説明

導電性インクおよびその製造方法

【課題】有機溶媒と容易に混合、かつ安定に溶解や分散が可能であり、加工性に優れ、高い導電性と透明性とを有する導電性インクを提供することを目的とする。
【解決手段】
下記化学式(I)で示される重合体とドーパントとが、溶媒中に粒径25μm以下で分散又は溶解している導電性インク。
【化1】


(式(I)中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、mは0又は1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含有する重合体成分の可溶性若しくは分散性が良好で、導電膜を形成した際に透明性及び導電性にも優れた導電膜を形成することが可能な導電性インクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロール、チオフェン、アニリン等のようにヘテロ原子が環内外に存在する五員環構造又は六員環構造を有する化合物或いは炭化水素系芳香環構造を有する化合物を重合して得られる重合体は、半導性を有する。これらの重合体を、半導性材料(半導体)として、固体電解トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、電波による個体識別(RFID)器等の様々な有機エレクトロニクス部材に用いることが検討されている。また、ドーピングされたこれらの重合体は、導電性を有しており、その導電性組成物は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極や、高分子固体電解コンデンサ、二次電池用電極、熱電変換材料、電磁波シールド材などに用いることが検討されている。また導電性インクに加工することで、絶縁基板上に微細な導電パターンを形成することが出来るため、プリント基板上の導電回路の形成、ディスプレイ電極の形成、PDPの電磁場シールド等の電気・電子分野において利用できる。
【0003】
最も広く応用されている透明導電膜はインジウム−スズの複合酸化物(ITO)の蒸着膜であるが、高温で成膜を行う必要があり、更に成膜コストが高いという問題点がある。塗布成膜法によるITO膜も、高温成膜が必要であり、その導電性はITOの分散度に左右され、ヘイズ値高い。また、ITO等無機酸化物膜は、基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすい。
【0004】
有機材料を用いた透明導電膜として、低温かつ低コストで成膜可能な導電性高分子を用いたものが提案されている。例えば、ポリチオフェンの例として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンとの複合体(PEDOT/PSS)が挙げられる。導電性が高い導電性高分子の1つであり、タッチパネル用途の透明電極として一部で実用化されている他、有機薄膜太陽電池や有機ELの透明電極としても検討されている。(非特許文献1)。しかし、PEDOT/PSSは水分散型が中心であり、エレクトロニクス分野においては水混入によるデバイスの性能低下を引き起こしてしまうことが懸念されていた。また、分散粒子が凝集することも知られており、改善が望まれていた。
【0005】
近年、有機溶剤中で溶解性又は分散性を示す導電性高分子の開発が盛んに行われている。特許文献1および非特許文献2は長鎖アルキル基を有するジチエノピロールを構成単位とする共重合体が良好な導電性を有することを報告している。しかしながら、ジチエノピロール共重合体は脱ドーピング状態では有機溶媒に対して良好な溶解性を示すが、ヨウ素等のドーパントによりドーピングされた状態では有機溶剤中で溶解性・分散性を示さず、加工性が乏しく、前述の用途展開が期待できなかった。
かかる状況の中、有機溶剤中で溶解性又は分散性を示す導電性インクの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2008−0262183公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ソーラー エナジー マテリアルズ アンド ソーラー セルズ(Solar Energy Materials & Solar Cells),2006年,90巻,3520−3530
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society,2008年、130巻、13167−13176.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、有機溶媒と容易に混合でき、安定に溶解や分散しているものであって、加工性に優れ、高い導電性と透明性とを有する透明電極材料等として有用で、インクジェット印刷等で用いることのできる導電性インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された導電性インクは、下記化学式(I)で表される単位からなる重合体とドーパントとが、溶媒中に粒径25μm以下で分散又は溶解している。
【化1】

(式(I)中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、mは0又は1である。)
【0010】
請求項5に記載の導電性インクの製造方法は、溶媒中で、下記化学式(II)で表される化合物を重合するものである。
【化2】

(式中、RからRは前記定義の通りである。)
【0011】
請求項7に記載の導電性インクの製造方法は、溶媒中で、化学式(I)で表される重合体をドーピングするものである。
【0012】
請求項9に記載のジチエノピロール化合物は化学式(III)で表される。
【化3】


