説明

導電性ゴムローラーの製造方法および電子写真装置用ローラー

【課題】発泡ゴム層のセル分布が均一で且つ、硬度、抵抗ムラの無い導電性ゴムローラーの製造方法およびこの方法で製造した導電性ゴムローラーを基層部材とする電子写真装置用ローラーを提供する。
【解決手段】導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラーの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含むゴム組成物からゴム組成物チューブを成形する工程およびマイクロ波加硫装置内を該ゴム組成物チューブを0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送しながら、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い、照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムローラーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラーの製造方法に関し、更には電子写真感光体(感光ドラム)等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の被転写材に転写させる画像形成装置に搭載される転写ローラー等の電子写真装置用ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等の導電性ゴムローラーが用いられている。従来これらの導電性ゴムローラーの製造方法としては、高圧蒸気による加硫缶により加硫する方法(例えば、特許文献1参照)、円筒金型等による金型加硫(例えば、特許文献3参照)、マイクロ波照射によるUHF加硫(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。これらの方法は、例えば加硫缶により加硫する方法は、得られるローラーの発泡体のセルが不均一で所望のセルを表面に出す為に多量の研磨を行わなくてはならず、金型加硫による加硫方法は、段取りに時間が掛かり且つ、金型洗浄を行う必要がある為、量を数多く作るのには不向きであった。またUHF加硫による方法は、段取りが良く、セルも均一となるが、ゴムが軟化した時にチューブが潰れ、チューブ内外径の縦横比が不均一となってしまう。更にこのチューブの不均一性が周方向の硬度、抵抗ムラの原因となっていた。
【0003】
更にこのチューブの不均一性を解消する為に短いUHF装置を複数台連結し、マイクロ波の照射出力に勾配を付ける方法が公知の技術として知られているが、長大な装置となっているために、経過時間が長くなり、マイクロ波がかかり過ぎてしまい、ゴム材料のエピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムの変質が起こり、該ゴム材料の持つ体積固有抵抗値が高くなってしまう。このため、前記の方法は複写機、プリンター等に使用する導電性ゴムローラーには不向きであったし、また、こうした抵抗値等精細な性能の要求される短径のローラーへの技術展開を紹介するものは無かった。
【0004】
こうした背景から、発泡ゴム層のセルが均一で、周方向の硬度、抵抗ムラが無いことが要求される複写機、プリンター等に使用される導電性ゴムローラーの製造方法においては、製造工程における段取り性や生産性の良い製造方法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開平11−201140号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明は、発泡ゴム層を有する転写ローラー、帯電ローラーまたは現像ローラー等の電子写真装置用の導電性ゴムローラーに関し、ゴム組成物チューブを、短距離からのマイクロ波照射により昇温加熱して、加硫、発泡させて、内外径の縦横比が小さく、セル分布が均一で、かつ、周方向の硬度ムラ、抵抗ムラの無い導電性ゴムローラーの製造方法および電子写真装置用ローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明の導電性ゴムローラーの製造方法は、導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラーの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含むゴム組成物からゴム組成物チューブを成形する工程およびマイクロ波加硫装置内を該ゴム組成物チューブを0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送しながら、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い、照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する工程を含むことを特徴とする。
また、上記課題を解決した本発明の電子写真装置用ローラーは、上記本発明の導電性ゴムローラーの製造方法により製造した導電性ゴムローラーを基層部材として用いたことを特徴とする。
【0008】
