説明

導電性ゴムローラ並びにこれを有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】低抵抗の要求を満たしつつ、感光体や転写ベルト等の部材を汚染することなく圧縮永久ひずみを減少させた導電性ゴムローラ並びにこれを有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性芯材と、該導電性芯材上に設けられた弾性層とを有する導電性ゴムローラであって、該弾性層は、エピクロルヒドリンゴムと、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体とから形成され、該エピクロルヒドリンゴムの質量部(a)に対する該エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体の質量部(b)の比率(b/a)は、0.05≦b/a≦1.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラに関する。詳しくは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラ、1次転写ローラ等の導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機や静電記録装置等の画像形成装置においては、電圧印加した導電性ゴムローラを感光体表面に押し当て、帯電する接触帯電方式が主流となっている。この方式において、画像形成の中心である感光体ドラム廻りに帯電、転写などの各工程別に導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
近年、このような導電性ゴムローラのゴム成分には、アクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムが用いられている。極性ゴムは、ポリマー内に極性基が存在するため導電性(イオン導電性)を有し、電気抵抗のばらつきや、電気抵抗の電圧依存性が小さいため、導電性ゴムローラに適していることが知られている。
【0004】
上記の導電性ゴムローラの弾性体層に求められる体積固有抵抗は、2×10Ω・cm以下の場合が多い。ゴム成分がアクリロニトリルブタジエンゴム単独の場合、その加硫物の体積固有抵抗は、2×10〜1×1010Ω・cm程度であり、導電性が不十分となってしまう。また、アクリロニトリルブタジエンゴムは耐オゾン性が劣る為、十分な通電耐久性が得られない。
【0005】
所望する体積固有抵抗を得るため、特許文献1は、加硫物の体積固有抵抗が1×10〜3×10Ω・cm程度であることが知られているエピクロルヒドリン系ゴムをアクリロニトリルブタジエンゴムにブレンドする技術を開示する。
【0006】
また、近年ではカラー化、高画質化に対応するために、より低抵抗な導電性ゴムローラが求められている。そのため、エピクロルヒドリン系ゴムを単独で用いたり、過塩素酸イオンや塩化物イオンを含む第4級アンモニウム塩など各種イオン導電剤を添加する方法も用いられている(例えば特許文献2)。
【0007】
しかしながら、一般的に、このようなゴム弾性体を用いた導電性ゴムローラの場合、温度や湿度の環境変動により抵抗値が変化するため、使用環境により画像品質が変化するといった問題点がある。特に、エピクロルヒドリン系ゴムは、湿度の影響を受けやすく、抵抗値の環境変動が大きいという問題を有する。また、第4級アンモニウム塩など各種イオン導電剤を添加する方法は、表面移行による汚染や通電などにより、抵抗値の経時変化を生じる恐れがある為、高速化や長寿命化に対応可能な通電耐久性が得られない場合がある。
【0008】
さらに、エピクロルヒドリン系ゴムや過塩素酸イオンや塩化物イオンを含む第4級アンモニウム塩を配合した場合、塩素が副反応を起こす等の理由により、圧縮永久歪みを著しく悪化させるほか、焼却時に有毒ガスやダイオキシンを発生する恐れがある。
【0009】
そこで、特許文献3は、上記のように低抵抗を実現しながらも圧縮永久ひずみの良好な弾性体を得る方法として、エピクロルヒドリンゴムにエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体を所定量配合する技術を開示する。エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体は、エーテル酸素を含む為、ポリマー中の金属陽イオンなどを安定化させ電気抵抗を低抵抗化させる働きがある。また、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体は、極性が大きい為、他の極性ゴムとの相溶性に優れるほか、アリルグリシジルエーテルが不飽和結合を有する為、他のゴムと硫黄架橋することが可能である。従って、第4級アンモニウム塩などの導電剤と異なり、ブリードや感光体汚染を起こし難い。また、特許文献3によると、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合体はハロゲン元素を含まない為、エピクロルヒドリン系ゴムのように塩素が副反応を起こすなどの問題もなく、圧縮永久歪みの良好なゴム材料が得られる。
【0010】
上述のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体をアクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムなどの極性ゴムに配合した導電性ゴムローラは、ある程度の低抵抗化を実現する。しかしながら、圧縮永久ひずみに関しては更なる改良が求められていた。
【特許文献1】特開2002−287654号公報
【特許文献2】特開2000−17118号公報