[式(III)中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素原子、又は下記化学式(IV)、若しくは下記化学式(V)であり、
−W−〔(CH−X〕−R ・・・ (IV)
−M−Y−〔(CH−Z〕−R ・・・(V)
式(IV)中、R6は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、WおよびXはそれぞれ独立して酸素原子、又は硫黄原子であり、aは1〜5、bは1〜30であり、
式(V)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Mは炭素数1から10のアルキレン基であり、YおよびZはそれぞれ独立して酸素原子、又は硫黄原子であり、cは1〜5、dは1〜30である。]
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性インクは有機溶媒中で安定に溶解及び/又は分散しているため、加工性と成膜性に優れている。更にこの導電性インクは透明性と導電性に優れており、透明導電膜などの有機エレクトロニクス材料に用いることができる。加えて、本発明の導電性インクは一般的な有機溶媒中で製造コストを抑えて大量に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明の導電性インクは、前記化学式(I)に表される繰り返し単位を有する重合体、すなわちジチエノピロールとチオフェン又はビチオフェンとの交互共重合体、ドーパント、および溶媒から構成される。
【0016】
前記化学式(I)〜(III)において、R、RおよびRが表す置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロプロピル基などが挙げられる。
【0017】
前記化学式(I)および(II)において、RおよびRが表す置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、又は環状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0018】
前記化学式(III)において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、又は下記化学式(IV)、若しくは下記化学式(V)である。
−W−〔(CH−X〕−R ・・・ (IV)
−M−Y−〔(CH−Z〕−R ・・・(V)
【0019】
式(IV)中、R6は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、WおよびXはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子であり、aは1〜5、bは1〜30である。式(V)中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Mは炭素数1から10のアルキレン基であり、YおよびZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子であり、cは1〜5、dは1〜30である。
【0020】
前記化学式(I)〜(III)においてR〜Rが有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルチオ基などを挙げることができる。R及びRが有する置換基としてはアルコキシ基又はアルキルチオ基が好ましい。該アルコキシ基は更にアルコキシ基で置換されて、下記化学式(IV’)又は(V’)で表されるように、R及びRのうち少なくとも一方がポリエチレングリコール鎖などのポリアルキレングリコール鎖を形成していてもよい。
−O−〔(CH−O〕−R ・・・ (IV’)
−M−O−〔(CH−O〕−R ・・・(V’)
【0021】
式(IV’)及び式(V’)中、R6、R、M、a、b、c、dは前記定義の通りであり、Oは酸素原子である。
【0022】
前記R及びRが表す置換基を有していてもよいアルキル基としては、Rで挙げたものと同じものが挙げられ、該置換基としてもRが有していてもよい置換基として例示したものと同じものが挙げられる。
【0023】
前記式(IV)又は(V)で表されるR及びRとしては、例えば、2−メトキシエトキシ基、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ基、2−(2−エトキシ(2−メトキシエトキシ))エトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−(3−メトキシプロポキシ)プロポキシ基、3−(3−プロポキシ(3−メトキシプロポキシ))プロポキシ基、(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル基、(3−(3−メトキシプロポキシ)プロポキシ)メチル基、2−メチルチオエチルチオ基、2−(2−メチルチオエチルチオ)エチルチオ基、2−(2−エチルチオ(2−メチルチオエチルチオ))エチルチオ基、3−メチルチオプロピルチオ基、3−(3−メチルチオプロピルチオ)プロピルチオ基、3−(3−プロピルチオ(3−メチルチオプロピルチオ))プロピルチオ基、(2−(2−メチルチオエチルチオ)エチルチオ)メチル基、(3−(3−メチルチオプロピルチオ)プロピルチオ)メチル基、等が挙げられる。
【0024】
前記式(IV’)又は(V’)で表されるR及びRとしては、例えば、2−メトキシエトキシ基、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ基、2−(2−エトキシ(2−メトキシエトキシ))エトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−(3−メトキシプロポキシ)プロポキシ基、3−(3−プロポキシ(3−メトキシプロポキシ))プロポキシ基、(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチル基、(3−(3−メトキシプロポキシ)プロポキシ)メチル基、等が挙げられる。
【0025】
前記化学式(I)で表される重合体は、単一構造単位の繰り返し重合体であることが好ましい。その構造における結合配列は、位置規則的にヘッド−テイル繰り返し構造が配列したものであってもよく、ヘッド−ヘッド繰り返し構造、及び/又はテイル−テイル繰り返し構造が配列したものであってもよい。これらの重合体の数平均分子量は、1000〜2,000,000の範囲であると好ましく、2000〜500,000の範囲であるとより好ましい。なお、本発明における単量体単位は、重合体中に一定の繰返し構造を複数有する限り、ジチエノピロールとチオフェンとが連結した構造、又はチオフェン−ジチエノピロール−チオフェンが連結した構造(すなわち、ジチエノピロールとビチオフェンとが連結した構造)を一つの単位とする。
【0026】
本発明の導電性インクは、好ましくは、前記化学式(I)に表される重合体に導電性を付与(ドーピング)したものを、少なくとも有機溶媒を含む溶媒中に溶解又は分散させることによって得ることができる。導電性インクに分散又は溶解している重合体を散乱式粒子径分布測定装置で測定したメジアン粒径は、基板にムラなくインクを塗布するために25μm以下であることが必要であり、0.01〜25μmであるのが好ましく、0.01〜2μmであるのがより好ましい。
【0027】
ドーパントは、前記化学式(I)で表される重合体を酸化させることにより導電性を向上できるものであれば特に制限はなく、公知の種々のアニオンを用いることができる。アニオンであるドーパントは、酸化されて正の電荷を帯びた重合体に対してカウンターアニオンとして機能する。
