説明

導電層用のコアシェル構造を有する粒子

本発明は、無機材料に基づく酸官能化コアと少なくとも1つの導電性のポリチオフェンを含むシェルとを含むコアシェル構造を有する粒子、かかる粒子を含む分散液、ならびにその調製および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料に基づく酸官能化コアと少なくとも1つの導電性のポリチオフェンを含むシェルを含むコアシェル構造を有する粒子、かかる粒子を含む分散液、ならびにその調製および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に水不溶性またはほとんど水に溶解しない導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリピロールまたはポリチオフェンは、溶解したかまたは分散した対イオンの存在の結果として分散することができる。
【0003】
1992年に、Armesらは、ポリアニリンを用いたSiO粒子のコーティングを記載した(非特許文献1、非特許文献2)。アニリンは、水系媒体の中で非官能化SiO粒子上に重合された。その生成物は、超遠心分離法によって沈殿され、洗浄された。ある場合には、その生成物は再懸濁可能であった。電気伝導率を測定するために、圧縮成形体がその分散液および沈殿物から生成された。分散液および沈殿物の混合物の場合には、2.8s/cmの電気伝導率が見出され、純粋な分散液の場合には、0.2s/cmの電気伝導率が見出された。1993年に、ArmesおよびMaedaは、SiO粒子上へのピロールの重合を記載した(非特許文献3、非特許文献4)。この場合でも、単量体は非官能化SiO粒子の上に重合された。シリカ−ポリピロール複合材料の圧縮成形体では、最高4S/cmの電気伝導率が見出された。
【0004】
SiO粒子上へのポリピロールおよびポリアニリンの重合は記載されてきたが、無機粒子上へのチオフェンの重合はしばらくの間解決されないままであった。しかしながら、酸化状態でのその電気伝導率、安定性および透明性ならびにおよびその結果生じる多くの可能性のある用途のために、とりわけポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)および重合による何らかの付与は興味が持たれていた。
【0005】
1999年に、KimおよびLeeは、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の存在下でのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の合成を記載した(非特許文献5)。TEOSの加水分解によって、未制御のサイズのSiO粒子が形成される。このSiOのゲル化プロセスおよび3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)の重合プロセスは並行して起こる。著者らは、高い硬度を有する導電層の調製を記載する。しかしながら、KimおよびLeeの調製プロセスは、SiOのゲル形成およびEDTの重合が並行して起こり、従って形成したままの生成物のモルホロジーの制御はまったく不可能であるという欠点を呈する。このように、保存できる分散液は調製されず、これがこのプロセスの欠点である。純粋な水系での合成は記載されていない。さらなる欠点は、生成された層は、過剰の酸化剤を除去するためにn−ブタノールおよび水で洗浄されなければならないことである。化学的な重合が完結している直ちに使用できる分散液の場合には、かかる洗浄工程は不要である。
【0006】
2003年に、ArmesおよびHanは、メタノール性SiO分散液の存在下でEDTを重合することに成功した(非特許文献6)。EDTは、p−トルエンスルホン酸の存在下で、過硫酸アンモニウムを酸化剤として用いて重合される。重合の間に沈殿物が形成し、この沈殿物は再分散および遠心分離によって洗浄され、圧縮成形体へと加工された。この材料の圧縮成形体について、0.2s/cmの電気伝導率が測定された。
【0007】
しかしながら、ArmesおよびHanによって記載されるプロセスは、重合後に、沈殿物が最初に形成され、この沈殿物は第2工程で再分散されなければならないという欠点を有している。繰り返される遠心分離、洗浄および再分散による精製および副生成物の除去は、非常に費用がかかりかつ不便である。純粋な水系での合成は記載されていない。さらなる欠点は、薄膜の製造は記載されておらずむしろ圧縮成形体の製造だけが記載されていることである。
【0008】
2004年に、HanおよびFouglerは、水系のシリカゾル分散液の中でのEDTの重合を記載した(非特許文献7)。EDTの溶解度はメタノールおよび/またはp−トルエンスルホン酸の添加によって高められる。その反応の正確な記載はない。より具体的に言えば、p−トルエンスルホン酸の存在下での水系媒体の中での重合は詳細には記載されておらず、単にp−トルエンスルホン酸はEDTをプロトン化して対イオンとしての機能をはたすと指摘されているだけであり、そのため、わずか触媒量のp−トルエンスルホン酸が使用されたと推測することはできない。この刊行物で生成された粒子の電気伝導率の記載はない。
【0009】
この反応の1つの欠点は、副生成物および変換されなかった単量体は洗浄プロセスによって除去されなければならないということである。SiO表面は官能化されておらずかつ遊離酸がその溶液中に存在するため、EDTの重合は、SiOの表面でだけでなく自由な溶液の中でも起こりうる。それゆえ、上述の副生成物は結合されていないポリチオフェンである場合もあると推測することができる。さらに、繰り返される遠心分離および洗浄は、費用がかかりかつ不便なプロセス工程である。この材料からの膜または圧縮成形体の製造の記載はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Armesら、J.Chem.Soc.Chem.Commun.、1992年、108頁
【非特許文献2】Armesら、Langmuir 1992年、第8巻、2178頁
【非特許文献3】ArmesおよびMaeda、J.Colloid Interface Sci. 1993年、第159巻、257頁
【非特許文献4】ArmesおよびMaeda、J.Mater.Chem. 1994年、第4巻、935頁
【非特許文献5】KimおよびLee、Mol.Cryst. and Liq.Cryst. 1999年、第337巻、213−216頁
【非特許文献6】ArmesおよびHan、Langmuir、2003年、第19巻、4523頁
【非特許文献7】HanおよびFougler、Chem.Commun. 2004年、2154頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、導電性のポリチオフェンでコーティングされており、制御されたかつ簡単な様式で製造することができ、上記の欠点を有さずかつ薄い導電層を製造するのに特に適した無機粒子に対する必要性がまだ存在していた。
【0012】
従って、本発明の根底にある課題は、かかる粒子およびこれらの粒子を含む分散液を提供することにある。それらを製造するための簡単なプロセスを見出すことがさらなる目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
無機コアが酸基で官能化されかつシェルが少なくとも1つの導電性のポリチオフェンを含む粒子がこの目的を成し遂げるということが、本発明において驚きをもって見出された。
【0014】
それゆえ、本発明は、コアが無機材料に基づき、かつシェルが少なくとも1つの導電性のポリチオフェンを含むコアシェル構造を有する粒子であって、この無機材料に基づくコアが共有結合された酸基を含むことを特徴とする、粒子を提供する。
【0015】
