説明

導電性スポンジローラおよびその製造方法

【課題】 安定した電気抵抗と使用時の十分な回転トルクとを有する導電性スポンジゴムローラを低コストで製造するための導電性スポンジゴムローラの製造方法、および該製造方法によって得られる導電性スポンジゴムローラを提供する。
【解決手段】
加硫成型用金属芯の外周に未加硫の導電性ゴム部材を筒状に形成する成型工程と、該導電性ゴム部材を加熱して、加硫状態または半加硫状態の導電性スポンジゴム部材を形成する加硫工程と、該加硫成型用金属芯と該導電性スポンジゴム部材とを分離し、導電性スポンジゴム筒を得る分離工程と、金属製軸部材に加硫接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、該導電性スポンジゴム筒に該金属製軸部材を挿入する挿入工程と、該導電性スポンジゴム筒と該金属製軸部材とを加硫接着する接着工程と、を含む導電性スポンジゴムローラの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性スポンジゴム筒が金属製軸部材から剥離することを防止し、十分な回転トルクと安定した電気抵抗とが付与されることによって、鮮明な画像を得ることが可能な電子写真装置用の導電性スポンジゴムローラの製造方法、および該製造方法により得られる導電性スポンジゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、電子写真複写機、ファクシミリ装置等の電子写真装置における導電性機構においては、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ローラ、トナーを搬送させるためのトナー供給ローラ、トナーを感光体に付着させるための現像ローラ、およびトナー像を感光体から用紙に転写するための転写ローラ等の種々のローラ(ロールとも称する)が用いられている。このような導電性ローラは、一般的に円柱状の芯金としての金属製軸部材と該金属製軸部材の周囲に同心円状に積層された導電性ゴム層とから構成されており、用途に応じて、電気抵抗、該電気抵抗のばらつき、環境依存性、電圧依存性等の導電特性や、非汚染性、低硬度および寸法安定性等の種々の性能が要求されている。
【0003】
上記のような導電性ローラに導電性を付与する方法としては、カーボンブラック、金属酸化物等の導電付与剤をゴム中に練り込み、分散させることによってローラの電気抵抗を制御する方法が挙げられる。しかしこの方法では、導電付与剤の分散性のコントロールが困難である他、成形・加硫時のゴム流動によって導電付与剤の分散状態が変化することにより電気抵抗のばらつきが生じ、鮮明な画像を得にくいという問題がある。
【0004】
電気抵抗のばらつきを低減する方法としては、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体(エピクロルヒドリンゴム)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のポリマー自体が導電性を有する材料を用いる方法が提案されている。このような導電性の材料を用いた場合、導電付与剤を使用することなく所望の電気抵抗値を得ることができ、電気抵抗のばらつきも小さくすることができる。特に、耐オゾン性に優れたエピクロルヒドリンゴムの使用については種々の提案がなされている。
【0005】
導電性ローラが十分な電気特性を発揮するためには、ある程度ニップ幅を大きくする必要がある。ニップ幅を大きくするために、従来においては、導電性ローラ用のゴム組成物にジブチルフタレート(DBP)やジオクチルフタレート(DOP)等の軟化剤を用いる方法や、発泡剤を用いて発泡体とすることによって、ローラ用ゴム組成物の低硬度化を図る方法等が用いられている。該発泡体は、たとえば金型を用いた型内発泡や、押出し機による予備成形の後に加熱して加硫と発泡とを同時進行させる方法等により得ることができる。
【0006】
しかし、ローラ用ゴム組成物の低硬度化を行なうことにより、導電性ゴム層と金属製軸部材との間の回転トルクが発生し難くなり、十分な回転トルクを得るために導電性ゴム層と金属製軸部材とを接着する必要性が生じる。
【0007】
該接着の方法としては、たとえばホットメルト系の導電性接着剤を使用する例が提案されているが、ホットメルト系の接着においては金属製軸部材と接着剤との剥離が多く、十分な強度が得られないという問題がある。
【0008】
