説明

導電性パターン形成方法及び導電性パターン形成システム

【課題】マスクを必要とせず、基板との密着性を有し、かつ、所定の電気的性能を有する導電性パターンを形成しうる、導電性パターン形成方法及び導電性パターン形成システムを提供する。
【解決手段】少なくとも、導電性ポリマーを含有する第1パターン、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子を含有し、第1パターンに対して導電性ポリマーの含有比率を減少させ、金属ナノ粒子の含有比率を増加させた第2パターン及び第2パターンに対して導電性ポリマーの含有比率を減少させ、金属ナノ粒子の含有比率を増加させた第3パターンを含み、厚み方向について、基材(1)から導電性ポリマーの含有比率を減少させつつ、金属ナノ粒子の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターン(3,4)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性パターン形成方法及び導電性パターン形成システムに係り、特にインクジェット方式を用いた、有機樹脂などのフレキシブル素材上の配線形成、導電膜形成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術を用いたプリンタブルエレクトロニクスによる配線描画が提案されている。特許文献1は、伸縮性かつ非可逆性を有する樹脂基板(フレキシブル基板)に対して、導電性ポリマー(導電性高分子)に金属粒子を分散させた機能液をインクジェット方式によって塗布し、電源線、信号線、走査線等の配線、トランジスタなどのアクティブ素子、発光画素を形成する有機EL表示装置の製造方法を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、ガスデポジション法を用いて金属微粒子を含有する超微粒子膜パターンを形成する技術が開示されている。特許文献2には、超微粒子膜パターンの具体例として、電極との密着性のよい材料による下側層と、必要な特性を有する上側層とから成るものや、下側層から上側層へ傾斜組成を持たせるものが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−302392号公報
【特許文献2】特開平6‐93418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された有機EL表示装置の製造方法に用いられる導電性ポリマーに金属粒子を分散させた機能液は、電気的性能を向上させるために金属粒子の含有量を増加させると、樹脂基板との接合性能(密着性)や伸縮性が問題となる。一方、金属粒子の含有量を減少させると、電気伝導率(導電率)が低下してしまい、電気的性能が問題となる。
【0006】
また、特許文献2に開示された超微粒子膜パターンの形成技術は、マスクを使用しているので、マスクを成膜する工程やマスクを除去する工程が必須となる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、マスクを必要とせず、基板との密着性を有し、かつ、良好な電気的性能を有する導電性パターンを形成しうる、導電性パターン形成方法及び導電性パターン形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る導電性パターン形成方法は、導電性高分子化合物を含有し、又は前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を所定の含有比率で含有した第1機能性液体を第1インクジェットヘッドから吐出させて、基材上に第1パターンを形成する第1パターン形成工程と、前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を含有し、前記第1機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第2機能性液体を第2インクジェットヘッドから吐出させて、前記第1パターン上に第2パターンを形成する第2パターン形成工程と、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子を含有し、前記第2機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第3機能性液体を第3インクジェットヘッドから吐出させて、前記第2パターン上に第3パターンを形成する第3パターン形成工程と、を含み、少なくとも前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンを含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚み方向について、基材から導電性高分子化合物の含有比率が減少しつつ、金属微粒子の含有比率が増加する傾斜組成構造を有する導電性パターンが形成されるので、基材と導電性パターンとの接合部分では導電性高分子化合物の含有比率が大きいことによる基材との密着性が確保され、かつ、金属微粒子の含有比率を増加させることで良好な電気的性能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る導電性パターン形成方法の説明図
【図2】図1に示す導電性パターンの平面図
【図3】図1に示す導電性パターンの概略構成図
【図4】本発明の第1実施形態(インク混合法)に係るパターン形成システムの全体構成図
【図5】図4に示すパターン形成システムのブロック図
【図6】図4及び図5に示すパターン形成システムにおける制御系の概略構成を示すブロック図
【図7】インク混合法を用いた導電性パターン形成の流れを示すフローチャート
【図8】図7に示した傾斜組成パターン形成工程を模式的に図示した説明図
【図9】液滴の直径、ドットの直径、ドット間ピッチの関係を示す説明図、a:基材を側面側から見た図、b:基材を上側から見た図
【図10】基材の温度と機能性液体のパターン幅との関係を示すグラフ
【図11】溶媒の沸点とパターン幅との関係を示すグラフ
【図12】ドット間ピッチとパターン幅との関係を示すグラフ
【図13】機能性液体のパターンの平面形状の説明図
【図14】機能性液体の平面形状及び立体形状の説明図
【図15】混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響の説明図
【図16】積層化された機能性液体のパターンの平面形状を示す説明図
【図17】本発明の第2実施形態(描画混合法)に係る導電性パターン形成システムの全体構成図
【図18】図17に示すパターン形成システムの概略構成を示すブロック図
【図19】描画混合法を用いた導電性パターン形成の説明図
【図20】描画混合法における吐出制御の説明図
【図21】描画混合法における他の吐出制御の説明図
【図22】本発明に係る導電性パターン形成方法の適用例を示すタッチパネルの断面斜視図
【図23】本発明の応用例に係るパッド形成の説明図
【図24】描画混合法におけるパッド形成の吐出制御の説明図
【図25】描画混合法におけるドット配置の順番の説明図
【図26】半乾燥処理の説明図
【図27】半乾燥処理の他の説明図
【図28】半乾燥処理の他の説明図
【図29】半乾燥処理の他の説明図
【図30】本応用例に係るパッド形成における表面改質処理の説明図
【図31】本応用例に係るパッド形成におけるエッジ枠形成の説明図
【図32】インクジェットヘッドのヘッド長の説明図
【図33】描画跡対策の一例の説明図
【図34】描画跡対策の他の例の説明図
【図35】4種類の材料を用いた電極形成の例を示す説明図
【図36】本発明の他の装置構成例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0012】
〔第1実施形態〕
(導電性パターン形成方法(システム)の概要)
図1は、本発明の第1実施形態に係る導電性パターン形成方法(システム)の説明図であり、フレキシブルフィルム(フレキシブル基材)1上に形成された有機TFT(Thin Film Transistor)2の電気配線(電極、電極配線)3,4,5の概略構造を示す断面図である。
【0013】
以下に説明する第1実施形態では、予め、導電性ポリマーと金属ナノ粒子が所定の含有比率で混合され、導電性ポリマーと金属ナノ粒子との含有比率が異なる複数の機能性液体を用いたインク混合法による導電性パターン形成について説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「フレキシブルフィルム1」及び「有機TFT2」を区別することなく、これらを総称して「基材」と記載することがある。つまり、図1のソース配線3、ドレイン配線4は、有機TFT2の有機半導体層7上に形成される部分と、フレキシブルフィルム1上に形成される部分が存在しており、「基材上に形成される電気配線」には、有機TFT2の有機半導体層7上に形成される部分、及びフレキシブルフィルム1上に形成される部分が含まれる。
【0015】
また、「電気配線」は、フレキシブルフィルム1の同一面内に形成された導電性パターン、及びフレキシブルフィルム1を貫通する導電性パターンが含まれ、フレキシブルフィルム1に搭載される被接続体を電気的に接続させるものである。
【0016】
また、図2は図1に示す導電性パターンの平面図であり、フレキシブルフィルム1の有機TFT2及び配線3,4,5が形成される面側から見た図である。
【0017】
図1及び図2に示す配線3は、有機TFT2のソース(不図示)に接続されるソース配線であり、配線4は有機TFT2のドレイン(不図示)に接続されるドレイン配線である。また、配線5は有機TFT2のゲート(不図示)に接続されるゲート配線である。
【0018】
このソース配線3、ドレイン配線4、及びゲート配線5は、不図示の駆動回路(駆動ICの端子、電源端子、GND端子を含む)や他の能動素子、受動素子、他の電極、端子等に接続される。
【0019】
例えば、有機TFT2が液晶パネルに適用される場合には、ソース配線3はソースバスと接続され、ドレイン配線4は画素電極と接続され、ゲート配線5はゲートバスと接続される。
【0020】
図1及び図2に図示した有機TFT2の詳細な構造の図示は省略するが、有機TFT2はゲート酸化膜6及び有機半導体層7を有し、ゲートはボトムコンタクト型、ソース及びドレインはトップコンタクト型となっている。
【0021】
図1及び図2に示すソース配線3及びドレイン配線4は、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子を含有する傾斜組成を有している。
【0022】
図3は、図1に示す導電性パターン(ソース配線3及びドレイン配線4)の概略構成図である。有機TFT2(フレキシブルフィルム1)上に形成されるソース配線3及びドレイン配線4は、導電性ポリマーと金属ナノ粒子の含有比率が異なる機能性液体を重ねて、基材(フレキシブルフィルム1、有機TFT2)からソース配線3及びドレイン配線4の厚み方向について、導電性ポリマーの含有比率を減少させるとともに、金属ナノ粒子の含有比率を増加させた傾斜組成を有している。
【0023】
すなわち、図3に示すソース配線3(ドレイン配線4)は、導電性ポリマーのみを有する(導電性ポリマーの含有比率が100%、金属ナノ粒子の含有比率が0%)の第1機能性液体3Aの上に、導電性ポリマーの含有比率が80%、金属ナノ粒子の含有比率が20%の第2機能性液体3Bが重ね打ちされ、さらに、導電性ポリマーの含有比率が60%、金属ナノ粒子の含有比率が40%の第3機能性液体3Cが第2機能性液体3Bの上に重ね打ちされる。
【0024】
さらに、導電性ポリマーの含有比率が40%、金属ナノ粒子の含有比率が40%の第4機能性液体3Dが第3機能性液体3Cの上に重ね打ちされ、さらに、導電性ポリマーの含有比率が20%、金属ナノ粒子の含有比率が80%の第5機能性液体3Eが第4機能性液体3Dの上に重ね打ちされる。
【0025】
このようにして、導電性ポリマーと金属ナノ粒子の含有比率を異ならせた複数種類の機能性液体が重ね打ちされ、各機能性液体のパターン(層)の境界近傍において導電性ポリマー及び金属ナノ粒子を層間拡散させて、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子の傾斜組成が実現される。なお、図3に図示した破線は各液体間の便宜上の境界である。
【0026】
図3に示すソース配線3(ドレイン配線4)に、さらに、導電性ポリマーの含有比率が0%、金属ナノ粒子の含有比率が100%の第6機能性液体が第5機能性液体上に重ねられ、ソース配線3(ドレイン配線4)の最表面が金属により被覆される態様も可能である。
【0027】
また、第1機能性液体3Aの導電性ポリマーの含有比率を100%未満として、数%程度の微量の金属ナノ粒子を含有させる態様や、導電性ポリマーの含有比率が100%である第1機能性液体3Aを省略し、導電性ポリマーの含有比率が80%、金属ナノ粒子の含有比率が20%の第2機能性液体3Bを基材上に吐出させる態様も可能である。
【0028】
なお、有機TFT2(フレキシブルフィルム1)との強固な接合状態を実現するという観点から、導電性ポリマーの含有比率が100%である第1機能性液体3Aを用いる態様が好ましい。
【0029】
一方、ソース配線3(ドレイン配線4)の最表面が金属のみにより覆われると、柔軟性の観点で問題となることがあるので、ソース配線3(ドレイン配線4)形成後のフレキシブルフィルムをロール状に巻き取る場合など、柔軟性を必要とされる場合には最後に重ねられる最上層の機能性液体に導電性ポリマーを含有する態様が好ましい。
【0030】
詳細は後述するが、図3に図示したソース配線3及びドレイン配線4は、インクジェット方式により吐出させた機能性液体により形成される1ドットの直径(1ドット幅)に対応する数十マイクロメートルの微細幅を有している。
【0031】
また、バルジ(パターンの一部の幅が他の部分よりも太くなる現象、図16(a)参照)や、ジャギー(配線のエッジにドットの円形状に起因する凹凸が生じる現象、図13(f)参照)が発生していない、均一幅を有する導電性パターンとなっている。
【0032】
フレキシブルフィルム1には、例えば、500マイクロメートルの厚みを有する、PEN(ポリエチレンテレフタラート)を適用することができる。フレキシブルフィルム1に適用可能な他の材料として、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルサルフォンなど、伸張性及び非可逆性を有するフィルムとすることが可能な樹脂材料が挙げられる。
【0033】
また、フレキシブルフィルム1の厚みは用途に応じて数十マイクロメートルから数ミリメートルとすることが可能である。
【0034】
本例では、トップコンタクト型有機TFT2のソース配線3及びドレイン配線4の形成に本発明を適用したが、トップコンタクト型有機TFT2のゲート配線や、ボトムコンタクト型有機TFTのソース配線及びドレイン配線、ゲート配線に対して本発明を適用することも可能である。
【0035】
傾斜組成成分となる導電性ポリマーには、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)が適用される。PEDOTは、水性溶媒及び有機溶媒に分散させて、インクジェット方式により基材上に塗布することができ、溶媒成分が除去された後に1×10−5ジーメンス毎センチメートル(S/cm)程度の良好な電気伝導率を発現させることが可能である。
【0036】
PEDOTを分散させて導電性ポリマーの塗布液とする水溶媒には、ポリアニオンポリ(スチレンスルホン酸塩)を加えた、PEDOT‐PSSの混合物からなる水分散液が使用される。
【0037】
