導電性シートの製造方法
【課題】カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供する。また、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、シート厚みの精密な制御が可能な、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供する。さらに、上記導電性シートを用いた導電性コネクターを提供する。
【解決手段】基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【解決手段】基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シートの製造方法に関する。さらに詳細には、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、カーボンナノチューブが高分子系成形材料中に配向されている導電性シートの製造方法、ならびに導電性シートに関する。また、本発明は、上記導電性シートを含む導電性コネクターに関する。
【0002】
本発明の製造方法により得られる導電性シートは、高い導電性を有し面内のばらつきが少ないという優れた電気的性質を発揮することができ、たとえば、電子部品、高強度材料などとして利用することができる。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブは、グラファイトシート(6角網目構造:グラフェンシート)を円筒状に丸めた構造を有し、円筒直径が0.7〜50nm程度、円筒軸方向長さが数100μm程度あり、中空構造を持つ非常にアスペクト比の大きな材料である。
【0004】
カーボンナノチューブの電気的性質としては、円筒直径や螺旋度(カイラリティ:chirality)に大きく依存し、金属的性質から半導体的性質を示し、また機械的性質としては大きなヤング率を有し、かつバックリングによっても応力を緩和できる特徴を併有する材料である。さらに、ダングリングボンド(dangling bond)を有しないため化学的に安定であり、かつ、炭素原子のみから構成されるため環境に優しい材料としても注目されている。
【0005】
このようにカーボンナノチューブは上記のようなユニークな物性を有することから、電子源としては電子放出源やフラットパネルディスプレイに、電子材料としてはナノスケールデバイスやリチウム電池の電極材料に、またプローブ探針、ガス貯蔵材、ナノスケール試験管、樹脂強化のための添加材等への応用が期待されている。
【0006】
これまでに、上記のカーボンナノチューブおよびその製造方法については、いくつかが開示されている(たとえば、特許文献1〜2参照)。それらの公報によれば、カーボンナノチューブの特異的機能を生かし、電子放出素子、水素貯蔵、薄膜電池、プローブ、マイクロマシン、半導体超集積回路、導電性材料、熱伝導性材料、高強度高弾性材料などの多くの興味深い用途開発が活発に検討されている。
【0007】
しかし、これまでの製造方法では、種々の円筒軸方向長さのカーボンナノチューブがランダムな方向を向いて生成されてしまう点で問題があった。たとえば電子放出源に応用する場合、カーボンナノチューブの先端から電界放出が起きるため、カーボンナノチューブの円筒軸方向の配向を揃えることができれば、電界放出特性が著しく向上することが期待される。
【0008】
上記のカーボンナノチューブの円筒軸方向の配向を揃える技術として、これまでいくつかの提案がされている。たとえば、カーボンナノチューブの分散液をセラミックフィルターでろ過することにより、セラミックフィルターの微小ポアにカーボンナノチューブを差込み、配向を揃えること(たとえば、非特許文献1参照)、エポキシ樹脂にカーボンナノチューブを練り込み、硬化後にエポキシ樹脂を極薄く切断することによってカーボンナノチューブを配向させる技術(たとえば、非特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、これらの提案ではカーボンナノチューブの配向性は十分ではなく、またエポキシ樹脂が混在するなどといった問題点がある。
【0009】
また、たとえば、マトリックス中にカーボンナノチューブを含有する組成物に、外部から磁場を印加することにより一定方向に配列させる方法(たとえば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、かかる提案では10テスラ程度もの強い磁場を印加する必要があり、装置も大掛かりでコストもかかり未だ実用的でなく、より簡便かつ低コストである手法が求められている。
【0010】
一方、ICやLSIなどの回路部品では、その技術進歩とともに回路内部構造がさらに高密度化に向かい、それに伴い接続端子も高密度化が進む傾向にある。さらに、小型化に加えて、より導電性優れ、厚みや大きさの精密な制御が可能な材料の開発が求められつつある。
【0011】
たとえば、これまでにカーボンナノチューブ含有シートの厚みの制御手法として、スピンコーターやアプリケーターなどによる薄膜化処理が試みられている。しかしながら、かかる手法ではシート厚みをおおまかにカーボンナノチューブ長さ付近にすることができたとしても、精密に制御されたシート厚みや、正確なカーボンナノチューブ長さまたはカーボンナノチューブ長さとは異なるシート厚みに制御することが困難であった。
【0012】
なかでも特に、カーボンナノチューブが規則的に配向させたカーボンナノチューブ含有シートの場合、上述のスピンコーターやアプリケーターなどの手法によりシート厚みを一度制御しても、その後の樹脂硬化工程において、カーボンナノチューブ間に含浸した液状樹脂材料が毛細管現象により再度カーボンナノチューブ上部やシート表面に染み出してくる現象が起こってしまうことが判明した。また、マトリックス樹脂の含浸時や樹脂硬化工程においてカーボンナノチューブの配向が乱される場合があり、その結果、シート表面の面内での導電性のばらつきが問題となることも判明した。
【0013】
また、かかる厚みや大きさの精密な制御手法として、カーボンナノチューブ含有シートを研磨することによって厚みの精密制御する手法が試みられている(たとえば、非特許文献3参照)。しかしながら、かかる研磨による膜厚の制御ではカーボンナノチューブ含有シートに与えるダメージが大きく、シート破れなどの不具合が発生してしまう。
【0014】
【特許文献1】特開平5−125619号公報
【特許文献2】特開平7−216660号公報
【特許文献3】特開2002−273741号公報
【特許文献4】特開2002−233598号公報
【非特許文献1】Walt A. de Heer, W. S. Bacsa, Science, vol.268, p845〜847(1995)
【非特許文献2】P. M. Ajayan, O. Stephan, Science, vol.265, p1212〜1214(1994)
【非特許文献3】Chem. mater, 17(5), p974〜983(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解消すべく、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、シート厚みの精密な制御が可能な、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の目的は、上記導電性シートを用いた導電性コネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す導電性シートの製造方法を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の導電性シートの第一の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の導電性シートの第二の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、実施例の結果に示すように、上述した基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む製造方法であって、初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上である上記高分子系成形材料を用いることにより、簡便かつ低コストで、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートが得られる。上記製造方法により得られた導電性シートがかかる特性を発現する理由としては明らかではないが、本発明の製造方法を用いることにより、カーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブに所定の高分子系成形材料を含浸させ、基材上に垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を乱すことなく複合することにより、面内のばらつきが生じないように配向を維持した状態でシートとすることができるためと推測される。
【0022】
本発明における「カーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブ」とは、導電性シート中に存在するカーボンナノチューブの大部分(典型的には50個数%以上)が、カーボンナノチューブが基材表面の面方向に対して垂直方向(基材表面の面方向に対して略直交する方向および該方向と同等視しうる程度にやや傾斜した方向を包含する)に配向していることをいい、たとえば、ブラシ状カーボンナノチューブが該当する(たとえば、特開2001−220674号公報参照)。
【0023】
また、本発明における「カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向する」とは、導電性シート中に存在するカーボンナノチューブの大部分(典型的には50個数%以上)が、各々のカーボンナノチューブの一端が一方の表面方向に、他端がもう一方の表面にそれぞれ配向した状態(これらのカーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向(面方向に対して略直交する方向および該方向と同等視しうる程度にやや傾斜または蛇行した方向を包含する)に平行に存在している状態を含む)をいう。
【0024】
また、本発明において、シートとは平面状の材料を意味し、通常、フィルムとよばれるものを含むこととする。
【0025】
本発明において、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する方法は、特に限定されることなく公知の手法を適宜用いることができる。たとえば、平滑な基板上にFeからなる触媒層を形成し、基板温度を700℃前後にした後、アセチレンガスを流すことにより生成させる手法があげられる(たとえば、特開2001−220674号公報参照)。さらに、電子材料用途や回路基板用途などにおけるさらなる高集積化に向けた配線線幅およびピッチの改良の観点からは、上記触媒の配置を制御してカーボンナノチューブを形成する方法を用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明において、上記のカーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を特に維持した状態でおこなわれる。上記工程における含浸方法としては、ポッティング法、およびキャスティング法などが好適に用いることができる。
【0027】
さらに、本発明においては、初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上である高分子系成形材料を用いることを特徴としている。
【0028】
なお、本発明において、上記高分子系成形材料の初期粘度とは、高分子系成形材料の調整直後(2液混合系では混合直後)の70℃での粘度を意味する。また、上記高分子系成形材料の可使時間とは、上記高分子系成形材料を70℃で維持した場合に20000(mPa・s)に達するまでに要した時間(分)を意味する。なお、上記初期粘度および可使時間の測定は、70℃で環境下における単一円筒型回転粘度計(たとえば、東機産業社製、TV−10形粘度計)およびローター(たとえば、H3)を用いて行った。
【0029】
また、上記の高分子系成形材料が、可とう性を有する有機系高分子であることが好ましい。かかる高分子系成形材料を用いることにより、簡便かつ低コストで高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることができる。
【0030】
さらに、上記高分子系成形材料が、ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液であることが好ましい。また、上記ポリウレタンプレポリマーの硬化剤がジオール系硬化剤であることがより好ましい。これらの高分子系成形材料を用いることにより、上述の初期粘度と可使時間を有する高分子系成形材料が得やすくなる。
【0031】
また、本発明においては、上記カーボンナノチューブの長さが100〜1000μmであることが好ましい。また、本発明においては、上記導電性シート厚みが100〜1000μmであることが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。
【0032】
また、上記導電性シートにおける上記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%であることが好ましい。さらに、本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブの配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。また、従来程度の導電性を有する導電性シートを目的として作製する場合、従来の有機導電性フィラーを配合する場合のフィラー配合量よりも少ない配合重量分率でその目的の導電性を達成することができ、フィラーとしては高価であるカーボンナノチューブの使用量も削減でき、コスト面でも有利なものとなる。
【0033】
また、上記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含むことが好ましい。かかる処理を行うことにより、シートの下部やカーボンナノチューブ間への上記高分子系樹脂成形材料の含浸をより効果的に行うことができ、より確実にボイドレスなシートとすることができる。
【0034】
一方、本発明においては、上記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含むことが特に好ましい。上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、シート厚みの精密な制御が可能となり、シート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを簡易に製造することが可能となる。また、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来製造が困難であったシート表面にカーボンナノチューブを簡易に製造することが可能となる。さらには、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来極めて困難であったカーボンナノチューブがシート表面より突出した導電性シートの簡易な製造が可能となる。なお、上記プラズマ照射処理工程は、一般に、上記含浸工程の後に上記高分子系樹脂成形材料が乾燥、硬化(低温、室温、高温を含む)処理により固体状または半固体状になった後におこなわれるものである。また、上記真空脱泡処理工程とプラズマ照射処理工程を併用する場合は、一般に、上記真空脱泡処理工程をおこなった後におこなわれるものである。
【0035】
また、上記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことが好ましい。かかる処理条件が好適であることの理由は明らかではないが、かかる処理条件の工程を用いることにより、上記高分子系成形材料、特にポリウレタン樹脂と、カーボンナノチューブのプラズマ照射に対する構造または結晶性などに由来する耐久性等の差異によりカーボンナノチューブやその配向性ならびにシート自体にダメージを与えることなく、簡易かつ好適にシート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることが可能となる。
【0036】
