説明

導電性トラックを設けた透明基板

【課題】導電性ペーストをスクリーン印刷することによって透明基板上に導電性トラックを形成するための方法、および前記トラックを設けられた透明基板を提供する。
【解決手段】0.3mmを超えない長さを有するトラック導体を、スクリーン印刷条件下での剪断応力での粘度に対する非剪断応力下の粘度の比率が少なくとも50の値を有し、かつ35%よりも高い銀含有量を有してペーストを形成する粒子の少なくとも98%が25μmよりも小さいサイズを有するチキソトロピーの導電性ペーストを1cm当たり少なくとも90本の糸を有してそのコーティングには最小サイズが0.25mm±0.05mmに等しいミゾが設けられたスクリーンを使用してスクリーン印刷で塗布すること、および前記トラックを焼成することによって形成することから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって透明基板上に導電性のトラックを作製する方法、および前記トラックを設けられた透明基板に関する。
【背景技術】
【0002】
既に数年間について、透明基板、特にグレージングパネルを加熱素子、あるいはアンテナ素子やアラーム素子としてはたらき得る導電性のトラックに備えつけることが知られてきた。
【0003】
これらのトラックは概して、金属の銀粒子を含むペーストを使用するスクリーン印刷法によって得られる。欧州特許出願EP−A−0712814号から、このペーストは高い銀含有量、すなわち固体材料の重量で60から90%を有することが知られている。さらに、欧州特許出願EP−A−0079854号は、スクリーン印刷によってガラスの上に堆積することが可能であって、1μmよりも小さいサイズで重量比45から90%の金属銀粒子を含むペーストを記載している。
【0004】
導電性のトラックはスクリーン印刷以外の方法で得ることもまた可能であり、例えば幅の狭い配線を形成するためにガラス上に直接的に熱硬化性の導電性ペーストを押し出すことで得られる(独国特許出願DE−A−1796310号参照)。
【0005】
焼成(この焼成は概して成形および/または強化の目的でグレージングパネルを処理するのと同じ時に実行される)の後に得られる導電性のトラックは充分な機械的強度を有する。結果として、汚染の危険性を伴なうので実施するのがやっかいな、追加の亜鉛メッキのステップは回避される。
【0006】
導電性のトラックを有するグレージングパネルは自動車分野で極めて広く普及している。最も頻繁に、これらのトラックは加熱用トラックとして特に後部ウィンドウに使用されるが、それらはまたアラームおよび/またはアンテナ機能を供給するためにグレージングパネルに設置されることもあり得る。前述した文書はこうして作製される導電性トラックの幅に関して表記していない。実際のところ、導電性トラックは工業的には従来のスクリーン印刷によって形成され、焼成の後、それらは0.4から1.2mmの間の幅および公称加熱電力と問題の単位面積当たりのオーミック抵抗によって変わる厚みを有する。
【0007】
これらのトラックによって供給される有益な機能が理由で、全く同じグレージングパネル上のトラックの数は多年にわたって増加傾向にあり、それは全体的なサイズと視認性の問題を提起しかねない。したがって、トラックがグレージングパネルの視野に配置されると、それらは内側から明らかに視認され、それが運転者を悩ませる可能性があり、二次的には外側から見えてそれが車両の美観に有害となる。
【0008】
さらに、ガラス上に多様なパターンを形成するためにスクリーン印刷のステンシルを使用することが既に知られている(独国特許出願DE−A−3231382号および独国特許出願DE−A−3506891号参照)。したがって、例えば加熱グレージングパネルの電流のバー状母線を形成するために、ガラスの一定の場所に単一のステップで(多数回の印刷をせずに)より厚くおよび/またはより幅のある層でペーストを塗布することもまた可能である。この方式で、グレージング処理された表面全体にわたる温度ができる限りうまく調節されることが可能であり、450ワットまで達する加熱電力についての標準的な周囲温度条件下でこの温度がバー状母線の領域で50℃を超えることはない。前述の特許出願に表わされた実施例は通常的に自動車に使用される約11から14ボルトの直流電圧で作成される。
【0009】
