説明

導電層を有する三次元構造物及び三次元金属構造物の製造方法

【課題】複雑で高価な蒸着法によることなく導電層を形成し、不良品の発生を防ぎながら効率よく導電層の一部を除去することが可能な、導電層を有する三次元構造物及び三次元金属構造物の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記製造方法は、(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を除去する工程と、を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層を有する三次元構造物及び三次元金属構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(MICRO ELECTRO MECHANICAL SYSTEMS)に代表される微小構造体や微小部品の形成方法において、厚膜リソグラフィ法とメッキ法とによる形成が注目されている。このような微小構造体や微小部品の三次元構造を形成する方法としては、単層のホトレジスト層を形成し、選択的に露光し現像することにより段型凹部を形成する方法が知られている。しかしながら、微小構造体や微小部品の構造が複雑になるにつれて、より複雑な形状の段型凹部を形成する必要が生じた。
【0003】
このような段型凹部を製造するための方法として、次の方法が提案された。すなわち、先ず、図3(a)に示すように、基板21上に通電用の金属層22を積層し、更にアルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、及びその他の成分を含有するネガ型ホトレジスト組成物を塗布した後露光する。次に、この工程を複数回行い、当該ネガ型ホトレジスト樹脂層23、24を複数積み重ねた後、全ての層を同時に現像することで多層樹脂パターンを形成し、当該多層樹脂パターンにメッキ処理を行うことで三次元金属構造物を形成する(特許文献1)。
【0004】
さらに、メッキ処理を行う前の処理として、図3(b)に示すように、例えば二層からなる樹脂パターンにおいて、樹脂パターン全面に金を蒸着することにより導電層25を形成した後、ネガ型ホトレジスト樹脂層24上面の導電層を機械的に研削して除去することにより図3(c)に示す形状に加工し、図3(d)に示すように凹部26をメッキ処理に付してメッキ金属27で満たした後、樹脂層を除去することにより、図3(e)に示す中空配線のような三次元金属構造物28の形成が可能になった(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−17969号公報
【非特許文献1】三隅浩一 博士論文(関東学院大学)2008年1月(「MEMSデバイスの加工・実装に対応したフォトリソグラフィとめっき技術の応用」)36−37頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金蒸着を行い導電層を形成した後に機械的研削により当該導電層の一部を除去する上記の方法では、蒸着装置の導入や蒸着用の金のコストが大きいこと、用いる基板の大きさが蒸着装置の大きさによる制限を受けること、等の問題がある。さらに、金蒸着を除去するための機械的研削では、基板上に形成された部品一つ一つに対し手作業で研削しなければならず、大量生産には適していない。これに加え、機械的研削中に樹脂パターンの変形や割れ、研削カスの樹脂パターン凹部への混入等の可能性もある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、複雑で高価な蒸着法によることなく導電層を形成し、不良品の発生を防ぎながら効率よく導電層の一部を除去することが可能な、導電層を有する三次元構造物及び三次元金属構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、無電解メッキにより導電層を形成した後、ゲル状エッチング組成物を用いて当該導電層の一部を選択的に除去することにより、凹部内壁の導電層に対するエッチング液の影響を抑制しつつ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
本発明は、第一の態様として、(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を選択的に除去する工程と、を含んでなる導電層を有する三次元構造物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、第二の態様として、上述の方法において使用するためのゲル状エッチング組成物を提供する。
【0010】
本発明は、第三の態様として、(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を除去する工程と、(D)メッキ処理及び前記パターン化有機膜の剥離を行う工程と、を含んでなる三次元金属構造物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複雑で高価な蒸着法によることなく導電層を形成し、不良品の発生を防ぎながら効率よく導電層の一部を選択的に除去することができる。これにより、三次元構造物を容易に製造することができる。さらに、当該三次元構造物をメッキ処理に付し、パターン化有機膜を剥離することにより、三次元金属構造物を製造することができる。さらに、当該導電層の一部を選択的に除去する際に、除去される部分以外の導電層に対するエッチング液の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る三次元構造物の製造方法は、(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を選択的に除去する工程と、を含んでなる。以下、それぞれの工程について、必要に応じて図1及び図2を参照しながら説明する。
【0013】
<<(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程>>
(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程(以下、「(A)工程」ともいう。)では、先ず、有機化合物や有機樹脂を図1(a)に示す基板1又は既に形成した有機膜3上に塗布した後に溶媒を除去することにより、又はシート状に加工した有機化合物や有機樹脂を転写することによって有機膜を形成する。次に、光造形法、光リソグラフィ法、熱インプリント法、光インプリント法等の従来公知の方法により、パターン化有機膜を形成する。パターン化有機膜は、例えば、光造形法では、液状の紫外線硬化樹脂(紫外線に反応し、硬化する液体)を光造形装置の紫外線レーザーを使用して硬化させ、積層することで3Dのデーターと寸分違わぬ精密な立体物を作成することができる。光リソグラフィ法では、有機膜をマスクを介して選択的に露光し、次いで現像することにより形成され、光インプリント法では、有機膜に対してモールド材を押圧し、光照射し、モールド材を有機膜から引き離すことにより形成される。熱インプリント法では、有機膜を加熱し、当該有機膜に対してモールド材を押圧し、押圧状態を保持しつつ基板を冷却し、有機膜を硬化させた後、モールド材を有機膜から引き離すことにより形成される。有機膜の材料としては特に限定されないが、ホトレジスト組成物を用いた光リソグラフィ法が好ましい。以下、ホトレジスト組成物を使用した光リソグラフィ法の態様について記載する。
【0014】
<有機膜の形成方法>
有機膜は、従来公知の方法により、ホトレジスト組成物を基板上に塗布することにより形成することができる。ホトレジスト組成物については、後述する。基板としては、特に限定されないが、例えばシリコン、金、銅、ニッケル、パラジウム等の基板又はそれらの金属層2が形成された基板が挙げられる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法が挙げられる。こうして所望の厚さに塗布したホトレジスト組成物を加熱し、溶媒を除去して、所望の有機膜を形成する。
