説明

導電性インク受容層形成用樹脂組成物、導電性インク受容基材及び回路形成用基板ならびに印刷物、導電性パターン及び回路基板

【課題】本発明の課題は、導電性インクとインク受容層との密着性、及び、前記インク受容層と前記した様々な種類の支持体との密着性に優れたインク受容層を形成でき、導電性インクのにじみを引き起こすことなく、細線性を備えたインク受容層を形成可能な導電性インク受容層形成用樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、導電性インクの受容層を形成する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られる10℃〜70℃のガラス転移温度を有するビニル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するものであることを特徴とする導電性インク受容層形成用樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もっぱら導電性インクを用いて電子回路をはじめとする様々な導電性パターンを形成する際に、前記導電性インクの受容層を形成可能な導電性インク受容層形成用樹脂組成物、及び、該受容層を有する導電性インク受容基材及び回路形成用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化や小型化、薄型化の要求に伴って、それに使用される電子回路や集積回路にも高密度化や薄型化が強く求められている。
【0003】
前記電子回路等に使用される導電性パターンは、従来、フォトリソグラフ法によって作製されていた。しかし、前記方法は多数の工程を経る必要があり、導電性パターンの生産効率を低下させる場合があるため、その簡略化等が検討されていた。
【0004】
一方、インクジェット印刷技術の飛躍的向上もあって、インクジェットプリンターやインクの改良が進み、銀等の導電性物質を含む導電性インクをインクジェット印刷方式によって基板上に印刷し電子回路等の導電性パターンを形成する技術が開発されている。
【0005】
しかし、前記導電性インクを、電子回路等に一般に使用されるポリイミドやポリエチレンテレフタレート等からなる支持体の表面に、直接、印刷しても、前記導電性インクが前記支持体表面に密着しにくいため容易に剥離し、最終的に得られる電子回路等の断線を引き起こし、通電を妨げる場合があった。
【0006】
前記問題を解決する方法としては、例えばラテックス層を設けたインク受容基材に、導電性インクを用いて、所定の方法によりパターンを描画することによって導電性パターンを作製する方法が知られ、前記ラテックス層としてアクリル樹脂を使用できることが知られている(特許文献1参照。)。
【0007】
しかし、前記導電性パターンを構成する前記ラテックス層からなるインク受容層は、導電性インクのにじみ等を引き起こす場合があるため、電子回路等の高密度化等を実現するうえで一般に求められる、概ね0.01μm〜200μm程度の幅の細線からなる導線を形成することが困難な場合があった。
【0008】
一方、概ね200μmを超え1cm以下である、比較的幅の広い導線を形成する必要がある場合であっても、前記インク受容層では、導電性インクに含まれる溶媒を十分に吸収することができず、導線のにじみを引き起こし、その断線や通電不良等の不具合を引き起こす場合があった。
【0009】
また、前記導電性パターンを形成する際には、通常、導電性インク中に含まれる導電性物質同士を接触させ導電性を付与するために、導電性インクを用いて印刷した印刷物を、概ね80℃以上の温度で加熱し焼成する場合が多い。
【0010】
しかし、前記文献1に記載されたラテックス層のようなインク受容層は、前記焼成工程で受けた熱の影響によって劣化等しやすいため、導電性インク中に含まれる銀等の導電性物質とインク受容層との界面、または、前記インク受容層と前記支持体との界面の密着性の低下を引き起こし、ごく僅かな力が加わった場合であっても容易に剥離する場合があった。また、前記焼成工程を経ることによって、インク受容層である前記ラテックス層の過剰な膨潤及び変形等を引き起こし、断線や通電不良を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−291561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、導電性インクと導電性インク受容層との密着性、及び、前記導電性インク受容層と支持体との密着性に優れた導電性インク受容層を形成でき、かつ、導電性インクのにじみを引き起こすことなく、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線を描くことを可能なレベルの細線性を備えた導電性インク受容層を形成可能な導電性インク受容層形成用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、前記課題を検討すべく検討を進めるなかで、インクジェット印刷関連業界で一般に使用される導電性インク受容層を適用することが有効ではないかと考え、様々な種類のインク受容層形成用組成物の適用を試みた。
【0014】
しかし、一般のインクジェット印刷場面においては好適な印刷適性を示す導電性インク受容層形成用組成物であっても、前記導電性インクによる印刷に適用すると、インクのにじみ等を引き起こす場合があるため、導電性インクに対応したインク受容層の形成を検討することが必要であった。
【0015】
このような状況下、従来のインク受容層形成用樹脂組成物で使用されるアクリル樹脂の組成を検討し、前記樹脂組成物が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られるビニル重合体を含む導電性インク受容層形成用樹脂組成物であれば、本発明の課題を解決しうる導電性インク受容層を形成できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、導電性インクの受容層を形成する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られる10℃〜70℃のガラス転移温度を有するビニル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するものであることを特徴とする導電性インク受容層形成用樹脂組成物、導電性インク受容基材及び回路形成用基板ならびに印刷物、導電性パターン及び回路基板に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物によれば、導電性インクと導電性インク受容層との密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記支持体との密着性に優れた導電性インク受容層を形成でき、導電性インクのにじみを引き起こすことなく、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線を描くことを可能なレベルの細線性を備えた導電性インク受容層を形成できることから、例えば銀等の導電性物質を含む導電性インク等を用いた電子回路の形成、有機太陽電池や電子書籍端末、有機EL、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、非接触ICカード等のRFID等を構成する各層や周辺配線の形成、プラズマディスプレイの電磁波シールドの配線、集積回路、有機トランジスタの製造等の、一般にプリンテッド・エレクトロニクス分野等の新規分野で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物は、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られる10℃〜70℃のガラス転移温度を有するビニル重合体(A)と、水性媒体(B)と、必要に応じてその他添加剤を含有することを特徴とするものである。前記ビニル重合体(A)は、前記水性媒体(B)に溶解または分散したものであることが好ましい。
【0019】
本発明で使用するビニル重合体(A)としては、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%と、必要に応じてその他のビニル単量体とを含むビニル単量体混合物を重合して得られるものを使用することが必須である。
【0020】
前記メタクリル酸メチル(a1)は、電子回路等の導電性パターンを形成する際に求められる、概ね0.01μm〜200μm程度、好ましくは0.01μm〜150μm程度の幅からなる細線を、にじみを引き起こすことなく印刷すること(細線性の向上)を可能にするうえで重要である。また、例えば導電性パターンを作製する際の焼成工程等における熱等の影響によらず、導電性インクと導電性インク受容層との優れた密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記支持体との優れた密着性を付与するうえでも重要である。
【0021】
ここで、メタクリル酸メチル(a1)の代わりにアクリル酸ブチル等のその他のビニル単量体を使用して得られた導電性インク受容層は、該導電性インク受容層表面に導電性インクを用いて印刷した場合に、にじみ等を引き起こし、前記したような細線を印刷することができない場合がある。また、熱の影響により前記導電性インクと導電性インク受容層との密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記支持体との密着性が低下し、導電性インク中に含まれる銀等をはじめとする導電性物質の欠落に起因した断線等を引き起こす場合がある。
【0022】
また、前記メタクリル酸メチル(a1)は、前記ビニル単量体混合物の全量に対して30質量%〜70質量%の範囲で使用することが必須であり、特に、35質量%〜65質量%の範囲で使用することが好ましく、40質量%〜65質量%の範囲で使用することが、前記細線等の印刷部のにじみの発生を防止し、前記導電性インクと導電性インク受容層との優れた密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記した様々な種類の支持体との優れた密着性を付与するうえで好ましい。
【0023】
ここで、前記メタクリル酸メチル(a1)の使用量が70質量%を超えると、前記導電性インクと導電性インク受容層との密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記支持体との密着性の低下等を引き起こす場合がある。
【0024】
また、前記メタクリル酸メチル(a1)の使用量が30質量%未満であると、前記細線等の印刷部のにじみや、前記導電性インクと導電性インク受容層との密着性、及び、前記導電性インク受容層と前記支持体との密着性の低下等を引き起こす場合がある。
【0025】
また、前記ビニル単量体混合物は、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含有する。前記カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)は、得られるビニル重合体(A)中に前記所定量のカルボキシル基やアミド基を導入し、にじみがなく細線性に優れ、かつ、前記導電性インク受容層と前記支持体と導電性インクとの密着性に優れた導電性インク受容層を形成可能にするために使用する。