他方、本発明の導電性コネクターは上述のいずれかの製造方法により得られた導電性シートを少なくとも1以上含むことを特徴とする。本発明の導電性シートを導電性コネクターに用いることにより、従来の手法では困難であった、接続面において高い導電性を有し面内のばらつきが少なく、さらには厚みが精密に制御され、回路基板と回路部品の電気的接続がより簡便な導電性コネクターとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
本発明の導電性シートの第一の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、上記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の導電性シートの第二の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0040】
本発明におけるカーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた円筒直径がナノメートルサイズの極微細なチューブ(筒、円筒)状の化合物であり、一般に円筒直径として1〜1000nm程度、円筒軸方向長さとして0.1〜1000μm程度の、L/Dとして100〜10000程度の大きなアスペクト比を有する径の細長い炭素からなるチューブ状の炭素化合物である。
【0041】
カーボンナノチューブは炭素原子が構成する6角網目構造(グラフェンシート)を筒状に巻いたような構造を有しており、カーボンナノチューブの円筒直径と螺旋度(カイラリティ:chirality)によりカーボンナノチューブの導電性等に差異を発現させることができる。カーボンナノチューブには、ジグザグ型カーボンナノチューブ、カイラル(キラル:chiral)型カーボンナノチューブ、アームチェアー型カーボンナノチューブなどがあるが、本発明においてはこれらのカーボンナノチューブは制限なく単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
また、カーボンナノチューブには、6角網目構造(グラフェンシート)のチューブが1枚構造のもの(シングルウォールナノチューブ:SWNT)、多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)などがあるが、発明においては特に制限されることなく適宜用いることができる。これらのカーボンナノチューブは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
上記のカーボンナノチューブには、一般にその生成過程等において、非晶質カーボンナノ粒子、フラーレン類および金属ナノ粒子なども副生成物として混入している場合があるが、これらの副生成物が含まれていてもよい。
【0044】
また、本発明におけるカーボンナノチューブとしては、金属または他の無機物や有機物を含むもの、カーボンナノチューブ内に炭素または他の物質が充填されたもの、カーボンナノチューブがコイル状(螺旋状)またはフィブリル状のもの、その他いわゆるナノファイバーも用いることができる。
【0045】
本発明において、カーボンナノチューブの円筒直径と円筒軸方向長さは特に限定されるものではないが、製造の容易性や機能発現性などの点から、通常、カーボンナノチューブの円筒直径は0.7〜50nm程度、円筒軸方向長さが数10nm〜200μmの範囲で用いられる。なかでも特に、円筒軸方向長さは10〜1000μmの範囲であるものが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、従来法では十分な含浸ができなかった100μm以上のシート厚みの場合であっても、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、ボイドの発生が生じることなく、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。
【0046】
本発明におけるカーボンナノチューブの製造方法は、特に制限されることなく公知の手法を適宜用いることができる。カーボンナノチューブの製造方法として、炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法(アーク放電法)、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法(レーザー蒸発法)、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法(化学的気相成長法:CVD法)、熱分解法、プラズマ放電を利用する方法などがあるが、上記したように、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成するためには、化学的気相成長法(CVD法)が好適に用いることができる。
【0047】
上記化学的気相成長法(CVD法)として、たとえば、基材(シリコン基板)の少なくとも片面上に、ニッケル、コバルト、鉄などの金属の錯体を含む溶液をスプレーや刷毛で塗布した後、加熱して形成した皮膜上に、あるいは、クラスター銃で打ち付けて形成した皮膜上に、アセチレンガスを用いて一般的な化学的気相成長法(CVD法)を施すことにより、円筒直径10〜40nm程度のカーボンナノチューブが多層構造で基板上に垂直に起毛され、いわゆるブラシ状カーボンナノチューブを作製できる。
【0048】
また、上記化学的気相成長法(CVD法)において、上記触媒の配置を制御することにより、シート内におけるカーボンナノチューブ(またはカーボンナノチューブドメイン)の存在領域の粗密の制御が可能となる。具体的には、たとえば、狙いの配線線幅と同じサイズの微細孔を有するメッシュで基板表面をマスキングした後に触媒接触を形成させる手法や、特開2004−327085に開示されているように、基板上に触媒皮膜を形成させた後、基板の一部にレーザー光を照射して皮膜を除去あるいは固着する手法など、公知の手法による触媒の配置の制御手法をあげることができる。
【0049】
より具体的な製造方法例を以下例示する。まず、基材(基板)上に触媒粒子を形成し、触媒粒子を核として高温雰囲気で原料ガスからカーボンナノチューブを成長させる。
【0050】
基材(基板)としては、触媒粒子を支持するものであればよく、触媒粒子が濡れにくいものが好ましく、たとえば、結晶性シリコン基板などがあげられる。
【0051】
触媒粒子としては、たとえば、ニッケル、コバルト、鉄などの金属粒子があげられる。
【0052】
これらの金属またはその錯体等の化合物の溶液をスプレーやコーターで基材に塗布し、またはクラスター銃で基板に打ち付け、乾燥させ、触媒の配置を制御した皮膜を形成する。上記皮膜の厚みは、1〜100nm程度であることが好ましい。100nmを超えると、加熱による粒子化が困難になる。
【0053】
次いで、この皮膜を、好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で、好ましくは650〜800℃に加熱すると、円筒直径1〜50nm程度の触媒粒子が形成される。
【0054】
カーボンナノチューブの原料ガスとしては、アセチレン、メタン、エチレン等の脂肪族炭化水素が適宜用いられるが、中でもアセチレンガスが好ましく、その中でも、特にアセチレン濃度が99.9999%であるような超高純度なアセチレンガスが好ましい。原料ガス純度が高い方が品質の良いカーボンナノチューブができる。また、アセチレンの場合、多層構造で太さ10〜40nmのカーボンナノチューブが触媒粒子を核として、基板に対して垂直にかつ一定方向に配向成長してブラシ状(いわゆるブラシ状カーボンナノチューブ)に形成される。
【0055】
また、上記の化学的気相成長法(CVD法)におけるカーボンナノチューブの形成温度は、650〜800℃程度であることが好ましい。
【0056】
本発明における、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程は上述のようにしておこなうことができる。
【0057】
本発明において、上記のカーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸方法は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれる。
【0058】
高分子系成形材料としては、たとえば、熱硬化性樹脂(前駆体を含む)、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムなどがあげられる。これらの中でも、可とう性を有する有機系高分子であることが好ましい。なお、導電性シートを基材からの剥離する際に、上記シートが損傷を受けない程度の強度を有する高分子材料であることが必要である。
【0059】
本発明において、上記熱硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質が、硬化剤、触媒の作用によって熱硬化反応や熱架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂になり得る樹脂をいうものとする。
【0060】
また、本発明において、上記光硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質が、硬化剤、触媒、光の作用によって光硬化反応や光架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂になり得る樹脂をいうものとする。
【0061】
上記高分子系成形材料の具体例としては、たとえば、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、架橋型アクリル樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂などの熱硬化性樹脂(前駆体を含む)、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、脂環式炭化水素樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂(低密度から高密度の各種ポリエチレン、アイソタクチック・ポリプロピレン、アタクチック・ポリプロピレン、シンジオタクチック・ポリプロピレンなど)、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素含有ゴムなどのゴム、TPO樹脂(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンの水添体、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水添体、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、メトキシメチル化ナイロン、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂などの光硬化性樹脂、上記の樹脂に光硬化型官能基を含有する光硬化性樹脂などがあげられる。可とう性を有する有機系高分子に好適なものが多いが、なかでも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、RTV(室温硬化型)シリコーンゴム、液状ゴム、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(またはその前駆体)などが好適に用いるものとしてあげられ、なかでも特にポリウレタン樹脂が好適なものとしてあげられる。なお、上記高分子系成形材料の含浸工程においては、上記高分子系成形材料を直接用いて含浸させる手法のほか、上記高分子系成形材料の前駆体を含浸後、反応や硬化により上記高分子系成形材料をシートのマトリックスとして形成してもよい。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
上記ポリウレタン樹脂は一般にポリオール成分とイソシアネート成分を反応させて形成するが、分子量や物性の制御をより行いやすいプレポリマー法を用いることが好ましい。上記プレポリマー法では、ポリイソシアネート成分としてイソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーが用いられる。上記プレポリマー法を用いる場合、上記含浸工程に用いられる上記高分子系成形材料としてポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液であることが好ましい。また、含浸直前にポリウレタンプレポリマー液と鎖延長剤液の2液を混合させることが好ましい。
【0063】
ポリオール成分としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものをあげることができる。たとえば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特にこれらのなかで、上記プレポリマーを低溶融粘度とする必要からポリテトラメチレングリコールを用いることが好ましい。
【0064】
また、上記ポリオール化合物には、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
また、上記ポリウレタンプレポリマーは、上記ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーであることが好ましい。
【0066】
上記イソシアネートプレポリマーに用いられるイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に通常使用される、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系の各種のイソシアネート化合物、さらにはこれらイソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネート化合物を使用できる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、プレポリマー法を用いない場合、イソシアネート成分として下記のイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0067】
上記のイソシアネート化合物としては、具体的には、たとえば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(精製ジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)、クルードMDI(c−MDI)がある)等の芳香族ポリイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ないし脂環族ポリイソシアネート類があげられ、その変性物としては、イソシアネート化合物のプレポリマー型変性体、イソシアヌレート型変性体、ウレア型変性体、カルボジイミド型変性体などがあげられる。これらのなかでも、上記高分子成形材料が簡易に上述の可使時間を有するのには、トルエンジイソシアネート(TDI)を用いることが好ましい。
【0068】
上記イソシアネートプレポリマーは、一般にポリオール化合物とイソシアネート化合物の重付加反応により得られるが、他の方法により合成したものでもよい。また、イソシアネートプレポリマーは、一般に、イソシアネート化合物を、ポリオール化合物に対するモル当量より過剰に反応させることで得られるが、他の方法により合成したものでもよい。
【0069】
また、上記イソシアネートプレポリマーの製造においては、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、反鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。なお、これらの化合物は上記ポリオール組成物に例示したものをあげることができる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
さらに、上記イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基の重量%は3.0〜15(重量%)であることが好ましく、5.0〜10(重量%)であることがより好ましい。3.0重量%未満であると、上記高分子系形成材料の粘度が高くなりすぎ、次工程の含浸性に悪影響を及ぼす。一方、15重量%を超える場合には、未反応のイソシアネートが多く残存するため鎖延長剤との反応が速くなり、これも含浸性に悪影響を及ぼす。
【0071】
