説明

導電パターン形成基板の製造方法

【課題】導電パターンを簡便に形成できる上に得られる導電パターン形成基板は印刷や組み立てにおいて位置ずれしにくい導電パターン形成基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の導電パターン形成基板の製造方法は、透明絶縁基板上に設けられた透明導電層に、パルス状レーザ光を、導電パターン12が得られるように移動させながら照射する導電パターン形成工程と、前記透明導電層に、単位長さあたりのレーザ光照射熱量が導電パターン形成工程よりも大きいパルス状レーザ光を、位置決め用目印(外形線14a、位置決めマーク14b)が得られるように移動させながら照射する位置決め用目印形成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの電極シート等に用いられる導電パターン形成基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルにおいては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置の前面に、指等が接触した際の位置を検出する透明な電極シートが備えられている。電極シートとしては、透明な絶縁基板の表面に透明導電層の導電パターンを形成した導電パターン形成基板が用いられている。
導電パターンの形成方法としては、例えば、特許文献1に、フォトリソグラフィ法を利用する方法が開示されている。特許文献2には、バインダ樹脂中に金属ナノワイヤを分散させ硬化してなる透明導電膜にレーザ光を照射し、レーザ光照射部分を絶縁部とすることで導電パターンを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−014215号公報
【特許文献2】特開2010−44968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フォトリソグラフィを利用する特許文献1に記載の方法では、フォトマスクが必要になる上に、露光工程、現像工程、エッチング工程を有するため、煩雑であった。
特許文献2に記載の方法で得られた導電パターン形成基板は全面一様に透明であるため、導電パターンと絶縁部とを見分けることができない。そのため、タッチパネルに用いた際には導電パターンが視認されないという点で優れている反面、目印になるものがないため、印刷によりコネクタを設ける際に又はタッチパネル等を組み立てる際に導電パターン形成基板の位置決めが困難であった。したがって、印刷や組み立てにおいて位置ずれすることがあった。
本発明は、導電パターンを簡便に形成できる上に得られる導電パターン形成基板は印刷や組み立てにおいて位置ずれしにくい導電パターン形成基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]透明絶縁基板上に設けられた透明導電層に、パルス状レーザ光を、導電パターンが得られるように移動させながら照射する導電パターン形成工程と、前記透明導電層に、単位長さあたりのレーザ光照射熱量が導電パターン形成工程よりも大きいパルス状レーザ光を、位置決め用目印が得られるように移動させながら照射する位置決め用目印形成工程とを有することを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
[2]前記透明導電層が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む層であることを特徴とする[1]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[3]導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする[2]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[4]導電パターン形成工程では、パルス状レーザの照射により透明絶縁材料内の導電性繊維を除去することにより、導電性繊維が存在していた部分に空隙を形成して、前記絶縁部を形成することを特徴とする[3]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[5]位置決め用目印形成工程では、パルス状レーザ光の照射強度を導電パターン形成工程よりも大きくすることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[6]位置決め用目印形成工程では、パルス状レーザ光の移動速度を導電パターン形成工程よりも遅くすることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電パターン形成基板の製造方法によれば、導電パターンを簡便に形成できる上に得られる導電パターン形成基板は印刷や組み立てにおいて位置ずれしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の導電パターン形成基板の製造方法の一実施形態で得られる導電パターン形成基板を示す上面図である。
【図2】図1のI−I’断面図である。
【図3】図1の導電パターン形成基板を構成する第1の絶縁部の電子顕微鏡写真である。
【図4】レーザ光照射装置の一例を示す側面図である。
