説明

導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】画像形成装置に使用する導電性ゴムローラのゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを使用しても長時間にわたって抵抗値の変化が少なく、抵抗ムラの無い導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体と、該導電性軸体の外周に設けられた導電性ゴム層と、を少なくとも有する画像形成装置に使用する導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、エピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛と、を少なくとも含有し、金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しないゴム組成物を、加硫することにより形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラに関する。詳しくは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンター、ファクシミリなどの種々の電子写真装置には、導電性ゴムローラをはじめとする各種導電性ゴム部材が使用されている。該導電性ゴム部材の導電性ゴム層には、ゴム成分としてエピクロロヒドリンゴム・アクリロニトリルブタジエンゴムが広く使用されている(例えば特許文献1参照)。エピクロロヒドリンゴム・アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることで、適度の弾性と体積固有抵抗値が105〜1010Ω・cmである中抵抗領域で、抵抗値のばらつきや印加電圧による抵抗値の変動が小さく、安定した抵抗値が得られる。また、前記導電性ゴム層には、充填剤(受酸剤)として酸化亜鉛等の金属酸化物やハイドロタルサイトが通常含まれる(例えば特許文献2参照)。
【0003】
近年ではカラー化の動きが強まり、高画質化・高速化はもちろんのこと、低コスト化に対応する必要があり、より低抵抗で耐久性に優れ、安価な導電性ゴムローラが求められるようになった。そのため高価なエピクロロヒドリンゴムの含有量を低減させ、かつ、体積固有抵抗値を低減前と同等に保つために、エチレンオキサイド含有量の多いエピクロロヒドリンゴムを用いたり、イオン導電剤を添加する提案がなされている。しかしながら、エピクロロヒドリンゴム量の低減だけでは大幅な低コスト化は望めず、また更なる低抵抗化の実現のためには、どうしてもエピクロロヒドリンゴムの量を多くする必要がある。また、イオン導電剤の添加では、部材表面にイオン導電剤がブリードし、感光体汚染を起こすなど問題がある。そのため、所定の抵抗値を得るためには、エピクロロヒドリンゴムの含有が必至であった。
【0004】
一方、特許文献1及び2のようにエピクロロヒドリンゴムをゴム成分に用いると、エピクロロヒドリンゴムは側鎖に塩素基を有するポリマーであるため、加硫・加熱により塩素が遊離する場合がある。この遊離した塩素が原因となり、感光体を汚染したり、ゴム分子の切断、分子極性を変化させたりして、経時で導電性ゴムローラの抵抗値が大きく変化する場合があり、更なる改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特開2008−216449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、画像形成装置に使用する導電性ゴムローラのゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを使用した場合にも、長時間にわたって抵抗値の変化が少なく、抵抗ムラが生じない導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る導電性ゴムローラは、導電性軸体と、該導電性軸体の外周に設けられた導電性ゴム層と、を少なくとも有する画像形成装置に使用する導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、エピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛と、を少なくとも含有し、金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しないゴム組成物を、加硫することにより形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
また、前記ゴム組成物が、金属酸化物又はハイドロタルサイト以外の受酸剤をさらに含有しないことを特徴とする。
【0009】
また、前記加硫が連続加硫であって、マイクロ波発生装置(UHF)と熱風加硫装置(HAV)によるものであることを特徴とする。
【0010】
また、前記導電性ゴム層が、発泡導電性ゴム層であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る転写ローラは、画像形成装置に用いる転写ローラであって、本発明に係る導電性ゴムローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る導電性ゴムローラは、ゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを使用した場合にも、長時間にわたって抵抗値の変化が少なく、抵抗ムラが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの概略構成図である。
