説明

導電性ゴムローラ、その製造方法および電子写真装置

【課題】マイクロ波加硫による発泡ゴムチューブを用いた導電性ゴムローラの好適な製造方法を提供する。
【解決手段】主剤ゴムがアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物で構成された原料ゴム組成物が円筒状に押し出された後、マイクロ波加硫炉中にてマイクロ波照射により加硫発泡されて、発泡ゴムチューブとされ、次いで、該発泡ゴムチューブに導電性軸芯体を圧入して、加硫発泡ゴム層を導電性軸芯体上に形成する導電性ゴムローラの製造方法において、マイクロ波照射が照射強度1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下であり、かつ、マイクロ波照射中の発泡ゴムチューブ内部が190℃以上240℃以下にあり、該発泡ゴムチューブが厚み4mm以上10mm以下であり、かつ、JIS引張強さが1.5MPa以上7.0MPa以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ゴムローラ、特に、複写機、プリンター、静電記録装置等の電子写真装置において使用される導電性ゴムローラに、さらにその製造方法に関する。また、該導電性ゴムローラを転写ローラとする電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くには、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性のゴムローラが用いられている。従来、これらのローラのゴム層に導電性を付与するのに、ゴム材料にカーボンブラックなどの導電性充填剤を加えたり、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を使用したりされている(例えば、特許文献1)。しかし、これらのゴムローラは画像形成装置内で使用される際に長時間、高い電圧を負荷される。その結果、いずれのゴムローラにおいても長期使用による通電耐久によるゴム層の変質があり、引いては電気抵抗値の変化を起こしてしまう。
【0003】
このことから、導電性ゴムローラはその電気抵抗の耐久変化が比較的少ないイオン導電性のアクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムを主剤ゴムとして用いたり、導電性付与する材料としてイオン導電剤を配したゴム材料を用いたりしている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかし、現今、複写機、プリンターには高速化や長寿命化が要求され、導電性ゴムローラにはさらなる強い通電耐久力が求められている。
【0005】
また、これらのゴム材料には加硫剤、発泡剤、充填剤などが加えられ混練された原料ゴム組成物が、金型、押出し機などで未加硫の円筒状成形体とされた後、この未加硫の円筒状成形体が加熱により加硫発泡されて、発泡ゴムチューブにされる。その後、発泡ゴムチューブには軸芯体が圧入され、必要により、外径が円筒研磨されてローラ形状にされ、導電性ゴムローラとされる。なお、この導電性ゴムローラは、使用目的により表面に機能性表面層が形成されていることもある。
【0006】
発泡ゴムチューブの製造方法として、例えば、高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献3)、筒状金型等による金型内加硫(特許文献4)、マイクロ波照射による加硫(UHF加硫)(特許文献5)等が知られている。しかしながら、これら加硫方法において、使用原料ゴム、配合される材料、厚み等に制限はあるものの、短時間でかつ確実に加硫発泡が可能なことから、UHF加硫が好ましい方法である。
【0007】
ところで、特許文献5においては、通電耐久の向上を目的としたゴム材料が検討されているが、その加硫発泡装置は全長45mにも及ぶものである。すなわち、詳細な製造方法については十分検討されていないのが実情である。
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特開2003−064224号公報
【特許文献3】特開平11−114978号公報
【特許文献4】特開平11−201140号公報
【特許文献5】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、UHF加硫による発泡ゴムチューブを用いた導電性ゴムローラの好適な製造方法を提供すること、また、耐久性の高い電子写真装置の各種導電性ゴムローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、主剤ゴムとしてアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムを使用し、マイクロ波加硫炉中での発泡加硫中の未加硫円筒状成形体の芯温をコントロールすることにより上記課題が解決されることを見出し、さらに検討して、ついに本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、主剤ゴムがアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物で構成された原料ゴム組成物が円筒状に押し出された後、マイクロ波加硫炉中にてマイクロ波照射により加硫発泡されて、発泡ゴムチューブとされ、次いで、該発泡ゴムチューブに導電性軸芯体を圧入して、加硫発泡ゴム層を導電性軸芯体上に形成する導電性ゴムローラの製造方法において、マイクロ波照射が照射強度1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下であり、かつ、マイクロ波照射中の発泡ゴムチューブ内部が190℃以上240℃以下にあり、該発泡ゴムチューブの厚みが4mm以上10mm以下であり、かつ、JIS引張強さ(JIS K6251−1993)が1.5MPa以上7.0MPa以下であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0011】