図2は、従来の導電性スポンジゴムローラの製造方法について例示する図である。図2に示す方法においては、まず、未加硫の導電性ゴム部材21を筒状に押出し成型し(図2(A))、目的に応じて所望の長さにカットし、未加硫の導電性カットゴム部材22とする(図2(B))。加硫接着剤23を塗布した金属製軸部材24を、該導電性カットゴム部材22に挿入し(図2(C))、さらに、該導電性カットゴム部材22と該金属製軸部材24とからなるローラ材料を上下対の金型25で挟み、加熱加圧成型により導電性カットゴム部材22の加硫、発泡を行なって導電性スポンジゴム筒とする(図2(D))。最後に、導電性スポンジゴム筒の表面を研磨等により適宜仕上げ処理し、金属製軸部材24に導電性スポンジゴム筒26が形成された導電性スポンジゴムローラ2を得る。
【0009】
たとえば特許文献1においては、図2に示すようような製造方法における加硫接着剤としてフェノール系導電性接着剤を用い、チューブ状に押出された未加硫の導電性ゴム部材を圧入し、金型内で加硫接着する方法が提案されている。しかし特許文献1の方法では治具として金型を使用するため、該金型によって金属製軸部材にキズや変形が与えられる危険性がある他、大量生産を行なう場合には多数の金型が必要となり、設備コストが高くなるという問題がある。さらに、金型を用いた加熱加圧接着における加熱温度、圧力等の条件管理が煩雑であるという問題も有する。
【特許文献1】特開平10−293440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の課題を解決し、導電性スポンジゴム筒と金属製軸部材との接着性が良好で、安定した電気抵抗と使用時の十分な回転トルクとを有し、鮮明な画像を得ることが可能な導電性スポンジゴムローラを低コストで効率良く製造するための導電性スポンジゴムローラの製造方法、および該製造方法によって得られる導電性スポンジゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、加硫成型用金属芯の外周に未加硫の導電性ゴム部材を筒状に形成する成型工程と、該導電性ゴム部材を加熱して、加硫状態または半加硫状態の導電性スポンジゴム部材を形成する加硫工程と、該加硫成型用金属芯と該導電性スポンジゴム部材とを分離し、導電性スポンジゴム筒を得る分離工程と、金属製軸部材に加硫接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、該導電性スポンジゴム筒に該金属製軸部材を挿入する挿入工程と、該導電性スポンジゴム筒と該金属製軸部材とを加硫接着する接着工程と、を含む導電性スポンジゴムローラの製造方法に関する。
【0012】
接着工程においては、導電性スポンジゴム筒の外表面が他の部材に接触しない状態で加硫接着が行なわれることが好ましい。
【0013】
また、接着工程においては、導電性スポンジゴム筒の外表面にかかる圧力が0.15MPa以下に制御された状態で加硫接着が行なわれることが好ましい。
【0014】
本発明においては、金属製軸部材における導電性スポンジゴム筒挿入部の外径(A)と導電性スポンジゴム筒の内径(B)との比(A)/(B)が1.02以上1.20以下に設定されることが好ましい。
【0015】
本発明の加硫工程においては、導電性ゴム部材は140℃〜170℃で10分間〜60分間加熱され、かつ、該導電性ゴム部材は加硫温度に到達するまで徐々に温度上昇されることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記の製造方法により得られる導電性スポンジゴムローラに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性スポンジゴム筒と金属製軸部材との接着性が改善されることにより十分な回転トルクが付与され、導電特性、寸法安定性等のローラ特性に優れ、長期にわたって鮮明な画像を得ることが可能な導電性スポンジゴムローラを得ることができる。さらに、本発明においては金型等の治具を使用せずに導電性スポンジゴム筒と金属製軸部材との加硫接着を行なうため、少ない工程数で製造効率良く導電性スポンジゴムローラを大量生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の導電性スポンジゴムローラは、加硫成型用金属芯の外周に未加硫の導電性ゴム部材を筒状に形成する成型工程と、該導電性ゴム部材を加熱して、加硫状態または半加硫状態の導電性スポンジゴム部材を形成する加硫工程と、該加硫成型用金属芯と該導電性スポンジゴム部材とを分離し、導電性スポンジゴム筒を得る分離工程と、金属製軸部材に加硫接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、該導電性スポンジゴム筒に該金属製軸部材を挿入する挿入工程と、該導電性スポンジゴム筒と該金属製軸部材とを加硫接着する接着工程とを含む。
【0019】
