説明

導電トナー及びその現像方法

【課題】 電子写真や静電印刷におけるプロセスにおいて、異定形金属粉の混練時の破断による機能の阻害がなく、導電パターンとしての導電性が優れた導電トナー及びその現像方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂中への金属粉の分散を有する構造で、前記熱可塑性樹脂の常温での溶解液中で前記金属粉が分散されて得られる導電トナーとキャリアが混合された現像剤を、現像バイアス電位が印加された現像剤搬送部材の表面上に担持しつつ静電潜像担持体表面に搬送し、この静電潜像担持体上の静電潜像を前記導電トナーによって現像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真や静電印刷に用いられる導電トナーおよびその現像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真や静電印刷における現像プロセスとは、端的に説明すれば、帯電した殆どの場合絶縁性の着色粒子(トナー)を、静電潜像に選択付着させることにより、該静電潜像を該トナーによって可視像化するプロセスである。得られた可視像は必要に応じ、紙等の記録媒体へ転写、更には定着されて所望の印刷物、印字物等が得られる。
【0003】
この絶縁性着色粒子(トナー)の代わりに、金属粉や導電トナー等の導電性粒子を用いて静電潜像を現像し、導電性粒子による像形成、パターン形成を行うことが試みられてきている。これらの目的は、得られた導電性粒子等による画像パターンを、必要であれば焼成等の後処理を施して電気回路としての導電性を付与し、プリント基板やRFIDタグのアンテナ、半導体集積素子内等の電気回路を形成しようとするものである。
【0004】
本発明者らは先に、特願2010−133942号において金属粉そのものによる現像方法についての出願を行った。本願では金属粉の代わりに、導電トナーを用いた現像方法について検討を行い、本願発明に至った。
【0005】
導電トナーとは、熱可塑性の樹脂中に導電性の金属粉を分散させた構造を持ち、金属粉がいわゆる導電フィラーとして機能し、バルクとしての導電性を発現できるようにしたものである。該金属粉の導電フィラーとして機能を向上する為に、金属粉の粒度分布をブロードにして空間充填率を上げたり、金属粉の形状をフレーク状、針状などのいわゆる異定形とすることで、金属粉相互の接触確率、接触点を増やすといったことが行われることが多い。
【0006】
また、金属粉としては金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどや、これらを成分とする合金が用いられることが多い。さらには金属ではないが良導電体であるカーボンブラック粉も用いられることも多い。本明細書では導電フィラーとして用いられるカーボンブラック粉も、便宜上金属粉に含むものとする。
【0007】
このような導電トナーを電子写真的に現像し、得られた現像パターンを、必要であれば基材へ転写後、加熱溶融等してプリント基板等の導電パターンを得る試みが、特許文献1,2等に開示されているように幾度となく試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−257696号公報
【特許文献2】特開平11−251718号公報
【特許文献3】特公昭59−24416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような導電トナーによる導電パターンの形成において、次のような問題があることが本発明者らの検討の結果明らかとなった。
【0010】
前述のように導電トナーでは、導電フィラーである金属粉を樹脂中に均一に分散させることが重要である。この為、従来技術においては、一般的なトナーと同様の製法を用い、熱可塑性樹脂粉(粒)と該金属粉を混合し、該混合物をエクストルーダ、ニーダ、ロールミル等周知の混練装置にて加熱しつつ溶融混練することが行われている。
【0011】
ところが、溶融混練時の樹脂は加熱されているとはいえ、100〜10000Pa・s(10〜10cP)程度の粘度であるのが通常であり、従って、分散しようとしている金属粉にも混練時に過大な応力がかかることがある。この為、特にフレーク状や針状の異定形金属粉の場合には、金属粉が丸まったり折れ曲がったり等の変形をしたり、引きちぎられたり、剪断を受けて破断したりすることが起こる。こうなると、せっかく異定形金属粉を投入したにもかかわらず、単により小径の定形に近い導電フィラーとしてしか機能せず、結果、バルクすなわち導電パターンとしての導電性が発現しにくいという問題がある。