【0015】
<加熱方法>
ホトレジスト組成物を用いて形成した有機膜の加熱条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70〜140℃で、好ましくは80〜120℃で、好ましくは2〜60分間程度である。加熱方法としてはホットプレート法、オーブン法等の方法を採用することができる。
【0016】
若しくは、上述した塗布方法に代えて、ホトレジスト組成物を支持フィルム上に積層したドライフィルムを用いて、有機膜を基板上に転写してもよい。このようなドライフィルムは、以下に記載されるように、従来公知の方法により製造することができる。
【0017】
<ドライフィルム>
本発明において使用されるドライフィルムは、支持フィルム上にホトレジスト組成物を塗布し塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることにより有機膜を形成したものである。このように形成したドライフィルムは、工程(A)の基板上にパターン化有機膜を形成するのに用いられる。ドライフィルムは、有機膜の表面を容易に剥離可能な保護フィルムにより保護されて、貯蔵、搬送、及び取り扱いが容易で、高い膜平坦性を有し、基板上での有機膜の形成を容易とする。
【0018】
ドライフィルムの製造に使用する支持フィルムとしては、支持フィルム上に成膜された各層を支持フィルムから容易に剥離することができ、各層をガラス基板上に転写できれば特に限定なく使用でき、例えば膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。前記支持フィルムには必要に応じて、転写が容易となるように離型処理されていることが好ましい。
【0019】
支持フィルム上に有機膜を形成するに際しては、ホトレジスト組成物を調製し、常法により支持フィルム上に上記の組成物を塗布する。
【0020】
塗膜を乾燥させた後、有機膜の表面には未使用時に有機膜を安定に保護するため保護フィルムを接着するのがよい。この保護フィルムとしては、シリコーンをコーティング又は焼き付けした厚さ15〜125μm程度のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフィルム等が好適である。
【0021】
こうして形成したドライフィルムを用いる場合には、有機膜表面に積層された保護フィルムを剥離し、基板若しくは既に形成した有機膜表面に、露出した有機膜を重ね合わせて、支持フィルム上から公知の方法により接着、圧着させる。例えば加熱ローラを移動させることにより、有機膜を公知の方法で基板の表面に熱圧着させる。その後、支持フィルムを剥離して、有機膜を表面に露出させ、有機膜を形成する。熱圧着は、基板の表面温度を80〜140℃に加熱し、ロール圧1〜5kg/cm、移動速度0.1〜10.0m/分の範囲で行うのがよい。前記基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40〜100℃の範囲が好ましい。
【0022】
本発明においては、有機膜単層の膜厚は5〜2000μm、好ましくは10〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μmである。有機膜は、最終的に得られる三次元金属構造物の形状に応じて、更に積層して多層にしてもよい。
【0023】
<露光方法>
得られた塗膜に全面若しくは所定のパターンのマスクを介して、放射線、例えば波長が300〜600nmの紫外線又は可視光線を照射することにより、全面若しくは三次元金属構造物を形成するパターン部分のみを選択的に露光させる。これらの放射線の線源として、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。ここで放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線等を意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚等によって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、20〜3000mJ/cmである。ドライフィルムを用いる場合には、原則として支持フィルムを剥離した後に露光させるが、支持フィルムが露光光に対して透過性を有する場合、支持フィルム剥離前に露光処理を行うことができる。
【0024】
露光後、必要に応じて上述の方法を用いて加熱(POST EXPOSUER BAKE)してもよい。加熱方法としては特に限定されないが、ホットプレートが熱が均一に伝わるため好ましい。
【0025】
<現像方法>
次に、有機膜を公知の方法で現像に付し、パターン化有機膜を形成する。放射線照射後の現像方法としては、アルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去し、放射線未照射部分のみ溶解除去させる。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0026】
現像時間は、組成物各成分の種類、配合割合、組成物の乾燥膜厚によって異なるが、通常1〜30分間であり、また現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガン等を用いて風乾させたり、オーブン中で乾燥させる。
【0027】
現像後、必要に応じて加熱(ポスト・ベーク)してもよい。加熱方法としては特に限定されないが、ホットプレート、オーブン法が挙げられる。
【0028】
以上により、基板上に単層パターン化有機膜を形成することができる。多層パターン化有機膜を形成する場合は以下による。
【0029】
<多層パターン化有機膜の形成>
多層パターン化有機膜を形成する工程は、基板上に有機膜を形成し露光する工程(以下、「(A−1)工程」ともいう。)と当該(A−1)工程を計2回以上繰り返してパターン化有機膜を積み重ねた後、全ての層を同時に現像することで多層パターン化有機膜を形成する工程(以下、「(A−2)工程」ともいう。)と、を含んでなる。有機膜の材料としては、ネガ型ホトレジスト組成物が好ましい。ネガ型ホトレジスト組成物を使用することにより、(A−1)工程の後に加熱することでホトレジスト層の露光部が固まり、歪みなくホトレジスト層を積み重ねることが可能になるため、形成される多層ホトレジスト層は2層以上、好ましくは2〜20層、より好ましくは2〜10層である。また、積み重ねたホトレジスト層の合計膜厚は10μm以上、好ましくは20〜1000μmである。
【0030】
本発明においては前記(A−1)工程における露光が、全てのホトレジスト層においてパターンマスクを介したパターン形成露光処理であることが好ましい。こうすることにより全面露光層を含むことのない多層ホトレジスト層を得ることができる。
【0031】
前記(A−1)工程における露光の露光面積が、露光光源から近い層の露光面積より、露光光源から遠い層の露光面積が大きい形態がより好ましい。これにより多層レジストパターンの形状安定性が増し、メッキが容易になる。
【0032】
また、ホトレジスト層毎にパターン形状が異なる形態も可能である。これにより膜厚方向に形状の異なる立体形状を三次元金属構造物により形成することができる。
【0033】
積み重ねた有機膜を公知の方法で現像に付し、全ての有機膜を同時に現像することで多層パターン化有機膜を形成する。現像液、現像方法、現像時間、現像後の乾燥方法は上述のとおりである。
【0034】
<<(B)無電解メッキによりパターン化有機膜表面に導電層を形成する工程>>
