説明

導電性ゴム組成物

【課題】混錬時の条件による抵抗変動が少なく電気的均一性に優れた半導電性を示し、電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物であって、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択されるゴム成分と導電剤としてカーボンブラックAおよびBとを含有し、カーボンブラックAは平均一次粒子径およびDBP吸収量が明細書中に定義される特定の範囲の非黒鉛化カーボンでありカーボンブラックBは揮発分、平均一次粒子径およびDBP吸収量が明細書に定義される特定の範囲の黒鉛化カーボンブラックでありカーボンブラックAに対するカーボンブラックBの含有量、および該ゴム成分に対するカーボンブラックAおよびBの総含有量が明細書中に定義される特定の範囲である導電性ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電剤としてカーボンブラックを含有する導電性ゴム組成物は、混練時において生じるゴムの状態やカーボンブラックの分散のわずかな変動などによって、体積固有抵抗値が変動する。そのため、電子部品などに求められる体積固有抵抗値102Ω・cm以上1010Ω・cm以下の半導電性領域の導電性を有するゴム組成物は、電気的均一性に劣る場合があるという課題を有していた。
【0003】
上記半導電性領域の導電性を有するゴム組成物を得るための技術としては、粒径が大きいカーボンブラックを使用して半導電性領域の導電性を有するゴム組成物を調製する方法が知られており、これによりゴム組成物の電気的均一性を改善することができる。しかし、このようなカーボンブラックを用いて、半導電性領域のゴム組成物を調製するには、多量のカーボンブラックが必要となる場合があり、得られた組成物は加工性に劣る場合や、用途が限られる場合がある。
【0004】
また、DBP吸収量が大きく、導電性の高いカーボンブラックを使用した場合、導電性ゴム組成物内で一般的にカーボンブラックアグリゲート同士がつながった構造をとりやすく、そのため、少量添加で導電性を付与する効果がある。しかし、混練時において、カーボンブラックの分散の変動が生じやすい場合があり、分散状態の違いにより導電性が異なるため、電気的均一性を示す導電性ゴム組成物を調整するのが難しい場合がある。
【0005】
これらの課題に対して、平均一次粒子径が異なる2種類のカーボンブラックを併用することで、電気的均一性を改善する方法として以下の提案がされている。
カーボンブラックを添加して、導電性ゴム組成物の分散状態や抵抗値を制御する手段として、体積抵抗率の小さいカーボンブラックと比表面が小さいカーボンブラックとを併用することが提案されている。特許文献1には以下の方法が提案されている。即ちEPDM(エチレンプロピレンゴム)にDBP吸収量が大きく、体積抵抗率が1Ω・cm以下のケッチェンブラック(商品名)等のカーボンブラックと比表面積が100m2/g以下のカーボンブラック(例えばMTカーボンブラック)とを併用する方法である。
【0006】
DBP吸収量140cm3/100g以上、平均粒子径50nm以下のカーボンブラックと、DBP吸収量60cm3/100g以下、平均粒子径70nm以下のカーボンブラック及び金属酸化物の少なくとも一方とを配合する方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
近年の高性能な電子部品においては、より優れた電気的均一性を示すゴム材料が求められている。カーボンブラックを含有するエラストマー組成物として、カーボンブラックと黒鉛とを併用したエラストマー組成物が提案されている。具体的には、ゴム、熱可塑性エラストマーなどの高分子材料に、カーボンブラックおよび平均粒子径が15μm以上である黒鉛を含有することで、高い電磁波シールド性を有する電磁波シールド材料が得られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−58077号公報
【特許文献2】特開2002−105246号公報
【特許文献3】特開2003−258491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の場合、導電性の調整は、DBP吸収量が大きく導電性の高いカーボンブラックであるケッチェンブラック(商品名)に依存することとなる。ケッチェンブラックは、導電性付与効果が高く、少量添加で導電性を付与する効果がある。そのため混練時において、カーボンブラックの分散の変動が生じやすいため、MTカーボンブラックを併用することで、電気的均一性をはかっている。しかし、ケッチェンブラックとMTカーボンブラックとはカーボンの物理化学特性が異なるために、導電性ゴム組成物内での分散度が異なり、分散に不均一部分が生じやすい場合があり、十分な電気的均一性が得られない場合がある。
【0010】
特許文献2の場合、DBP吸収量140cm3/100g以上、平均粒子径50nm以下のカーボンブラックの含有量が非常に少ないと体積抵抗率が非常に大きくなる場合があり、その含有量が非常に多いと電気的均一性および加工性に劣る場合がある。また、特許文献2の場合、DBP吸収量60cm3/100g以下、平均粒子径70nm以下のカーボンブラックおよび金属酸化物は分散が難しい場合があり、電気的均一性および加工性に劣るといった課題が生じる場合がある。