【0026】
前記カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)が5質量%を超える場合、ビニル重合体(A)中に導入されるカルボキシル基やアミド基の量も、それに対応して増加し、その結果、導電性インク受容層のにじみの発生や細線性の低下を引き起こす場合がある。一方、前記カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)が0.2質量%未満の場合、やはりにじみの発生に伴う細線性の低下や、導電性インク受容層と前記支持体との密着性の低下等を引き起こす場合がある。
【0027】
前記カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、を使用することができ、なかでもメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0028】
前記アミド基含有ビニル単量体(a3)としては、例えば(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを使用することができ、なかでもアクリルアミドを使用することが好ましい。
【0029】
本発明では、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)と前記アミド基含有ビニル単量体(a3)とを組み合わせ使用することが好ましく、例えばメタクリル酸とアクリルアミドとを組み合わせ使用することが、にじみがなく細線性に優れ、かつ、前記導電性インク受容層と前記支持体と導電性インクとの密着性に優れた導電性インクの受容層を形成可能な導電性インク受容層形成用樹脂組成物を得るうえで好ましい。
【0030】
また、前記ビニル重合体(A)を製造するにあたり前記カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)を使用した場合には、前記ビニル重合体(A)中のカルボキシル基は、ビニル重合体(A)に良好な水分散安定性を付与する観点から、中和剤によって中和されていることが好ましい。
【0031】
前記中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。特に、得られる導電性インク受容層の耐水性をより向上させたい場合は、常温或いは加熱により飛散するアンモニアを使用することが好ましい。
【0032】
また、前記ビニル重合体(A)の製造に使用するビニル単量体混合物としては、前記したものの他に、必要に応じてその他のビニル単量体を使用することができる。
【0033】
前記その他のビニル単量体としては、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルを使用することができ、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸β−(パーフルオロオクチル)エチル等を使用することができる。
【0034】
また、前記その他のビニル単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドンや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル、「アデカリアソープPP−70、PPE−710」(旭電化工業(株)製)等またはそれらの塩、水酸基、スルホン酸基、サルフェート基、リン酸基、リン酸エステル基等の他の親水性基を有するビニル単量体を使用することができる。
【0035】
前記したなかでも、得られるビニル重合体(A)のガラス転移温度を10℃〜70℃の範囲に調整しやすいことから、前記した−100℃〜55℃程度のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成可能なビニル単量体を使用することが好ましい。具体的には、炭素原子数2個〜12個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、炭素原子数3個〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a4)を使用することがより好ましく、アクリル酸ブチルを使用することが、導電性インクのにじみがなく、優れた細線性を付与可能な導電性インク受容層形成可能な導電性インク受容層形成用樹脂組成物を得るうえで特に好ましい。
【0036】
本発明では、前記その他のビニル単量体として炭素原子数3個〜8個のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a4)を、ビニル重合体(A)の製造に使用するビニル単量体混合物全体に対して10質量%〜50質量%の範囲で使用することが、ビニル重合体(A)のガラス転移温度を10℃〜70℃の範囲に調整し、細線性の向上や、導電性パターンを作製する際の焼成工程等における熱等の影響によって前記導電性インクと導電性インク受容層との間や、前記導電性インク受容層と前記支持体との間の剥離を引き起こすことがないレベルの非常に優れた密着性を備えた導電性インク受容層を形成するうえで好ましい。
【0037】
また、前記その他のビニル単量体としては、ビニル重合体(A)の架橋密度を調整することによって導電性インク中に含まれる溶媒の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、より一層優れた細線性を備えた導電性インク受容層を形成する観点から、必要に応じて、水酸基やグリシジル基やアミノ基、シリル基、アジリジニル基、イソシアネート基、オキサゾリン基、シクロペンテニル基、アリル基、カルボニル基、アセトアセチル基等の架橋性官能基を有するビニル単量体を使用することができる。
【0038】
前記架橋性官能基含有ビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等の水酸基含有ビニル単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能重合性単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N−モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル等のアミノ基含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアネート基及び/またはブロック化イソシアネート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル等のシクロペンテニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等のアセトアセチル基含有重合性単量体等を使用することができる。
【0039】
前記架橋性官能基含有ビニル単量体としては、前記水酸基含有ビニル単量体を使用することが、後述する架橋剤との反応性に優れ、細線性に優れ、ひび割れを引き起こしにくいインク受容層を形成するうえで好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルを使用することがより好ましい。とりわけ、前記水酸基含有ビニル単量体を使用することは、後述する架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を使用する場合に好ましい。
【0040】
前記水酸基含有ビニル単量体は、組み合わせて使用する架橋剤の種類や使用量によって異なるが、前記ビニル単量体混合物の全量に対して0.01質量%〜10質量%の範囲で使用することが、細線性に優れたインク受容層を形成するうえで好ましい。なお、前記架橋剤を使用しない場合には、前記水酸基含有ビニル単量体は前記ビニル単量体混合物の全量に対して0質量%〜1.5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0041】
前記架橋性官能基含有ビニル単量体は、前記ビニル単量体混合物の全量に対して0質量%〜10質量%の範囲で使用することができる。特に、前記架橋剤を使用する場合には、0.01質量%〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。また、前記架橋剤を使用しない場合には、0質量%〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0042】
また、本発明で使用するビニル重合体(A)としては、前記したとおり、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られるもののうち、10℃〜70℃のガラス転移温度を有するものを使用することが、にじみがなく細線性に優れ、かつ、前記導電性インク受容層と前記支持体と導電性インクとの密着性に優れた導電性インクの受容層を形成する上で必須である。
【0043】
前記ビニル重合体(A)のガラス転移温度は、主に、該ビニル重合体(A)の製造に使用するビニル単量体の組成によって決定される。具体的には、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%の使用を必須成分とし、その他、必要に応じて、前記した−100℃〜55℃程度のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成可能なビニル単量体、具体的には炭素原子数2個〜12個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より具体的には炭素原子数3個〜8個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a4)等を適宜組み合わせ使用することによって、前記所定のガラス転移温度を有するビニル重合体(A)を得ることができる。
【0044】
前記ガラス転移温度としては、15℃〜35℃の範囲であることが、にじみがなく優れた細線性が発現し、さらには導電性インク受容層の良好な造膜性を付与するうえで好ましい。
【0045】
また、前記ビニル重合体(A)としては、にじみがなく細線性に優れた導電性インクの受容層を形成するうえで、80万以上の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、100万以上の重量平均分子量を有するビニル重合体を使用することが好ましい。前記ビニル重合体(A)の重量平均分子量の上限値としては、特に限定されないが、概ね1000万以下であることが好ましく、500万以下であることが好ましい。
【0046】
なお、後述する架橋剤を使用する場合、前記ビニル重合体(A)としては好ましくは10万〜200万、より好ましくは15万〜100万程度の重量平均分子量を有するものも好適に使用することができる。
【0047】
また、前記ビニル重合体(A)としては、導電性インク中に含まれる溶媒の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、優れた細線性を備えた導電性インク受容層を形成するうえで、導電性インク受容層のテトラヒドロフラン(THF)に対する溶出率[N]が10質量%〜90質量%の範囲となりうるものを使用することが好ましい。