導電性トラックが数マイクロメートルの直径の微細なタングステンワイヤで構成される加熱グレージングパネルおよびアンテナを備えたグレージングパネルもまた知られている。これらのワイヤはラミネート処理されたグレージングパネル上に存在するだけであり、それらは接着剤の中に埋め込まれて中間シートを形成するが、なぜならそうしないとそれらを安全に直接的にガラス上に固定することができないからである。それらはより微細であるので、したがってこれらのワイヤはスクリーン印刷によって得られる導電性トラックよりも視認されにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0712814号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0079854号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第1796310号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3231382号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3506891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
裸眼で殆ど視認されない導電性のトラックを設けられた強化ないしラミネート処理された安全ガラスで出来ている入手可能なグレージングパネルを有することが、自動車製造業者によって、特に高級な車両のために要求される。
【0012】
本発明の目的は、知られているトラックよりも幅の狭いものでありながらそれらに割り当てられる導電性機能を満足させることのできる導電性トラックを透明基板上に形成することである。
【0013】
この目的は、スクリーン印刷によって導電性のペーストを塗布して所定のパターンを形成することで透明基板の表面に導電性のトラックを形成すること、および前記トラックを焼成にかけることで構成される本発明の方法によって達成され、前記方法は35%以上の銀含有量を有してペーストを形成する粒子の少なくとも98%が25μmよりも小さいサイズを有するチキソトロピーのペーストが使用されることで特徴付けられ、スクリーンは1cmあたり少なくとも90本の糸を有し、印刷される最も幅の狭い個々の導電性トラックの幅は0.3mm以下である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
要求される幅を有する導電性トラックを得るために、本発明による方法のすべての要素を注意深く制御することが重要であることが立証された。この関連で、ペーストの性質、特にそのチキソトロピーおよびそれを形成する粒子のサイズに対して、およびスクリーンパラメータ、特にメッシュサイズ、コーティングの厚さおよびスクリーン印刷で印刷されるトラックの幅に直接的に対応する前記コーティングに設けられることになる開口の幅(このケースではミゾ)に対して極めて特別の注意が払われるべきである。本発明の長所によって、裸眼では殆ど見えない特に微細なトラックの所定のパターンと合わされたグレージングパネルを工業規模で量産することが可能である。
【0015】
メッシュの開口およびグレージングパネルの表面上の前記パターンを印刷するためにスクリーンのコーティングに供給される開口またはミゾのサイズもやはり前記トラックの幅に直接的な影響を有する。ミゾのサイズが得られたトラックの幅に実質的に対応するとすれば、それ自体が比較的薄い前記コーティングに極めて狭いミゾ(一般則として約0.25mm±0.05)を形成することが必要である。それにもかかわらず、これらのミゾの1つの幅がスクリーンの単一メッシュ以上に広がるかもしれない。
【0016】
しかしながら、よりチキソトロピーでないペースト、より粗いスクリーン(例えば1cm当たり約70本の糸で構成)、比較的厚いスクリーンコーティングなどを使用する他の方法によって幅の狭いトラックを作製する別の可能性があることは除外できない。
【0017】
殆ど検出できない前記トラックの細さにもかかわらず、通常のスクリーン印刷をされた加熱トラックまたは領域の加熱電力と匹敵する加熱電力が得られる。それにもかかわらず、トラックの厚みは、増加はするが受容可能な限度内に保たれる。従来のトラックの厚さは約12μmであるけれども、ここに述べる方法を使用して得られるトラックはこうして、焼成後に測定して約35μm、さらに一般的には約15から25μmの最大厚さをガラス表面上で有する。このさらに大きな最大厚さは、なかでも、ガラス上に印刷後に極めて迅速にその初期の粘度を回復する能力を有する、本発明によって使用される高度にチキソトロピーのペーストの長所によって得ることが可能である。
【0018】
本発明による方法の長所によって、少なくとも35重量%の銀を含み、高い剪断速度に関して優れた流動特性を有してかつ極めて小さい粒子を含むチオキソトロピーペーストを、メッシュの開口が小さくなるように配列されたそれ自体知られている材料の糸から成る特に微細なスクリーンによって塗布、印刷することで個々の導電性トラックの幅または寸法を有意に低減することがそれゆえに可能である。
【0019】
