説明

導電剤および導電性樹脂組成物

【課題】 熱可塑性樹脂の優れた成形性、得られる成形品の優れた機械特性、良好な外観等を損なうことなく、該成形品に十分な導電性を与える導電剤、該導電剤と熱可塑性樹脂を含有してなる導電性樹脂組成物、および該導電性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。
【解決手段】 反応性官能基を有するカーボンナノチューブ、および疎水性ポリマーのブロックと親水性ポリマーのブロックとで構成されるブロックポリマーを含有してなる導電剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電剤および導電性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂成形品の優れた機械特性や良好な外観を損なうことなく、該成形品に優れた導電性を付与するカーボンナノチューブ含有導電剤、並びに、該導電剤および熱可塑性樹脂を含有してなる導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性の高い熱可塑性樹脂に導電性を付与する方法としては、(1)低分子量界面活性剤や高分子型帯電防止剤を練り込む方法および(2)金属フィラーや導電性カーボンブラックを練り込む方法等が知られている。しかしながら(1)の方法で得られる樹脂組成物を成形してなる成形品は機械特性や外観に優れるが、一般的に導電性が低いという難点があった。また、(2)の方法による成形品は導電性には優れるが、金属フィラー等の多量の添加を必要とするため、樹脂組成物の流動性の低下により成形性が悪化したり、耐衝撃性が低下するという問題があった。そこで、これらの問題を解決する方法として、(3)カーボンナノチューブを熱可塑性樹脂に練り込む方法(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−306607号公報
【特許文献2】特開2006−143532号公報
【特許文献3】特開2008−31461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではカーボンナノチューブをプラズマ処理することで樹脂に分散させやすくする技術、特許文献2ではカーボンナノチューブを特殊な解砕機を用いることで樹脂に分散させる技術を開示しているが、いずれも得られる樹脂組成物の流動性が悪く成形性に大きな課題がある。また、特許文献3では、カーボンナノチューブと共役二重結合を有する分散剤の混合物と親水性基含有ポリマーからなる帯電防止剤を提案しているが、該帯電防止剤を樹脂に練りこむ方法では得られる樹脂組成物の成形性、機械特性は優れるものの、満足できる導電性が付与できないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂の優れた成形性、得られる成形品の優れた機械特性、良好な外観等を損なうことなく、該成形品に十分な導電性を与える導電剤、および該導電剤と熱可塑性樹脂を含有してなる導電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、反応性官能基(a)を有するカーボンナノチューブ(A)、および疎水性ポリマー(b1)のブロックと親水性ポリマー(b2)のブロックとで構成されるブロックポリマー(B)を含有してなる導電剤(X)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電剤を含有してなる導電性樹脂組成物は下記の効果を奏する。
(1)成形性に優れる。
(2)得られる成形品は従来にない高度な導電性を有し、外観、機械特性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[導電剤(X)]
本発明の導電剤(X)は、反応性官能基(a)を有するカーボンナノチューブ(A)、および疎水性ポリマー(b1)のブロックと親水性ポリマー(b2)のブロックとで構成されるブロックポリマー(B)を含有してなる。
【0009】
[カーボンナノチューブ(A)]
本発明におけるカーボンナノチューブ(A)を構成するカーボンナノチューブは、炭素原子によって構成されるグラファイト層が単層あるいは多層の同軸管状になった構造を有するものである。(A)には、単層構造のもの(単層カーボンナノチューブ、以下SWNTと略記)、二層構造のもの(二層カーボンナノチューブ、以下DWNTと略記)、多層構造のもの(多層カーボンナノチューブ、以下MWNTと略記)が含まれるが、本発明においては、これらをそれぞれ単体で、または複数を併用することができる。
カーボンナノチューブの直径は、SWNTの場合は0.4〜5nm程度、DWNTやMWNTの場合は10〜50nm程度であり、場合によっては100nmを超えるものが知られているが、工業上および導電性の観点から好ましくは0.4〜200nm、さらに好ましくは1〜100nmである。なお、ここおよび以下における数値範囲について、「および」の前後に示す観点のうち、前に示す観点は数値範囲の下限を規定するものであり、後に示す観点は数値範囲の上限を規定するものであることを意味することとする。
また、カーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/直径の比)は同様の観点から好ましくは5〜1,000、さらに好ましくは10〜1,000である。
カーボンナノチューブは、公知の方法、例えばアーク放電法、レーザー・アブレーション法、化学気相成長法、熱分解法、プラズマ放電を利用する方法等で製造することができ、本願発明におけるカーボンナノチューブはいずれの方法で得られたものであってもよい。
【0010】
本発明における(A)は、反応性官能基(a)を有するカーボンナノチューブである。 (a)としては、アルケニル基[炭素数(以下Cと略記)2〜30]、有機酸基(カルボキシル基、カルボン酸無水物基等)、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
カーボンナノチューブに(a)を導入する変性方法としては、例えばDiels−Alder反応[J.Am.Chem.Soc,114,7301(1992)等に記載]、ヒドロキシル化反応「J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1791(1992)等に記載]、エポキシ化反応[Science,252,548(1991)、J.Am.Chem.Soc,114,1103(1992)等に記載]またはアミンの付加反応[Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,30,1309(1991)等に記載]が挙げられる。
前記(a)のうち、後述するブロックポリマー(B)への(A)の分散性、および製造上の容易さの観点から好ましいのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、さらに好ましいのはカルボキシル基である。
なお、本発明においては、反応性官能基(a)を有するカーボンナノチューブ(A)を、
官能基変性カーボンナノチューブ(例えば、カルボキシル基変性カーボンナノチューブ)ということがある。
【0011】
本発明において、(A)中の反応性官能基(a)の量は、通常の酸アルカリ滴定による酸価、水酸基価等で分析することができ、(a)が後述する疎水性ポリマー(b1)、親水性ポリマー(b2)および/またはブロックポリマー(B)と反応することによる、(B)中での(A)の分散性および導電性の観点から、(A)の酸価は好ましくは0.1〜100(単位はmgKOH/g。以下においては数値のみを記載する。)、さらに好ましくは1〜50である。また、同様の観点から、(A)の水酸基価は好ましくは0.1〜100、さらに好ましくは1〜50である。
【0012】
[疎水性ポリマー(b1)]
本発明における疎水性ポリマー(b1)には、ポリオレフィン(b11)、ポリアミド(b12)、ポリアミドイミド(b13)およびポリエステル(b14)からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーが含まれる。ここにおいて疎水性ポリマーとは、1×1011Ω・cmを超える体積固有抵抗値を有するポリマーのことを意味する。
【0013】
ポリオレフィン(b11)としては、カルボニル基(好ましくは、カルボキシル基、以下同じ。)をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b111)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(112)、およびアミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b113)およびイソシアネート基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b114)等が使用できる。
さらに、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(b115)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(b116)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(b117)、およびイソシアネート基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(b118)等が使用できる。
これらのうち、変性のし易さからカルボニル基を有するポリオレフィン(b111)および(b115)が好ましい。
【0014】
(b111)としては、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分(好ましくは含量50%以上、さらに好ましくは75%以上、とくに好ましくは80〜100%)とするポリオレフィン(b110)の両末端にカルボニル基を導入したものが用いられる。
(b112)としては、(b110)の両末端に水酸基を導入したものが用いられる。
(b113)としては、(b110)の両末端にアミノ基を導入したものが用いられる。
(b114)としては、(b110)の両末端にイソシアネート基を導入したものが用いられる。
【0015】
(b115)としては、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分(好ましくは含量50%以上、さらに好ましくは75%以上、とくに好ましくは80〜100%)とするポリオレフィン(b1100)の片末端にカルボニル基を導入したものが用いられる。
(b116)としては、(b1100)の片末端に水酸基を導入したものが用いられる。
(b117)としては、(b1100)の片末端にアミノ基を導入したものが用いられる。
(b118)としては、(b1100)の片末端にイソシアネート基を導入したものが用いられる。
【0016】
(b110)には、C2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜10)のオレフィンの1種または2種以上の混合物の(共)重合(重合または共重合を意味する。以下同様。)によって得られるポリオレフィン(重合法)および減成されたポリオレフィン{高分子量ポリオレフィン〔好ましくは数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]50,000〜150,000〕を機械的、熱的または化学的に減成してなるもの}(減成法)が含まれる。
