説明

導電性コーティング組成物及び積層体

【課題】導電性及び透過性が高く、基材との密着性に優れていることに加え、硬度が高く、しかも耐薬品性に優れた帯電防止膜を形成することができる導電性コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 粒径(D50)が200nm以下の導電性ポリマー粒子、及びアルコキシシランオリゴマーを含むバインダー成分、を含む、導電性コーティング組成物。前記導電性ポリマー粒子の粒径は60nm以下が好ましく、30nm以下がさらに好ましい。前記導電性ポリマーは、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜、帯電防止膜等を形成することができる導電性コーティング組成物、及びこれを使用してなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のディスプレイの光学フィルム表面に、静電気により塵埃が付着するとディスプレイの視認性が低下することになる。これを防止する手法として、光学フィルム表面に帯電防止膜を設けることが知られている。
【0003】
そのような帯電防止膜に配合する導電材としては、従来、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の、導電性を示す無機微粒子が使用されている。このような無機微粒子は透明性や膜強度に優れるという利点があった。
【0004】
しかしながら、無機微粒子を含む帯電防止膜は通常、スパッタリングや真空蒸着等により形成されるものであり、その形成プロセスに高価な設備と、例えば500〜600℃といった高温の設定が必要になるという欠点があった。
【0005】
また、無機微粒子を含む帯電防止膜をガラス基板上に成膜すると、反射率が高くなる結果、ガラスとの屈折率差が大きくなり、ひいてはディスプレイの視認性が低下するという問題もあった。さらに、インジウムは希少金属であり、供給源が限られており、供給量の変動等があるため、使用を回避することが望ましい。
【0006】
上述の無機微粒子に代わる導電材として、例えばポリチオフェン等の、導電性の有機高分子材料を液晶ディスプレイの帯電防止膜に使用することが提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。また、例えば基材への密着性や膜硬度向上を目的として、導電性の有機高分子材料と各種アルコキシシラン類を併用して帯電防止膜を形成することも提案されている(例えば、特許文献3、4及び5を参照)。
【0007】
有機系の導電性材料によると、スパッタリングや真空蒸着によることなく、一般的な塗工手段により帯電防止膜を形成することができるので、簡易かつ低温のプロセスにより成膜できるという利点がある。しかも、得られる帯電防止膜は、導電性及び透過性が高く、基材との密着性にも優れているという利点があった。
【0008】
しかしながら、従来知られている有機系の帯電防止膜は、膜硬度が十分ではなく、表面に傷がつきやすいという欠点があった。さらには、耐薬品性が十分ではないという問題もあった。例えば液晶ディスプレイにおける帯電防止膜として使用する場合には、帯電防止膜形成後、その表面に偏光板を設置する前に、アセトン等の有機溶剤を用いた洗浄や、アルカリ洗浄を行なう必要があるが、これらの洗浄により帯電防止膜が変質しやすく、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−96953号公報
【特許文献2】特開2004−246080号公報
【特許文献3】特開2005−82768号公報
【特許文献4】特開2006−294532号公報
【特許文献5】特表2010−528123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、導電性及び透過性が高く、基材との密着性に優れていることに加え、硬度が高く、しかも耐薬品性に優れた帯電防止膜を形成することができる導電性コーティング組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討したところ、導電性ポリマーを粒径の小さな粒子状のものとし、これを、特定の加水分解性シラン化合物と組み合わせて使用することで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、粒径(D50)が200nm以下の導電性ポリマー粒子、及び下記一般式により表されるアルコキシシランオリゴマーを含むバインダー成分、を含む、導電性コーティング組成物に関する。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、H(水素原子)、水酸基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。ただし、複数のR及びRのうち少なくとも1個はアルコキシ基である。nは、2〜20の整数を表す。
【0015】
また本発明は、基材と、当該基材上に設けられた導電膜とを含む積層体であって、前記導電膜は、前記導電性コーティング組成物から形成されたものである、積層体にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性コーティング組成物によれば、一般的な塗工手法により低温で基材に塗布することで帯電防止膜を形成することができ、塗布から成膜に至るまでのプロセスを簡易かつ安価に実施することができる。
【0017】
本発明の導電性コーティング組成物から得られる導電膜は、導電性が高い(すなわち表面抵抗率が1.0E+10Ω/□以下と低い)と共に、透過性が高く、基材との密着性にも優れている。さらに、鉛筆硬度がB以上と膜硬度が高い。
【0018】
