説明

導電性インク組成物

【課題】導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れる導電性インク組成物を提供する。
【解決手段】水性媒体中に、硝酸銀等の水溶性銀塩をデキストリン等の多糖類からなる天然ポリマーの存在下で水酸化カリウム等の塩基性化合物を加えて還元した後にセルロース類を分解する酵素である、セルラーゼ、アラパナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ等で酵素処理して得られた銀超微粒子と、アルギン酸およびその塩から選ばれる化合物を含有する導電性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀超微粒子を含有する導電性インク組成物に関し、詳しくは導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れる導電性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一次粒子径が1μm以下の銀超微粒子、特に一次粒子径が100nm以下の銀超微粒子は、極めて高い表面エネルギーによる融点低下や、局在化表面プラズモンによる電場増強効果等の特徴を有することから、導電性材料、表面増強ラマン散乱分光、太陽電池、光輝性塗料、色材等の様々な分野での応用が期待されており、特に導電性材料としての使用検討が進んでいる。この銀超微粒子の製造方法は、乾式法と湿式法に大別され、水および/または有機溶媒に分散された銀超微粒子分散液の形で使用される。
【0003】
導電性材料として使用する場合、焼結温度は低いほど使用可能な基材の選択肢が増え、使用エネルギーも低減することが可能であるため好ましく、例えば、特開平3−34211号公報には、乾式法であるガス中蒸発法により製造された銀を含む各種金属超微粒子を高沸点溶媒中に分散した金属超微粒子分散液の製造方法が開示されており、また特開2004−273205号公報には、ガス中蒸発法により合成された銀超微粒子を原料に用い、表面をアミン化合物によって被覆した銀超微粒子を高沸点溶媒中に分散した銀超微粒子分散液の製造方法が開示されている。しかしながらこの方法では金属蒸気を作製するための特別な装置が必要であるため製造装置が高価であり、更に金属蒸発のためにエネルギーが多量に必要であるという問題を有していた。
【0004】
湿式法による銀超微粒子の製造方法としてはCarey Leaが1889年に発表した方法(非特許文献1、Am.J.Sci.,vol.37,pp.491,1889)が古くから知られており、また特公平1−28084号公報(特許文献1)、特開平10−66861号公報(特許文献2)、特開2003−103158号公報(特許文献3)、特開2006−328472号公報(特許文献4)等には、水性媒体中に、保護コロイドあるいは分散剤として作用する水溶性高分子化合物と銀イオンを含有させ、還元剤により該銀イオンを還元し銀超微粒子を製造する方法が開示されている。また、湿式法においては酵素処理により上記した保護コロイドあるいは分散剤として作用する水溶性高分子化合物を分解することは従来から知られており、例えば特開2005−89597号公報(特許文献5)には酵素処理により焼成温度の低下が可能であることが記載され、特開2007−39765号公報(特許文献6)には金属超微粒子の収率を向上させることが可能であることが記載されている。
【0005】
上記したような製造方法で得られた銀超微粒子は、例えば導体配線や導電膜等の導電性材料を製造する場合には、スピンコート塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布法等の各種印刷方法や塗布方法によって、基材上の全面あるいは一部に付与される。特にインクジェット印刷法はノズルからインクを吐出することで基材上に簡単に描画ができることから近年注目されており、インクジェット印刷法としては、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等が知られている。
【0006】
このようなインクジェット印刷法に用いられる導電性インク組成物としては、分散媒として水を主体に含有する所謂水性インクや、分散媒としてシクロヘキサノンまたはメチルエチルケトンを主体に含有する溶剤系のインク組成物、パラフィン類、エーテル類、アルコール類などの溶剤を主体に含有する油性のインク組成物等が知られているが、臭気などの作業環境に与える影響等の理由から水性媒体の導電性インク組成物が好ましく利用される。また上記したインクジェット印刷法においては、用いられる導電性インク組成物の液性は非常に重要であり、中でも安定した吐出をさせるために必要な粘度として一般的に5mPa・s〜15mPa・sの粘度が必要とされている。しかしながら所望の粘度を有し、優れた導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れる水性媒体の導電性インク組成物を得ることは非常に困難であり、改善が求められていた。
【0007】
一方、特開2007−200775号公報(特許文献7)には、カルボキシル基および水酸基の少なくとも一方を有し、特定の比誘電率を有する分散媒により分散安定性が改善できることが記載される。また特開2001−155542号公報(特許文献8)には、特定の化合物と金属塩または金属錯体とガラスフリットを含有する導電性組成物に用いる増粘剤の一例としてアルギン酸塩が記載され、特許2011−73403号公報(特許文献9)には、特定の画像形成方法に用いるカーボンブラックを含有する導電性インクにアルギン酸塩を利用することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−28084号公報