カルボニル基、水酸基、アミノ基またはイソシアネート基を導入する変性のし易さおよび入手のし易さの観点から好ましいのは、減成されたポリオレフィン、特に熱減成されたポリオレフィンである。
【0017】
熱減成されたポリオレフィンとしては、高分子量ポリオレフィンを不活性ガス(窒素等)中で加熱する(通常300〜450℃で0.5〜10時間)ことにより熱減成されたもの(例えば特開平3−62804号公報記載のもの)が挙げられる。
該熱減成法に用いられる高分子量ポリオレフィンとしては、C2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜10)のオレフィンの1種または2種以上の混合物の(共)重合体等が使用できる。C2〜30のオレフィンとしては、後述のポリオレフィン(重合法)製造に用いられるものと同じものが使用でき、これらのうち好ましいのはエチレン、プロピレン、C4〜12のα−オレフィンおよびこれらの2種以上の混合物、さらに好ましいのはエチレン、プロピレン、C4〜10のα−オレフィンおよびこれらの2種以上の混合物、特に好ましいのはエチレン、プロピレン、およびこれらの2種以上の混合物である。
【0018】
上記ポリオレフィン(重合法)の製造に用いられるC2〜30のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、C4〜30(好ましくは4〜12、さらに好ましくは4〜10)のα−オレフィンおよびC4〜30(好ましくは4〜18、さらに好ましくは4〜8)のジエンが用いられる。
α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセン等が挙げられる。
ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよび1,11−ドデカジエン等が挙げられる。
これらのうち、エチレン、プロピレン、C4〜12のα−オレフィン、ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、さらに好ましいのはエチレン、プロピレン、C4〜10のα−オレフィンおよびブタジエン、特に好ましいのはエチレン、プロピレンおよびブタジエンである。
【0019】
両末端に変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(b110)のMnは、好ましくは800〜20,000、さらに好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,200〜6,000である。Mnがこの範囲であると導電性がさらに良好になる。
(b110)中の二重結合の量は、炭素数1,000当たり好ましくは1〜40個、さらに好ましくは2〜30個、特に好ましくは4〜20個である。二重結合の量がこの範囲であると導電性がさらに良好になる。
1分子当たりの二重結合の平均数は好ましくは1.1〜5.0、さらに好ましくは1.3〜3.0、特に好ましくは1.5〜2.5、最も好ましくは1.8〜2.2である。二重結合の平均数がこの範囲であると繰り返し構造をさらにとりやすくなり、導電性がさらに良好になる。
熱減成法による低分子量ポリオレフィンでは、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合量が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)〕。
【0020】
(b1100)は、(b110)と同様にして得ることができ、(b1100)のMnは、通常2,000〜50,000、好ましくは2,500〜30,000、さらに好ましくは3,000〜20,000である。
(b1100)は、炭素数1,000当たり0.3〜20個、好ましくは0.5〜15個、さらに好ましくは0.7〜10個の二重結合を有するものである。変性のしやすさの点で、熱減成法による低分子量ポリオレフィン(特にMnが2,000〜20,000のポリエチレンおよび/またはポリプロピレン)が好ましい。
熱減成法による低分子量ポリオレフィンでは、Mnが5,000〜30,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合量が1〜1.5個のものが得られる。
【0021】
なお、(b110)および(b1100)は、通常これらの混合物として得られるが、これらの混合物をそのまま使用してもよく、精製分離してから使用しても構わない。製造コスト等の観点から、混合物として使用するのが好ましい。
【0022】
前記Mnの測定条件は以下のとおりであり、本発明においてMnは同じ条件で測定するものとする。
装置 :高温GPC[機種名「Alliance GPCV2000」、Waters
(株)製]
カラム :PLgel 10μL MIXED−B[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
PLgel 10μL Guard[ポリマーラボラトリーズ(株)製、
ガードカラム]
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム温度 :135℃
【0023】
以下、ポリオレフィン(b110)の両末端にカルボニル基、水酸基、アミノ基またはイソシアネート基を有する(b111)〜(b114)について説明するが、ポリオレフィン(b1100)の片末端にこれらの基を有する(b115)〜(b118)については、(b110)を(b1100)に置き換えて(b111)〜(b114)に準じ同様にして得ることができる。
【0024】
カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b111)としては、(b110)の末端をα,β−不飽和カルボン酸(無水物)(α,β−不飽和カルボン酸、そのC1〜4のアルキルエステルまたはその無水物を意味する。以下、同様。)で変性した構造を有するポリオレフィン(b111−1)、(b111−1)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(b111―2)、(b110)を酸化、またはヒドロホルミル化による変性をした構造を有するポリオレフィン(b111−3)、(b111―3)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(b111―4)およびこれらの2種以上の混合物等が使用できる。
【0025】
(b111−1)は、(b110)をα,β−不飽和カルボン酸(無水物)により変性することにより得ることができる。
変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸(無水物)としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、これらのアルキル(C1〜4)エステルおよびこれらの無水物が使用でき、例えば(メタ)アクリル酸(アクリル酸またはメタアクリル酸を意味する。以下同じ。)、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、マレイン酸(無水物)、マレイン酸ジメチル、フマル酸、イタコン酸(無水物)、イタコン酸ジエチルおよびシトラコン酸(無水物)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ジカルボン酸、これらのアルキルエステルおよびこれらの無水物、さらに好ましいのはマレイン酸(無水物)およびフマル酸、特に好ましいのはマレイン酸(無水物)である。
【0026】
変性に使用するα,β−不飽和カルボン酸(無水物)の量は、ポリオレフィン(b110)の重量に基づき、好ましくは0.5〜40%、さらに好ましくは1〜30%、特に好ましくは2〜20%である。α,β−不飽和カルボン酸(無水物)の量がこの範囲であると繰り返し構造をさらにとりやすくなり、導電性がさらに良好になる。
α,β−不飽和カルボン酸(無水物)による変性は、種々の方法で行うことができ、例えば、(b110)の末端二重結合に、溶液法または溶融法のいずれかの方法で、α,β−不飽和カルボン酸(無水物)を熱的に付加(エン反応)させることにより行うことができる。(b110)にα,β−不飽和カルボン酸(無水物)を反応させる温度は、通常170〜230℃である。
【0027】
(b111−2)は、(b111−1)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
二次変性に用いるラクタムとしては、C6〜12(好ましくは6〜8、さらに好ましくは6)のラクタム等が使用でき、例えば、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタム等が挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、C2〜12(好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜12)のアミノカルボン酸等が使用でき、例えば、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびフェニルアラニン等)、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
これらのうち、カプロラクタム、ラウロラクタム、グリシン、ロイシン、ω−アミノカプリル酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が好ましく、さらに好ましくはカプロラクタム、ラウロラクタム、ω−アミノカプリル酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸、特に好ましくはカプロラクタムおよび12−アミノドデカン酸である。
二次変性に用いるラクタムまたはアミノカルボン酸の量は、α,β不飽和カルボン酸(無水物)のカルボキシル基1個当たり、好ましくは0.1〜50個、さらに好ましくは0.3〜20個、特に好ましくは0.5〜10個、最も好ましくは1〜2個である。この量がこの範囲であると繰り返し構造をさらにとりやすくなり、導電性がさらに良好になる。
【0028】
(b111−3)は、(b110)を酸素および/もしくはオゾンによる酸化法またはオキソ法によるヒドロホルミル化によりカルボニル基を導入することにより得ることができる。
酸化法によるカルボニル基の導入は、公知の方法で行うことができ、例えば、米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。ヒドロホルミル化によるカルボニル基の導入は、公知の方法で行うことができ、例えば、Macromolecules、Vol.31、5,943頁記載の方法で行うことができる。
(b111−4)は、(b111−3)をラクタムまたはアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
ラクタムおよびアミノカルボン酸およびこれらの好ましい範囲は、(b111−2)の製造で使用できるものと同じである。ラクタムおよびアミノカルボン酸の使用量も同じである。
【0029】
(b111)のMnは、耐熱性および後述する親水性ポリマー(b2)との反応性の観点から、好ましくは800〜25,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、とくに好ましくは2,500〜10,000である。
また、(b111)の酸価は、(b2)との反応性の観点から、好ましくは4〜280(単位はmgKOH/g。以下においては数値のみを記載する。)、さらに好ましくは4〜100、特に好ましくは5〜50である。
