説明

導電性シートの製造方法および入力デバイス

【課題】画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れ、動作不良が防止された入力デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の導電性シートの製造方法は、透明基材の片面または両面に導電性高分子溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を水素ガス存在下でのプラズマ処理する工程とを有し、前記導電性高分子溶液が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属イオンと溶媒とを含有し、金属イオンの含有量がπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.001〜50質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力デバイスの透明電極として好適な導電性シートを製造する方法に関する。さらには、タッチパネル等の入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、画像表示装置の上に設置される入力デバイスであり、少なくとも画像表示装置に重なる部分が透明になっている。
タッチパネルとしては、例えば、抵抗膜式タッチパネルが知られている。抵抗膜式タッチパネルにおいては、透明基材の片面に透明電極が形成された固定電極シートおよび可動電極シートが、透明電極同士が対向するように配置されている。電極シートの透明電極としては、インジウムドープの酸化錫の膜(以下、ITO膜という。)が広く使用されてきた。
透明基材の片面にITO膜が形成されたシート(以下、ITO膜形成シートという。)は可撓性が低く、固定しやすいため、画像表示装置側の固定電極シートとしては好適である。しかし、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして用いる場合には、繰り返し撓ませた際の耐久性が低いという問題を有していた。
そこで、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして、透明基材の片面に、π共役系導電性高分子を含む導電膜が形成された可撓性を有するシート(以下、導電性高分子膜形成シートという。)を用いることがある。
ところが、画像表示装置側の固定電極シートとしてITO膜形成シートを用い、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして導電性高分子膜形成シートを用いた場合、すなわち異導体同士を接続する場合には、接触抵抗が大きく、入力感度の低下や座標入力時間の遅れ等の問題が生じることがあった。
これらの問題を解決するために、特許文献1では、π共役系導電性高分子を含む導電膜に金属イオンを添加することが提案されている。
また、π共役系導電性高分子を含む導電膜に金属粒子を添加することが考えられる。π共役系導電性高分子を含む導電膜に金属粒子を添加した電極シートとしては、例えば、特許文献2,3に開示されている。
【特許文献1】特開2007−172984号公報
【特許文献2】特開2005−327910号公報
【特許文献3】特開2007−080541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の電極シートでは、ITO膜に対する接触抵抗が充分に小さくならなかった。
また、特許文献2,3に記載の電極シートは、透明性が低くなることがあり、さらに、接触抵抗の低下が不均一になることがあるため、タッチパネル用として必ずしも適していなかった。
したがって、特許文献1〜3に記載の電極シートを抵抗膜式タッチパネルに適用した場合には、画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性が低くなったり、入力感度の低下および座標入力時間の遅れが生じたりすることがあった。
【0004】
また、タッチパネルとしては、静電容量型タッチパネルも知られているが、その透明電極に特許文献1〜3に記載の電極シートを適用した場合にも、画像の視認性が低くなったり、動作不良を起こしたりすることがあった。
したがって、特許文献1〜3に記載の電極シートはタッチパネル用として適していなかった。
【0005】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、異導体に対する接触抵抗が小さい導電性シートを容易に製造できる導電性シートの製造方法を提供することを目的とする。
また、画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れ、動作不良が防止された入力デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が調べた結果、導電膜に金属イオンを含ませても、ITO膜に対する接触抵抗が低下せず、金属を含有させなければならないことが判明した。そして、導電膜に金属粒子を含有させつつも透明性を確保する手法について検討した結果、以下の導電性シートの製造方法および入力デバイスを発明した。
【0007】
[1] 透明基材の片面または両面に導電性高分子溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を水素ガス存在下でのプラズマ処理する工程とを有し、
前記導電性高分子溶液が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属イオンと溶媒とを含有し、金属イオンの含有量がπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.001〜50質量%であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
[2] 金属イオンを形成する金属が、銅、銀、金、白金、鉄、亜鉛、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロム、コバルト、チタン、マンガン、マグネシウム、錫、ロジウム、ルテニウム、イリジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属であることを特徴とする[1]に記載の導電性シートの製造方法。
[3] 前記導電性高分子溶液が(メタ)アクリルアミド化合物および多官能アクリル化合物の一方または両方をさらに含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の導電性シートの製造方法。
[4] 電極シートを備えた入力デバイスであって、
前記電極シートが、[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性シートの製造方法により製造された導電性シートであることを特徴とする入力デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性シートの製造方法によれば、透明性に優れ、異導体に対する接触抵抗が小さい導電性シートを容易に製造できる。
本発明の入力デバイスは、画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れ、動作不良が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「導電性シートの製造方法」
本発明の導電性シートの製造方法は、透明基材の片面または両面に導電性高分子溶液を塗布して塗膜を形成する工程(以下、第1の工程という。)と、該塗膜を水素ガス存在下でプラズマ処理して導電膜を得る工程(以下、第2の工程という。)とを有する。
【0010】