その際使用する前記ビニル重合体(A)としては、溶出率[N]が10質量%〜90質量%の範囲となりうる導電性インク受容層を形成する観点から、前記ビニル重合体(A)からなるフィルムを25℃のテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した場合に、該フィルムからテトラヒドロフラン中に溶出したビニル重合体(A)の質量割合である溶出率[M]が10質量%〜90質量%の範囲となりうるものを使用することが好ましく、20質量%〜70質量%の範囲であることが、にじみがなく細線性に優れた導電性インク受容層の形成するうえでより好ましい。
なお、後述する架橋剤を使用する場合であって、前記ビニル重合体(A)の架橋性官能基と組み合わせ使用することによって導電性インク受容層の溶出率[N]を10質量%〜90質量%の範囲に調整できる場合であれば、前記ビニル重合体(A)として、前記溶出率[M]が90質量%以上であるものを使用することもできる。
【0048】
ここで、前記溶出率[M]とは、前記ビニル重合体(A)を用いて形成されるフィルムを25℃のテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した場合に、該フィルムからテトラヒドロフラン中に溶出したビニル重合体(A)の質量割合を示すものである。
【0049】
具体的な求め方を以下に示す。ビニル重合体(A)を用いて縦3cm、横3cm及び厚さ150μmのフィルムを作製し、その質量(X)を測定する。次いで、該フィルムを25℃に調整したテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランに溶解しなかったフィルムの残渣を300メッシュ金網で濾過することで分離し、前記残渣を108℃で1時間、乾燥したものの質量(Y)を測定する。次いで、前記質量(X)及び(Y)の値を用い、[((X)−(Y))/(X)]×100の式に基づいて算出した値が、本発明で言う溶出率[M]である。
【0050】
前記ビニル重合体(A)としては、20質量%〜70質量%の範囲の溶出率[M]を有するものを使用することが、にじみがなく細線性に優れた導電性インク受容層の形成するうえで好ましい。
【0051】
前記溶出率[M]は、ビニル重合体(A)の製造に使用するビニル単量体の組み合わせや架橋の程度、分子量等によって変化する。
【0052】
前記ビニル重合体(A)の構造、架橋の程度、及び分子量等の調整は、当業者であれば、該ビニル重合体(A)を構成する単量体組成や、その製造方法や重合開始剤や連鎖移動剤の種類、及びその使用量等を適宜調整することによって行うことが可能である。
【0053】
具体的には、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合する際に、前記ビニル単量体混合物の全量に対して0質量%〜1.0質量%の連鎖移動剤を使用する方法や、前記ビニル単量体混合物に、更に前述の架橋性官能基含有ビニル単量体を0質量%〜10質量%組み合わせ使用する方法等により、所望の溶出率[M]を有するビニル重合体(A)を得ることが可能となる。なお、前記架橋性官能基含有ビニル単量体は、後述する架橋剤を使用する場合には、前記ビニル単量体混合物の全量に対して、0.01質量%〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。また、後述する架橋剤を使用しない場合には、0質量%〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
次に、前記ビニル重合体(A)の製造方法について説明する。
前記ビニル単量体(A)は、前記したビニル単量体混合物を従来から知られている方法で重合することによって製造することができるが、にじみがなく細線性に優れた導電性インク受容層を形成する観点から乳化重合法を適用することが好ましい。
【0055】
前記乳化重合法としては、例えば水と、ビニル単量体混合物と、重合開始剤と、必要に応じて連鎖移動剤や乳化剤や分散安定剤等とを、反応容器中に一括供給、混合して重合する方法や、ビニル単量体混合物を反応容器中に滴下し重合するモノマー滴下法や、ビニル単量体混合物と乳化剤等と水とを予め混合したものを、反応容器中に滴下し重合するプレエマルジョン法等を適用することができる。
【0056】
前記乳化重合法の反応温度は、使用するビニル単量体や重合開始剤の種類によって異なるが、例えば30℃〜90℃程度、反応時間は例えば1時間〜l0時間程度であることが好ましい。
【0057】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、過酸化水素等があり、これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは前記過酸化物と、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等のような還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系によっても重合でき、また、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これら化合物は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記ビニル重合体(A)の製造に使用可能な乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等が挙げられ、なかでも陰イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0059】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸ハーフエステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩、等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系界面活性剤等を使用することができる。
【0060】
また、前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩等を使用することができる。
【0061】
また、両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等を使用することができる。
【0062】
前記乳化剤としては、上記の界面活性剤の他に、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤や、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することもできる。
【0063】
前記反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」(花王(株)製)、「エレミノールJS−2、RS−30」(三洋化成工業(株)製)等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20、KH−1025」(第一工業製薬(株)製)、「アデカリアソープSE−10、SE−20」(旭電化工業(株)製)等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」(第一工業製薬(株)製)等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」(第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。
【0064】
また、前記ビニル重合体(A)の製造に使用する水性媒体としては、前記水性媒体(B)として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0065】
また、前記ビニル重合体(A)の製造に使用可能な連鎖移動剤としては、ラウリルメルカプタン等を使用することができる。前記ビニル重合体(A)のテトラヒドロフランに対する溶出率[M]を10質量%〜90質量%の範囲に調整する観点から、前記ビニル単量体混合物の全量に対して0質量%〜1.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0質量%〜0.5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0066】
前記方法で得られたビニル重合体(A)は、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物の全量に対して、20質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0067】
次に、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物の製造に使用する水性媒体(B)について説明する。
【0068】
前記水性媒体(B)は、前記ビニル重合体(A)の分散に使用するものであって、水のみを使用してもよいし、或いは、水と水溶性溶剤の混合溶液を使用してもよい。前記水溶性溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤を使用することができる。
【0069】
本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、導電性インクの種類やそれに使用する溶媒の種類等、必要に応じて架橋剤、充填剤、顔料、pH調整剤、被膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等公知のものを適宜添加して使用することができる。
【0070】
本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物は、導電性インクの受容層の架橋密度を調整することによって導電性インク中に含まれる溶媒の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、より一層優れた細線性を備えたインク受容層を形成する観点から、前記したなかでも、架橋剤を組み合わせ使用することが好ましい。
【0071】
前記架橋剤としては、例えばイソシアネート化合物、グリシジル化合物、金属キレート化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物、ポリアミン化合物、アジリジン化合物、金属塩化合物等を使用することができる。また、前記架橋剤としては、ポリエチレンイミンやヒドラジン等を使用することもできる。
【0072】
前記架橋剤に使用可能なイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートや、それらを用いて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物や、それらとトリメチロールプロパン等とからなるアダクト体、前記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネート基含有ウレタン、及び、前記ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の一部または全部を、ケトオキシムやフェノール等を用いて封止したブロック化物等を使用することができる。前記ブロック化物を使用する場合には、架橋反応を進行させインク受理層を形成する際に、加熱等を行い、前記ケトオキシム等のブロック化剤を除去することが好ましい。