【図5】図1の導電パターン形成基板にコネクタ部を設けた態様の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の導電パターン形成基板の製造方法の一実施形態について説明する。
<導電パターン形成基板>
本実施形態の製造方法で製造される導電パターン形成基板は、図1,2に示すように、透明絶縁基板11と、透明絶縁基板11の片面に設けられ、複数の列状の透明導電部12aからなる導電パターン12とを有する。導電パターン12は、透明導電部12a,12aの間および周囲に形成された第1の絶縁部13および第2の絶縁部14によって設けられている。
【0009】
透明絶縁基板11としては、透明で絶縁性を有するとともに、後述するレーザ光の照射に対して外観変化の生じにくいものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とするポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などの絶縁性材料が挙げられる。
透明絶縁基板11の形状としては、板状のもの、可撓性を有するフィルム状のもの、立体的(3次元)に成形された成形品等を用いることができる。
【0010】
透明導電部12aは、透明絶縁材料と、該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含んでいる。
透明絶縁材料としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン)、熱や活性エネルギ線(紫外線、電子線)で硬化した透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)の硬化物が挙げられる。
【0011】
各導電性繊維は、透明絶縁基板11の表面(透明導電部12aが形成される面)の面方向に沿って互いに異なる向きに不規則に配置されているとともに、その少なくとも一部以上が互いに重なり合う(接触し合う)程度に密集して、互いに電気的に接続されている。これにより、導電ネットワークを構成している。
【0012】
導電性繊維としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブが挙げられる。導電性繊維は、例えばその直径が0.3〜100nm、長さが1〜100μmに形成されている。
また、導電性繊維として、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等を用いることもできる。
上記導電性繊維の中でも、透明導電部12aを容易に形成できると共に、後述するレーザ光の照射によって容易に絶縁部を形成できる点で、金属ナノワイヤが好ましく、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)がより好ましい。
【0013】
第1の絶縁部13および第2の絶縁部14は、導電性繊維が除去されて透明絶縁材料からなる部分である。
本実施形態における第1の絶縁部13は、透明導電部12aと外観(色、透明性)が同一で視認不能な絶縁部であり、入力エリアαの導電パターン12を形成するための絶縁パターンである。第1の絶縁部13では、図3に示すように、透明絶縁材料12b内の、導電性繊維が存在していた部分は空隙12cになっているため、導電性繊維による導電ネットワークが断絶しており、電気的に絶縁状態になっている。また、第1の絶縁部13は、導電性繊維を含む導電部と外観(色、透明性)がほぼ同一であるため、視認不能である。
第2の絶縁部14は、第1の絶縁部13と同様に導電性繊維が除去されて絶縁化されていると共に透明絶縁材料も着色または除去されて、透明導電部12aと外観が異なって視認可能な絶縁部であり、導電パターン12を囲う外形線14aと、外形線14aよりも外側に4つ形成された位置決めマーク14bと、第1の絶縁部13に接続された配線引き出し線14cと、配線引き出し線14cに接続されたコネクタ部引き出し線14dと、入力エリアαを示す組立基準線14eとからなっている。第2の絶縁部14は、位置決め用目印となる。
【0014】
本発明では、2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維が透明絶縁材料の中に配置されることで、導電性繊維が3次元状に配置される場合に比べて導電性繊維同士の接触が多くなるため、少ない導電性繊維でも充分に低い表面抵抗を得ることができる。また、透明絶縁材料から導電性繊維が除去されることで、確実に絶縁化することができる。
【0015】
<導電パターン形成基板の製造方法>
本実施形態の導電パターン形成基板の製造方法は、透明導電層に、第1の絶縁部13を形成して導電パターン12を設ける導電パターン形成工程と、透明導電層に、位置決め用目印(第2の絶縁部14)を形成する位置決め用目印形成工程とを有する。
【0016】
導電パターン形成工程では、透明絶縁基板11の一方の面に設けられた透明導電層に導電パターン12が得られるようにパルス状レーザ光Lを移動させながら照射して、第1の絶縁部13を形成する。
【0017】
本実施形態の製造方法では、2次元ネットワーク状に分散された導電性繊維を含む透明導電層にレーザ光を照射することで、導電性繊維を蒸発、除去して空隙を形成することができる。これにより、レーザ光照射部分では導電ネットワークを断絶できるため、絶縁性を得ることができる。しかも、導電性繊維が2次元ネットワークであり、深さ方向のネットワークを有していないため、絶縁化の際に、断絶させる導電ネットワークが少なく、効率的に絶縁パターンを形成できる。