【0012】
さらに、溶融混練時の加熱温度も100℃から200℃程度が通常であり、この為、金属粉が銅などのやや反応性の高いものであった場合には、その表面が樹脂と反応して、絶縁性の変質層を形成してしまう恐れもある。その結果、導電フィラーとしての機能が低下し、結果、バルクすなわち導電パターンとしての導電性が発現しにくいという問題も考えられる。
【0013】
本発明の目的は、特にフレーク状や針状の異定形金属粉が、混練時に破断されてフィラーとしての金属粉の機能が阻害され、結果、バルクすなわち導電パターンとしての導電性が低下してしまうといった問題のない、導電トナーやその現像方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の別の目的は、溶融混練時に金属粉の表面が樹脂と反応して絶縁性の変質層を形成してしまい、その結果、導電フィラーとしての機能が低下し、結果、バルクすなわち導電パターンとしての導電性が発現しにくいという問題のない、導電トナーやその現像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明においては、熱可塑性樹脂中に金属粉を分散した構造を有する導電トナーであって、前記熱可塑性樹脂の常温での溶解液中で前記金属粉を分散して得ることを特徴とする導電トナーが提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様としては、前記導電トナーにおいて、少なくとも前記熱可塑性樹脂と前記金属粉を、前記熱可塑性樹脂を可溶な溶剤中に常温環境下で溶解、分散させた後、前記溶剤を気化して得られた固形物を粉砕して得ることを特徴とする導電トナーが提供される。
【0017】
また、本発明のさらに好ましい態様としては、前記導電トナーにおいて、前記熱可塑性樹脂と前記金属粉の前記溶剤中への溶解、分散時に同時に混合される荷電制御剤をさらに有するものであることを特徴とする導電トナーが提供される。
【0018】
また、本発明の別の態様においては、前記導電トナーとキャリアを混合した現像剤を、現像バイアス電位が印加された現像剤搬送部材の表面上に担持しつつ静電潜像担持体表面に搬送し、前記静電潜像担持体上の静電潜像を前記導電トナーによって現像することを特徴とする現像方法が提供される。
【0019】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記キャリアが樹脂キャリアであることを特徴とする現像方法が提供される。
【0020】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記樹脂キャリアが、前記導電トナーの有する荷電制御剤とは逆極性の荷電特性を有する荷電制御剤を含有することを特徴とする現像方法が提供される。
【0021】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記現像バイアス電位が、前記静電潜像の非画像部電位と同一であることを特徴とする現像方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に依れば、熱可塑性樹脂の常温での溶解液中で金属粉が分散されるので、従来のような樹脂粉と金属粒を加熱しつつ溶融混練した場合の、フレーク状や針状の異定形金属粉が混練時に破断されたり、混練時に金属粉の表面が樹脂と反応して絶縁性の変質層が形成されたりして、フィラーとしての金属粉の機能が阻害され、その結果、導電パターンとしての導電性が低下するというような問題のない、導電トナーが実現できる。
【0023】
さらに、導電トナーもしくは樹脂キャリアに荷電制御剤を含有させることで、導電トナーの帯電量が大きくなり、現像性能を向上させることができる。また、現像バイアス電位と、背景部電位(非画像部電位)を同一とすることで、背景部への導電性粒子の付着のないコントラストの高い導電粉象が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る現像方法を用いる現像装置の一例を示す図である。
【図2】帯電量測定装置の概略図である。
【図3】実施例のキャリア、導電トナーの帯電量を示す図である。
