説明

導電性カーボンブラック

【課題】カーボンブラックは、ポリマー複合材料にとって最も多目的な機能性フィラーの一種であることがわかっている。プラスチック化合物に導電性を付与することに加え、カーボンブラックは、耐紫外線分解性を長時間にわたって与える。多くの製品配合物において、ポリマー複合材料によって、いくつかの性質の組み合わせを1つの製品に併せもつことができる。導電性化合物の製造に使用するのに適したカーボンブラックの選択は、望ましい特定の化合物の最終的な性質だけではなく、カーボンブラックの特定性質に依存した分散物を形成する。
【解決手段】無水物と、シランと、溶媒とを混合して溶液を形成することを含む、組成物を形成する方法が記載されている。カーボンブラックと、イソシアネートとを混合し、カーボンブラック混合物を形成する。この溶液と、上述のカーボンブラック混合物とを均質化し、カーボンブラック分散物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性粒子を必要とする画像形成装置における画像形成装置要素に関する。
【背景技術】
【0002】
通常は、導電性カーボンブラックのパーコレーション閾値の範囲は非常に狭い。中間転写体の表面伝導率(Ω/□)の常用対数をとると、8〜13の範囲である。カーボンブラックは、転写体およびフューザーの両方のフィルム中に存在するフィラーであり、そのため、カーボンブラックの分散均一性や、ポリマー樹脂との相互作用は、これらのフィルムの性能に大きな影響を及ぼす。溶媒和したポリマーフィルムコーティングは、継ぎ目のないベルトを製造するのに用いられている。これらのコーティング溶液では、導電性カーボンブラックが、有機溶媒を含むポリマーバインダーに分散している。これらのベルトをコーティングするには、高い溶液粘度を必要とするため、系中でポリマー溶液にカーボンブラックを分散させることはきわめて困難である。現行のコーティングプロセスにおいては、フューザー部材の場合も中間転写体の場合も、カーボンブラック分散物の分布が不均一であること、導電性が変動することといった共通の問題点がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書には、無水物と、シランと、溶媒とを混合して溶液を形成することを含む、組成物を形成する方法が記載されている。カーボンブラックとイソシアネートとを混合し、カーボンブラック混合物を形成する。上述の溶液と、上述のカーボンブラック混合物とを均質化し、カーボンブラック分散物を形成する。
【0004】
本明細書には、ポリマーに分散したカーボンブラック粒子の層を含み、このカーボンブラック粒子が、FT−IRで1660cm−1および1525cm−1に吸収を示す、中間転写体が記載されている。
【0005】
本明細書には、ポリマーに分散したカーボンブラック粒子の層を含み、このカーボンブラック粒子が、FT−IRで1660cm−1および1525cm−1に吸収を示す、フューザー部材が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、画像装置の概略図である。
【図2】図2は、フューザー部材の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照すると、画像形成装置は、以下に詳細に記載するような中間転写体を備えている。この画像形成装置は、一次転写によって、像保持体で形成されたトナー画像を中間転写体に転写するための第1転写ユニットと、二次転写によって、中間転写体に転写されたトナー画像を転写材料に転写するための第2転写ユニットとを備える、中間転写式の画像形成装置である。また、この画像形成装置において、中間転写体は、トナー画像を転写材料に転写するための転写領域内に、転写搬送体として与えられてもよい。高品質の画像を転写し、長期間にわたって安定なままである中間転写体を有することが必要である。
【0008】
本明細書に記載する画像形成装置は、中間転写方式の画像形成装置であれば、特に制限されず、例としては、現像デバイスに単色のみが格納されている通常の単色画像形成装置、像保持体上に保持されているトナー画像を、順次中間転写体に繰り返し一次転写するためのカラー画像形成装置、中間転写体に連続して配置されるそれぞれの色の現像ユニットとともに、複数の像保持体を備えているタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。さらに特定的には、画像形成装置は、適宜、像保持体と、像保持体表面を均一に帯電させる帯電ユニットと、中間転写体表面を露光し、静電潜像を形成する露光ユニットと、現像溶液を用いて、像保持体表面に生成した潜像を現像し、トナー画像を形成する現像ユニットと、トナーユニットを転写材料に定着させる定着ユニットと、像保持体に付着したトナーおよび異物を除去するクリーニングユニットと、像保持体表面に残った静電潜像を除去する静電除去ユニットと、必要な場合には、既知の方法とを備えていてもよい。
