説明

導電性エンドレスベルト

【課題】樹脂成分として、一般的なポリエステル系の熱可塑性樹脂を用いた導電性エンドレスベルトにおいて、他のベルト特性を損なうことなく、難燃性を付与することのできる技術を提供する。
【解決手段】画像形成体52a〜52dと記録媒体53との間に配設され、駆動部材55により循環駆動されて、前記画像形成体52a〜52d表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体53へと転写する中間転写部材50用の導電性エンドレスベルトである。ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、カラーレーザープリンター等の電子写真装置や静電記録装置等における静電記録プロセスにおいて、表面に静電潜像を保持した潜像保持体等の画像形成体表面に現像剤を供給して形成されたトナー像を、紙等の記録媒体へと転写する際に用いられる導電性エンドレスベルト(以下、単に「ベルト」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
まず、第1には、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行い、感光体上にカラーのトナー像を形成する多重現像方式がある。この方式によれば比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、この方式では階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
【0005】
第2に、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現するタンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
【0006】
図2にタンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光体ドラム1、帯電ロール2、現像ロール3、現像ブレード4、トナー供給ロール5およびクリーニングブレード6で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ(駆動部材)9により循環駆動されて転写搬送ベルト10で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール7および除電ロール8で行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
【0007】
転写搬送ベルト10の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、タンデム型の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
【0008】
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
【0009】
第3に、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
【0010】
前記多重現像方式、タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、かつ装置が特に大型化するようなこともなく、しかも記録媒体種が特に制限されるようなこともない方式として、中間転写方式が提案されている。
【0011】
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、かつタンデム方式のように感光体を1列に並べる必要がないので装置が特に大型化することもなく、しかも記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
【0012】
中間転写方式によりカラー画像の形成を行う装置として、中間転写部材として無端ベルト状の中間転写部材を用いた画像形成装置を図3に例示する。
【0013】
図3中、11はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体11は、一次帯電器12によって帯電され、次いで画像露光13により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光体11上に形成され、更に静電潜像が現像器41により第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光体11上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ(駆動部材)30により循環駆動されて感光体11と接触しながら循環回転する中間転写部材20に転写される。この場合、感光体11から中間転写部材20への転写は、感光体11と中間転写部材20とのニップ部において、中間転写部材20に電源61から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写部材20に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光体11はその表面がクリーニング装置14により清掃され、感光体11の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光体が3回転し、各周回ごとに現像器42〜44を順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光体11上に形成され、これが周回ごとに中間転写部材20に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写部材20上に形成される。なお、図3の装置にあっては、感光体11の周回ごとに現像器41〜44が順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
