説明

導電性コーティング用組成物、導電性薄膜及び導電性フィルム

【課題】耐熱性及び耐湿熱性に優れた導電性薄膜を製造することができる導電性コーティング用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電性コーティング用組成物は、酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを必須成分とし、温度25℃においてpHが4.0以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティング用組成物、導電性薄膜及び導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、一般的に着色しているが、非常に薄い塗膜で導電性を発現するため、高い透明性が確保でき、例えば、各種ディスプレイの光学フィルム、透明電極等の導電性薄膜として利用されている。このような導電性薄膜は、導電性高分子を含む導電性コーティング用組成物を用いて製造することができる。
【0003】
このような導電性コーティング用組成物としては、例えば、水溶性または水分散性のπ共役系導電性ポリマーと水溶性酸化防止剤と水とを含む、導電性コーティング用組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、電導度が10s/cm以上の導電性高分子物質と、酸化防止剤とを含有する導電性高分子物質の有機溶媒分散液も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの導電性コーティング用組成物を用いて形成された導電性薄膜では、耐熱性及び耐湿熱性に劣り、使用時に発熱するデバイスには適用することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−196022号公報
【特許文献2】特開2005−68166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性及び耐湿熱性に優れた導電性薄膜を形成することができる導電性コーティング用組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記導電性コーティング用組成物を用いて製造された導電性薄膜、及び、この導電性薄膜を備えた導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを必須成分とする導電性コーティング用組成物のpHを特定の範囲に調整することにより、耐熱性及び/又は耐湿熱性に極めて優れた導電性薄膜を製造することができる導電性コーティング用組成物となること見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の導電性コーティング用組成物は、酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを必須成分とし、温度25℃においてpHが4.0以上であることを特徴とする。
【0009】
また、上記導電性コーティング用組成物は、上記酸性の導電性高分子として、チオフェン誘導体をモノマー成分する導電性高分子を含むことが好ましく、上記チオフェン誘導体をモノマー成分する導電性高分子の導電率は、0.15S/cm以上であることが好ましい。
【0010】
また、上記導電性コーティング用組成物において、上記水溶性酸化防止剤は、2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、及び、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
また、上記導電性コーティング用組成物は、更に、アンモニア水を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の導電性薄膜は、本発明の導電性コーティング用組成物を用いて製造されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の導電性フィルムは、基材と、上記基材上に積層された本発明の導電性薄膜とを備えることを特徴とする。
ここで、上記導電性フィルムは、温度60℃、湿度93%で240時間の耐湿熱性試験、温度80℃で240時間の耐熱性試験のうち少なくともいずれか一つの試験において、試験後の表面抵抗率が、試験前の表面抵抗率の0.7〜1.3倍であるであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性コーティング用組成物は、酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを必須成分とし、そのpHが温度25℃において4.0以上であるため、耐熱性及び耐湿熱性に優れた導電性薄膜を形成することできる。
また、本発明の導電性薄膜及び導電性フィルムは、本発明の導電性コーティング用組成物を用いて形成されているため、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の導電性コーティング用組成物について詳細に説明する。
本発明の導電性コーティング用組成物は、酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを含み、温度25℃においてpHが4.0以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の導電性コーティング用組成物においては、水溶性酸化防止剤を含み、そのpHが4.0以上であることが極めて重要であり、上記導電性コーティング用組成物は、水溶性酸化防止剤を含むとともにpHが上記範囲にあるため、上記導電性コーティング用組成物を用いて導電性薄膜を形成した場合、当該導電性薄膜は耐熱性及び耐湿熱性に極めて優れることとなる。一方、いずれかの要件が欠けた場合には、所望の耐熱性及び耐湿熱性を確保することが困難となる。
上記pHが4.0未満では、形成した導電性薄膜の耐熱性及び耐湿熱性が不充分となる。一方、上記pHの好ましい上限は10.0であり、上記pHが10.0を超えると、導電性高分子が凝集したり、導電性コーティング剤の貯蔵安定性が極めて悪くなる場合がある。
【0016】