スクリーン印刷による塗布の目的のためにペーストのチオキソトロピー性質に付属する重要性は明細に記述されるべきである。塗布の間に、ペーストがうける剪断応力は粘度のかなりのそして急激な低下を引き起こし、粘度の低下はペーストがスクリーンのオリフィスを通過して基板上に堆積し、それによりトラックのパターンを形成することを可能にする。この目的に適したペーストは剪断応力下(スクリーン印刷条件下)での粘度に対する剪断のない場合の粘度(初期粘度)の比率によって定義され、それは50から1000またはそれ以上、例えば1300〜1500までにさえ変わる。比較するなら、普通のスクリーン印刷用ペーストについてこの比率は2から10の間である。
【0020】
基板への堆積の後、極めて短い時間(回復時間)でペーストが初期値にできるだけ近い粘度値を回復するだけでなくこの値をずっと続けて安定に保つこともまた大切である。この方式で、ペーストの塑性流動に関係し、堆積されるペーストの厚さが大きくなると、より大きくなる欠点、特に印刷されたトラックの幅の増加と厚みの減少が回避される。概して、その回復時間が1秒よりも少ない、好ましくは1秒の数十分の1程度であるペーストが選択されるべきである。
【0021】
あまりチキソトロピーでないかまたはさらに粗い粒子を含むペーストでは、ペーストがスクリーンの狭い開口を通過できないので示した幅を有する導電性トラックを得ることはできない。さらに、スクリーンを外した直後にトラックが安定なままであるのを可能にするには回復時間(または剪断下で事実上流体の状態と通常状態での実質的に固体の状態との間の遷移時間)が長過ぎるペーストで幅の狭い導電性トラックを作製することを想像するのも不可能である。
【0022】
ペーストの銀含有量が50%よりも多いと、公称許容可能電力で温度を上昇させることなく、幅が0.25mmよりも小さいトラックを加熱トラックとして使用することができる。銀含有量がさらに低い、例えば35%程度のトラックはむしろアラームおよび/またはアンテナとして使用される。
【0023】
極めて小さいサイズの粒子から成るチキソトロピーペーストと微細メッシュを備えたスクリーンの組み合わせ使用は優れた解像度をもつ導電性トラックの印刷を可能にする。さらに、チキソトロピーペーストの銀含有量を増すことによってトラックの最終的な厚みを低減することが可能である。
【0024】
本発明は銀を主原料とするペーストについて特に適しているが、銅や金の粒子のような要求される導電性基準に合致することのできる金属粒子を含むペーストに広げることも可能である。
【0025】
本発明の方法によって得られるグレージングパネルは、より幅の狭いトラックを設けられるけれども、従来のスクリーン印刷で得られるトラックと合ったグレージングパネルのそれと匹敵する導電特性を有し、その他すべてのもの(トラックの数、トラック間の距離、配列など)も同等である。特に加熱用グレージングパネルのケースでは、同数のトラックで同様の加熱電力が達成される。
【0026】
大いに、本発明による方法はグレージングパネル上でトラックが配置される場所に従ってトラックの断面を変更しなければならないことを意味する制限の克服を可能にする。そのような制限は、例えば、上側の部分に位置するトラックが下側の部分のそれらよりも短くなる台形のグレージングパネルで存在し、それはガラスの表面全体にわたって相応の加熱電力を維持するようにトラックの断面を適合させることを必要とする。この制限は最大加熱電力が運転者の視野に対応する領域で求められるグレージングパネルで見受けられる。このケースでは、導電性トラックはグレージングパネルの中央部よりも側部エッジの近辺でより広い幅を有する。本発明の条件下で進めることによって、加熱電力の均一性の目立った差異という結果につながることなく、同じ幅のトラックを形成することができる。この関係で、ペーストが高い銀含有量を有してそれがさらに大きな厚みで堆積されるということから電気的抵抗の減少が生じると考える根拠はある。高い導電性をもつスクリーン印刷ペーストを大きな厚みで塗布する必要性を何ら有しなくともバー状母線の最大許容可能温度値は幅広く考慮される。たいていの場合には、バー状母線付近の温度は最大許容可能温度よりも15%少なく、11から14ボルトの電源電圧についての450ワットを超えない公称電力について、標準周囲温度状態では50℃を超えることはない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の方法によって得られるグレージングパネルの工業規模の製造はスクリーン印刷ペーストの節約を可能にさせるものであって、特にこのペーストが銀を豊富に含む(含有量が80%以上)ときにそうである。これは加熱用トラックについて事実であり、それがアラームおよび/またはアンテナとして動作するように意図されたトラックを含むときにさえそうである。
【0028】
