説明

導電シート、導電シートの製造方法、及び導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル

【課題】マイグレーション耐性に優れる透明導電シートの提供を目的とする。
【解決手段】支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、前記導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に高精細パターンの導電性細線が形成された導電シート、ハロゲン化銀を用いて支持体に高精細パターンの導電性細線が形成された導電シート、これらの導電シートの製造方法に関する。更に、本発明は、例えば、各種電極(例えばタッチパネル用電極、無機EL素子用電極、有機EL素子用電極又は太陽電池用電極)、発熱シート、及びプリント配線基板などとしても使用することができる導電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低抵抗の導電性細線をハロゲン化銀写真感光材料の現像で得られる銀像から形成する方法が電磁波シールド膜やプリント配線の分野で検討されている。この方式は種々のパターンをマスクを介した露光と引き続く現像処理により形成することができるので、製造工程が安定している。現像方式としては例えば、特許文献1を挙げることができ、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンで表面抵抗50〜100Ω/□の実施例が記載されている。
【0003】
導電性が高い銀はイオンマイグレーションが発生しやすいという問題がある。イオンマイグレーションとは一種の電極作用であり、電圧印可された電極間に電解液が存在した場合、陽極の金属が溶出し、陰極へ移行、析出する現象である。イオンマイグレーションが配線金属間で起こり、溶出、移行し、析出した金属が短絡してしまうと回路機能を果たさなくなってしまう。
【0004】
イオンマイグレーションを抑制する方法としては、電極パターン形成後に樹脂成分を架橋させる方法(特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、現像後に架橋剤を作用させる工程が必要であり工程数が増加するため生産性及びコストの面などで問題がある。また、架橋剤を作用させるのみではマイグレーション耐性が不十分であり問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−129205号公報
【特許文献2】特開2010−205927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記課題を考慮してなされたものであり、マイグレーション耐性に優れる導電シートの提供を目的とする。更に本発明は、前記マイグレーション耐性に優れる導電シートを工程を増やさずに製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、前記導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、
前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。
[2]
前記バインダー部が、ポリマーラテックスと水溶性高分子とを含有し、前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1以上である、上記[1]に記載の導電シート。
[3]
前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1.5〜3.5である、上記[2]に記載の導電シート。
[4]
前記金属銀と前記ポリマーラテックスとの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)が1〜10である、上記[2]又は[3]に記載の導電シート。
[5]
支持体上に、ハロゲン化銀と、ポリマーラテックスを含むバインダーとを含有する感光性層を形成し、該感光性層を露光、現像処理した後に更に加熱処理することにより形成された金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、該導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。
[6]
前記加熱処理における温度が40℃以上である、上記[5]に記載の導電シート。
[7]
前記バインダーが水溶性高分子であり、前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1以上である、上記[5]又は[6]
に記載の導電シート。
[8]
前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1.5〜3.5である、上記[7]に記載の導電シート。
[9]
前記金属銀と前記ポリマーラテックスとの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)が1〜10である、上記[5]〜[8]のいずれか1項に記載の導電シート。
[10]
前記水溶性高分子がゼラチンである、上記[2]〜[4]及び[7]〜[9]のいずれか1項に記載の導電シート。
[11]
前記加熱処理が40℃以上かつ相対湿度5%以上で行われる、上記[5]〜[10]のいずれか1項に記載の導電シート。
[12]
前記金属銀と前記ポリマーラテックスの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)が2.3〜7.5である、上記[2]〜[11]のいずれか1項に記載の導電シート。
[13]
前記ポリマーラテックスにおけるポリマーが、下記一般式(1)で表される共重合体である、上記[2]〜[12]のいずれか1項に記載の導電シート。
一般式(1): −(A)x−(B)y−(C)z−(D)w−
一般式(1)中、A、B、C、及びDはそれぞれ下記モノマー単位を表す。x、y、z、及びwは各モノマー単位のモル比率を表し、xは3〜60(モル%)、yは30〜96(モル%)、zは0.5〜25(モル%)、wは0.5〜40(モル%)を表す。
【0009】
【化1】

【0010】
上記式中、
はメチル基又はハロゲン原子を表す。pは0〜2の整数を表す。
はメチル基又はエチル基を表す。
は水素原子又はメチル基を表す。Lは2価の連結基を表す。qは0又は1を表す。
は炭素原子数5〜80のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
は水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、又は−CHCOORを表す。
は水素原子又は炭素原子数1〜80のアルキル基を表す。
[14]
前記ポリマーラテックスが、更に分散剤を含有し、該ポリマーラテックスにおける該分散剤とポリマーとの質量比(分散剤/ポリマー)が0.05以下である、上記[2]〜[13]のいずれか1項に記載の導電シート。
[15]
前記バインダー部に更に銀難溶剤を含有する、又は前記バインダー部が銀難溶剤への浸漬処理を施されたものである、上記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の導電シート。
[16]
支持体上に、物理現像核とポリマーラテックスとを含有する非感光性層を形成し、前記非感光性層上にハロゲン化銀を含有する剥離可能な感光性層を形成し、前記感光性層を露光し、拡散転写現像処理することにより前記感光性層の未露光部のハロゲン化銀を前記非感光性層の物理現像核に転写して金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成し、
該感光性層を除去し、該導電層が形成された非感光性層を更に加熱処理することにより前記導電性細線間にバインダー部が形成された導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。
[17]
支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる表面抵抗が1000オーム/sq.以下である導電層と、前記導電性細線間に存在する含水率が10%以下であるバインダー部とを有する導電シートの製造方法であって、
支持体上に、ハロゲン化銀と、ポリマーラテックスを含むバインダーとを含有する感光性層を形成する工程、
前記感光性層を露光した後、現像処理することにより金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、
前記現像処理の後に加熱処理によって前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
[18]