上記導電性コーティング用組成物を、水溶性酸化防止剤を含むとともにそのpHを4.0以上とすることにより、上述した効果を奏する理由は定かではないが、以下のように推測している。
即ち、水溶性酸化防止剤を配合することにより、熱によって導電性高分子中の共役結合が酸化されることを防ぐことができると推測される。さらにpHを4.0以上に調整することにより、酸性の導電性高分子中のドーパントが中和され、導電性を司る導電性高分子の分子の自由度が高くなり、耐熱性や耐湿熱性が向上すると推測される。
上記導電性コーティング用組成物のpHは、6.0〜9.5が好ましく、さらに好ましくは、7.0〜8.5である。
なお、本発明において、pHは、25℃で測定した値をいう。
【0017】
酸性の導電性高分子を含む導電性コーティング用組成物は、通常、酸性を示すこととなる。
これに対して、本発明の導電性コーティング用組成物は、後述するpH調整剤を含有させる手段等を採用することで、酸性の導電性高分子含む組成物を中和し、そのpHを4.0以上に調整している。これにより、上記導電性コーティング用組成物は、耐熱性及び耐湿熱性に優れた導電性薄膜を形成するための導電性コーティング用組成物として極めて好適なものとなる。
酸性を示す導電性コーティング用組成物を中和する工程は、本件技術分野では、貯蔵安定性や導電性の低下が懸念されるため通常行われることのない工程であり、実際、中和工程を行うことにより導電性が低下することは文献でも報告されている。
これに対し、本発明は従来の技術常識に反して、酸性の導電性高分子を含む導電性コーティング用組成物を中和し、そのpHを所定の範囲に調整することで、耐熱性及び耐湿熱性に優れた導電性薄膜を形成するのに好適な導電性コーティング用組成物となることを見出し、完成した発明である。
なお、上記導電性コーティング用組成物のpHを上記範囲に調整する方法については後述する。
【0018】
次に、上記導電性コーティング用組成物の配合物について説明する。
1.酸性の導電性高分子
上記酸性の導電性高分子は、形成した導電性薄膜(コーティング層)に導電性を付与するための配合物である。なお、本発明において、酸性の導電性高分子とは、導電性高分子の濃度が1.0〜1.5質量%となるように、水に溶解または分散させた際に、その液のpHが4.0未満になるものをいう。
上記酸性の導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体と、ドーパントとの複合体等が挙げられる。
これらのなかでは、チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含むものが好ましく、チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーとドーパントとの複合体がより好ましい。水分散性、化学的安定性、透明性及び導電性に優れるからである。
【0019】
上記チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含む導電性高分子としては、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体が好ましい。
上記ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0020】
【化1】

【0021】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、RおよびRは相互に独立して水素原子又はC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって置換されていてもよいC1−4のアルキレン基を表す。
上記C1−4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、RおよびRが一緒になって形成される、置換されていてもよいC1−4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,2−エチレン基、1−エチル−1,2−エチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。好適には、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基であり、1,2−エチレン基が特に好適である。上記アルキレン基を持つポリチオフェンとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとからなる複合体は、導電性や透明性に加えて化学的安定性に極めて優れており、導電性高分子としてこの複合体を用いて形成した導電性薄膜は、湿度に依存しない極めて安定した導電性と極めて高い透明性とを有している。
さらには、導電性高分子としてこの複合体を含有する導電性コーティング用組成物は、低温短時間で薄膜形成が可能であることから、大量生産が求められる導電性フィルムの作製に極めて適した生産性も有している。
【0022】
上記ドーパントは、上述したチオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーとイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェンを水中に安定に分散させることができる陰イオン形態のポリマーである。
このようなドーパントとしては、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類およびスルホン酸ポリマー類は、ビニルカルボン酸類およびビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0023】
上記ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000より大きく、500000以下であることが好ましい。より好ましくは40000〜200000である。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。尚、上記ポリマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用した。
【0024】