本発明の導電性コーティング組成物をガラス基材に塗布した場合には、鉛筆硬度がH以上と膜硬度がさらに高くなると共に、優れた耐薬品性(耐有機溶剤性、耐アルカリ性)も発揮することができる。また、形成される導電膜の透過性が極めて高い。さらに、ガラスとの屈折率差が小さいため、ガラス表面にある欠陥(孔又はディンプル)が見えにくくなる効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的な液晶表示措置の積層構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
本発明の導電性コーティング組成物は、導電性ポリマー粒子とバインダー成分とを含有する。
【0022】
(導電性ポリマー粒子)
本発明で用いられる導電性ポリマーは、導電性を示す高分子材料である。具体的には、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、これらの誘導体などのπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。
なかでも、ポリチオフェンとドーパントとの複合体からなるポリチオフェン系導電性ポリマーが高導電性と化学安定性の観点から好適に用いられる。ポリチオフェン系導電性ポリマーは、より詳しくは、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とドーパントからなる複合体である。
【0023】
ポリチオフェン系導電性ポリマーを構成するポリ(3,4−二置換チオフェン)は、以下の式(1):
【化2】



【0024】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンであることが好ましい。当該陽イオン形態のポリチオフェンとは、ドーパントであるポリ陰イオンとの複合体になるために、ポリチオフェンの一部から電子が引き抜かれることによって一部が陽イオン形態になっているポリチオフェンのことをいう。
【0025】
式(1)中、R及びRは、相互に独立して、水素原子又はC1−4のアルキル基を表すか、あるいは、RとRが結合して環状構造を形成する、置換又は無置換のC1−4のアルキレン基を表す。上記C1−4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。RとRが結合して環状構造を形成する、置換又は無置換のC1−4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,2−エチレン基、1−エチル−1,2−エチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基などが挙げられる。C1−4のアルキレン基が有することができる置換基としては、ハロゲン基や、フェニル基などが挙げられる。好適なC1−4のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が挙げられ、1,2−エチレン基が特に好適である。上記のアルキレン基を持つポリチオフェンとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0026】
ポリチオフェン系導電性ポリマーを構成するドーパントは、上述のポリチオフェンとイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェンを水中に安定に分散させることができる陰イオン形態のポリマー、すなわちポリ陰イオンであることが好ましい。このようなドーパントとしては、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸など)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などが挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類およびスルホン酸ポリマー類は、ビニルカルボン酸類およびビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類(例えば、アクリレート類、スチレンなど)との共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0027】
上記のポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000より大きく、500000以下であることが好ましい。より好ましくは40000〜200000である。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性ポリマーの水に対する分散安定性が低下する場合がある。尚、上記ポリマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用する。
【0028】
ポリチオフェン系導電性ポリマーは酸化剤を用いた水中での酸化重合によって得ることができる。当該酸化重合では2種類の酸化剤(第一酸化剤及び第二酸化剤)が使用される。好適な第一酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、過ホウ酸アルカリ塩、銅塩等が挙げられる。これらの第一酸化剤の中で、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、及び、ペルオキソ二硫酸が最も好適である。上記第一酸化剤の使用量は、使用するチオフェン類モノマーに対して、1.5〜3.0mol当量が好ましく、2.0〜2.6mol当量がさらに好ましい。
【0029】
好適な第二酸化剤としては、金属イオン(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムのイオン)を触媒量で添加することが好ましい。なかでも、鉄イオンが最も有効である。金属イオンの添加量は、使用するチオフェン類モノマーに対して、0.005〜0.1mol当量が好ましく、0.01〜0.05mol当量がさらに好ましい。