また、本発明は、導電性軸芯体上に加硫発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、加硫発泡ゴム層が、主剤ゴムがアクリロニトリルゴムおよびエピクロルヒドリンゴムからなり、原料ゴム組成物が円筒状に押し出され、次いで加硫発泡されて形成された発泡ゴムチューブからなるものであり、加硫発泡が、円筒状に押し出された原料ゴム組成物を、マイクロ波加硫炉中にて1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下の照射強度でマイクロ波照射し、マイクロ波照射中の発泡ゴムチューブの内部を190℃以上240℃以下に加熱したものであり、発泡ゴムチューブの厚みが4mm以上10mm以下であり、かつそのJIS引張強さ(JIS K6251−1993)が1.5MPa以上7.0MPa以下であることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0012】
さらに、本発明は、転写ローラが、上記導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い耐久性を有する導電性ゴムローラを提供することが可能となった。また、本発明の導電性ゴムローラは電子写真装置用の各種導電性ゴムローラ、特に転写ローラとして、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で製造される導電性ゴムローラの一例の斜視図を図1に示す。
【0015】
図1において、1は導電性軸芯体であり、該導電性軸芯体1の外周に導電性の加硫発泡ゴム層2が形成されている。
【0016】
導電性軸芯体1は、通常、鉄、鋼、真鍮、不錆鋼等の中実棒あるいは中空棒であり、その表面にはニッケル等のメッキがされたものが使用される。そして、本発明では、外径が4mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0017】
加硫発泡ゴム層は、本発明では、主剤ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムが混合して使用され、それに、発泡剤、加硫剤、加硫促進剤、安定剤、導電剤等の必要な副資材が配合混練されて、原料ゴム組成物とされ、次いで押出機より円筒状に押し出され、マイクロ波加硫(UHF)炉中で加硫発泡され、さらに熱風加熱(HAV)炉で加硫されて、発泡ゴムチューブとなったものが所定の長さに切断され、該切断発泡ゴムチューブに上記導電性軸芯体が圧入されて、形成されたものである。なお、軸心体には予め接着剤が塗布されていても構わない。
【0018】
ここで重要なのは、加硫発泡に際して照射されるマイクロ波の強度および照射の際の円柱状に成形された原料ゴム組成物の温度を後記するようにコントロールすることである。さらに、加硫発泡ゴム層とされる発泡ゴムチューブのJIS引張強さ(JIS K6251−1993)が1.5MPa以上7.0MPa以下であることが重要である。
【0019】
なお、JIS引張強さの測定は、マイクロ波照射して加硫発泡中の円筒状の原料ゴム組成物が到達する温度にて原料ゴム組成物を加圧プレスにて加硫して厚み2mmのJISにて指定された標準試験片を作製する。また、円筒状の原料ゴム組成物の加硫発泡時の到着温度は、押出機から円筒状に押し出された原料ゴム組成物に測定点が表面より1mm以上中になるように蛍光式光ファイバー温度計「エイモスFL−2000」(商品名、安立計器株式会社製)のファイバーセンサー「FS400−20M」(商品名、安立計器株式会社製)を取り付け、円筒状原料ゴム組成物をマイクロ波加硫炉に搬送して加硫発泡させて、到達温度測定し、上記JIS試験片の加圧プレスでの作製の際の温度とする。
【0020】
本発明の加硫発泡ゴム層に使用される原料ゴムは、主剤ゴムがイオン導電性を有するアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムであり、これらは所定量、通常、質量比90/10以下20/80以上、好ましくは85/15以下50/50以上で、混合して使用される。その他、ポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料、ポリウレタン系高分子材料、RVCなどの熱可塑性エラストマー、アクリル系樹脂、スチレン酢酸ビニル共重合体、ブタジエンアクリロニトリル共重合体などの高分子材料等や、その他のゴム、エラストマー、樹脂を適量混合して用いることもできる。
【0021】
本発明では、主剤ゴムとしてイオン導電性のアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムを使用しているので、必ずしも必要でないが、導電性を安定して発揮させるために、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商標)等の導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2/SbO3固溶体等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉末等の電子導電性導電剤、LiCIO4、NaSCN等のイオン導電剤などを適宜選択して添加することも可能である。導電剤として導電性カーボンブラックを使用する時は、原料ゴム100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下、好ましくは10質量部以上50質量部以下が適当である。なお、導電剤の添加に代えて、上記原料ゴムとして、主鎖中あるいは側鎖にイオン導電性を示す極性構造、例えば、アミド結合、エステル結合、カルボキシル基、アンモニウム基(結合)を有するものを使用してもよい。