<第1の工程>
第1の工程における導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属イオンと溶媒とを含有するものである。
【0011】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。その中でも、導電性、耐熱性から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0013】
(ポリアニオン)
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0014】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0015】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。有機溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0016】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0017】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0018】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0019】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0020】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0021】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0022】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。
導電性高分子溶液におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜4.0質量%であることがより好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量が0.05質量%未満であると、充分な導電性が得られないことがあり、5.0質量%を超えると、均一な導電膜が得られないことがある。
【0023】
(金属イオン)
金属イオンを構成する金属としては、いずれの金属であってもよいが、導電性に優れることから、銅、銀、金、白金、鉄、亜鉛、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロム、コバルト、チタン、マンガン、マグネシウム、錫、ロジウム、ルテニウム、イリジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属であることが好ましい。
【0024】
金属イオンは、例えば、金属塩を水に溶解させることにより形成される。上記好ましい金属の金属塩の具体例としては、以下のものが挙げられる。
銅塩:塩化銅、酢酸銅、硫酸銅等。
銀塩:炭酸銀、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、亜硫酸銀、塩素酸銀、過塩素酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、2−メチルへキサン酸銀、乳酸銀、メタンスルホン酸銀、サリチル酸銀、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、吉草酸銀、フロン酸銀、リノレイン酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀、安息香酸銀、3,5−ジヒロドロ安息香酸銀、o−メチル安息香酸銀、m−メチル安息香酸銀、p−メチル安息香酸銀、2,4−ジクロロ安息香酸銀、アセトアミド安息香酸銀、p−フェニル安息香酸銀、没食子酸銀、タンニン酸銀、フタル酸銀、テレフタル酸銀、フェニル酢酸銀、ピロメリト酸銀、ピクリン酸銀、3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオンの銀塩等。
金塩:塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等。
白金塩:塩化白金酸、塩化白金、塩化白金酸カリウム等。
鉄塩:酢酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、炭酸鉄、塩化鉄、乳酸鉄、リン酸鉄等。
亜鉛塩:塩化亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
パラジウム塩:硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウム等。
ニッケル塩:塩化ニッケル、硝酸ニッケル、過塩素酸ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、酢酸ニッケル、乳酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、酒石酸ニッケル、クエン酸ニッケル等。
アルミニウム塩:硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等。
クロム塩:塩化クロム、酢酸クロム、硝酸クロム、炭酸クロム、リン酸クロム、硫酸クロム等。
コバルト塩:酢酸コバルト、安息香酸コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト、クエン酸コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、硫酸コバルト等。
チタン塩:塩化チタン、酢酸チタン、硝酸チタン、硫酸チタン、炭酸チタン、リン酸チタン等。
マンガン塩:塩化マンガン、酢酸マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、リン酸マンガン等。
錫塩:塩化錫、酢酸錫、硝酸錫、炭酸錫、硫酸錫、リン酸錫等。
ロジウム塩:塩化ロジウム、酢酸ロジウム、硝酸ロジウム、リン酸ロジウム、硫酸ロジウム等。
ルテニウム塩:塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、硫酸ルテニウム等。
イリジウム塩:塩化インジウム、酢酸インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム等。
これらの金属塩は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
金属イオンの含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.001〜50質量%であり、0.005〜40質量%であることが好ましく、0.01〜30質量%であることがより好ましい。金属イオンの含有量が0.001質量部未満であると、異導体接触における接触抵抗が充分に低下せず動作不良を起こすことがあり、50質量%を超えると、該導電性高分子溶液から形成される導電膜の透明性が低くなることがある。
【0026】
(溶媒)
溶媒としては特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、ジメチルイミダゾリン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン酸等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
前記溶媒の中でも、取り扱い性の点から、水、アルコール類が好ましい。
【0027】
(アクリル化合物)
