説明

導電インク組成物

【課題】 本発明の課題は、低い加熱処理温度にて、高い導電性と、基材との良好な密着性とを発現する導電インク組成物を実現することである。
【解決手段】 金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子(P)、光で分解可能な分散剤(D)、光酸発生剤(E)、及び分散媒(S)を含有することを特徴とする導電インク組成物。該金属微粒子(P)が、金、銀、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子であること、分散剤(D)が、カーボネート結合を有する化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の分野で用いられる絶縁性の対象物に、導電性を付与するために使用することができる導電インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性被膜の製造方法としては、従来より、銀または他の金属を樹脂成分または溶媒で練り込んだ導電ペーストと呼ばれるものを、ディスペンサーまたはスクリーン印刷、インクジェット印刷等で基材に印刷した後、加熱処理する方法が広く用いられている。しかしながら、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電ペーストを用いて形成される導電性被膜には、より低い電気抵抗、より低い加熱温度での処理、基材への高い密着性が要求され、その要求は年々厳しさを増している。
【0003】
上記要求に応えるべく、低抵抗・高密着を目指した導電ペーストが種々提案されているが、何れのペーストにおいても200℃以上の温度での熱処理を必要とすることから、描画を行う基板が変形、溶融、劣化等の損傷を受けるため、基板の材料選択が制約を受けてしまう問題があった。
【0004】
また、最近ではナノサイズの金属微粒子を用いることによって、加熱処理温度の低温化、低電気抵抗化を実現した導電インクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−35255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、低い加熱処理温度にて、高い導電性と、基材との良好な密着性とを発現することのできる導電インク組成物を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子(P)、光で分解可能な分散剤(D)、光酸発生剤(E)、及び分散媒(S)を含有することを特徴とする導電インク組成物、および該導電インク組成物を用いた配線基板回路形成方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る導電インク組成物は上述の様な構成からなるので、低温での処理が可能である。よって、適用する基材の種類に制約を受けることが少ない。本発明に係る導電インク組成物は導電性および密着性に優れた導電パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における導電インクは、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子(P)、光で分解可能な分散剤(D)、光酸発生剤(E)、及び分散媒(S)を必須成分とする。
金属微粒子(P)としては、高電気導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、銀がより好ましい。また、これらの金属は単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
【0009】
銀を用いた導電インクによって形成される導電性被膜の導電率は、良好であるが、エレクトロマイグレーションの問題を考慮する必要性が生じる。よって、エレクトロマイグレーションを防止するためには、銀微粒子とその他の金属微粒子とを併用することが好ましい。併用する場合、銀とその他の金属の重量比は、銀重量が5〜95重量%である。上記その他の金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等が挙げられる。特に、金、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0010】
金属微粒子(P)の平均粒子径は、2〜40nmであることが好ましい。平均粒子径が2nm以上である粒子は従来から知られている方法により、容易に合成が可能であり、40nm以下であると、金属微粒子の融点は、同一金属のバルクの融点よりも、低下することから、より低温での金属被膜の形成が可能である。
【0011】
金属微粒子(P)は、通常、一般に知られる気相法、液相法により、それぞれ粉体、分散液の状態で得ることができるが、生産性の観点から分散液が、より望ましい。
【0012】
光で分解可能な分散剤(D)は、金属吸着性を示す官能基と、分散媒(S)に親和性を有する部位を有し、光で分解可能な化合物であることが好ましい。
金属吸着性を示す官能基としては、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などが挙げられ、メルカプト基、アミノ基がより好ましい。