以上に示したように、導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラーの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含むゴム組成物からゴム組成物チューブを成形する工程およびマイクロ波加硫装置内を該ゴム組成物チューブを0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送しながら、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い、照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムローラーの製造方法により、該発泡ゴムチューブの内外径の縦横比を小さくし、セル分布が均一でかつ、周方向の硬度ムラ、抵抗ムラの無い導電性ゴムローラーを提供することが可能となる。
【0009】
また、上記導電性ゴムローラーの製造方法により製造した導電性ゴムローラーを基層部材として用いて製造したローラーは電子写真装置用ローラーとして、特に転写ローラーとして、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラーの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含むゴム組成物からゴム組成物チューブを成形する工程およびマイクロ波加硫装置内を該ゴム組成物チューブを0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送しながら、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い、照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムローラーの製造方法である。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
(本発明の導電性ゴムローラーと画像形成装置との関係の説明)
図2に、本発明に係る導電性ゴムローラーまたは電子写真装置用ローラーを備えた画像形成装置の一例を示す。同図に示す画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、本発明の導電性ゴムローラーまたは電子写真装置用ローラーが帯電ローラー2、転写ローラー6または現像ローラー30として装着される。
【0012】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(感光ドラムと表すことがある)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPCと表すことがある)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/sで回転駆動される。
【0013】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラー2によって均一に帯電される。帯電ローラー2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラー2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd )に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl =−150V)が形成される。
【0014】
その静電潜像は、現像装置4の現像ローラー30に印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0015】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の被転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラー6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された被転写材7は、転写バイアス印加電源(不図示)により転写ローラー6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、被転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9によって除去される。
【0016】
転写部Tを通った被転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【0017】
(導電性ゴムローラーの製造方法に関する説明)
図1に、本発明の一実施形態の導電性ゴムローラーの見取図を示す。
本発明の導電性ゴムローラーは、導電性芯材61上に発泡ゴム層62を有する。導電性芯材61としては、外径φが、好ましくは、4〜10mmの、鉄、銅、ステンレス等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらにこれらの表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わない。
【0018】
本発明における発泡ゴム層62を形成するための原料であるゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含み、更に所望の場合にはアゾジカルボンアミド系の発泡剤、硫黄、有機過酸化物、トリアジン、ポリアミン等の加硫剤、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系の加硫促進剤、カーボンブラック等の導電剤、炭酸カルシウム等の充填材、その他の助剤を含む。エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、日本ゼオン(株)社製のゼクロン3106(商品名)を、アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、例えば、日本ゼオン(株)社製のDN401(商品名)を、アゾジカルボンアミド系の発泡剤としては、例えば、永和化成工業(株)社製のビニホールAC(商品名)を好ましく用いることができる。