【0028】
ドーパントとしては、例えば、PF、SbF、AsF等の5B族元素のアニオン;BF等の3B族元素のアニオン;ClO等のハロゲン酸アニオン;AlCl、FeCl、SnCl等の金属性アニオン;硝酸アニオン(NO);硫酸アニオン(SO2−);p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CHSO、CFSO等の有機スルホン酸アニオン;CFCOO、CCOO等のカルボン酸アニオン;および上記のアニオン種を主鎖又は側鎖に有する変性ポリマー;などが挙げられる。ただし、I、Br等のハロゲンアニオンをドーパントとして用いた場合、得られる導電性インクの分散性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明に含有されるドーパントは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。ドーパントの添加方法については特に限定されず、例えば、単量体を重合した後に、得られた重合体に所望のドーパントを適宜添加してもよい。また、単量体を化学酸化重合させる場合、又は重合体に化学酸化ドーピングを施す場合には、重合又はドーピングに用いられる酸化剤由来のアニオンを、ドーパントとして用いることができる。また、単量体を電解重合させる場合、又は重合体に電解ドーピングを施す場合には、重合又はドーピングに用いられる電解質由来のアニオンを、ドーパントとして用いることができる。
【0030】
本発明の導電性インクにおけるドーパントの含有率は、特に制限はなく、任意に選択することができるが、化学式(I)に示される重合体100質量部に対し1〜50質量部の範囲であると好ましい。その含有量は、製造工程において適宜調整することができる。
【0031】
本発明で重合体の分散媒体としての溶媒には、水、有機溶媒および任意の割合からなる水と有機溶媒の混合溶媒を選択でき、中でも有機溶媒が好ましい。溶媒の量としては、導電性インクに対する重合体の質量で、0.05〜50w/v%が好ましく、0.1〜20w/v%がより好ましく、0.5〜10w/v%が更に好ましい。
【0032】
本発明で用いることのできる有機溶媒は、具体的にハロゲン化炭化水素として、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼン;アミン類として、トリエチルアミン、及びピリジン;アルコール類として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及びグリセリン、ケトン類として、アセトン、及びメチルエチルケトン;カルボニル基含有溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、イソホロン、シクロヘキサノン、及びγ−ブチロラクトン;エーテル類として、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、及びトリグライム、及び1、4−ジオキサン;芳香族炭化水素類として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、及びアニソール;脂肪族炭化水素類としてペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びイソオクタン;ニトリル類としてアセトニトリル、プロピオンニトリル、及びベンゾニトリル;ニトロ化合物類として、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン;アミド類として、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン;含硫黄溶媒としてジメチルスルホキシド;イオン液体として、N−メチル−N−ブチルイミダゾリニウム テトラフルオロボレート、など種々の液体媒体であり、中でも、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、イソプロパノールが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明で用いることのできる界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤のいずれであってもよく、中でもアニオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明で用いる界面活性剤は有機溶媒中で導電性組成物の分散性の向上させるものであるが、必要に応じてその添加する時期も任意に選択することができる。
【0035】
次に、これら界面活性剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ブチルナフタレン/ ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフトールメチレンスルホン酸ホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、及びこれらの塩などを挙げることができる。
【0037】
カチオン系界面活性剤としては、第一〜第三級脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−アルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などを挙げることができる。
【0038】
両イオン性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などを挙げることができる。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0040】
また、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いても良い。
【0041】
ここで、上記界面活性剤の有するアルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。アニオン系界面活性剤のカウンターカチオンは任意のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アミン類等いずれであっても良いが、入手容易性の観点から、Naが好ましい。カチオン系界面活性剤のカウンターアニオンとしては、任意のハロゲンが好ましく、より好ましくはClである。
【0042】
界面活性剤の含有量としては、使用される界面活性剤の分子量や能力にもよるため一律に規定できるものではないが、概ね、重合体に対し、0.1〜500質量%が好ましく、1〜100質量%がより好ましく、1〜50質量%が更に好ましい。
【0043】
本発明の導電性インクには、化学式(I)で示される重合体と、ドーパントと、有機溶媒を含む溶媒との構成成分の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよく、その添加する順序も任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤などの中から適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
続いて、化学式(VI)で示される化合物を重合して、化学式(I)で示される重合体とドーパントから成る導電性インクを、溶媒中、好ましくは有機溶媒中で化学酸化重合又は電解重合により製造する下記化学反応式(A)で示される工程1の製造方法について説明する。
【0045】
【化4】