導電性高分子溶液は、成膜性が向上することから、アクリル化合物を含有することが好ましい。ここで、アクリル化合物は、下記(a)の化合物、(b)の化合物および多官能アクリル化合物である。
(a)グリシジル基を有するアクリル化合物(以下、化合物(a)という。)。
(b)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有するアクリル化合物(以下、化合物(b)という。)。
【0028】
さらに、化合物(a)としては、下記(a−1)〜(a−3)のアクリル化合物が挙げられる。
(a−1):グリシジル基と、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とを有するアクリル化合物(以下、化合物(a−1)という。)。
(a−2):グリシジル基を2つ以上有するアクリル化合物(以下、化合物(a−2)という。)。
(a−3):グリシジル基を1つ有するアクリル化合物であって、化合物(a−1)以外の化合物(以下、化合物(a−3)という。)。
【0029】
化合物(a−1)のうち、グリシジル基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
グリシジル基とアリル基を有する化合物として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する化合物として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
なお、グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物、グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する化合物は化合物(b)でもある。
【0030】
化合物(a−2)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられる。
【0031】
化合物(a−3)としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
化合物(b)のうち、例えば、ヒドロキシ基とビニルエーテル基とを有する化合物として、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリルアミド(メタクリルアミド)基を有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物を重合させた重合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体との相溶性が良い上に導電性をより向上させることができる。
【0033】
上記化合物(a)では、そのグリシジル基がポリアニオンの残存アニオン基(例えば、スルホ基、カルボキシ基など)と反応して、エステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。その反応の際には、塩基性触媒、加圧、加熱によって反応を促進させてもよい。エステル形成の際、グリシジル基は開環してヒドロキシ基を形成する。このヒドロキシ基が、π共役系導電性高分子との塩もしくはエステルを形成しなかった残存アニオン基と脱水反応を起して、新たにエステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。このようなエステルの形成によって、ポリアニオンドーパントとπ共役系導電性高分子との複合体同士が架橋する。
さらに、化合物(a−1)においては、ポリアニオンの残存アニオン基と、化合物(a−1)のグリシジル基とが結合した後、化合物(a−1)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合して複合体同士がさらに架橋する。
【0034】
また、上記化合物(b)では、そのヒドロキシ基がポリアニオンの残存アニオン基と脱水反応して、エステルを形成する。その脱水反応の際には、酸性触媒によって反応を促進させてもよい。その後、化合物(b)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合する。この重合によって、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子との複合体同士が架橋する。
【0035】
多官能アクリル化合物は、不飽和二重結合を2つ以上有するアクリル化合物である。多官能アクリル化合物を含有すれば、塗膜形成時にπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体を架橋しやすく、導電性および塗膜強度が向上する。
多官能アクリル化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する。)400ジ(メタ)アクリレート、PEG300ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等の2官能アクリルモノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等の3官能アクリルモノマー、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のアクリルモノマー、ソルビトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能以上のアクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、アルキレンオキサイド変性ヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能以上のアクリルモノマー、2官能以上のウレタンアクリレートが挙げられる。
【0036】
多官能アクリル化合物のうち、多官能アクリルモノマーは、分子量が3000以下であることが好ましい。分子量が3000を超える多官能アクリルモノマーでは、溶媒溶解性が低くなる。また、不飽和二重結合当量が少なくなるため、複合体を架橋させにくく、導電膜形成後に充分な強度が得られない傾向にある。
また、多官能アクリル化合物のうち、多官能ウレタンアクリレートは、溶媒溶解性、耐摩耗性、低収縮の点で、分子量1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超える多官能ウレタンアクリレートでは、イソシアネート基とポリオール(水酸基)により形成されるウレタン基の導入率が減少して、溶媒に対する溶解性が低くなる傾向にある。
【0037】
成膜性がより向上する点では、(メタ)アクリルアミド化合物および多官能アクリル化合物の一方または両方をさらに含有することが好ましい。
【0038】
アクリル化合物の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.05〜50質量%であることが好ましく、0.3〜30質量%であることがより好ましい。アクリル化合物の含有量が0.05質量%未満であると、導電性高分子溶液の成膜性が不足することがあり、50質量%より多くなると、導電膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。
【0039】
アクリル化合物は、塗膜形成時に、ラジカル重合法、熱重合法、光ラジカル重合法、プラズマ重合法によって重合される。
ラジカル重合法によって重合させる場合には、重合開始剤として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ヒドロペルオキシド類等の過酸化物などを導電性高分子溶液に含有させる。