【0030】
水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b112)としては、前記カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b111)をヒドロキシルアミンで変性したヒドロキシル基を有するポリオレフィンおよびこれらの2種以上の混合物が使用できる。
変性に使用できるヒドロキシルアミンとしては、C2〜10のヒドロキシルアミン、例えば、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノールおよび3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノールが挙げられる。
これらのうち、好ましいのは2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノールおよび6−アミノヘキサノール、さらに好ましいのは2−アミノエタノールおよび4−アミノブタノール、特に好ましいのは2−アミノエタノールである。
【0031】
変性に用いるヒドロキシルアミンの量は、α,β−不飽和カルボン酸(無水物)の残基1個当たり、好ましくは0.1〜2個、さらに好ましくは0.3〜1.5個、特に好ましくは0.5〜1.2個、最も好ましくは1個である。ヒドロキシルアミンの量がこの範囲であると繰り返し構造をさらにとりやすくなり、導電性がさらに良好になる。
(b112)のMnは、耐熱性および後述する親水性ポリマー(b2)との反応性の観点から、好ましくは800〜25,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、特に好ましくは2,500〜10,000である。
また、(b112)の水酸基価は、(b2)との反応性の観点から、好ましくは4〜280(mgKOH/g。以下においては数値のみを記載する。)、さらに好ましくは4〜100、特に好ましくは5〜50である。
【0032】
アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b113)としては、前記カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b111)をジアミン(Q1)で変性したアミノ基を有するポリオレフィンおよびこれらの2種以上の混合物が使用できる。
この変性に用いるジアミン(Q1)としては、C2〜12のジアミン等が使用でき、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンおよびデカメチレンジアミン等が挙げられる。
これらのうち、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンが好ましく、さらに好ましいのはエチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン、特に好ましいのはエチレンジアミンである。
【0033】
変性に用いるジアミンの量は、α,β不飽和カルボン酸(無水物)の残基1個当たり、0.1〜2個が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.5個、さらに好ましくは0.5〜1.2個、特に好ましくは1個である。ジアミンの量がこの範囲であると繰り返し構造をさらにとりやすくなり、導電性がさらに良好になる。
なお、実際の製造に当たっては、ポリアミド(イミド)化を防止するため、α,β不飽和カルボン酸(無水物)の残基1個当たり、2〜1,000個、さらに好ましくは5〜800個、特に好ましくは10〜500個のジアミンを使用し、未反応の過剰ジアミンを減圧下で(通常120℃〜230℃)除去することが好ましい。
【0034】
(b113)のMnは、耐熱性および後述する親水性ポリマー(b2)との反応性の観点から、800〜25,000が好ましく、さらに好ましくは1,000〜20,000、特に好ましくは2,500〜10,000である。
また、(b113)のアミン価は、(b2)との反応性の観点から、4〜280(単位はmgKOH/g。以下、数値のみを記載する。)が好ましく、さらに好ましくは4〜100、特に好ましくは5〜50である。
【0035】
イソシアネート基を両末端に有するポリオレフィン(b114)としては、(b112)をポリ(2〜3またはそれ以上)イソシアネート(以下PIと略記)で変性したイソシアネート基を有するポリオレフィンおよびこれらの2種類以上の混合物が使用できる。PIとしては、C(NCO基中のCを除く、以下同様)6〜20の芳香族PI、C2〜18の脂肪族PI、C4〜15の脂環式PI、C8〜15の芳香脂肪族PI、これらのPIの変性体およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0036】
上記芳香族PIの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下DIと略記)、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI等が挙げられる。
【0037】
上記脂肪族PIの具体例としては、エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0038】
上記脂環式PIの具体例としては、イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI等が挙げられる。
【0039】
上記芳香脂肪族PIの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0040】
また、上記PIの変性体としては、ウレタン変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
これらのうち、好ましいのはTDI、MDIおよびHDI、さらに好ましいのはHDIである。
【0041】
(b112)とPIとの反応は通常のウレタン化反応と同様の方法で行うことができる。
イソシアネート変性ポリオレフィンを形成する際の、PIと(b112)との当量比(NCO/OH比)は、通常1.8/1〜3/1、好ましくは2/1である。
反応を促進するために必要によりポリウレタンに通常用いられる触媒を使用してもよい。このような触媒としては、金属触媒、例えば錫触媒[ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等]、鉛触媒[2−エチルヘキサン酸鉛、オクテン酸鉛等]、その他の金属触媒[ナフテン酸金属塩(ナフテン酸コバルト等)、フェニル水銀プロピオン酸塩等];アミン触媒、例えばトリエチレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類〔1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7[DBU(サンアプロ(株)製、登録商標)]等〕、ジアルキルアミノアルキルアミン[ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン等]、複素環式アミノアルキルアミン[2−(1−アジリジニル)エチルアミン、4−(1−ピペリジニル)−2−ヘキシルアミン等]の炭酸塩および有機酸塩(ギ酸塩など)、N−メチルおよび−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチル−およびジメチルエタノールアミン;およびこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
これらの触媒の使用量はPIと(b112)の合計重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.001〜2%である。
【0042】
(b114)のMnは、耐熱性および後述する親水性ポリマー(b2)との反応性の観点から、好ましくは800〜25,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、とくに好ましくは2,500〜10,000である。
【0043】
前記疎水性ポリマー(b1)のうち、ポリアミド(b12)としては、アミド形成性モノマーを開環重合または重縮合したものが挙げられる。
アミド形成モノマーとしては、ラクタム(b121)、アミノカルボン酸(b122)、およびジアミン(b123)/ジカルボン酸(b124)が挙げられる。
ラクタム(b121)としてはC6〜12、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタムが挙げられる。
(b121)の開環重合体としては、例えばナイロン4、−5、−6、−8および−12が挙げられる。
【0044】
アミノカルボン酸(b122)としては、C6〜12、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
(b122)の自己重縮合体としては、例えばω−アミノエナント酸の重縮合によるナイロン7、ω−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11および12−アミノドデカン酸の重縮合によるナイロン12が挙げられる。
【0045】
ジアミン(b123)としては、C2〜40、例えば脂肪族、脂環式および芳香(脂肪)族ジアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、C2〜40、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミンおよび1,20−エイコサンジアミンが挙げられる。
脂環式ジアミンとしては、C5〜40、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタンおよび2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
芳香脂肪族ジアミンとしては、C7〜20、例えば(パラまたはメタ)キシリレンジア
ミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼンおよびビス(アミノブチル)ベンゼンが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、C6〜40、例えばp−フェニレンジアミン、2,4−および2,6−トルイレンジアミンおよび2,2−ビス(4,4’−ジアミノフェニル)プロパンが挙げられる。
【0046】
ジカルボン酸(b124)としては、C2〜40のジカルボン酸、例えば脂肪族ジカルボン酸、芳香環含有ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、これらのジカルボン酸の誘導体〔例えば酸無水物、低級(C1〜4)アルキルエステルおよびジカルボン酸塩[アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)塩等]〕およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸としては、C2〜40(導電性の観点から好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜12)、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。