PEDOT‐PSSは、PEDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェンのポリマー)とPSS(スチレンスルホン酸のポリマー)を共存させたポリマーコンプレックスであり、水溶性かつ強酸性のポリマーであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドーパントとして使用することにより、水に分散可能とし、有機溶剤等に弱い材料上にも塗布することが可能である。
【0038】
また、PEDOTを分散させて導電性ポリマーの塗布液とするための有機溶媒には、ニトロメタン、炭酸プロピレンなどがある。かかる有機溶媒中におけるPEDOTは重合体として分散する。
【0039】
インクジェット方式により吐出可能なPEDOTを含む機能性液体は、溶質成分としてPEDOT及びPEDOTの溶媒、PEDOTを分散させる分散剤、表面張力を調整する界面活性剤を含んで構成され、インクジェット方式により吐出可能な粘度に調整される。
【0040】
他の導電性ポリマーの例として、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアジル、ペンタセンなどが挙げられる。
【0041】
かかる導電性ポリマーを含有する機能性液体は、溶媒成分の蒸発によって溶質が物理的に接合され、さらに、化学的に結合されると、所定の電気的性能を発揮する。
【0042】
他の傾斜組成成分となる金属ナノ粒子は、粒子径(直径)が5ナノメートルから300ナノメートル程度の銀(Ag)ナノ粒子が適用される。金属ナノ粒子として適用可能な他の金属材料には、金(Au)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、酸化インジウムスズ(ITO)や、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛にアルミニウム(Al)が添加された電気導電性酸化物などが挙げられる。
【0043】
なお、金属ナノ粒子として銅が適用される場合には、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)環境下においてソース配線3及びドレイン配線4の形成がされ、銅の酸化が防止される。
【0044】
酸化インジウムスズは無色透明であり、透明の導電性ポリマーと組み合わせることにより透明な配線及び電極を形成することが可能である。かかる透明配線(電極)は、タッチパネル式ディスプレイ装置に適用される(図22参照)。
【0045】
金属ナノ粒子(例えば、銀ナノ粒子)のみの膜を有機TFT2上に形成した場合、有機/無機の異種界面が形成されることになり、これらは密着力が強力ではない。
【0046】
一方、導電性ポリマー(例えば、PEDOT)の膜を有機TFT2上に形成すると、有機/有機の界面が形成されるので、金属ナノ粒子のみの膜が形成される場合に比べて密着力が強くなる。
【0047】
すなわち、有機TFT2とソース配線3(ドレイン配線4)との接合の観点から、有機TFT2とソース配線3(ドレイン配線4)との接合部分は、導電性ポリマーを含有することが好ましい。
【0048】
導電性(電気的性能)の観点から検討すると、導電性ポリマーのみの膜に比べて金属ナノ粒子を混合させた膜は電気伝導率が大きくなる。また、導電性ポリマーに対する金属ナノ粒子の比率が大きくなるほど電気伝導率が大きくなる。
【0049】
すなわち、図3に図示したソース配線3(ドレイン配線4)は、有機TFT2(フレキシブルフィルム1)とのコンタクトの観点から、有機TFT2(フレキシブルフィルム1)との接合部分では、導電性ポリマーの含有比率が高くされており、電気的な接合状態が確保されつつ、強固な接合状態が実現されている。
【0050】
一方、良好な電気的性能を確保するという観点から、有機TFT2(フレキシブルフィルム1)からの厚みが大きくなるほど金属ナノ粒子の含有比率が高くされており、ソース配線3(ドレイン配線4)は厚み方向の上方になるほど電気伝導率が大きくなり、良好ナ電気的性能が確保されている。
【0051】
(導電性パターン形成システム(装置)の説明)
次に、本発明の第1実施形態に係る導電性パターン形成システム(装置)について説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係るパターン形成システムの全体構成図である。
【0052】
同図に示す導電性パターン形成システム10は、フラットベッドタイプであり、先に説明したインク混合法が適用される。
【0053】
図4に示す導電性パターン形成システム10は、フレキシブルフィルム1が載置されるステージ30、ステージ30に載置されたフレキシブルフィルム1を吸着保持するための吸着チャンバー40、フレキシブルフィルム1に向けて各機能性液体を吐出させるインクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐4,50‐5を含んで構成されている。
【0054】
なお、以下の説明において、インクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐4,50‐5を区別することなく、「インクジェットヘッド50」と記載することがある。
【0055】
ステージ30は、フレキシブルフィルム1の最大幅よりも広い幅寸法を有しており、図示しない移動機構により水平方向に自在に移動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構等を用いることができる。
【0056】
ステージ制御部(図4中不図示、図5に符号43を付して図示)を用いて、該移動機構の動作を制御することにより、ステージ30を所望の位置に移動させることができる。図4に図示した白抜き矢印線は、ステージ30の移動可能方向を表している。
【0057】
インクジェットヘッド50は、フレキシブルフィルム1(ステージ30)とのクリアランスが一定になるように不図示の支持部材により支持される。なお、フレキシブルフィルム1(ステージ30)を固定させ、インクジェットヘッド50をフレキシブルフィルム1のパターン形成面1Aと平行な水平面内で移動させてもよいし、フレキシブルフィルム1(ステージ30)及びインクジェットヘッド50の両方を水平面内において移動させてもよい。
【0058】
図4に示すステージ30は、フレキシブルフィルム1の保持面30Aに多数の吸引穴31が形成されている。ステージ30のフレキシブルフィルム1の保持面30Aの反対側面30Bには吸着チャンバー40が設けられており、この吸着チャンバー40がポンプ(図4中不図示、図5に符号41を付して図示)によって真空吸引され、ステージ30上のフレキシブルフィルム1が吸着保持される。
【0059】
また、ステージ30はヒータ(図4中不図示、図5に符号44を付して図示)が内蔵されており、ヒータ制御部(図4中不図示、図5に符号42を付して図示)による制御によって、ステージ30に吸着保持されたフレキシブルフィルム1が予め設定された範囲の温度となるように加熱処理をすることが可能となっている。
【0060】
図4に示すインクジェットヘッド50‐1から50‐5のそれぞれは、機能性液体タンク(図4中不図示、図5に符号60‐1から60‐5を付して図示)のそれぞれから導電性ポリマー及び金属ナノ粒子の含有比率が異なる機能性液体が供給され、フレキシブルフィルム1のパターン形成面1Aに機能性液体を吐出させて、所定のパターンを形成する。
【0061】
例えば、インクジェットヘッド50‐1は導電性ポリマーの含有比率が100%、金属ナノ粒子の含有比率が0%の第1機能性液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐2は導電性ポリマーの含有比率が80%、金属ナノ粒子の含有比率が20%の第2機能性液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐3は導電性ポリマーの含有比率が60%、金属ナノ粒子の含有比率が40%の第3機能性液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐4は導電性ポリマーの含有比率が40%、金属ナノ粒子の含有比率が60%の第4機能性液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐5は導電性ポリマーの含有比率が20%、金属ナノ粒子の含有比率が80%の第5機能性液体を吐出させることができる。
【0062】
図4には、導電性ポリマーと金属ナノ粒子との含有比率が異なる5種類のインクジェットヘッド50‐1からインクジェットヘッド50‐5を備える態様を示したが、インクジェットヘッド50は3種類以上であればよい。
【0063】
図4に示すインクジェットヘッド50には、圧電方式、サーマル方式、コンティニュアス方式など各種方式を適用することができる。圧電方式はノズルと連通する圧力室を構成する壁に圧電素子を備え、圧電素子のたわみ変形により圧力室を変形させて、圧力室内の液体をノズルから吐出させる方式である。
【0064】
サーマル方式は液室内の液体を加熱し、該液体の膜沸騰現象を利用してノズルから液体を吐出させる方式である。また、インクジェットヘッド50のノズル配置には、複数のノズルを一例に並べた一列配置や、二列の千鳥状に並べた千鳥配置、二次元状に並べたマトリクス配置などがある。
【0065】
図5は、図4に示す導電性パターン形成システム10のブロック図である。同図に示すように、機能性液体タンク60‐1,60‐2,60‐3,60‐4,60‐5は、所定の液体流路(チューブ)を介してそれぞれインクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐4,50‐5と連通され、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子の含有比率が異なる機能性液体は、機能性液体タンク60‐1,60‐2,60‐3,60‐4,60‐5からそれぞれに対応するインクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐4,50‐5へ送液される。
【0066】
ステージ30の保持面30Aに保持されるフレキシブルフィルム1には、吸着チャンバー40を介してポンプ41から吸着圧力が付与される。すなわち、フレキシブルフィルム1を保持したステージ30は、インクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐4,50‐5の機能性液体の吐出に対応して、ステージ制御部43によって移動が制御される。
【0067】
ステージ30に内蔵されたヒータ44は、フレキシブルフィルム1の設定温度に応じて、ヒータ制御部42により加熱量が制御される。詳細は後述するが、フレキシブルフィルム1の温度が所定範囲に維持されることで、フレキシブルフィルム1上における機能性液体の濡れ広がりが抑制され、好ましい微細幅を有する導電性パターンが形成されうる。
【0068】
乾燥処理部70は、フレキシブルフィルム1上に重ね打ちされた複数の機能性液体を加熱して、溶媒成分を完全に蒸発させる全乾燥(全硬化)処理が行われる。溶媒成分が完全に蒸発すると、導電性ポリマーが持つ本来の電気的性能が発揮されるとともに、金属ナノ粒子の含有比率に応じた電気的性能が発揮される。
【0069】
また、金属ナノ粒子(Agナノ粒子)が100%の機能性液体が用いられる場合には、金属ナノ粒子のみでネッキングされることで、金属粒子が持つ本来の電気的性能が発揮される。Agナノ粒子がネッキングされるには、乾燥処理部70の処理温度は150℃から220℃とされ、加熱処理時間は1時間以上とされる。
【0070】
一方、フレキシブルフィルム1のガラス転移点を超えないように、乾燥処理部70の処理温度は制御される。例えば、フレキシブルフィルム1の材料にPETが適用される場合には、PETのガラス転移点は69℃であるので、この温度を超える加熱処理温度が設定される場合には、加熱処理を瞬時(例えば、数秒)に行いフレキシブルフィルム1へのダメージを抑制しなければならない。
【0071】
かかる場合には、加熱に代わり、又は加熱と併用して光照射を行う態様が好ましい。例えば、ハロゲンランプなどを使用した可視光のラピッドサーマルアニール(RTA)や、赤外線照射、紫外線照射、電子線照射、レーザ照射などが有効である。
【0072】
また、インクジェットヘッド50のノズルの乾燥を防止する観点から、インクジェットヘッド50の周囲における湿度を60%以上、好ましくは70%以上とするとよい。
【0073】
図5に符号11を付して図示した構成は、不活性ガスを充填可能な処理室であり、不図示の不活性ガス充填口、排出口、不活性ガス濃度検出部等が設けられている。かかる処理室11は、インクジェットヘッド50、ステージ30などが一体的に収容され、金属ナノ粒子として銅が適用される場合に不活性ガスが充填される。
【0074】
図6は、図4及び図5に示す導電性パターン形成システム10の制御系の概略構成を示すブロック図である。図6に示すように、導電性パターン形成システム10はシステム制御部72によって各部が統括制御されるように構成されている。
【0075】
システム制御部72は、パターンデータ取得部74、入出力インターフェース(入出力I/F)76、温度センサ78、情報取得部80から得られた各種入力情報(入力信号)を取得すると、該入力情報に対応するシステム各部への指令信号を生成し、当該システム各部へ指令信号を送出する。
【0076】
また、システム制御部72は、メモリ82からのデータの読み出し及びメモリ82へのデータの書き込みを制御するメモリコントローラとして機能している。なお、図6におけるメモリ82は、データが一時記憶される一時記憶部、所定の処理が施されたデータを記憶する記憶部、演算等の処理領域、制御パラメータやシステムパラメータが格納されるパラメータ格納部等がまとめて図示されている。
【0077】
パターンデータ取得部74を介して、導電性パターンのパターンデータが取得されると、該パターンデータはメモリ82(一次記憶メモリ)に記憶され、不図示の信号処理部によって機能性液体のドットデータに変換される。
【0078】
該ドットデータが吐出制御部84へ送られると、吐出制御部84においてドットデータからインクジェットヘッド50に印加される駆動電圧が生成され、該駆動電圧はインクジェットヘッド50へ印加される。
【0079】
入出力インターフェース76は、システムの動作モードの設定、各種パラメータが入力される手段であるとともに、データ等の出力手段である。入力手段の具体例として、キーボード、タッチパネル式ディスプレイ装置、マウス、ジョイスティック等が挙げられる。また、出力手段として、所定の規格に適用した出力端子(例えば、USB(Universal Serial Bus)端子)が挙げられる。
【0080】
図6に示す温度センサ78は、システム各部の温度を検出する複数の温度センサが含まれる。例えば、ステージ30の保持面30A(フレキシブルフィルム1)の温度を検出する温度センサ、インクジェットヘッド50の環境温度を検出する温度センサなどが挙げられる。また、図示は省略するが、インクジェットヘッド50の環境湿度を検出する湿度センサを備えている。
【0081】
チャンバー制御部86は、システム制御部72の指令信号に応じて、吸着チャンバー40(ポンプ41)の動作を制御する。例えば、情報取得部80からフレキシブルフィルム1の情報(厚み情報、材料情報等)が取得されると、システム制御部72は該フレキシブルフィルム1の情報に応じて吸着圧力を求め、吸着圧力の指令信号をチャンバー制御部86へ送出する。チャンバー制御部86は、該指令信号に応じてポンプ41の回転数等を制御する。
【0082】