【0011】
特許文献3に示すようなエラストマー組成物を導電性材料として用いた場合、以下のことが考えられる。即ち、体積固有抵抗値が低い平均粒子径15μm以上の大粒子径黒鉛の作用により局部的に電気抵抗値が低い部分の発生がさけられない場合があり、電気的均一性を示す組成物を得ることが困難な場合がある。
【0012】
本発明の目的は、混錬時の条件によって抵抗変動が少なく、電気的均一性に優れた半導電性を示し、電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物であって、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択されるゴム成分と、導電剤として、カーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)とを含有しており、該カーボンブラック(A)は、平均一次粒子径が20nm以上50nm以下、かつ、DBP吸収量が60cm3/100g以上150cm3/100g以下の非黒鉛化カーボンブラックであり、該カーボンブラック(B)は、揮発分が1質量%以下、平均一次粒子径が20nm以上70nm以下、かつ、DBP吸収量が50cm3/100g以上170cm3/100g以下の黒鉛化カーボンブラックであり、該カーボンブラック(B)の含有量は、該カーボンブラック(A)100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下であり、かつ、該カーボンブラック(A)および該カーボンブラック(B)の総含有量は、該ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ゴム組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、混錬時の条件によって抵抗変動が少なく、電気的均一性に優れた半導電性を示し、電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】導電性ゴム組成物の体積抵抗率測定に用いるシートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を行った。ベースとなるゴム、カーボンブラック(CB)の粒子径とストラクチャーとの組み合わせ、カーボンブラックの揮発分などの組み合わせと配合比・量等を最適化することによって、以下の導電性ゴム組成物が得られることを知見した。即ち、混錬時での抵抗変動を抑制でき、カーボンブラックがゴム中に均一分散されており、電気的に均一で半導電性を示し、電子写真装置等に用いる導電性部材用に使用する導電性ゴム組成物を得ることができた。なお本明細書において、半導電性とは、電子部品などに求められる体積固有抵抗値102Ω・cm以上1010Ω・cm以下の半導電性領域の導電性のことを意味する。
以下、本発明の実施形態につき具体的に説明する。
【0017】
<導電性ゴム組成物>
本発明の導電性ゴム組成物は、電子写真装置等に用いる導電性部材に使用することができ、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択されるゴム成分と、導電剤として、カーボンブラック(A)とカーボンブラック(B)とを含有する。また、本発明の導電性ゴム組成物は、以下の工程を含む製造方法により製造することができる。
(1)天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択されるゴム成分と、導電剤として、カーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)とを用意する工程。
(2)前記ゴム成分と、前記カーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)とを含む導電性ゴム組成物を調製する工程。
なお、導電性ゴム組成物は、前記ゴム成分、カーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)、ならびに必要に応じて他の導電剤、無機充填剤、および加硫剤等の各種添加剤を混練して調製することができる。
【0018】
前記カーボンブラック(A)は、平均一次粒子径が20nm以上50nm以下、かつ、DBP吸収量が60cm3/100g以上150cm3/100g以下の非黒鉛化カーボンブラックである。以降、このカーボンブラック(A)を、「CB−A」と称することもある。
前記カーボンブラック(B)は、揮発分が1質量%以下、平均一次粒子径が20nm以上70nm以下、かつ、DBP吸収量が50cm3/100g以上170cm3/100g以下の黒鉛化カーボンブラックである。以降、このカーボンブラックBを「CB−B」と称することもある。
導電性ゴム組成物中のカーボンブラック(B)の含有量は、カーボンブラック(A)100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下である。導電性ゴム組成物中のカーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)の総含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下である。