また、上記ポリウレタンプレポリマーの鎖延長剤がジオール系硬化剤であることがより好ましい。上記ジオール系硬化剤としては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジグリコール、1,3−ブタンジグリコール、2,3−ブタンジグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどをあげることができる。かかるジオール系鎖延長剤を用いることにより、成膜性、加工性に優れるとともに、上述の初期粘度と可使時間を有する高分子系成形材料が得やすくなる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
上記ポリウレタンプレポリマーとジオール系鎖延長剤との含有量の比は、各々の分子量やこれから製造される導電性シートの所望物性などにより種々変更しうる。しかしながら、ウレタンプレポリマーのNCO(イソシアネート)基と鎖延長剤のOH(水酸)基との比、NCO基/OH基(当量比)が0.95〜1.20であることが好ましい。0.95未満の場合であれば、硬化工程後においても未反応OH基が多く残存し、液状となりシートとしての形状を保てなくなる場合がある。一方、1.20以上の場合であれば、硬化工程後においても未反応NCO基が多く残存し、この場合でも液状のままとなりシートとしての形状が保てなくなる場合がある。
【0073】
上記含浸方法としては、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれる限り、公知の手法を適宜用いることができる。具体的には、たとえば、ポッティング法、キャスティング法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法などがあげられる。
【0074】
ポッティング法とは、上記したようにカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材上に、上記高分子系成形材料を徐々にたらし、均一に広げて含浸させた後、余分な上記高分子系成形材料を吸い取るなど除去して、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0075】
キャスティング法とは、先に上記高分子系成形材料をドクターブレードなどにより塗膜を形成し、その塗膜にカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材を覆いかぶせることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0076】
スピンコート法とは、カーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材をスピンコーターなどで回転させ、その上から上記高分子系成形材料を添加し、遠心力で上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0077】
ディップ法とは、カーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材を上記高分子系成形材料にディップし、ついで引き上げることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0078】
スプレー法とは、上記高分子系成形材料を霧状にしてカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材に吹き付けることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0079】
また、上記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含むことが好ましい。かかる処理を行うことにより、シートの下部やカーボンナノチューブ間への上記高分子系樹脂成形材料の含浸をより効果的に行うことができ、より確実にボイドレスなシートとすることができる。
【0080】
上記脱泡処理としては、たとえば、超音波処理、真空(減圧)処理、加圧処理などがあげられる。また、脱泡処理は上記含浸方法に次いでおこなってもよい。ただし、超音波処理等はカーボンナノチューブの凝集形態を分散させる場合もあるので、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれるように適宜処理条件を調整して行う必要がある。
【0081】
また、上記の含浸方法においては、公知の薄膜化処理を適宜組み合わせてもよい。上記薄膜化処理としては、たとえば、アプリケーターなどによる厚み制御処理、樹脂滴下量の制御処理、回転成型による均一薄膜化処理などがあげられる。また、薄膜化処理は上記の含浸方法に次いでおこなってもよい。
【0082】
なお、本発明においては、固体状態の溶液化、粘度の調整などの目的のために、前記高分子系成形材料に溶媒を適宜加えてもよい。なお、本発明においては、高分子系成形材料含浸または乾燥・硬化時などにおける溶媒の揮発に伴うカーボンナノチューブの配向の乱れなどの確実に抑制することが好ましいため、無溶媒系で行うことがより好ましい。
【0083】
上記高分子系成形材料に用いられる溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ならびに、水、各種水溶液、液化炭酸、超臨界状炭酸、およびメチルイミダゾールに代表されるような、いわゆるイオン性液体などがあげられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上述の高分子系成形材料に溶媒を加える場合、高分子系成形材料中の溶媒の含有量は、通常10〜50重量%程度であるが、より少ないほうが好ましい。
【0085】
また、本発明においては、上述の含浸工程において、上記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0086】
上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)の粘度が1500mPa・s以下であることが好ましい。1500mPa・sを越えると、特にカーボンナノチューブの長さが100μm以上となる場合に、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで含浸することが困難となり、ボイドの発生が生じるなどの問題を生じてしまう場合がある。
【0087】
また、上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)には、高分子系成形材料に応じて、任意成分として架橋剤を適宜添加することができる。架橋剤としては、たとえば、熱架橋型架橋剤、光架橋型架橋剤、放射線架橋型架橋剤などがあげられる。
【0088】
熱架橋型架橋剤としては、熱反応性官能基を2個以上有する多官能化合物(モノマー)などがあげられ、加硫剤、ジビニル化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、シリコーン系架橋剤、過酸化物、フェノール樹脂などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
光架橋型架橋剤としては、光反応性官能基を2個以上有する多官能化合物(モノマー)などがあげられ、たとえば、ジビニル化合物、過酸化物、光酸発生剤、光塩基発生剤などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
放射線架橋型架橋剤としては、放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能化合物(モノマー)があげられ、たとえば、ジビニル化合物などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0091】
また、これらの架橋剤は、熱架橋型架橋剤、光架橋型架橋剤、放射線架橋型架橋剤のいずれか2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、複数の架橋型の機能を併有する架橋剤もあるが、かかる架橋剤も特に制限なく適宜用いることができる。
【0092】
また、上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)には、任意成分として、上記成分以外にさらに、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機充填剤、滑剤、老化防止剤、染料、着色剤、顔料、界面活性剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、光安定剤、揺変剤、紫外線吸収剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤、金属粉、粒子状、箔状物等を目的に応じて適宜使用することができる。これらの任意成分は、1種を単独に用いてもよく、または2種以上を使用してもよい。
【0093】
本発明における、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程は上述のようにしておこなうことができる。
【0094】
本発明においては、上記含浸工程についで、加熱乾燥、加熱硬化、および/または光照射により成形する成形工程を適宜含むことができる。
【0095】
加熱乾燥による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を架橋反応や硬化反応を伴わずに加熱処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、上記の含浸工程に用いた溶媒を除去し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0096】
加熱硬化による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を熱架橋反応や熱硬化反応を伴う加熱処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、熱硬化反応や熱架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0097】
光照射による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を光架橋反応や光硬化反応を伴う光照射処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、光硬化反応や光架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0098】
なお、これらの成形工程は、上記のものを単独で行ってもよく、また2種または3種を組み合わせて行ってもよい。
【0099】
さらに、本発明においては、上記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含むことが特に好ましい。上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、シート厚みの精密な制御が可能となり、シート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを簡易に製造することが可能となる。また、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来製造が困難であったシート表面にカーボンナノチューブを簡易に製造することが可能となる。なお、上記プラズマ照射処理工程は、一般に、上記含浸工程の後に上記高分子系樹脂成形材料が乾燥、硬化(低温、室温、高温を含む)処理により固体状または半固体状になった後におこなわれるものである。また、上記真空脱泡処理工程とプラズマ照射処理工程を併用する場合は、一般に、上記真空脱泡処理工程をおこなった後におこなわれるものである。
【0100】
また、上記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことが好ましい。かかる処理条件が好適であることの理由は明らかではないが、かかる処理条件の工程を用いることにより、上記高分子系成形材料、特にポリウレタン樹脂と、カーボンナノチューブのプラズマ照射に対する構造または結晶性などに由来する耐久性等の差異によりカーボンナノチューブやその配向性ならびにシート自体にダメージを与えることなく、簡易かつ好適にシート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることが可能となる。
【0101】
上記プラズマ照射処理工程として、より具体的には、たとえば、処理対象物を数Torr以下の減圧状態の反応室に入れ、酸素を含むガスを注入し、その酸素を高周波エネルギーによってプラズマ状に励起させ、この酸素プラズマが処理対象物の表面にぶつかり、処理対象物の表面を灰化させるなどの手法をあげることができる。
【0102】
本発明においては、上記導電性シート厚みが100〜1000μmであることが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、従来法では十分な含浸ができなかった100μm以上のシート厚みの場合であっても、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、ボイドの発生が生じることなく、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。なお、シートの厚みはダイヤルゲージにて測定したものをいう。
【0103】
上記シートは、単独で使用してもよく、また2種以上を張り合わせてして使用してもよい。また、2種以上を張り合わせて使用する場合にはシート間に接着剤層、バインダー層などを適宜設けてもよい。
【0104】
また、上記シートの表面には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、アンカーコート処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、ハードコート処理などの離型処理、ならびに、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理を必要に応じて適宜おこなってもよい。
【0105】
また、上記導電性シートにおける上記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%であることが好ましく、0.05〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%であることが特に好ましい。本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブを配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。このため、従来程度の導電性を有する導電性シートを目的として作製する場合、従来の有機導電性フィラーを配合する場合のフィラー配合量よりも少ない配合重量分率でその目的の導電性を達成することができ、フィラーとしては高価であるカーボンナノチューブの使用量も削減でき、コスト面でも有利なものとなる。このため、特に導電性コネクターなどの電子材料用途や回路基板用途などに用いる導電性シートとして好適なものとなる。
【0106】
本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブを配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。このため、特に導電性コネクターなどの電子材料用途や回路基板用途などに用いる導電性シートとして好適なものとなる。
【0107】
なお、抵抗値の測定は実施例中に記載する図11および図12の手法で行った。また、厚み方向の測定では、t:サンプル厚み、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、ρV=(R×S)/t[Ω・cm]を抵抗値(体積抵抗値)とした。また、面方向の測定では、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、σss=R[Ω/□]を抵抗値(表面抵抗値)とした。
【0108】
上記シート中のカーボンナノチューブの配列態様は、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡:SEM)などの画像解析により観察できる。また、上記シート中のカーボンナノチューブの円筒直径および円筒軸方向長さは、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡:SEM)などにより観察できる場合は、その観察写真から無作ために選択したカーボンナノチューブの円筒直径および円筒軸方向長さを画像解析すること等により得ることができる。
【0109】