これらの粒子について特に有利なことは、そのコアの共有結合された酸基と導電性のポリチオフェンとの間に複雑な結合が形成されることである。この複雑な結合は、まず第1に無機粒子に対するポリチオフェンの例外的な親和性を、第2にコア上でのシェルのより強固な接着を確実にする。この高められた親和性によって、当該官能化された無機粒子の存在下でのポリチオフェンの調製の過程において、後でその層の特性の不均一性または物質の損失、とりわけチオフェンの損失につながる多くの量の遊離のポリチオフェンが形成することを防止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このコアのために有用な無機材料は、とりわけ金属酸化物である。これらは、好ましくはケイ素、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムの1以上の酸化物である。二酸化ケイ素が特に好ましい。
【0017】
本発明の粒子は、好ましくは、まず分散された無機粒子(本願明細書において、以降、無機一次粒子とも呼ばれる)を酸基で官能化し、次いで導電性のポリチオフェンを含むシェルを付与することによって生成することができる。
【0018】
従って、この無機材料は、出発物質として分散した形態で存在することが好ましい。
【0019】
水系の二酸化ケイ素分散液は、久しく以前から知られている。調製プロセスに応じて、それらは異なる形態で存在する。
【0020】
本発明に係る適切な二酸化ケイ素分散液は、シリカゾル、シリカゲル、ヒュームドシリカ、沈降シリカまたはこれらの混合物に基づくものであってもよい。
【0021】
官能化に適したSiO含有分散液、例えばシリカゾルは、水ならびに/またはアルコールおよび他の極性溶媒の中の非晶質SiOの沈降しにくい、コロイド溶液である。それらは、通常、水の流動性を有し、市販の製品のいくつかは好ましくは5〜60重量%のSiOの高い固形分濃度を有し、ゲル化に対して大きな安定性を有する。
【0022】
典型的には、シリカゾルは、二酸化ケイ素粒子のサイズに応じて乳状であり、乳白色から無色までの濁りを呈し、透明である。このシリカゾルの粒子は、3nm〜250nm、好ましくは5nm〜150nmの直径を有する。この粒子は球状であり、三次元的に区切られており、好ましくは電気的に負に帯電している。個々の粒子の内部では、[SiO]四面体またはポリケイ酸の結合に由来するシロキサン結合の骨格が典型的には存在する。SiOH基は、表面に配置されている。種々の用途のために、およそ30〜1000m/gの比表面積を有する安定なシリカゾルが好ましい。この比表面積は、遠心分離または凍結によって分散液からすでに取り出された乾燥したSiO粉末についてのBET法(S.Brunauer、P.H.EmmetおよびE.Teller、J.Am.Soc.、1938、60、309を参照)、またはG.W.Sears(Analytical Chemistry、第28巻、1981頁、1956を参照)に従った滴定により溶液中で直接、のいずれかによって測定することができる。
【0023】
シリカゾルは、例えば塩化ナトリウム、塩化アンモニウムおよびフッ化カリウムなどの電解質の添加に対しては不安定である。電荷の均衡をとるためおよび安定化のために、シリカゾルは、典型的には一価のカチオン、例えば、水酸化ナトリウム溶液もしくは水酸化カリウム溶液またはナトリウム水ガラスまたはカリウム水ガラス、または他のアルカリに由来するアルカリ金属カチオンなど、またはアンモニウムイオンおよびテトラアルキルアンモニウムイオンを含む。
【0024】
シリカゾルは、存在する核の上へと小さいSiO粒子が成長するいわゆる成長プロセスにおける核形成相を経由してモノケイ酸(Monokieselsaeuren)を縮合させることによって調製される。この出発物質は、5nmよりも小さい粒子を含む分子状シリケート溶液、すなわち新規に調製された希薄なシリカ溶液(いわゆる未使用のゾル)である。あまり一般的ではないが、シリカゾルはシリカゲルをペプチド化することによって得られるか、または他のプロセス、例えば非晶SiO粒子を分散させることによって調製される。工業規模で実施されるシリカゾルを調製するためのプロセスの大多数は工業的な水ガラスを出発物質として使用する。
【0025】
当該プロセスにとって適切な水ガラスはナトリウム水ガラスまたはカリウム水ガラスであり、費用が理由でナトリウム水ガラスが好ましい。市販のナトリウム水ガラスはNaO・3.34SiOの組成を有し、好ましくはケイ砂をソーダまたは硫酸ナトリウムおよび炭素の混合物とともに溶融して透明な無色のガラス(粒ガラス(Stueckglas)として知られる)を得ることによって調製される。粉にされた形態で、この粒ガラスは高められた温度および圧力で水と反応してコロイド状の、強アルカリ溶液を与え、これはその後精製に供される。
【0026】
加えて、ヒュームドシリカと沈降シリカとの間では異なる。沈殿プロセスでは、水は最初に加えられ、次いで水ガラスおよび酸(HSOなど)が同時に加えられる。これによりコロイド状の一次粒子が形成され、この一次粒子は反応が進むのとともに集塊になり絡み合って凝集体を形成する。比表面積は一般に30〜800m/gであり、一次粒径は5〜100nmである。固体形態で存在するシリカの一次粒子は、一般に強く架橋して二次凝集体を形成する。上で報告された比表面積および以下で特定される比表面積はDIN 66131に従って測定される。
【0027】
ヒュームドシリカは火炎加水分解によってまたはアーク放電プロセスを用いて調製することができる。ヒュームドシリカについての主要な合成プロセスは、テトラクロロシランが水素/酸素ガスの炎の中で分解される火炎加水分解である。形成されるシリカはX線では非晶質である。ヒュームドシリカは、その実質上無細孔の表面に、沈降シリカよりも著しく少ないOH基を有する。火炎加水分解によって調製されるヒュームドシリカは、一般に50〜600m/gの比表面積および5〜50nmの一次粒径を有し、アーク放電プロセスによって調製されるシリカは25〜300m/gの比表面積および5〜500nmの一次粒径を有する。
【0028】
固体形態のシリカの合成および特性のさらなる詳細は、例えば、K.H.Buechel、H.−H.Moretto、P.Woditsch 「Industrielle Anorganische Chemie」、Wiley VCH Verlag 1999、第5.8章に見出すことができる。
【0029】
単離された固体として存在するSiO原料が本発明の粒子(例えばヒュームドシリカまたは沈降シリカ)の調製のために使用される場合、それは例えば分散によって水系のSiO分散液へと変換される。
【0030】
二酸化ケイ素分散液を調製するために、先行技術の分散装置、好ましくは高せん断速度を発生するのに適した分散装置、例えばUltraturraxまたは円板型溶解槽(Dissolverschreibe)が使用される。
【0031】
SiO粒子が1〜400nm、好ましくは3〜250nm、より好ましくは5〜150nmの一次粒径を有する二酸化ケイ素分散液を使用することが好ましい。沈降シリカが使用される場合は、それらは粒子の粉砕の目的で粉にされる。
【0032】
シリカゾルを使用することが特に好ましく、水系シリカゾルを二酸化ケイ素分散液として使用することがなお特に好ましい。いくつかの適切なシリカゾルも市販されている。
【0033】
無機のコアに直接結合されているかまたはアルキル鎖を介して共有結合されている酸基は、その表面に結合されていることが好ましい。特に、強酸性の酸基はこの目的にとって有用である。それらは、好ましくはスルホン酸基および/またはメルカプト基である。本発明に関しては、「酸基」はその塩、とりわけナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩をも意味すると理解される。
【0034】
これらは、式(X)および/または(Y)の基
−B−(SOM)− (X)
−B−(SH)− (Y)
(式中、
Bは(p+1)価の橋かけ要素であり、
pは1〜3であり、かつ
Mは水素、アルカリ金属カチオン、とりわけLi、Na、またはK、アルカリ土類金属カチオン、とりわけMg2+またはCa2+、またはNHである)
であることが好ましい。
【0035】
Bは、より好ましくは二価であり、すなわちpは1である。Bは、好ましくは、1以上の酸素原子によって任意に遮られておりかつ1〜15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、または下式
【化1】