【0014】
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写部材20に転写ローラ25が当接し、そのニップ部に給紙カセット19から紙等の記録媒体26が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源29から転写ローラ25に印加され、中間転写部材20から記録媒体26上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体26へと転写した後の中間転写部材20は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置35により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0015】
また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせた中間転写方式もある。図4に、無端ベルト状の中間転写部材を用いてカラー画像の形成を行う中間転写方式の画像形成装置を例示する。
【0016】
図示する装置においては、感光体ドラム52a〜52d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部54a〜第4現像部54dが、中間転写部材50に沿って順次配置されており、この中間転写部材50を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部54a〜54dの感光体ドラム52a〜52d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、この中間転写部材50上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体53上に転写することにより、プリントアウトを行う。ここで、上記いずれの装置においても、現像に用いるトナーの配列順は特に制限されるものではなく、任意に選択可能である。
【0017】
なお、図中、符号55は、中間転写部材50を循環駆動するための駆動ローラ若しくはテンションローラを示し、符号56は記録媒体送りローラ、符号57は記録媒体送り装置、符号58は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。また、符号59は中間転写部材50に電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)を示し、この電源装置59は、トナー像を、感光ドラム52a〜52dから上記中間転写部材50に転写する場合と、中間転写部材50から記録媒体53上に転写する場合とで、印加する電圧の正負を反転させることができるようになっている。
【0018】
従来、かかる無端ベルト状の転写搬送ベルト10や中間転写部材20,50等として使用される導電性エンドレスベルトとしては、半導電性の樹脂フィルムベルトまたは繊維補強体を有するゴムベルトが主に用いられている。このうち樹脂フィルムベルトとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)にカーボンブラックを混合したものや、ポリアルキレンテレフタレートを主たる樹脂として用いるもの、熱可塑性ポリイミドを主たる樹脂として用いるものなどが知られている。
【0019】
また、特許文献1には、難燃性及び耐久性を兼ね備えた転写ベルトを得るために、樹脂成分としてポリエステル樹脂と、芳香族ポリカーボネートとを含有する樹脂組成物からなる転写ベルトにおいて、樹脂組成物中にリン酸エステルアミド化合物を配合する技術が開示されている。さらに、特許文献2には、難燃性を有し、かつ燃焼してもハロゲン化物やダイオキシンの発生可能性が小さいシームレスベルトを提供することを目的として、シームレスベルトの硫黄含有量を5〜50wt%とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−91678号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平11−149222号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
樹脂材料としてポリイミドやフッ素樹脂を用いて作製されたベルトにおいては、これらの樹脂そのものが難燃性を有するために、難燃剤を用いなくても、ベルト自体に難燃性を付与することが可能である。一方、一般的な熱可塑性樹脂を用いたベルトは、材料面、製法面ともに安価に作製することができるため、消費者のニーズに応えやすいというメリットがあるが、その反面、樹脂自体が難燃性を有しないため、使用時に火災を生じやすいというリスクを有している。
【0021】
これに対し、難燃剤を添加することが考えられるが、汎用の熱可塑性樹脂と一般的な難燃剤とを組み合わせた場合、軟化や劣化、分散困難といった不具合が発生する可能性が高く、ベルトに求められる諸特性を維持することが困難となるという問題があった。したがって、かかる問題を生ずることなく難燃性を付与できる技術の確立が求められていた。
【0022】
