説明

導電性スポンジゴムローラ及び画像形成装置

【課題】ゴム組成物の特性を制御することにより、セル分布が均一で、硬度ムラ、抵抗ムラのない導電性スポンジゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体61と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層62を有する導電性スポンジゴムローラにおいて、前記導電性スポンジゴム層が、イオン導電性ゴム組成物を加硫・発泡することにより形成されたものであり、加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量が、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることを特徴とする導電性スポンジゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンタ及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性スポンジゴムローラに関する。詳しくは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラとして好適な導電性スポンジゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンタ、ファクシミリなどの種々の電子写真装置には、導電性ローラを始めとする各種導電性ゴム部材が使用されている。導電性ゴム部材のゴムとしては、適度の弾性と体積固有抵抗値が105〜1010Ω・cmである中抵抗領域で、抵抗値のばらつきや印加電圧による抵抗値の変動が小さく、安定した抵抗値が得られるエピクロロヒドリンゴム・アクリロニトリルブタジエンゴムが広く使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年ではカラー化、高画質化・高速化に対応するために、導電性ゴム部材は、感光体との当接においてより一様なニップ幅を保つことが要求され、低硬度で発泡セルが緻密かつ均一であることが望まれている。そのためセル分布や硬度ムラ、抵抗ムラを少なくする検討がなされている(例えば、参考文献2)。
【0004】
しかしながら、硬度ムラ、抵抗ムラの発生を抑制する方法としては、製法によるものが多く、加硫缶による加硫発泡において、研磨代を多くすることでムラを低減させたり、加硫缶に入れる蒸気の速度を調整してムラを低減させる方法が知られている。しかし、その分材料を多く使用し、また、加硫時間が長くなり、コストが高くなる問題がある。
【0005】
マイクロ波を用いた連続加硫においては、槽内温度・マイクロ波出力の調節による硬度ムラ、抵抗ムラを低減させる方法、装置内で回転させて硬度ムラ、抵抗ムラを低減させる方法が知られている。しかし、ゴム組成物の配合により硬度ムラ・抵抗ムラは変化するため、製法による改善には限度がある。また装置内で回転などを行う場合、装置が特殊仕様になるため、製造が困難で、かつコスト高につながる問題がある。このように、ゴム組成物の特性に着目して、硬度ムラ、抵抗ムラの発生を抑制する検討は殆ど報告がない。
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特開2006−058538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、ゴム組成物の特性を制御することにより、セル分布が均一で、硬度ムラ、抵抗ムラのない導電性スポンジゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る導電性スポンジゴムローラは、導電性軸体と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層を有する導電性スポンジゴムローラにおいて、前記導電性スポンジゴム層が、イオン導電性ゴム組成物を加硫・発泡することにより形成されたものであり、加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量が、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることを特徴とする。
【0008】
また、前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種類以上を含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記加硫・発泡は、マイクロ波発生装置(UHF)及び熱風加硫装置(HAV)によって連続的に行われることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、前記導電性スポンジゴムローラを、転写ローラとして備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る導電性スポンジゴムローラの製造方法は、導電性軸体と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層を有する導電性スポンジゴムローラの製造方法であって、加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量を0.1質量%以上、0.5質量%以下に調整する工程、前記水分量の調整されたイオン導電性ゴム組成物をチューブ状に押し出し成形し、加硫・発泡し、導電性スポンジゴム層を形成する工程、前記導電性スポンジゴム層の内径部に導電性軸体を圧入する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、前記イオン導電性ゴム組成物の水分量を調整する工程は、イオン導電性ゴム組成物のゴム成分と他の成分とを混練する際に、150℃以上、170℃以下で混練することを特徴とする。
【0013】
また、前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0014】