【0009】
像保持体として、既知のものを使用してもよい。像保持体の感光層として、有機系のアモルファスシリコン、または他の既知の材料を使用してもよい。円筒形の像保持体の場合、像保持体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を押出成形し、表面処理を行う既知の方法によって得られる。ベルト形態の像保持体を使用してもよい。
【0010】
帯電ユニットは、特に制限されず、既知の充電器を用いてもよく、例えば、導電性ローラーまたは半導体ローラー、ブラシ、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン充電器またはコロトロン充電器などを用いた接触型充電器を用いてもよい。中でも、優れた電荷補償能という観点から、接触型帯電ユニットが好ましい。帯電ユニットは、通常は、直流を電子写真用感光材料に印加するが、交流をさらに重ね合わせてもよい。
【0011】
露光ユニットは、特に制限されず、例えば、半導体レーザービーム、LEDビーム、液晶シャッタービームなどの光源を用いることによって、または、このような光源から多面鏡を通すことによって、電子写真用感光材料の表面に所望の画像を露光する光学系デバイスを用いてもよい。
【0012】
現像ユニットは、目的に応じて適切に選択されてもよく、例えば、一液型現像溶液または二液型現像溶液を用いることによって現像するための既知の現像ユニットを、ブラシおよびローラーを用いて、接触させるか、または接触させずに使用してもよい。
【0013】
第1転写ユニットは、既知の転写充電器、例えば、部材、ローラー、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン転写充電器またはコロトロン転写充電器を用いる接触型転写充電器を備えている。中でも、接触型転写充電器は、優れた転写電荷補償能を与える。転写充電器以外に、剥離型の充電器を一緒に使用してもよい。
【0014】
第2転写ユニットは、第1転写ユニットと同じであってもよく、例えば、転写ローラーなど、スコロトロン転写充電器およびコロトロン転写充電器を用いた接触転写充電器であってもよい。接触型転写充電器の転写ローラーによって強く押すことによって、画像転写段階を維持することができる。さらに、転写ローラーまたは接触型転写充電器を、中間転写体を導くような位置にローラーを押すことによって、トナー画像を中間転写体から転写材料へと移動させる操作を行ってもよい。
【0015】
光静電除去ユニットとして、例えば、タングステンランプまたはLEDを用いてもよく、光静電除去プロセスで使用する光質としては、タングステンランプの白色、LEDの赤色を挙げることができる。光静電除去プロセスで、照射光の強度として、通常は、出力を、光質の約数倍〜約30倍が、電子写真用感光材料の露光感度の半分を示すように設定する。
【0016】
定着ユニットは、特に制限されず、任意の既知の定着ユニットを使用してもよく、例えば、熱ローラー定着ユニットおよびオーブン定着ユニットを用いてもよい。
【0017】
クリーニングユニットは、特に制限されず、任意の既知のクリーニングデバイスを用いてもよい。
【0018】
一次転写を繰り返すためのカラー画像形成装置を、図1に模式的に示している。図1に示す画像形成装置は、像保持体として感光ドラム1と、中間転写体2(転写ベルトとして示されている)と、転写電極としてバイアスローラー3と、転写材料として紙を供給するためのトレー4と、BK(ブラック)トナーによる現像デバイス5と、Y(イエロー)トナーによる現像デバイス6と、M(マゼンタ)トナーによる現像デバイス7と、C(シアン)トナーによる現像デバイス8と、部材クリーナー9と、剥離爪13と、ローラー21、23、24と、バックアップローラー22と、導電性ローラー25と、電極ローラー26と、クリーニングブレード31と、紙の束41と、ピックアップローラー42と、フィードローラー43とを備えている。
【0019】
図1に示す画像形成装置において、感光ドラム1は、矢印Aの方向に回転し、帯電デバイス(図示せず)の表面を均一に帯電させる。帯電した感光ドラム1に、画像書き込みデバイス(例えば、レーザー書き込みデバイス)によって、第1色(例えば、BK)の静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像デバイス5によって、トナーによって現像され、目に見えるトナー画像Tが形成される。トナー画像Tは、感光ドラム1が回転することによって、導電性ローラー25を備える一次転写ユニットに移動し、導電性ローラー25から、トナー画像Tに逆極性の電場がかけられる。トナー画像Tは、中間転写体2に静電的に吸着し、矢印Bの方向に中間転写体2が回転することによって、一次転写が行われる。