芳香環含有ジカルボン酸としては、C8〜40(導電性の観点から好ましくは8〜16、さらに好ましくは8〜14)、例えばオルト−、イソ−およびテレフタル酸、2,6−および−2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸および5−スルホイソフタル酸アルカリ金属(上記に同じ)塩が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C5〜40(導電性の観点から好ましくは6〜18、さらに好ましくは8〜14)、例えばシクロプロパンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸およびショウノウ酸が挙げられる。これらのうち導電性の観点から好ましいのは脂肪族ジカルボン酸および芳香環含有ジカルボン酸、さらに好ましいのはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
ジカルボン酸誘導体のうち酸無水物としては、上記ジカルボン酸の無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水フタル酸;低級(C1〜4)アルキルエステルとしては上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル、例えばアジピン酸ジメチルおよびオルト−、イソ−およびテレフタル酸ジメチルが挙げられる。
【0048】
ジアミンとジカルボン酸との重縮合体としては、ヘキサメチレンジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸またはドデカン二酸の重縮合による、それぞれナイロン66、−610、−69または−612、およびテトラメチレンジアミンまたはメタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン46またはMXD6が挙げられる。
また、共重合ナイロンとしては、ナイロン6/66(アジピン酸/ヘキサメチレンジアミンのナイロン塩とカプロラクタムの共重合体)およびナイロン6/12(12−アミノドデカン酸とカプロラクタムの共重合体)が挙げられる。
【0049】
上記アミド形成性モノマーのうち、導電性の観点から好ましいのは、カプロラクタム、12−アミノドデカン酸、アジピン酸/メタキシリレンジアミンおよびアジピン酸/ヘキサメチレンジアミン、さらに好ましいのはカプロラクタムである。
【0050】
ポリアミド(b12)の製造法としては、上記ジカルボン酸(b124)(C2〜40、好ましくは4〜20)または上記ジアミン(b123)(C2〜40、好ましくは4〜20)の1種またはそれ以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記アミド形成性モノマーを開環重合あるいは重縮合させる方法が挙げられる。
該C2〜40のジアミンとしては前記(b123)として例示したものが挙げられ、これらのうち他のアミド形成性モノマーとの反応性の観点から好ましいのは脂肪族ジアミン、さらに好ましいのはヘキサメチレンジアミンおよびデカメチレンジアミンである。
該C2〜40のジカルボン酸としては、前記(b124)として例示したものが挙げられ、これらのうち他のアミド形成性モノマーとの反応性の観点から好ましいのは脂肪族ジカルボン酸および芳香環含有ジカルボン酸、さらに好ましいのはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
【0051】
上記分子量調整剤の使用量は、アミド形成性モノマーと分子量調整剤合計の重量に基づいて、下限は後述する成形品の導電性の観点から、上限は成形品の耐熱性の観点から、好ましくは2〜80%、さらに好ましくは4〜75%である。
【0052】
ポリアミド(b12)のMnは、成形性および導電剤の製造上の観点から好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000である。
【0053】
前記疎水性ポリマー(b1)のうち、ポリアミドイミド(b13)には、上記アミド形成性モノマーおよび、該アミド形成性モノマーと少なくとも1個のイミド環を形成しうる3価または4価の芳香族ポリカルボン酸もしくはその無水物[以下、芳香族ポリカルボン酸(無水物)と略記。](以下においてアミドイミド形成性モノマーという場合がある。)からなる重合体、およびこれらの混合物が含まれる。前記ジアミン(b123)およびジカルボン酸(b124)は、重合時の分子量調整剤としても使用できる。
【0054】
上記芳香族ポリカルボン酸(無水物)としては、単環(C9〜12)および多環(C13〜20)カルボン酸、例えば3価[単環(トリメリット酸等)、多環(1,2,5−および2,6,7−ナフタレントリカルボン酸、3,3’,4−ビフェニルトリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4−トリカルボン酸等)、およびこれらの無水物]カルボン酸;および4価[単環(ピロメリット酸等)、多環(ビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ベンゾフェノン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸等)、およびこれらの無水物]カルボン酸が挙げられる。
【0055】
ポリアミドイミド(b13)の製造法としては、ポリアミド(b12)の場合と同様に上記ジカルボン酸(C2〜40)または上記ジアミン(C2〜40)の1種またはそれ以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記アミドイミド形成性モノマーを開環重合あるいは重縮合させる方法が挙げられる。該ジカルボン酸およびジアミンのうち好ましいのは(b12)の場合と同様である。
上記分子量調整剤の使用量は、アミドイミド形成性モノマーと分子量調整剤合計の重量に基づいて、下限は後述する成形品の導電性の観点から、上限は成形品の耐熱性の観点から、好ましくは2〜80%、さらに好ましくは4〜75%である。
【0056】
(b13)のMnは、成形性および導電剤の製造上の観点から好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000である。
【0057】
前記疎水性ポリマー(b1)のうち、ポリエステル(b14)としては、エステル形成性モノマーを常法により開環重合、重縮合またはエステル交換反応させることによって得られるものが挙げられる。
エステル形成性モノマーとしては、ラクトン、ヒドロキシカルボン酸、前記ジオール(b0)と前記ジカルボン酸(b124)との組合せ、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
ラクトンとしては、C4〜20、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ピメロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−デカノラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン、ウンデカノラクトンおよびエイコサノラクトンが挙げられる。
【0059】
ヒドロキシカルボン酸としては、C2〜20、例えば、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ω−ヒドロキシカプロン酸、ω−ヒドロキシエナント酸、ω−ヒドロキシカプリル酸、ω−ヒドロキシペルゴン酸、ω−ヒドロキシカプリン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸および20−ヒドロキシエイコサン酸、トロパ酸、ベンジル酸が挙げられる。
【0060】
ポリエステル(b14)の製造法としては、上記のジオール(b0)または上記ジカルボン酸(b124)の1種または2種以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記エステル形成性モノマーを常法により開環重合、重縮合またはエステル交換反応させる方法が挙げられる。
【0061】
(b14)のMnは、成形性および導電剤の製造上の観点から好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000である。
【0062】
[親水性ポリマー(b2)]
本発明における親水性ポリマー(b2)には、ポリエーテル(b21)、カチオン性ポリマー(b22)およびアニオン性ポリマー(b23)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ここにおいては、本発明における親水性ポリマーとは、1×105〜1×1011Ω・cmの体積固有抵抗値を有するポリマーのことを意味する。
【0063】
ポリエーテル(b21)としては、ポリエーテルジオール(b211)、ポリエーテルジアミン(b212)、およびこれらの変性物(b213)が挙げられる。
カチオン性ポリマー(b22)としては、非イオン性分子鎖(c1)で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基(c2)を分子内に有するカチオン性ポリマーが挙げられる。
アニオン性ポリマー(b23)としては、スルホ基を有するジカルボン酸(e1)と、ジオール(b0)またはポリエーテル(b21)とを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホ基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。
【0064】
ポリエーテル(b21)について説明する。
(b21)のうち、ポリエーテルジオール(b211)は、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記)を付加反応させることにより得られる構造のものであり、一般式:H−(OA1m−O−E1−O−(A1O)m'−Hで示されるものが挙げられる。
式中、E1はジオール(b0)から水酸基を除いた残基、A1は炭素数(以下Cと略記)2〜4のアルキレン基、mおよびm’はジオール(b0)の水酸基1個当たりのAO付加数を表す。m個の(OA1)とm’個の(A1O)とは、同一でも異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロックもしくはランダムまたはこれらの組合せのいずれでもよい。mおよびm’は、通常1〜300、好ましくは2〜250、さらに好ましくは10〜100の整数である。また、mとm’とは、同一でも異なっていてもよい。
【0065】
ジオール(b0)としては、2価アルコール(例えばC2〜12の脂肪族、脂環含有および芳香環含有2価アルコール)、C6〜18の2価フェノールおよび3級アミノ基含有ジオールが挙げられる。
脂肪族2価アルコールとしては、例えば、アルキレングリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール(以下それぞれEG、PGと略記)]、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれ1,4−BD、1,6−HD、NPGと略記)、1,12−ドデカンジオール;
脂環含有2価アルコールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール;
芳香環含有2価アルコールとしては、例えば、キシリレンジオールが挙げられる。