支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる表面抵抗が1000オーム/sq.以下である導電層と、前記導電性細線間に存在する含水率が10%以下であるバインダー部とを有する導電シートの製造方法であって、
支持体上に、ハロゲン化銀と物理現像核とポリマーラテックスを含むバインダーとを含有する感光性層を形成する工程、
前記感光性層を露光した後、現像処理することにより金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、
前記現像処理の後に加熱処理によって前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
[19]
支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる表面抵抗が1000オーム/sq.以下である導電層と、前記導電性細線間に存在する含水率が10%以下であるバインダー部とを有する導電シートの製造方法であって、
支持体上に、物理現像核とポリマーラテックスとを含有する非感光性層を形成する工程、
前記非感光性層上にハロゲン化銀を含有する感光性層を形成する工程、
前記感光性層を露光した後、拡散転写現像処理により前記感光性層の未露光部のハロゲン化銀を前記非感光性層の物理現像核に転写して金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、
該感光性層を除去する工程、
前記現像処理の後に加熱処理によって該導電層が形成された非感光性層における前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
[20]
前記導電シートを100%延伸したときの電気抵抗値をRb、延伸する前の電気抵抗値(初期値)をR0とした場合、Rb≦(2×R0)を満足する、上記[1]〜[16]のいずれか1項に記載の導電シート。
[21]
上記[1]〜[16]及び上記[20]のいずれか1項に記載の導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性細線間で金属イオンの移動により発生するマイグレーションが抑制された導電シートを提供することができる。また本発明によれば、該マイグレーション耐性に優れる導電シートを生産性良く製造する方法を提供することができる。
本発明の導電シートはフレキシビリティ(成形性など)に優れることから、各種電極(例えばタッチパネル用電極、無機EL素子用電極、有機EL素子用電極又は太陽電池用電極)に応用することができ、導電性パターニング材料としてプリント配線基板などにも広く応用することができ、更に、発熱シートなどにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の導電シートの1態様例を示す断面模式図である。
【図2】ハロゲン化銀乳剤を用いた導電層形成プロセスの概念図である。
【図3】本発明の導電シートを製造するために用いる感光材料の1態様例を示す断面模式図である。
【図4】支持体の両面に電極(導電層)を形成したタッチパネルモデルの断面模式図である。
【図5】上部導電シートと下部導電シートの積層方式の1態様の断面模式図である。
【図6】上部導電シートと下部導電シートの積層方式の1態様の断面模式図である。
【図7】上部導電シートと下部導電シートの積層方式の1態様の断面模式図である。
【図8】マイグレーション試験に用いる、くし型パターン電極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0014】
本発明の導電シートは、支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、前記導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下であることを特徴としている。
また、本発明は、支持体上に、ハロゲン化銀とポリマーラテックスとを含有する感光性層を露光、現像処理した後に更に加熱処理することにより形成された金属銀を含有する導電性細線からなる導電層とバインダー部とを有する導電シートであって、前記バインダー部は前記導電性細線間に存在し、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シートにも関する。
更に、本発明は、支持体上に、物理現像核とポリマーラテックスとを含有する非感光性層を形成し、前記非感光性層上にハロゲン化銀を含有する剥離可能な感光性層を形成し、前記感光性層を露光し、拡散転写現像処理することにより前記感光性層の未露光部のハロゲン化銀を前記非感光性層の物理現像核に転写して金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成し、該感光性層を除去し、該導電層が形成された非感光性層を更に加熱処理することにより前記導電性細線間にバインダー部が形成された導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シートにも関する。
また、本発明は前記導電シートの製造方法にも関する。
【0015】
(バインダー部の含水率)
本発明の導電シートにおける、導電性細線間に存在するバインダー部の含水率は10%以下である。これにより本発明の導電シートは優れたマイグレーション耐性を発揮することができるものと考えられる。本発明において、バインダー部の含水率は、3.0%〜6.5%が好ましく、4.0%〜6.5%がより好ましく、4.6%〜5.2%が更に好ましい。
本発明におけるバインダー部の含水率は、60℃、90%RHで20日間経時させた後の平衡含水率であり、重量法により以下のように算出する。
バインダー部の含水率(%)=(W−W)/W×100
は120℃、4時間経時させた後(絶乾状態)のバインダー部の質量であり、Wは60℃、90%RHで20日間経時させた後のバインダー部の質量である。
【0016】
図1は本発明の導電シートの一態様例を示した断面模式図であり、支持体32上に、金属銀を含有する導電性細線からなる導電層101と、前記導電性細線間に存在するバインダー部102とを有する導電シート10を表している。前記バインダー部の含水率は10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である。
このような本発明の導電シートは、例えば、支持体上にハロゲン化銀を含む感光性層を有する感光材料を形成し、該感光材料に露光、現像処理した後に加熱処理することにより作成することができ、好ましくは以下の3つの態様の製造方法により作成される。
[1]支持体上に、ハロゲン化銀とポリマーラテックスを含むバインダーとを含有する感光性層を形成する工程、前記感光性層を露光した後、現像処理することにより金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、前記現像処理の後に加熱処理によって前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
[2]支持体上に、ハロゲン化銀と物理現像核とポリマーラテックスとを含有する感光性層を形成する工程、前記感光性層を露光した後、現像処理することにより金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、前記現像処理の後に加熱処理によって前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
[3]支持体上に、物理現像核とポリマーラテックスとを含有する非感光性層を形成する工程、前記非感光性層上にハロゲン化銀を含有する感光性層を形成する工程、前記感光性層を露光した後、拡散転写現像処理により金属銀を含有する導電性細線からなる導電層を形成する工程、該感光性層を除去する工程、前記現像処理の後に加熱処理によって前記ポリマーラテックスを造膜させてバインダー部を前記導電性細線間に形成する工程を有する、導電シートの製造方法。
【0017】
〔支持体〕
本発明に用いられる支持体は透明支持体であることが好ましく、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板などを用いることができるが、プラスチックフィルムが好ましい。透明支持体を用いることで本発明の導電シートは透明導電シートとして好適に用いることができる。
プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレンなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明におけるプラスチックフィルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
