説明

導電性の織布、アンテナ及び車両座席

車両シートに少なくとも1つのアンテナ(7)が配置され且つ固定されている。この少なくとも1つのアンテナ(7)は、車両シートのシートカバー(6)とは別個に形成された導電性の織布又は不織布から形成されている。当該の少なくとも1つのアンテナ(7)は、送受信ユニットに接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、特にチャイルドシート検知システム又は着席検知システムのアンテナを備えた、導電性の織布、アンテナ及び車両座席に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19821501号明細書に開示された自動車シートのシートクッションカバーには、チャイルドシート検知システムのアンテナが織り込まれており、このアンテナは、チャイルドシートに取り付けられた共振機又はトランスポンダと協働する。アンテナとしては、シートクッションカバーに線材が織り込まれている。
【0003】
ヨーロッパ特許第0983162号明細書には、自動車シートヒータ用の加熱可能な線材を備えたマットが開示されている。このマットは、加熱可能な線材に加えて付加的に、電磁信号を送受信するためのアンテナを有している。このアンテナは、自動車シートに配置されたチャイルドシートの共振機又はトランスポンダと協働するために設けられている。前記マットは、自動車シートのシートクッションとシートクッションカバーとの間に配置されている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3741023号明細書には、導電性のインサートを備えた織布製品が開示されている。この織布製品は、特にシートクッション又はシートカバーである。前記インサートは、帯電を防ぐために導電性材料から形成されており且つシートクッション又はシートカバー内に配置されている。
【0005】
国際公開第01/44546号パンフレットに開示された導電性の織布材料は、自動車用被覆材料として、電気的に加熱可能な自動車用シート織布として、支持体材料として及び/又は送受信機の構成部材として、又はアンテナとして使用可能である。
【0006】
本発明の課題は、車両座席のシートクッションに確実に固定可能な導電性の織布を提供することである。更に本発明の課題は、車両シートのシートクッションに簡単且つ確実に固定可能なアンテナを提供することである。更に本発明の課題は、簡単且つ廉価に製作可能な、少なくとも1つのアンテナを備えた車両シートを提供することである。
【0007】
前記課題は、それぞれ独立請求項の特徴部に記載の構成、即ち;
導電性材料から形成されているか、又は導電性材料により被覆されているか、又は導電性材料から引き出された糸又は繊維を有する導電性の織布であって、車両シートのシートクッションの発泡体が、シートクッションの製作中に当該の導電性の織布に浸透可能であるように、該織布がワイドメッシュに織られていることを特徴とする、導電性の織布、
請求項1記載の導電性の織布から形成されており且つ送受信ユニットと接続可能であることを特徴とする、アンテナ、及び
少なくとも1つのアンテナが配置され且つ発泡成形によりシートクッションに固定された車両シートであって、前記アンテナが、車両シートのシートカバーとは別個に形成された導電性の織布又は不織布から形成されており且つ送受信ユニットと接続可能であることを特徴とする、車両シートによって解決される。本発明の有利な改良は、従属請求項に記載されている。
【0008】
第1の観点において本発明は、導電性の織布が、導電性材料から形成されているか、又は導電性材料により被覆されているか、又は導電性材料から引き出された糸又は繊維を有しているという点において優れている。導電性の織布は、車両座席のシートクッションの発泡体が、このシートクッションの製作中に導電性の織布に浸透することができるように、ワイドメッシュで織られている。これにより、導電性の織布は特に簡単且つ確実にシートクッションに固定可能であり、更に、電気的に絶縁可能である。
【0009】
第2の観点において本発明は、アンテナが、前記の第1の観点に基づいた導電性の織布から形成されており且つ送受信ユニットに接続可能であるという点において優れている。導電性の織布から成るアンテナが伸長可能であり、可撓性であり且つ簡単に加工可能であるという利点がある。当該アンテナは更に、発泡成形によりシートクッションに特に簡単且つ確実に固定可能である。別の利点は、シートクッションの発泡体がアンテナを電気的に絶縁するという点にある。