本発明の製造方法について以下に図に従って説明する。図1は、本発明の導電性スポンジゴムローラの製造方法について説明する図である。まず、成型工程においては、たとえば外径が3mm〜30mm程度の鉄製等の加硫成型用金属芯11の外周に、未加硫の導電性ゴム部材12を好ましくは押出し成型等により筒状に形成する(図1(A))。次に、加硫工程において、好ましくは蒸気加硫等により未加硫の導電性ゴム部材12を加熱し、加硫、発泡させ、加硫状態または半加硫状態の導電性スポンジゴム部材13とする(図1(B))。本発明においては、加硫成型用金属芯11を用いて導電性ゴム部材の加硫を行なうことにより、加硫後の導電性スポンジゴム部材13が内径寸法の安定した筒状ゴム部材として得られるという利点を有する。なお、上記で蒸気加硫、すなわち、加硫缶内において加圧水蒸気で導電性ゴム部材を直接加熱し加硫する方法を用いた場合、熱効率が良く、均質な導電性スポンジゴム部材を製造効率良く得られる点で好ましい。該導電性スポンジゴム部材13は、分離工程において加硫成型用金属芯11から抜き取られ、必要に応じて目的に応じた所望の長さにカットされて導電性スポンジゴム筒14とされる(図1(C))。
【0020】
導電性スポンジゴム筒14は、任意の加硫温度におけるレオメーター測定を行なった際の最大トルクに対して、50%以上のトルクを得られる時間以上の加硫を行なって成型されていることが好ましい。この場合、加硫が十分に進行していることとなり、金属製軸部材を導電性スポンジゴム筒に挿入する際の該導電性スポンジゴム筒の内径の拡大が生じ難く、導電性スポンジゴム筒は金属製軸部材に対して十分な抱き力を有するため、導電性スポンジゴムローラに十分な回転トルクが付与されるという利点を有する。具体的には、加硫工程において未加硫の導電性ゴム部材12を加硫して導電性スポンジゴム部材13を得る際の加熱温度を140℃〜170℃、加熱時間を10分間〜60分間に設定した場合、導電性スポンジゴム筒の品質安定性および製造効率の点で好ましい傾向がある。この場合、導電性ゴム部材が該加熱温度に到達するまで、該導電性ゴム部材の温度を徐々に上昇させることが好ましい。導電性ゴム部材の温度を加硫工程における加硫温度まで徐々に上昇させることにより、加硫および発泡が導電性ゴム部材の全体において均一に進行するという利点を有する。
【0021】
次に、接着剤塗布工程において加硫接着剤15を塗布した金属製軸部材16を、挿入工程において該導電性スポンジゴム筒14に挿入し、接着工程において、加熱により導電性スポンジゴム筒14と金属製軸部材とを加硫接着する(図1(D))。これにより、本発明の導電性スポンジゴムローラは金属製軸部材と導電性スポンジゴム筒との密着性に優れ、使用時に十分な回転トルクが得られる。導電性スポンジゴム部材13が加硫状態で与えられる場合には、接着工程においては導電性スポンジゴム筒との接着のみが行なわれるが、該導電性スポンジゴム部材13が半加硫状態で与えられる場合には、接着工程において、導電性スポンジゴム筒と金属製軸部材とを接着させると同時に導電性スポンジゴム筒をさらに加硫、発泡させることが好ましい。
【0022】
加硫工程において導電性スポンジゴム部材13を半加硫状態で与えるための具体的な手段としては、たとえば、導電性ゴム部材12の加硫、発泡を140℃〜160℃で3分間〜20分間加熱する方法等が採用され得る。
【0023】
接着工程における上記の加硫接着は、導電性スポンジゴム筒の外表面が他の部材に接触しない状態で行なわれることが好ましい。本発明においては、導電性スポンジゴム筒を得る前に、分離工程において導電性スポンジゴム部材と分離される加硫成型用金属芯11をダミー金属芯として使用する。これにより、得られる導電性スポンジゴム筒の内径は良好な寸法安定性を有するため、接着工程における加硫接着時に金型等を用いる必要がなく、製造コストの低減が可能となる。
【0024】
さらに、接着工程における上記の加硫接着は、導電性スポンジゴム筒の外表面にかかる圧力が0.3MPa、特に0.15MPa以下に制御された状態で行なわれることが好ましい。導電性スポンジゴム筒14がほぼ完全な加硫状態とされてから加硫接着される場合には、接着工程において導電性スポンジゴム筒14の外表面にかかる圧力はさして問題とならない。しかし、特に該導電性スポンジゴム筒14が半加硫状態で供給され、接着工程において、導電性スポンジゴム筒14と金属製軸部材16との接着と同時に該導電性スポンジゴム筒の加硫がさらに行なわれる場合には、外表面にかかる圧力により導電性スポンジゴム筒14が変形する場合がある。導電性スポンジゴム筒14の外表面にかかる圧力が0.3MPa以下、特に0.15MPa以下とされる場合、該圧力によって導電性スポンジゴム筒14が変形するおそれがほとんどないため好ましい。
【0025】