上記チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含む導電性高分子の導電率は、その好ましい下限が、0.15S/cmである。上記導電率が0.15S/cm未満では、導電性が求められる用途、例えば、回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる場合がある。より好ましい下限は、0.20S/cmである。
一方、上記導電率は特に上限なく、高いほど好ましい。
上記導電率が0.15S/cm以上の上記チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含む導電性高分子は、重合条件や分子量等を適宜選択することで容易に作製することができ、例えば、分子量を増大させることで上記のように高い導電性を示す導電性高分子を得ることができる。また、上記導電性高分子が、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体の場合、作製時の重合系が示すpHを最適化することで、高い導電性を示す導電性高分子を得ることができる。また、このような高い導電性を示す導電性高分子は、市販品を使用してもよい。
【0025】
上記導電性高分子の含有量は、特に限定されないが、導電性コーティング用組成物全体に対し、固形分として0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。この範囲では塗布を容易に実施することができるからである。一方、0.01質量%未満では、導電性が発現しにくくなり不都合が生じる場合がある。
なお、上記導電性高分子の好ましい含有量は、使用時の含有量であり、上記導電性コーティング用組成物の販売時や運搬時にはより高濃度であってもよく、その場合、使用時に溶剤及び/又は分散媒を添加して適宜希釈すればよい。
【0026】
2.水溶性酸化防止剤
上記水溶性酸化防止剤は、形成した導電性薄膜(コーティング層)の耐熱性及び耐湿熱性を向上させるため、及び、空気暴露による抵抗上昇を抑制するための配合物である。
上記水溶性酸化防止剤を配合することで、耐熱性及び耐湿熱性が向上する理由は、上述した通り推測している。
なお、本件技術分野において、水溶性酸化防止を配合することにより、耐熱性及び耐湿熱性が向上しうるとの知見は、本願発明者らによって見出された新たな知見である。
【0027】
また、水溶性酸化防止剤を配合した場合、形成した導電性薄膜中において、水溶性酸化防止が均一に存在し得るため、空気暴露による抵抗上昇を効果的に抑制することも可能となる。なお、脂溶性酸化防止剤は、薄膜中に均一に存在し得えないため、空気暴露による抵抗上昇を抑制することができない。
【0028】
上記水溶性酸化防止剤として特に限定されず、還元性又は非還元性の水溶性酸化防止剤が挙げられる。還元性を有する水溶性酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、D(−)−イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等の2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物;マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロース、アラビノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類又は二糖類(但し、スクロースを除く);カテキン、ルチン、ミリセチン、クエルセチン、ケンフェロール、サンメリン(登録商標)Y−AF等のフラボノイド;クルクミン、ロズマリン酸、クロロゲン酸、ヒドロキノン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物;システイン、グルタチオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。非還元性の水溶性酸化防止剤としては、例えば、フェニルイミダゾールスルホン酸、フェニルトリアゾールスルホン酸、2−ヒドロキシピリミジン、サリチル酸フェニル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等の酸化劣化の原因となる紫外線を吸収する化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
これらのなかでは、2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、及び、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、特に、D(−)−イソアスコルビン酸、又は、下記構造式で表されるサンメリンY−AFがより好ましい。その理由は、これらの水溶性酸化防止を使用した場合、導電性コーティング用組成物のpHを4.0以上に調整した際の効果、即ち、導電性薄膜を形成した際に、当該導電性薄膜の耐熱性及び耐湿熱性が向上するとの効果、を特に顕著に享受することができるからである。
【0030】
【化2】

【0031】
上記水溶性酸化防止剤の添加量は、上記酸性の導電性高分子の固形分100質量部に対して0.01〜1000質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。
上記添加量が0.01質量部未満では、耐熱性及び耐湿熱性を向上させる効果を享受することができない場合があり、一方、1000質量部を超えると、導電性薄膜の導電性や光学特性が損なわれるおそれがあり、さらに、導電性薄膜を形成した際に、薄膜が曇ったり、べとついたりする場合がある。
【0032】
3.溶媒
上記導電性コーティング用組成物は、水を必須成分とする。しかし、導電性コーティング用組成物の各成分の溶解性または分散性を保つことができれば、水と混和する有機溶媒を添加してもよい。なお、導電性コーティング用組成物の全ての成分を完全に溶解させるものを「溶媒」、不溶成分を分散させるものを「分散媒」と称するが、本明細書では、特に区別せずに、いずれも「溶媒」と記載する。
上記水の含有量は特に限定されないが、導電性高分子の固形分100質量部に対して、50〜500000質量部が好ましく、50〜10000質量部がより好ましい。
導電性高分子の固形分100質量部に対して、50質量部より少ない場合は、導電性高分子の水への溶解性(分散性)が低下する場合があり、導電性高分子の固形分100質量部に対して、500000より多い場合は、十分な導電性が得られない場合がある。