【0019】
なお、透過型顕微鏡を用いて、使用するカーボンブラックの一次粒子100個を無作為に選択して、その100個の一次粒子径をそれぞれ測定し、その測定値の平均をカーボンブラックの平均一次粒子径とする。
また、DBP吸収量は、JIS K6217−4「ゴム用カーボンブラック―基本特性」に規定されている方法を用いて測定される特性である。
揮発分は、カーボンブラックの揮発分の測定DIN 53552に準じて測定する。
【0020】
本発明では導電性ゴム組成物に用いるカーボンブラックとして、少なくともCB−AとCB−Bの2種類のカーボンブラックを使用することで所望の効果が発揮される。なお、本発明の導電性ゴム組成物は、電気特性に影響を及ぼさない範囲、即ち本発明の効果を損なわない範囲で、CB−AおよびCB−B以外の他の導電剤を含むこともできる。
【0021】
(ゴム成分)
本発明に用いるゴム成分は、天然ゴムおよび合成ゴムのうちから適宜選択した1種または2種以上を用いることができ、特に制限されるものではなく、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれをも用いることができる。合成ゴムとしては特に制限されず、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重ゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)等が挙げられる。これらは、導電性ゴム組成物の使用用途に応じて導電性ゴム組成物に適宜選択して配合することができる。またゴム成分には、加硫剤のほか、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などの従来からゴムの配合剤として使用されていたものを適宜配合することができる。
【0022】
CB−Aは、本発明の導電性ゴム層における導電性、すなわち、体積抵抗率を下げる効果の大半を担っていると考えられる。本発明に用いるCB−Aは、平均一次粒子径が20nm以上50nm以下、かつ、DBP吸収量が60cm3/100g以上150cm3/100g以下の非黒鉛化カーボンブラックであるのが好ましい。また、CB−Aは、平均一次粒子径が25nm以上45nm以下、DBP吸収量は70cm3/100g以上130dcm3/100g以下の非黒鉛化カーボンブラックであることがより好ましい。
非黒鉛化カーボンブラックとは、通常のカーボンブラック(黒鉛化処理していないもの)として市販されているものであり、ゴム用途カーボンブラックとして知られるISAF級、HAF級、MAF級、FEF級カーボンブラック等を用いることができる。
【0023】
CB−Aの平均一次粒子径が20nm未満であると、非黒鉛化カーボンブラックの分散性が低下し、電気的に均一性に劣る。また、CB−Aの平均一次粒子径が50nmを超えると、半導電性領域の導電性を有するゴム組成物を調製するには、多量のCB−Aが必要となり、得られた組成物は加工性に劣り、用途が限られてしまう。
【0024】
またCB−AのDBP吸収量が60cm3/100g未満であると、混練時でのカーボンブラックの分散は難しく、導電性に劣る。DBP吸収量が150cm3/100gを超えると、導電チャンネルを形成しやすく、少量添加で導電性を付与する効果があるが、チャンネルの形成の違いにより導電性が異なるため、電気的均一性を示す導電性ゴム組成物を調整するのは難しい。
【0025】
本発明の導電性ゴム組成物中に分散するCB−Bは、黒鉛化カーボンであり、非黒鉛化カーボンに比べ、導電性の付与に優れているカーボンである。CB−Bは、カーボンブラックを2000℃以上3000℃以下の高温不活性雰囲気下で処理(黒鉛化処理)することで得ることができる。この際、用いたカーボンブラックの一次凝集体の大きさを保持したまま結晶成長が起こり、球体から多面体に変化したCB−Bが得られる。
黒鉛化カーボンブラックとは、高温不活性雰囲気下で処理することで、通常のカーボンブラックに含まれる硫黄、含酸素官能基、および表面官能基が除去された高純度のカーボンブラックを意味する。表面官能基が除去されたカーボンブラックは耐熱性、潤滑性、導電性が向上する。
【0026】
本発明には、揮発分1質量%以下、平均一次粒子径が20nm以上70nm以下、かつ、DBP吸収量が50cm3/100g以上170cm3/100g以下の黒鉛化カーボンを用いるのが好ましい。また、CB−Bは平均一次粒子径は25nm以上50nm以下、かつ、DBP吸収量は60cm3/100g以上120cm3/100g以下がより好ましい。
【0027】
CB−Bの平均一次粒子径が20nm未満であると、CB−A同様にカーボンの分散性が低下し、電気的に均一性に劣る。平均一次粒子径が70nmを超えるカーボンブラックを使用して中抵抗領域の導電性を有するゴム組成物を調製するには、多量のカーボンブラックが必要であり、得られた組成物は加工性に劣り、用途が限られてしまう。