光ラジカル重合法によって重合させる場合には、重合開始剤として、カルボニル化合物、イオウ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などを導電性高分子溶液に含有させる。光ラジカル重合法の重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメート、過酸化ベンゾイル、N−ラウリルピリジウムアジド、ポリメチルフェニルシランなどが挙げられる。
プラズマ重合では、プラズマを短時間照射し、プラズマの電子衝撃によるエネルギーを受けて、フラグメンテーションとリアレンジメントをしたのち、ラジカルの再結合により重合体を生成する。
【0040】
また、化合物(a−1)および化合物(b)におけるビニルエーテル基の重合は、カチオン重合法が採られる。カチオン重合においては、反応促進のため、ハロゲン化金属、有機金属化合物等のルイス酸、その他、ハロゲン、強酸塩、カルボニウムイオン塩等の光または熱でカチオンを生成する求電子試薬などを導電性高分子溶液に含有させる。
【0041】
(2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物)
また、導電性高分子溶液は、得られる導電膜の導電性がより高くなることから、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を含有することが好ましい。
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物としては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等が挙げられる。
なお、これら芳香族化合物の一部は還元剤としても機能する。したがって、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を還元剤として兼用することで、導電性をより高めることもできる。
【0042】
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性が高くならないことがある。また、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、導電膜中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られないことがある。
【0043】
(添加剤)
導電性高分子溶液は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
アルカリ性化合物としては、公知の無機アルカリ化合物や有機アルカリ化合物を使用できる。無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミン、アミン以外の窒素含有化合物、金属アルコキシド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、導電性がより高くなることから、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミンよりなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤と紫外線吸収剤とは併用することが好ましい。
【0044】
(導電性高分子溶液の調製方法)
導電性高分子溶液の調製方法としては、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合して導電性高分子水溶液を調製し、この水溶液に、金属塩と必要に応じて任意成分とを添加することで調製できる。
【0045】
(透明基材)
上記導電性高分子溶液を塗布する透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのフィルムまたはシートが挙げられる。また、ガラス基板、シリコン基板なども使用できる。
【0046】
(塗布方法)
導電性高分子溶液の塗布方法として、例えば、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。
【0047】
導電性高分子溶液塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。紫外線照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。照度が100mW/cm未満であると、充分に架橋せず、導電膜の耐摺動性(耐久性)が低くなる傾向にある。なお、本発明における照度は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0048】
<第2の工程>
第2の工程におけるプラズマ処理では、金属イオンを還元させて金属粒子を形成させる。プラズマ処理では、金属イオンを容易に還元できる上に、ロール・トゥ・ロールでの製造に対応できる。
ここで、水素ガス存在下でのプラズマ処理は、水素ガスを供給しながらプラズマを発生させて、水素ラジカルを形成させ、その水素ラジカルによって金属イオンを還元させる処理である。
【0049】
以上のようにして形成した導電膜は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属粒子とを必須成分として含む。そのため、導電性が高く、しかもITO膜に対する接触抵抗が小さい。
また、導電性高分子溶液中の金属イオンから形成した金属粒子は高い分散性で分散し、しかも金属粒子の含有量は最大でもπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して50質量%と少ないから、導電膜の透明性は高い。
【0050】
このような導電性シートは、例えば、後述する入力デバイスに好適に用いられるが、表示デバイスの電極シートとして用いてもよい。表示デバイスとしては、例えば、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0051】
「入力デバイス」
本発明の入力デバイスは、上記製造方法により製造した導電性シートを電極シートとして備えるものである。入力デバイスの中でも、本発明の効果がとりわけ発揮されることから、抵抗膜式タッチパネルが好適である。以下、上記導電膜を透明電極として備えた抵抗膜式タッチパネルの例について説明する。
本例の抵抗膜式タッチパネルは、図1に示すように、透明基材11表面に上記導電膜12が形成され、入力者側に配置された可動電極シート10と、透明基材21表面にITO膜22が形成され、画像表示装置側に配置された固定電極シート20とが、導電膜12とITO膜22が対向するように設けられたものである。また、可動電極シート10と固定電極シート20との間には、透明なドットスペーサ24が配置されて、隙間が形成されている。
【0052】
可動電極シート10または固定電極シート20の透明基材11,21としては、例えば、単層または2層以上のプラスチックフィルム、ガラス板、フィルムとガラス板との積層体が挙げられる。ただし、可動電極シート10の透明基材11としては、可撓性を有することから、プラスチックフィルムが好ましく、固定電極シート20の透明基材21としては、固定しやすいことから、ガラス板を用いたものが好ましい。
【0053】
可動電極シート10の透明基材11の厚さは100〜250μmであることが好ましい。透明基材11の厚さが100μm以上であれば、充分な強度を確保でき、250μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
可動電極シート10の導電膜12の厚さは50〜700μmであることが好ましい。導電膜12の厚さが50μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、700μm以下であれば、充分な可撓性及び透明性を確保できる。