【0030】
本酸化重合では水を反応溶媒として用いる。水に加えて、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコールや、アセトン、アセトニトリルなどの水溶性溶媒を添加することもできる。
【0031】
以上の酸化重合によって導電性ポリマーの水分散体が得られる。 本発明の導電性コーティング組成物は、粒子状の導電性ポリマーを含有する。このような導電性ポリマー粒子は、導電性ポリマーの水分散体に含まれる導電性ポリマー粒子であってもよい。当該水分散体は、上述した酸化重合により製造することができる。また、有機溶媒(特にエタノール等のアルコール)分散体に含まれる導電性ポリマー粒子であってもよい。このような導電性ポリマーの有機溶媒分散体は、例えば特許第4163867号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0032】
本発明で使用する導電性ポリマー粒子の粒径は200nm以下であることが必須である。200nm以下と粒径が小さい粒子を用いることで、導電性ポリマーとアルコキシシランオリゴマーとが複合して形成される導電性膜の緻密性が向上し、膜硬度が向上する。具体的には、アルコキシシランオリゴマーが形成する緻密な構造の内部に導電性ポリマー粒子が分散性良く入り込むことが可能となるため、膜硬度が向上すると共に、高い導電性を発揮することができる。また、同様の理由により、本発明の導電性コーティング組成物をガラス基材上に塗布した場合には、膜硬度がH以上と膜硬度がさらに高くなると共に、耐薬品性(耐有機溶剤性、耐アルカリ性)が改善される。粒径が200nmを超える粒子を使用する場合には、導電性が低いことに加えて、膜硬度及び耐薬品性の改善を達成することができない。粒径が小さいほど上記効果の改善度合いが大きくなるため、導電性ポリマー粒子の粒径は60nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、例えば、1nm以上であり、好ましくは3nm以上である。より好ましく5nm以上、又は、10nm以上である。本発明では、導電性ポリマー粒子の粒径は、導電性粒子の個数基準の積算(累積)分布を測定し、当該積算分布における積算値50%の粒径として算出する。
【0033】
導電性ポリマー粒子の粒径は、上述した導電性ポリマーの分散体を製造する際に分散条件を適宜選択することで、容易に調整することが可能である(例えば、特許第3966252号公報の段落[0042]を参照)。具体的には、ホモジナイザー等の分散攪拌機を使用することができる。(例えば、特開2010−24304号公報の段落[0019]を参照)。
【0034】
(バインダー成分)
本発明の導電性コーティング組成物は、導電性ポリマー粒子と共に、バインダー成分を含有する。バインダー成分は導電性コーティング組成物が基材上で膜を形成するために必要な成分である。本発明ではバインダー成分は1種類のみからなるものでもよいし、2種類以上を併用するものであってもよい。しかし、本発明では、バインダー成分として、少なくともアルコキシシランオリゴマーを含有することを必須とする。
【0035】
バインダー成分の総配合量は、前記導電性ポリマー粒子100重量部に対して150〜10000重量部であることが好ましい。150重量部以上であると、バインダー成分の使用割合が十分となり、形成される導電膜で良好な硬度及び耐薬品性を得ることができる。10000重量部以下であると、導電性ポリマーが十分量含まれることになるため、高い導電性と良好な耐薬品性を持つ導電膜を形成することが可能になる。より好ましくは300〜7000重量部である。
【0036】
(アルコキシシランオリゴマー)
本発明のコーティング組成物には、アルコキシシランオリゴマーが含まれる。当該アルコキシシランオリゴマーが塗膜において緻密な構造を形成するため、本発明では硬度の高い導電膜が得られるものと考えられる。さらに、小粒径の導電性ポリマー粒子がその緻密構造の内部に分散性良く入り込むために、硬度及び耐薬品性が優れると共に、高い導電性を有する導電膜を得ることができる。
【0037】
アルコキシシランオリゴマーとは、アルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される高分子量化されたアルコキシシランであり、シロキサン結合(Si−O−Si)結合を1分子内に1個以上有するオリゴマーのことをいう。重量平均分子量は特に限定されないが、152より大きく、4000以下であることが好ましい。より好ましくは、500〜1500程度が好ましい。尚、上記オリゴマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用する。
【0038】
本発明で使用するアルコキシシランオリゴマーは下記一般式により表される。当該式より明らかなとおり、本発明のアルコキシシランオリゴマーは、従来使用されているアルコキシシランのモノマー(1分子あたりケイ素原子を1個含む化合物)や、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ポリエーテル又はポリエステル等で変性されているアルコキシシラン化合物とは異なる化合物である。
【0039】
【化3】

【0040】