2価フェノールとしては、例えば、単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−Fおよび−S、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル等)および縮合多環2価フェノール(ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等)が挙げられる。
【0066】
3級アミノ基含有ジオールとしては、例えば、C1〜12の脂肪族または脂環含有1級モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、ヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物およびC6〜12の芳香環含有1級モノアミン(アニリン、ベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらのうち導電性の観点から好ましいのは、脂肪族2価アルコールおよびビスフェノール、さらに好ましいのはEGおよびビスフェノールAである。
【0067】
ポリエーテルジオール(b211)は、ジオール(b0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、C2〜4のAO[エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−および1,3−ブチレンオキサイド(以下それぞれEO、PO、BOと略記)、およびこれらの2種以上の併用系が用いられるが、必要により他のAOまたは置換AO(以下、これらも含めてAOと総称する。)、例えばC5〜12のα−オレフィン、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)を少しの割合(例えば、全AOの重量に基づいて30%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式はランダムおよび/またはブロックのいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独およびEOと他のAOとの併用(ランダムおよび/またはブロック付加)である。AOの付加数は、ジオール(b0)の水酸基1個当り、通常1〜300、好ましくは2〜250、さらに好ましくは10〜100の整数である。
【0068】
AOの付加は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行なうことができる。(b211)中のC2〜4のオキシアルキレン単位の含量は、通常5〜99.8%、好ましくは8〜99.6%、さらに好ましくは10〜98%である。
ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は、通常5〜100%、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%、特に好ましくは60〜100%である。
【0069】
ポリエーテルジアミン(b212)は、一般式:H2N−A2−(OA1m−O−E1−O
−(A1O)m'−A2−NH2(式中の記号E1,A1、mおよびm’は前記と同様であり、A2はC2〜4のアルキレン基である。A1とA2とは同じでも異なってもよい。)で示されるものが使用できる。
(b212)は、(b211)の水酸基を公知の方法によりアミノ基に変えることにより得ることができ、例えば、(b111)の水酸基をシアノアルキル化して得られる末端を還元してアミノ基としたものが使用できる。
例えば(b211)とアクリロニトリルとを反応させ、得られるシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
【0070】
変性物(b213)としては、例えば、(b211)または(b212)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、同イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)および同エポキシ変性物(末端エポキシ基)が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、(b211)または(b212)と、アミノカルボン酸またはラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、(b211)または(b212)と、後述のようなポリイソシアネートとを反応させるか、(b212)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、(b211)または(b212)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル、脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85〜600)とを反応させるか、(b211)とエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
【0071】
ポリエーテル(b2)のMnは、通常150〜20,000であり、耐熱性および前記の疎水性ポリマー(b2)との反応性の観点から、好ましくは300〜18,000、さらに好ましくは500〜15,000、とくに好ましくは1,200〜8,000である。
【0072】
次に、カチオン性ポリマー(b22)について説明する。(b22)は、分子内に非イオン性分子鎖(c1)で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基(c2)を有する親水性ポリマーである。
カチオン性基(c2)としては、4級アンモニウム塩基またはホスホニウム塩基が挙げられる。(c2)の対アニオンとしては、超強酸アニオンおよびその他のアニオンが挙げられる。
超強酸アニオンとしては、プロトン酸(d1)とルイス酸(d2)との組み合わせから誘導される超強酸(四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸等)のアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸のアニオンが挙げられる。
その他のアニオンとしては、例えばハロゲンイオン(F-、Cl-、Br-、I-等)、OH-、PO4-、CH3OSO4-、C25OSO4-、ClO4-等が挙げられる。
超強酸を誘導する上記プロトン酸(d1)の具体例としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられる。
また、ルイス酸(d2)の具体例としては、三フッ化ホウ素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化タンタル等が挙げられる。
【0073】
非イオン性分子鎖(c1)としては、2価の有機基(2価の炭化水素基;エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、イミノ結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合および/またはシロキシ結合を有する炭化水素基、並びに窒素原子もしくは酸素原子を含む複素環構造を有する炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種の、ヘテロ原子を含有する2価の炭化水素基);並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらの(c1)のうち好ましいのは、2価の炭化水素基およびエーテル結合を有するヘテロ原子を含有する2価の炭化水素基である。
【0074】
カチオン性ポリマー(b22)のMnは、帯電防止性および前記の疎水性ポリマー(b2)との反応性の点から、好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000、とくに好ましくは1,200〜8,000である。
【0075】
カチオン性ポリマー(b22)の具体例としては、特開2001−278985号公報記載のカチオン性ポリマーが挙げられる。
【0076】
次に、アニオン性基を有するポリマー(b23)について説明する。
(b23)は、スルホ基を有するジカルボン酸(e1)と、ジオール(b0)またはポリエーテル(b21)とを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホ基を有するアニオン性ポリマーである。
ジカルボン酸(e1)としては、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する脂肪族ジカルボン酸およびこれらのスルホ基のみが塩となったものが使用できる。
【0077】
スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体[低級アルキル(C1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル等)、酸無水物等]が挙げられる。
スルホ基を有する脂肪族ジカルボン酸としては、例えばスルホコハク酸およびそのエステル形成性誘導体[低級アルキル(C1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル等)、酸無水物等]が挙げられる。
これらのスルホ基のみが塩となったものとしては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)の塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)の塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアルキル(C2〜4)基を有するモノ−、ジ−およびトリ−アミン(モノ−、ジ−およびトリ−エチルアミン、モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン塩)等のアミン塩、これらアミンの4級アンモニウム塩およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、さらに好ましいのは5−スルホイソフタル酸塩、とくに好ましいのは5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩および5−スルホイソフタル酸カリウム塩である。
【0078】
(b23)を構成する(b0)または(b21)のうち好ましいのは、C2〜10のアルカンジオール、EG、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(重合度2〜20)、ビスフェノール(ビスフェノールA等)のEO付加物(付加モル数2〜60)およびこれらの2種以上の混合物である。
(b23)の製法としては、通常のポリエステルの製法がそのまま適用できる。ポリエステル化反応は、通常減圧下150〜240℃の温度範囲で行われ、反応時間は0.5〜20時間である。また、該エステル化反応においては、必要により通常のエステル化反応に用いられる触媒を用いてもよい。
エステル化触媒としては、例えばアンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、錫触媒(モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート等)、酢酸金属塩触媒(酢酸亜鉛等)等が挙げられる。
【0079】
(b23)のMnは、導電性および前記の疎水性ポリマー(b1)との反応性の観点から、好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000、とくに好ましくは1,200〜8,000である。