【特許文献2】特開平10−66861号公報
【特許文献3】特開2003−103158号公報
【特許文献4】特開2006−328472号公報
【特許文献5】特開2005−89597号公報
【特許文献6】特開2007−39765号公報
【特許文献7】特開2007−200775号公報
【特許文献8】特開2001−155542号公報
【特許文献9】特開2011−73403号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Am.J.Sci.,vol.37,pp.491,1889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れた導電性インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1.水性媒体中に、水溶性銀塩を天然ポリマーの存在下で塩基性化合物を加えて還元した後に酵素処理して得られた銀超微粒子と、アルギン酸およびその塩から選ばれる化合物を含有する導電性インク組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れた導電性インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の導電性インク組成物が含有する、本発明における水性媒体とは、導電性インク組成物が含有する溶媒成分中に水のしめる割合が、少なくとも40質量%以上であることを意味し、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。水以外に含まれる溶媒としては、アルコール類、グリコール類、アセトン等の水と混和性の高い有機溶媒を例示することができる。
【0015】
本発明の導電性インク組成物が含有する銀超微粒子は、水溶性銀塩を天然ポリマーの存在下で塩基性化合物を加えて還元した後に酵素処理して得られる銀超微粒子であり、かかる還元反応は水性媒体中で行われることが好ましい。この水性媒体は、前述した本発明の導電性インク組成物が含有する水性媒体と同義である。また水溶性銀塩を天然ポリマーの存在下で塩基性化合物を加えて還元するとは、水性媒体中で水溶性銀塩が還元される際に、その水性媒体中に天然ポリマーが入っている(存在する)ことを意味し、例えば、水溶性銀塩と天然ポリマーが溶解された水性媒体に塩基性化合物を添加する方法、水溶性銀塩が溶解された水性媒体に対して天然ポリマーと塩基性化合物をそれぞれ添加していく方法、天然ポリマーが溶解された水性媒体中に、水溶性銀塩と塩基性化合物をそれぞれ添加していく方法等を例示することができる。なおこれらの方法において水性媒体に添加していく成分は、別の水性媒体に溶解された状態で添加することが好ましい。また上記の水溶性銀塩の還元は還元される水溶性銀塩の50質量%以上が天然ポリマーの存在下で還元されることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0016】
本発明の銀超微粒子の製造に用いられる水溶性銀塩は、水に対する溶解度の高い硝酸銀、フッ化銀、過塩素酸銀が好ましく、工業用途として広く用いられている硝酸銀が特に好ましい。また、水を主体に含有する水性媒体中に含有せしめる水溶性銀塩の量は、該水性媒体中に水溶性銀塩、天然ポリマー、塩基性化合物を含有せしめた混合物1kgに対して、銀イオンに換算して0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上であることが好ましい。なお上限は、水溶性銀塩および塩基性化合物の溶解濃度の観点から2.8モル以下とすることが望ましい。
【0017】
本発明の銀超微粒子の製造方法に用いられる塩基性化合物としては、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、アンモニア水等の塩基性化合物を用いることができ、単独または併用して用いることができる。その中でも、上記の還元反応に用いる天然ポリマーに対する浸透のしやすさから、特に水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0018】
塩基性化合物の添加量は、水溶性銀塩と当量以上で添加することが好ましい。当量未満の場合、形成される銀超微粒子の量が減少し銀超微粒子の収率が低下する場合がある。上限は特にないが塩基性化合物の添加量を増やすと、反応後に得られる銀超微粒子を含有する分散液の総量が増加し生産性が低くなるため、2当量以下とすることが望ましい。
【0019】
上記した水溶性銀塩を還元する際に用いられる天然ポリマーとしては、ゼラチン、カゼイン、アルブミン等の蛋白質、澱粉、デキストリン等の多糖類、セルロースおよびその誘導体(例えばカルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、カラギーナン、フコイダン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸等の酵素で分解が可能な天然ポリマーを用いることが好ましく、中でも保護コロイドとしての作用と還元剤として作用の両方の効果が得られる澱粉、デキストリン等の多糖類を用いることが好ましい。
【0020】
天然ポリマーの添加量は、製造する銀超微粒子の粒径により変化するが、銀イオンに換算した水溶性銀塩1モルに対して1〜200gが好ましく、より好ましくは20〜100gである。
【0021】