【0073】
前記イソシアネート化合物としては、なかでもヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等とのアダクト体を使用することが好ましい。
前記イソシアネート化合物としては、例えば、水分散型ポリイソシアネート「バーノックDNW−5000、DNW−6000、DNW−6500」(DIC(株)製)を使用することができる。
【0074】
また、前記架橋剤に使用可能なグリシジル化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類;1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン等のポリグリシジルアミン類;多価カルボン酸[蓚酸、アジピン酸、ブタントリカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンゼントリカルボン酸等]のポリグリシジルエステル類;;ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物のエチレンオキシド付加物等のビスフェノールA系エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂、;側鎖にエポキシ基を有する各種ビニル系(共)重合体等を使用することができる。
【0075】
また、前記グリシジル化合物としては、前記したものの他に例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシランもしくはγ−グリシドキシプロピルトリイソプロぺニルオキシシラン等のグリシジル基含有シラン化合物を使用することもできる。
前記グリシジル化合物としては、例えば、「デナコールEX−614B、EX−832、EX−841」(ナガセケムテックス(株)製)、「テトラッドC、テトラッドX」(三菱ガス化学(株)製)を使用することができる。
【0076】
また、前記架橋剤に使用可能な金属キレート化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトン配位化合物、アセト酢酸エステル配位化合物等を使用することができる。
【0077】
また、前記架橋剤に使用可能なオキサゾリン化合物としては、例えば2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等を使用することができる。
【0078】
また、前記オキサゾリン化合物としては、例えば下記付加重合性オキサゾリンと、必要に応じてその他の単量体とを組み合わせ重合して得られるオキサゾリン基含有重合体を使用することもできる。
【0079】
前記付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0080】
また、前記架橋剤に使用可能なカルボジイミド化合物としては、例えばポリ[フェニレンビス(ジメチルメチレン)カルボジイミド]やポリ(メチル−1,3−フェニレンカルボジイミド)等を使用することができる。市販品では、カルボジライトV−01、V−02、V−03、V−04、V−05、V−06(日清紡(株)製)、UCARLINK XL−29SE、XL−29MP(ユニオンカーバイド(株)製)等を使用することができる。
【0081】
また、前記架橋剤に使用可能なメラミン化合物としては、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキレルオキシメチルメラミンあるいはこれらの2種を組み合わせた混合エーテル化メラミン等を使用することができる。
【0082】
また、前記架橋剤に使用可能なアジリジン化合物としては、例えば2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等を使用することができる。
【0083】
また、前記架橋剤に使用可能なポリアミン化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン等の3級アミンを使用することもできる。
【0084】
また、前記架橋剤として使用可能な金属塩化合物としては、例えば硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物等のアルミニウム含有化合物、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等の水溶性金属塩を使用することができる。
【0085】
前記架橋剤としては、同一または異なる2種以上の架橋性官能基を2個以上有するものであることが好ましく、2個〜4個有するものであることがより好ましい。
【0086】
前記架橋剤を使用する場合、前記ビニル重合体(A)として、前記架橋剤の有する架橋性官能基と反応しうる基を有するものを使用することが好ましい。具体的には、前記イソシアネート化合物を使用する場合には、前記ビニル重合体(A)として水酸基含有ビニル重合体を使用することが好ましく、前記グリシジル化合物を使用する場合には、前記ビニル重合体(A)としてカルボキシル基含有ビニル重合体を使用することが好ましく、前記金属キレートを使用する場合には、前記ビニル単量体としてカルボキシル基含有ビニル重合体を使用することが好ましい。
【0087】
前記架橋剤は、前記ビニル重合体(A)100質量部に対して0.01質量%〜60質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1質量%〜50質量%の範囲で使用することが、前記溶出率[N]を10質量%〜90質量%の範囲に調整することによって、細線等の印刷部のにじみを引き起こすことなく、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線性を付与し、導電性インクとインク受容層との密着性、及び、前記インク受容層と前記した様々な種類の支持体との密着性に優れた導電性インク受容層を形成できるため好ましい。
【0088】
また、前記架橋剤は、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を支持体表面に塗工又は含浸する前に、予め添加して使用することが好ましい。
【0089】
また、前記添加剤としては、無機粒子等の各種充填材を使用することもできる。しかし、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物としては、前記充填材等の使用量はできるだけ少ないことが好ましく、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物の全量に対して5質量%以下であることがより好ましい。
【0090】
前記添加剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定しないが、導電性インク受容層形成用樹脂組成物中の固形分の全量に対して0.01質量%〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0091】
また、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物としては、前記した添加剤の他に、溶剤溶解性または溶剤分散性の熱硬化性樹脂、例えば、ポリビニルアルコール樹脂やフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等を混和して使用することもできる。
【0092】
特に、前記導電性インクとして、銀等の導電性物質が水性媒体中に分散等したものを使用する場合には水性媒体の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、より一層優れた細線性を備えたインク受容層を形成することを目的として、前記ビニル重合体(A)等とともに、ポリビニルアルコール樹脂を組み合わせた導電性インク受容層形成用樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0093】
前記ポリビニルアルコール樹脂としては、一般に、酢酸ビニルポリマーのアセチル基部位を、水酸化ナトリウム等の強塩基で加水分解し水酸基にすることによって得られるものを使用することができる。
【0094】
前記ポリビニルアルコール樹脂としては、水性導電性インクに対する優れた細線性が発現し、耐水性の低下を防止するうえで、500〜4000の範囲の重合度を有するものを使用することが好ましい。
【0095】
また、前記ポリビニルアルコール樹脂としては、水性導電性インクに対する優れた細線性を付与する観点から、80モル%〜99モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコール樹脂を使用することもできる。
【0096】
前記ポリビニルアルコール樹脂は、水性導電性インクに対する優れた細線性を付与し、耐水性の低下を防止する観点から、前記ビニル重合体(A)の全量に対して0.01質量%〜70質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0097】
前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて形成可能な導電性インク受容層は、それを構成するビニル重合体(A)が、導電性インク中に含まれる溶媒によって適度に溶解され、前記溶媒を吸収することで、導電性インク中に含まれる金属等の導電性物質をインク受容層表面に精度よく定着することができるため、にじみのない導電性パターン等の印刷物を得ることが可能なものである。また、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物は、従来知られる多孔質タイプのインク受容層と比較して透明なインク受容層を形成することが可能である。
【0098】
次に、本発明の導電性インク受容基材及び回路形成用基板について説明する。
【0099】
本発明の導電性インク受容基材は、各種支持体の表面の一部または全部に、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて形成された導電性インク受容層を有するものである。前記導電性インク受容層は、支持体上に積層されていてもよいが、前記導電性インク受容層の一部が支持体に含浸していてもよい。また、前記導電性インク受容層は、支持体の片面または両面のいずれに設けられていてもよい。
【0100】
前記導電性インク受容層としては、導電性インク中に含まれる溶媒の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、優れた細線性を備えたインク受容層を形成するうえで、導電性インク受容層を25℃のテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した場合に、前記導電性インク受容層からテトラヒドロフラン(THF)中に溶出した導電性インク受容層を構成する成分の質量割合である溶出率[N]が、10質量%〜90質量%の範囲であることが好ましく、20質量%〜70質量%の範囲であることが、にじみがなく細線性に優れた導電性インク受容層の形成するうえでより好ましい。
【0101】