【0020】
同様に、第2色のトナー画像、第3色のトナー画像、第4色のトナー画像が、次々と形成され、転写ベルト2に重ねて配置され、多層トナー画像が形成される。
【0021】
転写体2が回転することによって、転写体2に転写された多層トナー画像が、バイアスローラー3を備える二次転写ユニットに移動する。二次転写ユニットは、転写ベルト2のトナー画像を保持している側の表面に配置されているバイアスローラー3と、転写ベルト2の裏側からバイアスローラー3と向かい合うように配置されているバックアップローラー22と、バックアップローラー22と密に接して回転する電極ローラー26とを備えている。
【0022】
紙41は、ピックアップローラー42によって、紙トレー4に入っている紙束から1枚ずつ取り出され、特定のタイミングで、フィードローラー43によって、二次転写ユニットの転写ベルト2とバイアスローラー3との間の空間に供給される。供給された紙41は、バイアスローラー3とバックアップローラー22とに押されながら搬送され、転写ベルト2の上に保持されているトナー画像が、転写体2が回転することによって紙41に転写される。
【0023】
トナー画像が転写された紙41は、最後のトナー画像の一次転写が終わるまで、剥離爪13を後退した位置に操作することによって転写体2から剥離され、定着デバイス(示されていない)に搬送される。トナー画像は、圧力や熱を加えることによって定着し、永久的な画像が形成される。
【0024】
多層トナー画像を紙41に転写した後、転写体2を、二次転写ユニットの下流に配置されているクリーナー9でクリーニングして残留トナーを除去し、次の転写に備える。バイアスローラー3は、ポリウレタンなどでできているクリーニングブレード31が常に接触していてもよく、転写によって付着したトナー粒子、紙粉、他の異物が除去されるように提供されていてもよい。
【0025】
単色画像を転写する場合、一次転写の後、トナー画像Tは、すぐに二次転写プロセスに送られ、定着デバイスまたは融合デバイスに運ばれる。しかし、複数の色を組み合わせて多色画像を転写する場合には、中間転写体2と感光ドラム1との回転が、一次転写ユニットで複数色のトナー画像の位置が正確に合い、複数色のトナー画像がずれないように同期化される。二次転写ユニットでは、トナーの極性と同じ極性の電力(転写電力)を、バイアスローラー3および中間転写体2とは反対側に配置されているバックアップローラー22と密に接触している電極ローラー26に加えることによって、静電反発力によって、トナー画像が紙41に転写される。これにより、画像が形成される。
【0026】
中間転写体2は、任意の好適な形状であってもよい。好適な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のないメビウスの輪、円板、ドレルト(drelt)(ドラムとベルトの中間)、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のない可とう性ベルト、パズルカットのつなぎ目がある、終端のないベルトなどが挙げられる。図1では、転写体2はベルトとして示されている。
【0027】
画像転写の場合の画像では、カラートナー画像は、まず、光受容体に蓄積し、次いで、すべてのカラートナー画像が、同時に中間転写体に転写される。タンデム型転写では、トナー画像は、所定の時間に、1つの色が、光受容体から中間転写体の同じ領域に転写される。両実施形態が、本明細書に含まれる。
【0028】
現像した画像を光導電性部材から中間転写体に転写し、この画像を中間転写体から基板に転写することは、電子写真で従来から使用されている任意の好適な技術(例えば、コロナ転写、圧力転写、バイアス転写、およびこれらの転写手段の組み合わせなど)によって行うことができる。
【0029】
中間転写体は、任意の好適な形状であってもよい。好適な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のない片、ドレルト、円板、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性作像ベルトが挙げられる。
【0030】
現像した画像の転写が終了したら、複写シート41は、融合ステーションまたは定着ステーションに進む(図1には示されていない)。加圧ロールと接触した状態のフューザーベルト、加圧ベルトと接触した状態のフューザーロールなどのような融合要素も、本装置とともに用いるのに好適であり、複写シート41が融合部材と加圧部材との間を通ることによって、現像した画像が複写シート41に融合し、永久的な画像が生成する。あるいは、トランスフィックスを用いることによって転写および融合を行ってもよい。
【0031】