支持体としては、PET(258℃)、PEN(269℃)、PE(135℃)、PP(163℃)、ポリスチレン(230℃)、ポリ塩化ビニル(180℃)、ポリ塩化ビニリデン(212℃)やTAC(290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルムが好ましく、特にPETが好ましい。( )内の数値は融点である。フィルムの透過率は85%〜100%であることが好ましい。
透明支持体フィルムの厚みは50μm以上、500μm以下の範囲で任意に選択することができる。特に透明導電シートの支持体の機能の他にタッチ面の機能をも兼ねる場合は、500μmを超えた厚みで設計することも可能である。透明支持体上にハロゲン化銀を含む感光性層を塗布方式で設ける場合は、フィルムの厚みとしては、50μm以上、250μm以下とすることが製造上より好ましい。
【0018】
[感光材料]
本発明の導電シートは、支持体の少なくとも一方の面に、ハロゲン化銀を含む感光性層が形成された導電シート製造用感光材料を露光、現像処理することにより得られる。前記感光材料は、前記感光性層上に保護層を有していてもよい。
前記感光材料は最も単純な構成では、図2(b)に示すように、支持体の一方の面上に感光性層を有するものである。該感光性層上には保護層を有してもよい。また、図3に示す感光材料05のように、支持体の両面に感光性層を有してもよい。図3は、支持体の両面に感光性層を有する構成であり、支持体32のおもて面側には上部感光材料層(おもて面感光材料層とも言う)50が、うら面側には下部感光材料層(うら面感光材料層とも言う)60が形成されている。上部感光材料層50は、支持体32上に下塗り層56、アンチハレーション層57、ハロゲン化銀を含む上部感光性層(おもて面感光性層とも言う)51、保護層55が形成されている。下塗り層、アンチハレーション層、保護層は、必要に応じて設けられる層である。上部感光性層51はいくつかのハロゲン化銀を含む感光性層とその感光性層の間にある中間層から形成されていてもよい。下部感光材料層60も上部感光材料層50と同様の層構成を有していてもよい。
【0019】
〔ハロゲン化銀を含む感光性層〕
次にハロゲン化銀を含む感光性層について説明するが、現像銀を導電層材料とするためには、感光材料の種類と、現像処理の種類とを、以下の3通りの方式から選択することができる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる方式。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる方式。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる方式。
【0020】
上記(1)の態様は、黒白現像タイプであり、感光材料上に導電性細線からなる電極などの導電性金属部(導電性膜)が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである。更に、メッキ処理、又は物理現像の後続過程を設ける場合は高活性で好ましい方式である。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に導電性細線からなる電極などの導電性金属部(導電性膜)が形成される。これも黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、得られる現像銀は比表面が小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に導電性細線からなる電極などの導電性金属部(導電性膜)が形成される。いわゆる2シートのセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0021】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Process,4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。また、例えば、特開2004−184693号公報、同2004−334077号公報、同2005−010752号公報等に記載の技術を参照することもできる。
【0022】
上記の(1)〜(3)の方式の中で、方式(1)が、現像前の感光性層に物理現像核を有さないこと、2シートの拡散転写方式でないことから、方式(1)が最も簡便、安定な処理ができ、本発明の導電シートの製造には好ましい。以下、方式(1)での説明を記載するが、他の方式を用いる場合には上段記載の文献を参照することができる。なお、”溶解物理現像”は、方式(2)にのみ固有な現像法ではなく、方式(1)でも利用できる現像方法である。
【0023】
(ハロゲン化銀乳剤)
本発明のハロゲン化銀乳剤に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、更に臭化銀や塩化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0024】
なお、ここで、「臭化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この臭化銀を主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0025】
なお、ハロゲン化銀乳剤における沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5mol%を超えない範囲であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5mol%を超えない範囲とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1mol%以下である。
【0026】
ハロゲン化銀の平均粒子サイズ、ハロゲン化銀粒子の形状及び分散度と変動係数は、特開2009−188360号の段落36及び37の記載を参照することができる。また、ハロゲン化銀乳剤の安定化や高感化のために用いられるロジウム化合物、イリジウム化合物などのVIII族、VIIB族に属する金属化合物、パラジウム化合物の利用については、特開2009−188360号の段落39〜段落42の記載を参照することができる。更に化学増感については、特開2009−188360号の段落43の技術記載を参照することができる。
【0027】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、塩臭化銀乳剤であることがこのましい。また、現像前、現像中のカブリを抑制するために沃化銀を少量含有させることが好ましく、0.5モル%程度含ませることがより好ましい。以下では沃化銀を左記の程度含んでいても特に表示はしない。
【0028】
本発明においては、本発明の感光材料05を現像処理後に形成される現像銀の導電性細線からなる電極の反射色度を調整するため、図3に示すように、感光性層51及び61を第一感光性層(u層)、第二感光性層(m層)、第三感光性層(o層)にわけ、3層構成の感光性層として塗布して形成してもよい。
【0029】
(バインダー)
ハロゲン化銀を含む感光性層には、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーが用いられる。バインダーとしては水溶性高分子が好ましく、ゼラチンが特に好ましい。ゼラチンは後述するポリマーラテックスとともに本発明の導電シートにおけるバインダー部を形成する。上記バインダーとしては、ゼラチンに替えて、又はゼラチンと共に、例えば、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等を用いることもできるが、ゼラチンが好ましい。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他アミノ基、カルボキシル基を修飾したゼラチン(フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができる。
【0030】
本発明の支持体上に形成される感光性層に含まれる銀とゼラチンの体積比は1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。銀とゼラチンの体積比を1.0以上とすることで、現像処理後の現像銀の導電性を高めることができる。なお、本発明における銀とゼラチンの体積比は、ハロゲン化銀乳剤層に含まれる銀の質量及びバインダーの質量を算出し、銀の密度を10.5g/cm、ゼラチンの密度を1.34g/cmとして計算して求めるものとする。
【0031】
(ポリマーラテックス)
本発明の導電シートにおけるバインダー部は、ポリマーラテックスを加熱処理により造膜させたものを含むことが好ましい。ポリマーラテックスに含まれるポリマー粒子が、加熱処理されて造膜されることで透水性の小さい膜を形成することができ、バインダー部への水分の浸入を防ぐことができる。
【0032】