固定電極シート20の透明基材21の厚さは0.8〜2.5mmであることが好ましい。透明基材21の厚さが0.8mm以上であれば、充分な強度を確保でき、2.5mm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
固定電極シート20のITO膜22の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましい。ITO膜22の厚さが0.01μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、1.0μm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20〜100μmであることが好ましい。可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20μm以上であれば、非押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させないようにすることができ、100μm以下であれば、押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させることができる。前記間隔になるようにするためには、ドットスペーサ24の大きさを適宜選択すればよい。
【0054】
この抵抗膜式タッチパネルでは、指またはスタイラスにより可動電極シート10を押した際に、可動電極シート10の導電膜12と固定電極シート20のITO膜22とを接触させて導通させ、その際の電圧を取り込んで、位置を検出するようになっている。
このような抵抗膜式タッチパネルでは、上記導電膜12を透明電極として備えているため、ITO膜22に対する接触抵抗が小さく、入力感度の低下や座標入力時間遅れ等の動作不良が起きにくい。また、導電膜12の透明性が高いから、画像表示装置の画像の視認性に優れる。
【0055】
また、入力デバイスは静電容量式タッチパネルであってもよい。上記導電膜を用いた静電容量式タッチパネルとしては、例えば、上記導電膜からなる一対の透明電極が透明基材の両面に設けられ、透明電極全体に低圧の電界を形成し、指で触れることで表面電荷の変化を捉え、位置を検出するものが挙げられる。
この静電容量式タッチパネルでは、金属粒子を含み、導電性が高い上記導電膜を透明電極として用いているから、電荷の変化を確実に捉えることができ、動作不良が起きにくい。また、導電膜の透明性が高いから、画像表示装置の画像の視認性に優れる。
【0056】
このような入力デバイスは、例えば、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、PHS、現金自動預け払い機(ATM)、自動販売機、販売時点情報管理(POS)用レジスタなどに備え付けられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30000
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0058】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0059】
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化マンガン0.5g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してマンガンイオンが3.3質量%)を添加し、撹拌して、マンガンイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ハイドロキノン3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ペンタエリスリトールトリアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記マンガンイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Aを得た。
導電性高分子溶液Aをポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、厚さ;188μm)に、リバースコーターにより塗布し、100℃、2分間、赤外線照射により乾燥した後、紫外線(高圧水銀灯120W、360mJ/cm、178mW/cm)照射し、硬化させて、塗膜を形成させた。
次いで、その塗膜を大気圧プラズマ処理して導電膜を得た。大気圧プラズマ処理は、株式会社ウィンズ製大気プラズマ表面処理装置を用い、出力700Wで、水素ガスを流入させながら、処理速度100mm/分で行った。
得られた導電膜の表面抵抗と光透過率と接触抵抗を以下の方法により測定した。それらの結果を表1に示す。
【0060】
[表面抵抗値]
三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K 7194に準じて測定した。
[光透過率]
日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7136に準じて光透過率を測定した。
[接触抵抗]
透明基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡製A4300、厚さ;188μm)11上に導電性高分子溶液を塗布して導電膜12を形成し、40mm×50mmに裁断した。その裁断したシートの導電膜12上の幅方向の縁に導電性ペースト(藤倉化成社製FA−401CA)をスクリーン印刷し、乾燥させて電極配線13a,13bを形成して、入力者側の可動電極シート10(図2参照)を得た。
また、ITO膜22が設けられ、40mm×50mmに裁断されたガラス板21(表面抵抗:300Ω)を用意した。その用意したガラス板21のITO膜22上の長手方向の縁に、導電性ペースト(藤倉化成社製XA436)をスクリーン印刷し、乾燥させて電極配線23a,23bを形成した。次いで、ITO膜22上に、ドットスペーサ用ペースト(藤倉化成社製SN−8400C)をスクリーン印刷し、乾燥し、紫外線照射して、ドットスペーサ24を形成させた。次いで、電極配線23a,23b上に、レジスト用ペースト(藤倉化成社製SN−8800G)をスクリーン印刷し、乾燥し、UV照射して、絶縁層25を形成させた。さらに、絶縁層25上に、接着剤(藤倉化成社製XB−114)をスクリーン印刷し、乾燥させて、可動電極シート10に貼り合わせるための接着剤層26を形成させた。これにより、画像表示装置用の固定電極シート20(図3参照)を得た。
次いで、図4に示すように、可動電極シート10と固定電極シート20とを、導電膜12とITO膜22が対向するように配置させ、接着剤層26により貼り合せて抵抗膜式タッチパネルモジュールを作製した。また、固定電極シート20の一方の電極配線23aと精密電源31とを、プルアップ抵抗(82.3kΩ)32、およびプルアップ抵抗32に並列に接続されたプルアップ抵抗32の電圧測定用テスタ33を介して電気的に接続した。また、精密電源31と可動電極シート10の一方の電極配線13aとを電気的に接続した。また、可動電極シート10の他方の電極配線13bと固定電極シート20の他方の電極配線23bとを、抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧測定用テスタ34を介して電気的に接続した。これにより、接触抵抗測定用の電気回路を得た。
接触抵抗は次のように測定した。先端が0.8Rのポリアセタール製スタイラス35で、可動電極シート10を250gの荷重で押圧し、精密電源31により電圧5Vを印加した際のプルアップ抵抗の電圧と抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧を測定し、これらの測定結果より、接触抵抗を測定した。
