説明

導電ペーストおよびそれを用いた電極

【課題】本発明の目的は、耐酸性に優れた電極を形成することが可能な導電ペーストを提供すること。
【解決手段】(A)有機バインダー、(B)平均一次粒径が0.5〜1.4μmの導電粉末、及び(C)無機成分中の含有量が0.1〜0.9wt%であるガラス粉末を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ用導電ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電ペーストおよびそれを用いた電極に関し、特にプラズマディスプレイ(以下「PDP」と称する)用の前面基板或いは背面基板に用いられる電極を形成するのに有用な導電ペーストと、それを用いて形成した電極に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PDPの背面基板は、ガラス基板上にパターニング及び焼成により形成されたアドレス電極と、このアドレス電極上に形成された誘電体層と、この誘電体層上に形成された放電空間を区画形成するリブ等から構成されている。
【0003】
これらの部材のうち、リブを作製するに当たっては、サンドブラスト法やエッチング法が用いられている。
サンドブラスト法は、リブ用ガラス層上から、マスク(保護膜)を介して切削材等を吹き付けることにより、マスクで保護された部分以外を選択的に切削する方法である。この方法は、エッチング法に比べて処理時間が長く、さらには切削材の処理や切削されたガラス粉の処理の問題がある。
【0004】
他方、エッチング法は、リブ用ガラス層を、マスク(保護膜)を介して硝酸等の酸でエッチング処理することにより、マスクで保護された部分以外を選択的に溶解除去する方法である。この方法は、サンドブラスト法に比べて処理時間が短く、サンドブラスト法のような切削材の処理や切削されたガラス粉の処理の必要性がない。
しかしながら、ガラス基板上に形成されたアドレス電極は、この端子部分に電圧を付与する構造上、この端子部分の表面には誘電体層もリブも形成されないので、エッチング法を用いてリブを形成する際に、露出状態となる。そのため、このエッチング法では、この露出部分がエッチング処理の酸によって損傷を受け、断線などを引き起こす恐れがある。
それ故に、リブの形成方法としては、作業工数は多いものの電極等の信頼性に影響のないサンドブラスト法が主に用いられている。
【0005】
これに対し、最近では、エッチング法によるリブ形成方法を採用しても耐え得るような電極用ペーストとして、耐酸性を持つ鉛含有のガラス粉末を用いたペーストが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−012371号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐酸性に優れた電極を形成することが可能な導電ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の内容を要旨構成とする発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のPDP用導電ペーストは、有機バインダー(A)、平均一次粒径が0.5〜1.4μmの導電粉末(B)、及び無機成分中の含有量が0.1〜0.9wt%であるガラス粉末(C)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐酸性に優れ、密着性にも優れた電極を形成することが可能な導電ペーストを提供することができる。これにより、酸処理工程を含む電極の製造方法に適したPDP用電極が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
さて、発明者らの研究によれば、以下のようなメカニズムにより、電極が酸によって損傷を受けるものと推定される。
すなわち、エッチング処理によりリブを形成する際、硝酸等の酸が、露出している電極の内部に浸入し、電極と基材との間のガラスを侵食する結果、基材との密着性を失い電極が基材から剥離するという損傷を受けるものと推測される。
特に、導電粉末の粒径が大きいほど導電粉末間の隙間も大きくなる傾向があり、内部に浸入する酸の量も多くなる結果、電極の損傷も顕著となることを知見した。
そこで、このような電極の損傷の解決方法として、発明者らは導電粉末の粒径を細かくし、ガラス量をなるべく減らして電極内の導電粉末の密度を高くし、酸の電極内部への浸入を防ぐことに着目した。しかし、導電粉末の粒径が細かすぎるとフォト法において解像性が劣化し、また、ガラス粉末の量を減らしすぎると、基材との密着性が保てないという欠点がある。
そこで、発明者らは、酸の浸入を有効に防ぎ電極パターン形成時の解像性にも優れる導電粉末の粒径の範囲と、基材との優れた密着性を維持させるためのガラス粉末の最適な配合量を見出し、本発明に想到した。
【0010】
以下本発明の各構成について説明する。
前記有機バインダー(A)としては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい。)としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸クロライドなどにより、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、スチレンなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(7)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(8)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに、テトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられ、特に(1)、(2)、(3)、(6)の樹脂が好適に用いられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0011】