【0019】
上記各成分からゴム組成物を調製する方法は、特に限定されず、例えば、使用する原料、組成等に応じて、公知の方法のなかから適したものを選択すればよい。具体的には、例えば、ゴム成分、発泡剤、導電剤、加硫剤、加硫促進剤等の所定の成分を、例えば、バンバリーミキサーまたはニーダー等の密閉式混練機を用いて混練しゴム組成物を調製すればよい。
【0020】
図3に、本発明において使用することのできる加硫成形装置の一例を示す。本装置は、押出機11、昇温加熱手段としてのマイクロ波加硫装置(UHF加硫装置と表すことがある)12、所望の場合には熱風加熱手段である熱風加硫装置(HAV加硫装置と表すことがある)13、巻引取機14および定尺切断機15で構成される。
【0021】
上述した、例えば、バンバリーミキサーまたはニーダー等の密閉式混練機で混練して調製したゴム組成物は、オープンロールとリボン成形分出し機(不図示)によりリボン状に成形された後に、押出機11に投入される。UHF加硫装置12は、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト、またはテフロン樹脂を被服したコロを備えており、押出機11で押出成形された未加硫のゴム組成物チューブはこの上を搬送されてゆき、搬送される間にマイクロ波が照射され昇温加熱されて発泡され、加硫され(「発泡・加硫され」と表すことがある)て発泡ゴムチューブが形成される。この発泡ゴムチューブは所望の場合には、HAV加硫装置13に搬送される。UHF加硫装置12とHAV加硫装置13の間は、テフロン樹脂を被服したコロで連結されている。HAV加硫装置13は、テフロン樹脂を被服したコロを備えており、発泡ゴムチューブはこの上を搬送されてゆき、搬送される間熱風に曝されて加熱されてさらに加硫される。発泡ゴムチューブは、巻引取機14で引き取られ、巻引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断され、導電性を有する発泡ゴムチューブ成形物が調製される。
【0022】
UHF加硫装置12、HAV加硫装置13および巻引取機14の長さは、本実施形態では、順に、4m、6m、1mとなっている。UHF加硫装置12とHAV加硫装置13間およびHAV加硫装置13と巻引取機14間の間隙は0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0023】
上記加硫成形装置においては、ゴム組成物を押出機11でチューブ状に押出して成形した未加硫のゴム組成物チューブは、該押出機11より押し出された直後にUHF加硫装置12内に搬送され、該UHF加硫装置内を、0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送される。該UHF加硫装置12内において、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡し、加硫して発泡ゴムチューブを形成する。
【0024】
搬送速度aは、0.5〜3.0m/minとするのが好ましく、1.0〜3.0m/minとするのがより好ましい。搬送速度aを0.5m/min以上とすると、より安定した加硫状態が得られ、また、搬送速度aを3.0m/min以下とすると、より安定した発泡状態が得られる。
【0025】
また、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下とするのが好ましく、3m以下とするのがより好ましい。マイクロ波を照射する区域の長さを4m以下とすると、均一で安定した発泡状態が得られる。
【0026】
マイクロ波は0.5〜2.5KWの出力で照射される。マイクロ波照射出力は0.5〜2.5KWとするのが好ましく、0.5〜1.5KWとするのがより好ましい。マイクロ波照射出力を0.5KW以上とすると、短い装置構成の場合においても充分な照射を行うことができる。一方、2.5KW以下とすると、過剰に加熱されることを容易に避けることができ、精細な短径の導電性ゴムローラーを製造する場合においても、制御が非常に容易となる。
【0027】
また、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱するのが好ましく、この値が66〜200℃・min/mとなるように昇温加熱するのがより好ましい。なお被加熱物の最高温度b℃は、通常、150〜300℃とするのが好ましい。
【0028】
所望の場合には、続いて、発泡ゴムチューブをHAV加硫装置13に搬送し、発泡ゴムチューブを搬送しながらHAV加硫装置13の熱風炉中で加熱して加硫を完了させる。HAV加硫装置13の熱風炉における加熱条件は、特に限定されないが、通常、150〜300℃で4分〜10分熱風加熱するのが好ましい。なお、HAV加硫装置13の熱風炉は、ガス炉を熱源とする熱風炉とするのが好ましい。ガス炉を熱源とする熱風炉とするとガス燃焼時に微量に発生する水蒸気により均一な加熱状態が得られる。
【0029】
加硫を完了させて得られた上記発泡ゴムチューブは巻引取機14で引き取り、巻引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、導電性を有する発泡ゴムチューブ成形物を調製する。
【0030】
次いでホットメルト接着剤、または加硫接着剤等の接着剤を所望の領域に塗布した導電性芯材を前記発泡ゴムチューブ成形物の内径部に圧入し、導電性芯材上に発泡ゴムチューブ成形物を接着して発泡ゴム層としたローラー状の成形体を得る。このローラー状成形体を、研磨機(不図示)にセットし、所定の研磨条件で研磨し所定の外径を有する導電性ゴムローラーを作製する。
