説明

導電塗料および導電塗膜

【課題】カーボン粉体の配合量を増やしても、カーボン粉体の分散性、段差や角部分に対する被覆性、下地との密着性に優れた導電塗料および導電塗膜を提供すること。
【解決手段】固体電解コンデンサ1の製造工程において、陽極体10に誘電体層2および固体電解質層3を形成した後、カーボン層4を形成するにあたって、カーボン粉体、有機バインダ、および溶媒を含む導電塗料を塗布後、加熱処理を行なう。ここで、導電塗料は、有機バインダとして、セルロース誘導体とゴムとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン粉体を用いた導電塗料および導電塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボン粉体を用いた導電塗料は、一般に、カーボン粉体と、ニトロセルロースなどの有機バインダとをシクロヘキサンやメチルエチルケトンなどの溶媒に配合してなり、かかる導電塗料を塗布した後、加熱すると、有機バインダ中にカーボン粉体が分散した導電塗膜が得られる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平7−100770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる導電塗料に対しては、塗料の状態でのカーボン粉体の分散性が優れていることが求められるとともに、カーボン粉体が均一に分散している状態が長期間にわたって維持されることが求められる。また、導電塗料に対しては、塗膜の状態での導電性、段差や角部分に対する被覆性、下地との密着性が求められる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の導電塗料に限らず、従来の導電塗料は、例えば、塗膜の状態での導電性を確保するためにカーボン粉体の配合量を増やすと、カーボン粉体が均一に分散している状態を長期間にわたって維持できないとともに、段差や角部分に対する被覆性や下地との密着性が低下するという問題がある。
【0005】
従って、従来の導電塗料を用いる場合には、カーボン粉体の配合量を低めに設定し、カーボン粉体が均一に分散している状態をできるだけ長期間にわたって維持できるようにするとともに、下地との密着性を高めている。但し、かかる対策を採用した場合には、導電塗料の塗布回数(重ね塗り回数)を増やす必要があるため、生産性が低下するという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、カーボン粉体の配合量を増やしても、カーボン粉体の分散性、段差や角部分に対する被覆性、下地との密着性に優れた導電塗料および導電塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、カーボン粉体、有機バインダ、および該有機バインダを溶解可能な溶媒を含む導電塗料において、前記有機バインダとして、セルロース誘導体とゴムとを含むことを特徴とする。
【0008】
かかる導電塗料を用いて形成した導電塗膜は、カーボン粉体が有機バインダ中に分散してなる導電塗膜であって、前記有機バインダとして、セルロース誘導体とゴムとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、有機バインダとして、セルロース誘導体に加えてゴムを用いているため、導電塗料を塗布した後、加熱して得られる導電塗膜は、段差や角部分に対する被覆性、および下地との密着性に優れている。かかる効果が得られる理由は、有機バインダとしてセルロース誘導体に加えてゴムを用いると、セルロース誘導体のみを用いた場合に比較して導電塗膜が柔軟性や展性を備えているため、段差や角部分に対する被覆性に優れ、かつ、下地との密着性に優れていると考えられる。従って、カーボン粉体の配合量を増やしても、従来の導電塗料以上の被覆性や密着性が得られることから、導電塗料の塗布回数(重ね塗り回数)を少なくすることができ、生産性が向上する。また、カーボン粉体の配合量を増やしても、カーボン粉体の分散性や、カーボン粉体が均一に分散している状態が長期間にわたって維持されるため、工程管理も容易である。
【0010】
本発明に係る導電塗料において、前記セルロース誘導体と前記ゴムとの配合比が質量比で9:1〜1:9であり、前記カーボン粉体と前記有機バインダとの配合比が質量比で5:1〜12:1であることが好ましい。セルロース誘導体に対するゴムの配合比が9:1〜1:9からゴムが多い方にシフトすると、カーボン粉体の分散性が低下するとともに、導電塗膜中でのカーボン粉体同士の接触が安定せず、導電塗膜の電気抵抗のばらつきが増大する。これに対して、セルロース誘導体に対するゴムの配合比が9:1〜1:9からゴムが少ない方にシフトすると、ゴムを配合したことによる被覆性や密着性に関する効果が小さくなってしまう。また、導電塗膜の耐湿性が低下する。それ故、セルロース誘導体とゴムとの配合比は、質量比で9:1〜1:9であることが好ましい。また、カーボン粉体と有機バインダとの配合比が5:1〜12:1からカーボン粉体が多い方にシフトすると、ゴムを配合しても被覆性や密着性が低下する傾向にある。これに対して、カーボン粉体と有機バインダとの配合比が5:1〜12:1からカーボン粉体が少ない方にシフトすると、導電塗膜の電気抵抗のばらつきが増大する。それ故、カーボン粉体と有機バインダとの配合比は5:1〜12:1であることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記ゴムの配合比は、前記セルロース誘導体の配合比に比して質量比で大であることが好ましい。セルロース誘導体がゴムより多いと、カーボン粉体の分散性は向上するが、耐湿性が低下する。それ故、ゴムの配合比がセルロース誘導体の配合比に比して大であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る導電塗料において、前記カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が3〜12質量%であることが好ましい。カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が3質量%未満であると、1回の塗布で得られる導電塗膜が薄く、カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が12質量%を超えると、分散性が低下する。それ故、カーボン粉体の導電塗料全体における配合量は、3〜12質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記セルロース誘導体としては、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシルメチルセルロースなどからなる群から選ばれた1種あるいは2種以上のセルロース誘導体が用いられる。本発明においては、溶剤に溶解しやすいという観点から、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースが特に好ましい。
【0014】
本発明において、前記ゴムとしては、ブタジエン系ゴム(ニトリルゴム(アクリロニトリルブタジエンゴム)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムなど)、イソプレン系ゴム(天然ゴム、ポリイソプレンゴムなど)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムおよびウレタンゴムなどからなる群から選ばれた1種あるいは2種以上のゴムが用いられる。本発明においては、溶剤に溶解しやすいという観点から、ブタジエン系ゴム、ブチルゴム、アクリルゴムが特に好ましい。
【0015】
本発明において、前記溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどからなる群から選ばれた溶媒が用いられる。本発明では、セルロース誘導体およびゴムに対する溶解性や、沸点、コストなどの観点から、ジメチルホルムアミド、ブチルセロソルブ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが特に好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る導電塗料および導電塗膜では、有機バインダとして、セルロース誘導体に加えてゴムを用いているため、導電塗料を塗布した後、加熱して得られる導電塗膜は、段差や角部分に対する被覆性、および下地との密着性に優れている。従って、カーボン粉体の配合量を増やしても、導電塗料の塗布回数(重ね塗り回数)を少なくすることができ、生産性が向上する。また、カーボン粉体の配合量を増やしても、カーボン粉体の分散性や、カーボン粉体が均一に分散している状態が長期間にわたって維持されるため、工程管理も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[導電塗料および導電塗膜の使用例]
本発明を適用した導電塗料および導電塗膜を説明する前に、本発明を適用した導電塗料および導電塗膜の用途の一例として、本発明を適用した導電塗料および導電塗膜を用いて、固体電解コンデンサの陰極用のカーボン層を形成した例を説明しておく。
【0018】
図1は、本発明を適用した導電塗料および導電塗膜により形成したカーボン層を備えた固体電解コンデンサの説明図である。
【0019】
図1に示す固体電解コンデンサ1は、タンタル、ニオブ、アルミニウムなどの弁作用金属からなる陽極体10に、誘電体層2、導電性酸化物や導電性高分子からなる固体電解質層3、陰極用のカーボン層4、銀ペーストからなる陰極層5が順次形成された構造を有しており、かかるコンデンサ素子は、樹脂11によって外装されている。陰極層5と陰極フレーム6とは導電性接着剤7により接続され、陰極フレーム6によって陰極端子が形成されている。また、陽極体1からは陽極端子9が引き出されている。
【0020】
かかる固体電解コンデンサ1を製造するには、陽極体10に誘電体層2および固体電解質層3を形成した後、カーボン層4を形成する。かかるカーボン層4を形成するには、固体電解質層3までを形成した陽極体10に、本発明を適用した導電塗料を塗布した後、120〜200℃程度の温度で加熱して導電塗膜(カーボン層4)を形成する。その際、1回の工程では、十分な厚さのカーボン層4を形成できないことから、導電塗料の塗布および加熱を複数回、繰り返すことにより、所定厚のカーボン層4を形成する。このようにして形成したカーボン層4(導電塗膜)では、カーボン粉体が有機バインダ中に分散してなる。
【0021】
ここで、導電塗料に対しては、塗料の状態でのカーボン粉体の分散性が優れていることが求められるとともに、カーボン粉体が均一に分散している状態が長期間にわたって維持されることが求められる。また、導電塗料に対しては、塗膜の状態での導電性、段差や角部分に対する被覆性、下地との密着性が求められる。そこで、本発明を適用した導電塗料は、以下に詳述するように、カーボン粉体および有機バインダが有機溶媒中に配合され、有機バインダとしては、セルロース誘導体とゴムとを含む構成になっている。従って、導電塗膜(カーボン層4)は、カーボン粉体が有機バインダ中に分散しているとともに、有機バインダは、セルロース誘導体とゴムとを含む構成になっている。以下、導電性高分子によって固体電解質層3を形成した後、固体電解質層3の上にカーボン層4を形成する例を説明する。
【0022】
[導電塗料の詳細説明]
以下、本発明の実施例に基づいて、本発明を適用した導電塗料および導電塗膜を詳述する。まず、表1に示す実施例1〜11および比較例1,2の組成を有する導電塗料を調整して、導電塗料の状態でのカーボン粉体の分散性を評価した。次に、導電塗料を塗布、加熱して導電塗膜を形成し、かかる導電塗膜の段差被覆性、密着性、耐湿性を評価した。かかる評価結果についても表1に示す。