本発明における金属製軸部材16としては、たとえばS45C製の円柱状部材を用いることができる。ここで、該金属製軸部材16の導電性スポンジゴム筒14の挿入部の外径は該金属製軸部材16の長さ方向中央部の外径と等しく設定されても良いが、挿入工程において、該金属製軸部材16が導電性スポンジゴム筒14に容易に挿入されるようにする目的で、たとえば該挿入部の外径が該中央部の外径よりも小さく設定されていても良く、また、上記とは逆に、該挿入部の外径が該中央部の外径よりも大きく設定されていても良い。
【0026】
本発明の金属製軸部材16の外径は、長さ方向中央部においてたとえば3mm〜30mmとされることが好ましい。
【0027】
本発明においては、金属製軸部材16における導電性スポンジゴム筒挿入部の外径(A)と導電性スポンジゴム筒14の内径(B)との比(A)/(B)が1.02以上1.20以下に設定されることが好ましい。上記の比(A)/(B)が1.02以上であれば、導電性スポンジゴム筒14と金属製軸部材16との密着性が良好で、接着剤を介した該導電性スポンジゴム筒14と該金属製軸部材16との接着性に優れることにより十分な回転トルクが得られる点で好ましく、1.20以下であれば、金属製軸部材16に該導電性スポンジゴム筒14を比較的容易に挿入でき、また過度の伸張やオゾンアタックによる劣化が進行し難い点で好ましい。
【0028】
本発明の接着剤塗布工程において金属製軸部材16に塗布される加硫接着剤15としては、導電性加硫接着剤を用いることが好ましい。この場合導電性スポンジゴムローラの導電性が損なわれない。特にフェノール系導電性加硫接着剤等が好ましく用いられる。該加硫接着剤の塗布層の厚みは10〜30μmの範囲内に設定されることが好ましい。該塗布層の厚みが10μm以上であれば、導電性スポンジゴム筒14と金属製軸部材16との間に良好な接着性が付与され、30μm以下であれば製造コストが過度に上昇することがなく、また導電性にも悪影響を及ぼさない。
【0029】
接着工程における加硫接着は、たとえば導電性スポンジゴム部材13がほぼ完全な加硫状態で与えられる場合には、加熱温度120℃〜170℃、加熱時間10分間〜120分間にて行なわれることが好ましい。一方、導電性スポンジゴム部材13が半加硫状態で与えられる場合には、上記加硫接着は、たとえば加熱温度140℃〜170℃、加熱時間30分間〜120分間の条件にて行なわれることが好ましい。
【0030】
最後に、導電性スポンジゴム筒14の表面に対して研磨等による仕上げ処理を行ない、さらに、用途によって必要とされる場合には、たとえばイソシアネート処理等により被覆層を厚み1μm〜50μm程度に形成し、金属製軸部材16に導電性スポンジゴム筒14が接着された本発明の導電性スポンジゴムローラ1を完成させる。
【0031】
本発明において導電性スポンジゴム筒14に使用されるポリマー原料としては、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリルニトリルブタジエンゴム)、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの共重合モル比率が10〜65モル%/30〜90モル%/0.5〜10モル%とされるエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等のジエン成分を有する高分子材料やこれらの混合物を用いることができ、特に、NBRおよび/またはエピクロルヒドリンゴムを含む導電性ゴム材料が好ましく用いられる。
【0032】
本発明における導電性スポンジゴム筒14は、上記から選択されるポリマー原料に、導電性物質、発泡剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合成分を添加した未加硫の導電性ゴム組成物からなる導電性ゴム部材12を加熱加硫および発泡させることにより得ることができる。
【0033】
導電性物質としては、導電性カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体等の金属酸化物、銀等の金属粉、イオン導電性を有する導電剤等が挙げられ、ポリマー原料100質量部に対して0.5〜200質量部が添加され得る。導電性物質の添加量が0.5質量部以上であれば本発明の導電性スポンジゴムローラが十分な導電性を有し、200質量部以下であれば導電性スポンジゴム筒14の物理的強度を損ねたり、製造工程における加工性を悪化させたりする危険性が少ない。
【0034】
