説明

導電性ゴム部材

【課題】 環境依存性が小さく、電気抵抗値が安定した導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
【解決手段】 導電性弾性層と、前記導電性弾性層上にポリビニルアルコールと導電性微粉末とを含有する塗布液を塗布して成形したコート層とを具備し、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、下記式を満たす。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、又はトナージェット式複写機及びプリンター等の画像形成装置に用いられる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール等の導電性ロールや、クリーニングブレード、転写ベルト等に好適な導電性ゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機及びプリンターなどの画像形成装置の導電性ロールには、感光体等への非汚染性、導電性等が要求される。そこで、従来、各種弾性層表面に各種コーティング層を設けたものが提案されているが、従来の樹脂からなるコーティング層は、電気抵抗値の環境依存性が大きくなってしまうという問題や、コーティング層が感光体表面の樹脂と相溶し、固着してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、導電性弾性層の上に特定の水溶性高分子量体を含有する高分子層を有する帯電部材が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の帯電部材は、感光体と固着しにくく、トナー汚れ性が低く、環境変動による電気抵抗変化が小さいものである。
【0004】
特許文献1の帯電部材は、温度15℃、湿度10%の低温低湿環境や、温度22℃、湿度60%の環境に移行しても体積抵抗率の変動が小さいものであったが、低温低湿環境から高温高湿環境に移行する際には、体積抵抗率が大きく変動してしまうものがあった。このため、低温低湿環境から高温高湿環境に移行する際にも体積抵抗率の変動が小さいものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3056273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、環境依存性が小さく、電気抵抗値が安定した導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、導電性弾性層と、前記導電性弾性層上にポリビニルアルコールと導電性微粉末とを含有する塗布液を塗布して成形したコート層とを具備し、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、下記式を満たすことを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0008】
【数1】

【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記コート層は電気抵抗値(Ω)が1.0×10以下であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記コート層は、前記導電性弾性層よりも電気抵抗値が低いことを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性微粉末は酸化亜鉛及びカーボンブラックのうち少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性弾性層はイオン導電性ポリマーからなることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0013】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性弾性層はエピクロルヒドリンゴムからなることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1〜6のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材からなることを特徴とする導電性ゴムロールにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、環境依存性が小さく、電気抵抗値が安定した導電性ゴム部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】参考試験例1の結果を示す図である。
【図2】参考試験例2の結果を示す図である。
【図3】試験例1の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の導電性ゴム部材は、導電性弾性層と、導電性弾性層上にポリビニルアルコールと導電性微粉末とを含有する塗布液を塗布して成形したコート層とを具備するものである。ここで、本発明は、ポリビニルアルコールは、吸湿性が比較的高く、高温高湿環境下においては吸湿量が非常に大きくなり体積抵抗率が低下してしまうという知見に基づき、ポリビニルアルコールに導電性微粉末を配合して、導電性微粉末による導電機構の影響を吸湿による体積抵抗率の変化の影響より大きくする、すなわち、導電機構を導電性微粉末に依存させることにより、ポリビニルアルコールが大きく吸湿したとしても電気抵抗値が大幅に低下することがないものを実現するというものである。本発明の導電性ゴム部材は、環境依存性が小さく、電気抵抗値が安定したものである。このように、ポリビニルアルコールに導電性微粉末を配合して、コート層の導電機構を導電性微粉末に依存させることにより、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、下記式を満たすものとなる。