【0010】
第3の観点において本発明は、車両シート内に少なくとも1つのアンテナが配置されており且つ発泡成形によりシートクッションに固定されているという点において優れている。当該の少なくとも1つのアンテナは、車両シートのシートカバーとは別個に形成された導電性の織布又は不織布から形成されている。この少なくとも1つのアンテナは、送受信ユニットに接続可能である。
【0011】
導電性の織布又は不織布から成る前記アンテナは、伸長可能であり、可撓性であり且つ簡単に加工可能であるという利点がある。更に、導電性の織布又は不織布から成るアンテナは、重ね縫い可能であり且つ丈夫である。従って、当該の少なくとも1つのアンテナは、極めて簡単に、快適性を損なうことなく車両シート内に配置及び固定可能である。別の利点は、当該の少なくとも1つのアンテナが、シートカバーとは無関係に独立して製作可能であり且つその時々の要求に関連して、車両シートの様々な箇所に、特に車両シートの様々な層の外部又は内部に、また例えば車両シートの側壁等にも配置可能であるという点にある。これにより、少なくとも1つのアンテナの大きな検出範囲が可能である。更に、導電性の織布又は不織布から成る少なくとも1つのアンテナは、車両シートの輪郭に従う。この場合、例えば導電性の織布又は不織布の範囲にシートカバーを縫いつけることによって発生する恐れのある機械的な負荷は、導電性の織布又は不織布の高い強靱性、伸長性及び可撓性に基づき、当該の少なくとも1つのアンテナの損傷又は機能損失をもたらさない。従って、車両シートは簡単且つ廉価に製作可能である。別の利点は、シートクッションの発泡体が少なくとも1つのアンテナを電気的に絶縁するという点にある。
【0012】
車両シートの有利な構成では、導電性の織布がワイドメッシュに織られている。これにより、特に高い伸長性及び例えば液体に関して透過性が生ぜしめられている。更に、シートクッションの発泡体は導電性の織布に浸透可能である。これにより、前記の少なくとも1つのアンテナは、特に簡単且つ確実にシートクッションに固定されている。
【0013】
車両シートの別の有利な構成では、少なくとも1つのアンテナがシートカバーの内部又は外部、シートカバーとシートクッションとの間の織布層、不織布層又は発泡体層の内部又は外部、或いはシートヒータマット又はシート敷きマットに配置され且つ固定されている。このことは、少なくとも1つのアンテナのために車両シート内に別個の層が必要とされてはおらず、車両シートの既存の層を利用することができるという利点を有している。これにより、車両シートは特に簡単且つ廉価に製作可能である。
【0014】
車両シートの更に別の有利な構成では、少なくとも1つのアンテナが縫い付け、織り込み、接着又はラミネート加工により固定されている。このことは、車両シートが簡単且つ廉価に製作可能であるという利点を有している。
【0015】
択一的に、少なくとも1つのアンテナは、発泡成形によりシートクッションに固定されている。シートクッションの発泡体が、少なくとも1つのアンテナを電気的に絶縁するという利点がある。導電性の織布がワイドメッシュに織られていると、シートクッションの発泡体が導電性の織布に浸透することができる。これにより、当該の少なくとも1つのアンテナは特に簡単且つ確実にシートクッションに固定されている。
【0016】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0017】
同一の構造又は機能の要素には、全体的に同一の符号が付されている。
【0018】
車両座席、特に自動車用の助手席は、座席部分1及び背もたれ2を有している(図1)。この車両座席はシートスプリング5を備えたシートフレーム3を有しており、このシートフレーム3にはシートクッション4が配置されている。このシートクッション4は、シートカバー6によって被覆されている。このシートカバー6は、単層又は多層に形成されている。更に、シートクッション4とシートカバー6との間には、1つ又は複数の層が配置されていてよい。有利には、シートカバー6及び場合によってはシートクッション4とシートカバー6との間に配置された層は、織布材料、不織布材料又は発泡材料から形成されている。但し、例えばプラスチック材料又は皮材料が規定されていてもよい。更に別の層として、例えばシートヒータマット又はシート敷きマットが、シートクッション4とシートカバー6との間に配置されていてよい。