【0022】
また、本発明では、加硫発泡ゴム層の柔軟性、機械強度等を調整するために、カーボンブラック、炭酸カルシウム、SiO2等の充填剤を使用することもできる。なお、充填剤の使用量は、原料ゴム100質量部に対し100質量部以下、好ましくは5質量部以上50質量部以下とするのが適当である。
【0023】
本発明では、加硫発泡ゴム層とするために、通常、発泡剤を使用する。発泡剤として、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、オキシビスベンゼンスルフェニルヒドラジド(OBSH)等の有機発泡剤を単独でまたは混合して用いることできる。その使用量としては、加硫発泡ゴム層の柔軟性、機械強度、使用する加硫剤等により適宜変わるが、通常、原料ゴム100質量部に対し1質量部以上50質量部以下、好ましくは2質量部以上40質量部以下が適当である。なお、発泡剤の分解温度は、尿素、尿素樹脂等の尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物などの発泡助剤などを加えて低下させることもできる。
【0024】
本発明に用いられる加硫剤は、硫黄、過酸化物、金属酸化物などが挙げられ、好ましくは、硫黄である。これら加硫剤は、通常、加硫促進剤と共に使用される。なお、加硫剤として硫黄を使用したときは、原料ゴム、発泡剤、加硫発泡ゴム層の強度等により異なるが、通常、原料ゴム100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下、好ましくは2質量部以上10質量部以下とするのが適当である。
【0025】
加硫促進剤としては、従来公知のものから適宜選択して使用可能である。なお、チアゾール系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤の併用はCセット性に効果があることが一般的に知られているので、チアゾール系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を併用することが好ましい。チアゾール系促進剤として、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール(BMT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(BMTS)等を挙げることができ、スコーチ性が少なく、チウラム系加硫促進剤との併用に賞用されるジベンゾチアジルジスルフィド(BMTS)が好ましい。また、チウラム系加硫促進剤として、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TPTT)等が挙げられ、スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)が好ましい。なお、その他のチアゾール系加硫促進剤およびチウラム加硫促進剤も使用条件を整えることで使用可能である。
【0026】
加硫促進剤の使用量は、原料ゴム100質量部に対し、1質量部以上10質量部、好ましくは2質量部以上5質量部以下が適当である。
【0027】
以下、加硫発泡ゴム層用の発泡ゴムチューブの製造について説明する。
【0028】
図2は、マイクロ波を用いた連続加硫による発泡ゴムチューブの製造装置を示す。
【0029】
図において、11は押出機、12はマイクロ波加硫(UHF)炉、13は熱風加硫(HAV)炉、14は引取機、15は定尺切断機である。
【0030】
上記した加硫発泡ゴム層用の原料ゴム組成物は、バンバリーミキサーまたはニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形して、押出機11に投入される。次いで、押出機より原料ゴム組成物は、通常、内径2mm以上10mm以下、外径4mm以上16mm以下で円筒状に押し出される。該円筒状成形体は、UHF炉12内の、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト、またはテフロン樹脂を被服したコロ上に載置され、UHF炉12内へ搬送される。
【0031】
UFH炉12内に搬入された円筒状成形体に1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下の照射強度のマイクロ波が照射され、該UFH炉12内で該円筒状成形体は190℃以上240℃以下に加熱されて加硫発泡する。この加硫発泡した円筒状成形体はさらにテフロン樹脂を被覆したコロでHAV炉13に搬送され、さらに加硫発泡が完結される。なお、得られる発泡ゴムチューブは厚みが4mm以上10mm以下となるように加硫発泡を完了させることが肝要である。
【0032】
本発明において、UHF炉12内でのマイクロ波の照射強度は1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下としている。照射強度をこの範囲とすることにより、JIS引張強さが1.5MPa以上7.0MPa以下となり、より高い耐久性を有するゴムチューブを提供することができる。
【0033】