【0031】
さらに、得られた導電性ゴムローラーを基層部材とし、帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー等の電子写真装置用ローラーを得ることができる。
【0032】
例えば、現像ローラーや帯電ローラーは、上記導電性ゴムローラーの発泡ゴム層の外周面に、発泡ゴム層からブリードアウトすることを防止するしみ出し防止層、電極層や電気特性を制御する抵抗制御層、および感光ドラム等に傷や汚染を与えないために設けられる被覆層等の所望の機能を付与するための層を必要に応じて設けて作製すればよい。前記しみ出し防止層、電極層や抵抗制御層、および被覆層等を設ける方法としては、公知の方法、例えば、ディップコート法またはロールコート法等の塗工液を用いる方法や、同時成形多層シームレスチューブを被覆する方法等を挙げることができる。
【0033】
また、例えば、転写ローラーは、上記導電性ゴムローラーの発泡ゴム層の外周面に、発泡ゴム層からブリードアウトすることを防止するしみ出し防止層、電気特性を制御する抵抗制御層、被転写材の搬送性を改良するため表面性状を制御する表面性状制御層等の所望の機能を付与するための層を必要に応じて設けて作製すればよい。これらの層は、上記現像ローラーや帯電ローラーの場合と同様の方法で形成することができる。また、所望の性能を有する場合は、上記導電性ゴムローラーは、そのままで、転写ローラーとして用いてもよい。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
【0035】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
本発明を実証する導電性ゴムローラー(図1)は以下のようにして作製した。
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)社製、DN401;商品名)75質量部、エピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン(株)社製、ゼクロン3106;商品名)25質量部、アゾジカルボンアミド(永和化成工業(株)社製、ビニホールAC;商品名)4質量部、ステアリン酸(花王(株)社製、ルナックS20;商品名)1質量部、酸化亜鉛(白水化学(株)社製、亜鉛華1号;商品名)5質量部、カーボン(旭カーボン(株)社製、旭35;商品名)10質量部をバンバリーミキサーで混練し、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形し、このリボン状に成形したゴム組成物を図3記載の加硫成形装置の押出機11(ミクロ電子(株)社製)に投入し、
未加硫ゴム組成物チューブを押出した。
【0036】
このゴム組成物チューブを、UHF加硫装置12(ミクロ電子(株)社製)(マ
イクロ波を照射する区域の長さ:4m)で表1および表2に示す条件で加熱昇温して、発泡・加硫し、得られ発泡チューブを巻引取機14で引き取り、定尺切断機14で切断して外径φ16.0mm、内径φ5.0mm、長さ250mmの発泡ゴムチューブ成形物を得た。次いでE3315(スリ―ボンド(株)
社製;商品名)を所望の領域に塗布した外径φ6.0mmの導電性芯材を発泡ゴムチューブ成形物の内径部に圧入し発泡ゴムチューブ成形物を導電性芯材に接着して、発泡ゴムチューブ成形物を発泡ゴム層とするローラー状の成形体を得た。このローラー状の成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000rpm、送り速度500m/分で、外径がφ17mmになるように研磨し導電性ゴムローラーを作製した。
【0037】
上記実施例および比較例におけるマイクロ波照射時のゴム組成物チューブの温度測定、発泡ゴムチューブ成形物の内外径縦横比測定、発泡ゴムチューブ成形物のセル径分布の評価、導電性ゴムローラーの硬度ムラの測定、導電性ゴムローラーの電気抵抗ムラ測定は次のようにして行った。得られた結果を表1および表2に示した。
【0038】
(マイクロ波照射時のゴム組成物チューブの温度の測定方法)
蛍光温度計(アンリツ(株)社製、蛍光式光ファイバー温度計FL−2000;商品名)を用い、押出機11より押し出されたゴム組成物チューブ内部に蛍光温度計の検知部を差し込み、UHF加硫装置12内に未加硫のゴム組成物チューブと共に搬送し、マイクロ波照射により昇温加熱しゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する時の温度を測定する。
【0039】
(発泡ゴムチューブ成形物の内外径縦横比の測定方法)
発泡ゴムチューブ成形物を任意の場所で任意の条件下で切断し、その断面を投影機(株式会社ニコン製、プロファイルプロジェクターV−12B;商品名)にて、内外径各々の最大部(tmax)と最小部(tmin)を測定し、その比(tmax/tmin)を求める。このときこの比がより1に近いことが好ましい。
【0040】
(導電性ゴムローラーの硬度ムラの測定方法)
硬度計(アスカーC型、4.9N荷重)を用い、導電性ゴムローラーの発泡ゴム層の任意の場所を周方向に90°毎4箇所測定し、その最大値と最小値の差を求め硬度ムラとした。硬度ムラは0に近いことが好ましい。
【0041】
(導電性ゴムローラーの電気抵抗ムラの測定方法)
23℃×55%RHの環境下に48時間放置後、導電性ゴムローラーの軸体の両端に、各々4.9Nの荷重を負荷して外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で、導電性ゴムローラーの導電性芯材とアルミニウム製のドラムとの間に2kVの電圧を印加して測定した。この時の抵抗値の最大値Rmaxと最小値Rminの差(Rmax−Rmin)を桁で表した。電気抵抗ムラは1.2桁未満が好ましい。