本発明の導電性インク組成物が含有する銀超微粒子の製造において、還元剤としての作用が得られない天然ポリマーを用いる場合は、塩基性化合物と還元剤を併用して用いることが可能である。このようにして用いる還元剤としては、公知の銀イオンを銀に還元することができる還元剤から溶解度の高いものを選択すれば良く、銀塩写真用の現像試薬として知られるハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルフォネートカリウム塩、アスコルビン酸またはその塩、無電解鍍金の還元剤として知られる水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン化合物、ホルマリン、ホスフィン酸またはその塩、酒石酸またはその塩等を例示することができる。
【0022】
塩基性化合物と併用することができる還元剤の添加量は、銀超微粒子を生成できる量であれば特に限定する必要はないが、分散安定性の観点から銀イオンに換算した水溶性銀塩1モルに対して0.1モル〜5モルであることが好ましい。
【0023】
本発明において還元反応が終了した段階で用いる酵素としては、天然ポリマーの種類によって使い分けることが好ましい。例えば、蛋白質を分解する酵素としてはプロテアーゼ、コラゲナーゼ、レニン、カテプシン、ペプシン、フィシン、トロンビン等が挙げられ、澱粉等の分解する酵素としては、アミラーゼ、イソアミラーゼ、デキストラーゼ、グルコアミラーゼ等が挙げられ、セルロース類を分解する酵素としては、セルラーゼ、アラパナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ等が挙げられる。
【0024】
本発明での天然ポリマーは前述の通り、保護コロイドとしての作用と還元剤として作用の両方の効果が得られることから多糖類を用いることが好ましく、それに対する酵素としてはアミラーゼを用いることが好ましい。例えば天野エンザイム(株)よりビオザイムAやビオザイムF10SDとして市販されている各種α−アミラーゼを用いることができる。
【0025】
本発明の酵素処理としては還元反応が終了した後の銀超微粒子分散液を、酵素を使用するのに適したpH、温度に調整し、撹拌することが好ましい。例えばα−アミラーゼを用いる際には、pHを4〜10に、温度を20〜50℃に調整した後に30〜90分間撹拌することが好ましい。pHの調整には酢酸等のカルボン酸類や硝酸を用いることが好ましい。添加量は、用いる天然ポリマーの質量に対し0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0026】
本発明の酵素処理後の銀超微粒子分散液における天然ポリマーの残存量としては、酵素処理し精製した後に乾燥させた固形分として表すことができ、乾燥させた銀1質量部に対して天然ポリマーが0.3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.01質量部である。
【0027】
本発明の酵素処理を実施した銀超微粒子分散液は、遠心分離によって沈殿させ、上澄み液と分離し、精製することが好ましい。遠心分離の回数は2回以上実施することが好ましく、精製された銀超微粒子は固体で回収しても良く、水を加えて、再分散して回収しても良い。
【0028】
本発明の導電性インク組成物は、アルギン酸およびその塩から選ばれる化合物を含有する。アルギン酸およびその塩としては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等が例示でき、例えば、(株)キミカ製のキミカアルギンIL−2、IL−6、I−1、I−3、I−5、I−8等として市販されているものを入手し用いることもできる。使用量としては、導電性インク組成物の粘度が5mPa・s〜15mPa・sになるように調整する量であればよく、導電性インク組成物100質量%に対して0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.3質量%の量で含有することが好ましい。0.5質量%を超えると導電性が悪化してしまう場合があるため好ましくない。
【0029】
また、導電性インク組成物は、その他の添加剤として、界面活性剤を添加し表面張力の調整をしたり、高沸点溶媒を乾燥防止のために加えることができる。界面活性剤としてはアルキル硫酸ナトリウム類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム類、フッ素系界面活性剤等を例示することができる。界面活性剤の添加量としては導電性インク組成物100質量%に対して0.001〜0.5質量%が好ましい。また、乾燥を抑制するために高沸点溶媒(例えばエチレングリコールやプロピレングリコール等)を添加してもよく、高沸点溶媒の添加量としては、導電性インク組成物の水性媒体を100質量%と考えて60質量%未満が好ましい。
【0030】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【実施例】
【0031】
《実施例1》
<銀超微粒子分散液1の作製>
平均分子量が30000の焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.1−A)を54.4gと純水860gを加え、約30分間撹拌した。その後、硝酸銀131.8gを加え、更に約30分間撹拌し、完全に溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却を行い、それに塩基性化合物として水酸化カリウム60.9gを純水83.9gに溶解した20℃の液を添加し、撹拌回転数400rpmの状態で温度が30℃以上にならないように氷浴中で60分間還元反応を実施した。還元反応が終了した銀超微粒子分散液を続いて、酢酸にてpH=5.6に調整した後、酵素として、α−アミラーゼを200mg添加し45℃で1時間撹拌しながら酵素処理を実施し、7質量%の銀超微粒子分散液を得た。次に、得られた銀超微粒子分散液の精製工程として、遠心分離を実施することで、銀超微粒子と上澄み液を綺麗に分離させ、上澄み液を廃棄した。残った銀超微粒子を再分散させ、繰り返し遠心分離を実施し、上澄み液を廃棄した。その後、銀濃度が50質量%になるように純水を加えて再分散した銀超微粒子分散液1を得た。また、銀超微粒子分散液1を2g取り乾燥させて固形分を測定した結果、1.1gであった。(銀1質量部に対してデキストリンは0.1質量部残存している。)