ヒータ制御部42は、システム制御部72の指令信号に応じてステージ30に内蔵されたヒータ44の加熱量を制御する。例えば、温度センサ78によって取得されたステージ30の保持面30Aの温度情報に応じて、ステージ30の保持面30Aの温度が所定範囲となるようにヒータ44の動作が制御される。
【0083】
乾燥制御部88は、システム制御部72の指令信号に応じて乾燥処理部70の動作を制御する。上述したように、乾燥処理部70には、「加熱」、「光照射」、「加熱及び光照射」の態様があり、情報取得部80から取得されるフレキシブルフィルム1の情報、機能性液体の情報に応じて「加熱」、「光照射」、「加熱及び光照射」が制御される。
【0084】
(導電性パターン形成方法のフローチャート)
図7は、本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、導電性パターン形成方法が開始されると(ステップS10)、基材情報(フレキシブルフィルム1の情報)、機能性液体の情報等の各種情報が取得され(ステップS12)、各種情報に基づいてヒータ44(図4参照)の加熱温度等の各種設定がされる(ステップS14)。
【0085】
次に、パターンデータ取得部74(図6参照)により、導電性パターンのデータが取得されると(図7のステップS16)、吐出データ(ドットデータ、駆動電圧)が生成される(ステップS18)。
【0086】
さらに、基材(フレキシブルフィルム1)の加熱が開始され(ステップS20)、基材が所定の温度に達すると、傾斜組成パターン(導電性パターン)形成工程が実行される(ステップS22)。なお、傾斜組成パターン形成工程の詳細は後述する。
【0087】
傾斜組成パターン形成工程(ステップS22)によって、基材上に傾斜組成を有する導電性パターンが形成されると、ステップS24に進み、全乾燥処理(全硬化処理)工程が実行される。全乾燥処理工程(ステップS24)によって導電性ポリマーの導電性能が発現され、かつ、金属ナノ粒子が結晶化されると、ヒータ44による基材の加熱が停止され(ステップS28)、当該導電性パターン形成は終了される(ステップS28)。
【0088】
図8(a)から(c)は、図7のステップS22に示した傾斜組成パターン形成工程を模式的に図示した説明図であり、図3に図示した第1機能性液体3Aから第5機能性液体3Eが用いられる態様が図示されている。
【0089】
図8(a)には、インクジェットヘッド50‐1から第1機能性液体3Aを吐出させて(吐出方向を矢印線により図示)、第1機能性液体3Aによるパターン(層)が形成されている状態が図示されている。
【0090】
第1機能性液体3Aによるパターンが形成されると、該パターンは半乾燥状態(半硬化状態)とされる。半乾燥状態とは、第1機能性液体3A中の溶媒成分を完全には蒸発しない程度に乾燥させた状態であり、具体的には、第1機能性液体3Aの溶媒成分を完全に蒸発するように乾燥させるとき(全乾燥・全硬化)に与えるエネルギーよりも少ないエネルギーを与えて乾燥を行う。
【0091】
かかる半乾燥処理は、図5、6の乾燥処理部70を用いてもよいし、他の構成を適用してもよい。他の構成の例として、ヒータによる加熱、加熱風、乾燥風等の吹き付けなどが挙げられる。
【0092】
図8(b)に示すように、第1機能性液体3Aのパターン上に重ねて、インクジェットヘッド50‐2から第2機能性液体3Bが吐出される。第1機能性液体3A上に第2機能性液体3Bによる層が形成されると、半乾燥状態の第1機能性液体3Aと第2機能性液体3Bとの境界近傍において拡散が生じる。
【0093】
第1機能性液体3Aによるパターンを半乾燥状態にすることで、次の工程において第1機能性液体3Aによるパターンに重ね打ちされる第2機能性液体3Bとの境界近傍において、導電性モノマー及び金属ナノ粒子の拡散が生じ、最初に形成されたパターンと重ね打ちされたパターンとの密着性がより強固になる。
【0094】
一方、第1機能性液体3Aによるパターンと第2機能性液体3Bによるパターンとは、全体として混合液体を構成のではなく、境界近傍以外では第1機能性液体3Aの組成と第2機能性液体3Bの組成が維持される。
【0095】
さらに、第2機能性液体3Bを半乾燥状態とした後に、インクジェットヘッド50‐3から第2機能性液体3Bのパターン上に第3機能性液体3Cを吐出させる。さらに、第3機能性液体3Cを半乾燥状態とした後に、インクジェットヘッド50‐4からから第3機能性液体3Cのパターン上に第4機能性液体3Dを吐出させ、第4機能性液体3Dを半乾燥状態とした後に、図8(c)に示すように、インクジェットヘッド50‐5からから第4機能性液体3Dのパターン上に第5機能性液体3Eを吐出させる。
【0096】
このようにして、第1機能性液体3Aから第5機能性液体3Eを順次重ね合わせて、所定の傾斜組成を有する導電性パターンが形成される。その後、図7の全乾燥処理工程(ステップS24)に進み、当該導電性パターンを完全に硬化させる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に示したインク混合法によれば、インクジェットヘッド50に充填される機能性液体の段階で、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子は充分に拡散混合されているため、機能の傾斜の変化の精度が高い傾斜機能材料を作成することができる。また、後述する描画混合法と比較すると、2種類の機能性インクを拡散混合する時間が不要となるため、プロセス時間が短くて済むという利点がある。
【0098】
なお、各機能性液体のパターン(層)を形成する際に、複数回にわたって基材とインクジェットヘッド50‐1から50‐5とを相対移動させて、1回の相対移動において間歇打滴を行ってドットを離散的配置させ、後からの相対移動において該離散的に配置されたドット間を埋めるように構成してもよい。
【0099】
かかる態様では、各層を構成するドット(機能性液体)の着弾干渉が防止され、各層の形状の変形が防止される。また、各層の変形に起因するコーヒー染み(コーヒーリング)の発生が防止される。
【0100】
本実施形態では、導電性ポリマーのみの層を一層形成し、導電性ポリマー及び金属(銀)ナノ粒子との混合層を4層形成したが、層数は4層に限定されるものではなく、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子の混合比率が傾斜されるように、それぞれの機能性液体を積層できれば層数は限定されない。なお、形成する層の数と同じ数のインクタンクとインクジェットヘッドを用意する必要がある。
【0101】
また、所定の傾斜組成が実現されれば、各層の厚みは均一でなくてもよく、層毎に厚みが異なる態様も可能である。
【0102】
〔組成傾斜パターン形成の具体例説明〕
次に、本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法(システム)に適用される機能性液体について詳細に説明する。
【0103】
本例に示す導電性パターン形成方法(システム)に適用される機能性液体(第1機能性液体)は、導電性ポリマー(PEDOT)を低沸点溶媒(質量比から計算された沸点が75℃以上105℃以下の溶媒)と、高沸点溶媒(質量比から計算された沸点が190℃以上290℃以下の溶媒)との混合溶媒に分散させている。
【0104】
具体的には、低沸点溶媒としてニトロメタン(沸点100℃)、高沸点溶媒として炭酸プロピレン(沸点240℃)が適用される。低沸点溶媒の他の例として、水(沸点100℃)、エタノール(沸点78.4℃)、イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)、アセトニトリル(沸点82℃)が挙げられる。
【0105】
また、高沸点溶媒の他の例として、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)、グリセリン(沸点290℃)が挙げられる。
【0106】
ここで、1気圧下における、複数の溶媒が混合された混合溶媒の沸点は、次式(1)により求められる。
【0107】
=Σ(W×T) …(1)
なお、W=(i番目の溶媒の質量/全溶媒の質量)であり、Tはi番目の溶媒単体の沸点である。
【0108】
例えば、全溶媒の質量に対する質量がW、単体の沸点がTの溶媒1と、全溶媒の質量に対する質量がW、単体の沸点がTの溶媒2との混合溶媒の沸点Tb12は、次式(2)により求められる。
【0109】
b12=(W×T)+(W×T) …(2)
また、上記溶媒1及び溶媒2と全溶媒の質量に対する質量がW、単体の沸点がTの溶媒3が含まれる混合溶媒の沸点Tb123は、次式(3)により求められる。
【0110】
b123=(W×T)+(W×T)+(W×T) …(3)
すなわち、各溶媒の沸点値Tに、該溶媒の全溶媒中における質量分率Wを乗じて得た値を求め、それらを足した総和として混合溶媒の沸点が求められる。このようにして得られる値によって、機能性液体中の溶媒の揮発の程度を見積もることができる。
【0111】
また、金属ナノ粒子(Agナノ粒子)を含む機能性液体(第2から第5機能性液体)は、低沸点溶媒としてアセトニトリル(沸点82℃)、高沸点溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)を含有し、さらに、中沸点溶媒としてシクロヘキサン(沸点156℃)を含有している。
【0112】
ここで、中沸点溶媒とは質量比から計算された沸点が105℃を超え190℃未満の溶媒であり、シクロヘキサンはインクジェット方式に適用される液体に好適に用いられる溶媒であり、良好な溶質の溶解性能を有する無色透明の溶媒である。
【0113】
〔導電性パターン形成における諸条件の説明〕
次に、機能性液体による導電性パターン形成における諸条件について詳細に説明する。
【0114】
インクジェット方式による良好な吐出性能を得るために、機能性液体は高沸点溶媒を含有している。したがって、吐出の際の機能性液体の溶媒の蒸発によるインクジェットヘッド50に具備されるノズルの乾燥が防止され、ノズル近傍の機能性液体の粘度上昇による吐出異常(吐出方向の異常、吐出量の異常)や、ノズル詰まりによる不吐出の発生が回避される。
【0115】
次に、基材(図1のフレキシブルフィルム1)の温度条件、機能性液体の溶媒の条件、基材上のドット間ピッチの条件、機能性液体を重ね打ちする際の条件について説明する。
【0116】
上記諸条件は、基材上に機能性液体(ここでは、金属ナノ粒子を含有していないポリマー液体が使用されている。)の1ドット幅の直線状のパターンを形成し、当該パターンの形状の顕微鏡写真を撮像し、その撮像画像に基づきジャギーの発生の有無、バルジの発生の有無、パターン幅等を評価している。
【0117】
評価実験に用いたシステムは以下のとおりである。
【0118】
ヘッドシステム:DMP−2831(FUJIFILM Dimatix社製)
インクジェットヘッド:DMC−11610
吐出周波数:4キロヘルツ
吐出速度:6ミリメートル毎秒
機能性液体の調製は以下のとおりである。
【0119】
分子量20000のポリマー(高分子量ポリマー):5%
アセトニトリル(沸点が82℃の低沸点溶媒):45%
シクロヘキサノン(沸点が156℃の中沸点溶媒):30.95%
プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)(沸点が240℃の高沸点溶媒):19%
界面活性剤(表面張力調整剤):0.05%
ここで、ポリマーの分子量が20000の場合は良好な吐出が実現されるが、ポリマーの分子量が大きくなると吐出特性が悪くなり、分子量が50000を超えると(例えば、分子量60000)、インクジェット方式による吐出が困難になることが実験により明らかになっている。
【0120】
したがって、インクジェット方式による吐出性能の観点から、ポリマーの分子量を20000とした。また、高分子量のポリマーの質量比率を小さくすると、吐出性能が良化し、ノズルの乾燥が回避され、オープンタイム(最後の吐出タイミングからノズルが乾燥して正常な吐出ができなくなるまでの時間)が長くなる。
【0121】
高分子量ポリマーの質量比率を10重量%以上とすると正常吐出がされない場合がありうるので、高分子量ポリマーの質量比率は5質量%とした。先に述べたように、かかる実験における機能性液体は、金属微粒子を含有していないが、導電性ポリマーと金属ナノ粒子を含有する機能性液体を用いた場合にも同様の結果を得ることができる。
【0122】
金属ナノ粒子は、ラウリルアミンなどの分散剤を使用すればシクロヘキサノン(沸点156℃)に分散可能である。ポリマーとして、先に説明した導電性ポリマー(PEDOT)が用いられる場合は、(ポリ)エチレングリコールなどのポリマーとのブロック共重合体とすることにより、ニトロメタン(沸点82℃)と炭酸プロピレン(沸点240℃)の混合液に、安定に分散することが可能である。
【0123】
シクロヘキサンノン(沸点156℃)、ニトロメタン、炭酸プロピレンは極性溶媒であり、いずれも可溶であり、金属ナノ粒子とPEDOTが分散した、低沸点溶媒と高沸点溶媒を含む機能性液体は、上記した調製に基づいて作製可能である。
【0124】
すなわち、上記した機能性液体として、金属ナノ粒子とPEDOTの両方が分散して、低沸点溶媒と高沸点溶媒を含む液体は作製可能であり、かかる機能性液体を用いた場合にも同様の結果が得られることは明らかである。
【0125】
図9(a),(b)は、インクジェットヘッド50から吐出された機能性液体の液滴102の直径Dと、フレキシブルフィルム(基材)1上に形成されたドット104の直径Dとの関係を示す説明図であり、図9(a)は、フレキシブルフィルム1の側面側から見た図であり、図9(b)は、フレキシブルフィルム1をインクジェットヘッド50側から見た図である。
【0126】
図9(a)に示す機能性液体の液滴102の直径Dは、該液滴102を球形状と仮定して、吐出体積に基づいて算出される値である。液滴102がフレキシブルフィルム1上に着弾すると、液滴102はフレキシブルフィルム1上で濡れ広がり、形状が安定した後のドット104の直径Dは、飛翔中の液滴102の直径Dの約2倍(D≒2×D)となる。また、ここでいうドット間ピッチWは、隣接するドット104の中心間距離である。
【0127】
(基材の温度の条件)
図10は、基材(図9のフレキシブルフィルム1)の温度とパターン幅との関係を示すグラフである。同図に示すように、基材の温度を室温(25℃)から徐々に上げると、パターン幅が減少することが把握される。
【0128】
すなわち、基材の温度を45℃以上とすることで、基材と機能性液体との接触線の固着が促進され、パターン幅の微細化が可能となる。また、基材の表面温度を60℃以上とすることで、よりパターン幅の微細化が促進される。
【0129】
(溶媒の沸点の条件)
図11は、沸点が異なる複数種類の溶媒が混合された混合溶媒における、質量比から計算された沸点(揮発性、上記式(1)から(3)のいずれかにより計算された沸点)と、導電性パターンの幅との関係を示すグラフである。
【0130】
上記した機能性液体の調製を変更し、高沸点溶媒、中沸点溶媒、低沸点溶媒の質量比を変更し、この変更の影響を考察する。なお、基材の温度は室温(25℃)とした。
【0131】
同図における混合溶媒の沸点がT℃の場合は、上記した質量比の高沸点溶媒(19質量%)、中沸点溶媒(30.95質量%)、低沸点溶媒(45質量%)を含有した機能性液体が用いられている。
【0132】
一方、溶媒の沸点がT℃の場合(T℃の沸点を有する上記混合溶媒の高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された中沸点溶媒のみを含む場合)は、混合溶媒の沸点がT℃の場合と比較してパターン幅が増加していることが把握される。
【0133】