分散剤(D)として好ましい化合物は、例えば上記金属吸着性を示す官能基を有し、カーボネート結合を有する化合物が挙げられる。具体例として以下の化学式(2)で表される化合物が挙げられる。nは1〜100までの整数であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
分散剤(D)の製造方法
分散剤(D)の製造方法としては特に限定されないが、従来より知られるポリカーボネートの製造方法により、製造することができ、例えば、ホスゲン法などが挙げられる。
【0015】
光酸発生剤(E)として好ましい化合物は、例えばスルホニウム塩、ヨードニウム塩系のオニウウ塩が挙げられる。下記に示すような光酸発生剤 のオニウム塩は感度に優れ、光酸発生剤 として好適に用いられる。例えば化学式(3)、化学式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
分散媒(S)は、特に限定されないが、有機溶剤単独、またはこれらの溶剤の混合物が好ましい。例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ジアセトンアルコール、等)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等)、エーテル(テトラヒドロフラン等)、エステル(酢酸エチル、n-ブチルアセテート、γ-ブチロラクトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエーテルアセテート、3-エトキシ-プロピオン酸エチル、3-メトキシ-プロピオン酸メチル、ジグリコールモノエチルエーテル 、β-メトキシイソ酪酸メチルエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、ピルビン酸エチル、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、低沸点、かつ、基板への浸食性の観点から、アルコール系の溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。溶剤の混合物において、溶剤の重量比率は、任意の割合で混合したものを使用することができる。分散媒(S)は、金属微粒子(P)、分散剤(D)、光酸発生剤(E)及び分散媒(S)の合計重量に基づいて、5〜90重量%であることが好ましく、10〜80重量%であることがさらに好ましい。
【0019】
また本発明の導電インク組成物において、上記金属微粒子(P)の金属濃度は、金属微粒子(P)、分散剤(D)、光酸発生剤(E)及び分散媒(S)の合計重量に基づいて、9.998〜94.998重量%であることが好ましく、20〜90重量%がさらに好ましい。9.998重量%以上であると、密度の高い金属被膜を形成することが可能となり、また94.998重量%以下であると、スクリーン印刷、インクジェット法などにより、微細な金属パターンを形成するために適度な粘性を付与することができる。
【0020】
また本発明の導電インク組成物において、分散剤(D)の濃度は、金属微粒子(P)、分散剤(D)、光酸発生剤(E)及び分散媒(S)の合計重量に基づいて、0.001〜3重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%がさらに好ましい。
【0021】
光酸発生剤(E)の含有量は、金属微粒子(P)、分散剤(D)、光酸発生剤(E)及び分散媒(S)の合計重量に基づいて、0.001〜1.5重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることがより好ましい。光酸発生剤の含量が、0.001重量%以上で露光により発生する酸成分の量が十分であり、1.5重量%以下であると酸発生剤自体の光吸収が少ないため、光を効率的に利用できる。
【0022】
本発明の導電インク組成物は、以下のような添加剤を含有していてもよい。添加剤の合計量は金属微粒子(P)、分散剤(D)、光酸発生剤(E)及び分散媒(S)の合計重量に基づいて5重量%以下であることが好ましい。
(1)バインダー成分として水溶性または油溶性樹脂を含んでもよい。バインダー成分が添加されることにより、本発明に係る導電インクは、各種塗布方法に応じた粘度・チキソ比等の調整、およびレベリング性の付与を可能にする。水溶性の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体等が挙げられる。添加量は、多すぎると絶縁体である樹脂成分が導電性を阻害する。
(2)液の特性を改質するための添加剤を含んでもよい。
(3)界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、揮発抑制剤等を含んでもよい。
【0023】
本発明の導電インク組成物の製造方法は、液相法により、金属イオンから還元により金属微粒子(P)を合成した後、表面の分散剤を、分散剤(D)で交換し、液中に残ったイオン、不純物などを、イオン交換膜、透析などの方法を用いて除去した後、金属微粒子の濃度を分散媒(S)により調整する方法、分散剤(D)と金属イオンの存在下で、金属イオンの還元を行い、直接、分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P)を合成した後、液中に残ったイオン、不純物などを、イオン交換膜、透析などの方法を用いて除去した後、金属微粒子の濃度を分散媒(S)により調整する方法などが挙げられる。