【0033】
水と混和する有機溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;テトラヒドロフラン;アセトン;アセトニトリル等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
上記の有機溶媒の中でもメタノール、エタノール、および2−プロパノールが好ましい。有機溶媒の含有量は特に限定されず、導電性高分子の固形分100質量部に対して、0〜50000質量部が好ましく、0〜20000質量部がより好ましい。また、水と有機溶媒とを併用する場合、両者の比率(水と有機溶媒との比率)は、100:0〜5:95が好ましく、100:0〜30:70がより好ましい。
このように、上記導電性コーティング用組成物は、溶媒として水のみを含んでいてもよいし、水と有機溶媒とを含んでいてもよいが、水のみを含む場合は、環境負荷が小さく、また、経済的に有利であるとの利点を有する。なお、溶媒が有機溶媒のみの場合は、導電性高分子の安定性が低下する場合がある。
【0035】
4.pH調整剤
上記導電性コーティング用組成物は、そのpHを温度25℃において4.0以上とするために、pH調整剤を含むことが好ましく、上記pH調整剤としては、アンモニア水を用いることが好ましい。
上述した通り、上記導電性コーティング用組成物は、そのpHが4.0以上であることを技術的特徴の一つとしているが、上記導電性コーティング用組成物がアンモニア水を含む場合、そのアンモニア水の量で、導電性コーティング用組成物のpHを調整することができるからである。
なお、アンモニア水の配合量は、pHは設定値に応じて適宜選択すれば良い。
【0036】
また、上記導電性コーティング用組成物は、他のアルカリ性化合物を含んでいてもよく、そのアルカリ性化合物により、上記導電性コーティング用組成物のpHを調整してもよい。上記他のアルカリ性化合物の具体例としては、例えば、アルカノールアミン、1級アミン、2級アミン、および3級アミン等の水溶性アミン化合物が挙げられる。
上記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルジプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等のヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。上記1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。上記2級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられ、上記3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられるが、これに限定されない。なお、これらの水溶性アミン化合物は単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0037】
5.その他の添加剤
上記導電性コーティング用組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲内で、一般的に導電性コーティング用組成物に用いられる添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、バインダー、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、導電性向上剤等が挙げられる。
【0038】
上記バインダーは、基材上に導電性薄膜を形成した際に、両者の密着性及び導電性薄膜の強度を向上させる目的で用いられる。
上記バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のモノマーを共重合して得られるコポリマー;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
バインダーの含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性高分子の固形分100質量部に対して、1〜5000質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましい。
【0040】
上記架橋剤は、導電性薄膜の強度をさらに向上させる目的で用いられる。
上記架橋剤は、バインダーと併用して、バインダーを架橋する目的で使用してもよく、バインダーを併用せずに架橋剤の自己架橋膜を形成させてもよい。架橋させるための触媒として、ドーパントが有する酸性基を利用してもよく、新たに、有機酸または無機酸を添加してもよい。また、感熱性酸発生剤、感放射線性酸発生剤、感電磁波性酸発生剤等を添加してもよい。
【0041】
上記架橋剤としては、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系、ポリイソシアネート系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性高分子の固形分100質量部に対して、6〜100000質量部が好ましく、20〜1000質量部がより好ましい。
【0043】
上記界面活性剤またはレベリング剤は、レベリング性を向上させ、均一な塗布膜を得ることができるものなら特に限定されない。このような界面活性剤またはレベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素含有有機化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;さらにはアクリル系の共重合物等が挙げられる。これらの中でも、レベリング性の点からはシロキサン系化合物およびフッ素含有化合物が好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
界面活性剤またはレベリング剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性高分子の固形分100質量部に対して、1〜23000質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましい。
【0045】
上記導電性向上剤は、形成した導電性薄膜の導電性を向上させる目的で用いられる。