また、前記加硫・発泡は、マイクロ波発生装置(UHF)及び熱風加硫装置(HAV)によって連続的に行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム組成物の特性を制御することにより、セル分布が均一で、硬度ムラ、抵抗ムラのない導電性スポンジゴムローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明の導電性スポンジゴムローラは、導電性軸体と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層を有する導電性スポンジゴムローラにおいて、前記導電性スポンジゴム層が、イオン導電性ゴム組成物を加硫・発泡することにより形成されたものであり、加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量が、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
[導電性スポンジゴムローラ]
図1を用いて本発明に係る導電性スポンジゴムローラを説明する。本発明に係る導電性ゴムローラ6は、導電性軸体61の外周上に、導電性スポンジゴム層62を有する。導電性ゴムローラ6は、必要に応じて導電性スポンジゴム層62の外周上に、さらにゴム・樹脂等の層を設けることで、二層以上の構造を有する導電性スポンジゴムローラとすることもできる。
【0019】
[導電性芯材]
本発明に係る導電性スポンジゴムローラにおける導電性軸体としては、少なくとも表面が導電性であれば、通常のローラにおいて用いるものを支障なく使用することができる。例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプ等が使用可能であり、表面をニッケル等でメッキしたものも使用できる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。
【0020】
導電性軸体の外径は、使用目的により適宜決定することができる。例えば、導電性スポンジゴムローラを転写ローラとして用いる場合、表面にニッケルメッキを施した鉄からなる導電性軸体を用いることができ、その外径は、2mm以上、12mm以下が好ましく、4mm以上、8mm以下がより好ましい。
【0021】
[導電性スポンジゴム層]
本発明に係る導電性スポンジゴムローラは、導電性スポンジゴム層が、イオン導電性ゴム組成物を加硫・発泡することにより形成されたものである。
【0022】
(イオン導電性ゴム組成物)
前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分は、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0023】
前記エピクロロヒドリンゴムとしては、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体が好ましい。エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体は、エチレンオキサイド含量が40モル%以上であることが好ましく、48モル%以上であることがより好ましい。また、75モル%以下であることが好ましい。このエチレンオキサイド含量は、ポリマー組成中のエチレンオキサイド含量が前記範囲を満たすものの他、エチレンオキサイド含量の違う複数のエピクロロヒドリンゴムをブレンドすることによって調節されたものでもよい。
【0024】
エピクロロヒドリンゴムの水分量は、エチレンオキサイド含量が大きくなるに従って多くなる。また、エピクロロヒドリンゴムの電気抵抗は、エチレンオキサイド含量が大きくなるに従って低抵抗になる。前記エピクロロヒドリンゴムのエチレンオキサイド含量が75モル%をこえる場合には、エチレンオキサイドが水分を過剰に吸収するため、発泡ムラ・硬度ムラになりやすく、また結晶性が増大することにより電気伝導が阻害され、体積固有抵抗値も増加する。また、環境依存性が高くなり易い。
【0025】
前記エチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の三元共重合体は、共重合比率が、A+B<90モル%であり、かつB+C<20モル%を満たすものが好ましい。A+Bが90モル%以上であると、水分を多く吸収するため、発泡ムラ・硬度ムラになりやすく、また結晶性が増大することにより電気伝導が阻害され、体積固有抵抗値が増加する。また、この比率の増大に相対してアリルグリシジルエーテル(C)が減少するため、アリルグリシジルエーテル(C)に由来する架橋サイトが不十分になり架橋による3次元構造が形成され難くなる。これにより、部材表面にブリードし、被帯電部材を汚染する場合がある。また、B+Cが20モル%以上であると、電気伝導に寄与する構成単位であるエチレンオキサイド(A)が相対的に減少するため、体積固有抵抗値が増加する場合がある。
【0026】
前記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含量が20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。また、10質量%以上であることが好ましい。アクリロニトリル含量が20質量%よりも多い場合、環境依存性が高くなる場合がある。また、10質量%に満たない場合は、アクリロニトリルブタジエンゴムの抵抗が高くなり易い。
【0027】
前記イオン導電性ゴム組成物は、前記ゴム成分以外にも、必要に応じて、一般のゴムに使用されるその他の成分を含有してもよい。例えば、硫黄や有機含硫黄化合物等の加硫剤、加硫促進剤、発泡剤、滑剤やサブ等の加工助剤、老化防止剤、酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンブラック等の充填剤等を必要に応じて配合可能である。
【0028】
ただし、本発明においては、酸化カルシウムのような水分を吸収する添加剤を含有することはできない。酸化カルシウムはゴム中の水分を除去することで知られている。しかし、本発明においてイオン導電性ゴム組成物に配合すると、水分量を減らすことは可能であるが、導電性スポンジゴムローラにした際、イオン導電性が低下し、抵抗ムラが大きくなり、経時で抵抗値が変化するなどの問題がある。
【0029】