の単位である。
【0036】
最も好ましくは、Bは−(CH−(式中、n=1〜6、とりわけn=3)である。
【0037】
スルホン酸基、とりわけ式(Z)のスルホン酸基、より好ましくは式(Z−I)
−(CH−SOM (Z−I)
(式中、Mは上で定義されたとおりである)のスルホン酸基を有するシリカゾルを使用することが好ましい。
【0038】
シリカゾルのSiO基準の硫黄含量は、好ましくは0.1〜30mol%、好ましくは0.1〜8mol%、とりわけ1〜5mol%である。硫黄含量は、例えば、元素分析によって決定することができる。
【0039】
本発明に関して適切な導電性のポリチオフェンは、好ましくは一般式(I)の繰り返し単位
【化2】

(式中、
およびRは、各々独立にH、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカルもしくは任意に置換されたC〜C18−アルコキシラジカルであるか、または
およびRは一緒になって、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、1以上の炭素原子が1以上の同一のまたは異なるOもしくはSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられていてもよい任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、好ましくはC〜C−ジオキシアルキレンラジカル、任意に置換されたC〜C−オキシチアアルキレンラジカルまたは任意に置換されたC〜C−ジチアアルキレンラジカル、または少なくとも1つの炭素原子がOもしくはSから選択されるヘテロ原子によって任意に置き換えられている任意に置換されたC〜C−アルキリデンラジカルである)
を含むポリチオフェンである。
【0040】
それらは、より好ましくは一般式(I−a)および/または(I−b)の繰り返し単位
【化3】

(式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、
YはOもしくはSであり、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルであり、
xは0〜8、好ましくは0または1の整数であり、
複数のRラジカルがAに結合されている場合は、それらは同じであってもよいし異なっていてもよい)
を含むポリチオフェンである。
【0041】
一般式(I−a)は、x個の置換基RがアルキレンラジカルAに結合されていてもよいというように理解されるべきである。
【0042】
一般式(I−a)の繰り返し単位を含むポリチオフェンは、好ましくは一般式(I−a−1)および/または(I−a−2)の繰り返し単位
【化4】

(式中、Rおよびxは、各々、上で定義されたとおりである)を含むポリチオフェンである。
【0043】
それらは、より好ましくは、一般式(I−aa−1)および/または(I−aa−2)の繰り返し単位を含むポリチオフェンである。
【化5】