式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、H(水素原子)、水酸基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。ただし、複数のR及びRのうち少なくとも1個はアルコキシ基である。nは、2〜20の整数を表し、より好ましくは2〜14の整数を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられる。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。本発明で使用するアルコキシシランオリゴマーは、下記一般式により表される化合物1種類のみからなるものでもよいし、複種類の混合物であってもよい。
【0041】
本発明では、バインダー成分として、分子内にあらかじめシロキサン結合を持つアルコキシシランオリゴマーを使用することで、シロキサン結合を持たないアルコキシシランモノマーやエポキシシラン等と比較して、導電性膜内に、より緻密な構造を形成しやすくなり、その結果、本発明の優れた効果を達成できると推定される。この効果は、成膜温度がより低温になるほど顕著である。また、バインダー成分として、アルコキシシランポリマー(アルコキシシランオリゴマーよりも縮合数nが大きいもの)を使用した場合には、立体反発が大きくなるため、反応性が悪くなり緻密な構造を形成しにくくなることで、その結果、膜硬度が弱くなると推定される。この傾向は分子量が大きくなるほど顕著である。
【0042】
導電性コーティング組成物に含まれる全てのバインダー成分に対するアルコキシシランオリゴマーの配合量は97〜100重量%であることが好ましい。97重量%以上であると、アルコキシシランオリゴマーの配合による膜の緻密性が十分なレベルに達し、高い膜硬度及び優れた耐薬品性を示す導電膜の形成が可能となる。より好ましくは98.5重量%以上である。
【0043】
(アルコキシシランオリゴマー以外のバインダー成分)
本発明の導電性コーティング組成物は、上述のとおり、アルコキシシランオリゴマー以外のバインダー成分を含有してもよい。前述したアルコキシシランオリゴマーを含有する限りその他のバインダー成分については限定されないが、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等のシランカップリング剤をバインダー成分として使用できる。また、樹脂バインダーを使用することもでき、具体的には、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のモノマーを共重合して得られるコポリマー等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(溶媒又は分散媒)
本発明の導電性コーティング組成物は導電性ポリマー粒子及びアルコキシシランオリゴマーのみからなるものであってもよいが、取扱を容易にするため、通常、溶媒及び/又は分散媒をさらに含有することが好ましい。溶媒又は分散媒としては、導電性ポリマー及びアルコキシシランオリゴマーを溶解又は分散できるものであれば特に限定はない。導電性コーティング組成物が水系の場合は、水と、水と水に混和する溶媒の混合溶媒とを使用できる。水に混和する溶剤としては特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類、ジメチルアセトアミド、アセトン、アセトニトリルおよびそれらの混和物などが挙げられる。導電性コーティング組成物が有機溶剤系の場合は、上記水と混和する溶剤として挙げた溶剤およびトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン等が使用できる。上記の溶媒又は分散媒の中でもメタノール、エタノール、2−プロパノールが特に好ましい。なお、導電性コーティング用組成物の各成分が完全に溶解している場合は「溶媒」、何れかの成分が溶解せずに分散している場合は「分散媒」と言うこととする。
【0045】
導電性コーティング組成物の固形分濃度は均一な水分散液であれば特に限定されないが、塗布時に約0.01〜50重量%程度が好ましい。より好ましくは1〜20重量%である。この範囲では塗布を容易に実施することができる。しかし、コーティング組成物の販売や運搬時にはより高濃度であってもよく、その場合、使用時に溶剤及び/又は分散媒を添加して適宜希釈すればよい。
【0046】
(導電性向上剤)
導電性をさらに改善するために、本発明のコーティング組成物にはさらに導電性向上剤を配合してもよい。前記導電性向上剤としては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N−ジメチルホルムアミド、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられ、これらの中でも、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。導電性コーティング組成物中における導電性向上剤の含量は特に限定されないが、導電性ポリマー粒子100重量部に対して、430〜13000重量部程度が好ましく、430〜4330重量部程度がより好ましい。
【0047】
(任意成分)
本発明の導電性コーティング組成物には、さらに、界面活性剤(表面調整剤)、消泡剤、レオロジーコントロール剤、密着性付与剤、酸化防止剤、酸性触媒、粒子等を適宜添加することが可能である。
【0048】