無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程(以下、「(B)工程」ともいう。)では、従来公知の無電解メッキ液に浸漬することにより、図1(b)に示す導電層5を上記多層パターン化有機膜上に形成する。無電解メッキ液は、金属塩、還元剤及び添加剤を含有する。金属塩としては、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩等が用いられる。本発明においては導電層を形成する金属種は特に限定されないが、銅又はニッケルが好ましい。無電解メッキにより導電層を形成する工程、すなわち無電解メッキ処理工程は、好ましくは、洗浄工程、触媒化処理工程に続いて、無電解銅メッキ工程又は無電解ニッケルメッキ工程を含む。
なお、(B)工程の前処理として、必要に応じて、ホトレジスト層表面の親水性化処理を行っても良い。該親水性化処理を行うことによりメッキが容易となる。該親水性化処理としては公知の手法を用いたアッシング処理が挙げられる。
【0035】
<洗浄工程>
先ず、パターン化有機膜を備えた基板を、リン酸系溶液中に浸漬させて洗浄を行う。リン酸系溶液としては、リン酸ナトリウム等が用いられる。浸漬時間は、30〜180秒とすることが好ましく、45〜90秒とすることがより好ましい。処理後は水浸漬洗浄を3〜5段階行うことが好ましい。
【0036】
<触媒化処理工程>
上記洗浄工程を経た基板を、所定濃度の塩化錫(SnCl)水溶液中に所定時間浸漬させる。塩化錫の濃度は、0.01g/dm〜0.10g/dmが好ましく、0.03g/dm〜0.07g/dmがより好ましい。また、浸漬時間は15〜180秒とすることが好ましく、30〜60秒とすることがより好ましい。処理後は水浸漬洗浄を3〜5段階行うことが好ましい。
【0037】
次いで、塩化錫(SnCl)水溶液中に所定時間浸漬させ、その後水浸漬洗浄した基板を、所定濃度の塩化パラジウム(PdCl)水溶液中に所定時間浸漬させる。塩化パラジウムの濃度は、0.01g/dm〜0.3g/dmが好ましく、0.03g/dm〜0.07g/dmがより好ましい。また、浸漬時間は15〜180秒とすることが好ましく、30〜60秒とすることがより好ましい。処理後は水浸漬洗浄を3〜5段階行うことが好ましい。
【0038】
<無電解銅メッキ工程>
上記触媒化処理工程を経た基板を、銅メッキ浴中に浸漬させて銅メッキを行う。銅メッキ後は基盤に対して水浸漬洗浄を3〜5段階行い、エアーガン、オーブン等を用いて乾燥させる。銅メッキ浴としては、従来公知のものが用いられる。例えば、硫酸銅を0.02M〜0.10M、ホルマリンを0.10M〜0.40M、2,2’−ビピリジルを1.0ppm〜20.0ppm、界面活性剤(ポリエチレングリコール等)を50.0ppm〜500ppm、錯化剤を0.20M〜0.40M含有する銅メッキ浴が一例として挙げられる。錯化剤としては、エチレン−アミン系の錯化剤が好ましく用いられる。銅メッキ浴の温度は、50℃〜70℃が好ましく、pHは11.5〜12.5が好ましい。また、空気通気による攪拌を行うのが好ましい。pHの調整には水酸化カリウム、硫酸が用いられる。
【0039】
<無電解ニッケルメッキ工程>
上記触媒化工程を経た基板を、ニッケルメッキ浴中に浸漬させてニッケルメッキを行う。ニッケルメッキ後は基盤に対して水浸漬洗浄を3〜5段階行い、エアーガン、オーブン等を用いて乾燥させる。ニッケルメッキ浴としては、従来公知のものが用いられる。例えば、硫酸ニッケルを0.05M〜0.20M、次亜リン酸ナトリウムを0.10M〜0.30M、鉛イオンを0.05ppm〜0.30ppm、錯化剤を0.05M〜0.30M含有するニッケルメッキ浴が一例として挙げられる。錯化剤としては、カルボン酸類の錯化剤が好ましく用いられる。ニッケルメッキ浴の温度は、50℃〜70℃が好ましく、pHは4.0〜5.5が好ましい。pHの調整には水酸化ナトリウム、硫酸が用いられる。
【0040】
このようにして形成する導電層は、0.01〜2μmが好ましく、0.05〜1μmがさらに好ましく、0.05〜0.5μmの膜厚が最も好ましい。
【0041】
<<(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を除去する工程>>
ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を選択的に除去する工程(以下、「(C)工程」ともいう。)では、上記により形成した導電層の一部をゲル状エッチング組成物と接触させることにより除去する。除去される導電層は最終形成物である三次元金属構造物の形状に応じて決められるが、例えば、図1(f)に示す橋状の三次元金属構造物9を形成する場合には、図1(b)に示す有機膜4の上面の導電層5、すなわち、凹部7の内壁、凹部7の底面以外の面に形成された導電層のみを除去することが好ましい。こうして導電層の一部を選択的に除去することにより、次工程のメッキ処理において、凹部のみを金属で満たすこと(フィリング)ができる。エッチングにより導電層の一部を除去することにより、導電層の金属種に応じてゲル状エッチング組成物中の成分、濃度、温度、エッチング時間等の条件を変えることができるため、種々の大きさや、種々の膜厚の導電層を有する基板を効率的に処理できる。さらに、機械的な研削を行わないため、研削カスの凹部7への混入や有機膜の変形や割れを起こすこともない。
【0042】
<ゲル状エッチング組成物>
ゲル状エッチング組成物6は、導電層の金属種を溶解するもの、すなわち金属用エッチング液とゲル化剤とからなる。
【0043】
{金属用エッチング液}
金属用エッチング液は、特に限定されず従来公知のものを用いることができる。このようなエッチング液として、例えば、過水硫酸、過硫酸、塩酸、硝酸、シアン系、有機系エッチング液が挙げられる。
【0044】
{ゲル化剤}
ゲル化剤は、従来公知のものを用いることができる。このようなゲル化剤として、例えばアラビアガム、ローカストビーンガム、ビーンガム、トラガントガム、キサンタンガム、グアーガム、カラヤガム、ヴェランガム、ラムザンガム、ジェランガム、発酵ガム等の天然水溶性ガム;ベントナイト、天然ヘクトライト、合成ヘクトライト、天然スメクタイト、シリカゲル、ガラス微粉、酸化アルミナ及び無機ゲルとして合成スメクタイト等の親水性粘度鉱物類;膠、澱粉、ペクチン酸、ゼラチン、ガラクトマンナン、寒天、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の天然水溶性高分子;ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、アクリル酸エステル系重合体、イソブチルマレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、合成水溶性セルロース(例えばポリオキシエチレン変性セルロース)等の合成水溶性高分子が挙げられる。ゲル化剤は単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0045】
ゲル状エッチング組成物は、上記の成分に加え、安定剤、界面活性剤等を適宜含有させてもよい。
【0046】
ゲル状エッチング組成物は、金属用エッチング液とゲル化剤とを混合し、要すれば加熱して均一な溶液にした後、冷却することにより得ることができる。エッチング液の濃度、エッチング液とゲル化剤との配合比等は対象金属種、所望のエッチング条件等に応じて適宜調整することができる。ゲル状エッチング組成物を硬化させる際には、固い板状でもゆるいゼリー状でもよい。
【0047】
このように調製したゲル状エッチング組成物を導電層と接触させる工程では、形成した導電層の上に板状に固めたゲル状エッチング組成物を置いてもよい。また、図1(c)に示すように前記導電層をゲル状エッチング組成物と対向して接触させ、最上部の有機膜表面の導電層のみをゲル状エッチング組成物と接触させてもよい。後者の場合、ゲルからのエッチング液の滲み出し等による凹部内壁の導電層への影響を抑制することができる。ゲル状エッチング組成物に代えてエッチング液を用いて対向して接触させた場合には、図2(a)に示すように、エッチング液16の表面張力による凹部17内壁へのエッチング液の浸漬が発生すると考えられる。これにより、エッチング後には、図2(b)に示すように、凹部内壁の導電層15に溶解部分18が生じてしまうことが予想される。しかしながら、ゲル状エッチング組成物を用いることにより、凹部内壁へのエッチング液の浸漬を防ぐことができ、図1(d)に示すように、最上層のレジストパターン上の導電層のみをエッチングすることができる。