図1および図2には本発明の製造方法により得られるカーボンナノチューブ複合シートの一部を模式的に示す概略説明図(断面図)を示した。カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するようにカーボンナノチューブ12が配列されている。
【0110】
なお、本発明においては、上記シートの表面16に各々すべてのカーボンナノチューブ12の端部20が完全に突出または到達していることまでは必ずしも必要とはしていないが、上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、図2に示すように、従来製造が極めて困難であったカーボンナノチューブ12がシート表面16より突出した導電性シートの簡易な製造が可能となる。このように従来困難であったシート面16よりカーボンナノチューブ12が突出した導電性シートは、特に高い導電性を有し面内のばらつきが少ないものとなる。
【0111】
一方、本発明の導電性コネクターは上述のいずれかの製造方法により得られた導電性シートを少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。本発明の導電性シートを導電性コネクターに用いることにより、従来の手法では困難であった、接続面において高い導電性を有し面内のばらつきが少なく、さらには厚みが精密に制御され、回路基板と回路部品の電気的接続がより簡便な導電性コネクターとすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例における測定・評価等は下記のようにして測定を行った。
【0113】
<初期粘度および可使時間の測定>
調整した高分子系成形材料(高分子系成形材料を含む溶液を含む)の初期粘度および可使時間の測定は、単一円筒型回転粘度計(スピンドルタイプ、東機産業社製、TV−10形粘度計)によりおこなった。
【0114】
測定条件・手法等:ローターが十分に入るビーカーに原料を準備し、70℃下に保管する。H3(No.26)のローターにて、回転速度を10rpmで(より高粘度なら回転数:5rpmにして、より低粘度なら回転数:20rpmにして)測定し、表示された数値を粘度とした。
【0115】
<導電性(抵抗値)の測定>
(縦方向の導電性測定)
実施例等で作成したシートの縦方向(フィルム厚み方向)の導電性は、抵抗計(YOKOGAWA 7552型 デジタルマルチメーター)30を用いて以下のように行った。
【0116】
作製したシート32を図11に示すように下側電極34に皴なく均一になるようにのせ、ついで荷重およびその他の条件を決定し、一定荷重Wを印加しながら計測した縦方向(フィルム厚み方向、図3におけるY方向)の抵抗値を測定した。なお、電極34には、上側、下側とも金メッキ部分が径4mmの円状のものを使用した。また、上記測定は、印加荷重500g、室温にて行った。なお、t:サンプル厚み、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、ρV=(R×S)/t[Ω・cm]を抵抗値(体積抵抗値)とした。
【0117】
(横方向の導電性測定)
実施例等で作成したシートの縦方向(フィルム表面と平行方向)の導電性は、抵抗率(YOKOGAWA 7552 デジタルマルチメーター)40を用いて以下のように行った。
【0118】
作製したシート42を図12に示すように下側電極44に皴なく均一になるようにのせ、ついで荷重およびその他の条件を決定し、一定荷重Wを印加しながら計測した横方向(フィルム厚み方向、図4におけるX方向)の抵抗値を測定した。なお、電極44には、金メッキ部分が2mm×2mmの正方形が2つ、2mm間隔で平行して配置されているものを使用した。また、上記測定は、印加荷重500g、室温にて行った。なお、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、σss=R[Ω/□]を抵抗値(表面抵抗値)とした。
【0119】
〔実施例1〕
(カーボンナノチューブ形成工程)
平滑な表面を有する結晶性シリコン基板上にFeからなる触媒の配置を制御した触媒層を真空蒸着法により形成し、その後この基板をCVD装置に投入した。
【0120】
次に上記CVD装置内に、カーボンナノチューブの原料ガスとして超高純度アセチレン(サーンガスニチゴー社製、純度:99.9999%)、キャリアガスとして超高純度ヘリウム(大陽東洋酸素社製、純度:99.9999%)をCVD装置内に流した(アセチレン流量:60cc/min、ヘリウム流量:200cc/min、温度700℃)。CVD工程により、Fe膜が粒子化することにより得られた触媒粒子が核として、カーボンナノチューブが基板に対して垂直に配向したブラシ状カーボンナノチューブを得た。得られたブラシ状カーボンナノチューブは、円筒直径45nm、円筒軸方向長さ150〜200μmの多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)であった。
【0121】
また、同様に、円筒直径45nm、円筒軸方向長さ50μm以下の多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)も得た。
【0122】
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−167、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:6.41%)100重量部に1,4−ブタンジオール6.2重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(1)を得た。なお、上記液状樹脂(1)の初期粘度は1500mPa・sであり、可使時間は80分であった。
【0123】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(1)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(1)を含浸させた。
【0124】
その後、硬化工程として150℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(1)を硬化し、次いで基板より剥離して導電性シート(厚み:168μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。また、カーボンナノチューブ含有量はTGAによりカーボンナノチューブの重量分率を算出することから得た。
【0125】
上記図9および10の結果より、従来のスピンコーターでシート厚みの調整を試みた場合、毛細管現象などのためにシート表面部に高分子系成形材料が覆ってしまっていた(図9)。なお、このときの体積抵抗値は4.0×106Ω・cmであった。その後、プラズマ照射処理工程(装置:JP−170、日本電子データム社製、印加電力:44W、反射電力:14W、真空度:119Pa、アルゴン/酸素(75/25)混合気体雰囲気下、照射時間:30min)を行い、シート表面の樹脂不要分の除去を行い、カーボンナノチューブ長さに精密制御された導電性シート(厚み:166μm)を得た(図10)。なお、このときの体積抵抗値は3.8Ω・cmであった。
【0126】
〔比較例1〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−100、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:4.19%)100重量部にジアミン系鎖延長剤(アルベマール社製、エタキュア300)9.6重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(2)を得た。なお、上記液状樹脂(2)の初期粘度は8600mPa・sであり、可使時間は12分であった。
【0127】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(2)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(2)を含浸させた。
【0128】
その後、硬化工程として100℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(2)を硬化し、次いで基板より剥離して樹脂シート(厚み:180μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。
〔比較例2〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−167、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:6.41%)100重にジアミン系鎖延長剤(アルベマール社製、エタキュア300)14.6重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(3)を得た。なお、上記液状樹脂(3)の初期粘度は2400mPa・sであり、可使時間は8分であった。
【0129】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(3)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(3)を含浸させた。
【0130】
その後、硬化工程として100℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(3)を硬化し、次いで基板より剥離して樹脂シート(厚み:190μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。
【0131】
〔比較例3〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
上記のブラシ状カーボンナノチューブの代わりにカーボンナノチューブ(億安社製)4.5重量部加え、その後7時間超音波処理を行って得た分散液をキャスティングしたこと以外は実施例1と同様の手法を用いることにより、樹脂シート(厚み:160μm)を得た。
【0132】
〔比較例4〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
上記のブラシ状カーボンナノチューブの代わりにケッチェンブラックEC(ライオン社製)4.5重量部を用いたこと以外は比較例3と同様の手法を用いることにより、樹脂シート(厚み:165μm)を得た。
【0133】
上記実施例等で作成したシートの側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真および導電性(抵抗値)を測定した。その結果を表1〜2および図3〜10に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
上記表1等の結果より、本発明の製造方法により作製された導電性シートは、従来困難であったカーボンナノチューブの長さが100μm以上である場合であっても、カーボンナノチューブの配向性を乱すことなく、さらにはボイドの発生や樹脂充填ムラを生じることもなく、しかも容易に作製できるものであることがわかった。
【0137】
一方、本発明の製造方法を用いなかった場合、カーボンナノチューブの長さが50μm以下である場合には、ボイドの発生等は認められなかったが、カーボンナノチューブの長さが100μm以上である場合では、断面評価を行った結果、ボイドの発生や樹脂充填ムラを生じてしまった。
【0138】
また、上記図9および10の結果より、本発明のプラズマ照射処理工程を行うことで、上記導電性シートの損傷やカーボンナノチューブの配向性を損なうことなく、簡易にカーボンナノチューブ長さに精密制御された導電性シートを製造することが可能となったことがわかった。また、上述の精密制御を行うことにより、体積抵抗値も大きく減少させることが可能であることもわかった。
【0139】
さらに、上記表2等の結果より、本発明の製造方法により作製された導電性シートは、他の有機導電性フィラーであるケッチェンブラックを用いた場合や、カーボンナノチューブをランダムに配合した場合と比べて、同重量比率の配合した場合、非常に体積抵抗値が小さくなることがわかった。
【0140】
これらの結果より、本発明の製造方法は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、シート厚みの精密な制御が可能な、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の導電性シートの一部を模式的に示す概略説明図
【図2】本発明の導電性シートの側断面の一部を模式的に示す概略説明図
【図3】実施例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(950倍)
【図4】実施例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(250倍)
【図5】比較例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(1000倍)
【図6】比較例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(300倍)
【図7】比較例2で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(1000倍)
【図8】比較例2で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(250倍)
【図9】実施例1で得られた導電性シート(プラズマ照射処理前)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(3000倍)
【図10】実施例1で得られた導電性シート(プラズマ照射処理後)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(3000倍)
【図11】実施例等で縦方向導電性測定に使用した測定部の概略構成図
【図12】実施例等で横方向導電性測定に使用した測定部の概略構成図
【符号の説明】
【0142】
10 導電性シート側断面
12 カーボンナノチューブ
14 カーボンナノチューブ切断面
16 導電性シート表面
20 カーボンナノチューブ端部
22 高分子系成形材料
30 抵抗計
32 シート
34 電極
36 電極基板
38 台
40 抵抗計
42 シート
44 電極
46 電極基板
48 台
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シートの製造方法に関する。さらに詳細には、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、カーボンナノチューブが高分子系成形材料中に配向されている導電性シートの製造方法、ならびに導電性シートに関する。また、本発明は、上記導電性シートを含む導電性コネクターに関する。
【0002】
本発明の製造方法により得られる導電性シートは、高い導電性を有し面内のばらつきが少ないという優れた電気的性質を発揮することができ、たとえば、電子部品、高強度材料などとして利用することができる。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブは、グラファイトシート(6角網目構造:グラフェンシート)を円筒状に丸めた構造を有し、円筒直径が0.7〜50nm程度、円筒軸方向長さが数100μm程度あり、中空構造を持つ非常にアスペクト比の大きな材料である。
【0004】
カーボンナノチューブの電気的性質としては、円筒直径や螺旋度(カイラリティ:chirality)に大きく依存し、金属的性質から半導体的性質を示し、また機械的性質としては大きなヤング率を有し、かつバックリングによっても応力を緩和できる特徴を併有する材料である。さらに、ダングリングボンド(dangling bond)を有しないため化学的に安定であり、かつ、炭素原子のみから構成されるため環境に優しい材料としても注目されている。
【0005】
このようにカーボンナノチューブは上記のようなユニークな物性を有することから、電子源としては電子放出源やフラットパネルディスプレイに、電子材料としてはナノスケールデバイスやリチウム電池の電極材料に、またプローブ探針、ガス貯蔵材、ナノスケール試験管、樹脂強化のための添加材等への応用が期待されている。
【0006】
これまでに、上記のカーボンナノチューブおよびその製造方法については、いくつかが開示されている(たとえば、特許文献1〜2参照)。それらの公報によれば、カーボンナノチューブの特異的機能を生かし、電子放出素子、水素貯蔵、薄膜電池、プローブ、マイクロマシン、半導体超集積回路、導電性材料、熱伝導性材料、高強度高弾性材料などの多くの興味深い用途開発が活発に検討されている。