【図4】キャリア実施例1、導電トナー実施例1による導電トナー像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の導電トナーならびに現像方法を用いる現像装置を、図1ほかを用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に関わる現像方法が適用される現像装置1の断面構成図である。一般的な二成分現像方式の現像装置と同様の構成である。導電トナーと樹脂キャリアの混合物である現像剤(図示せず)を収容する現像槽2に、現像剤搬送部材たる現像ローラ3、現像剤を撹拌するための撹拌ローラ4などが配されている。現像ローラ3には図示しない高圧電源が接続されており、現像バイアス電位が印加される。
【0027】
現像ローラ3は外径31.4mmの非磁性ステンレス製スリーブ6と、その内部に現像装置1本体に対し固定された磁石体5とからなる。磁石体5には5極の固定磁極5aが埋設されている。この固定磁極5aが静電潜像担持体たる感光ドラム9と対向し、現像に関わる現像主極である。
【0028】
スリーブ6は図中矢印Aの方向に図示しない駆動機構によって回転され、その表面上に担持した現像剤を現像主極位置まで搬送する。搬送される現像剤量はドクターブレード7によって規制され、一定量の現像剤が現像主極位置に搬送される。ドクターブレード7は、真鍮製で現像ローラ3表面と0.35mmの間隙を持って対向する。現像主極位置で主極の形成する磁界によって、高さ1.0mmの現像剤穂が形成される。現像剤穂の高さは種々公知の方法で測定できる。
【0029】
現像ローラ3両端部には現像ローラ3直径より大径の突き当て規制コロ(図示せず)が現像ローラ3に対し回転自在に配されている。突き当て規制コロは対向する感光ドラム9の素管部に当接し、感光ドラム9と現像ローラ3間に現像ギャップを形成する。突き当てコロの直径は32.6mm、感光ドラム9表面の感光層厚みは0.03mmであるので、感光層に対し0.57mmの現像ギャップが形成される。
【0030】
尚、図1では現像ローラ3と感光ドラム9の間隙、即ち現像ギャップは他の部材の寸法に比し誇張して描かれている。前述の通り現像剤穂の高さは1.0mmであり、現像剤穂は感光層すなわち静電潜像担持体と接触して現像が行われる。
【0031】
次に現像剤について述べる。本発明に関わる現像剤は、樹脂キャリアを用いた一般的な電子写真や静電印刷に用いられる二成分現像剤のトナーを、以下に述べる導電性トナーに置き換えたものとみなしてよい。
【0032】
さて、一般的な二成分現像方式においては、トナーとキャリア粒子を混合したものを現像剤としてを用いるのは公知の通りである。二成分現像方式で用いられるキャリア粒子(以下単にキャリアと呼ぶ)としては大きく2種類のものが知られている。
【0033】
一つは、鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性粒子を母材粒子として、その粒子表面にアクリル系、シリコーン系、フッ素系等の樹脂層をコートした構造のものである。本明細書ではこの種のキャリアをコート系キャリアと呼ぶこととする。製法が比較的簡単、コート層の材質によって荷電特性を広く制御できる、と言った特徴を有し、汎く用いられている。尚、コート層を持たない鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性粒子をそのままキャリアとして用いる場合もあるが、本明細書ではこれらもコート系キャリアに含めるものとする。
【0034】
もう一方は、特許文献3等に開示されているが、樹脂中に磁性体粒子を分散させた構造を持った、樹脂キャリア、磁性体分散型キャリアなどと呼ばれるものである。本明細書ではこれを樹脂キャリアと呼ぶこととする。一般的な粉砕トナー同様に、樹脂、磁性体微粉その他原材料を混練溶融し、粉砕、分級して製造されることが多い。コートキャリアに比して、製法が複雑で、高価と言ったデメリットを有するものの、低磁化のため現像時の機械的ストレスが小さく、高画質、長寿命と言った長所を持つ。尚、粉砕、分級して得られた樹脂キャリアに、コート系キャリア同様にさらにコート層を設けたキャリアもあるが、ここではこの構造のものは樹脂キャリアに含めるものとする。
【0035】
以下に、樹脂キャリアの実施例を示す。
【0036】
樹脂キャリア実施例1