【0044】
特に好ましい実施形態では、一般式(I−a)および/または(I−b)の繰り返し単位を有するポリチオフェンは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチアチオフェン)またはポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)、すなわち式(I−aa−1)、(I−aa−2)または(I−b)の繰り返し単位から形成されるホモポリチオフェンである。
【0045】
さらなる特に好ましい実施形態では、一般式(I−a)および/または(I−b)の繰り返し単位を有するポリチオフェンは、式(I−aa−1)および(I−aa−2)、(I−aa−1)および(I−b)、(I−aa−2)および(I−b)または(I−aa−1)、(I−aa−2)および(I−b)の繰り返し単位から形成される共重合体であり、式(I−aa−1)および(I−aa−2)、およびまた(I−aa−1)および(I−b)(式(I−b)において、YはSを表す)の繰り返し単位から形成される共重合体が好ましい。
【0046】
このポリチオフェンは、電荷を帯びていなくてもよく、またはカチオン性であってもよい。好ましい実施形態では、それらはカチオン性であり、「カチオン性」は、当該ポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみに関する。Rラジカル上の置換基に従って、上記ポリチオフェンは、構造単位に正電荷および負電荷を有していてもよく、この場合この正電荷はポリチオフェン主鎖上に存在し、負電荷は、場合によっては、スルホネートまたはカルボキシレート基によって置換されたRラジカル上に存在する。このポリチオフェン主鎖の正電荷は、Rラジカル上に存在していてもよいアニオン性基によって一部または完全に均衡していてもよい。全体で見ると、これらの場合のポリチオフェンは、カチオン性であってもよく、電荷を帯びていなくてもよく、またはアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、それらはすべてカチオン性ポリチオフェンと考えられる。なぜなら、ポリマーまたはポリチオフェン主鎖上の正電荷が重要だからである。正電荷は式には示されていない。なぜなら、その正確な数および位置を明確に記述することができないからである。正電荷の数は、しかしながら、少なくとも1でありかつ多くともnである(ここでnはこのポリチオフェン内の(同一のまたは異なる)すべての繰り返し単位の総数である)。
【0047】
乾燥した状態でこれらの導電性のポリチオフェンの層の上で測定した場合に10−8Scm−1を超える、より好ましくは10−6Scm−1を超える、最も好ましくは10−4Scm−1を超える比電気伝導率を有する導電性のポリチオフェンを調製するために本発明に係るプロセスを使用することが好ましい。
【0048】
いずれかのスルホネート置換またはカルボキシレート置換された、従って負に帯電したRラジカルによって正電荷を打ち消すことがまだなされていない場合、正電荷を打ち消すために、このカチオン性ポリマーまたはポリチオフェンは、対イオンとしてアニオンを必要とする。
【0049】
本発明に関しては、これらの対イオンは、好ましくは無機のコアに共有結合された酸基によってもたらされる。
【0050】
本発明は同様に、本発明の粒子を含む分散液をさらに提供する。
【0051】
本発明の粒子は、好ましくは5nm〜100μmの粒径、より好ましくは10nm〜20μmの粒径を有する。粒径分布は、超遠心機によって決定することができる(Colloid Polyme Sci. 1989、267、1113−1116)。分散液の中で膨潤する粒子の場合には、粒径は膨潤状態で決定される。当該粒子の粒径分布は、粒径の影響を受けやすい分散液中の粒子の質量分布に関連する。
【0052】
これに関して、粒径分布のd50値は、全粒子の総重量の50%がd50値以下のサイズを有する粒子に帰属できることを表す。粒径分布のd90値は、全粒子の総重量の90%がd90値以下のサイズを有する粒子に帰属できることを表す。
【0053】
本発明の分散液は1〜14のpHを有してもよく、1〜8のpHが好ましい。
【0054】
本発明の分散液における本発明の粒子の固形分含量は、好ましくは0.1〜90重量%、より好ましくは0.5〜30重量%および最も好ましくは0.5〜10重量%である。
【0055】
本発明の粒子は安定な分散液を形成する。しかしながら、不安定な分散液を得ることも可能である。これらは、本発明の粒子の均一な分布を確実にするために、使用前に、例えば撹拌され、横に揺らされ、または激しくかき混ぜられてもよい。
【0056】
本発明の粒子は、分散液の中で直接生成されることが好ましい。
【0057】
それゆえ、本発明はさらに、本発明の分散液を調製するためのプロセスであって、無機材料に基づく粒子を含む分散液、すなわち無機の一次粒子を含む分散液が酸基との化学反応によって官能化され、次いで、共有結合された酸基を含むこれらの粒子の存在下で、前駆体が酸化的に重合されて導電性のポリチオフェンを調製することを特徴とするプロセスを提供する。
【0058】
無機の一次粒子の酸性官能化の調製のために、スルホン酸基および/またはメルカプト基を含む変性剤の使用が特に適切である。独国特許出願公開第10 2004 020 112 A1号明細書に記載される変性されたシリカゾルおよび変性剤を調製するためのプロセスが、以下に詳述される。SH基の任意の導入のために、そのシリカゾルは、
a)メルカプト化合物との反応に供され、そして
任意にスルホン酸基を導入するために、
b)SOM基を含む化合物との反応に供されるか、または
b1)官能基を含む化合物との反応に供されてその官能基自体がSOM基に変換される、とりわけa)によって得られるメルカプト化合物、または
b2)官能基を含む化合物との反応に供され、そしてこのように誘導体化されたシリカゾルがSOM基を含む化合物との反応にさらに供され、
この反応は、段階a)、b)、b1)またはb2)のうちの少なくとも1つで、特定の反応混合物基準で少なくとも75重量%の水分含量を有する水系媒体の中で行われた。
【0059】
SOM基を含む好ましい化合物は、式IIIの化合物
−(CHSi(OR)(OH)−(CH−SOM (III)
(式中、
mおよびsは各々0〜3であり、
q=0または1であり、
qおよびmおよびsの和は3であり、
t=1〜15、好ましくは1〜6、とりわけ3であり、
Mは上で定義されたとおりであり、
RはC〜C−アルキル、とりわけメチルまたはエチルである)である。
【0060】
式(IIIa)に相当する式(III)の化合物
(CHSi(OH)−(CH−SOM (IIIa)
(式中、M、sおよびqは各々上で定義されたとおりであり、より具体的には、sは3でありqは0である)が特に好ましい。
【0061】
使用される少なくとも1つの官能基を含む化合物は、好ましくはメルカプト(SH)化合物であり、このメルカプト(SH)化合物は、その反応後にSOM化合物へと酸化される。
【0062】
好ましいメルカプト化合物は、式(IV)のメルカプト化合物
(CHSi(OR)(OH)−(CH−SH (IV)
(式中、
m、sおよびqは各々上で定義されたとおりであり、
tは1〜15、とりわけ1〜6、好ましくは3であり、
Rは上で定義されたとおり、好ましくはメチルまたはエチルである)
である。
【0063】
式(IV)の好ましい化合物は、式(IVa)の化合物