すなわち、マイクロ波の照射強度が1.0kW/m2未満の場合、原料ゴム組成物の成形体の厚みに関わらず、円筒状に成形されている原料ゴム組成物の温度が190℃未満になってしまい、加硫発泡不足となり、得られる発泡ゴムチューブのJIS引張強さが1.5MPa未満となる。これはゴムチューブ内部の加硫による架橋率を低下させると考えられ、導電性ゴムローラとしての耐久性が低下する。一方、2.5kW/m2より大きい場合においては、原料ゴム組成物内部が240℃超に加熱され、得られる発泡ゴムチューブのJIS引張強さが7.0MPaより大きくなる。すなわち、基材であるゴムが過加硫となり、所望の硬度が得られなくなる。また、成形体厚みが薄い場合には、マイクロ波が照射表面に集中し、発火する可能性もある他、UHF炉が小さい場合では電界強度が大きくなり、放電する場合もあるので、生産上も好ましくない。
【0034】
また、本発明において、発泡後の発泡ゴムチューブの厚みを4mm以上10mm以下としている。これは本発明でのUHF炉内で均一に加硫発泡が可能な範囲である。厚みが4mmより薄い場合は、マイクロ波がゴム層表面に集中し、加硫発泡中に発火の可能性もあるため、好ましくない。一方、10mmより厚い場合では、ゴム層内部の温度と表面の温度にムラができやすく、得られた発泡ゴムチューブの発泡ムラ、硬度ムラ等が発生するため好ましくない。
【0035】
なお、マイクロ波の照射強度とゴム層の厚みの両方が本発明に定義される範囲のときに、該ゴムチューブの内部温度が190℃以上240℃以下となる。この温度は、予め、所定の勝者強度で加熱処理されたときに、熱電対等の温度測定手段で測定し、本発明の加熱処理温度範囲の設定条件と対応取りをしておくことにより可能である。
【0036】
HAV炉13に送り込まれたUHF炉12で加硫発泡した円筒状成形体は、通常180℃以上230℃以下の範囲の熱風でさらに加硫が完結され発泡ゴムチューブとされ、HAV炉13中で加硫が完結した発泡ゴムチューブは、引取機14で引き取られ、次いで定尺切断機15に送られ、所定長さに切断される。
【0037】
上記装置のUHF炉12、HAV炉13および引取機14の長さは、特に限定されないが、本発明では、それぞれ4m、6m、1mとすることができる。また、各装置の間は0.1m以上1.0m以下とする。こうすると、押出機を除く加硫発泡装置の全長がおよそ13mとなり、大幅に短いものである。
【0038】
引取機14より送り込まれた発泡ゴムチューブは定尺切断機15により所定の寸法に切断され、加硫発泡ゴム層用の発泡ゴムチューブとされる。その後、発泡ゴムチューブには導電性軸芯体が圧入されて、本発明の導電性ゴムローラとされる。なお、軸芯体が発泡ゴムチューブの内径より十分に大きい外径を有する場合は必ずしも接着剤は必要ないが、軸芯体の材質、外径により接着剤を塗布しておくことが好ましい。接着剤としては、種々使用可能であるが、ホットメルト接着剤が適当である。
【0039】
また、軸芯体が圧入された後、加硫発泡ゴム層の両端を製品の長さに突き切り、調整することもできる。さらに、加硫発泡ゴム層の表面を円筒研磨して、製品の太さにすることも可能である。なお、この円筒研磨として、軸芯体を圧入したゴムローラを、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000rpm、送り速度500m/分で外径が所定の大きさ、例えば、14mmになるように研磨することが挙げられる。
【0040】
上記により製造された導電性ゴムローラは、必要により表面層が形成されて、電子写真装置の各種導電性ゴムローラ、特に転写ローラとして有用である。
【0041】
図3に、本発明に係る導電性ゴムローラを画像形成装置に利用した例の説明図を示す。
【0042】
図3に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、その概略構成を示す。
【0043】
この画像形成装置は、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)21を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0044】
感光ドラム21表面は、帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は感光ドラム21表面に接触配置されており、感光ドラム21の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム21表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム21表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム21表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0045】
その静電潜像は、現像装置24の現像ローラ24aに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0046】
一方、給紙部から給搬送された紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27の表面に、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、感光ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光ドラム21表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニングブレード28によって除去され、廃トナー容器29内へ収容される。
【0047】
一方、転写部Tを通った転写材27は、感光ドラム21から分離されて定着装置30へ搬送され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体の外部に排出される。
【0048】