スチレンアクリル系樹脂(エスレックP-502、積水化学工業(株)社製)25重量%、 磁性体(KBF−100SR、関東電化工業社製)73重量%、 荷電制御剤(「ボントロン」E−84、オリエント化学社製)2重量%の各成分を十分混合した後、2軸押出機(PCM−30、池貝鉄鋼株式会社製)で溶融混練を行った。この混練物を冷却後、直径2mmのスクリーンを有する粗粉砕機(UG−210KGS、朋来鉄工所製)を用いて粗粉砕した。更に、これを中粉砕機(「ファインミル」FM−300N、日本ニューマチック工業株式会社製)で中粉砕した後、微粉砕機(「セパレーター」DS−5UR、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて分級し、体積平均粒径40μmの樹脂キャリアを得た。尚、ボントロンE−84はマイナスの荷電制御剤(それ自体がマイナスに帯電する)であるので、一般的な二成分現像用のキャリアに用いる場合は、プラストナーと組み合わせるキャリアに用いることの多い荷電制御剤である。
【0037】
樹脂キャリア実施例2
実施例2の樹脂キャリアは、実施例1の樹脂キャリア組成の内、荷電制御剤を含んでいないものであり、その他の原料、製法は実施例1と全く同じものである。
【0038】
本実施例ではいずれもスチレンアクリル系樹脂を用いているが、これらに限定されるものではなく、他に、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、フェノール樹脂、等の熱可塑性樹脂も使用可能である。
【0039】
また、荷電制御剤としても、プラス用としてはニグロシン系の油溶染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルアミンなど、マイナス用としては、バラチン染料、オラゾール染料等の金属錯塩染料系などが使用可能である。
【0040】
次に導電トナーの実施例を示す。
【0041】
導電トナー実施例1
スチレンアクリル系樹脂、フェレ径で0.1から10μmのフレーク状純銀粉、荷電制御剤としてのボントロンN−01(オリエント化学社製)を質量比で73:25:2で混合し、該混合物を常温のトルエン(溶剤)に溶解、分散させ濃度20wt%の溶解分散液を作成した。なお、溶剤としてはトルエンに限定されるものではなく、これら熱可塑性樹脂を可溶な溶剤が使用可能である。
【0042】
なお、本願でいう常温とは、およそ20°C前後を指すが、0°C〜40°C程度、好ましくは10°C〜30°C程度の範囲内の温度をいう。また、作成した溶解分散液の粘度は5×10−2Pa・s(0.5cP)であった。
【0043】
この溶解分散液を、ステンレス板状に塗布、自然乾燥させ厚み0.5mm程度の薄片状の固形物を得た。該固形物をすり鉢で粗粉砕した後、小型気流粉砕機(セイシン企業、A-Oジェットミル)にて平均粒径15μmに粉砕し、導電トナーを作製した。
【0044】
導電トナー実施例2
実施例2の導電トナーは、実施例1の導電トナーの組成の内、荷電制御剤としてのボントロンN−01(オリエント化学社製)を含まず、スチレンアクリル樹脂と銀粉の混合比を75:25としたものである。以下同様にして平均粒径15μmの導電トナーを得た。
【0045】
導電トナー実施例1、2ともスチレンアクリル系樹脂を用いているが、これに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、フェノール樹脂、等の熱可塑性樹脂も使用可能である。また、溶剤としてもトルエンに限定されるものではなく、これら熱可塑性樹脂を可溶な溶剤が使用可能である。
【0046】
また、荷電制御剤としても、プラス用としてはニグロシン系の油溶染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルアミンなど、マイナス用としては、バラチン染料、オラゾール染料等の金属錯塩染料系などが使用可能である。
【0047】
また、これら実施例では溶解分散液を乾燥して得られた固形物を粉砕して導電トナーを作製しているが、スプレードライ法を用いて溶解分散液から直接に造粒、すなわち導電トナーを製することも可能である。
【0048】
これら実施例の導電トナーと樹脂キャリアを計量し、内径5cm、高さ5cmのポリスチレン瓶に入れ、ポットミルにて100rpmの回転数で5分間混合、撹拌し、混合撹拌後の導電トナーの帯電量を測定した。導電トナーとキャリアとの混合割合(これを導電トナー濃度と定義する)は15wt%とした。

導電トナー濃度=(導電トナー質量/(導電トナー質量+キャリア質量))×100。
【0049】
帯電量の測定には、図2に示す帯電量測定装置を用いた。