【0048】
<<(D)メッキ処理及びパターン化有機膜の剥離を行う工程>>
本発明では、更にメッキ処理及びパターン化有機膜の剥離を行う工程(以下、「(D)工程」ともいう。)に付すことで図1(e)に示すように、凹部7をメッキ金属8で満たす(フィリング)。(D)工程は、電解、無電解メッキ等の従来公知の各種メッキ方法を所望に応じて選択して使用できる。また、メッキ金属8としては金、銅、ハンダ、ニッケル等を必要に応じて選択できる。
【0049】
メッキ処理の後、パターン化有機膜は従来公知の剥離方法によって剥離される。例えば、有機膜焼却後の洗浄法、公知の剥離液組成物を有機膜に接触(浸漬等)させることによる剥離法等を採用することができる。特に剥離法が工程容易性、三次元金属構造物へのダメージの点から好ましい。有機膜の剥離法としては、ディップ法、浸漬法、シャワー法等の方法を採用することができる。剥離時に超音波を作用させてもよい。このようにして有機膜を基板から剥離した後、常法に従い洗浄し、乾燥させる。
【0050】
以上の工程により、図1(f)に示すように、基板上に高さが20μm以上の三次元金属構造物9が形成される。
【0051】
<ホトレジスト組成物>
ホトレジスト組成物としてはレジストパターンを形成することができれば特に限定されない。単層のパターン化有機膜を形成する場合には、ポジ型ホトレジスト組成物でもネガ型ホトレジスト組成物でもよいが、多層のパターン化有機膜を形成する場合には、積層が容易であることからネガ型ホトレジスト組成物が好ましい。ネガ型ホトレジスト組成物のなかでも、化学増幅型ネガ型ホトレジスト組成物が好ましい。このような化学増幅型ネガ型ホトレジスト組成物として、特開2008−107635号公報及び特許文献1に記載される厚膜用化学増幅型ネガ型ホトレジスト組成物を挙げることができる。当該ネガ型ホトレジスト組成物の構成要素について以下に記載する。
【0052】
{アルカリ可溶性樹脂(a)}
アルカリ可溶性樹脂(以下、「(a)成分」ともいう。)としては、一般にネガ型の化学増幅型ホトレジストのベース樹脂として用いられている樹脂であれば特に限定されず、露光に使用する光源に応じて、従来公知のものから任意に選択して使用することが可能である。例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、またはアクリル樹脂を主成分とするものがレジスト形状、解像性等の特性が良好であることから、一般的に広く用いられている。特に好ましい(a)成分としては、ノボラック樹脂が挙げられる。ノボラック樹脂を主成分とすることにより、剥離性が良好であり、優れたメッキ耐性が得られる。
【0053】
〔ノボラック樹脂〕
ノボラック樹脂は、例えばフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。この際、使用されるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0054】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0055】
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸等が使用される。
【0056】
ノボラック樹脂でも好ましくは、特にクレゾール、キシレノール、トリメチルフェノールからなるノボラック樹脂が挙げられる。さらに好ましくは、m−クレゾールとアルデヒド類とを縮合させて得られたm−クレゾールノボラック樹脂は、現像プロファイルが特に良好であり好ましい。
【0057】
上記ノボラック樹脂は、質量平均分子量が3000〜50000、好ましくは5000〜30000の範囲内のものが好ましい。質量平均分子量が3000未満であると、現像後に硬化部の膜が減る(薄くなる)傾向があり、また、質量平均分子量が50000を超えると、現像後に残渣が残る傾向がある。
【0058】
〔アクリル樹脂〕
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、(a1)エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位、及び/又は(a2)カルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含有することが好ましい。
【0059】
(a1)エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートである。これらの化合物は単独若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
(a2)カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物等を例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は単独若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0061】
アクリル樹脂中における(a1)エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位の含有量は30〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜80質量%がよい。90質量%を超えると、樹脂溶液に対する相溶性が悪くなり、プリベイク時に均一なレジスト膜が得られにくい傾向があり、30質量%未満ではメッキ時にクラックが発生する傾向がある。
【0062】
アクリル樹脂中における(a2)カルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位の含有量は好ましくは2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜40質量%がよい。2質量%未満であると、アクリル樹脂のアルカリ溶解性が低下し、十分な現像性が得られない。また剥離性が低下し基板上にレジストが残膜する。50質量%を超えると、現像後の残膜率の低下や耐メッキ性が悪化する傾向がある。
【0063】
〔ポリヒドロキシスチレン樹脂〕
ポリヒドロキシスチレン樹脂としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のα−アルキルヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン構成単位のみからなるラジカル重合体又はイオン重合体や、前記ヒドロキシスチレン構成単位とそれ以外の構成単位からなる共重合体が挙げられる。重合体中のヒドロキシスチレン構成単位の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10〜30質量%である。これは、ヒドロキシスチレン構成単位の割合が10質量%未満であると、現像性、解像性が低下する傾向があるためである。
【0064】
ヒドロキシスチレン構成単位を有する重合体の質量平均分子量は、好ましくは5000以下、より好ましくは2000以上4000以下である。これは、質量平均分子量が5000を超えると解像性が低下する傾向があるためである。
【0065】
前記ヒドロキシスチレン構成単位以外の構成単位を形成するモノマーとして好ましいのは、ヒドロキシスチレン構成単位のヒドロキシル基を他の基で置換したモノマー又はα,β−不飽和二重結合を有するモノマー等である。