[導電性スポンジゴムローラの製造方法]
本発明に係る導電性スポンジゴムローラの製造方法としては、まず、前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分と、加硫剤、加硫促進剤及び発泡剤以外の他の添加剤とを混練する。混練は、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機を用いて行うことができる。その後、加硫剤、加硫促進剤及び発泡剤を添加してオープンロールでさらに混練する。これにより、加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物(以下、未加硫ゴム組成物と示す)を得ることができる。
【0030】
(水分量)
本発明に係る導電性スポンジゴムローラにおいては、未加硫ゴム組成物の水分量は0.1質量%以上、0.5質量%以下とする。
【0031】
未加硫ゴム組成物の水分量が0.1質量%未満であると、イオン導電性が小さく、導電性スポンジゴムローラにした際、抵抗値が高くなる。また、加硫が遅くなり加硫時間を短縮するのが困難となる。一方、水分量が0.5質量%を超えると、加硫・発泡させる際、水分が蒸発してしまい発泡状態にムラが生じ、硬度ムラ・抵抗ムラが発生する。また加硫速度が速くなり、ヤケの発生や生産性の低下につながる。
【0032】
イオン導電性ゴムは、空気中の水分を利用して電気を流すゴムであり、水分量により電気特性が大きく変わる。一般的に水分量が多いほど抵抗値が低く、少ないと抵抗値が高くなる。このため、低い抵抗値を得るために水分量が多いゴムを使用する必要があるが、ゴムは熱を加え加硫するため水分がその熱で蒸発し、発泡ムラの原因となる。好ましい水分量は、0.1質量%以上、0.4質量%以下である。
【0033】
(水分量の調整)
水分量を前記範囲内に調整する方法として、イオン導電性ゴム組成物のゴム成分と、加硫剤、加硫促進剤及び発泡剤以外の他の添加剤とを混練する際、150℃以上、170℃以下で混練することが好ましい。
【0034】
イオン導電性ゴムは水分を多く含んでいるため、混練する温度を調整することでその水分量を調整することができる。150℃未満で混練すると水分が蒸発しないままイオン導電性ゴム組成物中に残る場合がある。また、充填剤の分散不良につながる。一方、170℃をこえる高温で混練すると、水分は除去できるがポリマー主鎖の切断等によりポリマーの劣化を促進する場合がある。
【0035】
また、イオン導電性ゴムは、混練した後も水分を吸収する性質がある。導電性スポンジゴム層の製造方法としては、イオン導電性ゴム組成物の混練後直ぐに加硫・発泡すると、イオン導電性ゴム組成物中に加硫剤、発泡剤が均一に分散しておらず、発泡ムラを起こす。そのためエージングが必要であるが、高湿の環境でエージングすると、水分を多く吸収するため、低湿度環境で保存することが好ましい。また保存において材料同士の張り付きを防ぐため、通常防着液をつけて保存するが、本発明においては水分を吸収する可能性があるため防着液は付けず保存することが好ましい。
【0036】
なお、水分量の測定は、加硫剤、加硫促進剤及び発泡剤を添加してオープンロールで混練する前のイオン導電性ゴム組成物(未加硫ゴム組成物)に対して行う。発泡剤の添加前に水分量を測定するのは、発泡剤の種類によっては、熱分解により水分が発生する場合があるためである。水分量の測定は、水分測定装置を用い、カールフィッシャー法で測定する。
【0037】
(加硫・発泡工程)
前記未加硫ゴム組成物を、コニカルフィーダー等によりリボン状に成形し、該リボン状に成形された未加硫ゴム組成物を押出機に投入し、チューブ状に成形する。続いて、マイクロ波を用いた連続加硫装置により、チューブ状に成形された未加硫ゴム組成物(以下、ゴムチューブと示す場合あり)の加硫・発泡を行う。
【0038】
一般的に、押出機にゴム組成物を連続的に投入する方法としては、リボン状に成型したゴム同士が張付かないように、防着液をつける。しかし、本発明においては、混練した未加硫ゴム組成物は押出機に投入する際、防着液等の槽を通さず、コニカルフィーダー等によりリボン状に成形する。防着液につけると、未加硫ゴム組成物の水分量が増加し、発泡ムラ・硬度ムラ、抵抗ムラが発生するためである。
【0039】
本発明に係る導電性スポンジゴムローラは、マイクロ波発生装置(UHF)と熱風加硫装置(HAV)によって連続的に加硫・発泡して製造する。加硫・発泡を連続して行うことで、低コストでバラツキの少ない導電性スポンジゴムローラを得ることができる。
【0040】
図3に、前記加硫・発泡工程で用いることのできるマイクロ波を用いた連続加硫装置の一例を示す。図3に示す装置は、全長13mからなり、押出機11、マイクロ波加硫装置(UHF)12、熱風加硫装置(以下、HAVとする)13、引取機14、定尺切断機15から構成される。
【0041】
図3に示す装置において、UHF12、HAV13、引取機14の長さは、順に、4m、6m、1mである。UHF12とHAV13との間隔、及びHAV13と引取機14との間隔は、0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0042】
UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行う。UHF12とHAV13との間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。
【0043】
図3に示すマイクロ波を用いた連続加硫装置による加硫・発泡工程としては、例えば、押出機11よりチューブ状に押出成形されたゴムチューブを、押出機11より押し出された直後に炉内雰囲気温度220℃に設定したUHF12内に搬送する。UHF12内で該ゴムチューブに2450±50MHzのマイクロ波を照射し、該ゴムチューブを加熱して加硫・発泡し、続いて、HAV13に搬送し、熱風処理することにより加硫・発泡を完了する。
【0044】
前記加硫・発泡工程において、UHF12内で照射するマイクロ波は2450±50MHzが好ましく、この周波数の範囲内のマイクロ波を照射することにより、該ゴムチューブに対し、照射ムラが少なく、効率良い照射が可能である。UHF12炉内での熱風の温度は150℃〜250℃が好ましく、180℃〜230℃がより好ましい。また、HAV13内での熱風の温度は、180℃〜230℃が好ましい。