【0019】
車両座席の座席部分1内には、特にチャイルドシート検知システム又は着席検知システムの少なくとも1つのアンテナ7が配置されている。この少なくとも1つのアンテナ7は、車両座席のシートカバー6とは別個に形成されており且つ導電性の織布又は不織布によって形成されている。この導電性の織布又は不織布は、織布材料若しくは不織布材料の特性に加えて付加的に、小さなオーム抵抗を有している。
【0020】
導電性の織布又は不織布は、例えば銅等の導電性材料から形成されているか、又は例えば銅ラッカ等の導電性材料によって被覆されているか、又は導電性材料から引き出された糸又は繊維を有している。導電性の織布又は不織布は、前記のような導電性の糸又は繊維に加えて付加的に、非導電性の糸又は繊維を有していてよい。更に、導電性の織布又は不織布は、例えば導電性のラッカを、非導電性の糸又は繊維から形成された、予め製作された織布又は不織布に塗布することにより製作することもできる。非導電性の糸又は繊維は、例えば自然繊維又はプラスチックから製作されている。
【0021】
導電性の織布は、有利には導電性の糸又は繊維を互いに、場合によっては非導電性の糸又は繊維と一緒に織り込むことにより形成されている。導電性の不織布は、有利には予め規定された量の導電性材料、例えば場合によっては非導電性の繊維を備えて導電性の不織布を成すように加工された鉄ウールによって形成されている。導電性の織布又は不織布のオーム抵抗は、この導電性の織布又は不織布における導電性材料のオーム抵抗及び導電性の糸又は繊維の量に関連している。
【0022】
導電性の織布又は不織布の機械的な特性に基づいて、少なくとも1つのアンテナ7は極めて容易にシートカバー6の内部又は外部、場合によっては設けられるシートカバー6とシートクッション4との間の層の内部又は外部、或いは場合によっては設けられるシートヒータマット又はシート敷きマットに配置され且つ固定され得る。この固定は、例えば縫い付け、織り込み、接着又はラミネート加工により極めて容易に行われる。但し、少なくとも1つのアンテナ7は同様に、シートクッション4の表面又はシートクッション4の内部に配置され且つ固定されてもよい。特に、導電性の織布がワイドメッシュで織られていると、少なくとも1つのアンテナ7は、シートクッション4の発泡成形により、シートクッション4の製作中に特に簡単且つ確実に当該シートクッション4の内部又は外部に配置し且つ固定することができる。この場合、シートクッション4の発泡体は導電性の織布に浸透し、これにより、導電性の織布を特に確実に固定することが可能である。更に、少なくとも1つのアンテナ7は、このアンテナ7に通じる配線は別として、シートクッション4の発泡体により電気的に絶縁されている。
【0023】
少なくとも1つのアンテナ7は、有利にはストリップ状の導電性の織布又は不織布から形成されている(図2)。択一的に、適当なアンテナ構造を、大面積で形成された一片の導電性の織布又は不織布から切断するか、又は打ち抜くこともできる。導電性の織布又は不織布から成る第1のストリップ、第2のストリップ及び第3のストリップは面状に且つ直角に配置されており且つ互いに導電接続されており、従って、受信アンテナ9をフレーム状に三方から取り囲む送信アンテナ8を形成している。受信アンテナ9は、導電性の織布又は不織布の第1のストリップE1、第2のストリップE2、第3のストリップE3、第4のストリップE4及び第5のストリップE5から形成されている。これらの受信アンテナ9の第1〜第4のストリップE1、E2、E3及びE4は、互いに平行に相互間隔をおいて配置されている。更に、受信アンテナ9の前記4つのストリップは、送信アンテナ8の第1のストリップS1及び第3のストリップS3に対して平行に配置されている。受信アンテナ9の前記4つのストリップは、送信アンテナ8の第2のストリップS2に面した端部において、それぞれ受信アンテナ9の第5のストリップE5により互いに導電接続されている。受信アンテナ9の第5のストリップE5は、送信アンテナ8の第2のストリップS2に対して平行に配置されている。更に、送信アンテナ8と受信アンテナ9とは互いに電気的に絶縁されて配置されている。送信アンテナ8及び受信アンテナ9は、適当な配線を介して送受信ユニット10に接続可能である。特に、送信アンテナ8の第1のストリップS1及び第3のストリップS3、並びに受信アンテナ9の第1のストリップE1、第2のストリップE2、第3のストリップE3及び第4のストリップE4が、前記のような配線を有している。