【0050】
帯電量測定装置及び測定手順の説明。
現像スリーブ11は直径30mm、長さ15cmで筐体12に片持ちに固定され、スリーブ11内部に内部磁極13(6極)が回転可能に設けられている。スリーブ11と同心に内径36mm、肉厚1mmの円筒形アルミパイプ14が着脱可能に取り付けられるようになっている。スリーブ11は高圧直流電源15に接続されており、任意の極性、電圧値の直流バイアス電位が印加可能となっている。アルミパイプ14は、取り付け治具(図示せず)を介して容量1μFの精密コンデンサ16に接続されており、該精密コンデンサ16の両端電圧がポテンショメータ17(ADVANTEST社製、DIGITAL ELECTROMETER T8652)で測定できるようになっている。
【0051】
スリーブ11上にあらかじめ秤量した現像剤を、長手方向にほぼ均等に付着させる。次に、秤量済みのアルミパイプ14を取り付け、バイアス電位(1000V)の印加と同時に、内部磁極13を2500rpmで1分間、回転させる。現像剤中の帯電粒子はアルミパイプ14内面に現像され、荷電粒子の持つ電荷によって精密コンデンサ16の両端に電圧が発生する。1分後の精密コンデンサ16の両端電圧(測定値)と精密コンデンサ11容量とから、アルミパイプ14内面に現像された荷電粒子の持っている電荷総量が算出できる。アルミパイプ14を取り外し秤量し、現像前との差分から現像された荷電粒子の質量が求まり、電荷量とこの質量とから荷電粒子の単位質量当たりの帯電量(以下帯電量)をμC/gの単位で求めることができる。
【0052】
図3に上記の装置、方法で測定した導電トナーの帯電量をまとめる。
【0053】
図3より、導電トナー、キャリアともに荷電制御剤を持たない導電トナー実施例2、樹脂キャリア実施例2の組み合わせでは、どちらの極性にもほぼ等量の帯電量が見られ、両極帯電性があることがわかる。
【0054】
導電トナーもしくは樹脂キャリアのいずれかが荷電制御剤を有している、導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例2の組み合わせ、または、導電トナー実施例2と樹脂キャリア実施例1の組み合わせでは、両極帯電性が弱まり、プラス側の帯電量がやや増加していることがわかる。
【0055】
さらに、双方とも荷電制御剤を有する導電トナー1と樹脂キャリア1の組み合わせでは、プラス側の帯電量絶対値はさらに増加し両極帯電性はさらに弱まる。
【0056】
以上の結果より、導電トナー、樹脂キャリアに添加した荷電制御剤は導電トナーの帯電に双方とも有効に寄与しているものと考えられれる。
【0057】
次に、図1に示す現像装置を、東レエンジニアリング(株)製の電子写真連続紙プリンタGP-2170HG改造機に装着して、実施例の各キャリアと導電トナーと組み合わせた現像剤を用い、導電トナーによる画像形成を試みた。
【0058】
プロセス速度40mm/s、現像ローラ3周速も同じく40mm/sに設定し現像を行った。現像位置における感光ドラム9表面電位(非露光部、暗部)を+400V、露光部(明部)の表面電位が50V以下の静電潜像を形成した。現像ローラ3の現像バイアスも+400Vである。感光ドラム9はプラス帯電性のOPC感光体(直径120mm)、京セラミタ(株)製Emerald-1R型を用いている。
【0059】
まず、導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例1との組合せに於いては、静電潜像パターンに応じた導電トナー像が感光ドラム9上に形成され、現像を行うことが可能であった。図4に示す。図は感光ドラム9上に現像された導電トナー像を透明粘着テープで採取し、白紙上に貼付したものである。
【0060】
次に、導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例2との組合せ、および、導電トナー実施例2と樹脂キャリア実施例1との組合せに於いては、現像は行われたものの、現像された導電トナー量は導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例1との組合せよりは少なかった。
【0061】
さらに、導電トナー実施例2と樹脂キャリア実施例2との組合せにおいては、静電潜像のエッジ部分にのみ導電トナーが現像され、それ以外の部分は、非画像部、画像部ともに導電トナーが付着しているのが確認できた。
【0062】