【0080】
[ブロックポリマー(B)]
本発明のブロックポリマー(B)は、前記疎水性ポリマー(b1)のブロックと、親水性ポリマー(b2)のブロックとで構成されるものである。さらに、導電性の観点から好ましいのは、(b1)のブロックと、(b2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合、ウレタン結合およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して結合した構造を有するものである。
該(B)の重量に基づく(b2)のブロックの割合は、導電性と機械特性の観点から好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%である。
【0081】
(B)を構成する、(b1)のブロックと(b2)のブロックとが結合した構造には、(b1)−(b2)型、(b1)−(b2)−(b1)型、(b2)−(b1)−(b2)型および[(b1)−(b2)]n型(nは平均繰り返し数を表す)が含まれる。
該ブロックポリマー(B)の構造は、導電性の観点から(b1)と(b2)とが繰り返し交互に結合した[(b1)−(b2)]n型の構造が好ましい。
[(b1)−(b2)]n型の構造の繰り返し単位の平均繰り返し数nは導電性および成形品の機械特性の観点から好ましくは2〜50、さらに好ましくは2.3〜30、とくに好ましくは2.7〜20、最も好ましくは3〜10である。nは、ブロックポリマー(B)のMnおよび1H−NMR分析によって求めることができる。
【0082】
ブロックポリマー(B)のMnは、溶融粘度の観点から好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜60,000、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0083】
(b1)、(b2)の各ブロック間の結合のうち、エステル結合、アミド結合およびイミド結合は、例えばポリエーテル(b21)[(b211)または(b212)]と前記疎水性ポリマー(b1)[(b111)または(b115)等]との反応で形成され、エーテル結合は、例えばポリエーテルジオール(b211)にエピハロヒドリンを反応させた前記エポキシ変性物と、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(b112)との反応で形成される。
また、ウレタン結合は、例えばポリエーテルジオール(b211)とイソシアネート基を両末端に有するポリオレフィン(b114)との反応で形成され、ウレア結合は、例えばポリエーテルジアミン(b212)とイソシアネート基を両末端に有するポリオレフィン(b114)との反応で形成される。
【0084】
(B)には、下記の(B1)、(B2)およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(B1):ポリオレフィン(b11)のブロックと、ポリエーテル(b21)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合、ウレタン結合およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して結合した構造を有するブロックポリマー
(B2):ポリアミド(b12)のブロックと、ポリエーテル(b21)のブロックで構成されるポリエーテルエステルアミドブロックポリマー
(B3):ポリアミドイミド(b13)のブロックと、ポリエーテル(b21)のブロックで構成されるポリエーテルアミドイミドブロックポリマー
(B4):ポリエステル(b14)のブロックと、ポリエーテル(b21)のブロックで構成されるポリエーテルエステルブロックポリマー
これらのうち、導電性の観点から好ましいのは、(B1)および(B2)である。
【0085】
[導電剤(X)]
本発明の導電剤(X)は、前記のカーボンナノチューブ(A)、およびブロックポリマー(B)を含有してなる。(A)と(B)の合計重量に基づく(A)の含有量は、導電性および分散性の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.5〜5%である。
【0086】
また、導電剤(X)には、(A)が有する反応性官能基(a)と、疎水性ポリマー(b1)、親水性ポリマー(b2)および/またはブロックポリマー(B)とが反応して結合したもの、該結合をしていない(A)および該結合をしていない(B)等が含まれる。
【0087】
導電剤(X)を製造する方法としては、次の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)(A)と(B)とを溶融混合する方法
(2)(A)と疎水性ポリマー(b1)を予め混合しておき、その後(b2)を加え、(b1)と(b2)を反応させて(A)の存在下で(B)を得る方法
(3)(A)と親水性ポリマー(b2)を予め混合しておき、その後(b1)を加え、(b2)と(b1)を反応させて(A)の存在下で(B)を得る方法
これらのうち、(B)中での(A)の分散性の観点から好ましいのは(3)である。
さらに、上記(3)の(A)と(b2)を混合する際には、(b2)または(b2)を含有する水性媒体中で、分散機を使用して(A)の分散液を得る方法が同様の観点からさらに好ましい。水性媒体としては、水やアルコール(C1〜4のもの、例えばメタノール、イソプロパノール)が使用でき、分散機としては例えば超音波分散機等が使用できる。
【0088】
[導電性樹脂組成物]
本発明の導電性樹脂組成物は、導電剤(X)および熱可塑性樹脂(D)を含有してなる。(X)と(D)の合計重量に基づく(X)の含有量は、導電性および機械特性の観点から好ましくは1〜20%、さらに好ましくは3〜15%である。
【0089】
熱可塑性樹脂(D)としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂(D1);ビニル樹脂〔ポリオレフィン樹脂(D2)[例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂]、ポリ(メタ)アクリル樹脂(D3)[例えばポリメタクリル酸メチル]、ポリスチレン樹脂(D4)[ビニル基含有芳香族炭化水素単独またはビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルおよびブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)]等〕;ポリエステル樹脂(D5)[例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート];ポリアミド樹脂(D6)[例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12];ポリカーボネート樹脂(D7)[例えばポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート(PC)/ABSアロイ樹脂];ポリアセタール樹脂(D8)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0090】
これらのうち、後述する成形品の機械特性および本発明の導電剤(X)の(D)への分散性の観点から好ましいのは、(D1)、(D2)、(D3)、(D4)および(D7)、さらに好ましいのは(D2)、(D4)および(D7)である。
【0091】
本発明の導電性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに必要により導電性向上剤(C)を含有させてもよい。
(C)には、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩(C1)、第4級アンモニウム塩(C2)、界面活性剤(C3)、イオン性液体(C4)および相溶化剤(C5)等が含まれる。これらは、1種を単独で用いても、また2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0092】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩(C1)としては、金属[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)もしくはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)]の、有機酸(C1〜7のモノ−およびジ−カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸;C1〜7のスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸;チオシアン酸)の塩、および無機酸[ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸等)、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸等]の塩が挙げられる。
【0093】
第4級アンモニウム塩(C2)としては、アミジニウム(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等)、グアニジウム(2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム等)等の、有機酸(前記)および無機酸(前記)の塩が挙げられる。
【0094】
界面活性剤(C3)としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性の界面活性剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
イオン性液体(C4)としては、上記(C1)〜(C3)を除く化合物で、室温以下の融点を有し、構成するカチオンまたはアニオンのうち少なくとも一つが有機物イオンで、初期電導度が1〜200ms/cm(好ましくは10〜200ms/cm)である常温溶融塩であって、例えばWO95/15572公報に記載の常温溶融塩が挙げられる。
【0096】
相溶化剤(C5)としては、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびポリオキシアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体等:例えば、特開平3−258850号公報に記載の重合体、また、特開平6−345927号公報に記載のスルホン酸基を有する変性ビニル重合体、ポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体等が挙げられる。
【0097】
導電性向上剤(C)の合計含有量は、熱可塑性樹脂(D)の重量に基づいて、通常5%以下、導電性および樹脂表面に析出せず良好な外観の樹脂成形品を与える観点から好ましくは0.001〜3%、さらに好ましくは0.01〜2.5%である。
(C1)〜(C5)の各成分の熱可塑性樹脂(D)の重量に基づく含有量は、同様の観点から、好ましくは0.001〜3%、さらに好ましくは0.01〜2.5%である。
【0098】
本発明の導電性樹脂組成物に(C)を含有させる方法としては、後述する成形品の外観を損なわないために導電剤(X)中に予め分散させておくことが好ましく、ブロックポリマー(B)の製造時に(C)を含有させておく方法がさらに好ましい。(C)を(B)の製造時に含有させるタイミングは特に限定はなく、重合前、重合中および重合後のいずれでもよいが重合前の原料に含有させるのが好ましい。