第1の好ましい実施形態によると、35%、好ましくは50%、さらに良いのは70%より多くの銀含有量を有し、その構成粒子の大部分(少なくとも98%)が25μm、好ましくは12μmよりも小さいサイズを有するチキソトロピーペーストが、1cm当たり少なくとも90本の糸および少なくとも30μm、好ましくは50から100μmのコーティング厚さを有するスクリーン印刷用スクリーンと一緒に使用される。この操作方式は一回通過(single pass)で印刷することによって通常得られる厚さと比べて相対的に大きな厚さのスクリーン印刷ペーストを基板上に堆積することを可能にする。こうして得られる堆積物は焼成の後に35μmよりも小さい、さらに一般的には15から25μm程度の厚さを有する。
【0029】
この実施形態の範囲で使用されるスクリーンは、意図される塗布に使用される同等の数の糸を備えたスクリーンのコーティング厚さ(概して10μm未満)よりも大きな厚さ(30μmより大きい)を有する。このスクリーンは、光架橋可能な樹脂の層またはフィルムでスクリーンの表面を覆うこと、およびスクリーン上に印刷パターンを再現するためにスライドを投影して操作することで構成される、それ自体知られている写真技術によって得ることができる。本ケースでは、予め感光化された光架橋可能な樹脂が使用され、それは150秒またはそれ未満の程度の極めて短い時間で、スクリーン印刷のドクターブレードの作用に耐えるのに充分に固いコーティングを形成することができる。比較するなら、従来の光架橋可能な樹脂ではコーティングの厚さを通じた架橋を得るために5から6分間程度の多くの照射時間をとることが必要である。「予め感光化された光架橋可能な樹脂」という用語はこのケースでは、光の影響下で反応して架橋ネットワークを形成することのできる1つまたは複数の低分子量のポリマーを含む予め架橋された樹脂を称する。予め感光化された光架橋可能な樹脂は特に、スクリーン上に直接的に堆積されたエマルジョンの層または前記樹脂を支持するフィルムの形で使用されることが可能であり、このフィルムはスクリーンの表面に塗布される前に加湿される。照射の持続時間を制限することによって、したがって、印刷マスク付近で樹脂の望ましくない架橋を引き起こす不本意な光の影響を防止することができる。これは照射にさらされる面の上でマスクのサイズに関して印刷パターンのサイズを小さくする結果につながり、その後のスクリーン印刷の間で基板上に堆積するペーストの量を減少させ、かつトラックの印刷で解像度をより貧弱なものにする結果になる。
【0030】
ペーストの通過のために設計された開口がスクリーンの一方の面から他方の面にかけて実質的に一定を保つように印刷パターンに対応するエッジが厚みの中で実質的に平行なスクリーンを選択することが有利である。いずれのケースでも、同じパターンについてスクリーンの両面間の開口の変動が20%、好ましくは10%よりも少ないことが好ましい。比較するなら、前述した従来の光架橋可能な樹脂では、架橋に必要となる多くの照射時間は得られるべき印刷パターンに対応した所望の開口を許容しない(開口が小さくなるかまたは完全な遮断すらされる)。
【0031】
スクリーンを形成する糸のタイプは厳密なものではない。これらの糸はポリエステルで出来ており、各々の糸が30から60μm、好ましくは40から50μmの間の直径をもつ単一の(単繊維)糸から成ることが好ましい。
【0032】
ペーストがスクリーン印刷のスクリーンを通過して押し付けられるのを可能にするドクターブレードは面取りされるか丸くされた直角の印刷エッジを有する普通のドクターブレードであってもよい。後者のタイプのドクターブレードの使用は剪断応力にある程度の増加を得て、それゆえにスクリーンを通過する間のペーストの粘度の低下を得ることを可能にする。ドクターブレードはポリマータイプの材料、例えば65から85の間のショア硬さAを有するポリウレタンから成ることが好ましい。
【0033】
本発明の長所によって、焼成後の10μmの厚さについて平方当たり2.5ミリオームよりも小さい表面抵抗を有する導電性トラックを得ることが可能であり、これは2.5マイクロオーム・cmよりも低い抵抗率に相当する。
【0034】
さらに、この導電性トラックは、それらの厚さが大きい場所でさえ、申し分のない耐磨耗性を有する。これは焼成の間のペースト内で銀粒子がより高密度になるせいである。
【0035】
自動車の後部加熱ウィンドウとして使用する目的の加熱グレージングパネルの製造を以下に説明する。
【0036】
チキソトロピーのスクリーン印刷ペーストは80%の銀、4%のガラスフリット、および基板への塗布を容易にする機能を有する溶媒を16%含む。ペーストに含まれるすべての粒子は15μmよりも小さいサイズを有する。スクリーン印刷条件下の剪断応力下における粘度に対する、剪断応力のないときの粘度の比率は200に等しい。
【0037】
スクリーンはSEFARによって市販されている100Tの織物から成り、1cm当たり100本の糸を含み、各々の糸が40μmの直径を有する単一のポリエステル糸から成り、58μmに等しいメッシュ開口を有する。このスクリーンは厚さ80μmの予め感光化された光架橋可能なエマルジョンの層で覆われ、印刷マスクに対応するパターンが写真技術によってスクリーンに再現される(照射時間150秒、ブレードパワー7000W)。トラックを再現するパターンについてコーティングのエッジは平行であり、これはペーストの通過のための開口がスクリーンの一方の面から他方の面にかけて一定であることを意味する。