【0018】
なお、以下の説明において、レーザ光照射前の、透明絶縁基板と該透明絶縁基板の一方の面に設けられた透明導電層とを有する積層体のことを、導電性基板という。また、透明導電層は、透明絶縁材料と、透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む層である。透明絶縁材料および導電性繊維は上述したものが使用される。
【0019】
導電パターン形成工程では、図4に示すようなレーザ光照射装置を使用する。レーザ光照射装置40は、レーザ光Lを発生させるレーザ光発生手段41と、レーザ光Lを集光する集光手段である凸レンズ等の集光レンズ42と、透明絶縁基板11および透明導電層aからなる導電性基板Aが載置されるステージ43とを備えている。
このレーザ光照射装置40では、レーザ光発生手段41から集光レンズ42を介して透明導電層aにレーザ光Lを照射する。
レーザ光Lの照射による導電パターンの形成では、露光、現像、エッチング等が不要であるため、簡便である。
【0020】
レーザ光発生手段41が発生するレーザ光Lは、YAGやYVO等のパルス状レーザ光、炭酸ガスレーザ等の連続発振レーザ光が挙げられる。中でも、簡便であることから、YAGやYVO等の波長1064nmもしくはその2次高調波を使用した532nmのパルス状レーザ光が好ましい。パルス状レーザ光においては、パルス幅300n秒以下が好ましく、70n秒以下がより好ましい。
【0021】
集光レンズ42の焦点Fは、通常、透明導電層aの表面毎に設定されるが、導電性基板Aに凹凸などが形成されている場合や広い面積にレーザ光を照射する場合には、透明導電層aから離れた位置に設定されていることが好ましい。詳しくは、集光レンズ42は、透明導電層aと集光レンズ42との間にレーザ光Lの焦点Fが位置するように配置される。すなわち、集光レンズ42(レーザ光L)の焦点Fを、透明導電層aと集光レンズ42との間に形成している。これにより、透明絶縁基板11に当たるレーザ光Lのスポット径は、透明導電層aに当たるレーザ光Lのスポット径より大きくなる。これにより、透明導電層aにおいてはレーザ光Lのエネルギ密度を確保して第1の絶縁部13および第2の絶縁部14を確実に形成しつつ、透明絶縁基板11においてはレーザ光Lのエネルギ密度を低減させ、さらに焦点Fと透明導電層aの距離が変化しても集光スポットSのエネルギ密度の変動を抑制することで、透明絶縁基板11の損傷を防止できる。
【0022】
集光レンズ42としては、低い開口数(NA<0.1)のものが好ましい。すなわち、集光レンズ42の開口数がNA<0.1とされることにより、レーザ光Lの照射条件設定が容易となり、特にレーザ光Lの焦点Fが透明導電層aと集光レンズ42との間に位置することによる、該焦点Fにおける空気のプラズマ化に伴うエネルギ損失とレーザ光Lの拡散を防止することができる。
【0023】
また、ステージ43は、水平方向に2次元的に移動可能になっている。ステージ43は、少なくとも上面側が透明な部材または光線吸収性を有する部材で構成されていることが好ましい。
ステージ43は、レーザ光Lの出力が1Wを超える場合、ナイロン系若しくはフッ素系の樹脂材料、又は、シリコーンゴム系の高分子材料を用いることが好ましい。
【0024】
導電パターン形成工程では、まず、ステージ43の上面に導電性基板Aを、透明導電層aが透明絶縁基板11より上に配置されるように載置する。ここで、導電性基板Aは、透明絶縁基板11と透明導電層aの透明絶縁材料とが、互いに同一材料又は同一系統の樹脂材料からなることが好ましい。例えば、透明絶縁基板11がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、透明絶縁材料にはポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
次いで、レーザ光発生手段41よりレーザ光Lを出射させ、レーザ光Lを集光レンズ42により集光する。その集光したレーザ光Lを透明導電層aに照射する。その際、ステージ43を、レーザ光Lの照射が所定のパターンになるように移動させる。ここで、所定のパターンとは、導電パターン12を形成するためのパターンである。
上記のように、透明導電層aにレーザ光Lを所定パターンで照射することにより、導電性繊維を除去して、図1における第1の絶縁部13を形成する。これにより、透明導電部12aを有する導電パターン12を形成する。
【0026】
透明導電層aに照射するレーザ光Lのエネルギ密度は1×1016〜7×1017W/m、単位面積あたりの照射エネルギは1×10〜1×10J/mが好ましい。
すなわち、エネルギ密度・照射エネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、絶縁パターン13aの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値に設定された場合、加工痕が目立つようになり、タッチパネルや電磁波シールドなどの用途では不適当となる。
【0027】
また、これらの値は、加工エリアにおけるレーザビームの出力値を、加工エリアの集光スポット面積で除することにより定義されており、簡便には、出力はレーザ発振機からの出力値に光学系の損失係数を掛けることで求められる。