【0018】
【数2】

【0019】
すなわち、導電性微粉末に導電機構を依存させることにより、上記式を満たす環境依存性の小さい導電性ゴム部材とすることができる。上記式を満たす導電性ゴム部材は、一般的に環境変動が小さいとされるものであり、いずれの用途においても好適に使用できる。例えば、画像形成装置の現像ロールとして使用した場合、良好な画像形成を行うことができる。
【0020】
コート層は、導電性弾性層上にポリビニルアルコールと導電性微粉末とを含有する塗布液を塗布して成形するものである。塗布液は、ポリビニルアルコール及び導電性微粉末を含む水溶液からなる。塗布液にポリビニルアルコールを含むことにより、感光体と固着しにくく、トナー汚れ性が低いコート層を形成することができ、導電性微粉末を所定量配合することにより、コート層の導電機構を導電性微粉末に依存させて、環境依存性の小さいものとすることができる。また、ポリビニルアルコールは、SP値が12.6と高いため、SP値の低い可塑剤(例えば、パラフィン系オイル:6〜8、ジオクチルフタレート:7.9)や低分子量化合物のブリードを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明に用いる導電性微粉末は、水分散タイプのものである。ここでいう水分散タイプとは、水に分散するように種々の処理がなされたもの、例えば、界面活性剤が添加されたものや、攪拌羽、ボールミル、超音波照射等により分散したものを指す。導電性微粉末として、具体的には、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらは併用してもよい。特に、分散性や導電性に影響する粒子径、大きさ等が多種多様な酸化亜鉛及びカーボンブラックが好適である。
【0022】
塗布液を塗布する方法は、特に限定されないが、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等が好適である。
【0023】
また、コート層は、電気抵抗値(Ω)が1.0×10以下であるのが好ましい。これにより、コート層の導電機構を導電性微粉末に依存させて、環境依存性を小さくできる。ここで、ポリビニルアルコールの吸湿量に対する電気抵抗値の変化について説明する。
【0024】
(参考例1)
ポリビニルアルコール(PVA)(Wako社製)3wt%水溶液を作製し、これを金属製の容器に流し込み、23℃、55%RHで自然乾燥後、塗膜内に残っている水分を無くすため、さらに120℃で1時間乾燥することにより、10cm×10cm×厚さ10μmのポリビニルアルコール膜からなる参考例1のサンプルを作製した。
【0025】
(参考試験例1)電気抵抗値測定
参考例1のサンプルについて、25℃において湿度を変化させ、各湿度におけるサンプルの水分量(wt%)及び電気抵抗値を測定した。サンプルの水分量は自動水分気化装置(CA−06;三菱化学アナリテック社製)により測定し求めた。また、電気抵抗値は、二重リング電極法(JIS K6271)に準じ、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、測定は各3回行い、平均値を求めた。また、このときの印加電圧はDC−100Vであった。結果を表1及び図1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
図1に示すように、ポリビニルアルコールからなるサンプルは、水分量が多くなると電気抵抗値が低下する。そして、ある程度水分量が多くなると、水分量の増加に対する電気抵抗値の低下の割合が小さくなる。水分量の増加に対する電気抵抗値の低下の割合が小さくなる変化点を求めたところ1.0×10Ωであった。コート層の電気抵抗値を1.0×10Ω以下とする、すなわち、コート層の電気抵抗値を1.0×10Ω以下となるように導電性微粉末を配合することにより、環境依存性を小さくできる。ポリビニルアルコールが吸湿すると電気抵抗値が低下するが、ポリビニルアルコールに導電性微粉末を配合してコート層の電気抵抗値をこれよりも低くしておく、すなわち、導電性微粉末による導電機構の影響を吸湿による電気抵抗値の変化の影響より大きくすることにより、環境による電気抵抗値の変化を抑えることができる。
【0028】
導電性微粉末は、導電機構を形成するように配合するのが好ましく、導電性微粉末の配合量は、導電性微粉末の種類によって異なる。例えば、酸化亜鉛は、塗布液の固形分(ポリビニルアルコール及び酸化亜鉛)における酸化亜鉛の体積濃度が35vol%以上となるように配合するのが好ましい。
【0029】
(参考例2)
ポリビニルアルコール(PVA)(Wako社製)3wt%水溶液と、水分散タイプの酸化亜鉛(パゼットGK 水分散体:ハクスイテック社製)20wt%水溶液とを混合して、固形分(ポリビニルアルコールと酸化亜鉛)における酸化亜鉛の体積濃度が3vol%の塗布液を作製し、これを金属製の容器に流し込み、23℃、55%RHで自然乾燥後、塗膜内に残っている水分を無くすため、さらに120℃で1時間乾燥することにより、10cm×10cm×厚さ10μmの参考例2のサンプルを作製した。
【0030】
(参考例3)
酸化亜鉛の体積濃度が10vol%の塗布液となるようにした以外は、参考例2と同様にして、参考例3のサンプルを作製した。
【0031】
(参考例4)
酸化亜鉛の体積濃度が20vol%の塗布液となるようにした以外は、参考例2と同様にして、参考例4のサンプルを作製した。
【0032】
(参考例5)
酸化亜鉛の体積濃度が28vol%の塗布液となるようにした以外は、参考例2と同様にして、参考例5のサンプルを作製した。
【0033】