【図2】本発明における連続加硫の際に用いる押出し加硫装置の一例を示した図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の導電性ゴムローラは、
導電性軸体と、該導電性軸体の外周に設けられた導電性ゴム層と、を少なくとも有する画像形成装置に使用する導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、エピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛と、を少なくとも含有し、金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しないゴム組成物を、加硫することにより形成されたものであることを特徴とする。
【0016】
(導電性ゴムローラ)
本発明に係る導電性ゴムローラは、導電性軸体と、該導電性軸体の外周に設けられた導電性ゴム層と、を少なくとも有する。本発明に係る導電性ゴムローラの構成の一例を図1に示す。図1に示す導電性ゴムローラ6は、導電性軸体61の外周に導電性ゴム層62が形成されている。なお、図1に示す導電性ゴムローラ6は、導電性ゴム層62の1層のみで構成されているが、導電性ゴム層62の外周又は内周に別途ゴム・樹脂等の層を設けた、2層以上の層を有する導電性ゴムローラであってもよい。
【0017】
(導電性軸体)
本発明に係る導電性ゴムローラにおける導電性軸体としては、少なくとも表面が導電性であれば、通常のローラにおいて用いる軸体を支障なく使用することができる。例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプ等が使用可能であり、表面をニッケル等でメッキしたものも使用できる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。
【0018】
導電性軸体の外径は、使用目的により適宜決定することができる。例えば、導電性ゴムローラを転写ローラとして用いる場合、その外径は、4mm以上、10mm以下であることが好ましい。
【0019】
(導電性ゴム層)
本発明に係る導電性ゴムローラにおける導電性ゴム層は、エピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛と、を少なくとも含有し、金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しないゴム組成物を、加硫することにより形成される。
【0020】
(エピクロロヒドリンゴム)
エピクロロヒドリンゴムは、側鎖に塩素基を有するポリマーであるため、加硫・加熱により塩素が遊離しゴム組成物中で塩素化合物を生じる。したがって、本発明においては、遊離塩素の発生が極力抑えられるエピクロロヒドリンゴムを使用することが好ましい。
【0021】
エピクロロヒドリンゴムは、単量体として、エピクロロヒドリン(以下ECHとする)、エチレンオキシド(以下EOとする)、アリルグリシジルエーテル(以下AGEとする)の三種類がある。これら単量体から得られる重合体として、ECH単独重合体、ECH−EO共重合体、ECH−AGE共重合体、ECH−EO−AGE三元共重合体がある。
【0022】
ECH単独重合体、ECH−EO共重合体は塩素の引き抜きによる架橋が一般的で、遊離塩素が多く存在する。このため、本発明においては、ECH−AGE共重合体、ECH−EO−AGE三元共重合体の二重結合を側鎖に有するエピクロロヒドリンゴムを使用し、遊離塩素の発生を抑えることが好ましい。この中でもECH−EO−AGE三元共重合体が好ましい。ECH−EO−AGE三元共重合体は、EO含量が40モル%以上であることが好ましく、48モル%以上であることがより好ましい。また、75モル%以下であることが好ましい。75モル%を超える場合には、結晶化し易く、抵抗及び環境依存性が共に高くなり易い。
【0023】
本発明で使用する導電性ゴム層の材料であるゴム組成物は、ゴム成分として、前記エピクロロヒドリンゴム以外に他の一般に使用されるゴムを含んでもよい。一般的に使用されるゴムとは、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この中でも、アクリロニトリルブタジエンゴムがエピクロロヒドリンゴムと相溶性がよく、共架橋できることから好ましい。前記ゴム成分中のアクリロニトリルブタジエンゴムの含有量は20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。また、10質量%以上であることが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴムの含有量が20質量%よりも多い場合、環境依存性が高くなる場合がある。また、10質量%に満たない場合は、アクリロニトリルブタジエンゴムの抵抗が高くなり易い。
【0024】
(金属酸化物、ハイドロタルサイト)
本発明に係る導電性ゴムローラは、前記ゴム組成物中に金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しない。
【0025】