また、混合溶媒の沸点がT℃の場合(T℃の沸点を有する上記混合溶媒の低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された場合)は、溶媒の沸点がT℃の場合と比較してさらにパターン幅が増加していることが把握される。
【0134】
すなわち、揮発性(質量比より計算した混合溶媒の沸点)とパターン幅とは相関しており、低沸点溶媒の混合より(混合溶媒の沸点がより低い場合に)、パターン幅が大きく減少していることが把握される。
【0135】
これは、基材(図1に図示したフレキシブルフィルム1)に着弾したドットは、エッジ部から溶媒の蒸発が起こるため、低沸点溶媒の蒸発によりエッジ部における溶質成分(コンテンツ)の濃度が高くなり、該溶質成分が基材に固定され、ドットの広がりが抑えられるためと考えられる。
【0136】
(ドット間ピッチの条件)
次に、ドット間ピッチW(図9参照)について説明する。図12は、ドット間ピッチWとパターン幅との関係を示すグラフであり、図13(a)から(g)は、パターンの平面形状(顕微鏡写真)を示す説明図である。
【0137】
基材の温度を60℃とし、ドット間ピッチWは吐出液滴の直径Dの2分の1からドットの直径Dを超えるまで定量的に変えている。なお、吐出液滴の直径Dの例として20マイクロメートル、基材に形成されるドットの直径Dの例として60マイクロメートルとすることができる。
【0138】
図12に示すように、ドット間ピッチWを広げることでパターン幅が減少することが把握される。一方、図13(f)に示すパターンが形成された「ドット間ピッチW≒ドットの直径D」の条件では、ジャギーの発生が把握される。
【0139】
また、図13(g)に示すパターンが形成された「ドット間ピッチW>ドットの直径D」の条件では、パターン切れ(パターンがつながっていない状態)の発生が把握される。
【0140】
なお、図13(e)に示すパターンが形成された「ドット間ピッチWがドットの直径D」よりもやや小さい条件では、パターンのエッジに厚みが薄くなる部分が存在するものの、パターンにジャギーは発生していないことが把握される。
【0141】
他方、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D以下(W≦D)まで狭めると、図13(a)に示すようにパターン幅が太く、かつ、不均一となり、また、図9(b)に示すようにパターン幅が太くなり、好ましい微細パターンとはならない。
【0142】
ドット間ピッチWを小さくすると(パターンのドット密度を高くすると)、パターンの単位長さあたりの液量(液体積)が増えるためにパターンの幅が太くなる。したがって、パターン幅をより微細化させるためにはドット間ピッチWを大きくして単位長さあたりの液量を少なくするとよい。
【0143】
一方、ドット間ピッチWを大きくし過ぎると、隣接するドット同士が離れてしまい、パターン切れが発生する可能性がある(図13(g)参照)。ドット間ピッチWが吐出液滴の直径Dを超える値(W>D)とすることでパターンの単位長さあたりの液滴量を抑えつつ、ドット間ピッチWが吐出液滴の直径Dを超える値となっても、ドット間ピッチWをドットの直径D未満とすることで隣接するドット同士を確実につなげることが可能となる。
【0144】
例えば、ノズルの直径が21マイクロメートルの場合に吐出液滴の直径Dは25マイクロメートル程度になると推測されるので、ドット間ピッチWは25マイクロメートルを超える値とされる。
【0145】
一方、パターン幅が不均一になる原因はバルジが発生しているためと考えられる。より高密度に描画を行うとバルジの発生が顕著に現れる。例えば、吐出周波数が1キロヘルツ以上の場合は、バルジが不均一な間隔で発生するので、吐出方向、吐出量の微小な揺らぎや、基板の不規則な微小凹凸の存在により、その不均一な位置を基点としてパターン幅が局所的に大きくなることで、バルジが発生すると考えられる。
【0146】
すなわち、ドット間ピッチWが、吐出液滴の直径Dを超え、かつ、ドットの直径D未満となって隣接するドットが重なるように、ドット間ピッチW、吐出液滴の直径D、ドットの直径Dの関係が、次式(4)の関係を満たし、適切なドット間ピッチWが選択されることで、図13(c)から(e)に示すように、良好な平面形状を有する微細パターンを形成しうる。
【0147】
<W<D …(4)
特に、ドット間ピッチWをドットの直径Dの2分の1以下とすることで(W≦D/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0148】
(ドット(パターン)平坦化、重ね打ちの条件)
次に、ドット(パターン)の平坦化、重ね打ちについて説明する。図14(a)から(c)の上段に示す平面形状は、顕微鏡写真の画像であり、下段に示す立体形状は形状測定マイクロスコープによる画像を模式的に図示したものである。
【0149】
図14(a)は、重ね打ちされていない(単層の)機能性液体のパターンの平面形状を示す図であり、該機能性液体は低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合されており、基材(図1に図示したフレキシブルフィルム1)が加熱されて、表面温度が60℃に維持されている。
【0150】
図14(a)に図示された機能性液体のパターンは、微細化は実現されているものの、微細電気配線として所定のインピーダンス(抵抗値)を得るための膜厚(d)が不足している。
【0151】
図14(b)は、図14(a)に図示した重ね打ちされていない機能性液体のパターン上に、上記した溶媒混合比率を有する機能性液体を重ね打ちした場合のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの微細な幅がほぼ維持されつつ、膜厚が約2倍(d×2)となっている。
【0152】
図14(c)は、図14(a)に図示した重ね打ちされていない機能性液体のパターン上に、上記した溶媒混合比率を有する機能性液体を3回重ね打ちした場合のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの幅がほぼ維持されつつ、膜厚は重ね打ちされていない場合の膜厚に重ね打ち数を乗じた値とはならないものの、単層の膜厚の約3倍(d×3)となっている。
【0153】
すなわち、上記した溶媒混合比率を有する機能性液体を複数回重ね打ちして、膜厚を積み重ねることで、所望の膜厚を有する導電性パターンを形成しうる。なお、本例に示す導電性パターンの形成方法では、重ね打ちされる機能性液体の導電性ポリマーと金属ナノ粒子との含有比率が異なっているものの、上記した溶媒混合比率を適用することで、機能性液体の重ね打ちにより所定の厚みを得ることができるといえる。
【0154】
なお、機能性液体のパターンを重ね打ちして厚みをかせぐには、ドットの乾燥(溶媒の蒸発)が最適化され、少なくとも基材上に最初に形成されるパターン(ドット)がある程度平坦化される必要がある。
【0155】
図15(a)から(c)は、混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響を示す説明図である。図15(a)は、上記した低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合される混合溶媒(図11に示す沸点T℃の混合溶媒)が用いられた機能性液体が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット100Aは、極端な凹凸が生じていない。
【0156】
図15(b)は、沸点T℃の混合溶媒における高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり、中沸点溶媒を添加した溶媒(図11に示す沸点がT℃の中沸点溶媒のみ)が用いられた機能性液体によるドットの立体形状を表している。同図に示すドット100Bは、端部に極端な凹凸が生じており(丸により囲まれた部分)、いわゆるコーヒー染み現象が生じている。
【0157】
図15(c)は、高沸点溶媒が19質量%、中沸点溶媒が75.95質量%混合される混合溶媒(図10に示す沸点がT℃の混合溶媒)が用いられた機能性液体が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット100Cは、図15(a)に示すドット100Aと同様に極端な凹凸が生じていない。
【0158】
基材上のドットにおける溶媒の蒸発は、基材とドットと気体との境界からが起こる。溶媒の蒸発によりドットの中心からドットの端部へ対流が発生し、この対流によりポリマー成分が運ばれることでドットの端部においてポリマー成分の局在が起こり、乾燥後にドットの端部が凸形状となる。
【0159】
一方、機能性液体に高沸点溶媒を含有することで、基材とドットと気体(大気)との境界からの蒸発の速度が小さくなり、ドットの中心からドットの端部への対流も小さくなり、乾燥後にドットの平坦化がなされる。
【0160】
(機能性液体の積層条件)
図16(a)から(e)は、積層化された機能性液体のパターンの平面形状を示す説明図である。
【0161】
図16(a)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径Dと略同一(W≒D)とした場合のパターン形状であり、積層された機能性液体(ドット)がパターンの幅からはみ出し、局所的にパターン幅が太くなるバルジが発生することがある。
【0162】
図16(b)から(d)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径Dを超えドットの直径D未満(D<W<D)とした場合であり、良好な微細積層パターンが形成される。特に、図16(b)に示すように、ドット間ピッチWがドットの直径Dの2分の1(W=D/2)となる場合には、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0163】
なお、図16(d)に示すように、良好な微細パターンを形成しうる場合でも、ドット間ピッチWがより広げられると、積層された機能性液体のパターンのエッジに厚みが薄い部分が生じてしまうことがありうる。
【0164】
図16(e)は、ドット間ピッチWをドットの直径Dと略同一(W≒D)とした場合であり、図13(f)と同様にジャギーが発生している。
【0165】
すなわち、機能性液体のパターンを積み重ねてしてパターンを形成する場合には、吐出液滴の直径D、ドットの直径D、ドット間ピッチWの関係が、上式(4)を満たすことで、好ましい積層パターンが形成される。
【0166】
また、ドット間ピッチWをドットの直径Dの2分の1以下とすることで(W≦D/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0167】
また、基材を加熱せずに積層パターンを形成すると、下層を形成する液と上層を形成する液の性質が同じであることにより液が濡れ広がりやすくなり積層パターンの形成が困難になるので、基材を加熱して表面温度を60℃(室温(25℃)の2倍を超える温度)に維持することで液の濡れ広がりが抑制され、微細なパターンの幅を維持しつつ積層が可能となる。
【0168】
さらに、機能性液体に低沸点溶媒を含有することで、濡れ広がりを抑制する効果を高めることが可能となる。
【0169】
以上まとめると、機能性液体に高沸点溶媒を含有することで、吐出の際の機能性液体の溶媒成分の蒸発によるノズル内部の液体の乾燥が防止され、ノズル内部の液体の粘度上昇による吐出異常や、ノズル詰まりによる不吐出が回避され、インクジェット方式による良好な吐出状態を得ることができる。
【0170】
また、機能性液体に高沸点溶媒を含有することで、機能性液体を複数回重ね打ちして、所定の膜厚を有するパターンを形成する場合に、ドットの乾燥が最適化され、ドット(パターン)の表面形状が良好になり(より平坦化され)、いわゆる、コーヒー染み現象の発生が抑制される。
【0171】
さらに、機能性液体に低沸点溶媒を含有することで、基材上における液滴の溶媒乾燥が促進され、該液滴の濡れ広がりが抑制され、パターン幅の広がりが抑制され、パターンの微細化が可能となる。
【0172】
さらにまた、機能性液体によるパターン形成中において、基材を加熱して表面温度を60℃とすることで、機能性液体の濡れ広がりが防止され、パターンの微細化が可能となる。
【0173】
また、積層される機能性液体は、吐出液滴の直径D、ドットの直径D、ドット間ピッチWの関係が、上式(4)を満たすことで、好ましい膜厚を有するパターンが形成される。なお、微細パターン形成の観点から重ね打ち数は、2から4程度とすることが好ましい。
【0174】
本例では、積層されるパターンの吐出条件を上記のように明示したが、該吐出条件は最初に形成されるパターンの吐出条件とすることができる。また、最初に形成されるパターンの吐出条件と、積層されるパターンの吐出条件とを同一にすることも可能である。
【0175】
なお、積層される機能性液体は最初に形成された機能性液体のパターン上に着弾するので、積層される機能性液体のドットの直径Dは、基材(フレキシブルフィルム1、有機TF2)と機能性液体(導電性ポリマー)との濡れ性の違いにより、最初に形成されるパターンを構成するドットの直径Dと異なることがありうるので、積層される機能性液体は基材における濡れ性が考慮される。
【0176】
本例では、いわゆるシリアル型のインクジェットヘッドを例示したが、フルライン型のインクジェットヘッドを用いてもよいし、フルライン型インクジェットヘッドを用いたシングルパス方式によるパターン形成も可能である。
【0177】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る導電性パターン形成方法(システム)について説明する。
【0178】
(導電性パターン形成システム(装置)の説明)
図17は、本発明の第2実施形態に係る導電性パターン形成システムの全体構成図である。なお、図17中、図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は、省略する。
【0179】
図17に示すパターン形成システム110は、図4に図示した導電性パターン形成システム10の機能性液体を吐出させるインクジェットヘッド50‐1,50‐2,50‐3,50‐3,50‐4に代わり、導電性ポリマーを含有する機能性液体(導電性ポリマー液体)を吐出させるインクジェットヘッド50‐11を備えるとともに、金属ナノ粒子を含有する機能性液体(金属ナノ粒子液体)を吐出させるインクジェットヘッド50‐12を備えている。
【0180】
図17に示すパターン形成システム110は、描画混合法が適用される。描画混合法とは、インクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐12から金属ナノ粒子液体を吐出させ、フレキシブルフィルム1上で導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体とを混合させて、該導電性ポリマー液体と該金属ナノ粒子液体との混合液体によるパターンを形成している。
【0181】
かかる混合液体によるパターンを半乾燥状態とした後に、インクジェットヘッド50‐11から吐出させる導電性ポリマー液体と、インクジェットヘッド50‐12から吐出させる金属ナノ粒子液体との混合比率を異ならせながら、導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体との混合液体を積層し、完全に硬化させることで、フレキシブルフィルム1からパターンの厚み方向について、導電性ポリマーの含有比率が減少しつつ、金属ナノ粒子の含有比率が増加する傾斜組成を有する導電性パターンが形成される。
【0182】