【特許文献3】特開2002−105305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来の課題に鑑み提案されたものである。つまり、本発明は、低抵抗の要求を満たしつつ、感光体や転写ベルト等の部材を汚染することなく圧縮永久ひずみを減少させた導電性ゴムローラ並びにこれを有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による導電性ゴムローラは、導電性芯材と、該導電性芯材上に設けられた弾性層とを有する導電性ゴムローラであって、該弾性層は、エピクロルヒドリンゴムと、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体とから形成され、該エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体は:80モル%以上90モル%以下のエチレンオキサイドと;0モル%よりも多く10モル%以下のプロピレンオキサイドと;10モル%以上20モル%以下のアリルグリシジルエーテルと;からなる共重合体であり、該エピクロルヒドリンゴムの質量部(a)に対する該エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体の質量部(b)の比率(b/a)は、0.05≦b/a≦1.0であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明によるプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、上述の導電性ゴムローラを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による導電性ゴムローラによると、低抵抗化を実現しながら、感光体または転写ベルト等の各部材を汚染することなく圧縮永久ひずみが良好となる。特に、低抵抗化が必要とされるカラー画像形成装置等に用いるのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明による導電性ゴムローラについて、図1を参照して、説明する。図1は、画像形成装置の一次転写に用いられる一次転写ローラを例示する、本発明による導電性ゴムローラの全体断面図である。本発明による導電性ゴムローラは、アルミニウムなどの良導体からなる芯金61と、芯金61上に形成された弾性層62とを有する。
【0016】
芯金61としては、アルミニウム、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅またはこれらを含む合金などの良導体が好適に用いられる。本発明に用いられる芯金61は、3〜10mmの直径を有していることが好ましく、0.1〜1.5mm程度の厚さを有する金属管であっても、また棒状であってもよい。
【0017】
弾性層62は、公知のエピクロルヒドリンゴムと、特定の構成比率を有するエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体とから形成される。エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体は、エーテル酸素を含む為ポリマー中の金属陽イオンなどを安定化させ電気抵抗を低抵抗化させる働きがある。従って、本発明で使用するエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体において、アリルグリシジルエーテルの共重合比率は、10モル%以上20モル%以下であることが重要である。また、この重合比率は、10モル%以上15モル%以下であることがより好ましい。
【0018】
アリルグリシジルエーテルは、不飽和結合を有するため、他のゴム成分と架橋することも可能である。また、上述の3元共重合体におけるアリルグリシジルエーテルの共重合比率により、分子鎖のセグメント運動が左右される。従って、アリルグリシジルエーテルの共重合比率が10モル%未満であると、架橋点が少ない為、圧縮永久ひずみが大きくなるという問題を生じる。
【0019】
また、アリルグリシジルエーテルの共重合比率が適正でない場合、エーテル酸素による低抵抗化を阻害したり、分子運動が活発化される高温・高湿環境において著しい抵抗変化を生じ、抵抗値の環境変化が大きくなる。アリルグリシジルエーテルの共重合比率が20モル%を超えると、架橋点の数が多くなり過ぎて、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体中のエーテル酸素の自由度が阻害され、低抵抗化が困難となる。さらに、アリルグリシジルエーテルの共重合比率が20モル%を超えると、引っ張り特性や疲労特性、耐屈曲性等が悪化してしまう。
【0020】
本発明の場合、特定の共重合比率のアリルグリシジルエーテルから構成されるエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体と、エピクロルヒドリンゴムとをブレンドしてもよい。これにより、主鎖構造内のエーテル酸素がイオンを安定化させる働きと分子鎖のセグメント運動の違いによる抵抗変化のバランスを計ることが可能となる。また、従来のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体を含有する導電性ゴムローラが有する低抵抗化特徴を保持したまま、圧縮永久ひずみの良好な導電性ゴムローラを提供することが可能となる。
【0021】
なお、本発明で使用するエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体におけるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの共重合比率は、相溶性、電気抵抗値等の観点から、以下の範囲であることが好ましい。つまり、アリルグリシジルエーテル10モル%以上20モル%以下に対し、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=50モル%以上89モル%以下/1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明で使用するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体の配合量は、以下の通りである。
【0023】
エピクロルヒドリンゴムの質量部をaとし、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体の質量部をbとした場合、その比率(b/a)が、
0.05≦b/a≦1.0
【0024】