また、スポット径面積Sは、下記式により定義される。
S=S×D/FL
:レンズで集光されるレーザのビーム面積
FL:レンズの焦点距離
D:透明導電層aの表面(上面)と焦点との距離
【0028】
なお、前述した焦点Fは、レンズ等の集光手段42で、収差が十分に小さい場合を例に説明したが、例えば、焦点距離の短い球面レンズや、保護ガラスなどの収差が大きくなる要素が存在する場合には、前記焦点Fは、集光点のエネルギ密度が最も高くなる位置と定義される。
【0029】
ここで、距離Dは、通常のレーザ加工機では、焦点距離FLの0.2〜3%の範囲内に設定される。好ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.5〜2%の範囲内に設定される。さらに望ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.7〜1.5%の範囲内に設定される。距離Dが上記数値範囲に設定されることにより、第1の絶縁部13における導電性繊維の除去(空隙の形成)が確実に行えるとともに電気的に高い信頼性を有する絶縁パターンを形成でき、かつ、透明絶縁基板11の損傷に起因する加工痕を確実に防止できる。
【0030】
位置決め用目印形成工程では、透明導電層aに第2の絶縁部14(外形線14a、位置決めマーク14b、配線引き出し線14cと、コネクタ部引き出し線14d、組立基準線14e)が得られるようにパルス状レーザ光Lを移動させながら照射する。
位置決め用目印形成工程では、単位長さあたりのレーザ光照射熱量を導電パターン形成工程よりも大きくする。位置決め用目印形成工程において、単位長さあたりのレーザ光照射熱量を導電パターン形成工程よりも大きくする方法としては、位置決め用目印形成工程において、パルス状レーザ光の照射強度を導電パターン形成工程よりも大きくする方法、パルス状レーザ光の移動速度を導電パターン形成工程よりも遅くする方法が好ましく適用される。これらの方法によれば、位置決め用目印形成工程におけるレーザ光照射熱量を導電パターン形成工程よりも容易に大きくできる。
【0031】
位置決め用目印形成工程では、単位長さあたりのレーザ光照射熱量を導電パターン形成工程よりも大きくするため、導電性繊維が除去されるだけでなく、位置決め用目印形成工程にてレーザ光が照射された透明絶縁材料が着色または除去される。そのため、位置決め用目印形成工程にて形成する第2の絶縁部14を可視化することができる。
したがって、本実施形態の導電パターン形成基板の製造方法によれば、第2の絶縁部14を視認可能にしつつも、導電パターンを簡便に形成できる。
【0032】
なお、上記製造方法では、XYステージなどの移動式ステージ43に導電性基板Aを載せてパターニングを行うこととしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、導電性基板Aを固定状態とし、集光系部材を相対的に移動させる方法、ガルバノミラー等を用いてレーザ光Lを走査しスキャンする方法、又は、上記したもの同士を組み合わせてパターニングを行うことが可能である。
また、導電パターン形成基板の透明導電層は、透明絶縁材料に導電性繊維を含むものでなくても、導電性高分子の膜であってもよいし、ワイヤグリッドを含むものであってもよい。
【0033】
また、第2の絶縁部14を形成した後、図5に示すように、各透明導電部12aの端部に外部と電気的に接続するためのコネクタ部15を設けることができる。コネクタ部15を設ける方法としては、正確且つ簡便であることから、金属ペースト(例えば、銀ペースト、銅ペースト等)を印刷する方法が好ましい。印刷方法としては、スクリーン印刷が好適である。
上記の製造方法で得た導電パターン形成基板10では、位置決めマーク14bを有するため、印刷の際に導電パターン形成基板10を位置決めできる。したがって、コネクタ部を正確に設けることができる。
【0034】
上記導電パターン形成基板10は、タッチパネルの電極シートとして使用することができる。
例えば、2枚の上記導電パターン形成基板を輪郭線に沿って切り出したものを電極シートとし、これらを、スペーサを介して導電パターンが互いに対向するように配置することで、抵抗膜式タッチパネルの入力部材とすることができる。
また、2枚の上記導電パターン形成基板を輪郭線に沿って切り出したものを電極シートとし、これらを導電パターン同士が接触しないように配置することで、静電容量式タッチパネルの入力部材とすることができる。
【実施例】
【0035】
[製造例1]
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS10 #75、東レ株式会社製)に、Cambrios社のOhm(商品名)インク(線径50nm程度、長さ15μm程度の銀繊維を含む混合液)を塗布し、乾燥した後、紫外線硬化性のポリエステル樹脂インクを上塗りして、乾燥・紫外線処理を施した。これにより、PETフィルム上に銀繊維からなる導電性の2次元ネットワークを有する透明導電層aを形成して、導電性基板を得た。
【0036】
[実施例1]
本例では、レーザ光照射装置として、ガルバノミラーを備えたYVO基本波のレーザ加工機(キーエンス社製、MD−V9920)を使用した。
製造例1の導電性基板Aを厚さ5mmのポリアセタール製ステージの上に載置し、下記照射条件でレーザ光を照射して図1に示すパターンの第1の絶縁部13を形成した(導電パターン形成工程)後、照射条件を変更し、レーザ光を照射して第2の絶縁部14を形成した。