(参考例6)
酸化亜鉛の体積濃度が37vol%の塗布液となるようにした以外は、参考例2と同様にして、参考例6のサンプルを作製した。
【0034】
(参考試験例2)電気抵抗値測定
各参考例のサンプルについて、NN環境(23℃、55%RH)における電気抵抗値Rを、二重リング電極法(JIS K6271)に準じ、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、測定は各3回行い、平均値を求めた。また、このときの印加電圧はDC−100Vであった。結果を表2及び図2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
塗布液の固形分における酸化亜鉛の体積濃度が37vol%のとき(参考例6)、5.94×10Ωであった。また、図2から、コート層の電気抵抗値が1.0×10Ω以下となるのは、塗布液の固形分(ポリビニルアルコール及び酸化亜鉛)における酸化亜鉛の体積濃度が35vol%以上であると推測できる。
【0037】
導電性ゴム部材は、コート層が導電性弾性層よりも電気抵抗値が低いものであるのが好ましい。これにより、導電性ゴム部材の導電機構をコート層の導電性微粉末に依存させることができ、環境依存性を小さくすることができるためである。例えば、イオン導電性ポリマーからなる導電性弾性層やイオン導電剤を配合した導電性弾性層は、比較的環境依存性が大きいが、導電性ゴム部材の導電機構をコート層に依存させることにより、環境依存性の小さい導電性ゴム部材とすることができる。
【0038】
本発明の導電性ゴム部材の導電性弾性層に用いるゴム基材は、特に限定されず、例えば、エピクロルヒドリンゴム、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンゴム(SBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(Q)、アルキレンオキサイドを含むポリマー等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を混合してもよい。
【0039】
なお、上述したイオン導電性ポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、アルキレンオキサイドを含むポリマー等が挙げられる。エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。アルキレンオキサイドを含むポリマーとしては、エチレンオキサイド単独重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
【0040】
ゴム基材に導電性付与材を配合する場合は、各種カーボンブラックが好ましいが、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して用いることができる。イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたジエチレングリコール−塩化第二鉄錯体などを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載された1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルフォニル)イミドなどを挙げることができる。
【0041】
導電性弾性層の電気抵抗値は特に限定されないが、例えば、1.0×10〜1.0×10Ωであるのが好ましい。
【0042】
本発明にかかる導電性ゴム部材は、例えば、ロール、ブレード、ベルト等に好適なものであり、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロール、クリーニングロールや、クリーニングブレード、転写ベルト等に好適である。
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
<ロールの製造>
エピクロルヒドリンゴム(ECO)100質量部に、旭サーマル25重量部、サンセラーTET(三新化学工業社製)1.5重量部、サンセラーCZ(三新化学工業社製)1.5重量部、硫黄1.0重量部を、それぞれ添加してロールミキサーで混練りし、直径6mmの金属製シャフト表面に160℃×30分の加硫条件でプレス成形し、外表面を直径12mmまで研磨加工して、芯金表面に弾性層が形成されたロール部材1を得た。
【0045】
<塗布液の調製>
ポリビニルアルコール(PVA)(Wako社製)3wt%水溶液と、水分散タイプの酸化亜鉛(ZnO)(パゼットGK 水分散体:ハクスイテック社製)20wt%水溶液とを混合して、固形分(ポリビニルアルコールと酸化亜鉛)における酸化亜鉛の体積濃度が37vol%の塗布液を作製した。
【0046】
ロール部材1に上記の塗布液をディッピング法により塗布し、23℃、55%RHで自然乾燥後、塗膜内に残っている水分を無くすため120℃で1時間乾燥して、厚さ10μmのコート層を形成して、実施例1の導電性ロールとした。
【0047】
(実施例2)
酸化亜鉛の体積濃度が51vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の導電性ロールを得た。
【0048】
(比較例1)
塗布液として、ポリビニルアルコール(PVA)(Wako社製)3wt%水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の導電性ロールを得た。
【0049】
(比較例2)
酸化亜鉛の体積濃度が3vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の導電性ロールを得た。
【0050】
(比較例3)