この質量比が0.05未満では、低抵抗化は可能なのものの圧縮永久ひずみが大きくなり、また、質量比が1.0を超える場合は、抵抗の環境依存性が大きくなりやすい他、感光体を汚染する可能性もある。
【0025】
本発明に使用するゴム成分は、上述のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体のほかに、エピクロルヒドリンゴムを含有する。エピクロルヒドリンゴムとしては、イオウ加硫または有効加硫が可能である点で、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(ECH−EO−AGE)であることが好ましい。特に、エピクロルヒドリンゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合が40モル%以上であることがより好ましい。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体は、エチレンオキサイドの共重合割合が多くなるに従い、加硫ゴムの体積固有抵抗値が小さくなる傾向がある。このため、エチレンオキサイドの共重合割合が40モル%よりも小さいと、導電性ゴムローラの弾性層に必要な電気抵抗値が得にくい。そのため、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が多くなり、環境依存性を高くしてしまう。従って、本発明に使用するエピクロルヒドリンゴムにおけるエチレンオキサイドの共重合割合は、38モル%以上58モル%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明による導電性ゴムローラに使用されるゴム組成物には、上述の成分のほか、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることが出来、これらの成分としては、以下に例示される通りである。
【0027】
加硫剤(硫黄、有機含硫黄化合物等)
各種加硫促進剤
各種滑剤
加工助剤(サブ等)
各種老化防止剤
各種発泡剤(p、p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等)
各種発泡助剤(尿素等)
加硫助剤(酸化亜鉛、ステアリン酸等)
各種充填剤(炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー等)
【0028】
また、導電性調整のために各種イオン導電剤も必要に応じて配合可能であるが、ローラ表面への移行により感光体を汚染する可能性がある為、このイオン導電剤の配合量は、上述のゴム主成分100質量部に対して、2.0質量部未満とする方が好ましい。
【0029】
また、本発明による導電性ゴムローラの製造方法としては、まず、未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機によりチューブ状に押出し、加硫缶や連続加硫炉で加熱し導電性のゴム(弾性体)チューブを作製される。その後、この導電性ゴムチューブに接着剤を塗布した導電性軸体を挿入して、更に加熱することにより導電性軸体と導電性ゴムチューブとを接着する。このように処理した後、所定の外径になるまで研磨することにより、本発明による導電性ゴムローラが得られる。なお、この方法は、一例であって、未加硫のゴム組成物と接着剤を塗布した導電性軸体との同時押出しや、押出したゴム組成物を金型に装填して加硫する等の従来公知の各種製造方法が適用可能である。また、本発明による導電性ゴムローラには、必要に応じて弾性体層の外周上に樹脂等の層を設けることも出来る。
【0030】
次に、本発明による導電性ゴムローラの適用例を示す。図2は、本発明による導電性ゴムローラを用いたフルカラー画像形成装置の概略構成図である。
【0031】
第1の画像担持体として繰り返し使用される回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)1は、矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0032】
感光ドラム1は、回転過程で、一次帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。符号32は、一次帯電器電源であり、ここでは直流に交流を重畳して印加しているが、直流のみでもよい。次いで、感光ドラム1は、露光手段(図示せず)による露光光3を受けることにより、目的のフルカラー画像の第1の色成分像(例えばイエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成される。なお、この露光手段としては、フルカラー原稿画像の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系等が例示される。
【0033】
次いで、この静電潜像は、第1の現像装置(イエロー色現像装置41)により第1色であるイエロートナーYにより現像される。この時、第2〜第4の現像装置(マゼンダ色現像装置42、シアン色現像装置43、ブラック色現像装置44)の各現像装置は、作動−オフになっていて感光ドラム1には作用しない。従って、上記第1色のイエロートナー画像は、上記第2〜第4の現像装置による影響を受けない。
【0034】
中間転写ベルト5は、矢印方向に感光ドラム1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0035】
感光ドラム1上に形成担持された上記第1色のイエロートナー画像は、感光ドラム1と中間転写ベルト5とのニップ部を通過する。この過程において、一次転写ローラ6から中間転写ベルト5に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ベルト5の外周面に順次一次転写されていく。
【0036】
中間転写ベルト5に対応する第一色のイエロートナー画像の転写を終えた感光ドラム1の表面は、クリーニング装置13により清掃される。
【0037】