そこで本発明の目的は、樹脂成分として、一般的なポリエステル系の熱可塑性樹脂を用いた導電性エンドレスベルトにおいて、他のベルト特性を損なうことなく、難燃性を付与することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は鋭意検討した結果、ポリエステル系の熱可塑性樹脂に対し、特定の難燃剤を配合することで、ベルトの物性値を低下させることなく難燃性を発現させることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の導電性エンドレスベルトは、画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の他の導電性エンドレスベルトは、静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、4種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなることを特徴とするものである。
【0026】
本発明において、前記芳香族臭素系難燃剤としては、臭素化フェノキシ化合物、臭素化カーボネートオリゴマーおよびエチレンビス(ペンタブロモジフェニル)からなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせを好適に用いることができる。また、本発明のベルトは、難燃助剤としてアンチモン化合物を含むことが好ましい。さらに、前記芳香族臭素系難燃剤の配合量は、好適には、前記樹脂成分100重量部に対し1〜30重量部である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上記構成としたことにより、樹脂成分として、ポリエステル系の熱可塑性樹脂を用いた導電性エンドレスベルトにおいて、他のベルト特性を損なうことなく難燃性を付与することができ、これにより、ベルトを組み込んだ装置自体の安全性を高めて、使用時における火災発生などのリスクを低減することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
導電性エンドレスベルトには、一般に、ジョイントありのものとジョイントなしのもの(いわゆるシームレスベルト)とがあるが、本発明においてはいずれのものであってもよい。好ましくはシームレスベルトである。本発明の導電性エンドレスベルトは、前述したように、タンデム方式および中間転写方式の転写部材等として用いることができるものである。
【0029】
本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図2に参照符号10で示す転写搬送ベルトの場合、駆動ローラ9等の駆動部材により駆動され、これに伴い搬送される記録媒体上にトナーが順次転写され、カラー画像が形成される。
【0030】
また、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図3に参照符号20で示す中間転写部材の場合、これを駆動ローラ30等の駆動部材により循環駆動させ、感光体ドラム(潜像保持体)11と紙等の記録媒体26との間に配設することで、前記感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体26へと転写する。なお、図3の装置は、上述したように、中間転写方式によりカラー印刷を行うものである。
【0031】
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図4に参照符号50で示す中間転写部材の場合、感光体ドラム52a〜52dを備える現像部54a〜54dと紙等の記録媒体53との間に配設されて、駆動ローラ55等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム52a〜52dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体53へと転写することで、カラー画像を形成する。
【0032】
本発明の導電性エンドレスベルトは、ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなる。本発明においては、樹脂成分として、低コストでかつ成形容易なポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたことで、ベルトとしてのコスト性を高めることができ、弾性率等のベルト性能についても担保することができる。また、難燃剤として、これらポリエステル系樹脂と相溶性の高い芳香族臭素系難燃剤を用いたことで、ベルトの物性値を損なうことなくベルトに難燃性を付与することができるものである。
【0033】
本発明に用いるポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントおよびソフトセグメントにポリエステルを用いたポリエステル−ポリエステル型のもの、並びに、ハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルを用いたポリエステル−ポリエーテル型のものの双方を好適に用いることができる。なお、ポリエステル系エラストマーのハードセグメントは、一般的にポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリブチレンナフタレート(PBN)を主成分として用いられているが、本発明においては、いずれのものも使用可能である。かかるポリエステル系エラストマーは、2種以上を混合して用いることもできる。
【0034】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、具体的には例えば、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、PBN樹脂等)や、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、グリコール変性PET(PETG)樹脂、PBT樹脂等)等を挙げることができるが、特に制限されるものではない。かかる熱可塑性ポリエステル樹脂は、2種以上を混合して用いることもできる。