【0042】
(発泡ゴムチューブ成形物のセル径分布の評価方法)
発泡ゴムチューブ成形物を任意の場所で切断し、その断面をビデオマイクロ(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVH−8000;商品名)にて記録し、外径側のセル径と内径側のセル径の大きさの違いをメジャーにて計測した。このとき外径側のセル径(Dou)と内径側のセル径(Din)に差が無いことが好ましく、得られた結果に基づき下記基準でセル径分布を評価した。
○ 差がない〔(│Dou−Din│/Dou) ≦1.5又は(│Dou−Din│/Din )≦1.5)〕
△ やや差がある〔(1.5<(│Dou−Din│/Dou) ≦2.0又は1.5<(│Dou−Din│/Din )≦2.0)〕
× 差がある〔(│Dou−Din│/Dou) >2.0又は(│Dou−Din│/Din )>2.0)〕
【0043】
表1に示したように、実施例1〜5においては、マイクロ波加硫装置内における搬送速度a(m/min)と被加熱物の最高温度b℃との比b/aの値が66〜600の範囲にあり、発泡ゴムチューブ成形物の内外径の縦横比が1.02以下で小さく、またセル径の分布が均一であることがわかる。更に導電性ゴムローラーの周方向の硬度ムラも小さく、抵抗ムラも1.07桁以下で小さいことがわかる。
【0044】
これに対して、比較例1〜5においては、表2に示したようにマイクロ波照射出力0.3KW、3.0KW、搬送速度0.3m/min、3.5m/minにした場合を挙げた。比較例2および4においては発泡ゴムチューブ成形物の内外径の縦横比、セル径分布、導電性ゴムローラーの硬度ムラや抵抗ムラが、加硫及び発泡しなかったため測定不能となったり、測定可能であった場合においても、発泡ゴムチューブ成形物の内外径の縦横比は2.1〜3.3と大きく、セル径分布も大きく、周方向の硬度ムラ、周方向の抵抗ムラが実施例よりも大きいことがわかる。
【0045】
【表1】

【0046】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の製造方法により得られる導電性ゴムローラーおよび電子写真装置用ローラーは、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置に転写ローラー等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の導電性ゴムローラーの見取図である。
【図2】本発明の導電性ゴムローラーまたは電子写真装置用ローラーを備えた画像形成装置の一例の断面概略図である。
【図3】本発明における加硫成形装置の一例の断面概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 感光ドラム
2 帯電ローラー
3 レーザー光
4 現像装置
5 トナー
6 転写ローラー
7 被転写材
8 クリーニングブレード
9 クリーニング装置
10 定着装置
30 現像ローラー
61 導電性芯材
62 発泡ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF加硫装置)
13 熱風加硫装置(HAV加硫装置)
14 巻引取機
15 定尺切断機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラーの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはその混合物を含むゴム組成物からゴム組成物チューブを成形する工程およびマイクロ波加硫装置内を該ゴム組成物チューブを0.5〜3.0m/minの搬送速度aで搬送しながら、マイクロ波を照射する区域の長さが4m以下のマイクロ波照射装置を用い、照射出力0.5〜2.5KWのマイクロ波を照射し、このときの被加熱物の最高温度をb℃としたとき、b/aの値が66〜600℃・min/mとなるように昇温加熱して、該ゴム組成物チューブを発泡・加硫して発泡ゴムチューブを形成する工程を含むことを特徴とする導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項2】
前記発泡ゴムチューブを、熱風加熱手段で150〜300℃の温度で4〜10分加熱してさらに加硫する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項3】
前記熱風加熱手段が、ガス炉を熱源とする加熱手段であることを特徴とする請求項2記載の導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、アゾジカルボンアミドを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラーの製造方法により製造した導電性ゴムローラーを基層部材として用いたことを特徴とする電子写真装置用ローラー。
【請求項6】
電子写真装置用ローラーが、転写ローラーであることを特徴とする請求項5記載の電子写真装置用ローラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−168171(P2006−168171A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363203(P2004−363203)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】