【0066】
前記ヒドロキシスチレン構成単位のヒドロキシル基を置換する他の基としては、酸の作用により解離しないアルカリ溶解抑制基が使用される。酸の作用により解離しないアルカリ溶解抑制基としては、置換又は未置換のベンゼンスルホニルオキシ基、置換又は未置換のナフタレンスルホニルオキシ基、置換又は未置換のベンゼンカルボニルオキシ基、置換又は未置換のナフタレンカルボニルオキシ基等が挙げられ、置換又は未置換のベンゼンスルホニルオキシ基の具体例としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、クロロベンゼンスルホニルオキシ基、メチルベンゼンスルホニルオキシ基、エチルベンゼンスルホニルオキシ基、プロピルベンゼンスルホニルオキシ基、メトキシベンゼンスルホニルオキシ基、エトキシベンゼンスルホニルオキシ基、プロポキシベンゼンスルホニルオキシ基、アセトアミノベンゼンスルホニルオキシ基等が、また、置換又は未置換のナフタレンスルホニルオキシ基の具体例として、ナフタレンスルホニルオキシ基、クロロナフタレンスルホニルオキシ基、メチルナフタレンスルホニルオキシ基、エチルナフタレンスルホニルオキシ基、プロピルナフタレンスルホニルオキシ基、メトキシナフタレンスルホニルオキシ基、エトキシナフタレンスルホニルオキシ基、プロポキシナフタレンスルホニルオキシ基、アセトアミノナフタレンスルホニルオキシ基等が好ましい。さらに、置換又は未置換のベンゼンカルボニルオキシ基及び置換又は未置換のナフタレンカルボニルオキシ基としては前記置換又は未置換のスルホニルオキシ基をカルボニルオキシ基に置き換えたものが挙げられる。中でも、アセトアミノベンゼンスルホニルオキシ基又はアセトアミノナフタレンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0067】
α,β−不飽和二重結合を有するモノマーの具体例としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル等のアクリル酸モノマー、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のモノマー等が挙げられるが、中でもスチレンが好ましい。
【0068】
ヒドロキシスチレン構成単位を有する重合体としては、ヒドロキシスチレンとスチレンとから得られた共重合体、例えばポリ(4−ヒドロキシスチレン−スチレン)共重合体、ポリ(4−ヒドロキシスチレン−メチルスチレン)共重合体等は、高解像性を示すとともに耐熱性も高く好ましい。
【0069】
(a)成分はそれぞれ単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。(a)成分が、ノボラック樹脂及び/又はアクリル樹脂と、ヒドロキシスチレン構成単位を有する重合体とを含む混合樹脂からなる場合は、各成分の総和を100質量部として、ノボラック樹脂及び/又はアクリル樹脂が50〜98質量部、好ましくは55〜95質量部、ヒドロキシスチレン構成単位を有する重合体が50〜2質量部、好ましくは45〜5質量部であるのがよい。このような配合割合とすると、現像性、解像性共によくなることから好ましい。上記(a)成分は(a)〜(c)成分((b)及び(c)成分については後述する。)の固形分総量100質量部に対して30〜99質量部、好ましくは65〜95質量部の範囲で含有することができる。(a)成分が50質量部未満では、耐メッキ液性、メッキ形状、剥離性が低下することがあり、99質量部を超えると現像時に現像不良を起こすことがある。
【0070】
{酸発生剤(b)}
酸発生剤(以下、「(b)成分」ともいう。)としては、光により直接若しくは間接的に酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、具体的には、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2‐(4‐メトキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐(4‐メトキシナフチル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(2‐フリル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(5‐メチル‐2‐フリル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(3,5‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(3,4‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐(3,4‐メチレンジオキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、トリス(1,3‐ジブロモプロピル)‐1,3,5‐トリアジン、トリス(2,3‐ジブロモプロピル)‐1,3,5‐トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物及びトリス(2,3‐ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記の一般式で表されるハロゲン含有トリアジン化合物;
【0071】
【化1】

【0072】
(式中、R〜Rは、それぞれ同一であっても異なってもよく、ハロゲン化アルキル基を示す)
【0073】
α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、下記一般式で表される化合物;
【0074】
【化2】

【0075】
(式中、Rは、一価〜三価の有機基、Rは置換、未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基又は芳香族性化合物基を示し、nは1〜3の自然数を示す。ここで芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を指し、例えばフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基や、フリル基、チエニル基等の複素環基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、Rは炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特にRが芳香族性化合物基、Rが低級アルキル基の化合物が好ましい。上記一般式で表わされる酸発生剤としては、n=1の時、Rがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、Rがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリルが挙げられる。n=2の時、上記一般式で表される酸発生剤としては、具体的には下記化学式で表される酸発生剤が挙げられる。)
【0076】
【化3】

【0077】