前記有機バインダー(カルボキシル基含有感光性樹脂又はカルボキシル基含有樹脂)(A)は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計で組成物全量の10〜50質量部の割合で配合することが好ましい。これらのポリマーの配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性及び光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、焼成時の電極のよれや線幅収縮を生じ易くなるので好ましくない。
【0012】
また、上記有機バインダー(A)としては、それぞれ重量平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは5,000〜70,000であり、かつ酸価が50〜250mgKOH/gであることが好ましい。さらに、前記有機バインダー(A)がカルボキシル基含有感光性樹脂の場合、その二重結合当量が350〜2,000g/当量、好ましくは400〜1,500g/当量のものが好適に用いることができる。上記樹脂の重量平均分子量が1,000未満の場合、現像時の皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000を超えた場合、現像不良を生じ易いので好ましくない。また、酸価が50mgKOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易く、一方、250mgKOH/gを超えた場合、現像時に皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じるので好ましくない。さらに、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、感光性樹脂の二重結合当量が350g/当量未満の場合、焼成時に残渣が残り易くなり、一方、2,000g/当量を超えた場合、現像時の作業余裕度が狭く、また光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
【0013】
本発明では、酸の浸入を有効に防ぎ電極パターン形成時の解像性に優れる導電粉末として、平均一次粒径が0.5〜1.4μm、より好ましくは0.5〜1.2μmの導電粉末(B)を用いる。
ここで、導電粉末の平均一次粒径が0.5μmより小さいと、光の透過性が悪化し、電極パターン形成時の解像性が悪くなる。一方、導電粉末の平均一次粒径が1.4μmより大きいと、導電粉末の緻密性が悪化し、酸が電極内部に浸入しやすくなり損傷が顕著になる。更に抵抗値が高くなるので好ましくない。
なお、本発明における導電粉末の平均一次粒径とは、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」という)により、5,000倍で撮影した導電粉末の写真から、任意で50個の導電粉末を選び出し、その長径を測定して平均値を算出したものをいう。
このような導電粉末(B)としては、Ag、Al、Pt、Au、Cu、Ni、In、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ruからなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属の他、その合金、その酸化物、さらには酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)等を用いることができる。
また、導電粉末の形状については、球状、フレーク状、デンドライト状など種々のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると球状のものを用いることが好ましい。
導電粉末(B)の配合量は、前記有機バインダー(A)100質量部当り50〜2,000質量部とすることが好ましい。前記導電粉末(B)の配合量が、上記範囲より少ない場合は充分な導電性が得られなくなり、上記範囲より多い場合はペースト化が困難になるため、好ましくない。
【0014】
本発明では、基材との優れた密着性を維持させるために、無機成分中の含有量が0.1〜0.9wt%、より好ましくは0.3〜0.8wt%であるガラス粉末(C)を用いる。
ここで、無機成分中のガラス粉末の含有量が0.1wt%より少ないと、焼成後の基材との密着性を維持できなくなり、一方、無機成分中のガラス粉末の含有量が0.9wt%より多いと、酸処理後の基材との密着性が悪くなりやすく好ましくない。
このようなガラス粉末(C)としては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、又はアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。特に酸化ビスマスとしては、Biが30〜90質量%、Bが5〜30質量%、ZnOが1〜20質量%、Siが0〜20質量%、BaOが0〜35質量%の組成範囲からなるものが好適である。
また、ガラス粉末(C)のガラス軟化点は420〜580℃、ガラス転移点は360〜500℃、熱膨張係数α300は60×10−7〜110×10−7/℃であることが好ましい。
このガラス粉末(C)の粒径については、最大粒径1.0〜4.5μm、平均粒径0.2〜2.2μmであることが好ましい。
【0015】
本発明の導電ペーストは、さらに必要に応じて黒色顔料(D)を配合し、黒色導電ペーストとして使用することもできる。
本発明に用いられる黒色顔料(D)は、PDPの電極作製工程で、500〜600℃という高温焼成を伴うため、高温での色調等の安定性を有するものである必要があり、例えばルテニウム酸化物やルテニウム化合物、銅−クロム系黒色複合酸化物、銅−鉄系黒色複合酸化物、コバルト系酸化物等が好適に用いられる。特に、四三酸化コバルトなどのコバルト系酸化物は、導電ペーストの安定性、コスト面に極めて優れることから最適である。
また、最大粒経5μm以下の四三酸化コバルトを溶剤に均一に分散したスラリーを用いることにより、二次凝集物のない導電ペーストを容易に得ることができる。
【0016】