(CHSi(OCH(CH−SH (IVa)
(式中、qおよびmの和=3である)、および式(IVb)の化合物
(CHSi(OH)(CH−SH (IVb)
(式中、qおよびsの和=3であり、m、sおよびqは各々上で定義されたとおりである)である。
【0064】
シリカゾルと官能基を有する化合物との反応、とりわけメルカプト化合物、好ましくは式(IV)および(IVa)のメルカプト化合物との反応は、好ましくは、それら二成分が0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃の温度で反応に供されることを特徴とする。同時に、水およびアルコールなどの生成しうる縮合生成物は、例えば蒸留によって連続的に反応混合物から除去することができることが好ましい。場合によっては、溶媒の中で作業をすることも可能である。
【0065】
とりわけ、このようにして得られたシリカゾルのメルカプト基は、その後に酸化剤、好ましくはHを用いて公知の様式でスルホン酸基へと酸化することができる。
【0066】
この酸化は、あるいはペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、硝酸鉄、tert−ブチルヒドロペルオキシド、オキソン(カロ酸(Carosche Saeure)、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸を用いて実施することもできる。
【0067】
アンカーとしての役割を果たしかつさらには1以上のSOH基を有する化合物と反応性である官能基を有する化合物にも言及するべきである。かかる化合物は、例えば、一般式(V)
(CHSi(OH)(CH−F (V)
(式中、Fはさらに変換することができる官能基、例えばSH基、一級または二級アミノ基であり、qおよびmは各々上で定義されたとおりである)を有する。
【0068】
官能基を有する好ましい化合物は、
Si(OCH−(CH−SH (VI)、
CHSi(OCH(CH−SH (VII)、
Si(OH)−(CH−SH (VIII)、
CHSi(OH)(CH−SH (IX)、
Si(OC−(CH−SH (X)、
CHSi(OC−(CH−SH (XI)、
Si(OCH−(CH−NH (XII)、
CHSi(OCH(CH−NH (XIII)、
Si(OH)−(CH−NH (XIV)、
CHSi(OH)(CH−NH (XV)、
Si(OC−(CH−NH (XVI)、
CHSi(OC−(CH−NH (XVII)
であり、これらはさらに、一般式の二官能性の化合物
ClOS−B−(SOCl)
(式中、
u=1または2であり、
は6〜10個の炭素原子を有する芳香族の橋かけ要素である)
と反応することができる。
【0069】
ベンゼンジスルホニルクロリド、トルエンジスルホニルクロリドまたはナフタレンジスルホニルクロリドまたはナフタレントリスルホニルクロリドが特に好ましく、これらは、例えば、一般式
SiO−(CH−NH−SO−C10−SOM (XVIII)
の微粒子系をもたらすようにさらに再度置換されてもよい。
【0070】
一般式(VI)〜(XVII)の成分を、自身ではさらなる酸基を有しないが橋かけを形成することができる二官能性または三官能性試薬と反応させることもまた好ましい。かかる化合物は、例えば塩化シアヌルまたはジイソシアネート、とりわけヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアンまたはトリレンジイソシアネートである。これらは、さらにスルホン酸基によって置換された化合物との反応にもう一度供されてもよい。かかる化合物は、タウリンまたは染料化学から知られたアミノ基によって置換された芳香族スルホン酸、例えばH酸(1−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸)、I酸(2−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−7−スルホン酸)またはγ酸(2−アミノ−8−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸)であってもよい。
【0071】
シリカゾルのケイ素含量基準で、0.1〜30mol%、とりわけ0.5〜5mol%の量で化合物III〜XVIIを使用することが好ましい。
【0072】
本発明はまた、シリカゾルと式IIIまたはIVの化合物との反応、および場合によってはその後の酸化によって得ることができる生成物にも関する。
【0073】
スルホン基を含むシリカゾルは、欧州特許出願公開第1 142 640号明細書、欧州特許出願公開第63 471号明細書、独国特許出願公開第2 426 306号明細書およびR−D.Badley、T.Ford. J.Org.Chem. 1989、54、5437−5443から、触媒目的のための異なる形態(例えば異なる粒径または異なる硫黄含量)ですでに公知である。
【0074】
チオフェンの重合においては、酸の存在が必要とされる。従って、酸による無機のコアの官能化は、当該コアへの当該シェルの強固な結合という利点をもたらす。ArmesおよびHan(Langmuir、2003、19、4523)の場合のようにこの酸が単に添加剤として添加される場合、そのコアと生成するポリマーとの間に直接の結合は確実ではない。本発明の粒子の場合では、この無機の一次粒子と酸基との間に共有結合が存在する。導電性のポリチオフェンと酸官能性との間で、ポリアニオンへのポリカチオンの複雑な結合が形成され、その結果、ポリチオフェンとシリカゾル全体との間に強固な結合が存在する。
【0075】
カチオン/アニオン錯体を調製するために、この酸官能化一次粒子は、最初に、好ましくは分散液の中で直接、好ましい実施形態ではシリカゾルの形態で、電荷を帯びるようにされる。本願明細書中でこれ以降溶媒とも呼ばれる適切な分散剤は、例えば、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル、脂肪族スルホキシド、脂肪族カルボキシアミド、脂肪族および芳香環を含む脂肪族エーテル、および水である。好ましい溶媒は水、または水を含む混合物である。特に好ましい溶媒は水である。その後、導電性のポリチオフェンの調製のための前駆体、1以上の酸化剤、および場合によっては触媒が加えられ、この前駆体は酸化的に重合されて導電性のポリチオフェンが調製される。
【0076】
記載する前駆体からの酸化重合は、例えば、欧州特許出願公開第440 957号明細書に明記される条件と同様にして、行われる。当該分散液の調製のための改善された変形例は、無機塩の含量またはその一部を除去するためのイオン交換体の使用の例である。かかる変形例は、例えば、独国特許出願公開第19 627 071号明細書に記載されている。このイオン交換体は、例えば、生成物とともに撹拌してよく、またはその生成物は、イオン交換体が充填されたカラムに通される。このイオン交換体を使用することで、例えば、低い金属含量を達成することができる。最後に、その分散液のさらなる濾過を行うことができる。
【0077】
この簡単な調製プロセスは、先行技術に勝る重要な利点である。本発明の粒子は、分散液の中で直接調製することができる。その後の再分散を伴う濃縮または沈殿は必要とはされない。
【0078】
導電性のポリチオフェンを調製するための適切な前駆体は、好ましくは一般式(II)のチオフェン
【化6】