前述したように、本発明者らはエピクロロヒドリンゴムとしてECH−AGE共重合体、ECH−EO−AGE三元共重合体を使用し、後述する硫黄による加硫を行った場合にも、詳細な検討を行った結果、遊離塩素は発生していることを付き止めた。そこで遊離塩素の影響について検討を重ねた結果、遊離塩素は、熱、エージングにより大気中に放出されてしまうため、導電性ゴムローラの特性には影響を及ぼさず、問題がないことが明らかとなった。しかし、従来技術のようにゴム組成物が充填剤として金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有する場合、金属酸化物又はハイドロタルサイトが受酸剤として働き、塩素と反応して金属塩化物・塩素化合物を形成し、経時で抵抗値が変化することを付き止めた。したがって、本発明では従来含まれる受酸剤として働く金属酸化物又はハイドロタルサイトを前記ゴム組成物中に含まない。さらに、金属酸化物又はハイドロタルサイト以外の受酸剤も含まないことが好ましい。
【0026】
前記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、鉛酸化物、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、前記ハイドロタルサイトとしては、Mg4.5Al2(OH)13CO3水和物等が挙げられる。
【0027】
(ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛)
本発明に係る導電性ゴムローラは、前記ゴム組成物中にステアリン酸又はステアリン酸亜鉛を少なくとも含有する。一般的に、ステアリン酸は充填剤として用いられ、ステアリン酸亜鉛は、充填剤として、また、打粉剤として用いられる。本発明においては、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛は、加硫速度や架橋度を調整するのに適しており、また、遊離塩素を受酸しないため用いている。本発明では前記金属酸化物を前記ゴム組成物中に含まないため加硫速度が遅くなる場合があるが、ステアリン酸亜鉛を含有することで架橋度、加硫速度を補うことができる。ゴム組成物中のステアリン酸又はステアリン酸亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、ステアリン酸は0.5質量部以上、2質量部以下、ステアリン酸亜鉛は1.0質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0028】
前述した受酸剤である酸化亜鉛、酸化マグネシウムをゴム組成物に含有させ、熱分解させた廃分を元素分析する。すると、それぞれ、亜鉛・塩素/マグネシウム・塩素元素の存在が確認できる。しかし、ステアリン酸亜鉛をゴム組成物に含有させた場合には、亜鉛のみで塩素は確認されない。このことからステアリン酸亜鉛は遊離塩素を受酸していないことがわかる。
【0029】
また、加硫速度や架橋度の調整としては、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛に加えて、チウラム・チアゾール等の硫黄加硫で用いる促進剤を併用できる。但し、塩素の脱離を防ぐための観点からチオウレア系の促進剤の使用は極力控えることが好ましい。
【0030】
(加硫剤)
本発明で使用する加硫剤は、エピクロロヒドリンゴムの加硫としては、硫黄、過酸化物、金属、アミン、トリアジン等による加硫が挙げられるが、硫黄が好ましい。硫黄は、ほかの加硫剤に比べて抵抗値が低く、また他のゴムとの共架橋に優れる。また、塩素を引き抜く反応でないため、遊離塩素の発生を防ぐことが可能である。前記ゴム組成物中の加硫剤の含有量としては、0.5〜4.0質量部であることが好ましい。
【0031】
(発泡剤)
本発明に係る導電性ゴムローラの導電性ゴム層は、発泡導電性ゴム層であることが、導電性ローラを転写ローラとして用いた場合におけるトナーの転写性の観点から好ましい。このため、前記ゴム組成物には発泡剤が含まれることが好ましい。発泡剤としては、p,p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)等が挙げられる。前記ゴム組成物中の発泡剤の含有量としては、1.0〜8.0質量部であることが好ましい。
【0032】
(その他成分)
前記ゴム組成物は、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有してもよい。例えば、カーボンブラック、加硫促進剤、各種老化防止剤、白色充填剤等の各種充填剤が必要に応じて配合可能である。ただし、白色充填剤の中で炭酸カルシウムのように遊離塩素を受酸する可能性のある化合物の使用は極力控えることが好ましい。
【0033】
(導電性ゴムローラの製造方法)
本発明に係る導電性ゴムローラの導電性ゴム層は、前記ゴム組成物を連続加硫することにより形成される。以下、本発明に係る導電性ゴムローラの製造方法の一例を示すが、これに限定されるものではない。
【0034】
図2は、本発明における連続加硫の際に用いる押出し加硫装置の一例を示した図である。前記押出し加硫装置は、押出機11、マイクロ波加硫装置12(以下、UHFとする)、熱風加硫装置13(以下、HAVとする)、引取機14、定尺切断機15から構成される。
【0035】
本発明の導電性ゴムローラは、導電性ゴム層の作製において、前記ゴム組成物をマイクロ波発生装置(UHF)と熱風加硫装置(HAV)によって連続的に加硫を行うことで、低コストでバラツキの少ない導電性ゴムローラを得ることができる。
