説明

導電性かつ弾性延伸性ハイブリッド糸、その製造方法及びこの種のハイブリッド糸を用いた織物製品

【課題】織編用の導電性かつ弾性延伸性のハイブリッド糸の製造方法を提供する。
【解決手段】弾性延伸性コア(1)と前記コアに対してその外周側に割り当てられた前記コア(1)の弾性延伸を可能にする導電性要素とを有するハイブリッド糸とする。該ハイブリッド糸は弾性延伸性コアフィラメントを導電性繊維外装によって包囲されており、これは、簡素化された製造方法とともに、この種のハイブリッド糸の技術的性質を改善する結果につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織編用糸及びこの種の糸が使用されている製品の分野に関し、特に、導電性かつ弾性延伸性である糸に関する。この種の製品は、たとえば、シートタイプ加熱要素、たとえば自動車の分野で座席の加熱のために使用される要素である。この種の糸はまた、床材、毛布、加熱性衣類又はその部分など及び電場をそらすためのシールド性織物で使用される。
【0002】
織物製の電気面は、人体と接触する環境の温度を調節するために使用される。これに関して、織物製の電気面は一般に縫合又は接着によって他の織物層に接合される。他の場合、適当な加熱導体が、加熱導体及びそれらの供給ラインを含む面を形成する。これに関して、形状及び大きさは、適用可能な使用条件に合致するように適合される。
【背景技術】
【0003】
電流を導通させるのには金属ワイヤが非常に適しているが、金属ワイヤ自体は織物の性質をほとんど有さず、それが、織る、編むなどの加工の場合に欠点となる。これらのワイヤはこの点では全く非弾性であり、織物として扱うことができない。この状況を改善するため、金属ワイヤは、一般には巻き又は撚りによって織編用の糸又はフィラメントと組み合わされる。ワイヤ及び弾性の糸を含む組み合わせは、織編用フィラメントの弾性のおかげで一定の可撓性を達成する。二つの要素は巻き加工の前にすでに個々のフィラメントとして存在し、個別の前処理工程で製造されなければならず、巻き加工によって合わされる。しかし、これに関して、金属的扱い及び剛性は、限られた程度しか影響を受けない。
【0004】
WO2004/097089A1から、弾性要素を含む導電性の弾性複合糸が公知である。この弾性要素は、一つ以上の弾性フィラメントを含み、少なくとも一つ、好ましくは複数の導電性フィラメント(縦方向フィラメント)によって覆われている。弾性要素を包囲する各導電糸は、弾性要素の延伸長さを超える長さを有して、複合糸に加わる伸び応力すべてが弾性要素によって担持されるようになっている。この公開公報はUS−BS6,341,504を引用例として挙げている。これは、衣服に使用するための、導電性ワイヤを有する弾性織物製品を挙げている。これは、生理学的身体機能を示すことを意図したものである。この公開公報は、縦方向に延伸可能である弾性材料の細長いバンドであって、その弾性バンドの上に位置する、又はその内側に設けられた少なくとも一つの導電性ワイヤを含むものを記載している。
【0005】
DE10342787A1は、少なくとも一つの弾性コアフィラメントと、コアフィラメントに巻かれた少なくとも一つの導電性フィラメントと、導電性糸全体の伸びを制限する、コアフィラメントに巻かれた少なくとも一つの非導電性フィラメントとを含む導電性糸を開示している。同様な複合糸がDE10242785A1及びWO2004/027132A1に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題(目的)は、製造しやすく、導電性及び弾性延伸に関して今日まで公知の複合糸よりも効果的である導電性かつ弾性延伸性ハイブリッド糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明にしたがって、弾性延伸性コアと、コアに対してその外周側に割り当てられた、コアの弾性延伸を可能にする導電性要素とを有する導電性かつ弾性延伸性ハイブリッド糸であって、導電性要素が、少なくとも部分的にコアを包囲し、互いに接合された導電性繊維を少なくとも部分的に含む繊維外装を含むものであるハイブリッド糸によって達成される。
【0008】
これが、全弾性が弾性コアフィラメントの弾性に広く対応する、高い弾性を有する均質な糸を造り出す。
【0009】
好ましくは、コアは、繊維外装によって包囲された少なくとも一つのフィラメントを含む。これに関して、少なくとも一つのフィラメントは、テキスチャ付きポリエステルもしくはライクラ又は類似の材料を含むことができる。また、弾性コアフィラメントの所望の延伸を許すように敷設された、ただし延伸を制限する少なくとも一つの非弾性コアフィラメントがあってもよい。
【0010】