ビス(p‐トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1‐ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4‐ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p‐トルエンスルホン酸2‐ニトロベンジル、p‐トルエンスルホン酸2,6‐ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシレート、ニトロベンジルスルホネート、ニトロベンジルカルボネート、ジニトロベンジルカルボネート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシレート、ピルガロールトリトシレート、ベンジルトシレート、ベンジルスルホネート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、(4‐メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、(4‐メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p‐tert‐ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩;ベンゾイントシレート、α‐メチルベンゾイントシレート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボネート等が挙げられる。特に、トリアジン化合物は光による酸発生剤としての性能が高く、かつ溶剤を用いる場合においても溶解性が良好であることから好ましく用いることができる。中でも、ブロモ含有トリアジン化合物、とくに2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリル−s−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが好適に使用できる。上記の(b)成分としての酸発生剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
上記(b)成分は、(a)〜(d)成分の固形分総量100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の範囲で含有することができる。(b)成分が0.01質量部未満では、熱や光による架橋硬化が十分に行われず得られた厚膜の耐メッキ性、耐薬品性、密着性の低下や、形成されたメッキ形状が不良となることある。5質量部を超えると現像時に現像不良を起こすことがある。
{可塑剤(c)}
上記(a)〜(b)成分に加えて、必要に応じて可塑剤(以下、「(c)成分」ともいう。)を配合しても良い。可塑剤を含むことにより、クラックの発生を抑制できる。
さらに本発明においては、前述した(a)成分と、(c)成分との質量比は、5:95〜95:5の範囲であることが好ましい。
上記(c)成分としては、アクリル樹脂、およびポリビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0079】
[(c−1)アクリル樹脂]
前記アクリル樹脂(c−1)としては、質量平均分子量が50,000〜800,000であることが好ましい。
このようなアクリル樹脂としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導されたモノマー、およびカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導されたモノマーを含有することが好ましい。
前記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリラート、3−メトキシブチル(メタ)アクリラート、エチルカルビトール(メタ)アクリラート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート等のエーテル結合およびエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチルアクリラート、メトキシトリエチレングリコールアクリラートである。これらの化合物は、単独で使用することも、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
前記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基およびエステル結合を有する化合物等を例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は、単独で使用することも、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0080】
[(c−2)ポリビニル樹脂]
前記ポリビニル樹脂(c−2)としては、質量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましい。
このようなポリビニル樹脂としては、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)が好ましく、下記一般式(c1)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体からなる。
【0081】
【化4】

【0082】
上記一般式(c1)において、R1cは炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
このようなポリビニル樹脂は、ビニル系化合物から得られる重合体であり、このようなポリビニル樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、およびこれらの共重合体等が挙げられる。中でも、ガラス転移点の低さに鑑みてポリビニルメチルエーテルが好ましい。
【0083】
{その他の成分(d)}
その他の成分(以下、「(d)成分」ともいう。)としては、例えば架橋剤が挙げられる。架橋剤としてはアミノ化合物、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂等を用いることができるが、特にアルコキシメチル化メラミン樹脂やアルコキシメチル化尿素樹脂等のアルコキシメチル化アミノ樹脂等が好適に使用できる。前記アルコキシメチル化アミノ樹脂は、例えば、沸騰水溶液中でメラミン又は尿素をホルマリンと反応させて得た縮合物を、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類でエーテル化させ、次いで反応液を冷却して析出させることで製造できる。前記アルコキシメチル化アミノ樹脂としては、具体的にメトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂、メトキシメチル化尿素樹脂、エトキシメチル化尿素樹脂、プロポキシメチル化尿素樹脂、ブトキシメチル化尿素樹脂等が挙げられる。前記アルコキシメチル化アミノ樹脂は単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特にアルコキシメチル化メラミン樹脂は、放射線の照射量の変化に対するレジストパターンの寸法変化量が小さく安定したレジストパターンを形成できて好ましい。中でも、メトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂及びブトキシメチル化メラミン樹脂が好ましい。上記架橋剤成分は、(a)〜(c)成分の固形分総量100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で含有することができる。前記(c)成分が1質量部未満では、得られた厚膜の耐メッキ性、耐薬品性、密着性の低下や、形成されたメッキ形状が不良となることがある。30質量部を超えると現像時に現像不良を起こすことがある。
【0084】
さらに、粘度調整のため有機溶剤を適宜配合することができる。前記有機溶剤としては、具体的にはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルシソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチル−3−プロポキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、イソプロピル−3−メトキシプロピオネート、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらの溶剤の使用量は、得られるネガ型ホトレジスト組成物をスピンコート法を用いて20μm以上の膜厚を得るためには固形分濃度が、65質量%以下になる範囲が好ましい。固形分濃度が65質量%を超えると組成物の流動性が著しく悪化し、取り扱いが困難な上、スピンコート法では、均一なレジスト膜が得られにくい。