具体的には、プルアップ抵抗32に流れる電流値を、測定した電圧値を用いてオームの法則から算出し、その算出した電流値および抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧値を下記式に代入して接触抵抗を求めた。
接触抵抗(Ω)=[(抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧(V))/(プルアップ抵抗の電圧(V))]×プルアップ抵抗(Ω)
[摺動試験]
導電膜の塗膜強度を測定するため、エタノールで湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア社製)を、100gf/cmの荷重をかけて30往復擦り、導電膜の抜けを目視により検査した。また、摺動試験後の接触抵抗を測定した。これらの結果は導電膜の膜強度の指標になる。
◎ :剥離なし、○:わずかに剥離、△:一部剥離、×:完全剥離
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例2)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化錫1g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して錫イオンが8.0質量%)を添加し、撹拌して、錫イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記錫イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Bを得た。 そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Bを用い、大気圧プラズマ処理における出力を500Wに変更したこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化ニッケル0.1g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してニッケルイオンが19.1質量%)を添加し、撹拌して、ニッケルイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ガーリック酸メチル3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記ニッケルイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Cを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Cを用い、大気圧プラズマ処理における出力を900Wに変更したこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、硫酸アルミニウム0.1g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対してアルミニウムイオンが0.22質量%)を添加し、撹拌して、アルミニウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ピロガロール3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記アルミニウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Dを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Dを用い、大気圧プラズマ処理における出力を1200Wに変更したこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例3において2−ヒドロキシエチルアクリルアミドの代わりにジメチルスルホキシ度20gを添加し、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして、導電性高分子溶液Eを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Eを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例6)
実施例4においてジペンタエリスリトールペンタアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子溶液Fを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Fを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例7)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、硝酸パラジウム4.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対してパラジウムムイオンが22.2質量%)を添加し、撹拌して、パラジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ガーリック酸3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、トリメチロールプロパンエトキシアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記パラジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Gを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Gを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例8)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化金酸5.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対して金イオンが33.2質量%)を添加し、撹拌して、金イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、チオジグリコール3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ソルビトールペンタアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記金イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Hを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Hを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例9)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化白金酸2.