【0024】
本発明の導電インク組成物を使用して配線基板回路を形成する方法は以下の通りである。
(1)本発明の導電インク組成物でパターンを描画する工程
本発明に係る導電インク組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹板印刷、フレキソ印刷、バーコート法による方法等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明の導電インク組成物を用いて導電性被膜を形成させる際に使用する基材は、高温、例えば200℃以上の温度での熱処理で変形、溶融、劣化等の損傷を受けてしまう素材であっても、使用することができる。よって、本発明に係る導電インクを用いれば、より広い範囲の基材の中から選ぶことができ、高い密着性を有する被膜を発現させることができる。本発明に係る導電インクを適用する基材としては、例えば、熱に強い金属、ガラス、セラミック、ITO(インジウムすずオキサイド)処理された基材をはじめ、高温をかけると変形または分解するおそれのある高分子系の基体(例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等)が挙げられる。また、その形状としては、例えば、板状、フィルム状、繊維状等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る導電インクと基材との濡れ性が悪い場合には、基材を表面処理し、濡れ性を向上させればよい。適用可能な基材の表面処理方法としては、種々の公知の手法(例えば、物理的に表面を荒らす方法;プラズマ処理、オゾン処理、コロナ処理等の乾式化学処理法;クロム酸混液、濃硫酸、濃塩酸中に浸漬させる方法;シランカップリング剤やチタネートカップリング剤による湿式化学処理等)が挙げられる。これらの方法を、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明に係る導電性被膜が形成された基材を、必要に応じて加熱してもよい。上記加熱方法としては、例えば、オーブン中で加熱する方法の他、誘電加熱法、高周波過熱法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0027】
(2)露光工程
本発明の導電インク組成物でパターンを描画した後、露光処理を行う。
露光の方法としては、UV露光機、ArFエキシマレーザーステッパー等が挙げられるが、一度に大面積の処理が行える点で、超高圧水銀灯を光源とするUV露光機が好ましいが、ここでの例に限定はされない。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0028】
(3)分散剤(D)除去工程
露光後の、導電性皮膜が形成された基材に残った、分散剤の分解物、光酸発生剤、過剰樹脂成分の除去を行なう。除去工程は、これらの残存物の溶解性に優れる溶剤が用いられ、分散媒(S)と同組成のものを利用するのがよい。溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエーテルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、3-エトキシ-プロピオン酸エチル、3-メトキシ-プロピオン酸メチル、ジグリコールモノエチルエーテル 、2-ヘプタノン、ジアセトンアルコール、β-メトキシイソ酪酸メチルエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、ピルビン酸エチル、γ-ブチロラクトンが挙げられるが、ここでの例に限定はされない。また、これらの溶剤を組み合わせてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
【0030】
製造例1
(1)分散剤(D−1)の作製
5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、p−ヒドロキシベンゼンの濃度が5.5重量%になるようにp−ヒドロキシベンゼンを溶解し、p−ヒドロキシベンゼンの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。これとは別に5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、1.4ブタンジオールの濃度が4.5重量%になるように1.4ブタンジオールを溶解し、1.4ブタンジオールの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。これとは別に5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、4−アミノ−1−ヒドロキシベンゼンの濃度が2.2重量%になるように4−アミノ−1−ヒドロキシベンゼンを溶解し、 4−アミノ−1−ヒドロキシベンゼンの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。