【0036】
UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで押出機11より押出されたゴムチューブを搬送することができる。また、HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行うことができる。UHF12とHAV13の間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。UHF12、HAV13、引取機14の長さ、UHF12とHAV13の間隔、及びHAV13と引取機14の間隔は、条件等により適宜設定することができる。
【0037】
導電性ゴムローラの製造方法としては、まず、前記ゴム組成物を、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、加硫剤、必要に応じて発泡剤をオープンロールで混合する。次に、コニカルフィーダーによりリボン状に成形し、押出機11に投入する。
【0038】
押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、押出機11より押し出された直後に熱風により加熱されたUHF12内に搬送される。UHF12内において、該ゴムチューブにマイクロ波を照射して、該ゴムチューブを加熱して加硫、もしくは、加硫・発泡する。続いて、HAV13に搬送し、加硫を完了させる。
【0039】
前記UHF12内で照射するマイクロ波は、2450±50MHzが好ましく、この範囲内あることにより前記ゴムチューブに対し、照射ムラが少なく、かつ効率良く照射することができる。UHF12内での熱風の温度は、150℃〜250℃が好ましく、180℃〜230℃がより好ましい。
【0040】
その後、引取機14により引き取り、排出した直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断することで、チューブ状の導電性ゴム成形物を作製することができる。次いで、前記導電性軸体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体が得られる。該ローラ状の成形体を所定の外径になるまで研磨することにより、導電性ゴムローラが得られる。
【0041】
(画像形成装置)
次に、本発明に係る導電性ローラを転写ローラとして用いた画像形成装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0042】
図3に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用した画像形成装置であり、図3はその概略構成を示す縦断面図である。また、図3に示す画像形成装置には、本発明に係る導電性ローラを転写ローラとして具備する転写手段が装着されている。
【0043】
図3に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体1(以下「感光ドラム」という)を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0044】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザー光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0045】
前記静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー5が付着され、トナー像として反転現像される。
【0046】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアスの印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0047】
転写部Tを通過した転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0048】
なお、図3に示す画像形成装置においては、本発明の導電性ゴムローラを転写ローラとして用いた例を示したが、帯電ローラ、現像スリーブ等に本発明の導電性ゴムローラを用いたものであってもよい。
【0049】
本発明に係る導電性ゴムローラを転写ローラとして用いたプロセスカートリッジは、本発明の導電性ゴムローラを転写ローラとして具備することを特徴とし、画像形成装置に着脱可能である。なお、該プロセスカートリッジに含まれる感光ドラム、露光手段、現像装置、クリーニング装置等は、特に限定されない。また、帯電ローラ、現像スリーブ等に本発明の導電性ゴムローラを用いたものであってもよい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例1〜6及び比較例1〜6は発泡した導電性ゴムローラの例であり、実施例7〜9及び比較例7〜9は無発泡の導電性ゴムローラの例である。各実施例及び比較例で使用したゴム組成物の材料は、以下の通りである。
・アクリロニトリルブタジエンゴム
[結合アクリロニトリル量18質量%、商品名:「NipolDN401LL」、日本ゼオン(株)社製]
・エピクロロヒドリンゴム
[エチレンオキサイド含量73モル%、商品名:「EPION 301」、ダイソー(株)社製]
・加硫剤
[硫黄(S)、商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)社製]