具体的な求め方を以下に示す。本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて縦3cm、横3cm及び厚さ150μmの導電性インク受容層フィルムを作製し、その質量(X)を測定する。次いで、該導電性インク受容層フィルムを25℃に調整したテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランに溶解しなかった導電性インク受容層フィルムの残渣を300メッシュ金網で濾過することで分離し、前記残渣を108℃で1時間、乾燥したものの質量(Y)を測定する。次いで、前記質量(X)及び(Y)の値を用い、[((X)−(Y))/(X)]×100の式に基づいて算出した値が、本発明で言う溶出率[N]である。
【0102】
前記導電性インク受容基材は、例えば銀インク等を用いた電子回路の形成、有機太陽電池や電子書籍端末、有機EL、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、RFID等を構成する各層や周辺配線の形成、プラズマディスプレイの電磁波シールドの配線等のプリンテッド・エレクトロニクス分野等でも好適にすることができる。
【0103】
本発明の導電性インク受容基材は、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物を、支持体の片面または両面に塗工、含浸させた後、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物中に含まれる水性媒体(B)を除去することによって、製造することができる。
【0104】
前記支持体としては、例えば、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、セルロースナノファイバー、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる支持体や、それらからなる多孔質の支持体、鋼板や銅等の金属からなる支持体等を使用することができる。
【0105】
なかでも、前記支持体としては、一般に、回路基板等の導電性パターンを形成する際の支持体として使用されることの多い、ポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる支持体を使用することが好ましい。
【0106】
また、前記支持体のうち、ポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリル樹脂やガラス等からなる基材は、一般に難付着性であるため、樹脂等が密着しにくい場合が多い。
【0107】
また、前記支持体としては、柔軟性が必要な用途等に使用される場合は、比較的柔軟で折り曲げ等が可能なものを使用することが、導電性パターンに柔軟性を付与し、折り曲げ可能な最終製品を得るうえで好ましい。具体的には、一軸延伸等することによって形成されたフィルムまたはシート状の支持体を使用することが好ましい。
【0108】
前記延伸フィルム等は、一般に、未延伸のものと比較して、樹脂等が密着しにくい場合がある。しかし、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物であれば、延伸したフィルムまたはシート状の支持体に対して良好な密着性を発現することができる。
【0109】
前記フィルムまたはシート状の支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムやポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0110】
前記支持体表面の一部または全部に、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物を塗工又は含浸する方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、インクジェット方式等を適用することができる。
【0111】
また、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を支持体表面の一部または全部に塗工または含浸した後、該樹脂組成物中に含まれうる水性媒体(B)を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、乾燥機を用いて乾燥させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ支持体に悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0112】
前記支持体表面への前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物の付着量は、導電性インク中に含まれる溶媒量や、導電性パターン等の厚み等を勘案し、支持体の面積に対して樹脂固形分として、0.5g/m〜60g/mの範囲であることが好ましく、導電性インクの吸収性と製造コストを勘案すると0.5g/m〜30g/mが特に好ましい。
【0113】
また、支持体表面への前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物の付着量を増加させることで、導電性インク受容基材の細線性をより一層向上させることができる。ただし、付着量が増加すると、導電性インク受容基材の風合いが若干硬くなる傾向があるため、例えば、折り曲げ可能な有機EL等の良好な柔軟性の求められる場合には、概ね0.5g/m〜30g/m程度の比較的薄めにすることが好ましい。一方、用途等によっては、概ね10g/m〜100g/m程度の比較的厚膜となる態様で使用してもよい。
【0114】
前記方法で得られた本発明の導電性インク受容基材は、前記したプリンティッドエレクトロニクス分野において、もっぱら導電性パターン等の形成に好適に使用できる。より具体的には、電子回路や集積回路等に使用される回路形成用基板に好適に使用することができる。
【0115】
前記した導電性インク受容基材や回路形成用基板には、導電性インクを用いて印刷を施すことができる。具体的には、前記導電性インク受容基材を構成する導電性インク受容層上に、導電性インクを用いて印刷を施し、次いで、焼成工程を経ることによって、前記導電性インク受容基材上に、例えば導電性インク中に含まれる銀等の金属からなる導電性物質からなる導電性パターンを形成することができる。
【0116】
前記導電性インクとしては、例えば導電性物質と溶媒と、必要に応じて分散剤等の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0117】
前記導電性物質としては、遷移金属やその化合物を使用することができる。なかでもイオン性の遷移金属を使用することが好ましく、例えば銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等の遷移金属を使用することが好ましく、銀、金、銅等を使用することが、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンを形成できるのでより好ましい。
【0118】
前記導電性物質としては、概ね1nm〜50nm程度の平均粒径を有する粒子状のものを使用することが好ましい。なお、前記平均粒径は、中心粒径(D50)を意味するものであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定した場合の値を示す。
【0119】
前記金属等の導電性物質は、前記導電性インクの全量に対して10質量%〜60質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0120】
前記導電性インクに使用する溶媒は、各種有機溶剤をはじめ、水等の水性媒体を使用することができる。
【0121】
本発明では、前記導電性インクの溶媒として主に有機溶剤を含む溶剤系導電性インクや、前記溶媒として主に水を含む水性導電性インク、更には、前記有機溶剤及び水の両方を含む導電性インクを適宜選択し使用することができる。
【0122】
なかでも、形成する導電性パターン等の細線性や密着性等を向上する観点から、前記導電性インクの溶媒として前記有機溶剤及び水の両方を含む導電性インクや、前記導電性インクの溶媒として主に有機溶剤を含む溶剤系導電性インクを使用することが好ましく、前記導電性インクの溶媒として主に有機溶剤を含む溶剤系導電性インクを使用することがより好ましい。
【0123】
特に、本発明の導電性インク受容基材の有するインク受容層は、もっぱら前記有機溶剤として、極性溶剤を含む導電性インクと組み合わせ使用することが、前記極性溶剤によって引き起こされうるにじみや密着性の低下等を十分に防止でき、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線性を実現することができるため好ましい。
【0124】
前記溶剤系の導電性インクに使用する溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のアルコール系溶剤、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、グリセリンをはじめとする極性溶剤を使用することができる。
【0125】
前記極性溶剤のなかでも、グリコールエーテル系溶剤を含む導電性インクは、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物によって形成される受容層との組み合わせで使用することが、前記グリコールエーテル系溶剤によって引き起こされうるにじみや密着性の低下等を防止し、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線性を実現するうえで好適である。
【0126】
前記グリコールエーテル系溶剤のなかでも、特にジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等を使用することがより好ましい。
【0127】
また、前記溶剤系導電性インクは、物性調整のため、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤を組み合わせ使用することができる。その他、酢酸エチル、酢酸ブチル、3―メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート等のエステル系溶剤、トルエン等の炭化水素系溶剤、特に炭素数が8以上の炭化水素系溶剤、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロオクタン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラリン、トリメチルベンゼンシクロヘキサン等の非極性溶剤を、必要に応じて組み合わせ使用することもできる。更に、混合溶剤であるミネラルスピリット及びソルベントナフサ等の溶媒を併用することもできる。
【0128】
しかし、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて形成されるインク受容層は、特に極性溶剤を含む導電性インクと組み合わせ使用することが好ましいから、前記非極性溶剤は、前記導電性インク中に含まれる溶媒の全量に対して0質量%〜40質量%であることがより好ましい。