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対して白金イオンが10.5質量%)を添加し、撹拌して、白金イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、チオジ酢酸3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記白金イオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Iを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Iを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(実施例10)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化イリジウム0.002g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対してイリジウムイオンが0.018質量%)を添加し、撹拌して、イリジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ガーリック酸エチル3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジプロピレングリコールジアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記イリジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Jを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Jを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例11)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化ロジウム0.05g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対してロジウムイオンが0.27質量%)を添加し、撹拌して、ロジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、1,4−ジヒロドキシベンゼン3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記ロジウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Kを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Kを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例12)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、塩化ルテニウム0.5g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量に対してルテニウムイオンが2.7質量%)を添加し、撹拌して、ルテニウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、2,6−ジヒロドキシベンゾフェノン3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、トリプロピレングリコールジアクリレート7.2g、エタノール300gを添加し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記ルテニウムイオンを含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Lを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Lを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
実施例1において大気圧プラズマ処理を省略した以外は実施例1と同様にして導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
実施例2において塩化錫を添加しなかった以外は実施例2と同様にして導電性高分子溶液Mを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Mを用いたこと以外は実施例1と同様に導電膜を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属イオンとを含む導電性高分子溶液を塗布して形成した塗膜をプラズマ処理した実施例1〜12によれば、導電性および透明性に優れ、しかもITO膜に対する接触抵抗が小さい導電膜を形成できた。
さらに、実施例1〜4,7〜12では、導電性高分子溶液が多官能アクリル化合物を含んでいたため、これにより得られた導電膜は、膜強度、透明基材に対する導電膜の密着性、金属粒子の密着性にも優れていた。
また、実施例1〜4,6〜12では、導電性高分子溶液が(メタ)アクリルアミド化合物を含んでいたため、導電性により優れた導電膜を形成できた。
【0076】
プラズマ処理を省略した比較例1では、ITO膜に対する接触抵抗が大きかった。これは、プラズマ処理を省略したため、金属イオンが還元されず、金属粒子が形成されなかったためである。
導電性高分子溶液が金属イオンを含んでいなかった比較例2でも、ITO膜に対する接触抵抗が大きかった。
したがって、比較例1,2で得られた導電性シートは、入力デバイス用として適していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の入力デバイスの一例を示す断面図である。
【図2】接触抵抗の測定方法における入力者側の電極シートを示す断面図である。
【図3】接触抵抗の測定方法における画像表示装置側の電極シートを示す断面図である。
【図4】接触抵抗の測定方法における回路を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
10 可動電極シート
11 透明基材
12 導電膜
13a,13b 電極配線
20 固定電極シート
21 透明基材
22 ITO膜
23a,23b 電極配線
24 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の片面または両面に導電性高分子溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を水素ガス存在下でプラズマ処理する工程とを有し、
前記導電性高分子溶液が、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属イオンと溶媒とを含有し、金属イオンの含有量がπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.001〜50質量%であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【請求項2】
金属イオンを形成する金属が、銅、銀、金、白金、鉄、亜鉛、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロム、コバルト、チタン、マンガン、マグネシウム、錫、ロジウム、ルテニウム、イリジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記導電性高分子溶液が(メタ)アクリルアミド化合物および多官能アクリル化合物の一方または両方をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項4】
電極シートを備えた入力デバイスであって、
前記電極シートが、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性シートの製造方法により製造された導電性シートであることを特徴とする入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−152045(P2009−152045A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328651(P2007−328651)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】