【0035】
本発明において、これらポリエステル系エラストマーおよび熱可塑性ポリエステル樹脂は、いずれか一方を単独で、または双方を用途に応じて適宜割合で混合して用いることができる。
【0036】
なお、本発明に用いるポリエステル系エラストマーおよび熱可塑性ポリエステル樹脂は、成形加熱時において加水分解による分子量低下を引き起こしやすいという難点があるため、特には、ベルト配合中にカルボジイミド基を有する化合物を添加することで、カルボジイミド基とカルボン酸との反応により熱可塑性ポリエステル系エラストマーを再架橋させて、分子量の低下を防止することが好ましい。これにより、ベルトの脆化を防止することができ、耐久時におけるベルトの耐割れ性を向上することが可能となる。かかるカルボジイミド化合物は市場で容易に入手可能であり、例えば、日清紡績(株)製の商品名:カルボジライト等を挙げることができる。また、カルボジイミド化合物は、あらかじめマスターバッチ化されたペレット等の形態でも用いることができ、例えば、日清紡績(株)製の商品名:カルボジライトEペレット、Bペレット等を好適に用いることができる。
【0037】
かかるカルボジイミド化合物の添加量としては、特に制限されるものではないが、樹脂成分100重量部に対し、好ましくは0.05〜30重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲内である。
【0038】
芳香族臭素系難燃剤としては、汎用のものを適宜用いることができ、特に制限されるものではないが、分解温度の高いものが好適であり、具体的には例えば、臭素化フェノキシ化合物、臭素化カーボネートオリゴマーおよびエチレンビス(ペンタブロモジフェニル)を好適に挙げることができ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明における芳香族臭素系難燃剤の配合量は、安定して難燃性を発現させるためには、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜20重量部とする。芳香族臭素系難燃剤の配合量が多すぎると、ベルト物性が低下して、割れやすくなるなどの問題が生ずる。
【0039】
本発明のベルトにおいては、上記芳香族臭素系難燃剤に加えて、難燃助剤としてアンチモン化合物を配合することが好ましい。芳香族臭素系難燃剤単独でも所望の難燃性を得られるが、アンチモン化合物を併用することにより、より良好な難燃性を発現させることができる。かかるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、四酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)等のアンチモン酸化物、およびアンチモン酸ソーダを挙げることができるが、難燃剤の配合量をより少なくできることから、アンチモン酸化物がより好ましい。また、かかるアンチモン化合物の配合量は、例えば、アンチモン化合物として三酸化アンチモンを用いる場合には、難燃剤/三酸化アンチモンの相対比で、通常95/5〜55/45、好適には90/10〜60/40である。
【0040】
本発明のベルトにおいては、上記芳香族臭素系難燃剤を用い、またはさらにアンチモン化合物を併用することで、UL94規格においてVTM−2以上の難燃性を達成することができるものである。
【0041】
また、本発明のベルトには、導電性を調整するために導電性材料を配合する。かかる導電性材料としては、特に制限されるものではなく、公知の電子導電剤やイオン導電剤等を適宜用いることができる。このうち電子導電剤としては、具体的には例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、具体的には例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0042】
また、高分子イオン導電剤としては、例えば、特開平9−227717号公報、特開平10−120924号公報、および、特開2000−327922号公報、特開2005−60658号公報等に記載されているものを用いることができるが、特に限定されない。
【0043】
具体的には例えば、(A)有機ポリマー材料、(B)イオン導電可能なポリマーまたはコポリマー、および、(C)無機または低分子量有機塩、からなる混合物を挙げることができ、ここで、成分(A)は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミド6、ポリアミド12等のポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステルであり、成分(B)は、オリゴエトキシ化アクリレートもしくはメタクリレート、芳香族環についてオリゴエトキシ化されたスチレン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエステル−エーテルブロックコポリマーであり、また、成分(C)は、無機または低分子量有機プロトン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛またはアンモニウム塩であり、好ましくは、LiClO、LiCFSO、NaClO、LiBF、NaBF、KBF、NaCFSO、KClO、KPF、KCFSO、KCSO、Ca(ClO、Ca(PF、Mg(ClO、Mg(CFSO、Zn(ClO、Zn(PFまたはCa(CFSO等である。
【0044】