前記加熱処理は40℃以上であることがポリマー粒子の造膜温度の観点から好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。また、支持体のカール等の観点から150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
加熱時間は特に限定されないが、ベースがカールしない、生産性の観点から、1〜5分間であることが好ましく、1〜3分間であることがより好ましい。
【0033】
本発明において前記加熱処理は、通常、露光、現像処理の後に行われる乾燥工程と兼ねることができるため、ポリマー粒子の造膜のために新たな工程を増加させる必要がなく、生産性、コスト等の観点で優れる。
【0034】
ポリマーラテックスを含有するバインダー部を形成するための具体的な手法としては、例えば以下の(I)及び(II)が挙げられる。
(I):支持体上に、ハロゲン化銀とポリマーラテックスとを含有する感光性層を設け、該感光性層を露光、現像処理した後に更に加熱処理することにより金属銀を含有する導電性細線からなる電極とバインダー部とを形成する方法。
(II):支持体上に、物理現像核とポリマーラテックスとを含有する非感光性層を形成し、前記非感光性層上にハロゲン化銀を含有する剥離可能な感光性層を形成し、前記感光性層を露光し、拡散転写現像処理することにより前記感光性層の未露光部のハロゲン化銀を前記非感光性層の物理現像核に転写して金属銀を含有する導電性細線からなる電極を形成し、該感光性層を除去し、該電極が形成された非感光性層を更に加熱処理する方法。
【0035】
ポリマーラテックスに含まれるポリマーとしては、水透過性の小さい膜を形成することによりバインダー部及び該バインダー部に隣接する層への水分の浸入を防止するという観点から、下記一般式(1)で表される共重合体が好ましい。
一般式(1): −(A)x−(B)y−(C)z−(D)w−
一般式(1)中、A、B、C、及びDはそれぞれ下記モノマー単位を表す。x、y、z、及びwは各モノマー単位のモル比率を表し、xは3〜60(モル%)、yは30〜96(モル%)、zは0.5〜25(モル%)、wは0.5〜40(モル%)を表す。
【0036】
【化2】

【0037】
上記式中、
はメチル基又はハロゲン原子を表す。pは0〜2の整数を表す。
はメチル基又はエチル基を表す。
は水素原子又はメチル基を表す。Lは2価の連結基を表す。qは0又は1を表す。
は炭素原子数5〜80のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
は水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、又は−CHCOORを表す。
は水素原子又は炭素原子数1〜80のアルキル基を表す。
【0038】
一般式(A)で表されるモノマーユニットにおいて、Rはメチル基又はハロゲン原子を表し、好ましくはメチル基、塩素原子、臭素原子を表す。
pは0〜2の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0039】
一般式(B)で表されるモノマーユニットにおいて、Rはメチル基又はエチル基を表し、メチル基が好ましい。
【0040】
一般式(C)で表されるモノマーユニットにおいて、Rは水素原子、又はメチル基を表し、好ましくは水素原子を表す。
Lは2価の連結基を表し、好ましくは下記一般式(30)で表される基である。
一般式(30):−(CO−X)r−X
式中Xは、酸素原子又は−NR30−を表す。ここでR30は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアシル基を表し、それぞれ置換基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基など)を有してもよい。R30は好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基など)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基など)である。Xとして特に好ましいのは、酸素原子又は−NH−である。rは0又は1を表す。
【0041】
は、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、又はアルキレンアリーレンアルキレン基を表し、これらのアルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基には−O−、−S−、−OCO−、−CO−、−COO−、−NH−、−SO−、−N(R31)−、−N(R31)SO−などが途中に挿入されてもよい。ここでR31は炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、イソプロピル基などがある。Xの好ましい例として、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、−CHCHOCOCHCH−、−CHCHOCO(C)−などを挙げることができる。
qは0又は1を表し、0が好ましい。
【0042】
一般式(D)において、Rは炭素原子数5〜80のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、好ましくは炭素数5〜50のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜20のアルキル基である。
は水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、又は−CHCOORを表し、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、−CHCOORが好ましく、水素原子、メチル基、−CHCOORが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。Rは水素原子、炭素原子数1〜80のアルキル基であり、Rと同じでも異なってもよく、Rの炭素原子数は1〜70が好ましく、1〜60が更に好ましい。
【0043】
一般式(1)のポリマーの組成比に関して説明する。
xとしては3〜60モル%、好ましくは3〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%である。
yとしては、30〜96モル%、好ましくは35〜95モル%、特に好ましくは40〜90モル%である。
また、zが小さすぎるとゼラチンのような親水性保護コロイドとの親和性が減少するためマット剤の凝集・剥落故障の発生確率が高くなり、zが大きすぎると感光材料のアルカリ性の処理液に本発明のマット剤が溶解してしまう。そのため、zとしては0.5〜25モル%、好ましくは0.5〜20モル%、特に好ましくは1〜20モル%である。
wとしては、0.5〜40モル%、好ましくは0.5〜30モル%である。
【0044】
一般式(1)において、xは3〜40モル%、yは40〜90モル%、zは0.5〜20モル%、wは0.5〜30モル%の場合が特に好ましい。
一般式(1)で表されるポリマーとしては、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。
【0045】
【化3】

【0046】
上記式中、a、b、c、及びdは各モノマー単位のモル比率を表し、aは3〜60(モル%)、bは30〜96(モル%)、cは0.5〜25(モル%)、dは0.5〜40(モル%)を表す。
aの好ましい範囲は上記xの好ましい範囲と同じであり、bの好ましい範囲は上記yの好ましい範囲と同じであり、cの好ましい範囲は上記zの好ましい範囲と同じであり、dの好ましい範囲は上記wの好ましい範囲と同じである。
【0047】
本発明におけるラテックスポリマーは、前記一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)以外のモノマーユニットを含んでもよい。該一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)以外のモノマーユニットを形成するためのモノマーとしてはアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、オレフィン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、ビニル異節環化合物、グリシジルエステル類、不飽和ニトリル類などが挙げられる。これらのモノマーとしては特許第3754745号公報の[0010]〜[0022]にも記載されている。
疎水性の観点からアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類が好ましく、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート又はヒドロキシアルキルアクリレートがより好ましい。本発明におけるラテックスポリマーは、前記一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)以外に下記一般式(E)で表されるモノマーユニットを含むことが好ましい。