(式中、RおよびRは、各々、一般式(I)について定義されたとおりである)である。
【0079】
一般式(II−a)および/または(II−b)のチオフェン
【化7】

(式中、A、Y、Rおよびxは、各々、一般式(I−a)および(I−b)について定義されたとおりである)が特に好ましい。
【0080】
一般式(II−a)の好ましいチオフェンは、一般式(II−a−1)および/または(II−a−2)のチオフェンである。
【化8】

【0081】
一般式(II−a)のチオフェンとして、一般式(II−aa−1)および/または(II−aa−2)のチオフェンを使用することがさらに特に好ましい。
【化9】

【0082】
本発明に関しては、導電性のポリチオフェンを調製するための前駆体として上で詳述されたチオフェンの誘導体を使用することも可能である。本発明に関しては、上で詳述されたチオフェンの誘導体は、例えば、これらのチオフェンの二量体または三量体を意味すると理解される。単量体の前駆体のより高分子量の誘導体、すなわち四量体、五量体なども誘導体として可能である。これらの誘導体は同一の単量体単位または異なる単量体単位のいずれから形成されてもよく、純粋な形態で、または互いおよび/もしくは上述のチオフェンとの混合物として使用されてもよい。これらのチオフェンおよびチオフェン誘導体の酸化された形態または還元された形態も本発明に関する「チオフェン」および「チオフェン誘導体」との用語に包含されるが、ただしそれは、それらの重合が上で詳述されたチオフェンおよびチオフェン誘導体の導電性ポリマーと同じ導電性ポリマーを形成する場合に限る。
【0083】
チオフェンおよびその誘導体を調製するためのプロセスは当業者に公知であり、例えば、L.Groenendaal、F.Jonas、D.Freitag、H.PielartzikおよびJ.R.Reynolds、Adv.Mater. 12(2000)481−494およびその中で引用される文献に記載されている。
【0084】
当該チオフェンは、任意に、溶液の形態で使用することができる。適切な溶媒としては、特に、反応条件下で不活性な以下の有機溶媒が挙げられる:メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル、ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボキシアミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族および芳香環を含む脂肪族エーテル。加えて、水、または水と上記の有機溶媒との混合物を当該溶媒として使用することも可能である。好ましい溶媒は、アルコールおよび水、ならびにアルコールもしくは水を含む混合物、またはアルコールおよび水の混合物である。
【0085】
酸化条件下で液体であるチオフェンは、溶媒の不存在下でも重合することができる。
【0086】
使用される酸化剤は、当業者に公知でありかつチオフェンの酸化重合に適した酸化剤であってもよい。これらは、例えば、J.Am.Chem.Soc.、85、454(1963)に記載されている。実用的な理由から、無機酸の鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、ならびに有機酸の鉄(III)塩および有機ラジカルを有する無機酸の有機酸の鉄(III)塩、ならびにまたH、KCr、ペルオキソ二硫酸のアルカリ金属塩およびペルオキソ二硫酸アンモニウム、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウム、アルカリ金属過ホウ素酸塩、過マンガン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸銅などの銅塩、またはセリウム(IV)塩またはCeOなどの安価で取扱いが容易な酸化剤が好ましい。
【0087】
式IIのチオフェンの酸化重合のために、チオフェン1モルあたり2.25当量の酸化剤が理論上必要である(例えば、J.Polym.Sc.Part A Polymer Chemistry 第26巻、1287頁(1988)を参照)。しかしながら、より低いまたはより高い当量の酸化剤を使用することも可能である。
【0088】
有機ラジカルを有する無機酸の鉄(III)塩の例としては、C〜C20−アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0089】
有機酸の鉄(III)塩の例としては、メタンスルホン酸のFe(III)塩およびドデカンスルホン酸のFe(III)塩などのC〜C20−アルカンスルホン酸のFe(III)塩、2−エチルヘキシルカルボン酸のFe(III)塩などの脂肪族C〜C20−カルボン酸のFe(III)塩、トリフルオロ酢酸およびペルフルオロオクタン酸のFe(III)塩などの脂肪族ペルフルオロカルボン酸のFe(III)塩、シュウ酸のFe(III)塩などの脂肪族ジカルボン酸のFe(III)塩、ならびに特に、ベンゼンスルホン酸のFe(III)塩、p−トルエンスルホン酸のFe(III)塩およびドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩などのC〜C20−アルキル基によって任意に置換された芳香族スルホン酸のFe(III)塩、ならびにシクロアルカンスルホン酸(カンファースルホン酸など)のFe(III)塩が挙げられる。
【0090】
これらの上述の有機酸のFe(III)塩の混合物を使用することも可能である。
【0091】
上述のFe(III)塩は、任意に、H、KCr、アルカリ金属のペルオキソ二硫酸塩およびペルオキソ二硫酸アンモニウム(例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウム)、アルカリ金属過ホウ素酸塩、過マンガン酸カリウム,銅塩(テトラフルオロホウ酸銅など)またはセリウム(IV)塩またはCeOなどの取扱いが容易な酸化剤と組み合わせて触媒として使用することができる。
【0092】
本発明に関しては、C〜C−アルキレンラジカルAは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンであり、C〜C−アルキレンラジカルはさらにn−ヘキシレン、n−ヘプチレンおよびn−オクチレンである。本発明に関しては、C〜C−アルキリデンラジカルは、少なくとも1つの二重結合を含む上に列挙されたC〜C−アルキレンラジカルである。本発明に関しては、C〜C−ジオキシアルキレンラジカル、C〜C−オキシチアアルキレンラジカルおよびC〜C−ジチアアルキレンラジカルは、上に列挙されたC〜C−アルキレンラジカルに対応するC〜C−ジオキシアルキレンラジカル、C〜C−オキシチアアルキレンラジカルおよびC〜C−ジチアアルキレンラジカルである。本発明に関しては、C〜C18−アルキルは直鎖状もしくは分枝状のC〜C18−アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−またはイソプロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを表し、C〜C12−シクロアルキルはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルなどのC〜C12−シクロアルキルラジカルを表し、C〜C14−アリールはフェニルまたはナフチルなどのC〜C14−アリールラジカルを表し、C〜C18−アラルキルはC〜C18−アラルキルラジカル、例えばベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。本発明に関しては、C〜C18−アルコキシラジカルは、上に列挙されたC〜C18−アルキルラジカルに対応するアルコキシラジカルを表す。上記の一覧は例として本発明を例証する働きをするが、他を排除するものと考えられるべきではない。