(化学反応式(A)中、R1、R、R、mは前記定義の通りである。)
【0046】
上記工程1は、化学式(VI)で示されるモノマー化合物から重合反応により化学式(I)で示される重合体とドーパントとを含む導電性インクを製造する工程である。反応式(A)で上記化学式(I)で示される重合体は、ドーピングされた状態を表しており、このことにより導電性を有している。工程1による製造方法は得られる重合体の規則性を高めるために、モノマー化合物としてmが1である以下の化学式(II)で表される化合物を用いる場合、すなわち化学式(I)においてmが1である単位からなる重合体を製造する場合に用いるのが好ましい。
【0047】
【化5】


(式中、R1、R、Rは前記定義の通りである。)
【0048】
上記工程1は少なくとも一つの上記の界面活性剤の添加することが好ましい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであってもよく、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0049】
この工程1の重合反応は、化学酸化重合又は電解重合のいずれであってもよく、好ましくは化学酸化重合である。化学酸化重合の場合、酸化剤を用いて、化学式(VI)で示される化合物を重合することにより、化学式(I)で示される重合体を得ることができる。
【0050】
工程1において使用する酸化剤として、有機物又は無機物からなる酸化剤のいずれであってもよく、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、過塩素酸第二鉄、硝酸第二鉄、鉄ミョウバン、スルホン酸、カルボン酸の第二鉄塩等の第二鉄塩が好ましい。
【0051】
スルホン酸の第二鉄塩におけるスルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−エチルベンゼンスルホン酸、m−エチルベンゼンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などが挙げられる。 カルボン酸の第二鉄塩におけるカルボン酸としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のいずれでも良く、また脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等のいずれであっても良い。
【0052】
上記の酸化剤は1種のみを用いても、2種以上を混合して用いても良い。混合して用いる場合にはドーパント作用を有する酸化剤同士、ドーパント作用を有さない酸化剤同士で混合して用いても、ドーパント作用を有する1種以上の第二鉄塩とドーパント作用を有さない1種以上の第二鉄塩とを混合して用いても良い。
【0053】
酸化剤の使用量は、モノマー化合物1モルに対して0.5〜10モル程度を使用できるが、本発明において、モノマー化合物1モル当たりに対する第二鉄塩の好ましい使用量は、2〜5モル程度である。
【0054】
工程1において、界面活性剤と酸化剤の添加順序は特に限定されるものではなく、どのような順番であってもよいが、化学式(II)で示される化合物を溶媒に溶解させたのちに、界面活性剤、酸化剤の順で加える方法が好適である。
【0055】
別の製造方法として、下記化学反応式(B)で示される工程2aとして、化学式(VII)で示される化合物と化学式(VIII)で示される化合物とをクロスカップリング反応させることにより、化学式(I)で示される単位からなる中性の重合体を得た後に、工程2bとして、溶媒中好ましくは有機溶媒および界面活性剤存在下で化学酸化ドーピング又は電解ドーピングすることにより導電性インクを製造する工程2の製造方法が挙げられる。
【0056】
【化6】