特に、導電性繊維が、導電性ポリエステル繊維、高級鋼繊維、炭素繊維、金属被覆ポリマー、銀めっき、銅めっき、ニッケルめっき炭素繊維及び類似の繊維の群から選択される場合、繊維の使用によって特に良好な導電性が得られる。
【0011】
可能な番手範囲は2000〜40テックス(Nm0.5〜2.5)であり、その場合、繊維は1.0〜3.3dtexの繊度を有することができ、繊維は35〜60mmのカット長を有することができる。
【0012】
導電性繊維、たとえば炭素繊維、ニッケル被覆炭素繊維、金属繊維及び金属被覆ポリマーでできた繊維は、個々の繊維として剛性を有さず、微細なタイターのおかげで、広く織物的に扱うことができる特徴を有する。
【0013】
弾性コアフィラメントと導電性外装繊維との接合を改善するため、混合工程で、可融性繊維を、好ましくは5〜10%の量で、従来の前処理的紡糸段階で製造される粗糸又は練条スライバに混入することができる。たとえば巻き取り工程と組み合わせることもできるし、後続の処理クロスの織物仕上げと同時に実施することもできる弾性の導電性糸の熱後処理が、可融性繊維を塑性状態に至らしめ、冷却後、コアフィラメントと外装繊維とを接合し、それが、導電性を顕著に落とすことなくハイブリッド糸の滑り防止性を相当に改善することができる。
【0014】
ハイブリッドフィラメントは、好ましくは、繊維をコアと接合することができるいわゆる摩擦紡糸法を使用して製造される。この摩擦紡糸法は、当業者には周知である、Dr Fehrer Linz社、Dref2/Dref2000システムによって開発されたものである。
【0015】
目的はまた、ハイブリッド糸を製造する方法であって、
単一フィラメントを含むこともできるコアフィラメントを導入すること、
紡糸工程で粗糸又は練条スライバを個々の導電性繊維及び場合によっては可融性繊維に分解すること、
連続コアフィラメントの周囲に実質的に直角に繊維を敷設すること、
いわゆる摩擦紡糸法を使用して繊維をコアフィラメントと摩擦接合すること
を含む方法によって達成される。
【0016】
可融性繊維が存在するならば、弾性の導電性ハイブリッド糸の熱後処理として加熱を実施することができ、この処理を、たとえば巻き取り工程と組み合わせることもできるし、後続の処理クロスの織物仕上げの間に実施することもできる。この間に、可融性繊維は塑性状態に至り、冷却後、コアフィラメントと外装繊維とを接合し、それが、導電性を顕著に落とすことなくハイブリッド糸の滑り防止性を相当に改善する。
【0017】
目的はまた、前記ハイブリッド糸を含有する織物によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、ハイブリッド糸3の一部の斜視図であり、この中で、ハイブリッド糸の一部は、複数の単一フィラメント4を全コアフィラメントに結束したものからなるコアフィラメント1を斜視図でのみ示す。これは絶対的に必要なことではなく、コアフィラメントはまた、単一フィラメントとして具現化することもできる。このコアフィラメントは、複数の短い個々の繊維5からなる繊維外装2によって包囲されている。
【0019】
コアフィラメント1は、たとえば、導電性繊維とで紡糸されたテキスチャ入りポリエステル又はライクラからなることができる弾性延伸性フィラメントである。全糸は、たとえば、2000〜40テックス(Nm0.5〜2.5)の番手範囲を有する。繊維外装は、たとえば、1.0〜3.3dtexの繊度及び35〜60mmのカット長の繊維でできている。外装を形成するために、繊維は接合を形成するが、これは、コアフィラメントの弾性延伸を損なわない。混合工程で、導電性である可融性繊維がたとえば5〜10%の量で外装繊維に混入されるならば、これはさらに適用可能である。これは、弾性コアフィラメントと導電性外装繊維との接合を改善するように働く。これらの可融性繊維は、たとえば、通常の前処理的紡糸段階で製造される粗糸又は練条スライバに混入される。
【0020】
外装繊維は、導電性ポリエステル繊維、高級鋼繊維又は金属、好ましくは銀もしくは銅で被覆されたポリマーならびに炭素繊維又はニッケルめっき炭素繊維であることができる。
【0021】
本発明は、弾性の織物フィラメント、たとえばテキスチャ入りポリエステル又はライクラを導電性繊維とともに紡糸する概念に基づく。これに関して、弾性フィラメントが糸の核心又はコアを形成し、導電性繊維が、完成したフィラメントではない状態で、特別な紡糸処理によってコアフィラメントと接合される。これは、図2に示すような装置を用いて実施される。この装置では、参照番号6が、導入された粗糸を示し、この粗糸が、オープンシリンダ7によって個々の繊維に分解される。参照番号8は、コアフィラメントを導入するためのガイドロールを示し、参照番号9は、汚れ抽出装置11を側面に設けられた洗浄ユニット10の領域で完成した糸を取り出すためのトローオフディスクを示す。
【0022】