これらの中でも、成分(B)として、ポリエーテルアミド成分、ポリエーテルエステルアミド成分またはポリエステル−エーテルブロックコポリマー成分を含有する高分子イオン導電剤が好適であり、さらに、これに加えて成分(C)として低分子イオン導電剤成分を含有することが好ましい。また、かかるポリエーテルアミド成分およびポリエーテルエステルアミド成分としては、ポリエーテル成分が(CH−CH−O)を含有し、ポリアミド成分がポリアミド12またはポリアミド6を含有するものが特に好ましく、さらに、成分(C)の低分子イオン導電剤成分としてはNaClOを含有する高分子イオン導電剤が特に好適である。かかる高分子イオン導電剤は、例えば、Irgastat(登録商標)P18およびIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド製)として市場で容易に入手可能である。
【0045】
また、ポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等を介して繰り返し交互に結合してなるブロック共重合体も、本発明における高分子イオン導電剤として好適に用いることができる。かかるポリオレフィンとしては、ポリマーの両末端にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するポリオレフィンが挙げられ、特には、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好適である。
【0046】
また、親水性ポリマーとしては、官能基として水酸基を有するポリオキシアルキレン等のポリエーテルジオール、両末端カルボキシル基のポリアミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステルアミド、ポリアミドイミドとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルアミドイミド、ポリエステルとポリエーテルジオールとから構成されるポリエーテルエステル、ポリアミドとポリエーテルジアミンとから構成されるポリエーテルアミド等が使用でき、中でも、水酸基を有するポリオキシアルキレンが好ましい。例えば、両末端水酸基のポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレン(ポリプロピレングリコール)等である。
【0047】
本発明において高分子イオン導電剤として使用できるかかるブロック共重合体は、ペレスタット230,300,303(三洋化成(株)製)等として市場で容易に入手可能である。また、上記ブロック共重合体にリチウム化合物LiCFSOを含有させることで添加量を少なくしても帯電防止効果を維持する効果を得ることができ、かかるブロック共重合体とリチウム化合物との混合物として、サンコノールTBX−310(三光化学工業(株)製)が市販されている。
【0048】
なお、導電性材料として高分子イオン導電剤を用いる場合には、基材樹脂と高分子イオン導電剤との相溶性を高めるために、相溶化剤を添加してもよい。
【0049】
これら導電性材料は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、例えば、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせて用いることもでき、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現させることができる。
【0050】
導電性材料の配合量は、電子導電剤については、樹脂成分100重量部に対し、通常100重量部以下、例えば1〜100重量部、特には1〜80重量部、とりわけ5〜50重量部である。また、イオン導電剤については、樹脂成分100重量部に対し、通常0.01〜10重量部、特には0.05〜5重量部の範囲である。さらに、高分子イオン導電剤については、樹脂成分100重量部に対し、通常1〜500重量部、好ましくは10〜400重量部程度である。本発明においては特に、導電性材料としてカーボンブラックを用いて、これを樹脂成分100重量部に対し、5〜30重量部添加することが好ましい。
【0051】
また、本発明のベルトには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
【0052】
本発明の導電性エンドレスベルトの厚さは、転写搬送ベルトまたは中間転写部材等の形態に応じて適宜選定されるものであるが、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、その表面粗さとしては、好適には、JIS10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とする。
【0053】
また、本発明の導電性エンドレスベルトには、図1に一点鎖線で示すように、図2の画像形成装置における駆動ローラ9または図3の駆動ローラ30などの駆動部材と接触する側の面に、該駆動部材に形成した嵌合部(図示せず)と嵌合する嵌合部を形成してもよく、本発明の導電性エンドレスベルトは、このような嵌合部を設け、これを駆動部材に設けた嵌合部(図示せず)と嵌合させて走行させることにより、導電性エンドレスベルトの幅方向のずれを防止することができる。
【0054】
この場合、前記嵌合部は、特に制限されるものではないが、図1に示すように、ベルトの周方向(回転方向)に沿って連続する凸条とし、これを駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した溝に嵌合させるようにすることが好ましい。
【0055】