上記画像形成装置において、本発明の導電性ゴムローラは、帯電ローラ、現像スリーブおよび転写ローラとして使用可能であり、特に転写ローラとして好ましい。
【0049】
次に本発明の評価方法について説明する。
【0050】
(通電耐久)
導電性ゴムローラを、30rpmで回転している外径30mmのアルミドラムに、軸芯体の露出端のそれぞれに4.9Nの荷重がかかるようにして圧接し、連れまわる状態で23℃、50%RHの環境下で抵抗値R1を測定する。次いで、そのままの状態で50℃、50%RHの環境下で、軸芯体とアルミドラムとの間に8μAの定電流を200時間印加し続けた後、23℃、50%RH(N/N)環境に24時間以上置く。その後、ローラ表面を目視で観察し、加硫発泡ゴム層に「裂け」が生じているか否かを確認する。次いで、表面に裂けの観察されないものについて、再び抵抗値R2を測定する。ここで得られたR1およびR2から、log(R2/R1)の絶対値を求め、通電耐久の「変動」とする。なお、この値が小さいほど、導電性ゴムローラの通電耐久性が良いことを示し、2.2以下であることが好ましい。
【0051】
(マイクロ波照射時の発泡ゴムチューブ内温度)
蛍光式光ファイバー温度計「エイモスFL−2000」(商品名、安立計器株式会社製)のファイバーセンサー「FS400−20M」(商品名、安立計器株式会社製)を、押出機より押し出された未加硫未発泡のゴムチューブ内部に差し込み、UHF内にゴムチューブと共に搬送し、UHF炉内におけるチューブ内温度を測定する。なお、該センサーの固定は、加硫発泡後の該ゴムチューブの表面より1mm以上内部に設置できれば、特に限定されず、耐熱テープ等で固定しても差支えない。
【0052】
(加硫発泡ゴム層のJIS引張強さ)
加硫発泡ゴム層のJIS引張強さは、JIS K6251−1993に記載される方法にて測定した。なお、試験片は、上記にてマイクロ波照射時の発泡ゴムチューブ内温度で測定されたゴムチューブ内温度を試験片作製温度とし、通常用いられる加熱プレス機を用いて各15分間加熱し、2mmのゴムシートを得、ダンベル状3号形とする。この試験片に20mmの標線を付け、通常用いられる引張試験機にて引張試験を行う。試験数はN=3とした。なお、各試験で得られた最大引張力を試験片の断面積で除した値を平均してその値をJIS引張強さ(MPa)とする。
【実施例】
【0053】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。ただし、本発明はこの転写ローラのみに限定されるものではなく、帯電ローラ、現像ローラにも展開可能である。
【0054】
なお、各実施例および比較例で使用したゴム材料は以下の通りである。
・NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール DN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
・GECO:エピクロルヒドリンゴム「ハイドリン G3106」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
・DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラー DM−P」(商品名、チアゾール系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド「ノクセラー TOT−N」(商品名、チウラムジスルフィド系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・硫黄「サルファックス PMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)
・ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホール AC」(商品名、永和化成工業株式会社製)
【0055】
実施例1〜6
NBR 80質量部およびGECO 20質量部に、加硫剤として硫黄 2質量部、加硫促進剤としてDM 1質量部およびTOT 2質量部、発泡剤としてADCA 3質量部をバンバリーミキサーで混練した後、オープンロールでさらに混練した。次いでリボン成形分だし機によりリボン状に原料ゴム組成物を成形して、押出機に投入した。押出機より原料ゴム組成物を押し出し、円筒状に成形し、UHF炉に導入した。該UHF炉中でマイクロ波を照射して円筒状成形物を加硫発泡させた。なお、マイクロ波の照射強度は表1に示すように1.0kW/m2から3.0kW/m2の範囲とした。
【0056】
次いで、UHF炉で加硫発泡された円筒状成形物を、熱風を送り込んで200℃に設定したHAV炉に搬送して、さらに加硫を完結させた。
【0057】
なお、全工程の加硫発泡条件を加硫完了後の円筒状成形体(発泡ゴムチューブ)の内径が5mmで、発泡層の厚みが表1に示すように4mmから10mmの範囲になるよう設定した。
【0058】
その後、加硫が完結した発泡ゴムチューブを引取機で2.5m/minで引き取り、定尺切断機に搬送し、長さ24cmに切断した。次いで、この切断された円筒ゴムチューブに外径6mmで長さ26cmの表面がニッケルメッキされ、さらに表面に接着剤を塗布した鉄製の軸芯体を圧入し、加硫発泡ゴム層の長さが23cmになるように両端を突き切り、軸芯体上に加硫発泡ゴム層が形成されたローラを得た。
【0059】
この加硫発泡ゴム層を有するローラを、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、回転速度2000rpm、送り速度500m/minで外径が14mmになるように研磨して、導電性ゴムローラを作成した。
【0060】