【0007】
しかし、これまでの製造方法では、種々の円筒軸方向長さのカーボンナノチューブがランダムな方向を向いて生成されてしまう点で問題があった。たとえば電子放出源に応用する場合、カーボンナノチューブの先端から電界放出が起きるため、カーボンナノチューブの円筒軸方向の配向を揃えることができれば、電界放出特性が著しく向上することが期待される。
【0008】
上記のカーボンナノチューブの円筒軸方向の配向を揃える技術として、これまでいくつかの提案がされている。たとえば、カーボンナノチューブの分散液をセラミックフィルターでろ過することにより、セラミックフィルターの微小ポアにカーボンナノチューブを差込み、配向を揃えること(たとえば、非特許文献1参照)、エポキシ樹脂にカーボンナノチューブを練り込み、硬化後にエポキシ樹脂を極薄く切断することによってカーボンナノチューブを配向させる技術(たとえば、非特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、これらの提案ではカーボンナノチューブの配向性は十分ではなく、またエポキシ樹脂が混在するなどといった問題点がある。
【0009】
また、たとえば、マトリックス中にカーボンナノチューブを含有する組成物に、外部から磁場を印加することにより一定方向に配列させる方法(たとえば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、かかる提案では10テスラ程度もの強い磁場を印加する必要があり、装置も大掛かりでコストもかかり未だ実用的でなく、より簡便かつ低コストである手法が求められている。
【0010】
一方、ICやLSIなどの回路部品では、その技術進歩とともに回路内部構造がさらに高密度化に向かい、それに伴い接続端子も高密度化が進む傾向にある。さらに、小型化に加えて、より導電性優れ、厚みや大きさの精密な制御が可能な材料の開発が求められつつある。
【0011】
たとえば、これまでにカーボンナノチューブ含有シートの厚みの制御手法として、スピンコーターやアプリケーターなどによる薄膜化処理が試みられている。しかしながら、かかる手法ではシート厚みをおおまかにカーボンナノチューブ長さ付近にすることができたとしても、精密に制御されたシート厚みや、正確なカーボンナノチューブ長さまたはカーボンナノチューブ長さとは異なるシート厚みに制御することが困難であった。
【0012】
なかでも特に、カーボンナノチューブが規則的に配向させたカーボンナノチューブ含有シートの場合、上述のスピンコーターやアプリケーターなどの手法によりシート厚みを一度制御しても、その後の樹脂硬化工程において、カーボンナノチューブ間に含浸した液状樹脂材料が毛細管現象により再度カーボンナノチューブ上部やシート表面に染み出してくる現象が起こってしまうことが判明した。また、マトリックス樹脂の含浸時や樹脂硬化工程においてカーボンナノチューブの配向が乱される場合があり、その結果、シート表面の面内での導電性のばらつきが問題となることも判明した。
【0013】
また、かかる厚みや大きさの精密な制御手法として、カーボンナノチューブ含有シートを研磨することによって厚みの精密制御する手法が試みられている(たとえば、非特許文献3参照)。しかしながら、かかる研磨による膜厚の制御ではカーボンナノチューブ含有シートに与えるダメージが大きく、シート破れなどの不具合が発生してしまう。
【0014】
【特許文献1】特開平5−125619号公報
【特許文献2】特開平7−216660号公報
【特許文献3】特開2002−273741号公報
【特許文献4】特開2002−233598号公報
【非特許文献1】Walt A. de Heer, W. S. Bacsa, Science, vol.268, p845〜847(1995)
【非特許文献2】P. M. Ajayan, O. Stephan, Science, vol.265, p1212〜1214(1994)
【非特許文献3】Chem. mater, 17(5), p974〜983(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解消すべく、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、シート厚みの精密な制御が可能な、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の目的は、上記導電性シートを用いた導電性コネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す導電性シートの製造方法を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の導電性シートの第一の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の導電性シートの第二の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、実施例の結果に示すように、上述した基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む製造方法であって、初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上である上記高分子系成形材料を用いることにより、簡便かつ低コストで、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートが得られる。上記製造方法により得られた導電性シートがかかる特性を発現する理由としては明らかではないが、本発明の製造方法を用いることにより、カーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブに所定の高分子系成形材料を含浸させ、基材上に垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を乱すことなく複合することにより、面内のばらつきが生じないように配向を維持した状態でシートとすることができるためと推測される。
【0022】
本発明における「カーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブ」とは、導電性シート中に存在するカーボンナノチューブの大部分(典型的には50個数%以上)が、カーボンナノチューブが基材表面の面方向に対して垂直方向(基材表面の面方向に対して略直交する方向および該方向と同等視しうる程度にやや傾斜した方向を包含する)に配向していることをいい、たとえば、ブラシ状カーボンナノチューブが該当する(たとえば、特開2001−220674号公報参照)。
【0023】
また、本発明における「カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向する」とは、導電性シート中に存在するカーボンナノチューブの大部分(典型的には50個数%以上)が、各々のカーボンナノチューブの一端が一方の表面方向に、他端がもう一方の表面にそれぞれ配向した状態(これらのカーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向(面方向に対して略直交する方向および該方向と同等視しうる程度にやや傾斜または蛇行した方向を包含する)に平行に存在している状態を含む)をいう。
【0024】
また、本発明において、シートとは平面状の材料を意味し、通常、フィルムとよばれるものを含むこととする。
【0025】
本発明において、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する方法は、特に限定されることなく公知の手法を適宜用いることができる。たとえば、平滑な基板上にFeからなる触媒層を形成し、基板温度を700℃前後にした後、アセチレンガスを流すことにより生成させる手法があげられる(たとえば、特開2001−220674号公報参照)。さらに、電子材料用途や回路基板用途などにおけるさらなる高集積化に向けた配線線幅およびピッチの改良の観点からは、上記触媒の配置を制御してカーボンナノチューブを形成する方法を用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明において、上記のカーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を特に維持した状態でおこなわれる。上記工程における含浸方法としては、ポッティング法、およびキャスティング法などが好適に用いることができる。
【0027】
さらに、本発明においては、初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上である高分子系成形材料を用いることを特徴としている。
【0028】
なお、本発明において、上記高分子系成形材料の初期粘度とは、高分子系成形材料の調整直後(2液混合系では混合直後)の70℃での粘度を意味する。また、上記高分子系成形材料の可使時間とは、上記高分子系成形材料を70℃で維持した場合に20000(mPa・s)に達するまでに要した時間(分)を意味する。なお、上記初期粘度および可使時間の測定は、70℃で環境下における単一円筒型回転粘度計(たとえば、東機産業社製、TV−10形粘度計)およびローター(たとえば、H3)を用いて行った。
【0029】
また、上記の高分子系成形材料が、可とう性を有する有機系高分子であることが好ましい。かかる高分子系成形材料を用いることにより、簡便かつ低コストで高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることができる。
【0030】
さらに、上記高分子系成形材料が、ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液であることが好ましい。また、上記ポリウレタンプレポリマーの硬化剤がジオール系硬化剤であることがより好ましい。これらの高分子系成形材料を用いることにより、上述の初期粘度と可使時間を有する高分子系成形材料が得やすくなる。
【0031】
また、本発明においては、上記カーボンナノチューブの長さが100〜1000μmであることが好ましい。また、本発明においては、上記導電性シート厚みが100〜1000μmであることが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。
【0032】
また、上記導電性シートにおける上記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%であることが好ましい。さらに、本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブの配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。また、従来程度の導電性を有する導電性シートを目的として作製する場合、従来の有機導電性フィラーを配合する場合のフィラー配合量よりも少ない配合重量分率でその目的の導電性を達成することができ、フィラーとしては高価であるカーボンナノチューブの使用量も削減でき、コスト面でも有利なものとなる。
【0033】
また、上記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含むことが好ましい。かかる処理を行うことにより、シートの下部やカーボンナノチューブ間への上記高分子系樹脂成形材料の含浸をより効果的に行うことができ、より確実にボイドレスなシートとすることができる。
【0034】
一方、本発明においては、上記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含むことが特に好ましい。上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、シート厚みの精密な制御が可能となり、シート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを簡易に製造することが可能となる。また、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来製造が困難であったシート表面にカーボンナノチューブを簡易に製造することが可能となる。さらには、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来極めて困難であったカーボンナノチューブがシート表面より突出した導電性シートの簡易な製造が可能となる。なお、上記プラズマ照射処理工程は、一般に、上記含浸工程の後に上記高分子系樹脂成形材料が乾燥、硬化(低温、室温、高温を含む)処理により固体状または半固体状になった後におこなわれるものである。また、上記真空脱泡処理工程とプラズマ照射処理工程を併用する場合は、一般に、上記真空脱泡処理工程をおこなった後におこなわれるものである。
【0035】
また、上記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことが好ましい。かかる処理条件が好適であることの理由は明らかではないが、かかる処理条件の工程を用いることにより、上記高分子系成形材料、特にポリウレタン樹脂と、カーボンナノチューブのプラズマ照射に対する構造または結晶性などに由来する耐久性等の差異によりカーボンナノチューブやその配向性ならびにシート自体にダメージを与えることなく、簡易かつ好適にシート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることが可能となる。
【0036】
他方、本発明の導電性コネクターは上述のいずれかの製造方法により得られた導電性シートを少なくとも1以上含むことを特徴とする。本発明の導電性シートを導電性コネクターに用いることにより、従来の手法では困難であった、接続面において高い導電性を有し面内のばらつきが少なく、さらには厚みが精密に制御され、回路基板と回路部品の電気的接続がより簡便な導電性コネクターとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
本発明の導電性シートの第一の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、上記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の導電性シートの第二の製造方法は、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0040】
本発明におけるカーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた円筒直径がナノメートルサイズの極微細なチューブ(筒、円筒)状の化合物であり、一般に円筒直径として1〜1000nm程度、円筒軸方向長さとして0.1〜1000μm程度の、L/Dとして100〜10000程度の大きなアスペクト比を有する径の細長い炭素からなるチューブ状の炭素化合物である。
【0041】
カーボンナノチューブは炭素原子が構成する6角網目構造(グラフェンシート)を筒状に巻いたような構造を有しており、カーボンナノチューブの円筒直径と螺旋度(カイラリティ:chirality)によりカーボンナノチューブの導電性等に差異を発現させることができる。カーボンナノチューブには、ジグザグ型カーボンナノチューブ、カイラル(キラル:chiral)型カーボンナノチューブ、アームチェアー型カーボンナノチューブなどがあるが、本発明においてはこれらのカーボンナノチューブは制限なく単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
また、カーボンナノチューブには、6角網目構造(グラフェンシート)のチューブが1枚構造のもの(シングルウォールナノチューブ:SWNT)、多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)などがあるが、発明においては特に制限されることなく適宜用いることができる。これらのカーボンナノチューブは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
上記のカーボンナノチューブには、一般にその生成過程等において、非晶質カーボンナノ粒子、フラーレン類および金属ナノ粒子なども副生成物として混入している場合があるが、これらの副生成物が含まれていてもよい。
【0044】
また、本発明におけるカーボンナノチューブとしては、金属または他の無機物や有機物を含むもの、カーボンナノチューブ内に炭素または他の物質が充填されたもの、カーボンナノチューブがコイル状(螺旋状)またはフィブリル状のもの、その他いわゆるナノファイバーも用いることができる。