なお、図1(a)では、1本の連続する凸条を嵌合部として設けた例を示したが、この嵌合部は多数の凸部をベルトの周方向(回転方向)に沿って一列に並べて突設してもよく、また嵌合部を2本以上設けたり(図1(b))、ベルトの幅方向中央部に設けてもよい。更に、嵌合部として図1に示した凸条ではなく、ベルトの周方向(回転方向)に沿った溝を設け、これを前記駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した凸条と嵌合させるようにしてもよい。
【0056】
本発明の導電性エンドレスベルトは、上記樹脂成分、芳香族臭素系難燃剤および導電性材料等を含む樹脂組成物の押出し成形により好適に製造することができ、具体的には例えば、二軸混練機により上記樹脂成分等を混練し、得られた混練物を環状ダイスを用いて一軸押出機で押出し成形することにより製造することができる。また、成形装置を二軸練機として、材料の混練り、成形すべてを連続して行う方法も用いることができる。この際、難燃剤の添加方法については特に制限されず、二軸混練り時に他配合成分と同時に添加してもよく、また、最終押出時に投入することもできる。
【0057】
図5(a),(b)に、混練装置100および成形装置200の概略説明図を示す。混練装置100においては、樹脂成分等のベルトの配合材料を材料投入口101から投入して、ニーディングスクリューによる溶融混練ゾーン102(少なくとも1箇所、通常は複数箇所配置される)において溶融混練を行うことで、混練された配合材料のペレットを得ることができる。また、成形装置200は、混練後のペレットを材料投入口201から投入して、溶融後、押出スクリュー(図示せず)によりギヤポンプ・フィルター202を適宜介して金型203に押出し、ベルト形状の成形物を得るものである。
【0058】
難燃剤の投入位置としては、図示するA:混練装置の材料投入口101,B:混練装置のサイドフィーダー(図示せず),C:成形装置の材料投入口201の3箇所が考えられる。ここで、混練装置にサイドフィーダーを設ける場合には、上流側から見て1つ目の溶融混練ゾーン(第一混練ゾーン)より下流に設置する。なお、図中の符号103はベント穴を示し、加水分解防止のための脱気目的で設けられる。ベント穴は真空ベントとすることがより好ましく、複数箇所に設置することもでき、設置位置は第一混練ゾーンよりも下流とする。また、符号104はスクリューを示す。
【0059】
難燃剤を混練時に投入すれば、分散が良好となり、また、工程数を少なくすることができるが、難燃剤の分解温度が低い場合には、混練時の主に混練ゾーンで発生するせん断発熱により分解が開始してしまう場合がある。したがって、難燃剤の種類によっては、最終的な押出成形時にドライブレンドすることが好ましい。特に、導電性材料としてカーボンブラックを用いる場合、混練時の発熱が大きいため、後者の手法を選択することが好適である。なお、難燃助剤については、難燃剤と同位置で投入しても、異なる位置で投入してもよい。さらに、本発明では、ベルトの製造方法として、静電塗装等の粉体塗装法、ディップ法または遠心注型法も好適に採用することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1〜8中にそれぞれ示す配合にて、各実施例および比較例の導電性エンドレスベルトを作製した。具体的には、各配合成分を二軸混練機により溶融混練して、得られた混練物を所定の環状ダイスを用いて押出し成形することにより、内径220mm、幅250mmの寸法を有する導電性エンドレスベルトを得た。難燃剤および難燃助剤については、いずれも混練装置の材料投入口より投入した。
【0061】
得られた各実施例および比較例のベルトにつき、下記の手順に従い、評価を行った。これらの結果を下記の表1〜8中に併せて示す。
【0062】
<難燃性の評価>
UL94規格に準拠して、難燃性を評価した。
【0063】
<引張弾性率の測定>
以下に示す条件にて、引張弾性率の測定を行った。
装置:(株)島津製作所製、引張試験機 EZ test(解析ソフト:Trappezium)
サンプル:短冊形状(長さ100mm×幅10mm×標準厚み100μm)
引張速度:5mm/sec
データサンプリング間隔:100msec
測定方法:0.5〜0.6%伸度での傾き(記載ある場合はJISに記載の接線法)
測定環境:室温(23±3℃、55±10%RH)
【0064】
<画像特性>
各ベルトを図2に示す転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置に装着し、転写操作を繰り返してA4用紙1万枚の耐久試験を行った。この試験の結果を画像性、耐久時のベルト引き裂きの有無および汚染性につき評価した。
【0065】
【表1】

*1)PBTエラストマーA:東洋紡(株)製 ペルプレンE−450B
*2)PBTエラストマーB:帝人化成(株)製 ヌーベランTR−EL6
*3)PBT:東レ(株)製 トレコン1401CH2
*4)PBN:帝人化成(株)製 TQB−OT
*5)高分子イオン導電剤:三洋化成(株)製 ペレスタットNC6321
*6)カーボンブラック:電気化学工業(株)製、デンカブラック粒状
*7)難燃剤A:(株)鈴裕化学製 ヒロマスターF101(軟化点200℃以上,臭素化フェノキシ化合物・三酸化アンチモン含有)
*8)難燃剤B:帝人化成(株)製 ファイヤーガード8500(軟化点205℃以上,臭素化カーボネートオリゴマー)
*9)難燃剤C:(株)鈴裕化学製 ヒロマスターC510(エチレンビス(ペンタブロモジフェニル))
*10)難燃剤D:アルベマール日本(株)製 SAYTEX8010(軟化点340℃)
*11)難燃剤E:(株)鈴裕化学製 ファイヤーカットP801(軟化点340℃)
*12)難燃剤F:第八化学(株)製 PX−200(融点92℃,芳香族縮合リン酸エステル)