一方、上記UHF炉中での加硫発泡で円筒状成形体が到達した温度で、原料ゴム組成物を加圧プレスで加硫発泡させて、JIS引張強さ測定用の試験片を作製し、JIS引張強さを測定し、表1に示した。また、得られた導電性ゴムローラの通電耐久を調べ、表1に示した。
【0061】
比較例1〜4
加硫発泡後の発泡ゴムチューブの厚みが11mm(比較例1および2)または3.2mm(比較例3および4)になるように原料ゴム組成物の円筒状成形体を得るように押出機のダイスを設定する他は、実施例1または2と同様にして発泡ゴムチューブを得た。その後、発泡ゴムチューブを切断し、実施例1と同様に軸芯体を圧入し、加硫発泡ゴム層の両端を突き切り、加硫発泡ゴム層を有するローラを得た。
【0062】
比較例1および2では実施例1と同様に加硫発泡ゴム層の表面を研磨して、外径14mmの導電性ゴムローラとした後、また、比較例3および4ではそのまま、通電耐久を調べた。結果を表1に示す。
【0063】
一方、UHF炉中で原料ゴム組成物の円筒状成形物が到達した温度で、上記と同様に試験片を作製し、JIS引張強さを測定し、表1に示した。
【0064】
比較例5、6
マイクロ波照射強度を0.5kW/m2(比較例5)または3.5kW/m2(比較例5)にする他は実施例3と同様にして発泡ゴムチューブを作製したが、比較例5では温度不足により加硫発泡が行えず、また、比較例6ではマイクロ波の照射強度が強すぎたために発泡ゴムチューブの一部にこげが発生し、到達温度を測ることができなかった。そのため、これら比較例では導電性ゴムローラの製造は行わなかった。
【0065】
比較例5で原料ゴム組成物の円筒状成形物が到達した温度で作製した試験片でJIS引張強さを測定した結果も表1に示した。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜6で作製した導電性ゴムローラはJIS引張強さが本発明で規定した範囲内にあり、かつ通電耐久では加硫発泡ゴム層に裂けは発生していず、さらに、耐久通電の変動も十分に小さい。
【0068】
一方、発泡ゴムチューブの厚みを10mm超あるいは4mm未満である比較例1〜4では加硫発泡ゴム層のJIS引張強さが1.5MPa未満あるいは7.0MPa超となり、通電耐久で裂けが発生した。また、マイクロ波照射強度が1.0kW/m2未満(比較例5)では加硫不足であり、また、3.0kw/m2超(比較例6)では加硫過剰となり、いずれも不適当であった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの一例の斜視図である。
【図2】本発明に係る加硫成形装置を説明する構成図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の模式的説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 軸芯体
2 加硫発泡ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫(UHF)炉
13 熱風加硫(HAV)炉
14 引取機
15 定尺切断機
21 感光ドラム
22 帯電ローラ
23 露光手段
24 現像装置
24a 現像ローラ
25 トナー
26 転写ローラ
27 転写材
28 クリーニングブレード
29 廃トナー容器
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤ゴムがアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混合物で構成された原料ゴム組成物が円筒状に押し出された後、マイクロ波加硫炉中にてマイクロ波照射により加硫発泡されて、発泡ゴムチューブとされ、次いで、該発泡ゴムチューブに導電性軸芯体を圧入して、加硫発泡ゴム層を導電性軸芯体上に形成する導電性ゴムローラの製造方法において、
マイクロ波照射が照射強度1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下であり、かつ、マイクロ波照射中の発泡ゴムチューブ内部が190℃以上240℃以下にあり、該発泡ゴムチューブの厚みが4mm以上10mm以下であり、かつ、JIS引張強さ(JIS K6251−1993)が1.5MPa以上7.0MPa以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
導電性軸芯体上に加硫発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、
加硫発泡ゴム層が、主剤ゴムがアクリロニトリルゴムおよびエピクロルヒドリンゴムからなり、原料ゴム組成物が円筒状に押し出され、次いで加硫発泡されて形成された発泡ゴムチューブからなるものであり、
加硫発泡が、円筒状に押し出された原料ゴム組成物を、マイクロ波加硫炉中にて1.0kW/m2以上3.0kW/m2以下の照射強度でマイクロ波照射し、マイクロ波照射中の発泡ゴムチューブの内部を190℃以上240℃以下に加熱したものであり、
発泡ゴムチューブの厚みが4mm以上10mm以下であり、かつそのJIS引張強さ(JIS K6251−1993)が1.5MPa以上7.0MPa以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項3】
転写ローラが、請求項2に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276152(P2007−276152A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102040(P2006−102040)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】