【0099】
本発明の導電性樹脂組成物は、導電剤(X)、熱可塑性樹脂(D)、および必要により(C)を溶融混合することにより得られる。溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状または粉体状の成分を適切な混合機、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に限定はないが、例えば、(1)導電剤(X)を溶融させてから、(D)、必要により(C)を一括して溶融混合する方法、(2)(X)を溶融させてから、(D)の一部を予め溶融混合して(X)の高濃度(好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜70重量%)組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作成し、その後、残りの(D)並びに必要に応じて(C)を溶融混合する方法、が挙げられる。
【0100】
[導電性樹脂成形品]
本発明の導電性樹脂成形品は、上記導電性性樹脂組成物を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【0101】
本発明の成形品は、優れた機械物性および導電性を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品が得られる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。
塗装膜厚(乾燥膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10〜50μmである。
【0102】
また、該成形品または成形品に塗装を施した上に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【実施例】
【0103】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0104】
製造例1[カルボキシル基変性カーボンナノチューブ(A−1)]
ガラス製反応容器に、単層カーボンナノチューブ[商品名「S−SWNT」、NTP(Shenten Nanotech Port Co.)(株)製、直径10nm、アスペクト比500]10部、テトラヒドロフラン50部を仕込み、超音波分散機を用いて10分間超音波(出力100W、周波数42kHz。以下同じ。)を照射した。次いで、窒素雰囲気下40℃で、撹拌しながら4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)2部を仕込み、その後140℃で5時間反応させた。反応終了後、室温(20〜30℃)まで冷却し、反応溶液から黒色固体をろ別した。該黒色固体にテトラヒドロフラン50部を加えて洗浄する操作を2回行った後、減圧乾燥させて、カルボキシル基変性カーボンナノチューブ(A−1)を得た。(A−1)の酸価は22であった。その後、(A−1)に水を加えた後、10分間超音波を照射して(A−1)の10%水分散液を得た。
【0105】
製造例2[ヒドロキシル基変性カーボンナノチューブ(A−2)]
製造例1において、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)2部に代えて、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]2部を用いた以外は製造例1と同様にして、ヒドロキシル基変性カーボンナノチューブ(A−2)を得た。(A−2)の水酸基価は15であった。その後、(A−2)に水を加えた後、10分間超音波を照射して(A−2)の10%水分散液を得た。
【0106】
製造例3[カルボキシル基変性カーボンナノチューブ(A−3)]
製造例1において、単層カーボンナノチューブ10部に代えて、多層カーボンナノチューブ[商品名「MWNT−A−P」、サンナノテック(株)製、直径1nm、アスペクト比500]を用いたこと以外は製造例1と同様にして、カルボキシル基変性カーボンナノチューブ(A−3)を得た。(A−3)の酸価は26であった。その後、(A−3)に水を加えた後、10分間超音波を照射して(A−3)の10%水分散液を得た。
【0107】
製造例4[酸変性ポリオレフィン(b1−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、熱減成法で得られた低分子量エチレン/プロピレンランダム共重合体(エチレン含量2%、Mn3,500、密度0.89g/cm3、C1,000当たりの二重結合量7.1個、1分子当たりの二重結合の平均数1.8、両末端変性可能なポリオレフィンの含有量90%)95部、無水マレイン酸10部、キシレン30部を仕込み、窒素ガス雰囲気(密閉)下、200℃で溶融し、200℃、20時間反応させた。その後、過剰の無水マレイン酸とキシレンを減圧下、200℃、3時間で留去して、酸変性ポリオレフィン(b1−1)を得た。(b1−1)の酸価は27.2、Mnは3,700、体積固有抵抗値は9×1015Ω・cmであった。
【0108】
製造例5[二次変性ポリオレフィン(b1−2)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、酸変性ポリオレフィン(b1−1)88部と12−アミノドデカン酸12部を仕込み、窒素ガス雰囲気(密閉)下、200℃で溶融し、200℃、3時間、1.3kPa以下の減圧下で反応させ、二次変性ポリオレフィン(b1−2)を得た。(b1−2)の酸価は24.0、Mnは4,200、体積固有抵抗値は3×1015Ω・cmであった。
【0109】
製造例6[水酸基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−3)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、酸変性ポリオレフィン(b1−1)95部、エタノールアミン5部を仕込み、窒素ガス雰囲気(密閉)下、180℃で溶融し、180℃、2時間反応させた。その後、過剰のエタノールアミンを減圧下、180℃、2時間で留去して、水酸基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−3)を得た。(b1−3)の水酸基価は26.0、アミン価は0.01、Mnは3,900、体積固有抵抗値は8×1015Ω・cmであった。
【0110】
製造例7[アミノ基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−4)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、酸変性ポリオレフィン(b1−1)95部、ビス(2−アミノエチル)エーテル40部を仕込み、窒素ガス雰囲気(密閉)下、撹拌しながら、200℃で溶融し、200℃、2時間反応させた。その後、過剰のビス(2−アミノエチル)エーテルを減圧下、200℃、2時間で留去して、両末端にアミノ基を有する変性ポリオレフィン(b1−4)を得た。(b1−4)のアミン価は25.5、Mnは4,000、体積固有抵抗値は5×1015Ω・cmであった。
【0111】
製造例8[カルボキシル基を両末端に有するポリアミド(b1−5)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム83.5部、テレフタル酸16.5部、酸化防止剤〔商品名「イルガノックス1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、以下同じ。〕0.3部および水6部を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換後、220℃で加圧(0.3〜0.4MPa、以下同じ。)密閉下、4時間加熱撹拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(b1−5)を得た。(b1−5)のMnは1,000、酸価は112、体積固有抵抗値は7×1014Ω・cmであった。
【0112】
製造例9[カチオン性ポリマー(b2−4)の製造]
ガラス製オートクレーブにN−メチルジエタノールアミン41部、アジピン酸49部および酢酸ジルコニル0.3部を仕込み、窒素置換後、2時間かけて220℃まで昇温し、1時間かけて0.13kPaまで減圧してポリエステル化反応を行わせた。反応終了後、50℃まで冷却し、メタノール100部を加えて溶解させた。撹拌しながら該溶液の温度を120℃に保ち、炭酸ジメチル31部を3時間かけて徐々に滴下し、同温度で6時間熟成させた。室温まで冷却後、ジオクチルリン酸110部を加え、室温で1時間撹拌した。次いでメタノールを減圧留去し、1分子内に4級アンモニウム基を平均12個有するカチオン性ポリマー(b2−4)を得た。(b2−4)の水酸基価は16.5、酸価は0.5、Mnは6,800、体積固有抵抗値は1×105Ω・cmであった。
【0113】
製造例10[アニオン性ポリマー(b2−5)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、 Mn300のPEG67部、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルのナトリウム塩49部およびジブチルスズオキシド0.2部を仕込み、0.67kPaの減圧下で190℃まで昇温し、反応によって生じるメタノールを留去しながら6時間エステル交換反応させ、1分子内にスルホン酸ナトリウム塩基を平均5個有するアニオン性ポリマー(b2−5)を得た。(b2−5)の水酸基価は29.6、酸価は0.4、Mnは3,500、体積固有抵抗値は2×106Ω・cmであった。
【0114】
実施例1[導電剤(X−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、(A−1)の10%水分散液10部、PEG3000(Mn3,000)(b2−1)39.1部を仕込み、80℃で撹拌均一化した。次いで、二次変性ポリオレフィン(b1−2)59.9部、酸化防止剤0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、230℃、0.13kPa以下の減圧下で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマ−をベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−1)を得た。
【0115】
実施例2[導電剤(X−2)の製造]
実施例1において、(b2−1)39.1部、(b1−2)59.9部に代えて、(b2−1)41部、水酸基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−3)58部、ドデカン二酸6部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−2)を得た。
【0116】
実施例3[導電剤(X−3)の製造]
実施例1において、(b2−1)39.1部、二次変性ポリオレフィン(b1−2)59.9部に代えて、(b2−1)40.5部、アミノ基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−4)58.6部、ドデカン二酸6部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−3)を得た。
【0117】
実施例4[導電剤(X−4)の製造]