発泡剤としては、有機発泡剤としてA.D.C.A(アゾジカルボンアミド)系、D.P.T(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)系、T.S.H(P−トルエンスルホニルヒドラジド)系、O.B.S.H(オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)系等が挙げられ、無機発泡剤として炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの発泡剤は単独または2種以上の混合物で用いることができる。発泡剤の添加量は、ポリマー原料100質量部に対して1〜20質量部とすることが好ましい。発泡剤の添加量が1質量部以上であれば、十分な発泡量を有する導電性スポンジゴム筒14を得ることができ、20質量部以下であれば、過剰な発泡によって導電性スポンジゴム筒14の物理的強度を損ねる危険性が少ない。
【0035】
加硫剤としては、硫黄、硫黄系加硫剤、金属酸化物、有機過酸化物等が挙げられ、ポリマー原料100質量部に対して0.5〜10質量部を添加することが好ましい。また加硫促進剤としては、チアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系等が挙げられる。
【0036】
本発明のポリマー原料には、その他公知の無機充填剤、プロセスオイル等の添加剤が適宜配合され得る。
【0037】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(導電性スポンジゴムローラの製造)
<実施例1>
ポリマー原料として、日本ゼオン(株)製「DN401」の80質量部、および日本ゼオン(株)製「3106」の20質量部を用い、該ポリマー原料の合計100質量部に対し、導電性物質、発泡剤として永和化成工業(株)製「ネオセルボン♯1000S」(OBSH)、加硫剤として硫黄を1.5質量部、加硫促進剤として「ノクセラーDM」を1質量部、無機充填剤として炭酸カルシウムを20質量部、カーボンブラックを10質量部、プロセスオイルを10質量部添加したスポンジゴム材料を調製した。これを用い、図1に示す工程に従って導電性スポンジゴムローラを製造した。まず、該スポンジゴム材料を混練して未加硫の導電性ゴム部材12とし、直径7.5mmの鉄製の加硫成型用金属芯11の外周に厚み15mmで押出し成型した(成型工程)。これを160℃で20分間、加熱蒸気加硫法により加硫、発泡させた(加硫工程)。得られた導電性スポンジゴム部材13を加硫成形用金属芯11から抜き取り(分離工程)、長さ240mmにカットし、導電性スポンジゴム筒14を得た。導電性スポンジゴム筒14の内径は7.35mmであった。次に、加硫接着剤15としてメタロック「N−33」を厚み20μmで塗布した直径8mmの金属製軸部材16を形成し(接着剤塗布工程)、該金属製軸部材16を該導電性スポンジゴム筒14の中空部に挿入し(挿入工程)、160℃で30分間加熱し、導電性スポンジゴム筒14と金属製軸部材16とを接着した(接着工程)。最後に、導電性スポンジゴム筒14の表面をNC研磨機により研磨し、本発明の導電性スポンジゴムローラを得た。
【0039】
<比較例1>
加硫成型用金属芯の直径を8.05mmとし、導電性スポンジゴム筒の内径を7.89mmとした他は実施例1と同様の方法で、導電性スポンジゴムローラを得た。
【0040】
<比較例2>
加硫成型用金属芯の直径を6.7mmとし、導電性スポンジゴム筒の内径を6.56mmとした他は実施例1と同様の方法で、導電性スポンジゴムローラを得た。
【0041】
<比較例3>
加硫接着剤15に代えて、飽和共重合ポリエステル系ホットメルト接着剤を厚み20μmで塗布し、170℃で10分間加熱接着を行なった他は実施例1と同様の方法で、導電性スポンジゴムローラを得た。
【0042】
(接着性評価)
図3は、実施例および比較例における接着性評価の方法について説明する図である。上記で得られた導電性スポンジゴムローラを用い、金属製軸部材31と導電性スポンジゴム筒32との接着性を評価した。まず、導電性スポンジゴム筒32の端面から、ローラの軸方向に長さW1が約10cmの切れ目33を平行に2本入れた。切れ目33の間隔W2は約5cmとした。治具を用いて切れ目の端面を掴み、矢印に示す方向、すなわちローラ表面に対して斜め上45℃の方向に向かって、約4.9Nで、2cm/秒の速さで引っ張り、金属製軸部材31から導電性スポンジゴム筒32が剥離するか否かを評価した。結果を表1に示す。
【0043】
実施例1および比較例2においては剥離が生じなかった一方、比較例1および比較例3においては剥離が生じた。比較例1においては、金属製軸部材における導電性スポンジゴム筒の挿入部の外径(A)と導電性スポンジゴム筒の内径(B)との比(A)/(B)が1.014と低い値であるため、金属製軸部材と導電性スポンジゴム筒との接着不良が生じたものと考えられる。また、比較例3においては、ホットメルト接着剤を用いているために金属製軸部材とホットメルト接着剤との間の十分な接着性が得られなかったものと考えられる。