酸化亜鉛の体積濃度が10vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の導電性ロールを得た。
【0051】
(比較例4)
酸化亜鉛の体積濃度が20vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の導電性ロールを得た。
【0052】
(比較例5)
酸化亜鉛の体積濃度が28vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の導電性ロールを得た。
【0053】
(実施例3)
<塗布液の調製>
ポリビニルアルコール(PVA)(Wako社製)3.0wt%水溶液と、水分散タイプのカーボンブラック(ライオンペーストW−310A:ライオン社製)20wt%水溶液とを混合して、固形分(ポリビニルアルコールとカーボンブラック)におけるカーボンブラックの体積濃度が1.25vol%の塗布液を作製した。
【0054】
ロール部材1に上記の塗布液をディッピング法により塗布し、23℃、55%RHで自然乾燥後、塗膜内に残っている水分を無くすため120℃で1時間乾燥して、厚さ10μmのコート層を形成して、実施例3の導電性ロールとした。
【0055】
(実施例4)
カーボンブラックの体積濃度が3.36vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例3と同様にして、実施例4の導電性ロールを得た。
【0056】
(比較例6)
カーボンブラックの体積濃度が0.37vol%の塗布液となるようにした以外は、実施例3と同様にして、比較例6の導電性ロールを得た。
【0057】
(試験例1)電気抵抗値測定
各実施例及び各比較例の導電性ロールについて、電気抵抗値Rを測定した。電気抵抗値は、導電性ロールをSUS304板からなる電極部材の上に載置し、芯金の両端に100g荷重をかけた状態で芯金と電極部材との間の電気抵抗を、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、測定は、LL環境(10℃、15%RH)、NN環境(23℃、55%RH)、HH環境(30℃、80%RH)にて、各3回行い、平均値を求めた。また、このときの印加電圧はDC−100Vであった。結果を表3及び表4に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
(結果のまとめ)
図3に示すように、酸化亜鉛の体積濃度が37vol%以上である塗布液を用いた実施例1及び2の導電性ゴム部材は、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、|LogRLL−LogRHH|が2.0未満であり、環境依存性が小さいものであることがわかった。
【0061】
これに対し、酸化亜鉛等の導電性微粉末を配合していない比較例1の導電性ゴム部材は、環境依存性が非常に大きいものであった。また、酸化亜鉛の体積濃度が28vol%以下である塗布液を用いた比較例2〜5の導電性ゴム部材は、|LogRLL−LogRHH|が2より大きく、環境依存性が大きいものであることがわかった。
【0062】
一方、カーボンブラックの濃度が1.25vol%以上である塗布液を用いた実施例3及び4の導電性ゴム部材は、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、|LogRLL−LogRHH|が2.0未満であり、環境依存性が小さいものであることがわかった。
【0063】
これに対し、カーボンブラックの濃度が0.37vol%の塗布液を用いた比較例6の導電性ゴム部材は、|LogRLL−LogRHH|が2より大きく、環境依存性が大きいものであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性弾性層と、前記導電性弾性層上にポリビニルアルコールと導電性微粉末とを含有する塗布液を塗布して成形したコート層とを具備し、100V印加した際のLL環境(10℃、15%RH)の電気抵抗値をRLL(Ω)、HH環境(30℃、80%RH)の電気抵抗値をRHH(Ω)としたとき、下記式を満たすことを特徴とする導電性ゴム部材。
【数1】

【請求項2】
請求項1に記載の導電性ゴム部材において、前記コート層は電気抵抗値(Ω)が1.0×10以下であることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性ゴム部材において、前記コート層は、前記導電性弾性層よりも電気抵抗値が低いことを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性微粉末は酸化亜鉛及びカーボンブラックのうち少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性弾性層はイオン導電性ポリマーからなることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項6】
請求項5に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性弾性層はエピクロルヒドリンゴムからなることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材からなることを特徴とする導電性ゴムロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−107652(P2011−107652A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265578(P2009−265578)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】