【0045】
本発明において、カーボンナノチューブの円筒直径と円筒軸方向長さは特に限定されるものではないが、製造の容易性や機能発現性などの点から、通常、カーボンナノチューブの円筒直径は0.7〜50nm程度、円筒軸方向長さが数10nm〜200μmの範囲で用いられる。なかでも特に、円筒軸方向長さは10〜1000μmの範囲であるものが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、従来法では十分な含浸ができなかった100μm以上のシート厚みの場合であっても、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、ボイドの発生が生じることなく、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。
【0046】
本発明におけるカーボンナノチューブの製造方法は、特に制限されることなく公知の手法を適宜用いることができる。カーボンナノチューブの製造方法として、炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法(アーク放電法)、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法(レーザー蒸発法)、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法(化学的気相成長法:CVD法)、熱分解法、プラズマ放電を利用する方法などがあるが、上記したように、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成するためには、化学的気相成長法(CVD法)が好適に用いることができる。
【0047】
上記化学的気相成長法(CVD法)として、たとえば、基材(シリコン基板)の少なくとも片面上に、ニッケル、コバルト、鉄などの金属の錯体を含む溶液をスプレーや刷毛で塗布した後、加熱して形成した皮膜上に、あるいは、クラスター銃で打ち付けて形成した皮膜上に、アセチレンガスを用いて一般的な化学的気相成長法(CVD法)を施すことにより、円筒直径10〜40nm程度のカーボンナノチューブが多層構造で基板上に垂直に起毛され、いわゆるブラシ状カーボンナノチューブを作製できる。
【0048】
また、上記化学的気相成長法(CVD法)において、上記触媒の配置を制御することにより、シート内におけるカーボンナノチューブ(またはカーボンナノチューブドメイン)の存在領域の粗密の制御が可能となる。具体的には、たとえば、狙いの配線線幅と同じサイズの微細孔を有するメッシュで基板表面をマスキングした後に触媒接触を形成させる手法や、特開2004−327085に開示されているように、基板上に触媒皮膜を形成させた後、基板の一部にレーザー光を照射して皮膜を除去あるいは固着する手法など、公知の手法による触媒の配置の制御手法をあげることができる。
【0049】
より具体的な製造方法例を以下例示する。まず、基材(基板)上に触媒粒子を形成し、触媒粒子を核として高温雰囲気で原料ガスからカーボンナノチューブを成長させる。
【0050】
基材(基板)としては、触媒粒子を支持するものであればよく、触媒粒子が濡れにくいものが好ましく、たとえば、結晶性シリコン基板などがあげられる。
【0051】
触媒粒子としては、たとえば、ニッケル、コバルト、鉄などの金属粒子があげられる。
【0052】
これらの金属またはその錯体等の化合物の溶液をスプレーやコーターで基材に塗布し、またはクラスター銃で基板に打ち付け、乾燥させ、触媒の配置を制御した皮膜を形成する。上記皮膜の厚みは、1〜100nm程度であることが好ましい。100nmを超えると、加熱による粒子化が困難になる。
【0053】
次いで、この皮膜を、好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で、好ましくは650〜800℃に加熱すると、円筒直径1〜50nm程度の触媒粒子が形成される。
【0054】
カーボンナノチューブの原料ガスとしては、アセチレン、メタン、エチレン等の脂肪族炭化水素が適宜用いられるが、中でもアセチレンガスが好ましく、その中でも、特にアセチレン濃度が99.9999%であるような超高純度なアセチレンガスが好ましい。原料ガス純度が高い方が品質の良いカーボンナノチューブができる。また、アセチレンの場合、多層構造で太さ10〜40nmのカーボンナノチューブが触媒粒子を核として、基板に対して垂直にかつ一定方向に配向成長してブラシ状(いわゆるブラシ状カーボンナノチューブ)に形成される。
【0055】
また、上記の化学的気相成長法(CVD法)におけるカーボンナノチューブの形成温度は、650〜800℃程度であることが好ましい。
【0056】
本発明における、基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程は上述のようにしておこなうことができる。
【0057】
本発明において、上記のカーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸方法は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれる。
【0058】
高分子系成形材料としては、たとえば、熱硬化性樹脂(前駆体を含む)、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムなどがあげられる。これらの中でも、可とう性を有する有機系高分子であることが好ましい。なお、導電性シートを基材からの剥離する際に、上記シートが損傷を受けない程度の強度を有する高分子材料であることが必要である。
【0059】
本発明において、上記熱硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質が、硬化剤、触媒の作用によって熱硬化反応や熱架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂になり得る樹脂をいうものとする。
【0060】
また、本発明において、上記光硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質が、硬化剤、触媒、光の作用によって光硬化反応や光架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂になり得る樹脂をいうものとする。
【0061】
上記高分子系成形材料の具体例としては、たとえば、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、架橋型アクリル樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂などの熱硬化性樹脂(前駆体を含む)、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、脂環式炭化水素樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂(低密度から高密度の各種ポリエチレン、アイソタクチック・ポリプロピレン、アタクチック・ポリプロピレン、シンジオタクチック・ポリプロピレンなど)、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素含有ゴムなどのゴム、TPO樹脂(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンの水添体、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水添体、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、メトキシメチル化ナイロン、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂などの光硬化性樹脂、上記の樹脂に光硬化型官能基を含有する光硬化性樹脂などがあげられる。可とう性を有する有機系高分子に好適なものが多いが、なかでも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、RTV(室温硬化型)シリコーンゴム、液状ゴム、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(またはその前駆体)などが好適に用いるものとしてあげられ、なかでも特にポリウレタン樹脂が好適なものとしてあげられる。なお、上記高分子系成形材料の含浸工程においては、上記高分子系成形材料を直接用いて含浸させる手法のほか、上記高分子系成形材料の前駆体を含浸後、反応や硬化により上記高分子系成形材料をシートのマトリックスとして形成してもよい。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
上記ポリウレタン樹脂は一般にポリオール成分とイソシアネート成分を反応させて形成するが、分子量や物性の制御をより行いやすいプレポリマー法を用いることが好ましい。上記プレポリマー法では、ポリイソシアネート成分としてイソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーが用いられる。上記プレポリマー法を用いる場合、上記含浸工程に用いられる上記高分子系成形材料としてポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液であることが好ましい。また、含浸直前にポリウレタンプレポリマー液と鎖延長剤液の2液を混合させることが好ましい。
【0063】
ポリオール成分としては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものをあげることができる。たとえば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特にこれらのなかで、上記プレポリマーを低溶融粘度とする必要からポリテトラメチレングリコールを用いることが好ましい。
【0064】
また、上記ポリオール化合物には、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
また、上記ポリウレタンプレポリマーは、上記ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーであることが好ましい。
【0066】
上記イソシアネートプレポリマーに用いられるイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に通常使用される、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系の各種のイソシアネート化合物、さらにはこれらイソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネート化合物を使用できる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、プレポリマー法を用いない場合、イソシアネート成分として下記のイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0067】
上記のイソシアネート化合物としては、具体的には、たとえば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(精製ジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)、クルードMDI(c−MDI)がある)等の芳香族ポリイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ないし脂環族ポリイソシアネート類があげられ、その変性物としては、イソシアネート化合物のプレポリマー型変性体、イソシアヌレート型変性体、ウレア型変性体、カルボジイミド型変性体などがあげられる。これらのなかでも、上記高分子成形材料が簡易に上述の可使時間を有するのには、トルエンジイソシアネート(TDI)を用いることが好ましい。
【0068】
上記イソシアネートプレポリマーは、一般にポリオール化合物とイソシアネート化合物の重付加反応により得られるが、他の方法により合成したものでもよい。また、イソシアネートプレポリマーは、一般に、イソシアネート化合物を、ポリオール化合物に対するモル当量より過剰に反応させることで得られるが、他の方法により合成したものでもよい。
【0069】
また、上記イソシアネートプレポリマーの製造においては、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、反鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。なお、これらの化合物は上記ポリオール組成物に例示したものをあげることができる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
さらに、上記イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基の重量%は3.0〜15(重量%)であることが好ましく、5.0〜10(重量%)であることがより好ましい。3.0重量%未満であると、上記高分子系形成材料の粘度が高くなりすぎ、次工程の含浸性に悪影響を及ぼす。一方、15重量%を超える場合には、未反応のイソシアネートが多く残存するため鎖延長剤との反応が速くなり、これも含浸性に悪影響を及ぼす。
【0071】
また、上記ポリウレタンプレポリマーの鎖延長剤がジオール系硬化剤であることがより好ましい。上記ジオール系硬化剤としては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジグリコール、1,3−ブタンジグリコール、2,3−ブタンジグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどをあげることができる。かかるジオール系鎖延長剤を用いることにより、成膜性、加工性に優れるとともに、上述の初期粘度と可使時間を有する高分子系成形材料が得やすくなる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
上記ポリウレタンプレポリマーとジオール系鎖延長剤との含有量の比は、各々の分子量やこれから製造される導電性シートの所望物性などにより種々変更しうる。しかしながら、ウレタンプレポリマーのNCO(イソシアネート)基と鎖延長剤のOH(水酸)基との比、NCO基/OH基(当量比)が0.95〜1.20であることが好ましい。0.95未満の場合であれば、硬化工程後においても未反応OH基が多く残存し、液状となりシートとしての形状を保てなくなる場合がある。一方、1.20以上の場合であれば、硬化工程後においても未反応NCO基が多く残存し、この場合でも液状のままとなりシートとしての形状が保てなくなる場合がある。
【0073】
上記含浸方法としては、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれる限り、公知の手法を適宜用いることができる。具体的には、たとえば、ポッティング法、キャスティング法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法などがあげられる。
【0074】
ポッティング法とは、上記したようにカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材上に、上記高分子系成形材料を徐々にたらし、均一に広げて含浸させた後、余分な上記高分子系成形材料を吸い取るなど除去して、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0075】
キャスティング法とは、先に上記高分子系成形材料をドクターブレードなどにより塗膜を形成し、その塗膜にカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材を覆いかぶせることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0076】
スピンコート法とは、カーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材をスピンコーターなどで回転させ、その上から上記高分子系成形材料を添加し、遠心力で上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0077】
ディップ法とは、カーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材を上記高分子系成形材料にディップし、ついで引き上げることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0078】