実施例1において、(b2−1)39.1部、二次変性ポリオレフィン(b1−2)59.9部に代えて、ビスフェノールAのEO付加物(Mn2,000)(b2−2)66.1部、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(b1−5)32.9部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−4)を得た。
【0118】
実施例5[導電剤(X−5)の製造]
実施例1において、(A−1)の10%水分散液10部、(b2−1)39.1部、二次変性ポリオレフィン(b1−2)59.9部に代えて、(A−2)の10%水分散液10部、(b2−1)38.5部、(b1−2)60.5部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−2)を含有する導電剤(X−5)を得た。
【0119】
実施例6[導電剤(X−6)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、(A−2)の10%水分散液10部、(b2−1)40.3部を仕込み、80℃で撹拌均一化後、減圧脱水して水分0.1%以下とした。次いで、MDI 6.7部を仕込み、90℃で反応させて末端イソシアネート基変性PEG(b2−3)とイソシアネート基変性(A−2)との混合物を得た。その後、水酸基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−3)51.3部、酸化防止剤0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を加え、230℃、0.13kPa以下の減圧下で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー構造中に(A−2)を含有する導電剤(X−6)を得た。
【0120】
実施例7[導電剤(X−7)の製造]
実施例6において、(b2−1)40.3部、MDI 6.7部、(b1−3)51.3部に代えて、(b2−1)33.3部、MDI 5.6部、アミノ基をポリマー両末端に有する変性ポリオレフィン(b1−4)60.2部を用いたこと以外は実施例6と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−2)を含有する導電剤(X−7)を得た。
【0121】
実施例8[導電剤(X−8)の製造]
実施例1において、(A−1)の10%水分散液10部に代えて、(A−3)の10%水分散液10部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−3)を含有する導電剤(X−8)を得た。
【0122】
実施例9[導電剤(X−9)の製造]
実施例1において、(b2−1)39.1部、(b1−2)59.9部に代えて、カチオン性ポリマー(b2−4)59.3部、(b1−2)39.7部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−9)を得た。
【0123】
実施例10[導電剤(X−10)の製造]
実施例1において、(b2−1)39.1部、(b1−2)59.9部に代えて、アニオン性ポリマー(b2−5)44.8部、(b1−2)54.2部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−10)を得た。
【0124】
実施例11[導電剤(X−11)の製造]
実施例1において、(A−1)の10%水分散液10部、(b1−2)59.9部に代えて、(A−1)の10%水分散液1部、(b1−2)60.8部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−11)を得た。
【0125】
実施例12[導電剤(X−12)の製造]
実施例1において、(A−1)の10%水分散液10部、(b1−2)59.9部に代えて、(A−1)の10%水分散液50部、(b1−2)56.1部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマー構造中に(A−1)を含有する導電剤(X−12)を得た。
【0126】
比較例1[導電剤(比X−1)の製造]
実施例1において、(A−1)を用いないこと以外は実施例1と同様にして、ブロックポリマーからなる導電剤(比X−1)を得た。
【0127】
比較例2[導電剤(比X−2)の製造]
実施例4において、(A−1)を用いないこと以外は実施例4と同様にして、ブロックポリマーからなる導電剤(比X−2)を得た。
【0128】
比較例3[導電剤(比X−3)の製造]
製造例1において、水を加える前の減圧乾燥した(A−1)を導電剤(比X−3)としてそのまま使用した。
【0129】
実施例13〜27、比較例4〜9
表1に示す配合処方に従って、(X−1)〜(X−12)または(比X−1)〜(比X−3)と熱可塑性樹脂(D−1)または(D−2)と導電性向上剤(C−1)とを、ヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、220℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練し、樹脂組成物(実施例13〜27、比較例4〜9)を得た。
【0130】
表1中の記号の内容は以下のとおりである。
C−1: エポキシ化ポリスチレン系エラストマー[商品名「エポフレンドAT
501」、ダイセル化学工業(株)製、相溶化剤。]
D−1: ポリプロピレン樹脂[商品名「サンアロマーPM771M」、サンアロマー
(株)製]
D−2: ABS樹脂[商品名「セビアン−V320」、ダイセルポリマー(株)製]
【0131】
<性能試験>
上記で得られた樹脂組成物を射出成形機[型番「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)製。以下同じ]を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃の条件で試験片を作製し、表面固有抵抗値、衝撃強度、成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
<性能評価項目>
(1)表面固有抵抗値
ASTM D257(1984年)に準拠。試験片(100×100×2mm)を用い超絶縁計[型番「DSM−8103」、東亜電波工業(株)製]により23℃、湿度50%RHの雰囲気下で測定した。
【0133】
(2)衝撃強度
ASTM D256(ノッチ付き、3.2mm厚)Method Aに準拠。
【0134】
(3)成形性(表面状態)
成形品の表面状態を熱可塑性樹脂単体の成形品と比較し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○ 成形品表面が熱可塑性樹脂単体の成形品と同等で凹凸なし。
× 成形品表面が熱可塑性樹脂単体の成形品と比べ凹凸が認められる。
【0135】
【表1】

【0136】
表1から、本発明の樹脂組成物(実施例13〜27)は、熱可塑性樹脂単体(比較例8、9)と同等の優れた成形性を有し、得られた成形品は熱可塑性樹脂単体と同等の衝撃強度(機械強度)を有すること、および比較の成形品(比較例4〜6、8〜9)に比べ導電性がはるかに優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂成形品の機械特性や良好な外観を損なうことなく、該成形品に優れた導電性を付与できることから、各種成形法[射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形およびフィルム成形(例えばキャスト法、テンター法およびインフレーション法)等]で成形されるハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器および事務機器用等]、プラスチック容器材[クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料として幅広く用いることができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基(a)を有するカーボンナノチューブ(A)、および疎水性ポリマー(b1)のブロックと親水性ポリマー(b2)のブロックとで構成されるブロックポリマー(B)を含有してなる導電剤(X)。
【請求項2】
(a)が、カルボキシル基およびヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基である請求項1記載の導電剤(X)。
【請求項3】
(b1)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーである請求項1または2記載の導電剤(X)。
【請求項4】
(b2)が、ポリエーテル、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーである請求項1〜3のいずれか記載の導電剤(X)。
【請求項5】
(B)が、下記の(B1)および(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の導電剤(X)。
(B1):ポリオレフィンのブロックと、ポリエーテルのブロックとがエステル結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合、ウレタン結合およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して結合した構造を有するブロックポリマー
(B2):ポリアミドとポリエーテルとで構成されるポリエーテルエステルアミドブロックポリマー
【請求項6】
(A)と(B)の合計重量に基づく(A)の含有量が0.1〜5%である請求項1〜5のいずれか記載の導電剤(X)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の導電剤(X)および熱可塑性樹脂(D)を含有してなる導電性樹脂組成物。
【請求項8】
(X)と(D)の合計重量に基づく(X)の含有量が1〜20%である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
さらに、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩、第4級アンモニウム塩、界面活性剤、イオン性液体および相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の導電性向上剤を含有させてなる請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか記載の組成物を成形してなる成形品。
【請求項11】
請求項10記載の成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品。
【請求項12】
親水性ポリマー(b2)または(b2)を含有する水性媒体中で、カーボンナノチューブ(A)の分散液を得る工程(I)、および該分散液に疎水性ポリマー(b1)を加え、カーボンナノチューブ(A)の存在下で(b1)のブロックと(b2)のブロックとで構成されるブロックポリマー(B)を形成させる工程(II)とを含む請求項1〜6のいずれか記載の導電剤(X)の製造方法。

【公開番号】特開2012−251018(P2012−251018A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122642(P2011−122642)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】