このような黒色顔料(D)の形状については、球状、フレーク状、デンドライト状など種々のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると球状のものを用いることが好ましい。
このような黒色顔料(D)の配合量は、有機バインダー100質量部当り0.1〜100質量部、好ましくは0.1〜50質量部の範囲が適当である。この理由は、この黒色顔料(D)の配合量が上記範囲よりも少ないと、焼成後に充分な黒さが得られず、一方、上記範囲を超える配合量では、光の透過性が劣化する他に、コスト高となり好ましくないからである。
【0017】
本発明の導電ペーストでは、さらに必要に応じて、光硬化性および現像性を向上させるために、光重合性モノマー(E)及び光重合開始剤(F)を配合することができる。
このような光重合性モノマー(E)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合性モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0018】
このような光重合性モノマー(E)の配合量は、前記有機バインダー(A)100質量部当り20〜100質量部が適当である。この光重合性モノマー(E)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えて多量になると、皮膜の深部に比べて表面部の光硬化が早くなるため硬化むらを生じ易くなる。
【0019】
このような光重合開始剤(F)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシー2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤(F)の配合割合は、前記有機バインダー(A)100質量部当り0.3〜30質量部が適当であり、好ましくは、1〜20質量部である。
【0020】
なお、上記光重合開始剤(F)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
より深い光硬化深度を要求される場合には必要に応じて、可視領域でラジカル重合を開始するイルガキュアー784(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の導電ペーストでは、さらに必要に応じて、組成物の保存安定性向上のため、無機粉末の成分である金属あるいは酸化物粉末との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を、安定剤(G)として配合することができる。
このような安定剤(G)としては、硝酸、硫酸、塩酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような安定剤(G)は、無機粉末100質量部当り0.1〜10質量部の割合で配合することが好ましい。
【0022】
さらに必要に応じて、シリコーン系、アクリル系等の消泡・レベリング剤、皮膜の密着性向上のためのシランカップリング剤等の、他の添加剤を配合することもできる。また、必要に応じて、公知慣用の酸化防止剤や、保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤を配合することもできる。
【0023】
次に、本発明の導電ペーストを用いた電極の形成方法について説明する。
本発明の導電ペーストは、予めフィルム状に成膜されている場合には基板上にラミネートすればよいが、例えばスクリーン印刷、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基板に塗布し、次いで指触乾燥性を得るために、熱風循環式乾燥炉や遠赤外線乾燥炉等を用い、例えば約70〜120℃で5〜40分間乾燥させて、タックフリーの塗膜を得る。その後、選択的露光、現像、焼成を行なって所定パターンの電極回路を形成する。
【0024】
ここで、露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光または非接触露光が可能である。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜500mJ/cm程度が好ましい。
【0025】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5質量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられる。この場合、ペースト中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行なうことが好ましい。
【0026】
焼成工程においては、現像後の基板を空気中又は窒素雰囲気下で約400〜600℃の加熱処理を行い、所望の電極を形成する。なお、この時の昇温速度は、20℃/分以下に設定することが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0028】
合成例:有機バインダーAの合成
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.87:0.13のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミドを用い、グリシジルメタクリレートを、95〜105℃で16時間の条件で、上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ、冷却後取り出し、有機バインダーAを得た。この有機バインダーAは、重量平均分子量が約20,000、酸価が74mgKOH/gであった。
なお、得られた有機バインダーAの重量平均分子量の測定は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0029】
このようにして得られた有機バインダーAを用い、表1に示す各成分及び配合割合にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルで練肉することにより、感光性導電ペーストを調製した。
銀粉は、平均一次粒径が0.96μmと1.48μmのものを使用した。