・加硫促進剤
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、商品名:「ノクセラーDM」、大内新興化学工業(株)社製]
[テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、商品名:「ノクセラーTET」、大内新興化学工業(株)社製]
・受酸剤
[酸化亜鉛、商品名:「亜鉛華2種」、ハクスイテック(株)社製]
[酸化マグネシウム、商品名:「キョーワマグ150」、協和化学工業(株)社製]
[ハイドロタルサイト、商品名:「DHT−4A」、協和化学(株)社製]
・助剤
[ステアリン酸、商品名:「ルナックS20」、花王株式会社製]
[ステアリン酸亜鉛、商品名:「ジンクステアレート」、日本油脂(株)社製]
・充填剤
[カーボンブラック、商品名:「旭#35」、旭カーボン株式会社製]
・発泡剤
[p,p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)、商品名:「ネオセルボンN#1000S」、永和化成(株)社製]。
【0051】
(実施例1)
表1に示すように、ゴム組成物の材料として、エピクロロヒドリンゴム35質量部、アクリロニトリルブタジエンゴム65質量部、ステアリン酸1質量部及びカーボンブラック30質量部を用いた。なお、表1において、各材料の配合量の単位は質量部である。
【0052】
前記材料を、バンバリーミキサーを用いて混練した後、オープンロールでゴム成分100質量部に対し、硫黄2質量部、DM1.5質量部、TET1.5質量部、OBSH2質量部を混合し、コニカルフィーダーによりリボン状に成形した。なお、ゴム成分とは、エピクロロヒドリンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムを示す。
【0053】
その後、図3に示す押出し加硫装置を用いて連続加硫を行った。UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルトで押出機11より押出されたゴムチューブを搬送する。HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行う。UHF12とHAV13の間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。UHF12、HAV13、引取機14の長さは、順に、4m、6m、1mである。また、UHF12とHAV13の間、及びHAV13と引取機14の間は、それぞれ、1m、1mである。押出し加硫装置の全長は13mである。
【0054】
押出機11に前記リボン状に成形した混合物を投入し、押出機11によりチューブ状に成形することでゴムチューブを得た。押出機11より押し出されたゴムチューブを、直後に炉内雰囲気温度200℃に設定したUHF12内に搬送し、該ゴムチューブに2450MHzのマイクロ波を約2分間照射することで、該ゴムチューブを加熱し、加硫・発泡した。続いて、200℃に設定したHAV内13に搬送し、約3分間加熱することで、加硫・発泡を完了した。その後、引取機14により引き取り、排出された直後に、定尺切断機15により250mmの長さに切断することで、形状を保持できるチューブ状の導電性ゴム成形物を作製した。
【0055】
次いで、φ6mmのSUM材からなる導電性軸体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に挿入し、ローラ状の成形体を得た。該成形体を外径がφ14mmになるように表面を研磨することで、導電性ゴムローラを作製した。作製した導電性ゴムローラを下記方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0056】
<導電性ゴムローラの抵抗測定方法及び周ムラ測定方法>
導電性ゴムローラの抵抗は、23℃/55%RH(N/N)の環境下で導電性ゴムローラの導電性軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた。この状態で、導電性軸体とアルミドラムとの間に1kVの電圧を印加して電流値を測定し、オームの法則により抵抗値を算出したものを対数変換し、導電性ゴムローラの抵抗値LogRとした。また、そのときの電流値の最大値と最小値の比を周ムラとした。本発明においては、トナーの転写ムラの観点から周ムラは1.15以下が好ましく、1.10以下がより好ましい。
【0057】
<抵抗値経時変動量測定方法>
導電性ゴムローラの抵抗値LogR(初期値R0とする)の測定を行った導電性ゴムローラを、40℃/95%RHの環境に350時間置いた後、23℃/55%RHの環境で再び導電性ゴムローラの抵抗値LogRを測定した。この再測定した導電性ゴムローラの抵抗値LogRを環境変化値RTとする。初期値R0と環境変化値RTの差(絶対値)を抵抗値経時変動量とした。抵抗値経時変動量は小さいほうが経時安定性が高いため好ましく、本発明においては、抵抗値経時変動量は0.15以下であることが好ましい。
【0058】
<通電耐久変動量測定方法>