【0129】
また、前記導電性インクの溶媒に使用可能な水性媒体としては、前記水性媒体(B)と同様のものを使用することができ、例えば水のみを使用してもよいし、或いは、水と水溶性溶剤の混合溶液を使用してもよい。前記水溶性溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤を使用することができる。
【0130】
なお、前記水性媒体を溶媒とする導電性インクを使用する場合には、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物として、前記ビニル重合体(A)等とともにポリビニルアルコール樹脂等を含むものを使用することが、水性媒体の吸収性をコントロールし、その結果、にじみを引き起こすことなく、より一層優れた細線性を備えたインク受容層を形成するという理由により好ましい。
【0131】
前記導電性インク中に含まれる溶媒は、導電性インクの全量に対して40質量%〜90質量%の範囲で含まれることが好ましい。また、前記極性溶剤は、前記溶媒の全量に対して40質量%〜100質量%含まれることが好ましい。
【0132】
また、前記導電性インクには、前記金属及び溶媒の他に、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。
【0133】
前記添加剤としては、例えば前記金属の前記溶媒中における分散性を向上する観点から、分散剤を使用することができる。
【0134】
前記分散剤としては、例えばポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、またポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポリビニルアルコール、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、或いは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤等を使用することができる。なお、前記ポリビニルアルコールは、溶剤系の導電性インクを使用する場合であっても、分散剤として使用してもよい。
【0135】
前記した導電性インク受容基材等に、前記導電性インクを用いて印刷する方法としては、例えばインクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等が挙げられる。
【0136】
なかでも、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる概ね0.01μm〜100μm程度の細線を印刷する場合には、インクジェット印刷法を採用することが好ましい。
【0137】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを使用することができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)や、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP-2831(冨士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0138】
前記導電性インク受容基材上に、前記した方法で印刷の施された印刷物は、前記導電性インク中に含まれる金属間を密着し接合することで導電性を付与する観点から、焼成することが好ましい。
【0139】
前記焼成は、概ね80℃〜300℃の範囲で、概ね2分〜200分程度行うことが好ましい。前記焼成は大気中で行っても良いが、前記金属の酸化を防止する観点から、焼成工程の一部または全部を還元雰囲気下で行っても良い。
【0140】
また、前記焼成工程は、例えばオーブンや熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉等を用いて行うことができる。
【0141】
前記焼成工程を経ることによって得られた印刷物の表面には、導電性インク中に含まれる金属によって導電性パターンが形成される。かかる導電性パターンは、各種電気製品等の回路基板や集積回路基板等に使用することができる。
【0142】
以上のように、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて形成された導電性インク受容層を有する導電性インク受容基材等に対して、導電性インクを用いて印刷することによって得られた印刷物は、高温または高湿度環境下で使用された場合であっても、導電性インクの剥離や導電性パターンの断線等を引き起こさないレベルの耐熱性や耐水性を有し、かつ、にじみを引き起こすことなく、電子回路等の高密度化等の実現に供しうるレベルの細線を形成することが可能である。
【0143】
したがって、前記印刷物は、例えば、銀インク等を用いた電子回路の形成、有機太陽電池や電子書籍端末、有機EL、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、RFID等を構成する各層や周辺配線の形成、プラズマディスプレイの電磁波シールドの配線等を製造する際の導電性パターン、より具体的には回路基板の形成に好適に使用することが可能である。
【実施例】
【0144】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0145】
[ビニル重合体(A)のガラス転移温度と溶出率の測定に使用するフィルムの作製方法]
厚紙で囲いをしたポリプロピレンフィルム上に乾燥後の膜厚が150μmとなるようにビニル重合体(A)及び水性媒体を含む組成物を流し入れ、温度23℃、湿度65%の状況下で24時間乾燥した。乾燥後、150℃で5分間加熱し、前記ポリプロピレンフィルムから剥離することによって、ビニル重合体(A)からなるフィルムを作製した。得られたフィルムはガラス転移温度と溶出率の測定に使用した。
【0146】
[ガラス転移温度(実測Tg)の測定方法]
前記方法で得られたフィルムの10mgを直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セルに秤取し、TAインスツルメント社製のDSC Q100示差走査型熱量計を用い、JIS K7121に準拠し測定した。
【0147】
[ビニル重合体(A)の溶出率[M]の測定方法]
上記で得たビニル重合体(A)からなるフィルムを縦3cm、横3cmに切りとり、質量(X)を測定した。次いで、該フィルムを25℃に調整した50mlのテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランに溶解しなかったフィルムの残渣(不溶解分)を300メッシュ金網で濾過することにより、テトラヒドロフランから分離した。前記分離して得た残渣(不溶解分)を108℃で1時間、乾燥したものの質量(Y)を測定した。
【0148】
次いで、前記質量(X)及び(Y)の値を用い、[((X)−(Y))/(X)]×100の式に基づいて、溶出率[M]を算出した。
【0149】
[導電性インク受容層の溶出率[N]の測定に使用する導電性インク受容層フィルムの作製方法]
厚紙で囲いをしたポリプロピレンフィルム上に乾燥後の膜厚が150μmとなるように、実施例や比較例で得られた導電性インク受容層形成用樹脂組成物を流し入れ、温度23℃、湿度65%の状況下で24時間乾燥した。乾燥後、150℃で5分間加熱し、前記ポリプロピレンフィルムから剥離することによって、導電性インク受容層からなるフィルムを作製した。得られた導電性インク受容層からなるフィルムは溶出率の測定に使用した。
【0150】
[導電性インク受容層の溶出率[N]の測定方法]
上記で得た導電性インク受容層からなるフィルムを縦3cm、横3cmに切りとり、質量(X)を測定した。次いで、該フィルムを25℃に調整した50mlのテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した後、テトラヒドロフランに溶解しなかった導電性インク受容層からなるフィルムの残渣(不溶解分)を300メッシュ金網で濾過することにより、テトラヒドロフランから分離した。前記分離して得た残渣(不溶解分)を108℃で1時間、乾燥したものの質量(Y)を測定した。
【0151】
次いで、前記質量(X)及び(Y)の値を用い、[((X)−(Y))/(X)]×100の式に基づいて、溶出率を算出した。
【0152】
実施例1<導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)の調製及びそれを用いた導電性インク受容基材(II−1)の作製>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水115質量部、ラテムルE−118B(花王(株)製:有効成分25質量%)4質量部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。
【0153】
撹拌下、反応容器中にメタクリル酸メチル60.0質量部、カルボキシル基含有ビニル単量体としてメタクリル酸1.0質量部、アミド基含有ビニル単量体としてアクリルアミド2.0質量部、アクリル酸ブチル37.0質量部からなるビニル単量体混合物とアクアロンKH−1025(第一工業製薬(株)製:有効成分25質量%)4質量部と脱イオン水15質量部とを混合して得られたモノマープレエマルジョンの一部(5質量部)を添加し、続いて過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。
【0154】
次いで、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114質量部)と、過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1.0質量%)30質量部とを、各々別の滴下漏斗を使用して、180分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて60分間撹拌した。
【0155】
前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、反応容器中の水分散体のpHが8.5になるようにアンモニア水(有効成分10質量%)を使用した。
【0156】
ついで、不揮発分が40.0質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、本発明の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)を得た。
【0157】
(インクジェット記録媒体の作製)
前記で得た導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)を、乾燥膜厚が3μmになるように、下記(i)〜(iv)で示される4種類の基材の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥することによって、各基材上にインク受理層の形成された4種類の導電性インク受容基材(II−1)を得た。
【0158】
[支持体]
(i)PET;ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製 コスモシャインA4300,厚み50μm)