【0032】
<導電性インク組成物1の作製>
上記のようにして得た銀超微粒子分散液1に、導電性インク組成物の出来上がり量100質量%に対して界面活性剤(泰光油脂化学工業(株)製タイポールNLES−227)を0.15質量%、およびエチレングリコールを20質量%、アルギン酸ナトリウムを0.15質量%を添加し、15質量%の銀濃度になるように純水を加えて導電性インク組成物1を得た。得られた直後の導電性インク組成物1の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、10.5mPa・sであった。
【0033】
《実施例2》
<導電性インク組成物2の作製>
アルギン酸ナトリウムの代わりにアルギン酸カリウムを0.15質量%添加した以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物2を得た。得られた直後の導電性インク組成物2の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、10.8mPa・sであった。
【0034】
《比較例1》
<導電性インク組成物3の作製>
アルギン酸ナトリウムの代わりにカルボキシメチルセルロースを0.15質量%添加した以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物3を得た。得られた直後の導電性インク組成物3の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、9.8mPa・sであった。
【0035】
《比較例2》
<導電性インク組成物4の作製>
アルギン酸ナトリウムの代わりにヒドロキシプロピルセルロースを0.15質量%添加した以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物4を得た。得られた直後の導電性インク組成物4の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、11.2mPa・sであった。
【0036】
《比較例3》
<導電性インク組成物5の作製>
アルギン酸ナトリウムの代わりにヒドロキシエチルセルロースを0.15質量%添加した以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物5を得た。得られた直後の導電性インク組成物5の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、10.2mPa・sであった。
【0037】
《比較例4》
<導電性インク組成物6の作製>
アルギン酸ナトリウムの代わりにポリアクリル酸ナトリウムを0.2質量%添加した以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物6を得た。得られた直後の導電性インク組成物6の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、10.1mPa・sであった。
【0038】
《比較例5》
<導電性インク組成物7の作製>
アルギン酸ナトリウムを添加しない以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物7を得た。得られた直後の導電性インク組成物7の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、2.7mPa・sであった。
【0039】
《実施例3》
<銀超微粒子分散液2の作製>
低分子量ゼラチン(分子量約1万)を16gと純水181gを加え膨潤後、50℃で溶解し、15℃まで冷却した後、更に純水78.5gに硝酸銀71.5gを溶解した液を加えて10℃まで冷却後、硫酸ヒドラジン6gを加えて溶解した。そこに純水67.2gと水酸化カリウム32.8gを混合した10℃の液を撹拌した状態で添加し30分間の還元反応を実施した。還元反応が終了した銀超微粒子分散液を続いて、酢酸にてpH=6に調整した後、酵素として、プロテアーゼを100mg添加し40℃で1時間撹拌しながら酵素処理を実施した。その後銀超微粒子分散液1の作製と同様にして精製再分散し、銀濃度が50質量%の銀超微粒子分散液2を得た。また、銀超微粒子分散液2を2g取り乾燥させて固形分を測定した結果、1.14gであった。(銀1質量部に対してゼラチンは0.14質量部残存している。)
【0040】
<導電性インク組成物8の作製>
上記のようにして得た銀超微粒子分散液2を用いて実施例1と同様にして導電性インク組成物8を得た。得られた直後の導電性インク組成物8の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、8.7mPa・sであった。
【0041】
《比較例6》
<導電性インク組成物9の作製>
上記のようにして得た銀超微粒子分散液2を用いてアルギン酸ナトリウムを添加しない以外は実施例1と同様にして導電性インク組成物9を得た。得られた直後の導電性インク組成物9の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、2.3mPa・sであった。
【0042】
《比較例7》
<銀超微粒子分散液3の作製>