はじめに、前記導電性ゴムローラの抵抗測定方法により、23℃/55%RH(N/N)環境下における導電性ゴムローラの電流値を測定し、オームの法則により抵抗値を算出したものを対数変換し、耐久試験前導電性ゴムローラの抵抗値LogRとした。次に、導電性ゴムローラを50℃の環境下に置き、導電性軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにして外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、0.2Hzで回転させた。この状態で、導電性軸体とアルミニウムドラムとの間に25時間、80μAの定電流を印加し続けた。その後、23℃/55%RH(N/N)環境下で再び電流値を測定し、オームの法則により抵抗値を算出したものを対数変換し、耐久試験後導電性ゴムローラの抵抗値LogRを求めた。ここで耐久試験後導電性ゴムローラの抵抗値LogRから耐久試験前導電性ゴムローラの抵抗値LogRを差し引いたものを、通電耐久変動量とした。通電耐久変動量が小さいほど、導電性ゴムローラの長期にわたる抵抗値変化が少ないため好ましい。
【0059】
<総合評価>
抵抗値経時変化量と通電耐久変動量の合計が、0.3以下を○とし、0.3を超える場合を×とした。
【0060】
(実施例2〜6、比較例1〜6)
材料の配合を表1に示す配合量とした以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例7〜9、比較例7〜9)
材料の配合を表2に示す配合量とし、OBSHを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラを作製し、評価を行った。実施例7〜9、比較例7〜9ではOBSH(発泡剤)を混合していないため、無発泡の導電性ゴムローラが得られた。評価結果を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例1〜6はゴム組成物がエピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛とを少なくとも含有し、該ゴム組成物が受酸剤である金属酸化物及びハイドロタルサイトを含有しない例である。周ムラが1.10以下であり抵抗値経時変動はなく、通電耐久変動量も小さい。
【0065】
実施例3〜6はゴム組成物がステアリン酸亜鉛を含有しており、導電性ゴムローラ抵抗値LogRはステアリン酸を含有する実施例1に比べ実施例5は若干高いが、通電耐久変動量は小さく良好である。
【0066】
比較例1〜6はゴム組成物が金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有する例である。周ムラは1.15以下ではあるが、1.10以上であり、抵抗値経時変動量が大きい。また、通電耐久変動量が対応するゴム成分の組成についての実施例1〜6と比較して大きい。また実施例4に比べ比較例2、3及び4は抵抗値も高い。
【0067】
実施例7〜9及び比較例7〜9に示す無発泡の導電性ゴムローラにおいても同様の結果であった。
【0068】
以上説明したように、本発明に係る導電性ゴムローラは、導電性ゴム層の材料であるゴム組成物が受酸剤である金属酸化物及びハイドロタルサイトを含有せず、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛を含有する。該導電性ゴムローラは、エピクロロヒドリンゴムをゴム成分として使用しても、長時間にわたり抵抗値の変化が少なく、抵抗ムラが無い。
【符号の説明】
【0069】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 レーザー光
4 現像装置
5 トナー
6 導電性ゴムローラ(転写ローラ)
7 転写材
8 クリーニングブレード
9 クリーニング装置
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
61 導電性軸体
62 導電性ゴム層
T 転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体と、該導電性軸体の外周に設けられた導電性ゴム層と、を少なくとも有する画像形成装置に使用する導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、エピクロロヒドリンゴムと、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛と、を少なくとも含有し、金属酸化物又はハイドロタルサイトを含有しないゴム組成物を、加硫することにより形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、金属酸化物又はハイドロタルサイト以外の受酸剤をさらに含有しない請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記加硫が連続加硫であって、マイクロ波発生装置(UHF)と熱風加硫装置(HAV)によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記導電性ゴム層が、発泡導電性ゴム層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
画像形成装置に用いる転写ローラであって、該転写ローラが、請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−217521(P2010−217521A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64291(P2009−64291)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】