図2は、フューザー部材の一実施形態の拡大模式図であり、種々の可能な層を示している。図2に示されているように、基板65の上には、中間層62がある。中間層62は、例えば、シリコーンゴムであってもよい。中間層62の上には、剥離層64が配置されており、これについては以下にさらに詳細に記載する。
【0032】
中間層62としては、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴム、液体シリコーンゴム(LSR)が挙げられる。これらのゴムは、例えば、SILASTIC(登録商標)735 black RTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(両方ともDow Corning製);106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(両方ともGeneral Electric製)として知られており、簡単に商業的に入手可能である。他の好適なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン);フルオロシリコーン、例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Cortings(バージニア州リッチモンド(Richmond))から入手可能);液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴムまたは室温架橋したシラノール材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。
【0033】
剥離層64は、フッ素プラスチック粒子に分散した導電性カーボンブラックを含む。このような剥離層64は、トナーを良好に剥離させるために、表面エネルギーが低く、かつ脆性が低く、へこんだり欠けたりしにくい層を与える。フューザー部材の剥離層の厚みは、約10〜約250マイクロメートル、または約15〜約100マイクロメートル、または約20〜約50マイクロメートルである。
【0034】
フューザー部材の剥離層の表面抵抗率は、10Ω/sq以下である。
【0035】
フッ素プラスチック粒子としては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、直鎖ポリマーであってもよく、分岐ポリマーであってもよく、架橋したフッ素系エラストマーであってもよい。フッ素系ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)と、フッ化ビニリデン(VDF)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)と、フッ化ビニリデン(VF2)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフルオロポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマー粒子は、化学薬品安定性および熱安定性を付与し、表面エネルギーは低い。フッ素系ポリマー粒子は、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。
【0036】
剥離層64は、表面自由エネルギーが約25mN/m以下であってもよく、ここで、表面自由エネルギーは、例えば、Fibro DAT1100装置を用いる接触角測定の結果から、ルイス酸−塩基法を用いて算出することができる。フューザー部材は、コストが低く、安全性が高く、スケールアップが容易であるため、カーボンブラックを用いて製造される。
【0037】
現時点で、中間転写ベルト(ITB)およびフューザー部材は、導電性添加剤の選択肢としてカーボンブラック(CB)を主に用いて製造される。ほとんどの場合、CBのコストが低く、安全性が高く、スケールアップが容易だからである。ITBフィルムの導電性、表面の均一性、塊としての均質性、種々の機械特性および熱力学特性(例えば、ヤング率、曲げ強度/引裂強度、熱伝導率)は、すべて、カーボンブラックの種類および加工に強く依存する場合がある。上述の特性は、最終的には、画質にとっても重要である。これらの特性は、ポリマー分散物への導電性カーボンブラックの分散性にも強く関連する。
【0038】
何年間にもわたって、カーボンブラックは、ポリマー複合材料にとって最も多目的な機能性フィラーの一種であることがわかっている。プラスチック化合物に導電性を付与することに加え、カーボンブラックは、耐紫外線分解性を長時間にわたって与える。カーボンブラックは、最終製品に種々の黒い陰影をつける、適度に低コストの顔料として機能する。多くの製品配合物において、ポリマー複合材料によって、いくつかの性質の組み合わせを1つの製品に併せもつことができる。導電性化合物の製造に使用するのに適したカーボンブラックの選択は、望ましい特定の化合物の最終的な性質だけではなく、カーボンブラックの特定の性質にも依存する。鍵となるカーボンブラックの特性の例は、粒径、構造、純度である。混合プロセスにおいて、上述のカーボンブラックの重要な要素を種々のポリマーキャリア樹脂と組み合わせ、最終的な化合物を製造する。