銀超微粒子分散液1の作製において酵素処理を省いた以外は同様にして銀超微粒子分散液3を得た。また、銀超微粒子分散液3を2g取り乾燥させて固形分を測定した結果、1.45gであった。(銀1質量部に対してデキストリンは0.45質量部残存している。)
【0043】
<導電性インク組成物10の作製>
上記のようにして得た銀超微粒子分散液3を用いて実施例1と同様にして導電性インク組成物10を得た。得られた直後の導電性インク組成物10の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、12.3mPa・sであった。
【0044】
《比較例8》
<銀超微粒子分散液4の作製>
銀超微粒子分散液2の作製において酵素処理を省いた以外は同様にして銀超微粒子分散液4を得た。また、銀超微粒子分散液4を2g取り乾燥させて固形分を測定した結果、1.36gであった。(銀1質量部に対してゼラチンは0.36質量部残存している。)
【0045】
<導電性インク組成物11の作製>
上記のようにして得られた銀超微粒子分散液4を用いて実施例1と同様にして導電性インク組成物11を得た。得られた直後の導電性インク組成物11の粘度を東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で測定した結果、10.3mPa・sであった。
【0046】
<導電性の評価>
上記作製した導電性インク組成物1〜11をコニカミノルタIJ(株)製の産業用インクジェットヘッド KM512Mを用いて、下記印刷基材Aにベタ印字した後に(株)ダイアインスツルメンツ製ロレスターGPを用いて抵抗値〔Ω/□〕を測定した。この結果を表1に示す。
【0047】
<印刷基材Aの作製>
水に硝酸(2.5部)とアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を用いて、固形分濃度30質量%の無機微粒子分散液を得た。無機微粒子分散液中に分散しているアルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。この無機微粒子分散液を用い、下記組成の多孔質層形成塗液を作製した。
【0048】
<多孔質層形成塗液>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として) 100g
ポリビニルアルコール 12g
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.5g
ノニオン性界面活性剤 0.3g
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
固形分濃度が16質量%になるように水で調整した。
【0049】
支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用い、支持体上に上記多孔質層形成塗液をアルミナ水和物の固形分として30g/mとなるようにスライドビード方式を用いて塗布を行い、乾燥機により乾燥し、多孔質層を形成した。支持体上に形成された多孔質層の厚みは約40μmである。
【0050】
上記多孔質層上に、下記組成の導電性発現剤塗液を、斜線グラビアロールを用いた塗布方式を用いて塗布を行い、乾燥機により乾燥し、印刷基材Aを得た。ここで用いた斜線グラビアロールは、直径60mm、斜線角度45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmのグラビアロールであり、リバース回転で用いた。導電性発現剤塗液の湿分塗布量は、20g/mである。印刷基材Aの水銀ポロシメーターを用いて測定された空隙容量は23.0ml/mであった。
【0051】
<導電性発現剤塗液>
塩化ナトリウム 1.0g
エチレン塩化ビニル樹脂有機微粒子水分散体(濃度50質量%) 1.0g
(スミエリート1010、住友化学株式会社、平均粒子径200nm、Tg0℃)
水 98.0g
【0052】
<吐出安定性の評価>
上記作製した導電性インク組成物1〜11を前記したインクジェットヘッドに充填し、ベタ印刷を実施した。その後ノズルにキャップを行い、2日間放置した後、線幅70μmのラインを印刷した。ラインの印刷は、ヘッドが有する512ノズル中、3ノズルおきに吐出させ、副走査(ヘッド幅)方向に合計128本のラインを描画した。走査方向の解像度は720dpi、印刷速度は200mm/秒、印刷長さは50mとした。印刷物より等間隔に10箇所のサンプリングを行い、各々の部位においてラインの線幅を測定し最大線幅と最小線幅の差を評価した。この結果を表1に示す。
【0053】
<吐出安定性>
○・・・10μm未満
△・・・10μm以上30μm未満
×・・・30μm以上
【0054】
<分散安定性の評価>
また、上記作製した導電性インク組成物1〜11を50mlずつ密閉容器に入れて1週間放置後、上液と下液を採取し、東機産業(株)製TV−22(E型粘度計)で粘度を測定した。この結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果より、本発明の導電性インク組成物が導電性と吐出安定性、および保存した際の分散安定性の全てに優れることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に、水溶性銀塩を天然ポリマーの存在下で塩基性化合物を加えて還元した後に酵素処理して得られた銀超微粒子と、アルギン酸およびその塩から選ばれる化合物を含有する導電性インク組成物。

【公開番号】特開2013−104019(P2013−104019A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249909(P2011−249909)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】