以下、同様にして第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像及び第4色のブラックトナー画像が順次中間転写ベルト5上に重ね合わせて転写され、目的のフルカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0038】
二次転写ローラ7は、二次転写対向ローラ8に対応し平行に軸受させて中間転写ベルト5の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0039】
感光ドラム1から中間転写ベルト5への第1色〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための一次転写バイアスは、トナーとは逆極性(例えば、正)でバイアス電源30から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜2kVの範囲である。
【0040】
感光ドラム1から中間転写ベルト5への第1色〜第3色のトナー画像の一次転写工程において、二次転写ローラ7は、中間転写ベルト5から離間させることも可能である。
【0041】
中間転写ベルト5上に転写された合成カラートナー画像は、次に、給紙ローラ11から転写材ガイド10を介して給送された転写材Pへ転写される。中間転写ベルト5の合成カラートナー画像は、中間転写ベルト5と二次転写ローラ7とで形成された当接ニップに所定のタイミングで給送された転写材Pに、転写される。この当接ニップにおいて、この転写は、バイアス電源31からの二次転写バイアスの二次転写ローラ7への印加により、行われる。この二次転写バイアスにより中間転写ベルト5から第2の画像担持体である転写材Pへ合成カラートナー画像が二次転写される。この際、中間転写ベルト上の二次転写前のトナー画像の帯電を補助する装置は、本装置には付加されていない。トナー画像の転写を受けた転写材Pは、定着器15へ導入され加熱定着される。
【0042】
転写材Pへの画像転写終了後、中間転写ベルト5には、離接自在に配置されたクリーニング用帯電部材9が当接され、感光ドラム1とは逆極性のバイアスが印加される。これにより、転写材Pに転写されずに中間転写ベルト5上に残留している転写残トナーに一次転写時と逆極性の電荷が付与される。符号33は、バイアス電源を示す。ここでは、直流に交流を重畳して印加している。一次転写時と逆極性に帯電された上述の転写残トナーは、感光ドラム1とのニップ部及びその近傍において感光ドラム1に静電的に転写されることにより、中間転写体がクリーニングされる。この工程は、一次転写と同時に行うことができるため、スループットの低下を生じない。
【0043】
続いて、中間転写ベルトと電子写真感光体とが一体に支持されたプロセスカートリッジについて、図3を参照して、説明する。本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも中間転写ベルト5と、感光ドラム1及び一次転写ローラ6とが一体に支持され装置本体から着脱自在に構成されていればよい。図3では、更に中間転写ベルトクリーニング装置13、電子写真感光体のクリーニング用帯電部材9も一体ユニットとして付属している。本発明において、中間転写ベルトのクリーニングは、前述のように、転写残トナーを一次転写と逆の極性に帯電させ、一次転写部で電子写真感光体に戻すために必要な機構であり、本図では中抵抗の弾性体からなるクリーニング用帯電部材9により行う。電子写真感光体のクリーニングは、ブレードクリーニングにより行う。本カートリッジには廃トナー容器(図示せず)を一体として設けてもよく、中間転写ベルト−電子写真感光体双方の転写残トナーもカートリッジ交換時に同時に廃棄されるため、メンテナンス性の向上に貢献している。
【0044】
また、中間転写ベルトは、二次転写対向ローラ8及びテンションローラ12の2本のローラで張架され、部品点数の削減と小型化を図ってもよい。ここで、二次転写対向ローラ8は、同時にクリーニング用帯電部材9の対向ローラとなっている。中間転写ベルトに従動して回転するテンションローラ12は、スライドする機構を有しており、圧縮ばねにより矢印の方向に圧接され、中間転写ベルトに張力を与えている。そのスライド幅は、1〜5mm程度で、ばねの圧力合計は5〜100N程度である。また、感光ドラム1と二次転写対向ローラ8はカップリング(図示せず)を有し、本体から回転駆動力が伝達されるようになっている。
【0045】
更に、別の画像形成装置の例を図4に示す。図4は、感光ドラム1を画像形成に必要な現像剤の数と同数具備したもので、フルカラープリントの印字スピードが飛躍的に向上する利点がある。
【0046】
図4に示す画像形成装置は、中間転写ベルトを使用したものである。この画像形成装置において、図2と同様に感光ドラム1に可視画像が形成され、中間転写ベルト5にトナーが順次転写され、重ね合わされた後、二次転写ローラ7でトナーと逆極性のバイアスを印加され、転写材Pの上に一括転写される。中間転写ベルトに残留した現像剤は、クリーニング装置18で除去される。
【0047】
また、図5に本発明による導電性ゴムローラをモノクロ用画像形成装置に利用した一例を示す。図5に示すモノクロ用画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザープリンタであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。図5に示す画像形成装置には、転写ローラとして本発明による導電性ゴムローラを有する転写装置が装着されている。
【0048】
図5に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)501を備えている。感光ドラム501は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム501は、駆動手段(図示せず)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/秒で回転駆動される。
【0049】