【0045】
ゴムチューブを加硫・発泡後、引取機14により引き取り、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性スポンジゴム成形物を作製する。次いで、φ4〜10mmの前記導電性軸体を前記チューブ状の導電性スポンジゴム成形物の内径部に圧入し、所定の外径になるまで研磨することにより、導電性スポンジゴムローラが得られる。
【0046】
(画像形成装置)
次に、本発明に係る導電性スポンジゴムローラを転写ローラとして画像形成装置に利用した一例を、図面を用いて説明する。
【0047】
図2に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザープリンタであり、図2はその概略構成を示す縦断面図である。また、図2に示す画像形成装置には、本発明の導電性スポンジゴムローラを転写ローラとして有する転写手段が装着されている。
【0048】
図2に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0049】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザー光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー5が付着され、トナー像として反転現像される。
【0050】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアスの印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0051】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0052】
なお、図2では本発明の係る導電性スポンジゴムローラを転写ローラに用いた場合を示したが、転写ローラ以外にも、帯電ローラ、現像ローラ等にも用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0054】
(水分量の測定)
加硫剤、発泡剤を含有させる前のゴム組成物を、水分含有量測定用サンプルとして、水分測定装置(商品名:「AQ7」、平沼産業株式会社製)を用い、カールフィッシャー法で測定した。本発明で用いた発泡剤は熱分解により水を発生させるため、ゴム組成物の水分量を明確にするため、加硫剤、発泡剤は含有させないで測定した。
【0055】
(導電性スポンジゴムローラの電気抵抗及び周ムラ測定方法)
導電性スポンジゴムローラの抵抗値は、23℃/55%RH(N/N)の環境下で導電性ローラの軸体に片側4.9Nの荷重を両側に掛け、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し回転させた状態で軸体とアルミドラムとの間に1kVの電圧を印加して測定した。そのときの電流値の最大値と最小値の比を周ムラとした。周ムラは1.15以下が好ましい。
【0056】
(硬度ムラ測定)
JIS K 6253に準じ、作製した転写ローラにアスカーC硬度計を500g荷重で長手方向に任意の場所の硬度を周方向に90°毎4箇所測定し、その最大値と最小値の差を硬度ムラとした。硬度ムラは3以内が好ましい。
【0057】
各実施例、比較例に用いたゴム材料の配合割合及び試験結果は表1に示す通りである。なお、配合量の単位は質量部である。また、各実施例及び比較例で使用したゴム材料は、以下に示す通りである。
【0058】
[アクリロニトリルブタジエンゴム]
商品名:「NipolDN401LL」(結合アクリロニトリル量18質量%)、日本ゼオン(株)社製
[エピクロルヒドリン系ゴム]
商品名:「EPION 301」(エチレンオキサイド含量73モル%)、ダイソー(株)社製
商品名:「ゼオスパン8010」(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合比率=87:1:12)、日本ゼオン(株)社製
[加硫剤]
硫黄(S)(商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)社製)
[加硫促進剤]
ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)(商品名:「ノクセラーDM」、大内新興化学工業(株)社製)
テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)(商品名:「ノクセラーTET」、大内新興化学工業(株)社製)
[加硫促進助剤]
酸化亜鉛(商品名:「亜鉛華2種」、ハクスイテック(株)社製)
[助剤]
ステアリン酸(商品名:「ルナックS20」、花王株式会社製)
[充填剤]
カーボンブラック(商品名:「旭#35」、旭カーボン株式会社製)
[発泡剤]
p,p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)(商品名:「ネオセルボンN#1000S」、永和化成(株)社製)。
【0059】
(実施例1)
表1に示す配合量で、アクリロニトリルブタジエンゴム、酸化亜鉛、ステアリン酸及びカーボンブラックを、密閉式混練機を用いて160℃にて混練した。このとき、未加硫ゴム組成物の水分量は0.10%であった。
【0060】
その後、加硫剤、発泡剤を添加してオープンロールで混練し、コニカルフィーダーによりリボン状に成形し、該リボン状に成形された未加硫ゴム組成物を図3に示す押出機11に投入し、チューブ状に成形した。
【0061】
続いて、図3に示すマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置により、チューブ状に成形された未加硫ゴム組成物の加硫、発泡を行った。
【0062】
押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブを、図3に示すように、押出機11より押し出された直後に炉内雰囲気温度220℃に設定したUHF12内に搬送し、該ゴムチューブに2450MHzのマイクロ波を照射した。続いて、HAV13に搬送して加硫、発泡を完了させた。本実施例における加硫、発泡後のゴムチューブの硬度は、15°〜40°の範囲内であった。