スプレー法とは、上記高分子系成形材料を霧状にしてカーボンナノチューブが垂直方向に配向している基材に吹き付けることにより、上記高分子系成形材料をカーボンナノチューブに含浸させた膜を形成する手法である。
【0079】
また、上記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含むことが好ましい。かかる処理を行うことにより、シートの下部やカーボンナノチューブ間への上記高分子系樹脂成形材料の含浸をより効果的に行うことができ、より確実にボイドレスなシートとすることができる。
【0080】
上記脱泡処理としては、たとえば、超音波処理、真空(減圧)処理、加圧処理などがあげられる。また、脱泡処理は上記含浸方法に次いでおこなってもよい。ただし、超音波処理等はカーボンナノチューブの凝集形態を分散させる場合もあるので、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向を維持した状態でおこなわれるように適宜処理条件を調整して行う必要がある。
【0081】
また、上記の含浸方法においては、公知の薄膜化処理を適宜組み合わせてもよい。上記薄膜化処理としては、たとえば、アプリケーターなどによる厚み制御処理、樹脂滴下量の制御処理、回転成型による均一薄膜化処理などがあげられる。また、薄膜化処理は上記の含浸方法に次いでおこなってもよい。
【0082】
なお、本発明においては、固体状態の溶液化、粘度の調整などの目的のために、前記高分子系成形材料に溶媒を適宜加えてもよい。なお、本発明においては、高分子系成形材料含浸または乾燥・硬化時などにおける溶媒の揮発に伴うカーボンナノチューブの配向の乱れなどの確実に抑制することが好ましいため、無溶媒系で行うことがより好ましい。
【0083】
上記高分子系成形材料に用いられる溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ならびに、水、各種水溶液、液化炭酸、超臨界状炭酸、およびメチルイミダゾールに代表されるような、いわゆるイオン性液体などがあげられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上述の高分子系成形材料に溶媒を加える場合、高分子系成形材料中の溶媒の含有量は、通常10〜50重量%程度であるが、より少ないほうが好ましい。
【0085】
また、本発明においては、上述の含浸工程において、上記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする。
【0086】
上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)の粘度が1500mPa・s以下であることが好ましい。1500mPa・sを越えると、特にカーボンナノチューブの長さが100μm以上となる場合に、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで含浸することが困難となり、ボイドの発生が生じるなどの問題を生じてしまう場合がある。
【0087】
また、上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)には、高分子系成形材料に応じて、任意成分として架橋剤を適宜添加することができる。架橋剤としては、たとえば、熱架橋型架橋剤、光架橋型架橋剤、放射線架橋型架橋剤などがあげられる。
【0088】
熱架橋型架橋剤としては、熱反応性官能基を2個以上有する多官能化合物(モノマー)などがあげられ、加硫剤、ジビニル化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、シリコーン系架橋剤、過酸化物、フェノール樹脂などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
光架橋型架橋剤としては、光反応性官能基を2個以上有する多官能化合物(モノマー)などがあげられ、たとえば、ジビニル化合物、過酸化物、光酸発生剤、光塩基発生剤などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
放射線架橋型架橋剤としては、放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能化合物(モノマー)があげられ、たとえば、ジビニル化合物などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0091】
また、これらの架橋剤は、熱架橋型架橋剤、光架橋型架橋剤、放射線架橋型架橋剤のいずれか2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、複数の架橋型の機能を併有する架橋剤もあるが、かかる架橋剤も特に制限なく適宜用いることができる。
【0092】
また、上記高分子系成形材料(もしくは上記高分子系成形材料を含む溶液)には、任意成分として、上記成分以外にさらに、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機充填剤、滑剤、老化防止剤、染料、着色剤、顔料、界面活性剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、光安定剤、揺変剤、紫外線吸収剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤、金属粉、粒子状、箔状物等を目的に応じて適宜使用することができる。これらの任意成分は、1種を単独に用いてもよく、または2種以上を使用してもよい。
【0093】
本発明における、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、上記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程は上述のようにしておこなうことができる。
【0094】
本発明においては、上記含浸工程についで、加熱乾燥、加熱硬化、および/または光照射により成形する成形工程を適宜含むことができる。
【0095】
加熱乾燥による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を架橋反応や硬化反応を伴わずに加熱処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、上記の含浸工程に用いた溶媒を除去し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0096】
加熱硬化による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を熱架橋反応や熱硬化反応を伴う加熱処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、熱硬化反応や熱架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0097】
光照射による成形工程とは、上述のようにカーボンナノチューブに含浸させた高分子系成形材料を光架橋反応や光硬化反応を伴う光照射処理することをいう。かかる処理をおこなうことにより、光硬化反応や光架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し、耐熱性、耐溶剤性、弾性などの物性を向上したシートを得ることができる。
【0098】
なお、これらの成形工程は、上記のものを単独で行ってもよく、また2種または3種を組み合わせて行ってもよい。
【0099】
さらに、本発明においては、上記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含むことが特に好ましい。上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、シート厚みの精密な制御が可能となり、シート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを簡易に製造することが可能となる。また、上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、従来製造が困難であったシート表面にカーボンナノチューブを簡易に製造することが可能となる。なお、上記プラズマ照射処理工程は、一般に、上記含浸工程の後に上記高分子系樹脂成形材料が乾燥、硬化(低温、室温、高温を含む)処理により固体状または半固体状になった後におこなわれるものである。また、上記真空脱泡処理工程とプラズマ照射処理工程を併用する場合は、一般に、上記真空脱泡処理工程をおこなった後におこなわれるものである。
【0100】
また、上記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことが好ましい。かかる処理条件が好適であることの理由は明らかではないが、かかる処理条件の工程を用いることにより、上記高分子系成形材料、特にポリウレタン樹脂と、カーボンナノチューブのプラズマ照射に対する構造または結晶性などに由来する耐久性等の差異によりカーボンナノチューブやその配向性ならびにシート自体にダメージを与えることなく、簡易かつ好適にシート厚みが精密制御され高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートを得ることが可能となる。
【0101】
上記プラズマ照射処理工程として、より具体的には、たとえば、処理対象物を数Torr以下の減圧状態の反応室に入れ、酸素を含むガスを注入し、その酸素を高周波エネルギーによってプラズマ状に励起させ、この酸素プラズマが処理対象物の表面にぶつかり、処理対象物の表面を灰化させるなどの手法をあげることができる。
【0102】
本発明においては、上記導電性シート厚みが100〜1000μmであることが好ましい。本発明の製造方法を用いることにより、従来法では十分な含浸ができなかった100μm以上のシート厚みの場合であっても、シートの下部やカーボンナノチューブ間の細部まで上記高分子系成形材料の含浸を容易に行うことができ、ボイドの発生が生じることなく、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートとすることができる。なお、シートの厚みはダイヤルゲージにて測定したものをいう。
【0103】
上記シートは、単独で使用してもよく、また2種以上を張り合わせてして使用してもよい。また、2種以上を張り合わせて使用する場合にはシート間に接着剤層、バインダー層などを適宜設けてもよい。
【0104】
また、上記シートの表面には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、アンカーコート処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、ハードコート処理などの離型処理、ならびに、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理を必要に応じて適宜おこなってもよい。
【0105】
また、上記導電性シートにおける上記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%であることが好ましく、0.05〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%であることが特に好ましい。本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブを配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。このため、従来程度の導電性を有する導電性シートを目的として作製する場合、従来の有機導電性フィラーを配合する場合のフィラー配合量よりも少ない配合重量分率でその目的の導電性を達成することができ、フィラーとしては高価であるカーボンナノチューブの使用量も削減でき、コスト面でも有利なものとなる。このため、特に導電性コネクターなどの電子材料用途や回路基板用途などに用いる導電性シートとして好適なものとなる。
【0106】
本発明の導電性シートは垂直方向に配向したカーボンナノチューブの配向を特に乱すことなく複合できるため、たとえば、同重量分率のカーボンブラックなどの有機導電性フィラーや同重量分率のカーボンナノチューブを配向をランダムに含有させたシートに比べて、より効果的に導電性を付与できる。このため、特に導電性コネクターなどの電子材料用途や回路基板用途などに用いる導電性シートとして好適なものとなる。
【0107】
なお、抵抗値の測定は実施例中に記載する図11および図12の手法で行った。また、厚み方向の測定では、t:サンプル厚み、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、ρV=(R×S)/t[Ω・cm]を抵抗値(体積抵抗値)とした。また、面方向の測定では、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、σss=R[Ω/□]を抵抗値(表面抵抗値)とした。
【0108】
上記シート中のカーボンナノチューブの配列態様は、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡:SEM)などの画像解析により観察できる。また、上記シート中のカーボンナノチューブの円筒直径および円筒軸方向長さは、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡:SEM)などにより観察できる場合は、その観察写真から無作ために選択したカーボンナノチューブの円筒直径および円筒軸方向長さを画像解析すること等により得ることができる。
【0109】
図1および図2には本発明の製造方法により得られるカーボンナノチューブ複合シートの一部を模式的に示す概略説明図(断面図)を示した。カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するようにカーボンナノチューブ12が配列されている。
【0110】
なお、本発明においては、上記シートの表面16に各々すべてのカーボンナノチューブ12の端部20が完全に突出または到達していることまでは必ずしも必要とはしていないが、上記含浸工程の後工程として上記プラズマ照射処理工程を含むことにより、図2に示すように、従来製造が極めて困難であったカーボンナノチューブ12がシート表面16より突出した導電性シートの簡易な製造が可能となる。このように従来困難であったシート面16よりカーボンナノチューブ12が突出した導電性シートは、特に高い導電性を有し面内のばらつきが少ないものとなる。
【0111】
一方、本発明の導電性コネクターは上述のいずれかの製造方法により得られた導電性シートを少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。本発明の導電性シートを導電性コネクターに用いることにより、従来の手法では困難であった、接続面において高い導電性を有し面内のばらつきが少なく、さらには厚みが精密に制御され、回路基板と回路部品の電気的接続がより簡便な導電性コネクターとすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例における測定・評価等は下記のようにして測定を行った。
【0113】
<初期粘度および可使時間の測定>
調整した高分子系成形材料(高分子系成形材料を含む溶液を含む)の初期粘度および可使時間の測定は、単一円筒型回転粘度計(スピンドルタイプ、東機産業社製、TV−10形粘度計)によりおこなった。
【0114】
測定条件・手法等:ローターが十分に入るビーカーに原料を準備し、70℃下に保管する。H3(No.26)のローターにて、回転速度を10rpmで(より高粘度なら回転数:5rpmにして、より低粘度なら回転数:20rpmにして)測定し、表示された数値を粘度とした。
【0115】
<導電性(抵抗値)の測定>
(縦方向の導電性測定)
実施例等で作成したシートの縦方向(フィルム厚み方向)の導電性は、抵抗計(YOKOGAWA 7552型 デジタルマルチメーター)30を用いて以下のように行った。
【0116】
作製したシート32を図11に示すように下側電極34に皴なく均一になるようにのせ、ついで荷重およびその他の条件を決定し、一定荷重Wを印加しながら計測した縦方向(フィルム厚み方向、図3におけるY方向)の抵抗値を測定した。なお、電極34には、上側、下側とも金メッキ部分が径4mmの円状のものを使用した。また、上記測定は、印加荷重500g、室温にて行った。なお、t:サンプル厚み、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、ρV=(R×S)/t[Ω・cm]を抵抗値(体積抵抗値)とした。