上記導電性向上剤としては、特に限定されず、所望の導電性に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N−ジメチルホルムアミド、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、およびN−メチルピロリドンが好ましい。これらの導電性向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記導電性向上剤の含有量は特に限定されないが、導電性高分子の固形分100質量部に対して、8〜380000質量部が好ましく、50〜2000質量部がより好ましい。
【0047】
次に、上記導電性コーティング用組成物の製造方法について説明する。
上記導電性コーティング用組成物は、少なくとも酸性の導電性高分子を含む溶液(水溶液、又は、水分散液)を中和し、そのpHを4.0以上に調整する工程を経て、製造することができる。
具体的には、例えば、上記導電性高分子を含む水溶液(又は、水分散液)を、上記pH調整剤を含む溶液を添加することで中和し、そのpHを4.0以上、好ましくはpH6.0以上、さらに好ましくはpH7.0以上に調整した後、上記水溶性酸化防止剤等の他の各成分を添加すればよい。なお、各成分の添加順序は、この順序に限定されない。
ここでは、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌機で、約1〜60分間撹拌しながら混合することが好ましい。
【0048】
次に、本発明の導電性薄膜について説明する。
本発明の導電性薄膜は、本発明の導電性コーティング用組成物を用いて製造されたことを特徴とする。
上記導電性薄膜は、樹脂、金属等からなる支持体や離型紙等に、本発明の導電性コーティング用組成物塗布し、その後、必要に応じて乾燥処理を行うことにより製造することができる。
【0049】
ここで、上記導電性コーティング用組成物を塗布する方法としては、公知の塗布方法を使用することができる。上記塗布方法としては、例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。さらに、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の印刷法も適用できる。これらの方法の中から、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0050】
また、塗布した導電性コーティング用組成物を乾燥させる場合、その方法は特に限定されないが、例えば、通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等の乾燥機等を用いて行えばよい。また、加熱手段を有する乾燥機(熱風乾燥機、赤外線乾燥機等)を用いると、乾燥および加熱を同時に行うことが可能である。さらに、これらの乾燥機以外に、加熱・加圧機能を具備する加熱・加圧ロール、プレス機等を用いてもよい。
また、乾燥条件も特に限定されないが、25〜200℃で10秒〜2時間程度の条件が好ましく、50〜150℃で20秒〜30分程度の条件がより好ましい。
【0051】
上記導電性薄膜を製造する場合、本発明の導電性コーティング用組成物は、導電性コーティング用組成物中の導電性高分子の塗布量が、乾燥状態で、好ましくは0.01〜1g/m、より好ましくは0.05〜0.5g/mとなるように塗布するのがよい。導電性高分子の塗布量が0.01g/m未満では、導電性薄膜に導電性が発現しにくくなり、一方、導電性高分子の塗布量が1g/mより多い場合、導電性薄膜の透明性が低下する場合がある。
【0052】
上記導電性薄膜の膜厚は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。上記膜厚が0.01μm未満では、導電性が発現し難くなるおそれがあり、一方、上記膜厚が10μmを超えると、導電性薄膜の透明性が低下するおそれがあり、透明性が要求される場合は不都合が生じることがある。
【0053】
次に、本発明の導電性フィルムについて説明する。
本発明の導電性フィルムは、基材と、上記基材上に積層された本発明の導電性薄膜とを備えることを特徴とする。
従って、基材上に、上述した方法で本発明の導電性薄膜を形成することにより、上記導電性フィルムとすることができる。
【0054】
上記基材としては特に限定されず、例えば、樹脂基材、ガラス基材等が挙げられ、上記導電性フィルムの用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、導電性フィルムに透明性が要求される場合は、透明な基材を選択すればよい。
上記樹脂基材の材料樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー共重合体、シクロオレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、変性ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、半芳香族ポリアミド6T6、半芳香族ポリアミド6T66、半芳香族ポリアミド9T等のポリアミド樹脂;アクリル系樹脂;ポリスチレン;アクリルニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂);アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0055】
上記基材の形状は特に限定されず、導電性フィルムの形状に合せて適宜選択すればよく、フィルム状、板状、その他所望の形状が挙げられる。従って、上記基材としてはフィルム、シート、板、成形物等、種々のものを使用することができる。
また、上記基材の表面は、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理が施されていても良い。これらの処理を施すことにより、導電性コーティング用組成物の塗布性を向上させることができる。
また、上記導電性フィルムにおいて、上記導電性薄膜は基材の片面にのみ形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。更には、基材の各面の全体に形成されていてもよいし、一部にのみ形成されていてもよい。
【0056】