(化学反応式(B)中、R、R、Rは前述定義の通りである。a及びa'は、−Li、−Na、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(Aky)、−Si(OH)3、−Al(Aky)、−In(Aky)、−B(Aky)、B(OH)、B(OAky)などの金属を含む置換基から選ばれる。なお、ここでAkyとは、アルキル基を表す。b及びb'はハロゲン原子又はOSOCF基から選ばれる。m’は1又は2である。)
【0057】
工程2aの好適な実施態様としては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒および遷移金属錯体の存在下に化学式(VII)で示される化合物と化学式(VIII)で示される化合物とをクロスカップリング反応させる方法が挙げられる。用いられる金属錯体としては、例えば、ニッケルやパラジウム等の金属錯体が挙げられ、特にテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムや塩化ジフェニルホスフィノプロパンニッケル等のようにホスフィン類が配位している金属錯体を用いることが好ましい。
【0058】
工程2aはクロスカップリング反応であるから、a及びa'とb及びb’とを組み替えることもできる。すなわち、a及びa'がハロゲン原子であれば、b及びb’は金属を含む置換基である。また、m’が1の時は化合物(VIII)はチオフェン化合物であることを示し、m’が2の時は化合物(VIII)はビチオフェン化合物であることを示す。
【0059】
工程2aにおけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、熊田カップリング反応、檜山カップリング反応、根岸カップリング反応、鈴木カップリング反応等が挙げられる。中でも反応効率の観点から、Stilleカップリング反応、鈴木カップリング反応、又は熊田カップリング反応、が好適に採用され、Stilleカップリング反応、鈴木カップリング反応がより好適に採用される。これらのカップリング反応において、化学式(VIII)で示される化合物中のbおよびb’はI、又はBrを示す。Stilleカップリング反応は、化学式(VII)で示される化合物中のaおよびa’が−SnR等で示される有機スズ化合物を用いた反応であり、鈴木カップリング反応では、B(OH)、B(OAky)等で示される有機ホウ素化合物を用いた反応であり、熊田カップリング反応は、−MgBr等で示される有機マグネシウム化合物を用いた反応である。なお、上記のクロスカップリング反応は、公知の方法(例えば、実験化学講座18巻 3.2.2炭素−炭素カップリングp333−352)を適用することができる。
【0060】
上記化学式(VII)で示される化合物におけるRは、前述の化学式(I)で示される化合物で例示されたものと同様のものを用いることができる。なお、化学式(VII)に記載の化合物は、例えば、非特許文献2に記載の方法により合成できる。
【0061】
3位又は4位が置換基で置換されたチオフェン化合物(VIII)は、出発化合物として、市販品のものを用いてもよく、3位および4位が置換基で置換されたチオフェン化合物のような原料の2位と5位を臭素又はN−ブロモサクシンイミドでブロモ化して、合成したものを用いてもよい。化学式(VIII)で示される化合物におけるRおよびRとしては、上述の化学式(I)で示される化合物で例示されたものと同様のものを用いることができる。
【0062】
この工程2bのドーピングは、化学酸化ドーピング又は電解ドーピングのいずれであってもよく、好ましくは化学酸化ドーピングである。化学酸化ドーピングの場合、酸化剤を用いて、化学式(I)で示される重合体をドーピングすることができる。
【0063】
上記工程2bは少なくとも一つの上記の界面活性剤の添加することが好ましい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであってもよく、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0064】
工程2bにおいて使用する酸化剤、界面活性剤としては、工程1で例示されたものと同様のものを用いることができる。
【0065】
工程2bにおいて、界面活性剤と酸化剤の添加順序は特に限定されるものではなく、どのような順番であってもよいが、重合体を溶媒に溶解させたのちに、界面活性剤、酸化剤の順で加える方法が好適である。
【0066】
工程2では同一又は異なる置換基を有する二分子のチオフェン化合物が結合したビチオフェン化合物を逐次導入することができる。合成の簡便性の観点から、同じ置換基を有するビチオフェン化合物を導入することが好ましい。
【0067】
工程1又は工程2の製造方法によって得られた化学式(I)で表される単位からなる重合体は、末端基として、水素原子、ハロゲン原子、カップリング残基等を有していてもよく、さらにこれらの末端基が臭化ベンゼン等の芳香族ハロゲン化物や、芳香族ボロン酸化合物などからなる末端封止剤で置換された末端構造であってもよい。また、本発明の重合体の効果を損なわない範囲の少量であれば、前記化学式(I)に示される以外の単位を共重合させてもよい。
【0068】
本発明により有機溶媒に対して溶解性又は分散性が高い導電性インクを提供することができる。こうして得られた導電性インクは、加工性が優れるとともに導電性が非常に良好であるため、導電性材料として適している。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0070】
(合成例1)[2,6−ビス(3−ドデシルチオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(1)の合成]
【化7】