【表1】

【0023】
分散性の評価は、導電塗料を室温放置した際のカーボン粉体の沈降度合いを観察することにより行なった。段差被覆性は、金属板の段差部分に導電塗料を塗布、加熱して角部分に対する導電塗膜の被覆度合いを観察することにより行なった。密着性の評価は、金属板上に導電塗料を塗布、加熱して導電塗膜を形成した後、温度サイクル試験により行なった。耐湿性の評価は、金属板上に導電塗料を塗布、加熱して導電塗膜を形成した後、高温高湿条件下に放置してそのシート抵抗変化を測定することにより行なった。なお、評価結果は、各試料の相対評価により、良好なものを○、劣るものを×、中間のものを△で表1に示してある。
【0024】
(実施例1)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
メチルセルロース(MC)
ゴム(ニトリルゴム)
を有している。
【0025】
(実施例2〜5)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:ブチルセロソルブ(BC)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
エチルセルロース(EC)
ゴム(アクリルゴム)
を有している。
【0026】
(実施例6、7)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:N−メチルピロリドン(NMP)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
ゴム(アクリルゴム)
を有している。
【0027】
(実施例8)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:N−メチルピロリドン(NMP)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
ゴム(ブチルゴム)
を有している。
【0028】
(実施例9)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:N−メチルピロリドン(NMP)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
ゴム(ウレタンゴム)
を有している。
【0029】
(実施例10)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:γ−ブチロラクトン(γ−BL)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
ゴム(ウレタンゴム)
を有している。
【0030】
(実施例11)
本例の導電塗料は、以下の組成
溶媒:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
カルボキシルメチルセルロース(CMC)
ゴム(ウレタンゴム)
を有している。
【0031】
(比較例1)
本発明に対する比較例1に係る導電塗料は、以下の組成
溶媒:ブチルセロソルブ(BC)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
カルボキシルメチルセルロース(CMC)
を有しており、ゴムが配合されていない。
【0032】
(比較例2)
本発明に対する比較例2に係る導電塗料は、以下の組成
溶媒:ブチルセロソルブ(BC)
カーボン粉体(アセチレンブラック)
有機バインダ
ニトリルゴム
を有しており、セルロース誘導体が配合されていない。
【0033】
(評価結果)
表1からわかるように、セルロース誘導体を配合した導電塗料(比較例1および実施例1〜11)はいずれも良好なカーボン粉体の分散性を示したが、セルロース誘導体を配合しない導電塗料(比較例2)では、カーボン粉体の分散性が低いことが確認できた。特に、本発明の実施例1〜11に係る導電塗料は、比較例1、2に比してカーボン粉体の配合量が多いにもかかわらず、比較例に係る導電塗料と同等以上のカーボン粉体を配合することができた。また、本発明の実施例1〜11に係る導電塗料は、カーボン粉体の配合量が多いにもかかわらず、カーボン粉体が均一に分散している状態を、比較例に係る導電塗料と同等以上の期間、維持することができた。
【0034】
また、ゴムを配合した導電塗料(比較例2および実施例1〜11)はいずれも良好な段差被覆性を示したが、ゴムを配合しない導電塗料(比較例1)では、段差被覆性が劣ることが確認できた。より具体的には、比較例1に係る導電塗料を用いて、図1を参照して説明したカーボン層4を形成したところ、計4回の塗布、加熱工程で、角部分をカーボン層4(導電塗膜)で覆うことができるのに対して、本発明の比較例2および実施例1〜11に係る導電塗料を用いて、図1を参照して説明したカーボン層4を形成したところ、計2回の塗布、加熱工程で、角部分をカーボン層4で覆うことができた。
【0035】
また、ゴムを配合した導電塗料(比較例2および実施例1〜11)はいずれも良好な密着性や耐湿性を示したが、ゴムを配合しない導電塗料(比較例1)は、密着性や耐湿性が劣ることが確認できた。
【0036】
それ故、本発明の実施例1〜11に係る導電塗料は、カーボン粉体の分散性、段差被覆性、密着性、耐湿性のいずれにも優れているといえる。但し、本発明の実施例2〜5を比較すると分るように、ゴムの配合量は、セルロース誘導体の配合量に比較して大である方が、密着性、耐湿性の面で好ましいことがわかる。
【0037】
(他の実施例)