またCB−BのDBP吸収量が50cm3/100g未満であると、混練時でのカーボンブラックの分散は難しい。CB−BのDBP吸収量が170cm3/100gを超えると、導電チャンネルを形成しやすく、極少量添加で導電性を付与する効果があるが、チャンネルの形成の違いにより導電性が異なるため、電気的均一性を示す導電性ゴム組成物を調整するのは難しい。
【0028】
導電性ゴム組成物中の黒鉛化カーボンCB−Bの配合量は、CB−A100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下である。添加される黒鉛化カーボンCB−Bの配合量が15質量%を超えると体積抵抗率の低下が生じ目標の体積抵抗率を得ることが難しい。一方、1質量%未満になると電気特性の均一性が劣る。
【0029】
また、CB−BはCB−Aよりも高導電性を示すカーボンブラックであるが、CB−AおよびCB−Bは平均一次粒子径およびDBP吸収量が同程度のカーボンブラックである。このため、導電性ゴム組成物内で同様の分散性であることが考えられ、混錬時の条件によって抵抗変動が少なく、電気的に均一な導電性ゴム組成物を得ることができると考えられる。
【0030】
導電性ゴム層中のCB−Aのストラクチャー周囲に、官能基をほとんど持たないCB−Bが存在するために、CB−Aに付着するカーボンゲルの発生量を減らすことができるのではないかと考えられる。カーボンゲルは混練工程において、ゴム成分中のポリマー鎖とカーボンブラックとの相互作用により形成され、カーボンブラックをポリマー鎖に固定化する働きがある。一般的にカーボンゲルの生成にはゴムと充填材であるカーボンブラックとの界面における化学的相互作用が大きな影響を与えていると考えられている。また混練時における発熱やせん断力によって、カーボンゲルの発生量は変化すると考えられてもいる。しかし、官能基をほとんど持たないCB−Bが存在するため、混練時において生じるわずかな変動によるCB−Aに付着するカーボンゲルの発生量を抑制することが出来るのではないかと考えられる。
【0031】
現時点では、カーボンゲルは、抵抗変動が生じる要因の一つとして考えられている。導電性ゴム組成物はCB−AおよびCB−Bを含有することにより、混錬時の条件によるカーボンゲルの発生量の変動を抑制することができ、混錬時の条件による抵抗変動を少なく、優れた電気的均一性を得ることが出来るのではないかと考えられる。
【0032】
さらに、導電性ゴム組成物中のCB−AおよびCB−Bの合計割合が、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下添加することで容易に適度な導電性ゴム組成物の導電性を得ることが可能である。添加されるカーボンブラック総含有量が30質量部未満ではゴム中の導電性を発揮するカーボンブラックの量が少なく抵抗値が安定しにくく、60質量部より多いと硬度が上昇してしまう。
【0033】
本発明の導電性ゴム組成物には、平均一次粒子径が0.1μm以上25μm以下である無機充填剤を含有すると効果的である。無機充填剤の平均一次粒子径は、上述したカーボンブラックの平均一次粒子径と同様の方法により測定することができる。
【0034】
無機充填剤としては、ゴム業界で用いられている各種無機添加剤を使用することができ、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。これら導電性ゴム組成物中の無機充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上80質量部以下添加することが好ましい。添加される無機充填剤の量が5質量部以上では、分散不良を容易に抑制することができ、適度な加工性を容易に得ることができ、80質量部以下であると本発明の効果を容易に得ることができる。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、などが挙げられる。
これら各種無機充填剤の平均一次粒子径が0.1μm以上だと、粒子径が小さいことによる分散不良を特に抑制することができ、平均一次粒子径が25μm以下だと、粒子径が大きいことによるカーボンブラックの分散に対する阻害を特に抑制することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。以下の例において、部および%は、特に断りのない限り質量基準である。物性の測定方法は、以下の通りである。
なお、各実施例および比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)原料ゴム
・NBR:アクリルニトリルブタジエンゴム『N230SV』(商品名、JSR株式会社製、アクリルニトリル量 35.0質量%)。
2)カーボンブラック
「CB−A」:『Printex30 OP』(商品名、デグサジャパン株式会社製、平均一次粒子径27nm、DBP吸収量94cm3/100g)。
「CB−B」:『黒鉛化カーボン 3855』(商品名、東海カーボン株式会社製、平均一次粒子径25nm、DBP吸収量120cm3/100g、揮発分0.12質量%)。
3)充填剤、加硫剤等
・炭酸カルシウム:『ナノックス#30』(商品名、丸尾カルシウム株式会社製、平均一次粒子径700nm、DBP吸収量30cm3/100g)。
・酸化亜鉛:亜鉛華2種(商品名、ハクスイテック(株)製)。
・ステアリン酸:加硫促進助剤、ルナックS20(商品名、花王株式会社製)。
・MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド):加硫促進剤、『ノクセラーDM−P』(商品名、大内新興化学工業株式会社製)。
・TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド):加硫促進剤、『ノクセラーTETD−G』(商品名、大内新興化学工業株式会社製)。
・硫黄:加硫剤、サルファックスPMC(商品名 鶴見化学工業(株)製)。
また、実施例、比較例で作製した導電性ゴム組成物について、それぞれの体積抵抗率の測定評価を以下の方法にて行った。
【0036】
<体積抵抗率および抵抗ムラの測定>
実施例及び比較例の導電性ゴム組成物に、160℃で予熱したプレス成形機を用いて、10MPaの圧力をかけ100×100mm、厚さ2mm程度のシート(図1の符号9)をそれぞれ作製した。低抵抗測定器ローレスターGP(商品名:MCP−T610、株式会社三菱化学製)を用いて、印加電圧10V以上90V以下で各シートの体積抵抗率を測定した。なおこの時に使用したプローブはESPで、1枚のシートにつき、図1の符号1〜8に示す8箇所の測定を行った。この8箇所の測定値の平均値を、各導電性ゴム組成物の体積抵抗値とし、表1に示した。また8箇所の測定値における最大値Rmax(Ω・cm)と最小値Rmin(Ω・cm)の比(Rmax/Rmin)から抵抗ムラを評価した。
なお測定は、作製した導電性ゴム組成物シートを23℃/60%RH(相対湿度)(N/N)環境下に24時間以上置いた後に行った。抵抗ムラの評価基準を以下に示す。
○:抵抗ムラ1.3以下(抵抗ムラ 小)、
△:抵抗ムラ1.3超過1.5未満(抵抗ムラ 中)、
×:抵抗ムラ1.5以上(抵抗ムラ 大)。
【0037】
(実施例1、2)
原料ゴムとして、NBR 100質量部を用い、これに対して、導電剤として、カーボンブラック(CB−AおよびCB−B)を合計30質量部用いた。なお、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合は、表1に示す質量割合とした。その他原料として、炭酸カルシウム 20質量部、酸化亜鉛 5質量部、ステアリン酸 1質量部を用いた。これらの全原料を、3L加圧型ニーダー(商品名:D3−10、株式会社モリヤマ製)を用いて、以下の条件にて混練した。まずローター回転数20rpmで、原料ゴムのみを2分間素練りし、次いでカーボンブラック、およびその他原料を投入して16分間混練りした。なお、ニーダー容量に対する原料の充填率は75vol%で行った。こうして得られた練り組成物を室温(25℃)で1時間冷ました。その後に、冷却した練り組成物、硫黄(加硫剤)1.2質量部、MBTS(加硫促進剤)1.2質量部及びTETD(加硫促進剤)0.5質量部を混練して未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。その際、オープンロール機(12inch、テスト用ロール機、関西ロール(株)製)を用いて、フロントロール15rpm、バックロール18rpmで、適宜切り返しながら、表1に示す混練時間条件(ロール練り時間)にて混練を行った。なお、表1中のCB総質量部とは、原料ゴム100質量部に対するカーボンブラックの総質量部数を意味する。
【0038】
(実施例3〜10)
実施例1の原料ゴム100質量部に対するCB−AおよびCB−Bの合計質量部を48質量部に変更し、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合、およびオープンロール機の混練時間条件を表1に示す質量割合と混練時間条件にそれぞれ変更した。それら以外は実施例1と同様にして実施例3〜10の未加硫の導電性ゴム組成物をそれぞれ作製した。
【0039】
(実施例11、12)
実施例1の原料ゴム100質量部に対するCB−AおよびCB−Bの合計質量部を60質量部に変更し、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合を表1に示す質量割合に変更した。それら以外は実施例1と同様にして実施例11、12の未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0040】
(比較例1)
実施例1の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部は変更せずに、原料ゴム100質量部に対してCB−Aの質量部数を30質量部とし、CB−Bは使用しなかった。それ以外は実施例1と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0041】
(比較例2)
実施例1の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部は変更せずに、合計質量部を30質量部とし、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合を表1に示す質量割合に変更した。それら以外は実施例1と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0042】
(比較例3〜6)