図18は、図17に示すパターン形成システム110のブロック図である。なお、図18中、図5と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図18に示すように、第2実施形態に係るパターン形成システム110は、図5に示す導電性パターン形成システム10の機能性液体タンク60‐1,60‐2,60‐3,60‐4,60‐5に代わり、導電性ポリマー液体が収容される導電性ポリマー液体タンク60‐11、及び金属ナノ粒子液体が収容される金属ナノ粒子液体タンク60‐12が備えられている。
【0183】
図18に示すように、導電性ポリマー液体タンク60‐11はインクジェットヘッド50‐11と所定の液体流路を介して連通され、導電性ポリマー液体タンク60‐11からインクジェットヘッド50‐11へ導電性ポリマー液体が供給される。また、金属ナノ粒子液体タンク60‐12はインクジェットヘッド50‐12と所定の液体流路を介して連通され、金属ナノ粒子液体タンク60‐12からインクジェットヘッド50‐12へ金属ナノ粒子液体が供給される。
【0184】
(導電性パターン形成方法の説明)
図19(a)から(d)は、描画混合法による導電性パターン形成方法の流れを示す説明図であり、フレキシブルフィルム1上の有機TFT2のソース配線3及びドレイン配線4(図1参照)が形成される態様が図示されている。
【0185】
まず、図18に示すヒータ44を動作させて、フレキシブルフィルム1の温度が所定範囲(40℃から70℃)となるように加熱処理を施しておく。
【0186】
次に、基材(フレキシブルフィルム1及び有機TFT2)上に、導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体との混合比率が80:20の混合層120‐1を形成する。もちろん、混合層120‐1は導電性ポリマー液体のみのパターン(層)としてもよい。この混合層120‐1の形成は、基材を移動させながら(図では右から左方向へ移動させて)、インクジェットヘッド50‐11から有機TFT2(フレキシブルフィルム1)に対して導電性ポリマー液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐12から有機TFT2(フレキシブルフィルム1)に対して金属ナノ粒子液体を吐出させる。
【0187】
図19(a)では、導電性ポリマー液体の層は符号122を付して図示され、金属ナノ粒子液体の層は符号124を付して図示されている。このとき、導電性ポリマー液体の吐出量(吐出体積)及び金属ナノ粒子液体の吐出量は、所望の比率(体積比率、80:20)に調整される。
【0188】
なお、導電性ポリマー液体の吐出量と金属ナノ粒子液体の吐出量との比率の調整は、描画のドット間ピッチ(ドット密度)によって調整してもよい。例えば、インクジェットヘッド50‐11及びインクジェットヘッド50‐12の各ノズルの吐出量を一定としたまま、導電性ポリマー液体を吐出させるノズル数と、金属ナノ粒子液体を吐出させるノズル数との比率を80:20となるように、インクジェットヘッド50‐11及びインクジェットヘッド50‐12の吐出を制御することにより、比率の調整を行うことも可能である。
【0189】
ここで、インクジェットヘッド50‐11から吐出させた導電性ポリマー液体、及びインクジェットヘッド50‐12から吐出させた金属ナノ液体が、極端に濡れ広がって所望のパターンが形成できなかったり、コーヒー染み効果により膜中央の膜厚が薄くなりすぎたりして、適正な層を形成できない場合がある。
【0190】
このような現象は、本実施の形態のように基材を加熱することにより低減させることもできるが、さらに、基材の1回の移動において、導電性ポリマー液体を全面に吐出させずに、基材の1回の移動において着弾するドットとドットとの間隔を、所定のドット間隔(打滴格子間隔)よりも大きくして、ステージ30の複数回の移動によりすでに形成されたドット間を埋めていくように分割して吐出(間歇打ち)して一層を形成すると、適正な層が形成される。
【0191】
ヒータ44による加熱温度は、機能性液体(溶媒成分)の蒸発のしやすさにより調整する必要がある。溶媒の種類によっては、前述した70℃より低い温度、例えば、基材の温度を50℃程度にして、パターン形成を行ってもよい。
【0192】
また、2つのインクジェットヘッド50‐11、インクジェットヘッド50‐12はできるだけ近づけて配置されており、導電性ポリマー液体又は金属ナノ粒子液体の一方だけが乾燥して、導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体の混合液体の層内での拡散混合が不十分になることが防止されている。
【0193】
なお、導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体を同時に吐出する際、インクジェットヘッド50‐11から吐出される導電性ポリマー液体の液滴と、インクジェットヘッド50‐12から吐出される金属ナノ粒子液体の液滴とを飛翔中に空中で衝突させ、混合させてから着弾させてもよい。
【0194】
また、混合液体の拡散混合を促進するために、ステージ30(図17参照)を制御して基材であるフレキシブルフィルム1を超音波処理してもよい。このとき、超音波による節が発生しにくくなるように、超音波の周波数をスイープさせたり、フレキシブルフィルム1の位置を変更したりしながら行うことが好ましい。
【0195】
このようにして形成された混合層120‐1を、混合液体中の溶媒成分を完全には蒸発しない程度に乾燥(半乾燥・半硬化)させる。半乾燥の具体的な手法は、先に説明したインク混合法と同一である。
【0196】
混合層120‐1を半乾燥状態にすることで、混合層120‐1に積層される混合層120‐2(図19(c)参照)との境界における粒子の拡散が生じ、層間の密着性がより強固になる。
【0197】
次に、半乾燥状態となった混合層120‐1の上に、インクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体を吐出させるとともに、インクジェットヘッド50‐12から金属ナノ粒子液体を吐出させて、導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体の混合層120‐2(図19(c)参照)が形成される。
【0198】
この混合層120‐2の形成は、基材を移動させながら、インクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体を吐出させ、同時にインクジェットヘッド50‐12から金属ナノ粒子液体を吐出させて行われる。
【0199】
ここでは、導電性ポリマー液体の吐出量が60%、金属ナノ粒子液体の吐出量が40%となるように、インクジェットヘッド50‐11とインクジェットヘッド50‐12との吐出量が調整される。
【0200】
導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体が拡散混合されることにより、混合層120‐2が形成される。混合層120‐1は半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層120‐2を構成する導電性ポリマー液体の溶媒及び金属ナノ粒子液体の溶媒は、混合層120‐1に受容されて、極端に濡れ広がることがない。
【0201】
このように形成した混合層120‐2を、混合層120‐1と同様に半乾燥状態にすると、混合層120‐2は量の比率が60:40の導電性ポリマーと金属ナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0202】
次に、混合層120‐2の上に混合層120‐3が形成される。この混合層120‐3の形成についても、基材を移動させながら、インクジェットヘッド50‐11及びインクジェットヘッド50‐12から同時に導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体を吐出させる。ここでは、導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体との混合比率を40:60として吐出させている。
【0203】
混合層120‐2についても半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層120‐3の溶媒は、混合層120‐2に受容される。導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体を吐出させた後に、これらを拡散混合させることにより、混合層120‐3が積層される。
【0204】
さらに、混合層120‐3についても半乾燥させる。混合層120‐3は導電性ポリマーと金属ナノ粒子との量の比率が40:60の導電性ポリマーと金属ナノ粒子が隙間をもって積み重ねられた状態となる。
【0205】
図19(c)に示すように、半乾燥させた混合層120‐3の上に、基材を移動させながら、インクジェットヘッド50‐11及びインクジェットヘッド50‐12から同時に導電性ポリマー液体及び金属ナノ粒子液体を吐出させる。ここでは、導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体との混合比率を20:80として吐出させている。
【0206】
このように、導電性ポリマー液体と金属ナノ粒子液体との吐出量の比率を段階的に(傾斜するように)変更しながら各混合層を形成する。なお、最後に金属ナノ粒子液体が100%の層を形成してもよい。
【0207】
すべての層の形成終了後、乾燥処理部70において、窒素雰囲気中にて220℃程度で焼結させる。これにより、各層の導電性ポリマーの導電性が発現されるとともに、金属ナノ粒子が結晶化し、各層の拡散が進み、段階的に形成した層が連続的となる。その結果、基材からパターンの厚み方向について、導電性ポリマーの含有比率が減少し、金属ナノ粒子の含有比率が増加する傾斜組成を有する導電性パターンが形成される。
【0208】
このように、下の層を半乾燥状態として上の層を形成することにより、その上下の層において、拡散がある程度進むようにしておく。このとき、上下の層の界面が無くなる状態、すなわち、完全に拡散混合して上下層の区別が無くなる状態とはならないようにする。
【0209】
なお、各層の形成が終わった後に、フレキシブルフィルム1のパターンが形成されない領域にダミーパターンを形成し、レーザを用いた光学式変位センサ等によりダミーパターンの高さを測定することで、乾燥が進んでおらず、溶媒が残っている状態では、膜厚が高くなることから、ダミーパターンの高さにより乾燥状態を検出することができる。
【0210】
本例では、一種類の導電性ポリマー液体と一種類の金属ナノ液体との混合液層を形成する態様を例示したが。一種類の導電性ポリマー液体と複数種類の金属ナノ液体との混合液層を形成する態様や、複数種類の導電性ポリマー液体と一種類の金属ナノ液体との混合液層を形成する態様、複数種類の導電性ポリマー液体と複数種類の金属ナノ液体との混合液層を形成する態様も可能である。
【0211】
また、少なくとも3層を形成することで、傾斜組成を有する導電性パターンを形成することができる。かかる3層には、導電性ポリマー液体のみの層、金属ナノ粒子のみの層が含まれていてもよい。
【0212】
(混合液体の吐出制御の説明)
次に、描画混合法におけるインクジェットヘッド50の吐出制御について詳細に説明する。図20及び図21は、描画混合法におけるインクジェットヘッド50の吐出制御の説明図である。本例に示す描画混合法では、インクジェットヘッド50‐11の吐出量と、インクジェットヘッド50‐12の吐出量とを異ならせ、混合液体の混合比率を異ならせている。
【0213】
図20(a)から(d)は、吐出量が多い(混合比率が大きい)液体を先に吐出させ(先に基材へ着弾させ)、吐出量が少ない(混合比率が小さい)液体を後から吐出させる(後から基材へ着弾させる)場合の吐出制御を説明している。
【0214】
先に吐出させた飛翔中の液滴の直径をD11、後から吐出させた飛翔中の液滴の直径D12とし、先に吐出させた液滴により基材上に形成されたドット130(白抜きにより図示)の直径をD21、後から吐出させた液滴により基材上に形成されたドット132(黒塗りにより図示)の直径をD22とする。なお、飛翔中の液滴の直径は、飛翔中の液滴を球形状と仮定して吐出体積から算出された値である。
【0215】
図20(a)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21の2分の1を超え、ドット130の直径D21未満(D21/2<W<D21)とされ、隣接する2つのドット130の間(中間)の位置にドット132が形成された場合が図示されている。
【0216】
図20(a)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生、ジャギーの発生も起こらないと考えられる。また、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。
【0217】
図20(b)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21を超える値(W>D21)とされ、ドット130と同じ位置にドット132を着弾させた場合(W=W)が図示されている。
【0218】
かかる場合は、ドット130を形成する液滴は基材上で濡れ広がるので、破線により図示したように隣接するドット130は接触する。
【0219】
図20(b)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生は起こらないと考えられる。また、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。一方、ドット130及びドット132が離散的に形成されるので、ジャギーの発生が懸念される。
【0220】
図20(c)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21の2分の1を超え、ドット130の直径D21未満(D21/2<W<D21)とされ、ドット130と同じ位置にドット132を着弾させた場合(W=W)が図示されている。
【0221】
図20(c)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、ジャギーの発生は起こらないと考えられ、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。一方、ドット130及びドット132を形成する液体の充填が高まるので、微細幅にならないことやバルジの発生が懸念される。
【0222】
図20(d)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21を超え(W>D21)、隣接する2つのドット130の間(中間)の位置にドット132が形成された場合が図示されている。
【0223】
かかる場合は、隣接する2つのドット130の隙間をドット132が埋めることで、全体としてドットがつながった状態となる。
【0224】
図20(d)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生は起こらないと考えられる。一方、隣接するドット130の間をドット130よりも小さいドット132が埋めているので、ジャギーの発生が懸念される。また、ドット130とドット132との混合不良が懸念される。
【0225】
図21(a)から(d)は、吐出量が少ない(混合比率が小さい)液体を先に吐出させ(先に基材へ着弾させ)、吐出量が多い(混合比率が大きい)液体を後から吐出させる(後から基材へ着弾させる)場合の吐出制御を説明している。なお、図21中、図20と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0226】