上記実施例では、溶剤として、ジメチルホルムアミド、ブチルセロソルブ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを用い、セルロース誘導体として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロースを用い、ゴムとして、ニトリルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムを表1に示す組成で用いたが、表1に示す組成において溶剤の種類、セルロース誘導体、ゴムの種類を変えても、略同様の傾向が得られている。
【0038】
従って、上記の組み合わせの他、セルロース誘導体としては、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースを1種あるいは2種以上用いてもよい。
【0039】
ゴムとしては、ブタジエン系ゴム(ニトリルゴム(アクリロニトリルブタジエンゴム)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムなど)、イソプレン系ゴム(天然ゴム、ポリイソプレンゴムなど)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムを1種あるいは2種以上用いてもよい。
【0040】
溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを1種あるいは2種以上用いてもよい。
【0041】
また、導電塗料の配合比に関しては、セルロース誘導体とゴムとの配合比が質量比で9:1〜1:9であり、カーボン粉体と有機バインダとの配合比が質量比で5:1〜12:1であることが好ましい。セルロース誘導体に対するゴムの配合比が9:1〜1:9からゴムが多い方にシフトすると、導電塗膜中でのカーボン粉体同士の接触が安定せず、導電塗膜の電気抵抗のばらつきが増大する。これに対して、セルロース誘導体に対するゴムの配合比が9:1〜1:9からゴムが少ない方にシフトすると、ゴムを配合したことによる被覆性や密着性に関する効果が小さくなってしまう。それ故、セルロース誘導体とゴムとの配合比は、質量比で9:1〜1:9であることが好ましい。また、カーボン粉体と有機バインダとの配合比が5:1〜12:1からカーボン粉体が多い方にシフトすると、ゴムを配合しても被覆性や密着性が低下する傾向にある。これに対して、カーボン粉体と有機バインダとの配合比が5:1〜12:1からカーボン粉体が少ない方にシフトすると、導電塗膜の電気抵抗のばらつきが増大する。それ故、カーボン粉体と有機バインダとの配合比は5:1〜12:1であることが好ましい。
【0042】
また、カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が3〜12質量%であることが好ましい。カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が3質量%未満であると、1回の塗布で得られる導電塗膜が薄く、カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が12質量%を超えると、分散性が低下する。それ故、カーボン粉体の導電塗料全体における配合量は、3〜12質量%であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した導電塗料および導電塗膜により形成したカーボン層を備えた固体電解コンデンサの説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 固体電解コンデンサ
10 陽極体
2 誘電体層
3 固体電解質層
4 カーボン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン粉体、有機バインダ、および該有機バインダを溶解可能な溶媒を含む導電塗料において、
前記有機バインダとして、セルロース誘導体とゴムとを含むことを特徴とする導電塗料。
【請求項2】
前記セルロース誘導体と前記ゴムとの配合比が質量比で9:1〜1:9であり、
前記カーボン粉体と前記有機バインダとの配合比が質量比で5:1〜12:1であることを特徴とする請求項1に記載の導電塗料。
【請求項3】
前記ゴムの配合比は、前記セルロース誘導体の配合比に比して質量比で大であることを特徴とする請求項1に記載の導電塗料。
【請求項4】
前記カーボン粉体の導電塗料全体における配合量が3〜12質量%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の導電塗料。
【請求項5】
前記セルロース誘導体は、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシルメチルセルロースからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の導電塗料。
【請求項6】
前記ゴムは、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムおよびウレタンゴムからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の導電塗料。
【請求項7】
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の導電塗料。
【請求項8】
カーボン粉体が有機バインダ中に分散してなる導電塗膜において、
前記有機バインダとして、セルロース誘導体とゴムとを含むことを特徴とする導電塗膜。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−47698(P2010−47698A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213689(P2008−213689)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(598124249)エア・ウォーター・マッハ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】