【0039】
カーボンブラックがプラスチックに導電性を付与するために用いられる場合、パーコレーションとして知られている現象を示す。パーコレーションは、カーボンブラックの量が、導電性を顕著に、急激に増加させるのに十分なことである。化合物に加えられるカーボンブラックの量が増えるにつれて、プラスチック化合物は、最初は絶縁性のままであるが、加えられるカーボンブラックの量が増え続けるにつれ、きわめて狭いカーボンブラック濃度範囲(添加量)で、導電性が鋭く、急激に増加する。カーボンブラックの添加量がさらに増え、上述の閾値を過ぎると、導電性はわずかに増加するだけである。この狭い範囲は、パーコレーション閾値として知られている。
【0040】
本明細書には、複数の目的でカーボンブラック濃縮物を作成するために、導電性カーボンブラック表面を系中で表面処理することが記載されている。この濃縮物は、保存可能期間が長く、中間転写体およびフューザー部材を製造するのに用いることができる。カーボンブラックの表面処理は、無水物およびイソシアネート化合物を化学的に接続し、アミド結合およびイミド結合を生成することによって行われる。次いで、このように表面処理されたカーボンブラックを、アミノシラン化合物を含む有機溶媒に分散させる。アミノ基が、表面処理で得られた余分の無水物と反応し、イミド結合を生成する。この濃縮物は、高速ホモジナイザによって調製される。いくつかの実施形態では、ホモジナイザの速度は、約600rpm〜約20000rpm、または約1000rpm〜約15000rpm、または約4000rpm〜約10000rpmであってもよい。均質化プロセスの間に、シランが加水分解されると考えられる。この加水分解は、上述のカーボンブラック濃縮物を用いて製造したフィルムの表面エネルギーが低いことの原因であると考えられる。
【0041】
ポリマー複合材料の導電性が、導電性添加剤の間に架橋ができることによって達成されると考えると、ポリマーマトリックス内に均質に導電性添加剤が分布し、最終用途で望ましい性質のバランスを維持するために、高品質の分散が重要である。カーボンブラックの導電効率は、一次粒径、構造および多孔性の関数である。粒径が小さなカーボンブラックは、高い表面積を有し、凝集物間の引力が大きくなり、凝集して擬似的な「二次構造」を生じる。その結果、この擬似的な構造によって、初期のカーボンブラックに固有な構造から予想される導電性よりも高い導電性が得られる。しかし、この二次構造によって、機械特性が低下し、粘度が上昇する場合がある。理想的なカーボンブラック化合物は、パーコレーション閾値(効率)が低い、機械特性の低下は最小限、化合物の溶融レオロジーに及ぼす影響が最小限、化合物の吸湿性(CMA)が低い、コスト効率がよいといった、望ましい属性を有しているべきである。
【0042】
中間転写ベルトおよびフューザー部材の場合、ポリマー複合材料フィルムの導電性は、ポリマーマトリックス、導電性カーボンブラックの種類、導電性カーボンブラックの濃度、ポリマーマトリックス中のカーボンブラックの分散性、コーティングプロセス中の、導電性カーボンブラックの分布に依存する。
【0043】
よりよい性能の中間転写ベルトおよびフューザー部材を得るために、カーボンブラック分散物の均一性および安定性が重要である。カーボンブラックとポリマー樹脂との分子レベルでの相互作用が、これらの制御因子であろう。
【0044】
カーボンブラックの例を、本明細書に記載の分散物の導電性成分として選択した。以下のカーボンブラックが、本明細書に記載の実施形態で適している。Evonik Degussa GmbHから入手可能なColour Black FW1(pH3.5、BET表面積 320m/g)、Colour Black FW18(pH4.5)、Special Black 4(pH3.0)、Colour Black S170(pH4.5)、Colour Black S160(pH4.5)、Printex L(pH9.0)が、好適なカーボンブラックである。Caboy Corporationから入手可能なMonarch 1000(pH2.5)、Monarch 1400(pH2.5)、Mogul L(pH2.5)、Regal 400R(pH4.0)も適している。一実施形態では、カーボンブラックのpHは、約10未満である。別の実施形態では、カーボンブラックのpHは、約7未満である。。別の実施形態では、カーボンブラックのpHは、約5未満である。
【0045】