感光ドラム501表面は、接触帯電部材としての帯電装置502によって均一に帯電される。帯電装置502は、感光ドラム501表面に接触配置されており、感光ドラム501の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電装置502には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム501表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム501表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光などの露光手段503、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム501表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。この静電潜像は、現像装置504の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0050】
一方、給紙部(図示せず)から給搬送された紙等の転写材507は、転写ガイド(図示せず)にガイドされて、感光ドラム501と転写ローラ506との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム501上のトナー像と同期して供給される。転写部Tに供給された転写材507の表面には、転写バイアス印加電源により転写ローラ506に印加された転写バイアスによって、感光ドラム501上のトナー像が転写される。このとき、転写材507に転写されないで感光ドラム501表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置509によって除去される。
【0051】
転写部Tを通った転写材507は、感光ドラム501から分離されて定着装置510へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を参照して、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0053】
各実施例及び比較例に用いたゴム組成物の配合割合及び試験結果は、表1の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。本実施形態においては、カラー用画像形成装置用の導電性ゴムローラとして求められる抵抗値を基に、ゴム組成物の体積固有抵抗値が107.0〜107.8Ω・cmとなるように配合を調整した。
【0054】
なお、本実施形態においては、転写用ローラとして導電性ゴムローラを作製したが、この導電性ゴム組成物は、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ等の導電性ゴムローラの作製に用いられることは言うまでもない。
【0055】
はじめに、表1に示す原材料をオープンロールで混練を行い、各実施例及び比較例のゴム組成物を作製した。なお、各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
【0056】
エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体)
[エピクロルヒドリン含量39モル%/エチレンオキサイド含量56モル%/アリルグリシジルエーテル含量5モル%;商品名:ゼクロン3106(日本ゼオン(株)社製)]
エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド2元共重合体)
[ゼオスパン8100(日本ゼオン(株)社製)]
エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合比率=90:6:4)[商品名:ゼオスパン8030(日本ゼオン(株)社製)]
エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体
(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合比率=87:1:12)[商品名:ゼオスパン8010(日本ゼオン(株)社製)]
アクリロニトリルブタジエンゴム
(アクリロニトリル含量18質量%)[商品名:Nipol DN401LL(日本ゼオン(株)社製)]
カーボンブラック
[FTカーボン;商品名:旭#15(旭カーボン(株)社製)]
充填剤
[炭酸カルシウム;商品名:スーパーSS(丸尾カルシウム(株)社製)]
加硫促進助剤
[ステアリン酸;商品名:ルナックS(花王(株)社製)]
[酸化亜鉛;商品名:亜鉛華2種(ハクスイテック(株)社製)]
加硫促進剤
[メルカプトベンゾチアゾール(M);商品名:ノクセラーM(大内新興化学工業(株)社製)]
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM);商品名:ノクセラーDM(大内新興化学工業(株)社製)]
[テトラエチルチウラムジスルフィド(TET);商品名:ノクセラーTET(大内新興化学工業(株)社製)]
加硫剤
[硫黄(S);商品名:サルファックスPMC(鶴見化学工業(株)社製)]
発泡剤
[アゾジカルボンアミド;商品名:ビニホールAC#LQ(永和化成(株)社製)]
[オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド;商品名:ネオセルボン#1000S(永和化成(株)社製)]
発泡助剤
[尿素;商品名:セルペーストA(永和化成(株)社製)]
【0057】
なお、実施例及び比較例の導電性ゴムローラは、以下の通り作製した。まず、上記の材料を、オープンロールで混練した後、これを、押出し機を用いてチューブ状にゴム組成物を押出した。これを、加硫缶にて表1に記した加硫温度(160℃)で30分加硫を行い、チューブ状のゴム加硫物を作製した。次いで、φ6mmの導電性軸体を前記チューブ状のゴム加硫物の内径部に挿入しローラ状の成形体を得た。この成形体を外径がφ14mmになるように研磨し、導電性ゴムローラを作製した。
【0058】
<ローラの体積固有抵抗値の測定>