図21(a)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21と略同一(W<D21かつ、W≒D21)であり、隣接する2つのドット130がやや重なるように形成され、隣接する2つのドット130の間(中間)の位置にドット132が形成された場合が図示されている。
【0227】
図21(a)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生、ジャギーの発生も起こらないと考えられる。また、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。
【0228】
図21(b)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21未満とされ(W<D21)、ドット130と同じ位置にドット132を着弾させ、かつ、ドット132のドット間ピッチWをドット132の直径D22と略同一(W=D22)とされた場合が図示されている。
【0229】
図21(b)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生は起こらないと考えられる。また、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。一方、ドット130が離散的に形成されるので、ジャギーの発生が懸念される。
【0230】
図21(c)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21の2分の1を超え、ドット130の直径D21未満(D21<W<D21/2)とされ、ドット130と同じ位置にドット132を着弾させた場合(W=W)が図示されている。
【0231】
図21(c)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、ジャギーの発生は起こらないと考えられ、ドット130とドット132との混合も良好になると考えられる。一方、ドット130及びドット132を形成する液体の充填が高まるので、微細幅にならないことやバルジの発生が懸念される。
【0232】
図21(d)には、ドット130のドット間ピッチWが、ドット130の直径D21を超える値とし(W>D21)、隣接する2つのドット130の間(中間)の位置にドット132が形成され、かつ、ドット132のドット間ピッチW2が、ドット132の直径D22を超える(W>D22)場合が図示されている。
【0233】
かかる場合は、隣接する2つのドット130の隙間をドット132が埋めることで、全体としてドットがつながった状態となる。
【0234】
図21(d)に示すようにドット130及びドット132が形成されると、微細幅を有する混合液体によるパターンが形成されると考えられ、バルジの発生は起こらないと考えられる。一方、隣接するドット130の間をドット130よりも小さいドット132が埋めているので、ジャギーの発生が懸念される。また、ドット130とドット132との混合不良が懸念される。
【0235】
以上まとめると、図20(a)及び図21(a)に示すように、先に吐出させた液滴により形成されるドット130、及び後から吐出させた液滴により形成されるドット132を形成することで、微細幅を有し、バルジの発生及びジャギーの発生がなく、混合液体の混合状態が良好な導電性パターンを形成しうる。
【0236】
また、図20(b)及び図21(b)に示すように先に吐出させた液滴により形成されるドット130、及び後から吐出させた液滴により形成されるドット132を形成することで、微細幅を有し、バルジの発生がなく、混合液体の混合状態が良好な導電性パターンを形成しうる。
【0237】
さらに、図20(c)及び図21(c)に示すように先に吐出させた液滴により形成されるドット130、及び後から吐出させた液滴により形成されるドット132を形成することで、微細幅を有し、ジャギーの発生がなく、混合液体の混合状態が良好な導電性パターンを形成しうる。
【0238】
図20及び図21に示した吐出条件(ドット形成条件)は、複数回の重ね打ちにより形成される積層パターンの2層目以降にも適用可能である。なお、積層パターンの2層目以降に適用する場合には、基材との濡れ広がりに代わり、一層目を形成する液体との濡れ広がりを考慮するとよい。本実施形態において、第1実施形態における同一層内の吐出条件、溶媒の沸点の条件、基材の温度条件、拡散混合の条件を適用することが可能である。
【0239】
〔具体的な適用例〕
次に、上述した導電性パターン形成方法(システム)を用いて形成された配線構造体の適用例について説明する。図22は、上述した導電性パターン形成方法を用いて形成されたタッチパネル200の断面斜視図である。
【0240】
同図に示すタッチパネル200は、金属ナノ粒子の材料として無色透明の酸化インジウムスズ(ITO)が適用される。すなわち、上部導電層202の透明電極膜204及び下部電極層206の透明電極膜208に本例に示す導電性パターン形成方法が適用される。
【0241】
符号210を付した部材はフロントパネルであり、符号212を付した部材はベース基板である。なお、タッチパネル200の詳細な構造の説明、及び機能の説明は省略する。
【0242】
上記の如く構成された導電性パターン形成方法及び導電性パターン形成システムによれば、フレキシブルフィルムに形成された有機TFTのソース配線及びドレイン配線として、基材(フレキシブルフィルム及び有機TFT)から厚み方向について、導電性ポリマーの含比率を減少させ、金属ナノ粒子の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成することで、導電性ポリマーの柔軟性及び電気的性能により基材基との接合性能が確保され、かつ、フレキシブルフィルム上の有機TFTとの電気的接合が可能とされ、さらに、金属ナノ粒子の作用により、ソース配線及びドレイン配線としての良好な電気的性能が確保される。
【0243】
また、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子を含有する機能性液体に、75℃以上105℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含有することで、基材に着弾した液滴の溶媒の蒸発が促進されて液滴(ドット)の広がりが抑制され、微細幅のパターンが実現される。
【0244】
さらに、導電性ポリマー及び金属ナノ粒子を含有する機能性液体に、190℃以上290℃以下の沸点を有する高沸点溶媒を含有することで、インクジェットヘッドのノズルの乾燥が防止され、吐出異常の発生が防止される。また、基材に着弾した液滴(ドット)の乾燥が最適化され、ドットの平面形状がより良好となり、ドットの平坦化がされる。
【0245】
さらに、吐出液滴直径、ドットの直径、ドット間ピッチを最適化することで、バルジの発生やジャギーの発生がなく、微細幅を有する好ましい導電性パターンが形成される。
【0246】
さらにまた、微細パターンを形成するために、微細パターンの外側に撥液処理をしてもよい。撥液処理の具体例として、不活性ガス環境下においてレーザ光線を照射する態様が挙げられる。
【0247】
本実施形態では、主としてフレキシブルフィルム1上に形成された有機TFT12のソース配線3及びドレイン配線4を例示したが、ウエハやプリント配線基板に形成されたICチップ等の素子間の電気配線、素子とコネクタ間の電気配線など、基材上に形成される電気配線に広く適用可能である。
【0248】
また、該微細パターンを基材の面方向につなぎ合わせて、パッド(電極)を形成することも可能である。例えば、1ドット幅の微細パターンを幅方向について連続して複数本形成し、隣接する微細パターンが接触するように該複数本のパターンを形成することで、1ドット幅を超える幅を有する幅広のパターンを形成しうる。
【0249】
1ドット幅の微細パターンを間歇的に形成した後に、該間歇的に形成された1ドット幅の微細パターンの間(隙間)を埋めるように、1ドット幅の微細パターンを形成して、パッドを形成することも可能である。
【0250】
図4や図17のヘッド50を直交する二方向(例えば、主走査方向と副走査方向)に走査させる構成において、1ドット幅の微細パターンの形成方向を主走査方向とし、副走査方向について1ドット幅の微細パターンを複数本形成してもよいし、1ドット幅の微細パターンの形成方向を副走査方向とし、主走査方向について1ドット幅の微細パターンを複数本形成してもよい。
【0251】
図4及び図17に図示した装置構成は、基材上の任意の打滴位置にドットを形成することができるので、1ドット幅の微細パターンの一部(中間部、端部等)に幅広部を形成することが可能である。なお、幅広部の幅は微細パターンの幅の2倍以上とする態様が好ましい。
【0252】
〔他の実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図23は、フレキシブルフィルム1(図1参照)の導電性パターン形成が形成される面の一部を拡大した拡大図であり、電気配線321(図1のソース配線3、ドレイン配線4等に対応)と、該電気配線321に接続されるパッド322及びランド323が図示されている。なお、同図には、有機TFT2は図示されていない(図2参照)。
【0253】
図23に示すパッド322はIC(モジュール)やベアチップが接合される導電性パターンであり、電気配線321よりも幅が大きく、平面形状が矩形となっている。また、ランド323は電気配線321に接続される導電性パターンであり、平面形状が円形状又は半円形形状となっている。多層構造のフレキシブルフィルム(基板)では、ランド323にスルーホールが形成される場合がある。
【0254】
本明細書では、図23に図示したパッド322及びランド323等の、電気配線321よりも幅広の導電性パターンを区別することなく「パッド」と呼ぶことがある。すなわち、平面形状によらず、スルーホールが形成されるか否かによらず、微細幅を有する電気配線よりも幅広(単位長さあたりの面積が大きい)導電性パターンを「パッド」又は「電極」と呼ぶこととする。
【0255】
なお、電気配線321と接合されるバンプが形成されていてもよい。バンプとは、異なる基板に搭載された被接続体を電気的に接続させる導電性パターンであり、例えば、シリコンウエハに形成されたICチップを直接プリント配線基板に搭載する際に使用される、電気接続端子部に形成される半球形や台形状の金属突起であり、基材との密着性が要求されるとともに、良好な電気的性能が要求される。
【0256】
パッド322(ランド323)には、電気伝導率が高い金属、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などが用いられる。一方、基材(フレキシブルフィルム1)とパッド322との接合には、所定の機械的強度が要される。そこで、基材とパッド322との接合部分に導電性ポリマーを用いて、良好な接合強度を確保するとともに電気的接合を確保し、さらに、金属ナノ粒子の含有比率を厚み方向について増加させることで、良好な電気的性能が確保される。
【0257】
以下に示す他の実施形態では、フレキシブルフィルム1上に形成された電気配線321(有機TFT2のソース端子、ドレイン端子に接続される電気配線)と接続されるパッド322が形成され、該パッド322は、基材(フレキシブルフィルム1)から導電性ポリマーの含有比率が減少し、かつ、金属ナノ粒子の含有比率が増加する傾斜組成を有している態様について説明する。
【0258】
以下の説明では、導電性ポリマーの組成成分比が100%から20%へ変化し、金属ナノ粒子(Au微粒子)の組成成分比が0%から80%となるパッド322をインク混合法、又は描画混合法により作製する。パッド322の厚みは様々であるが、ここでは電気配線321と同程度とする。なお、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0259】
パッド322のボトム面(基材側の面)は導電性ポリマーで構成されているため、基材の接合強度が確保されている。また、パッド322のトップ面(最表面)は金属ナノ粒子から構成されている。なお、パッド322とICチップ等との電気的な接合にははんだ、導電性接着剤等が用いられる。
【0260】
(インク混合法によるパッドの形成)
インク混合法によるパッド322の形成におけるシステム(装置)構成は、図4から図6の構成を適用することができる。また、パッド322の形成方法は、図7のフローチャート、図8の形成方法を適用することができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0261】
なお、電気配線321よりもパッド322の厚みが必要な場合は、各機能性液体による層(図8(c)に符号3Aから3Eを付して図示)を形成する際に、各機能性液体が重ね打ちされる。
【0262】
(描画混合法によるパッドの形成)
描画混合法によるパッド322の形成におけるシステム(装置)構成は、図6及び図17、図18の構成を適用することができる。また、パッド322の形成方法は、図7のフローチャート、図19の形成方法を適用することができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0263】
なお、2つのインクジェットヘッド50‐11,50‐12はできるだけ近づけて配置されており、導電性ポリマー液体又は金属ナノ液体の一方だけが乾燥して、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体の混合液体の層内での拡散混合が不十分になることが防止されている。
【0264】
なお、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体を同時に吐出する際、インクジェットヘッド50‐11から吐出される導電性ポリマー液体の液滴と、インクジェットヘッド50‐12から吐出される金属ナノ液体の液滴と、を飛翔中に空中で衝突させ、混合させてから着弾するようにしてもよい。
【0265】
さらに、詳細は後述するが、2つのインクジェットヘッド50‐11,50‐12は、それぞれのノズルが設けられる幅を1つのパッドのパターンの幅よりも大きく構成し、ステージ30(図17参照)の1回の移動により1つの層を形成することが好ましい。これにより、金属ナノ液体と導電性ポリマー液体とが混ざりやすくなる。
【0266】
また、インクの拡散混合を促進するために、ステージ30を制御して基材であるフレキシブルフィルム1(図17参照)を超音波処理してもよい。このとき、超音波による節が発生しにくくなるように、超音波の周波数をスイープさせたり、フレキシブルフィルム1の位置を変更させたりしながら行うことが好ましい。これらは、微細電気配線パターンの形成にも適用することができる。
【0267】
以上説明した描画混合法により、インクジェットヘッドを用いてパッド322を形成することができる。また、描画混合法によれば、形成する層の数にかかわらず、機能性液体の種類とインクジェットヘッドの個数が少なくて済むという利点がある。金属ナノ液体と導電性ポリマー液体との混合層は、それぞれのインクの混合比率が段階的に傾斜されるように形成されれば、何層積層してもよい。
【0268】
(吐出制御(ドット配置)の説明)
描画混合法におけるパッド形成では、先に吐出させた液体を着弾させた位置に、後から吐出させた液体を重ねて着弾させるとよい。特に、間歇打ちを行ってドットとドットが離れている場合に、先に吐出させた液体と同じ位置に、先に吐出させた液体が乾燥する前に後から吐出させた液体を着弾させると、それぞれの液体の拡散混合がしやすくなるとともに、混合された液体が良好に濡れ広がる。
【0269】
また、間歇打ちと2ヘッドによる同時打滴を併用して、混合される液体(ドット)を略同時に着弾させる態様も可能である。