カーボンブラックの表面処理は、カーボンブラックとイソシアネートとを混合し、溶液を形成することによって行われる。好適なイソシアネートとしては、ジイソシアノヘキサントルエンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。イソシアネートは、カーボンブラック粒子の外側表面でアミドを形成すると考えられる。この混合物に、さらなる溶媒を加えてもよい。好適な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N’−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
上述のように処理したカーボンブラック粒子は、FT−IR(フーリエ変換赤外)スペクトルの吸収が1660cm−1および1525cm−1にあり、これにより、カーボンブラック粒子の外側表面にアミドが存在することを確認した。
【0047】
無水物およびシランの溶液を調製する。無水物とシランが反応し、イミドを生成する。好適なシランとしては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなど、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な無水物としては、無水トリメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物など、およびこれらの混合物が挙げられる。この溶液は、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N’−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、およびこれらの混合物のような溶媒を含んでいてもよい。
【0048】
上述の溶液と、表面処理したカーボンブラックとを均質化し、分散物を形成する。この溶液中で、カーボンブラックの表面にあるカルボン酸がアミドに変換され、カーボンブラック粒子表面に余分なイソシアネート基が存在する。このイソシアネートは、無水物/シラン溶液中に存在するカルボン酸と反応しやすいので、無水物/シラン溶液は、カーボンブラック分散物とは別個に調製する必要がある。この溶液を別個に製造しないと、カーボンブラック粒子上に生成するアミドの数が減る場合がある。
【0049】
この分散物を製造したら、種々のポリマーと混合し、コーティング溶液を形成し、この溶液から、中間転写体またはフューザー部材のフィルムを製造することができる。
【0050】
転写部材を製造するのに適したポリマー材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエチレン−co−ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミド(ポリアミドイミドを含む)、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PVDFまたはアクリル樹脂、またはこのような材料のブレンドまたは合金が挙げられる。これらの材料を、図2に示されるようなフューザー部材の基板層として用いてもよい。
【0051】
中間転写ベルトの抵抗は、約10Ω/sq〜約1013Ω/sq、または約10Ω/sq〜約1012Ω/sqである。体積抵抗率は、約10ohm−cm〜約1012ohm−cm、または約10ohm−cm〜約1011ohm−cmである。カーボンブラックの濃度を変えることによって、上述の抵抗を与えることができる。カーボンブラックは、中間転写体の合計固形分の約1重量%〜約60重量%、または約5重量%〜約40重量%、または約10重量%〜約30重量%の量で存在してもよい。中間転写体の外側層の厚みは、約1マイクロメートル〜約150マイクロメートル、または約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0052】
ポリイミドの例は、迅速に硬化するポリイミドポリマー、例えば、VTECTM PI 1388、080−051、851、302、203、201、PETI−5(すべて、Richard Blaine International,Incorporated(ペンシルバニア州レディング(Reading))から入手可能)を含む。また、300℃を超える温度で硬化させることができる他の熱硬化性ポリイミドとしては、PYRE M.L(登録商標)RC−5019、RC5057、RC−5069、RC−5097、RC−5053、RK−692(すべて、Industrial Summit Technology Corporation(ニュージャージー州パーリン(Parlin))から市販されている);RP−46およびRP−50(両方とも、Unitech LLC(バージニア州ハンプトン(Hampton))から市販);DURIMIDE(登録商標)100(FUJIFILM Electronic Materials U.S.A.、Inc.(ロードアイランド州ノースキングストン(North Kingstown))から市販);KAPTON(登録商標)HN、VNおよびFN(すべて、E.I.DuPont(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から市販されている)が挙げられる。