【0093】
上記のラジカルの有用な任意のさらなる置換基としては、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基、およびさらにカルボキシアミド基が挙げられる。
【0094】
本発明の粒子または分散液は、導電層を生成するのに適している。
【0095】
従って本発明はさらに、導電層を生成するための本発明の粒子または分散液の使用を提供する。
【0096】
このようにして得ることができる導電層は、好ましくは10−8scm−1を超える、より好ましくは10−6scm−1を超える、最も好ましくは10−4scm−1を超える比電気伝導率を有する。
【0097】
導電層を生成するために、本発明の分散液は、公知のプロセスによって、例えばスピンコーティング、含浸、注型、滴下付与(Auftropfen)、注射器による付与(Spritzen)、噴霧(Aufspruehen)、ナイフによる付与(Aufrakeln)、塗布または印刷、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷またはパッド印刷によって、適切な基材に付与してよい。
【0098】
本発明の粒子または分散液から、並外れた硬度で注目すべき導電層を生成することができる。この層の硬度は、DIN EN 13523に従う鉛筆硬度を用いて測定することができる。導電性、とりわけ帯電防止特性を有する傷つきにくい層は、例えばプラスチックの表面処理剤用に興味が持たれる。帯電防止特性に基づいて、それらは、帯電防止電荷(antistatische Aufladung)が防止されるべきである分野、例えばプラスチックでできた日用品、衣類、クリーンルーム設備およびクリーンルーム用消耗品で使用することができる。
【0099】
それゆえ本発明はさらに、好ましくは本発明の粒子または分散液を使用して生成される導電層を提供する。
【0100】
以下の実施例は、単に例として本発明を例証する働きをし、限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0101】
(実施例1:酸官能化シリカゾル粒子の分散液の調製)
1000gのLevasil(登録商標) 500/15%を、0.1mol%の1−トリヒドロキシシリルプロパン−3−スルホン酸を含む6%水酸化ナトリウム溶液175gと、撹拌しながら滴下して混合した。添加後、この混合物をさらに15分間撹拌し、次いで得られた分散液を、ナトリウムイオンを除去するためにH型のLewatit(登録商標) S 100で処理した。このイオン交換体による処理後、pHを1.74に調整した。この完成したシリカゾルは、12.6重量%のSiOの固形分含量を有していた。
【0102】
(実施例2:本発明のSiO/PEDT粒子を含む本発明の分散液の調製)
実施例1からの分散液270g、147gの硫酸鉄(III)溶液、1572gの水および7.3gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を混合し、室温で30分間撹拌した。その後、12.6gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加え、この混合物をさらに6時間撹拌した。次いで2回目の7.3gのEDTを加え、30分後、2回目の12.6gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加えた。14時間撹拌した後、3回目の7.3gのEDTを加え、30分後、3回目の12.6gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加えた。4時間後、およびさらに3時間後、およびなおさらに4.5時間後、それぞれ、さらに3.26g、2.28gおよび1.8gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを加えた。得られた反応混合物を400gのLewatit(登録商標) S100 Hおよび800gのLewatit(登録商標) MP 62(イオン交換樹脂、ランクセス(Lanxess))と混合し、この混合物を2.5時間撹拌した。濾紙を使用してこのイオン交換樹脂を濾別し、その後、この混合物を細孔径0.2μmのフィルターに通して濾過した。
【0103】
得られた生成物は以下の特性を特徴とする:
固形分含量: 当該分散液の総重量基準で2.99重量%
ナトリウム含量:18mg/kg
硫酸塩含量: 240mg/kg
EDT含量 33mg/kg
50粒径 3.03μm
90粒径 8.47μm。
【0104】
(実施例3:コアシェル複合体の層の電気伝導率の測定)
実施例2からの本発明の分散液10gを、10gのエタノール、1gのジメチルスルホキシドおよび0.1gの界面活性剤と混合した。洗浄したガラス基材をスピンコーターの上に置き、10mlの上述の混合物をその基材の上に分散させた。その後、このプレートを回転させることによりこの上澄み溶液を除去した。その後、このコーティングした基材を、ホットプレート上で、200℃で5分間乾燥させた。この層の厚さは140nmであった(テンコール(Tencor)、Alphastep 500)。
【0105】
電気伝導率は、気相堆積によって0.5mmの距離で長さ2.5cmの銀電極を付与するためのシャドーマスクを使用することによって測定した。電気比抵抗を得るために、電位計を用いて測定した表面抵抗に層の厚さを掛け合わせた。この層の比抵抗は120ohm・cmであった。これは0.0083s/cmの電気伝導率に相当する。
【0106】
(実施例4:コアシェル複合体の導電層の硬度の測定)
本発明の分散液の硬度を、先行技術の一部を形成する基準材料と比較した。フィルムを得るために、実施例2および基準材料からの試料を、結合剤Baypret(登録商標) 85DU(ランクセス)、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびワックスエマルション、Aquacer(登録商標) 539(ビーワイケー・ケミー(BYK Chemie))と混合した。この混合物を用いて、安定なフィルムを得ることができた。次いでこの混合物をナイフによって使用して(未乾燥フィルムで24μm)、ガラスプレート上にフィルムを得た。次いでこのフィルムを、乾燥室中で、130℃で15分間乾燥した。
【0107】
この層の硬度は、DIN EN 13523に従う鉛筆硬度を用いて測定した。この目的のために、異なる硬度の鉛筆を、往復台(Wagen)を用いて特定のフィルムにわたって引きずった。フィルムの上に引っかき傷を残さなかった最も硬い鉛筆硬度が、そのフィルムの硬度に対応する。
【0108】
使用した基準材料は、まずポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT):ポリスチレンスルホン酸分散液(Baytron(登録商標) P、エイチ・シー・スタルク社(H.C.Starck GmbH))、およびPEDT:ポリスチレンスルホン酸分散液(Baytron(登録商標) P、エイチ・シー・スタルク社)およびシリカゾル(実施例の分散液1)の混合物、およびさらに純粋な結合剤であった。
【0109】
【表1】