これらを等量ずつ混合し、内径6mm、管長30mの管型反応器に、上記3種の混合液を40リットル/h、及び塩化メチレンを15リットル/hの流量で連続的に通すと共に、ホスゲン を4.0kg/hの流量で連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液は、後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、29〜32℃で6時間反応を行った。この槽型反応器から、反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取し、室温で10mmHgで減圧脱溶剤することで、ポリカーボネートからなる分散剤(D−1)を得た。(D−1)は上記一般式(2)で示される化合物であり、(D−1)の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した結果から、nは5であった。
【0031】
製造例2
(2)分散剤(D−2)の作製
5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、p−ヒドロキシベンゼンの濃度が5.5重量%になるようにp−ヒドロキシベンゼンを溶解し、p−ヒドロキシベンゼンの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。これとは別に5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液に、1.4ブタンジオールの濃度が4.5重量%になるように1.4ブタンジオールを溶解し、1.4ブタンジオールの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。これらを等量ずつ混合し、内径6mm、管長30mの管型反応器に、上記3種の混合液を40リットル/h、及び塩化メチレンを15リットル/hの流量で連続的に通すと共に、ホスゲン を4.0kg/hの流量で連続的に30分間通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液は、後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、29〜32℃で1時間反応後、1,2−ジメルカプト−4−メチルベンゼンを1.0kgを反応器中に投入し29〜32℃で5時間反応を行った。この槽型反応器から、反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取し、室温で10mmHgで減圧脱溶剤することで、ポリカーボネートからなる分散剤(D−2)を得た。分散剤(D−2)の化学式(5)を下記に示した。(D−2)の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した結果から、nは10であった。
【0032】
【化5】

【0033】
実施例1
塩化金酸(和光純薬工業社製)340gを含む水溶液1.5Lに溶解させ、製造例1で作製した分散剤(D−1)150gをメチルイソブチルケトン1Lに添加し溶解させ、これらをホモミキサーにより混合した。ホモミキサーでの混合を継続しながら、これに還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)10gを含む水溶液0.5Lを追加投入することにより、金粒子を含む溶液を得た。溶液を静置し、2相分離した後、水相を除去することでメチルイソブチルケトンに分散した金粒子を含む溶液を得た。さらに溶液中の金固形分が30wt%になるまで濃縮した。粒子の粒径を動的光散乱式粒径測定装置LB-550(堀場製作所製)を用いて測定を行った結果、6.7nmであった。
【0034】
この金ナノ粒子分散液1kgに対して、化学式(3)で表される、トリアリールスルホニウムトリフルオロメタンスルフォネート(5.0g)を溶解し、均一混合することで、導電インク組成物(I−1)を得た。
【0035】
実施例2
分散剤をD−1からD−2に変更した以外は実施例1と同様にして、金粒子のメチルイソブチルケトン分散液を得た。粒子の粒径を動的光散乱式粒径測定装置LB-550(堀場製作所製)を用いて測定を行った結果、3.2nmであった。
【0036】
この金ナノ粒子分散液1kgに対して、化学式(4)で示されるジ−p−tert−ブチルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォーネート(5.0g)を溶解し、均一混合することで、導電インク組成物(I−2)を得た。
【0037】
比較例1
硝酸銀(和光純薬工業社製)59.1gを含む水溶液1.5L、分散剤としてクエン酸三ナトリウム二水和物(和光純薬工業社製)512.64gを含む水溶液1L、還元剤としてタンニン酸(和光純薬工業社製)10.8gを含む水溶液0.5L、pH調整剤として10N−NaOH水溶液90mLを混合、撹拌することにより、銀粒子を含む溶液を得た。得られた銀粒子を含む溶液を、中空糸モジュール(旭化成製、マイクローザUFラボモジュールSLP−1053)を用いて脱塩した後、溶液中の銀固形分が50wt%以上になるまで濃縮し、この濃縮液を3000rpmで10分間遠心分離した。このとき、下層の沈殿と上層の分散液に分離するが、この上層の分散液を銀コロイド液として採取し、比較導電インク組成物(I−1’)を得た。
【0038】
比較例2
市販の銀の導電ペーストであるドータイトFA−353N(藤倉化成社製)を比較導電インク組成物(I−2’)とする。