【0270】
さらに、図24(a)から(d)に示すように、ドット間の着弾干渉を防止するために、離散的に配置されたドット(2種類のインクが十分に拡散されたドット)を乾燥させながら、離散的に配置されたドット間を埋めるドットが形成される態様が好ましい。
【0271】
離散的に配置されたドットを乾燥させる具体例として、後から付与されるインクを加熱しておく形態が挙げられる。2ヘッドを十分に近接して配置することで、より高い効果を得ることができる。
【0272】
例えば、図19(c)の混合層120‐2を形成する際に、1回目の走査でインクジェットヘッド50‐11により導電性ポリマー液体を間歇打ちにより吐出させ(図24(a))、導電性ポリマー液体によるドット122‐1が離散的に形成される。
【0273】
次に、2回目の走査でインクジェットヘッド50‐12により金属ナノ液体を間歇打ちにより吐出させて、図24(b)に示すように、金属ナノ液体によるドット124‐1が1回目の走査により形成されている導電性ポリマー液体122‐1と同じ位置に重ねて形成される。
【0274】
さらに、3回目の走査でインクジェットヘッド50‐11により導電性ポリマー液体を間歇打ちにより吐出させて、図24(c)に示すように、1回目の走査により形成されている導電性ポリマー液体によるドット122‐1間を埋めるように、導電性ポリマー液体によるドット122‐2が形成される。
【0275】
その後、4回目の走査では、インクジェットヘッド50‐12により、金属ナノ液体を間歇打ちにより吐出させて、図27(d)に示すように、金属ナノ液体によるドット124‐2が3回目の走査により形成されている導電性ポリマー液体122‐2と同じ位置に重ねて形成される。
【0276】
以降、同様にして、導電性ポリマー液体金属ナノ液体との混合比率が異なる混合液体の層を形成することができる。このように、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体を関係を間歇的に、かつ、離散的に配置させ、複数回の走査によって隙間を埋めながら混合液体の層を形成することで、拡散混合の時間を短縮することができる。
【0277】
また、2種類の液体のうち一方の液体の乾燥の進行が速い場合は、当該一方の液体を後から吐出させると、乾燥の進行が速い液体の乾燥が先に進行してしまい、拡散混合が十分にされないことが防止される。
【0278】
また、複数種類の金属ナノ液体が用いられる態様では、2種類の金属ナノ液体の混合液体を併用してもより。例えば、金ナノ粒子と銅ナノ粒子との混合層を形成する際に、金ナノ粒子液体、銅ナノ粒子液体、及び金ナノ粒子液体と銅ナノ粒子液体とを50%ずつ混合させた混合液体を用いる態様が可能である。
【0279】
(描画混合法における他の吐出制御の形態)
図25(a)、(b)は、描画混合法において、量比の少ない成分を先に付与し、量比の多い成分を後に付与する形態の説明図である。
【0280】
図25(a)に斜線ハッチを付したドット124‐11は、先に付与された金属ナノ液体によるドットである。一方、破線により図示したドット122‐11は、金属ナノ液体が付与された後に付与される導電性ポリマー液体による仮想的なドットである。
【0281】
金属ナノ液体と導電性ポリマー液体との量比は2:8であり、この比率で金属ナノ液体によるドット124‐11と導電性ポリマー液体によるドット122‐11の数量比率が決められている。
【0282】
なお、図示されていないが、金属ナノ液体によるドット124‐11と同じ打滴位置にも導電性ポリマー液体によるドット122‐11が形成される。
【0283】
図25(b)は、先に付与された金属ナノ液体によるドット124‐11が十分に濡れ広がった状態で、導電性ポリマー液体が付与された状態が図示されている。
【0284】
このようにして、先に付与された金属ナノ液体によるドット124‐11が十分に濡れ広げられて十分に薄くなることで、金属ナノ液体によるドット124‐11と導電性ポリマー液体によるドット122‐11とは、導電性ポリマー液体によるドット122‐11が濡れ広がとともに、厚み方向に拡散混合されるので、拡散混合に必要な時間を短縮することができる。
【0285】
先に付与される金属ナノ液体によるドット124‐11の濡れ性を向上させるために、フレキシブルフィルム1に改質処理(親液処理)が施されることや、金属ナノ液体に濡れ性を向上させる成分が添加されることが好ましい。
【0286】
〔応用例〕
次に、上述した第1、第2実施形態及び他の実施形態に係る応用例について説明する。
【0287】
(描画混合法における吐出制御)
描画混合法において、インクジェットヘッド50‐11及びインクジェットヘッド50‐12から、同時に導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体を吐出させて各層を形成してもよいし、導電性ポリマー液体、金属ナノ液体の順に吐出させてもよい。
【0288】
導電性ポリマー液体、金属ナノ液体のそれぞれを順に吐出させて1つの層を形成する場合であって、2つの液体の吐出量に差がある場合、すなわち、2つの液体の吐出量の比率が50%ずつでない場合は、吐出量の多い方の液体を先に吐出するように構成してもよい。
【0289】
特に、先に吐出する液体の乾燥が激しい場合(後に吐出する液体の乾燥に対して先に吐出する液体の乾燥が速く進行する特性を有する場合)等は、吐出量が少ないほど乾燥の進行が早まるため、吐出量が多い方の液体を先に吐出することが好ましい。これにより、2種類の液体の拡散混合をスムーズに進ませることができる。
【0290】
さらにこの場合、後から吐出することになる吐出量の少ない方の液体については、所定のサイズよりも小さい液滴によってドットピッチ密度を高くして吐出してもよい。これにより、拡散混合する時間を短くすることができる。
【0291】
このように、下の層を半乾燥状態として上の層を形成することにより、その上下の層において、拡散がある程度進むようにしておく。このとき、上下の層の界面が無くなる状態、すなわち、完全に拡散混合して上下層の区別が無くなる状態とはならないようにする。
【0292】
(乾燥状態の検出)
各混合液体による層(パッド)の形成が終わった後に、フレキシブルフィルム1のパターンが形成されない領域にダミーパターンを積層し、レーザを用いた光学式変位センサ等によりダミーパターンの高さを測定してもよい。乾燥が進んでおらず、溶媒が残っている状態では、膜厚が高くなることから、ダミーパターンの高さにより乾燥状態を検出することができる。
【0293】
(半乾燥処理)
次に、図26から図29を用いて半乾燥処理について説明する。以下に説明する半乾燥処理は、導電性ポリマー液体と金属ナノ液体とを用いたパッド形成を例に挙げて説明するが、もちろん、導電層ポリマーと金属ナノ粒子を用いた配線(図1のソース配線3、ドレイン配線4等)にも適用可能である。
【0294】
本発明においては、下側に形成された層の上に液体を吐出させて上側の層を形成する際、下の層の液体中の溶媒成分が完全には蒸発していない程度に乾燥(半乾燥)させていることが重要となる。
【0295】
乾燥の速い液体を用いており、吐出後にすぐに乾燥してしまう場合には、上の層を形成する直前に、下の層の乾燥程度を緩和するような薬液処理を施してもよい。図26(a)に示すように、導電性ポリマー液体層120‐1に混合層120‐2が積層されると、図26(b)に示すように、混合層120‐2の完全硬化を抑制するために、インクジェットヘッド50‐13から混合層120‐2の表面へ薬液125が付与される。
【0296】
そうすると、薬液125を付与しない場合に比べて、混合層120‐2の乾燥の進行を遅らせて、好ましい半乾燥状態を維持したまま、次の層を形成しうる。図26(c)は、混合層120‐2の表面に、次の混合層を形成するための導電性ポリマー液体及びAuナの粒子液体を吐出させる状態が図示されている。
【0297】
例えば、薬液125として導電性ポリマー液(金属ナノ液体)の溶媒が適用される場合であれば、その溶媒を予め下の層に塗布しておいてもよいし、その溶媒に浸漬してもよい。また、同じ溶媒でなくとも、水系インクの場合であれば水やアルコール、溶媒インクの場合であれば同様の極性や分子量を持つ溶媒を用いてもよい。
【0298】
さらに、上の層を形成する直前でなく、上の層を形成した後に、下の層の乾燥を緩和するような薬液処理をしてもよい。このような処理は、上の層からも薬液が浸透するため有効である。また、上下の層で同じ溶媒、もしくは下の層のコンテンツを溶解するような溶媒を上の層の液体に使用してもよい。
【0299】
さらに、当該薬液処理は、混合層を構成する複数の液体間(層内)における拡散を促進させる。の図27から図29は、形態別の薬液処理を模式的に図示した説明図である。図27(a)から(c)は、混合層の形成に先立って薬液を付与する形態、図28(a)から(c)は、混合層の形成後に薬液を付与する形態、図29(a)から(c)は、混合層の形成中に薬液を付与する形態が図示されている。
【0300】
図27(a)は、導電性ポリマー液体層120‐1の表面にインクジェットヘッド50‐13から薬液125が付与される状態である。図27(b)は、導電性ポリマー液体層120‐1の表面に薬液125が付与された状態で、インクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体が付与される状態であり、図27(c)は、導電性ポリマー液体が付与された状態で、インクジェットヘッド50‐12から金属ナノ液体が付与される状態である。
【0301】
図27(c)に図示された状態では、導電性ポリマー液体層120‐1の表面近傍に薬液が受容されている。
【0302】
このようにして、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体による混合層の形成に先立ち、薬液125を付与しておくことで、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体の乾燥が抑制されるとともに、当該混合層内において導電性ポリマーと金属ナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0303】
また、下層(導電性ポリマー液体層120‐1)の乾燥の進行が緩和されるとともに、当該混合層(上層)との境界近傍における層間の拡散も生じるので、下層と上層との密着性が強化される。
【0304】
図28(a)は、導電性ポリマー液体層120‐1の表面にインクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体(層)122が付与される状態であり、図28(b)は、導電性ポリマー液体122上にインクジェットヘッド50‐12から金属ナノ液体124が付与される状態である。
【0305】
図28(c)は、混合層を形成する導電性ポリマー液体(層)122と金属ナノ液体(層)124が付与された後に、インクジェットヘッド50‐13から薬液125が付与される状態である。このようにして、混合層を構成する導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体を付与した後に薬液125を付与することで、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体の乾燥を抑制しつつ(仮に、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体の乾燥が進行したとしても、導電性ポリマー液体及び金属ナノ液体を薬液125により溶かしながら)、当該混合層内において導電性ポリマーと金属ナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0306】
また、当該混合層(次の混合層形成における下層)の乾燥の進行が緩和され、好ましい半乾燥状態が維持されるとともに、次に形成される上層との境界近傍において生じる層間の拡散により、当該上層との密着性が強化される。
【0307】
図29(a)は、導電性ポリマー液体層120‐1の表面にインクジェットヘッド50‐11から導電性ポリマー液体(層)122が付与される状態である。図29(b)は、導電性ポリマー液体層122の上にインクジェットヘッド50‐13から薬液125が付与される状態であり、図29(c)は、薬液125が付与された導電性ポリマー液体(層)122の上にインクジェットヘッド50‐12から金属ナノ液体(層)124が付与される状態である。
【0308】
このようにして、混合層を形成する途中で薬液125を付与することで、導電性ポリマー液体層122及び金属ナノ液体層124の乾燥を抑制しつつ、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0309】
上記のような薬液125の塗布には、インクジェット方式のヘッドを用いることが好ましい。同じ装置内で塗布できるため構成がシンプルになるとともに、インクジェットの省液性により薬液の使用量が少なくて済むという利点がある。
【0310】
また、下の層の形成が終わった段階、もしくはその途中で、溶媒の乾燥程度を測定して、上の層の形成にフィードバックしてもよい。例えば、レーザ等により層のラフネスや反射強度を測定し、乾燥の目安とする。
【0311】
機能材料として用いない領域や、別途測定用のダミー領域を設け、その領域に接触することにより乾燥程度の測定を行ってもよい。また、吸収する繊維や紙を膜に接触させて、溶媒インクの吸収程度により乾燥程度を判断してもよい。乾燥程度の判断により、次の層の吐出のタイミングを決定し、下の層の更なる硬化を行う。
【0312】
紫外線の照射により硬化させるUVモノマーインク等の場合であれば、完全に硬化させるために必要な露光量よりも少ない露光量で照射し、上下層の拡散を促進させてもよい。また、UVモノマーインクの硬化は、層の形成が終わった後に全体を露光してもよいし、ヘッドやステージの走査に沿って同時に走査可能なUV−LED等のコンパクトなUV露光源を用いて、液滴の着弾直後に硬化させてもよい。
【0313】
UVモノマーインクは、加熱しても溶媒の蒸発が起こりにくい性質を有しているので、モノマーインクが用いられる場合には、加熱により層内及び層間の拡散を促進させることが可能である。
【0314】
なお、精密なパターンを形成する場合は、液滴の着弾直後に露光する方法が適している。UVモノマーインクを用いた場合も、上述の溶媒の場合と同様に、乾燥程度、固化程度を測定してもよい。
【0315】
UVモノマーインクなどのモノマーインクを用いる場合には、蛍光を利用して硬化度を測定する形態もありうる。
【0316】
なお、半乾燥処理は、インク混合法を用いた導電性パターンの形成にも適用可能である。図4に図示したシステム構成に薬液を吐出させるインクジェットヘッド50‐13を追加し、傾斜組成を構成する各層(パターン)形成の前、後、前後のいずれかに薬液付与工程を追加すればよい。
【0317】
(撥液処理枠)
次に、図30を用いて、撥液処理枠について説明する。
【0318】
上の層を形成した後に、上の層の液体が下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすると、層の高さが不均一になり、機能材料として不具合を生じる可能性がある。このような現象を防止するために、下の層を形成した後に、その層のエッジ部分を、次に形成する上の層の液体に対して撥液性にしてもよい。
【0319】
図30(a)は、フレキシブルフィルム1の直上に機能性液体層380‐1を形成後、そのエッジ部分に撥液処理部381を形成したときの上面図、及び破線A‐Aにおける断面図である。また、図30(b)は、その後機能性液体層380‐1の上に機能性液体層380‐2を形成したときの上面図、及び破線A‐Aにおける断面図である。
【0320】