また、ガラス粉末は、Biが50質量%、Bが15質量%、ZnOが15質量%、Siが2質量%、BaOが18質量%の組成範囲からなり、ガラス転移点が444℃、ガラス軟化点が500℃、熱膨張係数α300が85×10−7/℃のものを用いた。
なお、ガラス粉末の粒径は湿式粒度測定器にて測定し、銀粉の粒径はSEMで測定した。
【0030】
組成物例:有機バインダーAを用いた組成物
有機バインダーA 180.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート 60.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
銀粉(粒径は表1に記載) 400.0部
ガラス粉末(平均粒径(D50)=0.9μm、各配合量は表1に記載)
0.04〜4.04部
リン酸エステル 3.0部
消泡剤(BYK−354:ビックケミー・ジャパン(株)) 1.0部
【0031】
【表1】

【0032】
試験片作製:
ガラス基板上に、実施例1、2及び比較例1〜3の感光性導電ペーストを200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥して指触乾燥性の良好な塗膜を形成した。次に、光源としてメタルハライドランプを用い、ネガマスクを介して、乾燥塗膜上の積算光量が300mJ/cm2となるように露光した後、液温30℃の0.5wt%NaCO水溶液を用いて現像を行い、水洗した。そして塗膜パターンを形成した基板を、空気雰囲気下にて5℃/分で580℃まで昇温して580℃で20分間焼成し、電極を形成した試験片を作製した。
このような方法で、密着性試験、マイグレーション試験、ライン抵抗値試験に用いるそれぞれの試験片を作製した。すなわち、密着性試験用には、L/S(配線幅/配線間隔)=100/300μmのストライプ電極、マイグレーション試験用にはL/S=120/120μmのくし型電極、ライン抵抗値試験用には、長さ×幅=100mm×0.1mmのライン電極を作製した。
【0033】
(試験方法と各評価)
焼成後の密着性:
上記試験片作製にて得られたL/S=100/300μmのストライプ電極を、セロハンテープを用いてテープピーリング試験を行い、目視によりはがれの確認を行った。
評価基準は以下の通りである。
焼成後の密着性評価:
○・・・はがれなし
△・・・テープピールで一部電極がはがれた
【0034】
耐酸試験後の密着性:
上記試験片作製にて得られたL/S=100/300μmのストライプ電極基板を30℃に加温した3%硝酸水溶液に3分間浸漬した後、水道水で水洗した。それを十分乾燥させた後、セロハンテープでテープピール試験を行い、目視により電極のはがれの確認を行った。
評価基準は以下の通りである。
耐酸試験後の密着性評価:
○・・・はがれなし
△・・・テープピールで一部電極がはがれた
×・・・酸に浸漬中に電極がはがれた
【0035】
マイグレーション試験:
上記試験片作製にて得られたL/S=120/120μmのくし型電極にUV防湿剤を塗布、硬化させ、マイグレーション試験用基板を作製した。その基板を85℃、85%RHの恒温恒湿槽で引加電圧=150V、試験時間=96時間の試験を行った。試験後の基板を光学顕微鏡で観察し、デントライトの評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
マイグレーション評価:
○・・・デントライト発生なし
△・・・デントライト若干発生
×・・・ショート
【0036】
ライン抵抗値試験:
上記試験片作製にて得られた、長さ×幅=100mm×0.1mmのライン電極を、日置電機社製ミリオームハイテスターを用いて測定したデータをライン抵抗値とした。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の導電ペーストによれば、焼成後の基材との密着性や導電特性、耐マイグレーション特性を悪化させることなく、耐酸試験後の密着性に優れる電極を提供できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機バインダー、(B)平均一次粒径が0.5〜1.4μmの導電粉末、及び(C)無機成分中の含有量が0.1〜0.9wt%であるガラス粉末を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ用導電ペースト。
【請求項2】
前記導電粉末(B)がAg、Al、Pt、Au、Cu、Ni、In、Sn、Pt、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru、及びこれらの合金又は酸化物、さらにはSnO2、In23、及びITOからなる群から選ばれたいずれか少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ用導電ペースト。
【請求項3】
前記ガラス粉末(C)が、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、及びアルカリホウケイ酸塩のいずれか少なくとも一種を主成分として含有していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ用導電ペースト。
【請求項4】
酸処理工程を含むプラズマディスプレイの製造方法に用いる導電ペーストであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極用導電ペースト。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電ペーストを用いて作製されるプラズマディスプレイ用電極。
【請求項6】
平均一次粒径が0.5〜1.4μmの導電粉末を99.1〜99.9wt%の割合で含み、ガラス粉末を0.1〜0.9wt%の割合で含むことを特徴とするプラズマディスプレイ用電極。

【公開番号】特開2010−62018(P2010−62018A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226978(P2008−226978)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】