【0117】
(横方向の導電性測定)
実施例等で作成したシートの縦方向(フィルム表面と平行方向)の導電性は、抵抗率(YOKOGAWA 7552 デジタルマルチメーター)40を用いて以下のように行った。
【0118】
作製したシート42を図12に示すように下側電極44に皴なく均一になるようにのせ、ついで荷重およびその他の条件を決定し、一定荷重Wを印加しながら計測した横方向(フィルム厚み方向、図4におけるX方向)の抵抗値を測定した。なお、電極44には、金メッキ部分が2mm×2mmの正方形が2つ、2mm間隔で平行して配置されているものを使用した。また、上記測定は、印加荷重500g、室温にて行った。なお、S:電極面積、R抵抗値、とするとき、σss=R[Ω/□]を抵抗値(表面抵抗値)とした。
【0119】
〔実施例1〕
(カーボンナノチューブ形成工程)
平滑な表面を有する結晶性シリコン基板上にFeからなる触媒の配置を制御した触媒層を真空蒸着法により形成し、その後この基板をCVD装置に投入した。
【0120】
次に上記CVD装置内に、カーボンナノチューブの原料ガスとして超高純度アセチレン(サーンガスニチゴー社製、純度:99.9999%)、キャリアガスとして超高純度ヘリウム(大陽東洋酸素社製、純度:99.9999%)をCVD装置内に流した(アセチレン流量:60cc/min、ヘリウム流量:200cc/min、温度700℃)。CVD工程により、Fe膜が粒子化することにより得られた触媒粒子が核として、カーボンナノチューブが基板に対して垂直に配向したブラシ状カーボンナノチューブを得た。得られたブラシ状カーボンナノチューブは、円筒直径45nm、円筒軸方向長さ150〜200μmの多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)であった。
【0121】
また、同様に、円筒直径45nm、円筒軸方向長さ50μm以下の多層の6角網目のチューブから構成されているもの(マルチウォールナノチューブ:MWNT)も得た。
【0122】
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−167、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:6.41%)100重量部に1,4−ブタンジオール6.2重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(1)を得た。なお、上記液状樹脂(1)の初期粘度は1500mPa・sであり、可使時間は80分であった。
【0123】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(1)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(1)を含浸させた。
【0124】
その後、硬化工程として150℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(1)を硬化し、次いで基板より剥離して導電性シート(厚み:168μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。また、カーボンナノチューブ含有量はTGAによりカーボンナノチューブの重量分率を算出することから得た。
【0125】
上記図9および10の結果より、従来のスピンコーターでシート厚みの調整を試みた場合、毛細管現象などのためにシート表面部に高分子系成形材料が覆ってしまっていた(図9)。なお、このときの体積抵抗値は4.0×106Ω・cmであった。その後、プラズマ照射処理工程(装置:JP−170、日本電子データム社製、印加電力:44W、反射電力:14W、真空度:119Pa、アルゴン/酸素(75/25)混合気体雰囲気下、照射時間:30min)を行い、シート表面の樹脂不要分の除去を行い、カーボンナノチューブ長さに精密制御された導電性シート(厚み:166μm)を得た(図10)。なお、このときの体積抵抗値は3.8Ω・cmであった。
【0126】
〔比較例1〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−100、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:4.19%)100重量部にジアミン系鎖延長剤(アルベマール社製、エタキュア300)9.6重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(2)を得た。なお、上記液状樹脂(2)の初期粘度は8600mPa・sであり、可使時間は12分であった。
【0127】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(2)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(2)を含浸させた。
【0128】
その後、硬化工程として100℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(2)を硬化し、次いで基板より剥離して樹脂シート(厚み:180μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。
〔比較例2〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
まず、ウレタンプレポリマー(ユニロイヤル社製、アジプレンL−167、トルエンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコール含有、イソシアネート基重量%:6.41%)100重にジアミン系鎖延長剤(アルベマール社製、エタキュア300)14.6重量部加え、攪拌機(KEYENCE社製、HM−500 HYBRID MIXER)を用いて15秒間撹拌し、次いで30秒間脱泡して液状樹脂(高分子系成形材料)(3)を得た。なお、上記液状樹脂(3)の初期粘度は2400mPa・sであり、可使時間は8分であった。
【0129】
次に、上記のそれぞれのブラシ状カーボンナノチューブ上に、この撹拌・脱泡した液状樹脂(3)を室温(23℃付近)の環境下で徐々に滴下し、次いで真空乾燥機を用いて70℃、−100Paの減圧下に3分間静置した後、ただちに常圧に戻しブラシ状カーボンナノチューブに液状樹脂(3)を含浸させた。
【0130】
その後、硬化工程として100℃にて12時間加熱処理して上記液状樹脂(3)を硬化し、次いで基板より剥離して樹脂シート(厚み:190μm)を得た。なおシートの厚みはダイヤルゲージにて測定した。
【0131】
〔比較例3〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
上記のブラシ状カーボンナノチューブの代わりにカーボンナノチューブ(億安社製)4.5重量部加え、その後7時間超音波処理を行って得た分散液をキャスティングしたこと以外は実施例1と同様の手法を用いることにより、樹脂シート(厚み:160μm)を得た。
【0132】
〔比較例4〕
(高分子系成形材料の含浸・加熱乾燥工程)
上記のブラシ状カーボンナノチューブの代わりにケッチェンブラックEC(ライオン社製)4.5重量部を用いたこと以外は比較例3と同様の手法を用いることにより、樹脂シート(厚み:165μm)を得た。
【0133】
上記実施例等で作成したシートの側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真および導電性(抵抗値)を測定した。その結果を表1〜2および図3〜10に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
上記表1等の結果より、本発明の製造方法により作製された導電性シートは、従来困難であったカーボンナノチューブの長さが100μm以上である場合であっても、カーボンナノチューブの配向性を乱すことなく、さらにはボイドの発生や樹脂充填ムラを生じることもなく、しかも容易に作製できるものであることがわかった。
【0137】
一方、本発明の製造方法を用いなかった場合、カーボンナノチューブの長さが50μm以下である場合には、ボイドの発生等は認められなかったが、カーボンナノチューブの長さが100μm以上である場合では、断面評価を行った結果、ボイドの発生や樹脂充填ムラを生じてしまった。
【0138】
また、上記図9および10の結果より、本発明のプラズマ照射処理工程を行うことで、上記導電性シートの損傷やカーボンナノチューブの配向性を損なうことなく、簡易にカーボンナノチューブ長さに精密制御された導電性シートを製造することが可能となったことがわかった。また、上述の精密制御を行うことにより、体積抵抗値も大きく減少させることが可能であることもわかった。
【0139】
さらに、上記表2等の結果より、本発明の製造方法により作製された導電性シートは、他の有機導電性フィラーであるケッチェンブラックを用いた場合や、カーボンナノチューブをランダムに配合した場合と比べて、同重量比率の配合した場合、非常に体積抵抗値が小さくなることがわかった。
【0140】
これらの結果より、本発明の製造方法は、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に高密度で配向していて、シート厚みの精密な制御が可能な、高い導電性を有し面内のばらつきが少ない導電性シートの簡易な製造方法であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の導電性シートの一部を模式的に示す概略説明図
【図2】本発明の導電性シートの側断面の一部を模式的に示す概略説明図
【図3】実施例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(950倍)
【図4】実施例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(250倍)
【図5】比較例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(1000倍)
【図6】比較例1で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(300倍)
【図7】比較例2で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:50μm以下)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(1000倍)
【図8】比較例2で得られた導電性シート(カーボンナノチューブ長さ:150μm以上)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(250倍)
【図9】実施例1で得られた導電性シート(プラズマ照射処理前)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(3000倍)
【図10】実施例1で得られた導電性シート(プラズマ照射処理後)側断面の電子顕微鏡(SEM)の写真(3000倍)
【図11】実施例等で縦方向導電性測定に使用した測定部の概略構成図
【図12】実施例等で横方向導電性測定に使用した測定部の概略構成図
【符号の説明】
【0142】
10 導電性シート側断面
12 カーボンナノチューブ
14 カーボンナノチューブ切断面
16 導電性シート表面
20 カーボンナノチューブ端部
22 高分子系成形材料
30 抵抗計
32 シート
34 電極
36 電極基板
38 台
40 抵抗計
42 シート
44 電極
46 電極基板
48 台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記高分子系成形材料が、可とう性を有する有機系高分子である請求項1に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記高分子系成形材料が、ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液である請求項1または2に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリウレタンプレポリマーの鎖延長剤がジオール系硬化剤である請求項3に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの長さが100〜1000μmである請求項1〜4のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項6】
前記導電性シート厚みが100〜1000μmである請求項1〜5のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項7】
前記導電性シートにおける前記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項8】
前記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項9】
前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む請求項1〜8のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことを特徴とする請求項9に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られる導電性シートを含む導電性コネクター。
【請求項1】
基材上にカーボンナノチューブの円筒軸方向が基材に対し垂直方向に配向したカーボンナノチューブを形成する工程と、カーボンナノチューブの円筒軸方向がシートの厚み方向に配向するように、前記カーボンナノチューブに高分子系成形材料を含浸させる含浸工程とを含む導電性シートの製造方法であって、前記高分子系成形材料の初期粘度が1500mPa・s以下であって、かつ、可使時間が60分以上であることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記高分子系成形材料が、可とう性を有する有機系高分子である請求項1に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記高分子系成形材料が、ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤を含む混合溶液である請求項1または2に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリウレタンプレポリマーの鎖延長剤がジオール系硬化剤である請求項3に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの長さが100〜1000μmである請求項1〜4のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項6】
前記導電性シート厚みが100〜1000μmである請求項1〜5のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項7】
前記導電性シートにおける前記カーボンナノチューブの含有量が0.01〜50重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項8】
前記含浸工程のあと、さらに真空脱泡処理工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項9】
前記含浸工程のあと、さらにプラズマ照射処理工程を含む請求項1〜8のいずれかに記載の導電性シートの製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ照射処理工程において、酸素存在下で行うことを特徴とする請求項9に記載の導電性シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られる導電性シートを含む導電性コネクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−7461(P2009−7461A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169403(P2007−169403)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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