・導電パターン形成工程のレーザ光照射条件
焦点から導電性基板Aまでの距離:0mm
出力:30%
移動速度:600mm/秒
発振周波数:100kHz
・位置決め用目印形成工程のレーザ光照射条件
焦点から導電性基板Aまでの距離:0mm
出力:100%
移動速度:300mm/秒
発振周波数:100kHz
これにより、透明絶縁パターンからなる第1の絶縁部は視認不能で、外形線14a、位置決めマーク14b、配線引き出し線14c、コネクタ部引き出し線14d、組立基準線14eからなる第2の絶縁部は視認可能な導電パターン形成基板を得た。隣接する透明導電部12a,12a同士の電気抵抗は10Ω以上であり、絶縁状態にされていた。
上記の導電パターン形成基板は2枚作製した。
【0037】
次いで、得られた導電パターン形成基板の一方に対し、スクリーン印刷とインキの乾燥により、アクリル系樹脂からなる直径60μmのドットスペーサを設けた。
上記のようにして得た導電パターン形成基板を外形線14aに沿って切断して、配線基板を切り出した。次いで、ドットスペーサを設けた配線基板と、ドットスペーサを設けなかった配線基板とを、導電パターンが互いに対向するように配置し、その状態で両面粘着テープにより固定して、タッチパネルを得た。
本例では、外形線、位置決めマーク、配線引き出し線、コネクタ部引き出し線および組立基準線が可視化されているため、導電パターン形成基板を正確に位置決めでき、コネクタ部を正確に設けることができた。また、得られた配線基板を用いてタッチパネルを組み立てる際にも、容易に位置決めできた。
また、コネクタ部形成後、コネクタパターンと外形線の寸法精度を測定したところ、寸法公差は全て0.08mm以下であった。
【0038】
[比較例1]
位置決め用目印形成工程におけるレーザ光照射条件を導電パターン形成工程と同一にしたこと以外は実施例1と同様にして、導電パターン形成基板を得た。
比較例1の導電パターン形成基板についても実施例1と同様にコネクタ部を設けたが、第2の絶縁部が視認不能であるため、導電パターン形成基板を位置決めできず、コネクタ部を設けた位置は不正確であった。また、この導電パターン形成基板を用いてタッチパネルを組み立てる際には、位置決め困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製造方法により製造された導電パターン形成基板は、タッチパネルの電極シート、プラズマディスプレイの電磁波シールド等、画像表示装置の前面に設けられる透明電極等に使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 導電パターン形成基板
11 透明絶縁基板
12 導電パターン
12a 透明導電部
13 絶縁部(第1の絶縁部)
14 絶縁部(第2の絶縁部)
14a 外形線
14b 位置決めマーク
14c 配線引き出し線
14d コネクタ部引き出し線
14e 組立基準線
15 コネクタ部
a 透明導電層
A 導電性基板
α 入力エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁基板上に設けられた透明導電層に、パルス状レーザ光を、導電パターンが得られるように移動させながら照射する導電パターン形成工程と、
前記透明導電層に、単位長さあたりのレーザ光照射熱量が導電パターン形成工程よりも大きいパルス状レーザ光を、位置決め用目印が得られるように移動させながら照射する位置決め用目印形成工程とを有することを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項2】
前記透明導電層が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む層であることを特徴とする請求項1に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項3】
導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項2に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項4】
導電パターン形成工程では、パルス状レーザの照射により透明絶縁材料内の導電性繊維を除去することにより、導電性繊維が存在していた部分に空隙を形成して、前記絶縁部を形成することを特徴とする請求項3に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項5】
位置決め用目印形成工程では、パルス状レーザ光の照射強度を導電パターン形成工程よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項6】
位置決め用目印形成工程では、パルス状レーザ光の移動速度を導電パターン形成工程よりも遅くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169060(P2012−169060A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27072(P2011−27072)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】