【0053】
中間転写体で使用可能なポリアミドイミドの例は、VYLOMAX(登録商標)HR−11NN(N−メチルピロリドンの15重量%溶液、T=300℃、M=45,000)、HR−12N2(N−メチルピロリドン/キシレン/メチルエチルケトン=50/35/15の30重量%溶液、T=255℃、M=8,000)、HR−13NX(N−メチルピロリドン/キシレン=67/33の30重量%溶液、T=280℃、M=10,000)、HR−15ET(エタノール/トルエン=50/50の25重量%溶液、T=260℃、M=10,000)、HR−16NN(N−メチルピロリドンの14重量%溶液、T=320℃、M=100,000)(すべて、日本の東洋紡から市販)、TORLON(登録商標)AI−10(T=272℃)(Solvay Advanced Polymers、LLC(ジョージア州アルファレッタ(Alpharetta))から市販)である。
【0054】
また、中間転写体として選択してもよいポリイミドは、「アミド」酸を含まず、完全にイミド化しており、イミド形態に変換するのに高温での硬化を必要としないポリマーとして調製してもよい。
【0055】
中間転写体(特に、コアシェル内)に含まれる特定の選択した熱可塑性ポリマーの例は、以下のようにあらわされる、E.I.DuPont(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から市販されているKAPTON(登録商標)KJ
【化1】



(式中、xは2に等しく;yは2に等しく;mおよびnは、約10〜約300である);および以下のようにあらわされる、West Lake Plastic Companyから入手可能なIMIDEX(登録商標)
【化2】



(式中、zは1に等しく、qは、約10〜約300である)である。
【0056】
選択されるポリカーボネートバインダーの例としては、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、中間転写体バインダーは、MAKROLON(登録商標)として市販されており、重量平均分子量が約50,000〜約500,000のビスフェノール−A−ポリカーボネート樹脂で構成されている。
【0057】
ポリマー層を任意の既知の様式でコーティングする。基板層をこのような材料でコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体噴霧コーティング、浸漬コーティング、巻き線ロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波による噴霧、ブレードコーティング、成型、ラミネート加工などが挙げられる。
【0058】
上述の転写部材またはフューザー部材に、添加剤およびさらなるフィラーが存在してもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)をコーティング組成物に用い、次いで、剥離層を形成してもよい。種々の実施形態では、例示的な無機粒子としては、金属酸化物、非金属の酸化物、金属が挙げられる。特定的には、金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化銅、五酸化アンチモン、インジウムスズ酸化物が挙げられる。非金属の酸化物としては、例えば、窒化ホウ素、炭化ケイ素(SiC)が挙げられる。金属としては、例えば、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、鉄が挙げられる。種々の実施形態では、開示されている複合材料材料を作るために、当業者に既知の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
特定の実施形態を詳細に記載する。これらの実施例は、説明を意図したものであり、材料、条件またはプロセスパラメーターは、これらの実施形態に記載されているものに限定されない。他の意味であると記載されていない限り、すべての部は、固形分の割合である。
【実施例】
【0060】
(実施例1.カーボンブラックの表面改質および分散)
溶液A:無水トリメリット酸19.8グラムを、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)400グラムに撹拌しながら溶解した。この透明溶液に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン18.4を室温で2時間かけて滴下した。加えた後、この溶液を14時間で160℃まで加熱した。反応混合物を室温まで冷却すると、粘性の不透明な溶液が得られた。