【0038】
スクリーンパターンは85のショア硬さAをもつ直角のポリウレタン製ドクターブレードによってガラスのシート上に印刷される。20m/minの印刷スピードと8mmのオフコンタクトでトラックが形成され、このトラックは、焼成サイクル(周囲温度から150秒で650℃)の後、幅0.2から0.22mm、厚さ15μmを有する。現在のバー状母線に合ったグレージングパネルは、従来のスクリーン印刷で得られて同じ方式で設置される同じ数の導電性トラック(0.5mmよりも広い幅)を有するグレージングパネルと、抵抗および加熱電力の点で同じ性能を有する。
【0039】
本発明の別の変形によるものであるが、やはり自動車の後部加熱ウィンドウとしての使用を意図された加熱グレージングパネルの製造を以下に述べる。
【0040】
通常のドクターブレードは直角の尖った印刷エッジを有し、これでペーストがスクリーンを通ってその下に置かれた表面に印刷されるけれども、一定のクサビ効果を与えるドクターブレードの改造型印刷エッジを使用することが本発明の具現化のために好ましいと実証された。この特定の構成について前記印刷エッジを面取りあるいは丸くすることの結果となるこの効果の説明はまだ見出されていないが、スクリーン印刷ペーストのチキソトロピーとの代償効果−すなわちチキソトロピー溶媒に及ぼされる剪断応力の増大への粘度の低下−があると想定することが可能である。
【0041】
このドクターブレードによる印刷速度は、知られているスクリーンコーティングの断面と比較してかなり小さい断面のミゾまたは開口をペーストが通過する必要があるので、通常の方法と比べるとわずかに低い。さらに、スクリーンのオフコンタクト(すなわち自由に張力印加されたスクリーンと印刷対象の基板、このケースではグレージングパネルとの距離)は10mmに設定される。
【0042】
これらの材料と寸法でもって、2.5μ*cmよりも小さい抵抗率が焼成の後に得られる。
【0043】
DuPontの製品H699がペーストとして使用され、その粘度は17Pa・s(パスカル・秒)に等しい。それは10μm以下のサイズの粒子しか含んでいない。それはスクリーン印刷条件下での剪断応力下の粘度に対する剪断応力不在の粘度比率が100に等しい。
【0044】
SAATI S.p.A.,Italyによって市販されている95Tの織物から成るスクリーンは、1cm当たり95本の糸を含んで各々の糸が40μmの直径を有するポリエステルで作製された単一の糸から成り、65μmに等しいメッシュ開口を有する。このスクリーンは約16μmの厚さの予め感光化された光架橋可能なエマルジョンの層で覆われており、印刷マスクに対応するパターンは写真技術によってスクリーン上に再現される。トラックを再現するパターンでコーティングのエッジは平行であって、それはペーストの通過のための開口がスクリーンの一方の面から他方の面にかけて一定であることを意味する。コーティングに形成された最も幅の狭いミゾは約250μmの幅を有する。
【0045】
スクリーンパターンは、エッジに0.2mmにわたって45°の傾斜を設けられ、かつ65のショアA硬さを設けられたポリウレタン製のドクターブレードによってガラスのシート上に印刷される。0.35m/secの印刷スピードと10mmのオフコンタクトでトラックが形成され、このトラックは、焼成サイクル(常温から150秒で650℃へ)の後に0.2から0.22mmの幅と12から15μmの厚さを有する。現在のバー状母線に合ったグレージングパネルは、従来のスクリーン印刷で得られて同じ方式で設置される同じ数の導電性トラック(0.5mmよりも広い幅)を有するグレージングパネルと、抵抗および加熱電力の点で同じ性能を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に導電性のトラックを作製する方法であって、トラックの所定のパターンを形成するために基板の表面にスクリーン印刷によって導電性ペーストが塗布されて前記トラックが焼成され、スクリーン印刷条件下での剪断応力下の粘度に対する非剪断応力下の粘度の比率が少なくとも50であり、35%よりも多い銀含有量を有するチオキソトロピーペーストが使用されること、かつスクリーンが使用され、そのスクリーンのコーティングが少なくとも部分的にミゾを設けられ、印刷によって形成される導電性トラックの最小の幅が0.3mm以下となるようにそのミゾの最も狭い幅が約0.25mm±0.05mmにほぼ等しいことを特徴とする方法。
【請求項2】