導電性ゴムローラの体積固有抵抗値は、以下の通り、測定した。まず、上述の導電性ゴムローラを23℃/55RH%の環境下に24時間放置した。この軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにして外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、ドラムを30rpmの回転速度で回転させた状態で、軸体とアルミドラムとの間に5秒間1kVの電圧を印加した。このとき、マルチメータによって検出される電流値から、オームの法則によりローラ抵抗値を算出した。
【0059】
<圧縮永久ひずみ>
表1に示した配合において(発泡剤、発泡助剤を除く)ソリッドゴムの試験片を作製し、JISK6262「加硫ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定に従い、測定温度70℃、試験時間24時間で試験を行った。判定については以下の基準で決定した。
【0060】
○:35%以内
×:35%を超える
【0061】
<感光体汚染性の判定試験>
実施例および比較例の配合によりφ14mm、長さ230mmに成形、研磨した導電性ゴムローラを用いて行った。これを、レーザープリンタ(レーザージェット4000N(HP社製))に使用される感光体に接触させ、両端に500gfの荷重を加え、40℃/95%RHの環境下に1週間放置した。この後、ローラを外し、感光体を前記レーザープリンタのカートリッジに組み込み、べた黒で30枚印字して、画像を得た。この画像について、接触跡の白スジが無かったものをAと、初期に白スジがあるが途中で消えるものをBと、最後まで白スジが消えないものをCと、それぞれ判定した。
【0062】
実施例1〜4では、低抵抗で且つ感光体を汚染することなく圧縮永久ひずみが良好であることが分かる。
【0063】
一方、比較例1では、ゴム組成物のゴム主成分がエピクロルヒドリンゴム単体であるとき、圧縮永久ひずみが大きくなった。
【0064】
比較例2および3では、感光ドラムが汚染された。
【0065】
また、比較例4では、架橋密度が少ないため圧縮永久ひずみが増大した。
【0066】
さらに、比較例5では、感光ドラムが汚染された。
【0067】
【表1】

【0068】
以上に示したように、本発明による導電性ゴムローラによれば、低抵抗で、且つ感光ドラムを汚染せず、圧縮永久ひずみの良好な導電性ゴムローラが得られることがわかる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による導電性ゴムローラの全体断面図
【図2】本発明による導電性ゴムローラを用いたフルカラー画像形成装置の概略構成図
【図3】本発明に係る導電性ゴムローラを用いたフルカラー画像形成装置の概略構成図
【図4】本発明に係る導電性ゴムローラを用いたフルカラー画像形成装置の概略構成図
【図5】本発明による画像形成装置の全体断面図
【符号の説明】
【0071】
1 感光ドラム
2 一次帯電器
3 露光光
5 中間転写ベルト
6 一次転写ローラ
7 二次転写ローラ
8 二次転写対向ローラ
9 クリーニング用帯電部材
10 転写材ガイド
11 給紙ローラ
12 テンションローラ
13 クリーニング装置
15 定着器
16 転写搬送ベルト
17 転写ローラ
18 クリーニング装置
30 バイアス電源
31 バイアス電源
32 一次帯電器電源
33 バイアス電源
41 イエロー色現像装置
42 マゼンダ色現像装置
43 シアン色現像装置
44 ブラック色現像装置
51 感光ベルト
52 駆動ローラ
53 従動ローラ
61 芯金
62 弾性層
63 吸着ローラ
121 導電性ゴムローラ
122 電流計
123 駆動ローラ
501 感光ドラム
502 帯電装置
503 露光手段
504 現像装置
505 トナー
506 転写ローラ
507 転写材
508 クリーニングブレード
509 クリーニング装置
510 定着装置
P 転写材
R1 矢印
R2 矢印
T 転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材と、該導電性芯材上に設けられた弾性層とを有する導電性ゴムローラであって、
該弾性層は、エピクロルヒドリンゴムと、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体とから形成され、
該エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体は:
80モル%以上90モル%以下のエチレンオキサイドと;
0モル%よりも多く10モル%以下のプロピレンオキサイドと;
10モル%以上20モル%以下のアリルグリシジルエーテルと;
からなる共重合体であり、
該エピクロルヒドリンゴムの質量部(a)に対する該エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体の質量部(b)の比率(b/a)は、
0.05≦b/a≦1.0
であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体である、請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
当該導電性ゴムローラは、転写ローラである、請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ゴムローラを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記導電性ゴムローラは、トナーを転写材に転写する転写手段であることを特徴とする請求項4に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ゴムローラを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記導電性ゴムローラは、トナーを転写材に転写する転写手段であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−328025(P2007−328025A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157346(P2006−157346)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】