【0085】
上記各成分に加えて、ネガ型ホトレジスト組成物は、必要に応じ、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリエタノールアミン等の第二級又は第三級アミン等のクエンチャーを含有することができる。
【0086】
ネガ型ホトレジスト組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させる目的で必要に応じて界面活性剤を配合することもできる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種活性剤が挙げられる。例えば、BM−1000、BM−1100(BM ケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(東レシリコーン(株)製)等の名称で市販されているフッ素系界面活性剤等を使用することができる。これらの界面活性剤の使用量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
【0087】
ネガ型ホトレジスト組成物は、基板との接着性を向上させるために接着助剤を使用することもできる。使用される接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が有効である。ここで、官能性シランカップリング剤とは、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤を意味し、具体例としてはトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。その配合量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり20質量部以下が好ましい。
【0088】
ネガ型ホトレジスト組成物には、アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うために、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸、安息香酸、けい皮酸等のモノカルボン酸;乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシけい皮酸、3−ヒドロキシけい皮酸、4−ヒドロキシけい皮酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4,−ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等の酸無水物を添加することもできる。さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶媒を添加することもできる。アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うための化合物の使用量は、用途、塗布方法に応じて調整することができ、組成物を均一に混合させることができれば特に限定されるものではないが、得られる組成物に対して60質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
【0089】
さらに、ネガ型ホトレジスト組成物には必要に応じて充填材、着色剤、粘度調整剤、等を添加することもできる。充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、ベントナイト、ジルコニウムシリケート、粉末ガラス等を挙げることができる。着色剤としては、アルミナ白、クレー、炭酸バリウム、硫酸バリウム等の体質顔料;亜鉛華、鉛白、黄鉛、鉛丹、群青、紺青、酸化チタン、クロム酸亜鉛、ベンガラ、カーボンブラック等の無機顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド6B、パーマネントレッドR、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料;マゼンタ、ローダミン等の塩基性染料;ダイレクトスカーレット、ダイレクトオレンジ等の直接染料;ローセリン、メタニルイエロー等の酸性染料が挙げられる。粘度調整剤としては、ベントナイト、シリカゲル、アルミニウム粉末等を挙げることができる。
【0090】
ネガ型ホトレジスト組成物には必要に応じて消泡剤、その他の添加剤を添加することができる。消泡剤としてはシリコーン系、フッ素系各種消泡剤等が挙げられる。上記の(d)成分としてのその他の成分はそれぞれ単独で用いてもいいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
(d)成分は、固形分総量100質量部に対して1質量部以上、好ましくは5質量部以上の範囲で含有することができる。
【0092】
<ネガ型ホトレジスト組成物の調製方法>
ネガ型ホトレジスト組成物の調製は、充填材、顔料を添加しない場合には、通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、充填材、顔料を添加する場合にはディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用い分散、混合させればよい。また、必要に応じて、さらにメッシュ、メンブレンフィルター等を用いてろ過してもよい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、何ら発明を限定するものではない。
【0094】
<<ゲル状エッチング組成物の調製>>
<ゲル状エッチング組成物(d−1)の調製>
リン酸80質量%、硝酸8質量%、純水12質量%を含むエッチング液20質量%とゼラチン(商品名 製造:ゼライス社、販売:マルハ社、100g/l)80質量%とを混合し、均一な溶液とした後冷却し、ニッケル用ゲル状エッチング組成物(d−1)を調製した。
【0095】
<ゲル状エッチング組成物(d−2)〜(d−4)の調製>
表1に示す各成分を用いて、上記と同様にゲル状エッチング組成物(d−2)〜(d−4)を調製した。なお、表1中、PEGはポリエチレングリコール(製品名 PEG−600、和光純薬工業株式会社製)を示す。
【0096】
【表1】

【0097】
<実施例1>
(A−1)工程:ネガ型ホトレジスト組成物(製品名 TMMR N−E1000 PM、東京応化工業株式会社製)を金スパッタ層を有するシリコン基板上部に加熱後の膜厚が30μmとなるように塗布したのち、ホットプレートを用いて120℃で10分間加熱処理した。その後、露光装置(製品名Canon PLA501F Hardcontact キャノン社製)にて2000mJ/cmでテストパターンを用いてパターン露光し、ホットプレートを用いて120℃で4分間、加熱処理(POST EXPOSUER BAKE)を行なった。
(A−2)工程:再度(A−1)工程を行ないレジスト層を積み重ねた後、現像液(製品名PMER現像液P−7G 東京応化工業株式会社製)で、15分間現像して、図1(a)に示す多層レジストパターンを有する樹脂層を形成した。
(B)工程:形成した樹脂層を、アッシング装置TCAー3822(東京応化工業株式会社製)を用いてアッシング処理(出力:400W、温度:40℃、圧力:20Pa、時間:1分、酸素流量:200cc/min、)を行った後、形成した樹脂層を純水で洗浄した後、リン酸二水素ナトリウム10g/l及び界面活性剤(商品名 ナロアクティー、三洋化成工業製)2g/lを用いて脱脂した、次に塩化スズ0.05g/l水溶液及び塩化パラジウム0.05g/l水溶液に浸漬した。当該浸漬操作を更に2回繰り返した後、無電解ニッケル浴(硫酸ニッケル0.05M、グリシン0.15M、次亜リン酸ナトリウム0.20M、ビスマス0.1質量ppm)中で、60℃、pH4.5で10分無電解メッキを行った。