ペーストの粒子の98%が25μm以下のサイズを有する粒子から成ること、およびスクリーンが1cm当たり少なくとも90本の糸を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
50%よりも多い、好ましくは70%よりも多い銀含有量を有し、その粒子のうちの少なくとも98%が12μmよりも小さいサイズを有するチオキソトロピーペーストが使用されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
1cm当たり少なくとも95本の糸を有するスクリーンが使用されること、および個々の導電性トラックが印刷によって塗布され、その最小の幅が0.25mmよりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
スクリーンが10μm以上の厚さを有するコーティングを設けられて使用されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
スクリーンのコーティングの厚さが50から100μmの間であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
スクリーンがコーティングを設けられ、印刷パターンに対応するそのエッジが厚さの範囲内で実質的に平行であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スクリーンが使用され、そのコーティングが予め感光化された光架橋可能な樹脂の照射によって得られることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
樹脂がエマルジョンの形、またはスクリーンの表面に施される前記樹脂を支持するフィルムの形で堆積されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
65から85のショア硬さAおよび直角の印刷エッジを有するドクターブレードが使用されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
65から85のショア硬さAおよび45°で面取りされるかまたは丸くされた印刷エッジを有するドクターブレードが使用されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
80%以上の銀含有量を有するチキソトロピーのペーストが使用されること、および導電性トラックが形成され、その最小の幅が0.1から0.25mmの間であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1cm当たり少なくとも90本の糸、好ましくは1cm当たり95本の糸を含む印刷スクリーンを使用する請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板が導電性トラックを含み、トラックの最小幅が0.3mm以下、好ましくは0.25mm以下である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られることが可能な透明基板、特にグレージングパネル。
【請求項15】
トラックが、35%よりも多い銀含有量を有するスクリーン印刷ペーストから成ることを特徴とする請求項14に記載の基板。
【請求項16】
トラックが、50%よりも多い、好ましくは70%よりも多い銀含有量を有するスクリーン印刷ペーストから成ることを特徴とする請求項15に記載の基板。
【請求項17】
トラックが35μmよりも低い高さで表面の上に隆起していることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の基板。
【請求項18】
さらに2つの電流のバー状母線を含み、それらの間にトラックが置かれ、それらの少なくとも複数部分が0.3mm以下の幅を有し、前記バー状母線の付近で温度が、11から14ボルトの電源電圧についての450ワットを超えない公称電力について、標準的な周囲温度条件下で50℃を超えないことを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の基板。
【請求項19】
アンテナまたはアラームを備えて加熱される自動車用グレージングパネルとしての請求項14から18のいずれか一項に記載の基板の使用。

【公開番号】特開2013−62249(P2013−62249A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222864(P2012−222864)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2001−576726(P2001−576726)の分割
【原出願日】平成13年4月17日(2001.4.17)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】