温度計、還流冷却器及びマグネチックスターラを備えた内容積200mlの3口フラスコに窒素雰囲気下、2,6−ビス(トリメチルスタニル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(3.03g、4.50mmol)、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェン(3.02g、9.14mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(123mg、0.135mmol)、トリ(o−トルイル)ホスフィン(164mg、0.54mmol)およびクロロベンゼン60mlを加え、系内をアルゴン置換した後、150℃にて1時間加熱攪拌した。反応終了後、100mlの水に反応液を加え、分液漏斗を用いて有機相を分離した。水相を酢酸エチルにより抽出し、先の有機相と混合したものを水により洗浄した後、有機相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。有機相を減圧下濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=98/2)を用いて精製し、2,6−ビス(3−ドデシルチオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(1)を橙色固体として得た(3.14g、3.70mmol、収率82%)。
【0071】
それのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(1)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)σ:7.17(d,2H,J=5.4Hz)、7.00(s,2H)、6.94(d,2H,J=5.4Hz)、4.19(t,2H,J=6.8Hz)、2.82(t,4H,J=8.1Hz)、1.89(m,2H)、1.67(m,4H)、1.2(bm,54H)、0.87(m,9H)
【0072】
(合成例2)[2,6−ビス(3−ドデシルオキシメチルチオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(2)の合成]
【化8】


合成例1において、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェンを、2−ブロモ−3−ドデシルオキシメチルチオフェン(3.17g、9.14mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、2,6−ビス(3−ドデシルオキシメチルチオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(2)を橙色固体として得た(3.27g、3.60mmol、収率80%)。
【0073】
それのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(2)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)σ:7.20(d,2H,J=5.5Hz)、7.16(s,2H)、7.12(d,2H,J=5.5Hz)、4.58(s,2H)、4.19(t,2H,J=6.9Hz)、3.52(t,4H,J=6.7Hz)、1.88(m,2H)、1.66(m,4H)、1.2(bm,54H)、0.87(m,9H)
【0074】
(合成例3)[2,6−ビス(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルチオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(3)の合成]
【化9】

【0075】
合成例1において、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェンを、2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルチオフェン(2.69g、9.14mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、2,6−ビス(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)メチルチオフェンー2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(3)を橙色固体として得た(3.27g、3.83mmol、収率85%)。
【0076】
それのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(3)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)σ:7.19(d,2H,J=4.9Hz)、7.14(s,2H)、7.13(d,2H,J=4.9Hz)、4.66(s,4H)、4.20(t,2H,J=7.0Hz)、3.70(s,8H)、3.66(m,4H)、3.54(m,4H)、1.88(m,2H)、1.2(bm,20H)、0.86(m,3H)
【0077】
(合成例4)[2,6−ビス(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(4)の合成]
【化10】