(C)工程:ゲル状エッチング組成物(d−1)を用いて、図1(c)に示すように最上部の樹脂層表面の導電層のみを上記ゲル状エッチング組成物と接触し、室温で10分間エッチング処理を行った。処理後は流水洗浄を30秒行い、エアーガンを用いて乾燥させた。
(D)工程:電気ニッケル浴(スルファミン酸ニッケル450g/l、塩化ニッケル5g/l、ホウ酸30g/l、2−ブチン−1,4−ジオール0.3g/l)中で、40℃、pH4.0で空気攪拌しながら、電流密度1.0A/dmで135分電解メッキを行なったのち、剥離液(製品名 剥離710、東京応化工業株式会社製)で、80℃、1時間剥離を行ない、図1(f)に示す三次元金族構造物を形成した。
【0098】
<実施例2>
以下を除き実施例1と同様に三次元金属構造物を形成した。
(B)工程において、無電解ニッケル浴に代えて無電解銅浴(硫酸銅0.032mol/l、EDTA・4H 0.240mol/l、ホルマリン0.200mol/l、2−2’ピピリジル100ppm、PEG−1000(分子量1000のポリエチレングリコール) 1000ppm)中で、45℃、pH11.5で10分無電解メッキを行った。
(C)工程において、ゲル状エッチング組成物(d−3)を用いた。
(D)工程において、電気ニッケル浴に代えて電気銅浴(硫酸銅200g/l、硫酸50g/l、SPS(ビス(3−スルフォプロピルジスルフィド)) 10ppm、JGB(ヤーヌスグリーンB) 10ppm、PEG−4000(分子量4000のポリエチレングリコール) 100ppm、塩酸(Clとして)50ppm)中で、室温、pH0.01で空気攪拌しながら、電流密度1.0A/dmで135分電解メッキを行なった。
【0099】
<実施例3>
(D)工程において、ゲル状エッチング組成物(d−1)に代えて(d−2)を用いた以外は実施例1と同様に三次元金属構造物を形成した。
【0100】
<実施例4>
(D)工程において、ゲル状エッチング組成物(d−3)に代えて(d−4)を用いた以外は実施例2と同様に三次元金属構造物を形成した。
【0101】
<比較例1>
(D)工程において、リン酸80質量%、硝酸8質量%、水12質量%を含むエッチング液を用いて、図2(c)に示すように基板が上になるように反転させて最上部のレジストパターン表面の導電層のみを上記エッチング液に浸漬し、室温で40秒間エッチング処理を行ったほかは実施例1と同様に三次元金属構造物を形成した。
【0102】
<比較例2>
(D)工程において、過硫酸ナトリウム50g/l、硫酸20ml/lを含むエッチング液を用いて、図2(c)に示すように基板が上になるように反転させて最上部のレジストパターン表面の導電層のみを上記エッチング液に浸漬し、室温で5秒間エッチング処理を行ったほかは実施例2と同様に三次元金属構造物を形成した。
【0103】
<評価>
実施例1〜4並びに比較例1及び2において形成した三次元金属構造物を、SEMを用いて観察した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
形成した基板を観察した結果、(D)工程においてゲル状エッチング組成物(d−1)〜(d−4)を用いることにより、凹部内壁の導電層が除去されることなく、上記ゲル状エッチング組成物に接触した最上部のレジストパターン表面の導電層のみを除去することができた(実施例1〜4)。これに対し、エッチング液を用いて浸漬した場合には、エッチング液に浸漬していない凹部内壁の導電層の一部が溶解し、テーパー状になっていた(比較例1及び2)。以上より、エッチング液に代えてゲル状エッチング組成物に導電層を節足させることにより、エッチング液の表面張力による凹部内壁への影響を抑えつつ、ゲル状エッチング組成物と接触した導電層のみを選択的に除去できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明による三次元金属構造物の形成方法を示す模式図である。
【図2】エッチング液に浸漬した際の状況を示す模式図である。
【図3】従来技術による三次元金属構造物の形成方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 基板
2 金属層
3 有機膜
4 有機膜
5 導電層
6 ゲル状エッチング組成物
7 凹部
8 メッキ金属
9 三次元金属構造物
11 基板
12 金属層
13 有機膜
14 有機膜
15 導電層
16 エッチング液
17 凹部
18 溶解部分
21 基板
22 金属層
23 ネガ型ホトレジスト樹脂層
24 ネガ型ホトレジスト樹脂層
25 導電層
26 凹部
27 メッキ金属
28 三次元金属構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、
(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、
(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を選択的に除去する工程と、を含んでなる導電層を有する三次元構造物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)は、
(A−1)基板上に有機膜を形成し露光する工程と、
(A−2)前記(A−1)工程を計2回以上繰り返して有機膜を積み重ねた後、全ての有機膜を同時に現像することで多層パターン化有機膜を形成する工程と、を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(A−1)工程における露光の露光面積は、露光光源から近い有機膜の露光面積より、露光光源から遠い有機膜の露光面積が大きいことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン化有機膜はネガ型ホトレジスト組成物により形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ネガ型ホトレジスト組成物が化学増幅型ネガ型ホトレジスト組成物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲル状エッチング組成物が金属用エッチング液とゲル化剤とを含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲル化剤が天然水溶性ガム、親水性粘度鉱物類、天然水溶性ポリマー、合成水溶性ポリマーから選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、(D)メッキ処理を行う工程を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において使用するためのゲル状エッチング組成物。
【請求項10】
(A)基板上にパターン化有機膜を形成する工程と、
(B)無電解メッキにより前記パターン化有機膜表面に導電層を形成する工程と、
(C)ゲル状エッチング組成物と接触させることにより前記導電層の一部を選択的に除去する工程と、
(D)メッキ処理及び前記パターン化有機膜の剥離を行う工程と、を含んでなる三次元金属構造物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−275276(P2009−275276A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129923(P2008−129923)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【出願人】(502273096)株式会社関東学院大学表面工学研究所 (52)
【Fターム(参考)】