【0063】
加硫、発泡後のゴムチューブを引取機14により引き取った後、定尺切断機15により長さ240mmに切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作製した。
【0064】
なお、UHF12、HAV13、引取機14の長さは、順に、4m、6m、1mであった。UHF12とHAV13との間隔、HAV13と引取機14との間隔は、両者とも1m未満であった。また、UHF12はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルトにより、押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13は、PTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行った。UHF12とHAV13との間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結した。
【0065】
次いでφ6mmの導電性軸体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体を得た。この成形体を外径がφ16mmになるように研磨し、導電性スポンジゴムローラを作製した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
表1に示す原料、配合量を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。なお、防着液を付着する場合には、未加硫ゴム組成物をコニカルフィーダーによりリボン状に成形した後、防着液槽に浸けることにより行った。防着液には水95質量%、残りは脂肪酸石鹸・クレー等を含有したものを使用した。評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
比較例1〜3は未加硫ゴム組成物の水分量が0.5質量%をこえている例であり、抵抗ムラ、硬度ムラが大きかった。このことよりセルの分布が均一ではなく、発泡ムラが発生していることがわかる。
【0069】
以上説明したように、本発明が示すように未加硫ゴム組成物の水分量を規定することにより、セル分布が均一で、硬度ムラ、抵抗ムラのない導電性スポンジゴムローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の導電性スポンジゴムローラの概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の全体断面図である。
【図3】本発明の導電性スポンジゴムローラのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置である。
【符号の説明】
【0071】
1 電子写真感光体(感光ドラム)
2 帯電ローラ
3 レーザー光
4 現像装置
5 トナー
6 導電性スポンジゴムローラ(転写ローラ)
7 転写材
8 クリーニングブレード
9 クリーニング装置
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
61 導電性軸体
62 導電性スポンジゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層を有する導電性スポンジゴムローラにおいて、
前記導電性スポンジゴム層が、イオン導電性ゴム組成物を加硫・発泡することにより形成されたものであり、
加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量が、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることを特徴とする導電性スポンジゴムローラ。
【請求項2】
前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラ。
【請求項3】
前記加硫・発泡は、マイクロ波発生装置(UHF)及び熱風加硫装置(HAV)によって連続的に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性スポンジゴムローラ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性スポンジゴムローラを、転写ローラとして備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
導電性軸体と、該導電性軸体の上に導電性スポンジゴム層を有する導電性スポンジゴムローラの製造方法であって、
加硫・発泡前のイオン導電性ゴム組成物の水分量を0.1質量%以上、0.5質量%以下に調整する工程、
前記水分量の調整されたイオン導電性ゴム組成物をチューブ状に押し出し成形し、加硫・発泡し、導電性スポンジゴム層を形成する工程、
前記導電性スポンジゴム層の内径部に導電性軸体を圧入する工程、
とを有する製造方法。
【請求項6】
前記イオン導電性ゴム組成物の水分量を調整する工程は、イオン導電性ゴム組成物のゴム成分と他の成分とを混練する際に、150℃以上、170℃以下で混練することを特徴とする請求項5に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項7】
前記イオン導電性ゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項8】
前記加硫・発泡は、マイクロ波発生装置(UHF)及び熱風加硫装置(HAV)によって連続的に行われることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−145920(P2010−145920A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325386(P2008−325386)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】