【0048】
【化4】

【0049】
上記式中、LEはアルキレン基を表す。
Eは炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0050】
一般式(1)で表されるポリマーとしては、下記一般式(3)で表されるポリマーが特に好ましい。
【0051】
【化5】

【0052】
上記式中、a1、b1、c1、d1、及びe1は各モノマー単位のモル比率を表し、a1は3〜60(モル%)、b1は30〜95(モル%)、c1は0.5〜25(モル%)、d1は0.5〜40(モル%)、e1は1〜10(モル%)を表す。
a1の好ましい範囲は上記xの好ましい範囲と同じであり、b1の好ましい範囲は上記yの好ましい範囲と同じであり、c1の好ましい範囲は上記zの好ましい範囲と同じであり、d1の好ましい範囲は上記wの好ましい範囲と同じである。
e1は1〜10モル%であり、好ましくは2〜9モル%であり、より好ましくは2〜8モル%である。
【0053】
前記一般式(1)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
一般式(1)で表されるポリマーの質量平均分子量は、1000〜100万が好ましく、2000〜75万がより好ましく、3000〜50万が更に好ましい。
【0057】
一般式(1)で表されるポリマーは、例えば特許第3305459号及び特許第3754745号公報などを参照して合成することができる。
【0058】
ポリマーラテックスはポリマーと分散剤を含有することが好ましく、分散剤は不純物になってしまうためマイグレーションの観点から、分散剤の含有量はより少ないほうが好ましいが、分散剤を全く含有しないようにすることは分散性の観点から難しい。よって、ポリマーラテックスにおいて、ポリマーに対する分散剤の含有量(分散剤の質量/ポリマーの質量)は分散性及びマイグレーションの観点から5%以下(0.05以下)であることが好ましく、3%以下(0.03以下)であることが好ましく、1%以下(0.01以下)であることが好ましい。また、含水率と不純物の観点からは0.3%以上(0.003以上)が好ましく、0.5%以上(0.005以上)がより好ましい。
【0059】
本発明において、前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)は、造膜した際の含水率及び導電性の観点から1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.1以上3.5以下であることが更に好ましく、1.5以上3.5以下であることが更により好ましく、1.5以上3.0以下であることが特に好ましく、2.0以上2.5以下であることが最も好ましい。
【0060】
本発明における導電層の金属銀と前記ポリマーラテックスの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)は含水率と導電性の観点から1〜10であることが好ましく、2.3〜7.5であることがより好ましく、2.6〜5.2であることが更に好ましく、3.1〜4であることが特に好ましく、3.1〜3.9であることが最も好ましい。
【0061】
本発明において、前記導電層の金属銀と前記バインダー部(ポリマーラテックスと水溶性高分子の合計)との質量比(金属銀/バインダー部)は、含水率と導電性の観点から、1.8以上3.8以下であることが好ましく、2.0以上3.1以下であることがより好ましく、2.2以上2.6以下であることが更に好ましい。
【0062】
本発明の感光性層形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
感光性層に用いられる溶媒の含有量は、感光性層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。例えば、各種マット剤を用いることができ、これにより、表面粗さをコントロールすることができる。なお、マット剤は現像処理後に残存し透明性を阻害しない、処理工程で溶解する素材のものが好ましい。
【0064】
(その他の層構成)
本発明においては感光性層の上に保護層を設けてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンなどの水溶性高分子やポリマーラテックスなどの疎水性高分子からなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する感光性層上に形成される。その厚みは0.05μm以上0.5μm以下が好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。
保護層は水溶性高分子(好ましくはゼラチン)とポリマーラテックスを含有することが好ましく、ポリマーラテックスと水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.1以上3.5以下であることが更に好ましく、1.5以上3.5以下であることが更により好ましく、1.5以上3.0以下であることが特に好ましく、2.0以上2.5以下であることが最も好ましい。
本発明において、保護層は、露光、現像処理前の感光性層上に設けられていてもよい。また、露光、現像処理前の感光性層上にはなく、導電層やバインダー部を形成した後に保護層を設けてもよい。
本発明における感光性層と透明支持体との間には、アンチハレーション層57及び67を設けることができる。アンチハレーション層に用いる材料とその使用方法については、特開2009−188360号の段落29から32の記載を参照することができる。アンチハレーション層の光学濃度は露光光の強さや波長によっても異なるが、0.5から3.0程度が好ましい。
また、本発明においては感光性層と透明支持体との間には、前記アンチハレーション層以外の下塗り層を設けることができる。
【0065】
次に、以上に記載した本発明の材料を用いて、本発明の導電シートを作るプロセスについてより詳細に説明する。
図2の(a)は透明支持体32であり、(b)はこの透明支持体上に感光材料層51を塗布により設けた感光材料を表し、(c)は感光材料に図示しないフォトマスクを通して露光し、露光部111と未露光部112が形成された模式図を表し、(d)は、露光に引き続く現像定着処理により形成された現像銀電極101とバインダー部102を表す。以下では露光以降の各工程について説明する。
【0066】
[露光]
本発明における感光材料は、透明支持体の少なくとも一方の面に感光性層が形成された感光材料である。図2の(c)のように感光材料の感光性層を有する側に光を照射して露光する。光照射は、感光材料にフォトマスクを介して行う。マスクの開口部を透過した光は感光性層のハロゲン化銀乳剤に潜像を形成する。この潜像が形成された部分は、次の現像処理により現像銀のパターンを形成する。マスクの遮光部により露光されなかった、感光材料の未感光部は定着処理により感光しなかったハロゲン化銀乳剤粒子が溶解し層内から流出し、透明な膜となる。
【0067】
(現像処理)
本実施の形態では、感光性層を露光した後、更に現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
上記定着工程における定着温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、更に好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、更に好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して600ml/m以下が好ましく、500ml/m以下が更に好ましく、300ml/m以下が特に好ましい。
現像、定着処理を施した感光材料122は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理又は安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。
現像処理後の露光部(導電パターン)に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープ、また、現像処理液中に、ポリエチレンオキサイド誘導体を含有すること等が挙げられる。
【0068】
(加熱処理)
本発明においては、前記感光材料を現像処理し、該現像処理された感光材料に加熱処理を行うことが好ましい。該加熱処理により、ポリマーラテックスの造膜を行うことができる。加熱処理における温度の好ましい範囲は前述のとおりである。該加熱処理は乾燥工程を兼ねることもできる。
該加熱処理は、前記好ましい温度範囲に加え、バインダーである水溶性高分子(好ましくはゼラチン)を膨潤させる観点から相対湿度5%以上で行うことが好ましく、相対湿度50%以上がより好ましく、相対湿度80%以上が更に好ましい。水溶性高分子が膨潤することで、ポリマーラテックスの造膜をしやすくなるため好ましい。