前記界面活性剤は、レベリング性を向上し、均一な塗布膜を得ることができるものなら特に限定されない。このような界面活性剤として、次の化合物が挙げられる:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサンなどのシロキサン化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素含有有機化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体などのポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジンなどのカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムなどのスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウムなどのリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイドなどのアミド化合物;さらにはアクリル系の共重合物などがある。これらの中でも、レベリング性の点からはシロキサン系化合物およびフッ素含有化合物が好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0049】
粘度を向上させる目的で増粘剤を添加してもよい。このような増粘剤としては、アルギナン酸誘導体、キサンタンガム誘導体、カラギーナンやセルロースなどの糖類化合物などの水溶性高分子などが挙げられる。
【0050】
前記酸化防止剤としては特に限定されず、還元性または非還元性の水溶性酸化防止剤が挙げられる。還元性を有する水溶性酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどの2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物;マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロース、アラビノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなどの単糖類および二糖類;カテキン、ルチン、ミリセチン、クエルセチン、ケンフェロールなどのフラボノイド;クルクミン、ロズマリン酸、クロロゲン酸、ヒドロキノン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸などのフェノール性水酸基を2個以上有する化合物;システイン、グルタチオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)などのチオール基を有する化合物などが挙げられる。非還元性の水溶性酸化防止剤としては、例えば、フェニルイミダゾールスルホン酸、フェニルトリアゾールスルホン酸、2−ヒドロキシピリミジン、サリチル酸フェニル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウムなどの酸化劣化の原因となる紫外線を吸収する化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、本発明の導電性コーティング組成物は耐擦傷性や摺動性を付与する粒子を含むことができる。粒子としては、無機粒子が挙げられ、無機粒子として、シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化ストロンチウム、酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ホルニウム、酸化マンガン、酸化錫、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、珪酸カルシウム、チタン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属酸化物や硫化モリブデン、硫化アンチモン、硫化タングステン、窒化硼素、沃化ニッケル等の一種、又は複数の合成物、並びにその含水物やカオリン、クレー、タルク、マイカ、ベントナイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、パイロフィライト、カーボンブラック、黒鉛等の天然若しくは合成鉱物粒子が挙げられる。
【0052】
(コーティング組成物の製造方法)
本発明の導電性コーティング組成物を製造する方法は特に制限されないが、上記各々の組成物をメカニカルスターラーやマグネティックスターラーなどの撹拌機で撹拌しながら混合して、約1〜60分間撹拌混合すればよい。具体的には、まず、導電性ポリマー粒子が所定の粒径を持つよう導電性ポリマーの分散体を製造し、次いで、各成分を混合、撹拌すればよい。
【0053】
(積層体)
本発明の導電性コーティング組成物は、被塗布基材に塗布した後、乾燥させることで、導電性の塗膜を形成することができる。導電性コーティング組成物を塗布する被塗布基材を構成する材料としては特に限定はされないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー共重合体、シクロオレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、変性ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、半芳香族ポリアミド6T6、半芳香族ポリアミド6T66、半芳香族ポリアミド9T等のポリアミド樹脂、その他アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリルニトリルスチレン、アクリルニトリルブタジエンスチレン、塩化ビニル樹脂等の有機材料;ガラス等の無機材料を挙げることができる。特に本発明の導電性コーティング組成物はガラス基板に塗布することで、膜硬度が鉛筆硬度でH以上と極めて高くなると共に、優れた耐薬品性(耐有機溶剤性、耐アルカリ性)を発揮することが可能となるので特に好ましい。
【0054】
導電性コーティング組成物の塗布法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、ディップコート法、カーテンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。また、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェットプリンチング、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の印刷法も適用できる。