【0078】
合成例1において、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェンを、2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン(2.57g、9.14mmol)に変更した以外は同様に反応および精製を行い、2,6−ビス(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン−2−イル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(4)を橙色固体として得た(1.11g、1.49mmol、2,6−ビス(トリメチルスタニル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール基準の収率33%)。
【0079】
それのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(4)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、アセトン−D、TMS)σ:7.41(s,2H)、7.26(d,2H,J=5.7Hz)、7.07(d,2H,J=5.7Hz)、4.32(m,6H)、3.91(m,4H)、3.72(m,4H)、3.55(m,4H)、3.32(s,6H)、1.92(m,2H)、1.4−1.2(bm,18H)、0.86(t,3H,J=5.4Hz)
【0080】
(合成例4)[N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロールと4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェンの共重合体(5)の合成]
【化11】


温度計、還流冷却器及びマグネチックスターラを備えた内容積50mlの三口フラスコに窒素雰囲気下、2,6−ビス(トリメチルスタニル)−N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロール(316mg、0.47mmol)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェン(311mg、0.47mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(12.6mg、13.8umol)、トリ(o−トルイル)ホスフィン(17.2mg、56.5umol)およびクロロベンゼン15mlを加え、系内を窒素置換した後、140℃にて48時間加熱攪拌した。反応終了後、5%塩酸−メタノール溶液に滴下し、再沈殿した。沈殿物をろ別し、メタノール、ヘキサンでソックスレー精製を行った後に、クロロホルムで抽出した。クロロホルムを減圧留去して、N−ドデシル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ピロールと4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェンの共重合体(5)を得た。
【0081】
<実施例1>
温度計と冷却管を備えた50ml三つ口フラスコに、化合物(1)(85mg)とクロロホルム(5ml)を加え溶解させた。そこに硫酸第二鉄n水和物(199mg)、エーロゾルOT(100mg;アニオン系界面活性剤)、クロロホルム(1ml)、蒸留水(0.25ml)から成る懸濁液を滴下した。その後、60℃で24時間撹拌した。得られた分散液を分液漏斗に移し、蒸留水(10ml)で三回洗浄した後に、硫酸ナトリウムで乾燥し、化学式(I)で表される単位からなる重合体とドーパントとを含む導電性インクを分散液(1.0wt%)として得た。標準ポリスチレンを検量線とするGPCを用いて、重合体の分子量を測定した結果、数平均分子量(Mn)は5400、重量平均分子量(Mw)は7600、Mw/Mnは1.41であった。
【0082】
<実施例2>
実施例1の硫酸鉄n水和物の代りに過塩素酸第二鉄n水和物(177mg)を用いた以外は同様の操作を行った。
【0083】
<実施例3>
実施例1の硫酸鉄n水和物の代りに無水塩化第二鉄(81mg)を用いた以外は同様の操作を行った。
【0084】
<実施例4>
実施例1のクロロホルムの代りにクロロベンゼンを用いた以外は同様の操作を行った。
【0085】
<実施例5>
実施例1のクロロホルムの代りにメチルエチルケトンを用いた以外は同様の操作を行った。
【0086】
<実施例6>
実施例1のクロロホルムの代りに2−プロパノールを用いた以外は同様の操作を行った。
【0087】
<実施例7>
実施例1の化合物(1)の代りに化合物(2)を用いた以外は同様の操作を行った。
【0088】
<実施例8>
実施例1の化合物(1)の代りに化合物(3)を用いた以外は同様の操作を行った。
【0089】
<実施例9>
実施例1の化合物(1)の代りに化合物(4)を用いた以外は同様の操作を行った。
【0090】
<実施例10>
共重合体(5)(10mg)をクロロホルム(1ml)に溶解し、エーロゾルOT(100mg;アニオン系界面活性剤)と過塩素酸第二鉄(21mg)を加え、60℃1時間反応させ、化学式(I)で表される単位からなる重合体とドーパントとを含む導電性インクを分散液(1.0w/v%)として得た。
【0091】
<比較例1>
共重合体(5)(14.2mg)をトルエン(1ml)に溶解し、ヨウ素(6.2mg)を加え、室温10分間反応させ、分散液を得た。
【0092】
<比較例2>
比較例1のトルエンの代りにクロロホルムを用いた以外は同様の操作を行った。
【0093】
(メジアン粒径の測定)
散乱式粒子径分布測定装置(堀場製 LA−950V2)を用いて、実施例1〜10及び比較例1,2で調製した分散液のメジアン粒径を測定した。その結果を表1に示す。
【0094】
(全光線透過率の測定)
実施例1〜10及び比較例1,2で調製した分散液を白板ガラス基板(2.5cm×2.5cm×0.1cm)に滴下し、スピンコーター(1000rpm、30秒)を用いて約50nmの薄膜を作製した。実施例1〜10により得られた薄膜は、いずれも80%以上の全光線透過率であった。
【0095】
(表面抵抗値の測定)
前記全光線透過率の測定と同様にして実施例1〜10及び比較例1,2の薄膜を作製し、その表面抵抗値を4探針方式の測定器(三菱化学社製 MCP−T610)により測定した。その結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から明らかなように、実施例1〜10で得られた導電性インクは、重合体とドーパントとが溶媒中に粒径25μm以下で分散又は溶解しているため、均一な薄膜を作製することができ、得られた薄膜は電気伝導性を有していた。中でも、実施例1、2、7、8及び9で調製した分散液からなるインクはメジアン粒径が1μm以下であり、より一層均一な薄膜作製が可能であり、優れた表面抵抗値を示した。一方、比較例1及び2は、メジアン粒径が25μmを超え分散性が悪く、均一な薄膜を作製できず、表面抵抗値を測定することができなかった。
【0098】
以上の結果から、本発明で簡便に導電性組成物を含む導電性インクを製造することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の導電性インクは、透明性が高く、優れた導電性を示す透明導電膜の材料として用いることができる。また、この導電性インクにより形成された透明導電膜は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極;電解コンデンサ用電解質、二次電池用電極、接続用部材、高分子半導体素子、センサ、紫外線吸収剤、熱線吸収材;帯電防止コーティング、帯電防止包装材などの帯電防止剤;電磁波シールド剤;更に、転写ベルト、現像ロール、帯電ロール、転写ロールなどの電子写真機器部品;などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)で表される単位からなる重合体とドーパントとが、溶媒中に粒径25μm以下で分散又は溶解している導電性インク。
【化1】