加熱処理は、現像工程の水洗後の乾燥温度を上げるなどにより行うことができる。
【0069】
(現像処理後の硬膜処理)
感光性層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、カリ明礬、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号に記載のものを挙げることができる。
以上の工程を経て透明導電シートが得られるが、得られた透明導電シートの表面抵抗は0.1〜100オーム/sq.の範囲にあることが好ましく、1〜50オーム/sq.の範囲にあることが更に好ましく、1〜10オーム/sq.の範囲にあることがより好ましい。
また、得られた透明導電シートの体積低効率は160μオームcm以下であることが好ましく、1.6〜16μオームcmの範囲にあることが更に好ましく、1.6〜10μオームcmの範囲にあることがより好ましい。
【0070】
(カレンダー処理)
本実施の形態の製造方法では、現像処理済みの透明導電シートに平滑化処理を施す。これによって透明導電シートの導電性が顕著に増大する。平滑化処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm)、面圧に換算すると699.4kgf/cm)以上、更に好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダー種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0071】
(蒸気に接触させる処理)
そして、本実施の形態の製造方法では、平滑化処理された導電パターンを蒸気に接触させるようにしてもよい(蒸気接触工程)。この蒸気接触工程は、平滑化処理された透明導電シートを、過熱蒸気に接触させる方法と、平滑化処理された導電パターン108を、加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)に接触させる方法とがある。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
【0072】
(水洗処理)
本実施の形態の製造方法では、透明導電シートを過熱蒸気又は加圧蒸気に接触させた後に水洗処理することが好ましい。蒸気接触処理後に水洗することで、過熱蒸気又は加圧蒸気で溶解又は脆くなったバインダーを洗い流すことができ、これにより、導電性を向上させることができる。
【0073】
(キセノンフラッシュ)
本実施の形態の製造方法では、透明導電シートにキセノンフラッシュを行うことが好ましい。キセノンフラッシュを行うことで現像銀を融着させ、短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。
【0074】
(めっき処理)
本実施の形態においては、上述した平滑化処理を行ってもよいし、透明導電シートに対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、更に表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
本発明においては導電性細線が銀と銅の合金を含有してなることも好ましい。
【0075】
(酸化処理)
本実施の形態では、現像処理後の透明導電シート、並びに、めっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0076】
(銀難溶剤)
本発明の透明導電シートは、バインダー部に、更に銀難溶剤を含有するか、又はバインダー部が銀難溶剤に浸漬されたものであることが好ましい。銀難溶剤により金属のイオン化を防止することができ、マイグレーション耐性が向上する。銀難溶剤としては、pKspが9以上であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。銀難溶剤としては特に限定されないが、例えばTTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)などが挙げられる。
なお、銀の溶解度積Kspはこれらの化合物の銀イオンとの相互作用の強さの目安になる。Kspの測定方法は「坂口喜堅・菊池真一,日本写真学会誌,13,126,(1951)」と「A.Pailliofet and J.Pouradier,Bull.Soc.chim.France,1982,I−445(1982)」を参照して測定することができる。
銀難溶剤の添加量は、金属配線部に1mg/m〜500mg/m吸着されていることが好ましく、1mg/m〜300mg/m吸着されていることがより好ましい。
【0077】
以上のプロセスを経て形成された導電性細線からなる導電シート10は、複数の導電性細線からなるパターニングされた電極である。
導電性の格子部を形成する導電性細線の線幅は、1μm以上、20μm以下であることが好ましく、2μm以上、6μm以下であることがより好ましい。1μm以上、20μm以下の範囲であると、低抵抗の電極を比較的容易に形成できる。
導電性の格子部を形成する導電性細線の厚みは、0.1μm以上、1.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.8μm以下であることがより好ましい。0.1μm以上、1.5μm以下の範囲であると、低抵抗の電極で、耐久性に優れた電極を比較的容易に形成できる。
本発明の導電性細線からなる導電性パターンは、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることが更に好ましい。透明導電シートをタッチパネルの電極として用いる場合などは開口率などの観点から格子状パターンであることが好ましく、導電性格子部の一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の長さが、3〜10mmであると、感知する静電容量の不足による検出不良になる可能性や、位置検出精度が低下するといった問題を起こしにくい。同様の観点から、導電性格子部を構成する単位格子の一辺の長さは50〜500μmであることが好ましく、150〜300μmであることが更に好ましい。単位格子の辺の長さが上記範囲である場合には、更に透明性も良好に保つことが可能であり、表示装置の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0078】
本発明の透明導電シートは成形性に優れるため、様々な用途に用いることができる。
本発明の透明導電シートを100%延伸したときの電気抵抗値をRb、延伸する前の電気抵抗値(初期値)をR0とした場合、Rb≦(2×R0)を満足することが好ましい。このような透明導電シートを得るためには、真空成型、圧空成型、熱プレス成型などが有効である。
【0079】
次に、本発明の透明支持体上に形成されたパターニングされた電極について、本発明の透明導電シートが好ましく用いられる静電容量方式のタッチパネルと関連させながら説明する。従来の静電容量方式のタッチパネルでは、電極材料として透明電極材料であるITO薄膜をバー電極として使用されてきたが、本発明においてはITOより低抵抗の材料を用いた導電性細線の組み合わせにより電極を形成しているため、これをパターニングされた電極と呼んでいる。
本発明の透明導電シートを用いる静電容量方式のタッチパネルは、図4に示したように、透明支持体32の両面に、上部電極(おもて面電極とも言う)11と下部電極(うら面電極とも言う)12とが形成されていてもよい。
また、図5〜7のように片面に電極を有する透明導電シートを2枚用いた静電容量方式のタッチパネルであってもよい。
【0080】
以上のパターニングされた電極から構成される導電シートは、1つの電極を1つのITO膜にて形成する構成よりも大幅に電気抵抗を低減することが可能となる。従って、本発明の導電シートを用いて例えば投影型静電容量方式のタッチパネルに適用した場合に、応答速度を速めることができ、タッチパネルの大サイズ化を促進させることができる。
【0081】
本発明の上記の透明導電シートは、種々の用途に用いることができ、用途は特に限定されないが、例えば、各種電極(例えばタッチパネル用電極、無機EL素子用電極、有機EL素子用電極又は太陽電池用電極)、発熱シート、及びプリント配線基板などとしても使用することができる。本発明の上記の透明導電シートは、タッチパネルに用いられることが好ましく、静電容量方式のタッチパネルに特に好ましく用いられる。また、本発明の導電シートは、パーソナルコンピュータやワークステーション等から発生する電波、マイクロ波(極超短波)等の電磁波を遮断し、かつ静電気を防止する電磁波遮断ネットを用いたパソコンや電子医療機器等のシールド・カバーやビル内の部屋等を電磁波シールドするカーテンに使用できる。また、本発明の導電シートは、柔軟性を有し、静電気防止効果、抗菌効果、防カビ効果も有する。また、パソコン本体の電磁波シー ルド・カバー、映像撮影機器のシールド・カバー、電子医療機器のシールド・カバーとして用いてもよい。