(ii)PI;ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製Kapton200H,厚み50μm)
(iii)GL;ガラス:ガラス板(株式会社エンジニアリングテストサービス製ガラスJIS R3202,厚み2mm)
(iv)PEN;ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製テオネックスQ51,厚み50μm)
【0159】
実施例2〜9 <導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−2)〜(I−9)の調製及びそれらを用いた導電性インク受容基材(II−2)〜(II−9)の作製>
ビニル単量体混合物の組成を下記表1または2に記載の組成にそれぞれ変更すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、不揮発分40質量%の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−2)〜(I−9)を調製した。
【0160】
また、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)の代わりに、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−2)〜(I−9)をそれぞれ使用すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、支持体の異なる4種類の導電性インク受容基材(II−2)〜(II−9)を作製した。
【0161】
実施例10<導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−10)の調製及びそれを用いた導電性インク受容基材(II−10)の作製>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水115質量部、ラテムルE−118B(花王(株)製:有効成分25質量%)4質量部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。
【0162】
撹拌下、反応容器中にメタクリル酸メチル55.0質量部、カルボキシル基含有ビニル単量体としてメタクリル酸1.0質量部、アミド基含有ビニル単量体としてアクリルアミド2.0質量部、アクリル酸ブチル37.0質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル5.0質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部からなるビニル単量体混合物とアクアロンKH−1025(第一工業製薬(株)製:有効成分25質量%)4質量部と脱イオン水15質量部とを混合して得られたモノマープレエマルジョンの一部(5質量部)を添加し、続いて過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。
【0163】
次いで、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114質量部)と、過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1.0質量%)30質量部とを、各々別の滴下漏斗を使用して、180分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて60分間撹拌した。
【0164】
前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、反応容器中の水分散体のpHが8.5になるようにアンモニア水(有効成分10質量%)を使用した。
【0165】
ついで、不揮発分が40.0質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、ビニル重合体と水とを含む混合物(不揮発分40質量%)を得た。
【0166】
次いで、前記混合物の200質量部と、水分散型ポリイソシアネート架橋剤[バーノックDNW−5000(DIC(株)製):NCO含有量13.5質量%]4.3質量部と、脱イオン水を混合することによって、不揮発分40質量%の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−10)を得た。
【0167】
また、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)の代わりに、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−10)をそれぞれ使用すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、支持体の異なる4種類の導電性インク受容基材(II−10)を作製した。
【0168】
実施例11<導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−11)の調製及びそれを用いた導電性インク受容基材(II−11)の作製>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水115質量部、ラテムルE−118B(花王(株)製:有効成分25質量%)4質量部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。
【0169】
撹拌下、反応容器中にメタクリル酸メチル60.0質量部、カルボキシル基含有ビニル単量体としてメタクリル酸1.0質量部、アミド基含有ビニル単量体としてアクリルアミド2.0質量部、アクリル酸ブチル37.0質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部からなるビニル単量体混合物とアクアロンKH−1025(第一工業製薬(株)製:有効成分25質量%)4質量部と脱イオン水15質量部とを混合して得られたモノマープレエマルジョンの一部(5質量部)を添加し、続いて過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、反応容器内温度を75℃に保ちながら60分間で重合させた。
【0170】
次いで、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114質量部)と、過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1.0質量%)30質量部とを、各々別の滴下漏斗を使用して、180分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて60分間撹拌した。
【0171】
前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、反応容器中の水分散体のpHが8.5になるようにアンモニア水(有効成分10質量%)を使用した。
【0172】
ついで、不揮発分が40.0質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、ビニル重合体と水とを含む混合物(不揮発分40質量%)を得た。
【0173】
次いで、前記混合物の200質量部と、エポキシ系架橋剤[デナコールEX−614B(ナガセケムテックス(株)製):エポキシ当量=173g/eq])1.6質量部と、脱イオン水を混合することによって、不揮発分40質量%の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−11)を得た。
【0174】
また、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)の代わりに、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−11)をそれぞれ使用すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、支持体の異なる4種類の導電性インク受容基材(II−11)を作製した。
【0175】
比較例1〜6<比較用導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I’−1)〜(I’−6)の調製及びそれを用いた導電性インク受容基材(II’−1)〜(II’−6)の作製>
ビニル単量体混合物の組成を下記表3に記載の組成にそれぞれ変更すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、不揮発分が40質量%である比較用の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I’−1)〜(I’−6)を調製した。
【0176】
また、前記導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I−1)の代わりに、前記で得た比較用の導電性インク受容層形成用樹脂組成物(I’−1)〜(I’−6)をそれぞれ使用すること以外は、実施例1記載の方法と同様の方法で、支持体の異なる4種類の導電性インク受容基材(II’−1)〜(II’−6)を作製した。
【0177】
[インクの調製方法]
[インクジェット印刷用ナノ銀インク1の調製]
ジエチレングリコールジエチルエーテル65質量部と、γ−ブチロラクトン18質量部と、テトラエチレングリコールジメチルエーテル15質量部と、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル2質量部とからなる混合溶媒に、平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによってインクジェット印刷用ナノ銀インク1を調製した。
【0178】
[インクジェット印刷用ナノ銀インク2の調製]
ブチルセロソルブアセテート80質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16質量部と、アノン4質量部との混合溶媒に、平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによってインクジェット印刷用ナノ銀インク2を調製した。
【0179】
[インクジェット印刷用ナノ銀インク3の調製]
テトラドデカンからなる溶媒に平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによってインクジェット印刷用ナノ銀インク3を調製した。
【0180】
[スクリーン印刷用銀ペーストの調製]
銀 ペースト(ハリマ化成(株)製 NPS)を用いた。
【0181】
[インクジェット印刷法による印刷]
前記インクジェット印刷用ナノ銀インク1〜3を、それぞれ、前記支持体(i)〜(iv)を用いて得られた各4種の導電性インク受容基材表面に、インクジェットプリンター(コニカミノルタIJ(株)製インクジェット試験機EB100、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pl)を用い、線幅100μm、膜厚0.5μmの直線を約1cm印刷し、次いで120℃の条件下で1時間乾燥することによって、それぞれ印刷物(導電性パターン)を得た。
【0182】
[スクリーン印刷法による印刷]