【0061】
分散物B:ジイソシアノヘキサン18.6グラムを、溶媒(DMF)620と混合し、激しく撹拌しながら、100グラムのEVONIK(登録商標)のカーボンブラックFW 1を加えた。この分散物を室温で18時間混合した。FT−IRから、1660cm−1および1525cm−1に吸収があることが示され、このことは、この混合物にアミド結合があることを示している。
【0062】
室温で、溶液Aを溶液Bにゆっくりと加えた。この混合物を6400rpmで1時間かけて均質にした。得られた分散物は、体積平均径が680nmであった。この分散物を作業台に2週間放置した後、層分離は起こっておらず、このことは、分散物が安定であることを示している。
【0063】
(実施例2.ITBフィルムコーティング)
ポリスルホン樹脂(Radel)2.0グラムを、DMF4グラムおよびTHF4グラムに溶解した。実施例1で調製したカーボンブラック分散物1.5グラムを、このポリスルホン樹脂溶液に加えた。得られた混合物を2時間振り混ぜることによって十分に撹拌した。この混合物をポリイミドITB基板にオーバーコートとしてコーティングした。オーバーコートの厚みは、約16マイクロメートルであった。このオーバーコートの表面抵抗率を表1に示す。
(表1)
【表1】



表1は、印加した電圧に対し、ITBの表面抵抗率の変動が少ないことを示している。これにより、カーボンブラック分散物が非常に均一であり、安定であることを確認している。
【0064】
比較実験では、EVONIK(登録商標)として入手したカーボンブラックFW1を、なんら表面改質せずに使用した。これらの実験では、表面抵抗率は大きく変動した。
【0065】
本明細書に記載したように、導電性カーボンブラックを系中で表面改質すると、ITBフィルムの導電性安定性が得られ、コーティングの均一性もかなり向上することから実証されるように、カーボンブラック分散物が大きく改良されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水物と、シランと、溶媒とを混合して溶液を形成することと;
カーボンブラックと、イソシアネートとを混合し、カーボンブラック混合物を形成することと;
前記溶液と、前記カーボンブラック混合物とを均質化し、カーボンブラック分散物を形成することとを含む、組成物を形成する方法。
【請求項2】
前記無水物が、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソシアネートが、ジイソシアノヘキサントルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シランが、トリメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボンブラック分散物中のカーボンブラック粒子が、FT−IRで1660cm−1および1525cm−1に吸収を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のカーボンブラック分散物とポリマーとを混合し、コーティング混合物を形成することと;
基板に前記コーティング混合物をコーティングすることと;
前記コーティング混合物を乾燥することとを含む、中間転写体を製造する方法。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PVDF、アクリル樹脂からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載のカーボンブラック分散物とポリマーとを混合し、コーティング混合物を形成することと;
基板に前記コーティング混合物をコーティングすることと;
前記コーティング混合物を乾燥することとを含む、フューザー部材を製造する方法。
【請求項9】
ポリマーに分散したカーボンブラック粒子の層を含み、このカーボンブラック粒子が、FT−IRで1660cm−1および1525cm−1に吸収を示す、中間転写体。
【請求項10】
ポリマーに分散したカーボンブラック粒子の層を含み、このカーボンブラック粒子が、FT−IRで1660cm−1および1525cm−1に吸収を示す、フューザー部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−25951(P2012−25951A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152196(P2011−152196)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】