上記導電性コーティング組成物の塗膜の乾燥には、通常の通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などの乾燥機などが用いられる。これらのうち加熱手段を有する乾燥機(熱風乾燥機、赤外線乾燥機など)を用いると、乾燥および加熱を同時に行うことが可能である。加熱手段としては、上記乾燥機の他、加熱機能を具備する加熱・加圧ロール、プレス機などが用いられ得る。
【0055】
塗膜の乾燥条件は特に限定されないが、例えば、25℃〜200℃で10秒〜2時間程度であり、好ましくは、80℃〜150℃で5〜30分程度である。 本発明の導電性コーティング組成物から形成される塗膜の乾燥膜厚は、目的に応じて適宜選択することができる。しかし、導電性及び硬度、耐薬品性向上のため、25〜380nmが好ましい。より好ましくは30〜350nmである。
導電性コーティング組成物を基材表面に塗布、乾燥させることで、基材表面に形成された導電膜を含む積層体を製造することができる。前記積層体は後述するように種々の用途に適用され得るものであるが、特に、基材がガラス基板である場合には、液晶表示装置に含まれる積層体として好適に使用することができる。
【0056】
図1は、一般的な液晶表示装置の積層構造を示す模式図である。符号1は液晶表示装置におけるカラーフィルタであり、カラーフィルタ1表面にはガラス基板2が積層される。さらに、帯電防止膜(導電膜)3、及び、偏光板4がこの順序で積層される。本発明の積層体はガラス基板2と帯電防止膜3とのみからなるものであってもよいし、前述した液晶表示装置の積層構造中に含まれるものであってもよい。また、液晶表示装置を完成する前の、カラーフィルタ1とガラス基板2と帯電防止膜3とからなる積層体に含まれるものであってもよい。
【0057】
液晶表示装置の駆動方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical alignment)方式、横電界駆動方式の3種類が現在広く行なわれている。本発明の積層体はいずれの方式の液晶表示層にも適用することが可能である。中でも、横電界駆動方式では塵埃付着防止に加え、液晶駆動性向上のため、帯電防止膜を設けることが必須であるが、本発明の積層体はこの横電界駆動方式の液晶表示装置においても好適に適用することができる。この場合、帯電防止膜は、静電気による液晶乱れを改善する効果を達成すると共に、高透明性やガラスとの屈折率差に起因してディスプレイの視認性を向上する効果も有する。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、「部」は特記ない限り、「重量部」を意味する。
【0059】
粒径(D50)は、各水分散液について個数基準の積算(累積)分布を測定し、当該積算分布における積算値50%の粒径として算出した。具体的には、各水分散液を純水で希釈して0.1%水溶液に調整したサンプルを使用し、シスメックス社製粒度分布計ZETASIZER Nano−ZSを使用して、ゼータ電位による粒径測定を行った。
【0060】
(実施例1)
粒径(D50)が20nmである導電性ポリマー(ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)を含む水分散液Baytron PH500(H.C.スタルク社製)を100部(この中に前記導電性ポリマーを1.1部、イオン交換水を98.9部含む。前記導電性ポリマーを100部とした場合、イオン交換水は8991部)、バインダーであるアルコキシシランオリゴマーMS−51(三菱化学社製)24部(前記導電性ポリマーを100部とした場合は、2165部)、導電性向上剤であるN−メチルホルムアミド(ナカライテスク社製、試薬)19部(導電性ポリマーを100部とした場合は1730部)、エタノール(ナカライテスク社製、試薬)514部(導電性ポリマーを100部とした場合は、46727部)、イオン交換水48部(導電性ポリマーを100部とした場合は、4364部)を用いて均一な水分散液を調製した。
【0061】
次いで、無アルカリガラス板に上記分散液を塗布し、オーブンにて130℃、30分間加熱して成膜を行い、帯電防止膜を表面に有する試験片を得た。なお、試験片における乾燥膜厚は水分散液の塗布量から計算して調整した。
MS−51:アルコキシシランオリゴマーを表す前記一般式において、R=R=メチル基、R=R=メトキシ基、重量平均分子量500〜700(カタログ値)、n=4〜7(重量平均分子量から計算)
【0062】
(実施例2)
実施例1のBaytron PH500(H.C.スタルク社製)の代わりに、Baytron PH1000(H.C.スタルク社製、D50が52nm、前記導電性ポリマーを1.1部含む)を使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1のBaytron PH500(H.C.スタルク社製)の代わりに、Baytron P(H.C.スタルク社製、D50が140nm、前記導電性ポリマーを1.1部含む)を使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0064】
(比較例1)
実施例1のBaytron PH500(H.C.スタルク社製)の代わりに、Baytron HC V4(H.C.スタルク社製、D50が570nm、前記導電性ポリマーを1.1部含む)を使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0065】
(実施例4〜7)