【0044】
(耐オゾンクラック性評価)
上記で得られた導電性スポンジゴムローラを用い、5ppmのオゾン存在下、40℃で72時間のオゾン暴露試験を行ない、導電性スポンジゴム筒にクラックが発生するか否か調べた。結果を表1に示す。実施例1、比較例1および比較例3においてはクラックが発生しなかったが、比較例2においてクラックが発生した。比較例2においては、金属製軸部材における導電性スポンジゴム筒の挿入部の外径(A)と導電性スポンジゴム筒の内径(B)との比(A)/(B)が1.220と高い値であるため、導電性スポンジゴム筒への金属製軸部材の挿入が困難であり、導電性スポンジゴム筒の過度の伸張によりオゾンクラックが発生したものと考えられる。
【0045】
【表1】

【0046】
上記の結果から、本発明による実施例1の導電性スポンジゴムローラにおいては、金属製軸部材と導電性スポンジゴム筒との接着性が良好であることが分かる。このような導電性スポンジゴムローラは使用時の回転トルクが十分に大きいため、優れたローラ特性を示すとともに耐久性にも優れ、長期にわたって鮮明な画像を得ることが可能である。
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、導電特性、寸法安定性等のローラ特性に優れ、長期にわたって鮮明な画像を得ることが可能な導電性スポンジゴムローラを、少ない工程数で製造効率良く大量生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の導電性スポンジゴムローラの製造方法について説明する図である。
【図2】従来の導電性スポンジゴムローラの製造方法について例示する図である。
【図3】実施例および比較例における接着性評価の方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1,2 導電性スポンジゴムローラ、11 加硫成型用金属芯、12,21 導電性ゴム部材、13 導電性スポンジゴム部材、14,26,32 導電性スポンジゴム筒、15,23 加硫接着剤、16,24,31 金属製軸部材、22 導電性カットゴム部材、25 金型、33 切れ目、W1 長さ、W2 間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫成型用金属芯の外周に未加硫の導電性ゴム部材を筒状に形成する成型工程と、
前記導電性ゴム部材を加熱して、加硫状態または半加硫状態の導電性スポンジゴム部材を形成する加硫工程と、
前記加硫成型用金属芯と前記導電性スポンジゴム部材とを分離し、導電性スポンジゴム筒を得る分離工程と、
金属製軸部材に加硫接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記導電性スポンジゴム筒に前記金属製軸部材を挿入する挿入工程と、
前記導電性スポンジゴム筒と前記金属製軸部材とを加硫接着する接着工程と、
を含む、導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記接着工程において、前記導電性スポンジゴム筒の外表面が他の部材に接触しない状態で前記加硫接着が行なわれる、請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記接着工程において、前記導電性スポンジゴム筒の外表面にかかる圧力が0.15MPa以下に制御された状態で前記加硫接着が行なわれる、請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記金属製軸部材における導電性スポンジゴム筒挿入部の外径(A)と前記導電性スポンジゴム筒の内径(B)との比(A)/(B)が1.02以上1.20以下に設定される、請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記加硫工程において、前記導電性ゴム部材は140℃〜170℃で10分間〜60分間加熱され、かつ、前記導電性ゴム部材は加硫温度に到達するまで徐々に温度上昇される、請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる導電性スポンジゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−171418(P2006−171418A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364407(P2004−364407)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】