(式(I)中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、mは0又は1である。)
【請求項2】
化学式(I)のmが1である請求項1に記載の導電性インク。
【請求項3】
溶媒が有機溶媒を含む請求項1又は2に記載の導電性インク。
【請求項4】
さらに少なくとも1種の界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性インク。
【請求項5】
溶媒中で、下記化学式(II)で表される化合物を重合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性インクの製造方法。
【化2】

(式中、R1からRは前記定義の通りである。)
【請求項6】
有機溶媒および界面活性剤の存在下、化学式(II)で表される化合物を重合することを特徴とする請求項4に記載の導電性インクの製造方法。
【請求項7】
溶媒中で、化学式(I)で表される重合体をドーピングすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性インクの製造方法。
【請求項8】
有機溶媒および界面活性剤の存在下、化学式(I)で表される重合体をドーピングすることを特徴とする請求項4に記載の導電性インクの製造方法。
【請求項9】
化学式(III)で表されるジチエノピロール化合物。
【化3】

(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素原子、又は下記化学式(IV)、若しくは下記化学式(V)であり、
−W−〔(CH−X〕−R ・・・(IV)
−M−Y−〔(CH−Z〕−R ・・・(V)
式(IV)中、R6は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、WおよびXはそれぞれ独立して酸素原子、又は硫黄原子であり、aは1〜5、bは1〜30であり、
式(V)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Mは炭素数1から10のアルキレン基であり、YおよびZはそれぞれ独立して酸素原子、又は硫黄原子であり、cは1〜5、dは1〜30である。)
【請求項10】
前記化学式(I)中、R及びRのうち少なくとも一方が、下記化学式(IV’)又は下記化学式(V’)
−O−〔(CH−O〕−R ・・・(IV’)
−M−O−〔(CH−O〕−R ・・・(V’)
(式(IV’)中、R6は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Oは酸素原子であり、aは1〜5、bは1〜30であり、
式(V’)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Mは炭素数1から10のアルキレン基であり、Oは酸素原子であり、cは1〜5、dは1〜30である。)
で表されるいずれかである請求項1〜4に記載の導電性インク。

【公開番号】特開2012−251129(P2012−251129A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274419(P2011−274419)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】