実施例3の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部は変更せずに、原料ゴム100質量部に対してCB−Aの質量部数を48質量部とし、CB−Bは使用しなかった。また、混練時間条件は、表1に示す条件を用いた。それら以外は実施例3と同様にして比較例3〜6の未加硫の導電性ゴム組成物をそれぞれ作製した。
【0043】
(比較例7)
実施例11の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部は変更せずに、原料ゴム100質量部に対してCB−Aの質量部数を60質量部とし、CB−Bは使用しなかった。それ以外は実施例11と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0044】
(比較例8)
実施例1の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部を60質量部に変更し、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合を表1に示す質量割合に変更した。それ以外は実施例1と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0045】
(比較例9)
実施例1のCB総質量部は変更せずに、原料ゴム100質量部に対するCB−Bの質量部数を30質量部とし、CB−Aは使用しなかった。それ以外は実施例1と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0046】
(比較例10)
実施例11の原料ゴム100質量部に対するCB総質量部は変更せずに、合計質量部を60質量部とし、この合計質量部中のCB−AとCB−Bとの質量割合を表1に示す質量割合に変更した。それら以外は実施例11と同様にして未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0047】
上記の方法により得られた各導電性ゴム組成物の体積抵抗率を上記に示した測定方法に従って評価した結果を表1に示す。なお、表1中の体積抵抗値において、例えば、「4.63E+05」は、「4.63×105」を意味する。
【0048】
実施例1、2、11、12、比較例1、2、7、8より、CB−Aの100質量部に対して本発明に用いられている、CB−Bである黒鉛化カーボンの配合量は本発明の範囲が適していることがわかる。比較例1、7は、導電性に優れたCBであるCB−B(黒鉛化カーボン)を含まないため、導電性ゴム組成物シートの体積抵抗率が、電子部品などに求められる体積固有抵抗値が得られるが、シート内での体積抵抗率のバラツキが大きくなり、電気的均一性に劣る。また比較例2、8はCB−Bの配合量が多いため、CB−Bの分散が低下し、シート内での体積抵抗率のバラツキが大きくなり、電気的均一性に劣る。
実施例1、2、11、12、比較例9、10より、カーボンブラックの配合量は本発明範囲内が適していることがわかる。すなわち、比較例9、10は導電性に優れたCBであるCB−Bのみを含有しているため、電子部品などに求められる体積固有抵抗値より低下してしまう。
【0049】
実施例3〜10、比較例3〜6より、本発明の導電性ゴム組成物はロール機の混錬時間を延ばしていっても、シートの体積抵抗率の変化およびシート内での体積抵抗率のバラツキも小さく、電気的均一性に優れる。すなわち、黒鉛化カーボンを少量配合することで、練りでの体積抵抗のバラツキを抑制する効果がある。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置に用いる導電性部材に使用する導電性ゴム組成物であって、
天然ゴムおよび合成ゴムからなる群から選択されるゴム成分と、導電剤として、カーボンブラック(A)およびカーボンブラック(B)とを含有しており、
該カーボンブラック(A)は、平均一次粒子径が20nm以上50nm以下、かつ、DBP吸収量が60cm3/100g以上150cm3/100g以下の非黒鉛化カーボンブラックであり、
該カーボンブラック(B)は、揮発分が1質量%以下、平均一次粒子径が20nm以上70nm以下、かつ、DBP吸収量が50cm3/100g以上170cm3/100g以下の黒鉛化カーボンブラックであり、
該カーボンブラック(B)の含有量は、該カーボンブラック(A)100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下であり、かつ、該カーボンブラック(A)および該カーボンブラック(B)の総含有量は、該ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ゴム組成物。
【請求項2】
平均一次粒子径が0.1μm以上25μm以下である無機充填剤を含有する請求項1記載の導電性ゴム組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−236290(P2011−236290A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107336(P2010−107336)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】