また、上記導電性フィルムは、温度60℃、湿度93%で240時間の耐湿熱性試験、温度80℃で240時間の耐熱性試験のうち少なくともいずれか一つの試験において、試験後の表面抵抗率が、試験前の表面抵抗率の0.7〜1.3倍であることが好ましく、耐湿熱性試験及び耐熱性試験の両試験において、試験後の表面抵抗率が、試験前の表面抵抗率の0.7〜1.3倍であることがより好ましい。
この理由は、試験後の表面抵抗率が上記範囲から外れる場合は、例えば、帯電防止フィルムや、各種透明電極用途で使用した際に、長期にわたって品質が一定しないことになり好ましくないからである。
また、上記試験後の表面抵抗率は、試験前の表面抵抗率の0.75〜1.15倍であることが特に好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に記載のない限り、各々「質量部」および「質量%」を示す。
【0058】
(配合液Aの調製)
50.0部のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク株式会社製:CleviosPH500、導電率0.24S/cm、固形分1.1質量%)、0.57部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス株式会社製:ガブセンES−210、固形分25.0質量%)、2.44部のジメチルスルホキシド(東京化成工業株式会社製:純度>99.0%)、1.41部のメラミン系架橋剤(住友化学株式会社製:SumitexResinM−3、固形分80%)、30.21部の水、17.05部のエタノール(和光純薬株式会社製:試薬特級)、0.55部の界面活性剤(固形分10%)、及び、0.06部のレベリング剤(固形分100%)を混合して30分撹拌した。次いで、得られた混合物にアンモニア水(10質量%)を適量加え、pH8.5に調整したのち30分撹拌した。その後、pHを調整した混合物を400メッシュのSUS製の篩でろ過し、配合液Aを調製した。
【0059】
(配合液Bの調製)
アンモニア水を用いないこと以外は、配合液Aの調製と同等の方法により配合液Bを調製した。配合液BのpHは2.3であった。
【0060】
(配合液Cの調製)
77.0部のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク株式会社製:CleviosP、導電率0.09S/cm、固形分1.3質量%)、12.0部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス株式会社製:ガブセンES−210、固形分25.0質量%)、3.0部のN―メチルピロリドン(ナカライテスク株式会社製:試薬1級)、7.0部のエタノール(和光純薬株式会社製:試薬特級)、及び、1.0部の界面活性剤(固形分10質量%)を混合して30分撹拌した。得られた混合物を400メッシュのSUS製の篩でろ過し、配合液Cを調製した。配合液CのpHは2.4であった。
【0061】
(実施例1)
上記配合液Aに、水溶性酸化防止剤としてD(−)−イソアスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)の10質量%水溶液を配合液A100部に対して5.0部添加した。次いで、30分間メカニカルスターラーで撹拌し、導電性コーティング用組成物(組成物1)を調製した。組成物1のpHは表1に記載した。
【0062】
基材(東レルミラーT60(東レ株式会社製:厚み188μm))上に、上記組成物1を、ワイヤーバーNo.8を用いてバーコート法により塗布した(ウエット膜厚12μm)。次いで、130℃で15分乾燥させることにより、基材上に導電性薄膜(膜厚0.12μm)を形成し、導電性フィルムを得た。
【0063】
(実施例2)
D(−)−イソアスコルビン酸水溶液の添加量を、7.5部にしたこと以外は、実施例1と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物2)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物2のpHは表1に記載した。
【0064】
(実施例3)
D(−)−イソアスコルビン酸水溶液の添加量を、10.0部にしたこと以外は、実施例1と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物3)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物3のpHは表1に記載した。
【0065】
(実施例4)
D(−)−イソアスコルビン酸水溶液の代わりに、水溶性酸化防止剤としてサンメリンY−AF(三栄現エフ・エフ・アイ株式会社製)の10質量%水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物4)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物4のpHは表1に記載した。
【0066】
(実施例5)
サンメリンY−AF水溶液の添加量を、7.5部にしたこと以外は、実施例4と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物5)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物5のpHは表1に記載した。
【0067】
(実施例6)
サンメリンY−AF水溶液の添加量を、10.0部にしたこと以外は、実施例4と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物6)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物6のpHは表1に記載した。
【0068】
(実施例7)
サンメリンY−AF水溶液の添加量を、20.0部にしたこと以外は、実施例4と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物7)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物7のpHは表1に記載した。
【0069】
(比較例1)
配合液Aの代わりに、配合液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物8)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物8のpHは表1に記載した。