【0110】
表1は、使用した特定の混合物の質量およびそれを用いて達成した硬度を示す。実施例2からの本発明の試料を用いると、先行技術に従ってこれまでから利用可能であった手段を用いる場合よりも、高い硬度が達成されるということは明らかである。Baytron(登録商標) PならびにBaytron(登録商標) Pおよび実施例1からの試料の混合物は、結合剤と組み合わせると、実施例2からの本発明の試料(H)よりも低い硬度(それぞれHBおよびF)を呈する。純粋な結合剤(Baypret(登録商標))のみがより高い硬度を呈するが、この系は導電性および帯電防止特性を欠く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造を有する粒子であって、前記コアは無機材料に基づき、前記シェルは少なくとも1つの導電性のポリチオフェンを含み、前記無機材料に基づくコアは共有結合された酸基を含むことを特徴とする、粒子。
【請求項2】
前記無機材料が、ケイ素、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムのうちの1以上の酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記酸基が、スルホン酸基および/またはメルカプト基、ならびにその塩であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
前記導電性のポリチオフェンが、一般式(I)の繰り返し単位
【化1】

(式中、
およびRは、各々独立にH、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカルもしくは任意に置換されたC〜C18−アルコキシラジカルであるか、または
およびRは一緒になって、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、1以上の炭素原子が1以上の同一のまたは異なるOもしくはSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられていてもよい任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、好ましくはC〜C−ジオキシアルキレンラジカル、任意に置換されたC〜C−オキシチアアルキレンラジカルまたは任意に置換されたC〜C−ジチアアルキレンラジカル、または少なくとも1つの炭素原子がOもしくはSから選択されるヘテロ原子によって任意に置き換えられている任意に置換されたC〜C−アルキリデンラジカルである)
を含むポリチオフェンであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項5】
前記導電性のポリチオフェンが、一般式(I−a)および/または(I−b)の繰り返し単位
【化2】

(式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、
YはOもしくはSであり、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルであり、
xは0〜8、好ましくは0または1の整数であり、
複数のRラジカルがAに結合されている場合は、それらは同じであってもよいし異なっていてもよい)
を含むポリチオフェンであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項6】
前記粒子が5nm〜100μmの粒径を有し、前記粒径が超遠心分離法によって測定されたものであることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粒子を含む分散液。
【請求項8】
請求項7に記載の分散液を調製するためのプロセスであって、無機材料(無機一次粒子)に基づく粒子を含む分散液が酸基との化学反応によって官能化され、次いで、共有結合された酸基を含むこれらの粒子の存在下で、前駆体が酸化的に重合されて導電性のポリチオフェンが調製されることを特徴とする、プロセス。
【請求項9】
導電性の硬い層を生成するための、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粒子または請求項7に記載の分散液の使用。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粒子または請求項7に記載の分散液を使用して製造される導電層。

【公表番号】特表2010−541141(P2010−541141A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526231(P2010−526231)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061326
【国際公開番号】WO2009/043648
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510050269)エイチ・シー・スタルク・クレビオス・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (12)
【Fターム(参考)】