【0024】
受信のために受信アンテナ9のどのストリップが使用されるのかに関連して、受信アンテナ9の受信範囲はその時々の要求に関連して選択可能である。即ち、受信アンテナ9の受信範囲は、この受信アンテナ9の第1のストリップE1と第4のストリップE4とが第5のストリップE5と一緒に使用される場合に、特に大である。これにより、2つのオーバラップした受信アンテナが生ぜしめられている。送受信ユニット10により所属の配線を適宜切り替えることによって、前記両受信アンテナを交互に利用することにより、車両座席に配置されたチャイルドシートの位置調整の確実な検知が、その時々の受信信号を評価することにより可能である。信号は、チャイルドシート内に配置された少なくとも1つの共振機又はトランスポンダにより惹起され、この共振機又はトランスポンダは、送信アンテナ8から送出される電磁波によって振動励起され、その結果生じる電磁波もやはり、受信アンテナ9及び送受信ユニット10により形成された電気的な振動回路を振動させる。
【0025】
少なくとも1つのアンテナ7は、異なって形成されていてもよい。例えば、容量型の着席システムのための少なくとも1つのアンテナ7は、それぞれコンデンサプレートとして形成されている。このように形成されたコンデンサの誘電数は、例えば人、チャイルドシート又は車両座席に置かれた買い物袋による車両座席の占有に関連している。
【0026】
少なくとも1つのアンテナ7のジオメトリは、その時々の要求に関連して任意で形成されていてよい。特に、高周波用途用の少なくとも1つのアンテナ7も、極めて精密に形成されていてよい。
【0027】
少なくとも1つのアンテナ7は、択一的又は付加的に、例えば背もたれ2に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車両座席を示した図である。
【図2】送受信アンテナ及び送受信ユニットを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から形成されているか、又は導電性材料により被覆されているか、又は導電性材料から引き出された糸又は繊維を有する導電性の織布であって、車両シートのシートクッション(4)の発泡体が、シートクッション(4)の製作中に当該の導電性の織布に浸透可能であるように、該織布がワイドメッシュに織られていることを特徴とする、導電性の織布。
【請求項2】
請求項1記載の導電性の織布から形成されており且つ送受信ユニットと接続可能であることを特徴とする、アンテナ。
【請求項3】
少なくとも1つのアンテナ(7)が配置され且つ発泡成形によりシートクッション(4)に固定された車両シートであって、前記アンテナが、車両シートのシートカバー(6)とは別個に形成された導電性の織布又は不織布から形成されており且つ送受信ユニットと接続可能であることを特徴とする、車両シート。
【請求項4】
前記導電性の織布がワイドメッシュに織られている、請求項3記載の車両シート。
【請求項5】
少なくとも1つのアンテナ(7)が、シートカバー(6)の内部又は外部、シートカバー(6)とシートクッション(4)との間の織布層、不織布層又は発泡体層の内部又は外部、或いはシートヒータマット又はシート敷きマットに配置され且つ固定されている、請求項3又は4記載の車両シート。
【請求項6】
少なくとも1つのアンテナ(7)が、縫い付け、織り込み、接着又はラミネート加工により固定されている、請求項3から5までのいずれか1項記載の車両シート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513423(P2009−513423A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532783(P2008−532783)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066828
【国際公開番号】WO2007/036551
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508029952)ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (27)
【氏名又は名称原語表記】VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】