*13)難燃助剤A:日本精鉱(株)製 PATOX−MZ(Sb,表中の※は、難燃剤に難燃助剤が含まれている場合を示す)
*14)難燃助剤B:山中産業(株)製 ATE−S(Sb
*15)難燃助剤C:日本精鉱(株)製 SA−A(アンチモン酸ソーダ)
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
上記表1〜8に示すように、難燃剤として芳香族臭素系難燃剤を用いた各実施例のベルトにおいては、引張弾性率、画像性、耐久性および汚染性の各ベルト物性を維持しつつ、優れた難燃性が得られていることが確かめられた。
【0074】
次に、実施例16,17,20,21,24の各ベルト配合を用いて、難燃剤の投入位置を成形装置の材料投入口に変えた以外は上記と同様にして導電性エンドレスベルトを作製した。これらをそれぞれ実施例16−2,17−2,20−2,21−2,24−2とする。これら実施例16−2,17−2,20−2,21−2,24−2のベルトにつき、難燃性、耐久時のベルト引き裂きの有無およびベルト表面における異物の発生状況につき評価した結果を、実施例16,17,20,21,24の評価結果とともに、下記の表9中に示す。なお、ベルト表面における異物の発生状況は、異物高さをハイトゲージで実測した見本を基準とし、それとの相対比較により異物の発生数を測定することで評価した。異物の高さがベルトの厚みの1/2以下のものは、実用上問題ないため数のカウントから除外した。
【0075】
【表9】

【0076】
上記表9に示すように、難燃剤の投入位置を成形装置の投入口とすることで、ベルト表面に発生する異物の数が減少し、表面性がより良好になることが確認できた。
【0077】
この結果から、さらに、耐熱性が悪い難燃剤を用いて、その投入位置のみを変えてベルトを作製した際の難燃性、耐久時のベルト引き裂きの有無およびベルト表面における異物の発生状況を比較した結果を、投入位置Aの場合を基準として、下記の表10中に示す。
【0078】
【表10】

【0079】
上記表10に示すように、耐熱性が悪い難燃剤を用いる場合、難燃剤の投入位置を最終成形時に近づけるほど、耐久時の引き裂き性およびベルト表面異物が良化して、ベルト物性が向上することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電性エンドレスベルトの幅方向断面図である 。
【図2】画像形成装置の一例としての転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置を示す概略図である。
【図3】画像形成装置の他の例としての中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。
【図4】画像形成装置のさらに他の例としての中間転写部材を用いた他の中間転写装置を示す概略図である。
【図5】混練装置および成形装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1、11、52a〜52d 感光体ドラム
2、7 帯電ロール
3 現像ロール
4 現像ブレード
5 トナー供給ロール
6 クリーニングブレード
8 除電ロール
9、30、55 駆動ローラ(駆動部材)
10 転写搬送ベルト
12 一次帯電器
13 画像露光
14、35 クリーニング装置
19 給紙カセット
20、50 中間転写部材
25 転写ローラ
26、53 記録媒体
29、61 電源
41、42、43、44 現像器
54a〜54d 第1現像部〜第4現像部
56 記録媒体送りローラ
57 記録媒体送り装置
58 定着装置
59 電源装置(電圧印加手段)
100 混練装置
101 材料投入口
102 溶融混練ゾーン
103 ベント穴
104 スクリュー
200 成形装置
201 材料投入口
202 ギヤポンプ・フィルター
203 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項2】
静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、4種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
ポリエステル系エラストマーおよび/または熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂成分に対し、芳香族臭素系難燃剤が添加されてなることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項3】
前記芳香族臭素系難燃剤が、臭素化フェノキシ化合物、臭素化カーボネートオリゴマーおよびエチレンビス(ペンタブロモジフェニル)からなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせである請求項1または2記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項4】
難燃助剤としてアンチモン化合物を含む請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項5】
前記芳香族臭素系難燃剤の配合量が、前記樹脂成分100重量部に対し1〜30重量部である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−268910(P2008−268910A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60750(P2008−60750)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】