた場合も、そのことを警報ランプ15a,15bと警報ブザー16で報知することができ、切断作業の安全性を高めることができる。
【0019】
前記説明では、接続アダプタ19a,19bは、電源ケーブル18a,18bを接続した接続部材21をマグネットホルダ20の磁力によりガス導管2a,2bに接触させる場合について説明したが、図2に示すように、接続部材21として外枠211内に摺動自在な接触片212を設け、接触片212と電源ケーブル18の接続部213の間にコイルばね214を設け、マグネットホルダ20をガス導管2a,2bに吸着したとき、コイルばね213の弾性力で接触片212をガス導管2a,2bに圧接するようにしても良い。
【0020】
また、前記説明では、電圧計測手段12で計測した電池7aの電圧値により電池7aの残容量を判断する場合について説明したが、図3に示すように電圧計測手段12と共にレベル計23を設け、電池7aの電圧がレベル計23の所定の範囲にあるとき、電池7aの残容量が正常であると判断するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の導通検査装置の構成を示す回路図である。
【図2】接続アダプタの構成図である。
【図3】第2の導通検査装置の構成を示す回路図である。
【図4】ガス導管を切断するときのボンド線を示す配置図である。
【符号の説明】
【0022】
1;導通検査装置、2;ガス導管、3;導通検出器、4;接続ケーブル、
5;導通検出回路、6;警報回路、7;電池、8;電源スイッチ、9;リレー、
10;内部ボンド線、11;外部端子、12;電圧計測手段、13;電流計測手段、
14;外部端子、15;警報ランプ、16;警報ブザー、17;外部ボンド線
18;電源ケーブル、19;接続アダプタ、20;マグネットホルダ、
21;接続部材、22;絶縁部材、X1,X2;リレーのコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通検出回路及び警報回路を有する導通検出器と2対の接続ケーブルを有し、
前記導通検出回路は、電源としての電池と電源スイッチと2つのリレー及び両端が外部端子に接続された内部ボンド線を有し、前記電池のプラス側は前記電源スイッチを介して前記2つのリレーのコイルの一方の端子に接続され、各コイルの他方の端子はダイオードを介して外部端子に接続され、前記電池のマイナス側は内部ボンド線の中間部に接続され、
前記警報回路は前記各リレーのコイルが励磁したとき開になる接点に接続された警報ランプと警報ブザーを有し、
前記2対の接続ケーブルは、前記内部ボンド線が接続された外部端子に接続される外部ボンド線と、前記ダイオードが接続された外部端子に接続された電源ケーブルと、前記外部ボンド線と電源ケーブルの端部に設けられた接続アダプタとを有し、前記接続アダプタは、前記外部ボンド線が接続されたマグネットホルダと、前記電源ケーブルが接続された接続部材と、前記マグネットホルダと接続部材の間に設けられた絶縁部材を有することを特徴とする導通検査装置。
【請求項2】
前記電池の残容量を検出する電圧計測手段を有する請求項1記載の導通検査装置。
【請求項3】
前記内部ボンド線に流れる電流を検出する電流計測手段を有する請求項1又は2記載の導通検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−116228(P2008−116228A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297409(P2006−297409)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】