【0082】
なお、本発明は、下記表1に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。但し、日本の公開公報は、2004−221564のように年号のあとをハイフンで表示し、国際公開パンフレットは、2006/001461のように年号のあとをスラッシュで表示した。
【0083】
【表1】

【実施例】
【0084】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液及び3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、更に、下記の2液及び3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。更に、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0086】
1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 8g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0087】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。更に3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作を更に1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に得られた乳剤は、沃化銀を0.08モル%含み、塩臭化銀の比率を塩化銀70モル%、臭化銀30モル%とする、平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤であった。
【0088】
(感光性層塗布液−1の調製)
上記乳剤に1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10−2モル/モルAg、クエン酸3.0×10−4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩0.90g/モルAg、微量の硬膜剤を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整して、感光性層塗布液を調製した。
(ポリマーラテックスの添加)
上記感光性層塗布液に、含有するゼラチンに対し(P−1)で表されるポリマーとジアルキルフェニルPEO硫酸エステルからなる分散剤を含有するポリマーラテックス(分散剤/ポリマーの質量比が2.0/100=0.02)とをラテックス/ゼラチン(質量比)=0.5/1になるように添加した。
以上のようにして感光性層塗布液−1を調製した。
【0089】
(感光材料−1の作製)
100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにコロナ放電処理を施した後、厚み0.1μmのゼラチン下塗り層を設けて支持体とした。この支持体に、上記で調製、準備した感光性層塗布液−1を塗布した。得られた塗布試料(感光材料−1)の感光性層(乳剤層)は、銀量7.5g/m、セラチン量0.95g/m、乳剤層の銀/ゼラチン体積比率が1/1であった。
【0090】
(露光・現像処理)
マイグレーション評価用サンプルとして、上記で作成した感光材料−1に、図8に示す試験パターンの現像銀像を与えうるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。試験パターンは、IPC−TM650orSM840に準拠したパターンで、ライン幅が50μm、スペース幅が50μmで、ライン数は17本/18本である(以下くし型パターン電極と呼ぶ)。露光後、下記の現像液で現像し、更に定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、乾燥してくし型パターン電極を得た。
次に、導電性評価用サンプルとして、上記で作成した感光材料−1に、露光機を用いて露光を施した。光源には高圧水銀ランプを用い、格子状のパターン形成用のマスクを用いて露光した。用いたマスクの光透過用の窓は、格子を形成する単位正方格子の線幅は3μm、格子の辺長は300μmである。
露光後、下記の現像液で現像し、更に定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、乾燥した。このようにして、金属銀を含有する導電性細線からなる電極を作製した。
【0091】
(現像液の組成)
現像液1リットル(L)中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0092】
(加熱処理:ポリマーラテックスの造膜)
上記で得られたくし型パターン電極と導電性細線からなる電極は、現像処理での水洗後の乾燥工程で60℃/1minで加熱処理した。加熱処理の結果、バインダー部に含有されるポリマーラテックスが造膜される。
このようにしてくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料1を作製した。
【0093】
(評価)
(1)バインダー部の60℃、90%RHで20日間経時させた後の平衡含水率
バインダー部の60℃、90%RHでの平衡含水率を測定するために、100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に下塗り層を設けた支持体上に、上記で調製したそれぞれの感光性層塗布液を塗布した。得られた感光材料に、露光を行わず上記の現像処理を行い、ハロゲン化銀のみ抜き、上記の加熱処理を行い、電極を有さずバインダー部のみ有する試料をそれぞれ作製した。
バインダー部の60℃、90%RHでの平衡含水率は以下のように算出した。
バインダー部の経時含水率(%)=〔{(W20−W)−(W10−W)}/(W10−W)〕×100
ここで、W10は120℃、4時間経時させた後(絶乾状態)の試料の質量であり、W20は60℃、90%RHで20日間経時させた後の試料の質量であり、WはPETフィルムの質量である。
【0094】
(2)マイグレーション耐性の評価
くし型パターン導電シート試料について以下の評価を行った。
図8に示すように、電子回路におけるライン間は絶縁されている。この電子回路に対して電圧を掛けた状態での経時により、マイグレーションが発生するかどうか試験を行った。マイグレーションが発生した場合、樹状の金属(デンドライド)が成長しライン間を短絡することによって絶縁破壊が起きる。
作製したくし型パターン電極の両端の電極(図中の黒い部分)に配線を接続し、片側から、60℃90%RHの湿熱雰囲気下で、直流5Vの電流を連続的に印加した。試験を一時的に中断し、60℃90%RHの雰囲気下から取り出し、アドバンテスト社製のR8340Aを用い、直流10Vの印加電圧を掛け、絶縁性抵抗値を測定した。
また、マイクロスコープによりデンドライドの発生・成長を観察した。
絶縁抵抗性については、印加時間500時間後に測定し、以下の様に評価した。
○:絶縁抵抗値が1010Ω以上
△:絶縁抵抗値が10Ω以上1010Ω未満
×:絶縁抵抗値が10Ω未満
また、試験を一時的に中断し観察したときにデンドライドが発生しているかどうかを確認し、以下の様に評価した。
○:デンドライドの発生、及び5μm以上の成長無し
△:デンドライドの発生有り、5μm以上の成長無し
×:デンドライドの発生有り
【0095】
(3)導電性の評価
透明導電シートの電極の表面抵抗値を直読し以下の基準で評価した。
○:102Ω/□未満
△:102Ω/□以上、103Ω/□未満
×:103Ω/□以上、10Ω/□未満
××:抵抗値が測定できない。10Ω/□以上
【0096】
(感光材料−2〜感光材料−9の作製)
上記感光性層塗布液−1の調製において、ポリマーラテックス/ゼラチン(質量比)を下記表2に示すように変更した以外は、感光材料−1の作製と同様にして感光材料−2〜感光材料−9を作製した。
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料2〜9の作製)
上記感光材料−2〜感光材料−9を用いて、前記と同様にくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料2〜9を作製した。
【0097】
(感光材料−10〜感光材料−17の作製)
上記感光性層塗布液−1の調製において、ポリマーラテックスの種類、及びポリマーラテックス/ゼラチン(質量比)を下記表2に示すように変更した以外は、感光材料−1の作製と同様にして感光材料−10〜感光材料−17を作製した。
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料10〜17の作製)