バインダーであるアルコキシシランオリゴマーMS−51の使用量を表2に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を得た。
【0066】
(実施例8及び9)
実施例1の各成分に加えて、さらに、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであるZ−6043(東レ・ダウコーニング社製)を表3に記載の量使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0067】
(実施例10)
実施例1の各成分に加えて、さらに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであるZ−6040(東レ・ダウコーニング社製)を表4に記載の量使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0068】
(実施例11)
実施例1の各成分に加えて、さらに、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであるBYK−301(ビックケミー社製)を表4に記載の量使用して、実施例1と同様に試験片を得た。
【0069】
(実施例12)
実施例1のアルコキシシランオリゴマーMS−51(三菱化学社製)24部の代わりに、MS−56(三菱化学社製)24部を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験片を得た。
MS−56:アルコキシシランオリゴマーを表す前記一般式において、R=R=メチル基、R=R=メトキシ基、重量平均分子量1100〜1300(カタログ値)、n=10〜12(重量平均分子量から計算)
【0070】
(比較例2〜4)
実施例1のアルコキシシランオリゴマーMS−51(三菱化学社製)24部の代わりに、下記のバインダーそれぞれ24部を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験片を得た。
【0071】
比較例2:モノマー(アルコキシシランのモノマー(シロキサン結合を含まない)、メチルトリメトキシシラン):Z−6366(東レ・ダウコーニング社製)
比較例3:ポリエステル樹脂:プラスコートRZ−105(互応化学社製)
比較例4:エポキシ系シラン化合物:Z−6040(東レ・ダウコーニング社製)
【0072】
(実施例13)
実施例1のN−メチルホルムアミド(ナカライテスク社製、試薬)19部の代わりに、N−メチルピロリドン(ナカライテスク社製、試薬)19部を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験片を得た。
【0073】
(実施例14〜17)
実施例1の水分散液の塗布量を調整することで乾燥膜厚を表7に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を得た。
【0074】
(実施例18)
実施例1の水分散液を、ガラス板の代わりにPETフィルム(ルミナーT−60、東レ社製)に塗布し、オーブンにて130℃、30分間加熱して成膜を行い、帯電防止膜を表面に有する試験片を得た。
【0075】
(比較例5)
本比較例では、特許文献1(特開平10−96953号)の第1実施形態の検証を行なった。すなわち、[0051]の記載に従って、無アルカリガラス上に、3,4−エチレンジオキシチオフェン1gとp−トルエンスルホン酸第2鉄5gのエタノ一ル溶液を塗布し、オーブンで加熱乾燥させ、有機導電膜を形成して試験片を作製した。
【0076】
(比較例6)
本比較例では、特許文献1(特開平10−96953号)の第5実施形態の検証を行なった。すなわち、[0070]の記載に従って、無アルカリガラス上に、3,4−エチレンジオキシチオフェンlg、p−トルエンスルホン酸第2鉄2g、ポリ酢酸ビニル5gをイソプロパノール−アセトン(1:1)混合物に溶解した溶液を塗布した後、塗布した基板を加熱乾燥した。さらに、流水で洗浄し、乾燥して試験片を作製した。
【0077】
(比較例7)
本比較例では、無機物ITOを利用した従来の帯電防止膜の検証を行なった。すなわち、スパッタリング法によりガラス基板にITO膜を成膜して試験片を作製した。
【0078】
以上の実施例及び比較例により得られた試験片の物性を以下の方法により評価した。
【0079】
(1)膜強度
各試験片の帯電防止膜の膜強度(鉛筆硬度)は、JIS−K5600−5−4の試験法に準じて、安田精機製作所社製鉛筆引っかき硬度試験機を用いて測定した。
【0080】
(2)密着性
各試験片の帯電防止膜の基材への密着性は、JIS K5400の碁盤目剥離試験に従って評価した。評価は次の3段階で行った。
【0081】
◎:10点、○:8点、×:6点以下
(3)全光線透過率(%)、ヘイズ(%)
各試験片の全光線透過率及びヘイズは、JIS K7150に従い、スガ試験機社製ヘイズコンピュータHGM−2B(商品名)を用いて測定した。
【0082】
(4)表面抵抗率(Ω/□)
各試験片の帯電防止膜の表面抵抗率は、JIS K7194に従い、三菱化学社製ハイレスタUP(MCP−HT−450、商品名)を用いて、プローブUA、印加電圧10V〜500Vで測定した。
【0083】
(5)屈折率
各試験片の屈折率は、池尻光学工業所社製エリプソメータDHA−XA2/S6(商品名)にて波長632.8nmで測定した。
【0084】
(6)耐薬品性
各試験片を溶剤(水酸化ナトリウム水溶液、又は、アセトン溶液)に浸漬した後、表面抵抗率及び膜強度を上記のとおり測定し、その結果を下記基準に基づき3段階で評価した。水酸化ナトリウム水溶液への浸漬条件は、室温で2分間浸漬とした。アセトンへの浸漬条件は、室温で1時間浸漬とした。
○:表面抵抗率が10乗以下、かつ膜強度が鉛筆硬度B以上
△:表面抵抗率が10乗以下、もしくは膜強度が鉛筆硬度B以上