【0070】
(比較例2)
D(−)−イソアスコルビン酸水溶液の添加量を、7.5部にしたこと以外は、比較例1と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物9)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物9のpHは表1に記載した。
【0071】
(比較例3)
D(−)−イソアスコルビン酸水溶液の代わりに、水溶性酸化防止剤としてサンメリンY−AF水溶液を用いた以外は、比較例2と同様の手順で導電性コーティング用組成物(組成物10)を調製した後、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。なお、組成物10のpHは表1に記載した。
【0072】
(比較例4)
配合液Cをそのまま導電性コーティング用組成物(組成物11)とし、この導電性コーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。
【0073】
(比較例5)
配合液Aをそのまま導電性コーティング用組成物(組成物12)とし、この導電性コーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。
【0074】
(比較例6)
配合液Bをそのまま導電性コーティング用組成物(組成物13)とし、この導電性コーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして基材上に導電性薄膜を形成し、導電性フィルムを得た。
【0075】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜6に係る導電性薄膜(導電性フィルム)について、下記の方法により、耐熱性試験及び耐湿熱性試験を行った。結果を表1に示した。
ここで、導電性薄膜(導電性フィルム)の表面抵抗率は、JIS K6911に従い、三菱化学株式会社製ロレスタ−GP(MCP−T600)を用いて測定した。
【0076】
耐熱性試験(表面抵抗率の上昇率)
まず、導電性薄膜(導電性フィルム)の初期表面抵抗率を測定した。次に、そのサンプルを80℃に調整したオーブンに入れ、240時間後に取り出し、その表面抵抗率を測定した。そして、初期表面抵抗率を1とし、表面抵抗率の変化率(倍)を算出した。
【0077】
耐湿熱性試験(表面抵抗率の上昇率)
まず、導電性薄膜(導電性フィルム)の初期表面抵抗率を測定した。次に、そのサンプルを60℃、相対湿度93%に調整した恒温恒湿機に入れ、240時間後に取り出し、その表面抵抗率を測定した。そして、初期表面抵抗率を1とし、表面抵抗率の変化率(倍)を算出した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示した結果から、酸性の導電性高分子、水溶性酸化防止剤及び水を含み、pHが4.0以上の導電性コーティング用組成物(実施例1〜7)では、耐熱性試験及び耐湿熱性試験後の表面抵抗率の変化率が小さく、耐熱性及び耐湿熱性に優れる導電性薄膜を形成することができることが明らかとなった。
一方、導電性コーティング用組成物のpHが4.0未満の場合(比較例1〜4、6)や、導電性コーティング用組成物が水溶性酸化防止剤を含有しない場合(比較例4〜6)の場合、耐熱性試験及び耐湿熱性試験後の表面抵抗率の変化率が大きく(表面抵抗率が大きく上昇)、このような導電性コーティング用組成物を用いて形成した導電性薄膜は、耐熱性及び耐湿熱性に劣ることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の導電性コーティング用組成物によれば、耐熱性及び/又は耐湿熱性に優れた導電性薄膜を形成することが可能であり、本発明の導電性コーティング用組成物、導電性薄膜及び導電性フィルムは、各種ディスプレイの光学フィルム、各種電子部品、電子部品包装用のキャリアテープおよびカバーテープ、トレイなどの帯電防止剤、無機EL、有機EL、タッチパネル、電子ペーパーなどの透明電極および電磁波シールドなどの分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の導電性高分子と水溶性酸化防止剤と水とを必須成分とし、温度25℃においてpHが4.0以上であることを特徴とする導電性コーティング用組成物。
【請求項2】
前記酸性の導電性高分子として、チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含む請求項1に記載の導電性コーティング用組成物。
【請求項3】
前記チオフェン誘導体をモノマー成分するポリマーを含む導電性高分子の導電率は、0.15S/cm以上である請求項2に記載の導電性コーティング用組成物。
【請求項4】
前記水溶性酸化防止剤は、2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、及び、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性コーティング用組成物。
【請求項5】
更に、アンモニア水を含む請求項1〜4のいずれかに記載の導電性コーティング用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性コーティング用組成物を用いて製造されたことを特徴とする導電性薄膜。
【請求項7】
基材と、前記基材上に積層された請求項6に記載の導電性薄膜とを備えることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項8】
温度60℃、湿度93%で240時間の耐湿熱性試験、温度80℃で240時間の耐熱性試験のうち少なくともいずれか一つの試験において、試験後の表面抵抗率が、試験前の表面抵抗率の0.7〜1.3倍である請求項7に記載の導電性フィルム。

【公開番号】特開2012−172024(P2012−172024A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33752(P2011−33752)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】