前記スクリーン印刷用銀ペーストを、それぞれ、前記支持体(i)〜(iv)を用いて得られた各4種の導電性インク受容基材表面に、メタルメッシュ250のスクリーン版を用いて、線幅50μm、膜厚1μmの直線を約1cm印刷し、次いで120℃の条件下で1時間乾燥することによって印刷物(導電性パターン)を得た。
【0183】
[細線性(線のにじみの有無)の評価方法]
前記した方法で得られた印刷物(導電性パターン)表面に形成された印刷部(線部)全体を、光学顕微鏡((株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−100)を用いて観察し、該印刷部のにじみの有無を確認した。
【0184】
具体的には、印刷部(線部)の外縁部ににじみが見られず、印刷部と非印刷部との境界が明確であり、線部の外縁部と中央部とで高さに差が見られず線部全体として平滑であるものを「A」、印刷部(線部)の外縁部のごく一部に、若干のにじみが確認できたものの、全体として印刷部と非印刷部との境界が明確であり、線部全体が平滑であるものを「B」、印刷部(線部)の外縁部の約1/3以内の範囲に、若干のにじみが確認でき、その部分において印刷部と非印刷部との境界が一部で不明確であるものの、線部全体は平滑であり使用可能なレベルであるものを「C」、印刷部(線部)の外縁部の約1/3〜1/2程度の範囲でにじみが確認でき、その部分において印刷部と非印刷部との境界が一部で不明確となり、線部の外縁部と中央部とで平滑でなかったものを「D」、印刷部(線部)の外縁部の約1/2以上の範囲でにじみが確認でき、その部分において印刷部と非印刷部との境界が一部で不明確となり、線部の外縁部と中央部とで平滑でなかったものを「E」と評価した。
【0185】
[通電性の評価方法]
前記インクジェット印刷用ナノ銀インク1を、それぞれ、前記支持体(i)及び(ii)を用いて得られた2種の導電性インク受容基材表面に、インクジェットプリンター(コニカミノルタIJ(株)製インクジェット試験機EB100、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pl)を用い、縦3cm、横1cmの長方形の範囲(面積)を、膜厚0.5μmで印刷し、次いで120℃の条件下で1時間乾燥することによって、それぞれ印刷物(導電性パターン)を得た。
【0186】
前記した方法で得られた印刷物(導電性パターン)表面に形成された縦3cm、横1cmの長方形の範囲のベタ印刷部の体積抵抗率を、ロレスタ指針計(三菱化学(株)製MCP−T610)を用いて測定した。体積抵抗率が5×10−6Ω・cm未満であったものを「A」、5×10−6以上9×10−6Ω・cm未満であり十分使用可能なレベルであるものを「B」、9×10−6以上5×10−5Ω・cm未満であって使用可能であるレベルのものを「C」、5×10−5以上9×10−5Ω・cm未満であるものを「D」、9×10−5以上であって実用上使用することが困難であるものを「E」と評価した。
【0187】
[支持体とインク受容層と導電性インクとの密着性の評価方法]
[インクジェット印刷法による印刷]
前記インクジェット印刷用ナノ銀インク1〜3を、それぞれ、前記支持体(i)〜(iv)を用いて得られた4種の導電性インク受容基材表面に、インクジェットプリンター(コニカミノルタIJ(株)製インクジェット試験機EB100、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pl)を用い、線幅100μm、膜厚0.5μmの直線を約1cm印刷し、次いで120℃の条件下で1時間乾燥することによって、それぞれ印刷物(導電性パターン)を得た。
【0188】
[スクリーン印刷法による印刷]
また、前記スクリーン印刷用銀ペーストを、それぞれ、前記支持体(i)〜(iv)を用いて得られた4種の導電性インク受容基材表面に、メタルメッシュ250のスクリーン版を用いて、線幅50μm、膜厚1μmの直線を約1cm印刷し、次いで120℃の条件下で1時間乾燥することによって印刷物(導電性パターン)を得た。
【0189】
前記で得られた印刷物(導電性パターン)表面の印刷部(線部)にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製,CT405AP−24,24mm)を指で圧着した後、前記セロハン粘着テープを剥離した。剥離したセロハン粘着テープの粘着面を目視で観察し、その付着物の有無に基づいて前記密着性を評価した。
【0190】
前記剥離したセロハン粘着テープの粘着面に、印刷物(導電性パターン)を構成する導電性インク及びインク受容層が全く付着していなかったものを「A」、インク受容層のごく一部の付着がみられたものの、導電性インクの付着は見られず、印刷部(線部)の断線を生じていないものを「B」、導電性インク及びインク受容層のごく一部の付着がみられたものの、印刷部(線部)の断線を生じていないものを「C」、印刷部(線部)の面積の約30%〜50%の範囲のインクの、前記粘着面への付着がみられ、印刷部(線部)の断線が生じていたものを「D」、印刷部(線部)の面積の約50%以上の範囲のインクの前記粘着面への付着がみられ、印刷部(線部)の断線が生じていたものを「E」と評価した。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
表1〜3中の略称の説明
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
AM :アクリルアミド
BA :アクリル酸ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
4HBA;アクリル酸4−ヒドロキシブチル
TBMA:メタクリル酸t−ブチル
EMA :メタクリル酸エチル
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(架橋性官能基含有ビニル単量体)
L−SH:ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)
架橋剤1;水分散型ポリイソシアネート架橋剤[バーノックDNW−5000(DIC(株)製):NCO含有量13.5質量%]
架橋剤2;エポキシ系架橋剤[デナコールEX−614B(ナガセケムテックス(株)製):エポキシ当量=173g/eq])
Tg:ガラス転移温度
【0195】
【表4】

【0196】
【表5】

【0197】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性インクの受容層を形成する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、ならびに、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られる10℃〜70℃のガラス転移温度を有するビニル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するものであることを特徴とする導電性インク受容層形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニル重合体(A)は、前記ビニル重合体(A)からなるフィルムを25℃のテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した場合に、該フィルムからテトラヒドロフラン中に溶出したビニル重合体(A)の質量割合である溶出率[M]が10質量%〜90質量%の範囲となるものである、請求項1に記載の導電性インク受容層形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビニル重合体(A)が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%、及び、炭素原子数2個〜8個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a4)を10質量%〜50質量%を含むビニル単量体混合物を重合して得られるものである、請求項1に記載の導電性インク受容層形成用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニル重合体(A)が、メタクリル酸メチル(a1)を30質量%〜70質量%、カルボキシル基含有ビニル単量体(a2)及びアミド基含有ビニル単量体(a3)からなる群より選ばれる1種以上を合計0.2質量%〜5.0質量%、炭素原子数2個〜8個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a4)を10質量%〜50質量%、及び、架橋性官能基含有ビニル単量体を0質量%〜10質量%を含むビニル単量体混合物を重合して得られるものである、請求項1に記載の導電性インク受容層形成用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニル重合体(A)が、前記ビニル単量体混合物を、前記ビニル単量体混合物の全量に対して0質量%〜1.0質量%の連鎖移動剤と、水性媒体(B)との存在下で乳化重合して得られるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性インク受容層形成用樹脂組成物。
【請求項6】
支持体表面の一部または全部に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性インク受容層形成用樹脂組成物を用いて形成された導電性インク受容層を有することを特徴とする導電性インク受容基材。
【請求項7】
前記支持体が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレナフタレート、ガラス及びセルロースナノファイバーからなる群より選ばれる1種以上である、請求項6に記載の導電性インク受容基材。
【請求項8】
前記導電性インク受容層は、前記導電性インク受容層を25℃のテトラヒドロフラン中に24時間浸漬した場合に、前記導電性インク受容層からテトラヒドロフラン中に溶出した前記導電性インク受容層を構成する成分の質量割合である溶出率[N]が10質量%〜90質量%の範囲となるものである、請求項6に記載の導電性インク受容基材。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性インク受容基材からなる回路形成用基板。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性インク受容基材を構成する導電性インク受容層上に、導電性インクを用いて印刷の施された印刷物。
【請求項11】
前記印刷がインクジェット印刷方式によってなされたものである、請求項10に記載の印刷物。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性インク受容基材を構成する導電性インク受容層上に、導電性インクを用いて印刷の施された導電性パターン。
【請求項13】
請求項9に記載の回路形成用基板を構成する導電性インク受容層上に、導電性インクによって印刷の施された回路基板。

【公開番号】特開2012−232434(P2012−232434A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101126(P2011−101126)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】