図1に示すハイブリッド糸3は、この種の装置を用いて製造される。当業者には周知である、Dr Fehrer Linz社、Dref2/Dref2000システムによって開発されたいわゆる摩擦紡糸法を使用することが可能である。
【0023】
紡糸工程で、粗糸は個々の繊維に分解され、連続コアフィラメントの周囲に直角に敷設され、それと摩擦接合される。これは、全弾性が弾性コアフィラメントの弾性に広く対応する、高い弾性を有する均質な糸を造り出す。
【0024】
導電性繊維、たとえば炭素繊維、ニッケル被覆炭素繊維、金属繊維又は金属被覆ポリマーでできた繊維は、個々の繊維として剛性を有さず、微細なタイターのおかげで、広く織物的に扱うことができる特徴を有する。弾性コアフィラメントと導電性外装繊維との接合を改善するため、混合工程で、可融性繊維を、5〜10%の量で、従来の前処理的段階で製造される粗糸又は練条スライバに混入することもできる。たとえば巻き取り工程と組み合わせることもできるし、後続の処理クロスの織物仕上げと同時に実施することもできる弾性の導電性糸の熱後処理が、可融性繊維を塑性状態に至らしめ、冷却後、コアフィラメントと外装繊維とを接合し、それが、導電性を顕著に落とすことなくハイブリッド糸の滑り防止性を相当に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】導電性かつ弾性延伸性ハイブリッド糸の斜視図である。
【図2】摩擦紡糸法に用いられる装置の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性延伸性コア(1)と、前記コアに対してその外周側に割り当てられた、前記コア(1)の弾性延伸を可能にする導電性要素とを有する導電性かつ弾性延伸性ハイブリッド糸であって、
前記導電性要素が、少なくとも部分的に前記コア(1)を包囲し、互いに接合された導電性繊維(5)を少なくとも部分的に含む繊維外装(2)を含むことを特徴とするハイブリッド糸。
【請求項2】
前記コアが、前記繊維外装(2)によって包囲された少なくとも一つのフィラメント(4)から形成されている、請求項1記載のハイブリッド糸。
【請求項3】
前記少なくとも一つのフィラメント(4)が、テキスチャ付きポリエステルもしくはライクラ又は類似の材料を含む、請求項2記載のハイブリッド糸。
【請求項4】
前記導電性繊維(5)が、
導電性ポリエステル繊維、高級鋼繊維、炭素繊維、金属被覆ポリマー、銀めっき、銅めっき、ニッケルめっき炭素繊維及び類似の繊維の群から選択される、請求項1記載のハイブリッド糸。
【請求項5】
前記繊維(5)が1.0〜3.3dtexの繊度を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のハイブリッド糸。
【請求項6】
前記繊維(5)が35〜60mmのカット長を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載のハイブリッド糸。
【請求項7】
可融性繊維が前記導電性繊維(5)に混入されている、請求項1記載のハイブリッド糸。
【請求項8】
可融性繊維が5〜10%混入されている、請求項7記載のハイブリッド糸。
【請求項9】
前記繊維がいわゆる摩擦紡糸法によって前記コアと接合されている、請求項1〜8のいずれか1項記載のハイブリッド糸。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載のハイブリッド糸を製造する方法であって、
単一フィラメントを含むこともできるコアフィラメントを導入すること、
紡糸工程で粗糸又は練条スライバを個々の導電性繊維及び場合によっては可融性繊維に分解すること、
前記連続コアフィラメントの周囲に実質的に直角に前記繊維を敷設すること、
いわゆる摩擦紡糸法を使用して前記繊維を前記コアフィラメントと摩擦接合すること
を特徴とする方法。
【請求項11】
可融性繊維が存在するならば、それらを加熱する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載のハイブリッド糸を含有する織物製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−63742(P2007−63742A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−234920(P2006−234920)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(591139828)クッフナー・テクスティルヴェルケ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】KUFNER TEXTILWERKE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】