上記感光材料−10〜感光材料−17を用いて、前記と同様にくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料10〜17を作製した。
【0098】
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料18〜24の作製)
上記感光材料−4の感光性層上に下記表2に示すようなゼラチンとポリマーラテックス組成の保護層を膜厚0.15μmで設けた以外は同様にして、くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料18〜24を作製した。試料18の保護層はゼラチンのみを用いた。
また、試料18〜24については保護層を設けた後に(保護層の含水も含めて)含水率を上記式で算出した。
【0099】
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料25〜28の作製)
上記感光材料−4を用いて作製されたくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料4に対して、現像後の加熱処理(ポリマーラテックスの造膜)における加熱温度を下記表2に示すように変更した以外は同様にしてくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料25〜28を作製した。
【0100】
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料29〜32の作製)
上記感光材料−1〜感光材料−4を用いて、前記と同様にくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料を作製し、その後、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)に5分間浸漬し、その後1分間水洗したくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料29〜32を作製した。
【0101】
(くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料33〜36の作製)
上記感光材料−1〜感光材料−4を用いて、前記と同様にくし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料を作製し、その後、銅めっきを行い、くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料33〜36を作製した。
【0102】
くし型パターン導電シート試料及び透明導電シート試料2〜36についても、試料1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
【化8】

【0105】
以上の結果から、透明導電シートにおいて、バインダー部の含水率を10%以下とすることで、マイグレーション耐性を付与することができることがわかる。
【符号の説明】
【0106】
10 導電シート
101 導電層
102 バインダー部
111 露光部
01 タッチパネル
05 透明導電シートを製造するための感光材料
11 上部電極(おもて面電極)
12 下部電極(うら面電極)
21 上部電極を構成する導電性細線
22 下部電極を構成する導電性細線
30、31 タッチ面を兼ねる透明支持体
32 導電シート用の透明支持体
33 透明支持体
41、42 絶縁層を兼ねる粘着層
50 上部感光材料層(おもて面感光材料層)
51 上部感光性層(おもて面感光性層)
52 上部第一感光性層(上部u層)
53 上部第二感光性層(上部m層)
54 上部第三感光性層(上部o層)
55 上部保護層
56 上部下塗り層
57 上部アンチハレーション層
60 下部感光材料層(うら面感光材料層)
61 下部感光性層(うら面感光性層)
62 下部第一感光性層(下部u層)
63 下部第二感光性層(下部m層)
64 下部第三感光性層(下部o層)
65 下部保護層
66 下部下塗り層
67 下部アンチハレーション層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、前記導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、
前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。
【請求項2】
前記バインダー部が、ポリマーラテックスと水溶性高分子とを含有し、前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1以上である、請求項1に記載の導電シート。
【請求項3】
前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1.5〜3.5である、請求項2に記載の導電シート。
【請求項4】
前記金属銀と前記ポリマーラテックスとの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)が1〜10である、請求項2又は3に記載の導電シート。
【請求項5】
支持体上に、ハロゲン化銀と、ポリマーラテックスを含むバインダーとを含有する感光性層を形成し、該感光性層を露光、現像処理した後に更に加熱処理することにより形成された金属銀を含有する導電性細線からなる導電層と、該導電性細線間に存在するバインダー部とを有する導電シートであって、前記バインダー部の含水率が10%以下であり、前記導電層の表面抵抗が1000オーム/sq.以下である、導電シート。
【請求項6】
前記加熱処理における温度が40℃以上である、請求項5に記載の導電シート。
【請求項7】
前記バインダーが水溶性高分子であり、前記ポリマーラテックスと前記水溶性高分子との質量比(ポリマーラテックス/水溶性高分子)が1以上である、請求項5又は6に記載の導電シート。
【請求項8】
前記水溶性高分子がゼラチンである、請求項2〜4のいずれか1項又は請求項7に記載の導電シート。
【請求項9】
前記加熱処理が40℃以上かつ相対湿度5%以上で行われる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の導電シート。
【請求項10】
前記金属銀と前記ポリマーラテックスの質量比(金属銀/ポリマーラテックス)が2.3〜7.5である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の導電シート。
【請求項11】
前記ポリマーラテックスにおけるポリマーが、下記一般式(1)で表される共重合体である、請求項2〜10のいずれか1項に記載の導電シート。
一般式(1): −(A)x−(B)y−(C)z−(D)w−
一般式(1)中、A、B、C、及びDはそれぞれ下記モノマー単位を表す。x、y、z、及びwは各モノマー単位のモル比率を表し、xは3〜60(モル%)、yは30〜96(モル%)、zは0.5〜25(モル%)、wは0.5〜40(モル%)を表す。
【化1】


上記式中、
はメチル基又はハロゲン原子を表す。pは0〜2の整数を表す。
はメチル基又はエチル基を表す。
は水素原子又はメチル基を表す。Lは2価の連結基を表す。qは0又は1を表す。
は炭素原子数5〜80のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
は水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、又は−CHCOORを表す。
は水素原子又は炭素原子数1〜80のアルキル基を表す。
【請求項12】
前記ポリマーラテックスが、更に分散剤を含有し、該ポリマーラテックスにおける該分散剤とポリマーとの質量比(分散剤/ポリマー)が0.05以下である、請求項2〜11のいずれか1項に記載の導電シート。
【請求項13】
前記バインダー部に更に銀難溶剤を含有する、又は前記バインダー部が銀難溶剤への浸漬処理を施されたものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電シート。
【請求項14】
前記導電シートを100%延伸したときの電気抵抗値をRb、延伸する前の電気抵抗値(初期値)をR0とした場合、Rb≦(2×R0)を満足する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電シート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234695(P2012−234695A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102254(P2011−102254)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】