【0039】
導電性被膜の作製
PETフィルム(東レ社製)上に、導電インク組成物(I−1)、(I−2)、比較導電インク組成物(I−1’)、(I−2’)をスキージーにて塗布し、248nmの短波長の光を照射後、130℃で90秒間加熱した。その後メチルイソブチルケトンで洗浄し乾燥し、金からなる導電性被膜(M−1)、(M−2)、比較導電性被膜(M−1’)、(M−2’)を得た。同様にスライドガラス上と、イオンプレーティングにより作成したITOフィルム(トービ社製)にも同様にして、被膜を作成した。
また、比較導電インク組成物(I−1’)、(I−2’)においては、スキージーにて塗布し、50mmHgに減圧乾燥した。その後減圧乾燥機(EYELA社製)で200℃、50mmHgにて30分間減圧加熱処理し導電性被膜を得た。
【0040】
<評価>
PETフィルム上、スライドガラス上、及びITOフィルム上に作成した導電性被膜(M−1)、(M−2)、比較導電性被膜(M−1’)、(M−2’)について導電性と密着性の評価を行った。評価方法は以下に記載した方法で行った。結果を表1に示した。
【0041】
(1)導電性
被膜の電気抵抗を、ダブルブリッジ2769(横河M&C社製)により測定し、体積抵抗率を下記式を用いて算出した。
ρv=Rwt/I
ここで、
・ρv:体積抵抗率(Ω・cm)
・R:測定端子問の被膜の電気抵抗(Ω)
・w:測定端子問の被膜の幅(cm)
・t:測定端子間の被膜の厚み(cm)
・I:測定端子間の被膜の長さ(cm)。
【0042】
(2)密着性
基材に対する被膜の密着性を、メンディングテープNo.810(住友スリーエム(株)製)を用いた剥離試験にて評価した。この際、メンディングテープを被膜に完全に付着させてから1分後に、テープの一方の端を持って基材に対して90℃の角度を保ちながら一気に引き剥がすことによって、剥離試験を行った。評価基準としては、全く剥離しなかった場合を○、面積で1/5未満が剥離した場合を△、1/5以上剥離した場合を×とした。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の通り、本発明品は130℃以下という、低温な焼結温度においても、高導電性、かつ密着性の良い被膜が形成できる。なお、比較導電インク組成物を用いた場合、焼結温度が130℃の場合は導電性が悪く、焼結温度を上げることで導電性は改善するが、耐熱性の低い基材の場合、基材自身が変形、溶融、分解してしまうため、試験を行う前の段階で、剥離が発生していた。
【0045】
本発明に係る導電インクを用いれば、スクリーン印刷をはじめ、描画装置、印刷機械等に幅広く適用可能である上、130℃以下での低温加熱条件においても、高い導電性と良好な密着性とを発現する被膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ブラウン管の電磁波遮蔽、建材または自動車の赤外線遮蔽、電子機器または携帯電話の静電気帯電防止剤、曇ガラスの熱線、回路基板またはICカードの配線、フラットパネルディスプレイの電極、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、導電繊維、スルーホール、回路自体等の広い分野にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子(P)、光で分解可能な分散剤(D)、光酸発生剤(E)、及び分散媒(S)を含有することを特徴とする導電インク組成物。
【請求項2】
金属微粒子(P)が、金、銀、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属微粒子である請求項1に記載の導電インク組成物。
【請求項3】
分散剤(D)が、カーボネート結合を有する化合物である請求項1又は2に記載の導電インク組成物。
【請求項4】
分散剤(D)が、下記一般式(1)で示される2価の残基を有する化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電インク組成物。
【化1】

(Rは炭素数1〜16の2価の有機基であり、nは1〜100の整数である。)
【請求項5】
分散剤(D)が、メルカプト基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含有する化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電インク組成物。
【請求項6】
光酸発生剤(E)がスルホニウム塩、またはヨードニウム塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電インク組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電インク組成物を、基板上に塗布または、パターン状に印刷し、光照射により分散剤(D)を分解、除去し、金属被膜を形成させることを特徴とする配線基板回路形成方法。





【公開番号】特開2008−274096(P2008−274096A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119015(P2007−119015)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】