次に、導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例1の組み合わせにおいて、幅3mm長さ20mmの矩形状パターンを現像し、現像された導電トナー像を、耐熱粘着テープ(カプトン(登録商標)粘着テープ)で採取し、耐熱粘着テープごと恒温層にて150℃で5分間加熱した。この加熱により耐熱粘着テープ上の導電トナーは溶融し、相互に合体して導電トナーによる導電パターンが得られた。得られた導電パターンの長辺方向の抵抗値は、市販のテスター等でも十分に測定できるほど低い10Ω以下の抵抗値であった。
【0063】
さて、本実施例では、感光ドラム9表面電位(背景部電位即ち非画像部電位)と現像ローラ3のバイアス電位が同じ400Vの条件にて現像して上記のような低い抵抗値の導電パターンが得られた。これは次の理由による。
【0064】
図3に示したように、導電トナー実施例1と樹脂キャリア実施例1の組み合わせでも、極僅かではあるが導電トナーはマイナス側にも帯電している。これは、導電トナーや樹脂キャリアの持つ荷電制御剤に依るものではなく、外部電界(ここでは現像バイアスおよび感光体表面電位による電界)による電荷注入によるものと推定される。背景部では画像部とは逆の電界が形成されているため、導電トナーに逆極性(この場合マイナス)の電荷が注入あるいは誘導され、結果マイナスにわずかに帯電した導電トナーが、プラスの電位の高い背景部に、現像(正現像)されるというモデルが考えられる。従って、背景部の電位(非画像部電位)を現像バイアスと略同一とすることによって、背景部での導電トナーの帯電が抑制され、背景部への付着(現像)が減少できると考えられる。
【0065】
本実施例では、反転現像を行っているが、逆に正現像方式の場合には、現像バイアスは正現像における背景部即ち感光体上の明部(露光部)電位と略同一とするとよい。
【0066】
なお、現像バイアスと背景部電位(非画像部電位)は絶対値において、一方が他方の80%から120%、好ましくは90%から110%程度がよい。
【符号の説明】
【0067】
1.現像器
2.現像槽
3.現像ローラ
4.撹拌ローラ
5.磁石体
5a.固定磁極
6.スリーブ
9.感光ドラム
10.帯電量測定装置
11.現像スリーブ
12.筐体
13.回転磁極
14.アルミパイプ
15.高圧電源
16.精密コンデンサ
17.ポテンショメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂中に金属粉を分散した構造を有する導電トナーであって、前記熱可塑性樹脂の常温での溶解液中で前記金属粉を分散して得ることを特徴とする導電トナー。
【請求項2】
前記導電トナーにおいて、少なくとも前記熱可塑性樹脂と前記金属粉を、前記熱可塑性樹脂を可溶な溶剤中に常温環境下で溶解、分散させた後、前記溶剤を気化して得られた固形物を粉砕して得ることを特徴とする請求項1に記載の導電トナー。
【請求項3】
前記導電トナーにおいて、前記熱可塑性樹脂と前記金属粉の前記溶剤中への溶解、分散時に同時に混合される荷電制御剤をさらに有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電トナー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の導電トナーとキャリアを混合した現像剤を、現像バイアス電位が印加された現像剤搬送部材の表面上に担持しつつ静電潜像担持体表面に搬送し、前記静電潜像担持体上の静電潜像を前記導電トナーによって現像することを特徴とする現像方法。
【請求項5】
前記キャリアが樹脂キャリアであることを特徴とする請求項4に記載の現像方法。
【請求項6】
前記樹脂キャリアが、請求項3に記載の荷電制御剤とは逆極性の荷電特性を有する荷電制御剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の現像方法。
【請求項7】
前記現像バイアス電位が、前記静電潜像の非画像部電位と同一であることを特徴とする請求項5又は6に記載の現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163753(P2012−163753A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23785(P2011−23785)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】