×:表面抵抗率が10乗以上、かつ膜強度が鉛筆硬度B以下
以上で得られた結果を以下の表1〜表8で示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】


なお、表8中の比較例5及び6では、成膜された帯電防止膜の塗膜表面が粗いために、屈折率を測定することができなかった。
【0093】
表1の実施例1〜3と比較例1より、導電性ポリマー粒子の粒径は200nm以下であることが必須であり、粒径が200nmを超えると、表面抵抗率が上昇し(すなわち導電性が低く)、耐薬品性に劣ることが分かる。
【0094】
表5の実施例1、12及び比較例2〜4より、バインダー成分としてアルコキシシランのオリゴマーを使用すると、耐薬品性に優れ、かつ膜硬度が高いが、アルコキシシランのモノマーを使用すると耐薬品性が大きく低下し、ポリエステル系のシラン化合物やエポキシ系のシラン化合物を使用すると、耐薬品性に加え膜硬度も低下することが分かる。
【0095】
表2の実施例1及び4〜7より、導電性ポリマー粒子100重量部に対してアルコキシシランオリゴマーの使用量が150〜10000重量部の範囲にあると、本発明の優れた効果を達成することが分かる。
【0096】
表3の実施例1、8及び9並びに表4の実施例10及び11より、本発明の組成物は、アルコキシシランオリゴマー以外のバインダー成分を含有する場合であっても、バインダー成分中のアルコキシシランオリゴマーの割合が97〜100重量%の範囲にあると、本発明の優れた効果を達成することが分かる。
【0097】
表7の実施例1及び実施例14〜17より、帯電防止膜の乾燥膜厚が25〜380nmの範囲の範囲にあると、本発明の優れた効果を達成することが分かる。
【0098】
表8の実施例18より、無アルカリガラス以外のPET基材に塗布しても、本発明の優れた効果を達成することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明による導電性コーティング組成物は、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、電池、コンデンサー、化学センサー、表示素子、半導体材料、電磁波シールド材等において基材をコーティングすることで当該基材上に導電膜又は帯電防止膜を形成するために用いることができる。また、眼鏡や、自動車等のガラスに塗布するための導電性塗料、又は防錆塗料としても使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 カラーフィルタ
2 ガラス基板
3 帯電防止層
4 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径(D50)が200nm以下の導電性ポリマー粒子、及び
下記一般式により表されるアルコキシシランオリゴマーを含むバインダー成分、
を含む、導電性コーティング組成物。
【化1】


式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、H(水素原子)、水酸基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。ただし、複数のR及びRのうち少なくとも1個はアルコキシ基である。nは、2〜20の整数を表す。
【請求項2】
前記導電性ポリマー粒子の粒径が60nm以下である、請求項1記載の導電性コーティング組成物。
【請求項3】
前記導電性ポリマー粒子の粒径が30nm以下である、請求項1記載の導電性コーティング組成物。
【請求項4】
前記バインダー成分の総配合量は、前記導電性ポリマー粒子100重量部に対して150〜10000重量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性コーティング組成物。
【請求項5】
前記バインダー成分中の前記アルコキシシランオリゴマーの配合量が97〜100重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性コーティング組成物。
【請求項6】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体である、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性コーティング組成物。
【請求項7】
導電性向上剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性コーティング組成物。
【請求項8】
前記導電性向上剤が、N−メチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7記載の導電性コーティング組成物。
【請求項9】
液晶表示装置に含まれる帯電防止層を形成するのに使用される、請求項1〜8のいずれかに記載の導電性コーティング組成物。
【請求項10】
基材と、当該基材上に設けられた導電膜とを含む積層体であって、
前記導電膜は、請求項1〜9のいずれかに記載の導電性コーティング組成物から形成されたものである、積層体。
【請求項11】
前記導電膜の乾燥膜厚が25〜380nmである、請求項10記載の積層体。
【請求項12】
前記基材がガラス基板である、請求項10又は11記載の積層体。
【請求項13】
液晶表示装置に含まれる、請求項12記載の積層体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−102304(P2012−102304A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254419(P2010−254419)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】