図30(b)に示すように、機能性液体層380‐1の表面に吐出された機能性液体層380‐2を形成する液体は、機能性液体層380‐1のエッジ部分に形成された撥液処理部381により、撥液処理部381の外側にはみ出すことがない。したがって、機能性液体層380‐1の上層に適切に機能性液体層380‐2を形成することができる。
【0321】
撥液処理部381を形成するには、フォトマスクを用いたパターニングや、ダイレクトレーザーイメージング、レーザを走査する方法や、インクジェットによるパターニング、スクリーン印刷等の各種印刷技術を利用できる。
【0322】
このように、パターン(層)のエッジ部分を撥液性にすることで、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0323】
(エッジ枠)
次に、図31を用いて、エッジ枠について説明する。
【0324】
上の層の液体が下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすることを防止するために、撥液処理ではなく、エッジ部分に凸状の枠を設ける処理を行ってもよい。
【0325】
図31(a)は、フレキシブルフィルム1の直上に機能性液体層382‐1を形成後、そのエッジ部分にエッジ枠383‐1を形成したときの上面図、及び破線A‐Aにおける断面図である。
【0326】
エッジ枠383‐1の生成には、インクジェットによるパターニングや、スクリーン印刷などの各種印刷技術を利用可能である。インクジェットによるパターニングを用いる場合には、UVモノマーインクを用いてパターンを形成し、その直後に露光を行って硬化させて生成する方法が有効である。
【0327】
ここで、「モノマーインク」とは、機能性モノマー(重合性化合物)を主成分とするインクであり、界面活性剤、重合開始剤、重合禁止剤、モノマー以外の溶剤などが含まれていてもよい。また、顔料、金属ナノ粒子、セラミック粒子などの微粒子を分散させてもよいし、機能性ポリマーなどを溶解させてもよい。
【0328】
図31(b)は、図31(a)に示した機能性液体層382‐1の上に、機能性液体層382‐2を形成したときの上面図、及び破線A‐Aにおける断面図である。
【0329】
図31(b)に示すように、機能性液体層382‐1の表面に吐出された機能性液体層382‐2を形成する液体は、機能性液体層382‐1のエッジ部分に形成されたエッジ枠383‐1により、エッジ枠383‐1の外側にはみ出すことがない。したがって、機能性液体層382‐1の上層に適切に機能性液体層382‐2を形成することができる。
【0330】
さらに、図31(c)は、図31(b)に示す状態から、エッジ枠383‐2,383‐3を形成しながら機能性液体層382‐3,382‐4を形成し、さらにエッジ枠383‐4を形成したときを示す断面図である。
【0331】
このエッジ枠383‐4により、液体がはみ出すことなく、機能性液体層382‐4の上にさらに機能性液体層を形成することができる。
【0332】
このように、パターン(機能性液体層)のエッジに逐次枠を設けてからその上の機能性液体層を形成していくことで、インク層が多層の場合や、パターンが複雑な場合であっても、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0333】
(インクジェットヘッドのヘッド長)
描画混合法において2つのインクを吐出して混合層を形成する場合には、基材の一辺よりもインクジェットヘッドのヘッドセットの合計長(ヘッド長)が長くなるように構成し(長尺ヘッド)、シングルパスで各層を形成することが好ましい。特に、図26で説明したように2つのインクを順に吐出する場合、後から吐出する方の液体は、シングルパスで形成することが好ましい。後から吐出する方の液体が、インクジェットヘッドを複数回走査して分割して吐出するように構成されていると、1回目の走査と2回目の走査との間で、時間の経過が大きくなり、拡散の程度に違いが生じるという問題点が発生する。このような現象を防止するために、長尺のヘッドを用いてシングルパスで吐出を行う。
【0334】
図32(a)は、基材390(図1のフレキシブルフィルム1)上に形成する傾斜機能材料の領域391と、ヘッド350との幅方向の関係を示す概略図である。
【0335】
例えば、図32(a)に示すように、ヘッド350のノズル351が基材390の幅よりも長く配列されていることが好ましい。このように構成することにより、ヘッド350と基材390との相対的な移動を1回行うことで(シングルパス)、ヘッド350から領域91へのインクの吐出を適切に行うことができる。なお、ヘッド350が基材390の幅よりも小さくても、ノズル351の配列が領域391の幅よりも長く形成されていればよい。
【0336】
また、基材390のサイズが大きい等の理由により、図32(a)のようにヘッド350を構成することが困難な場合には、図32(b)に示すように、短尺の各ヘッドモジュール352を複数組み合わせることにより、基材390の幅をカバーする長さを有するヘッドセット353を構成し、このヘッドセット353を1つのヘッド350として扱ってもよい。
【0337】
(描画跡対策)
次に、図33及び図34を用いて描画跡対策について説明する。
【0338】
上記した描画混合法、インク混合法によらず、乾燥が速い液体を用いた場合では、液体を吐出した層に描画跡が発生する可能性がある。
【0339】
図33は、沸点が160℃程度の有機溶剤系インクを使用して、60℃程度に加熱した基材に対して図面左から右へ、さらに上から下へラスタスキャン的に1つのノズルから液体を吐出して機能性液体層392を形成した例を示す。このように、横一列への吐出が終了後に1段下の列を吐出する場合、乾燥の速い液体を用いているとすでに吐出した列が乾燥しており、次の列を描画した際に描画跡ができてしまう。
【0340】
このような描画跡が発生すると、機能性液体層392の描画跡の方向による異方性が大きくなり、傾斜機能材料として好ましくない。
【0341】
このような異方性を低減するために、ヘッドと基材の走査方向を変更することが有効である。
【0342】
図34(a)は、インクジェットヘッド354と基材393上に形成する機能性液体層の領域394との相対移動関係を示す概略図である。インクジェットヘッド354と基材393は、図中の矢印のように相対移動されるとともにインクジェットヘッド354から機能性液体を吐出させ、領域394にパターン(層)を形成する。図4に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30が移動する。
【0343】
このとき、インクジェットヘッド354から吐出している機能性液体の乾燥が速いと、図33に示すような領域394の機能性液体層には描画跡が発生する。
【0344】
したがって、領域394への液体吐出終了後、図34(b)に示すように、相対移動の方向を90°変更させて、再び領域394への液体吐出を行う。図4に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30の移動方向を変更すればよい。
【0345】
なお、図34(c)に示すように、基材393の向きを90°変更してから、同様の向きのラスタスキャン方式によって再び領域394への液体吐出を行ってもよい。図4に示す装置であれば、ステージ30を90°回転させた後、図34(a)で示す方向と同じ方向に相対移動して液体を吐出すればよい。
【0346】
基材393側ではなく、インクジェットヘッド354が移動するように構成された装置においても同様であり、インクジェットヘッド354の移動方向を変更してもよいし、インクジェットヘッド354の移動方向を変更せずにステージ30を90°回転させてもよい。
【0347】
このように、相対移動して液体を吐出した後、90°異なる方向の相対移動によりさらに液体を吐出して1つの層を形成することで、描画跡が発生する場合であっても、異方性を低減することができる。なお、ここでは相対移動の方向を90°変更したが、略90°であればよい。
【0348】
(異なる成分を経由する傾斜組成の適用例)
第1、第2実施形態において説明したソース配線3等、及びその他の実施形態において説明したパッド322は、複数の金属ナノ粒子を用いて、これらを傾斜組成としてもよい。通常、Auは酸化しにくく安定した金属であり、柔らかいため、電気配線321やパッド322のトップ面(最表面)に使用される。しかし、価格が高いという欠点がある。
【0349】
これに対して、CuはICチップの電極に形成する膜としては、価格が安く、導電性が高く、現在の実装配線材料として一般的に用いられている銅膜が適している。また、Auよりもマイグレーション耐性が優れている点でも、Cu膜を採用する利点がある。しかし、Cuは酸化しやすいという欠点があり、電気配線321やパッド322のトップ面には適さない。
【0350】
そこで、電気配線321やパッド322は、基材側からトップ面へ導電性ポリマーから銅へ組成を傾斜させ、さらに銅から金へ組成を傾斜させるように構成してもよい。
【0351】
以下の説明において、パッド322の形成において、2種類以上の金属ナノ粒子が用いられ各成分が傾斜組成を構成する具体例について説明する。
【0352】
このような場合、例えば導電性を徐々に変化させる場合であれば、Ag→Au→Pt→Tiのように、異なる成分を経由させるように各層を形成してもよい。このように、多種成分の傾斜機能材料であっても、本発明を用いて生成可能である。
【0353】
図35(a)から(e)は、描画混合法により4種類の成分から成る傾斜機能材料を生成する形態を模式的に図示した説明図である。4種類の成分として、Ag、Au、Pt、Tiが適用され、インクジェットヘッド50Ag、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiのそれぞれから、Agナノ粒子液体、金属ナノ液体、Ptナノ粒子液体、Tiナノ粒子液体が吐出される。
【0354】
図35(a)は、最下層となる導電性ポリマー液体層120‐1の上に、Agナノ粒子液体によるAgナノ粒子液体層120‐21が形成されるAgナノ粒子液体層形成工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子液体層形成工程は、インクジェットヘッド50AgからAgナノ粒子液体を吐出させ、インクジェットヘッド50‐12、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiから液体を吐出させない。
【0355】
図35(b)は、Agナノ粒子液体層120‐21の表面に混合層120‐22を形成する工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子液体が80%、Auナノ液体が15%、Ptナノ粒子液体が5%、Tiナノ粒子液体が0%の比率で各液体を吐出させ、各液体を十分に拡散混合させる。
【0356】
図35(c)は、Agナノ粒子液体層120‐21の上に、混合層(Agナノ粒子液体、Auナノ液体、Ptナノ粒子液体、Tiナノ粒子液体の混合比率が80:15:5;0の混合層が形成された状態が模式的に図示されている。
【0357】
図35(d)は、先に形成された混合層120‐22に積層される混合層120‐23(図35(e)参照)を形成する工程は模式的に図示されている。
【0358】
図35(d)に示す混合層形成工程は、Agナノ粒子液体が60%、Auナノ液体が25%、Ptナノ粒子液体が10%、Tiナノ粒子液体が5%の比率で各液体を吐出させ、各液体を十分に拡散混合させる。
【0359】
図35(e)は、混合層120‐22に混合比率が異なる混合層120‐23が積層された状態が模式的に図示されている。このようにして、4種類の液体の混合比率を適宜変更しながら、傾斜機能材料が形成される。
【0360】
なお、傾斜機能材料の最上層及び最下層を混合層とする形態や、すべての成分の混合比率が単純増加又は単純減少しない形態(例えば、一部の成分が一定の混合比率となる形態や増加、減少の両方を含む形態)も可能である。
【0361】
図35(a)〜(e)では、描画混合法において4種類(3種類以上)の成分を用いた傾斜機能材料が生成される態様を例示したが、もちろん、インク混合法においても3種類以上の成分を用いて傾斜機能材料を生成することも可能である。
【0362】
なお、パッド322を形成するために、パッド322の外側に撥液処理をしてもよい。撥液処理の具体例として、不活性ガス環境下においてレーザ光線を照射する態様が挙げられる。
【0363】
傾斜機能材料を構成する複数の成分に対応した複数のインクは、表面張力(表面エネルギー)が大きい順に付与するとよい。相対的に表面張力が小さい液体を先に付与し、相対的に表面張力が大きい液体を後から付与すると、後から付与された相対的に表張力が大きい液体が十分に拡散混合されずに、層内で成分の分布が生じてしまう。
【0364】
また、図示は省略するが、後から付与される液体を最密充填(ヘキサゴナル)に描画すると、拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0365】
(他の装置構成への応用例)
図36は、他の装置構成への応用例に係る導電性パターン形成システム10’の概略構成を示す構成図である。なお、図36において、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0366】
同図に示す導電性パターン形成システム1’は、フレキシブルフィルム1が巻かれたロール1Aからフレキシブルフィルム1が引き出され、有機TFT(図36中不図示、図1参照)や導電性パターン(図36中不図示、図1のソース配線3、ドレイン配線4等)が形成された後に、ロール1Bに巻き取られる、いわゆるロール・トゥ・ロール方式が適用されている。
【0367】
以上説明した導電性パターン形成方法及びシステムは、導電性パターン構造体の製造方法、導電性パターン構造体の製造システム(装置)として適用可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。
【0368】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す態様を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0369】
(第1態様):導電性高分子化合物を含有し、又は前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を所定の含有比率で含有した第1機能性液体を第1インクジェットヘッドから吐出させて、基材上に第1パターンを形成する第1パターン形成工程と、前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を含有し、前記第1機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第2機能性液体を第2インクジェットヘッドから吐出させて、前記第1パターン上に第2パターンを形成する第2パターン形成工程と、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子を含有し、前記第2機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第3機能性液体を第3インクジェットヘッドから吐出させて、前記第2パターン上に第3パターンを形成する第3パターン形成工程と、を含み、少なくとも前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンを含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成する導電性パターン形成方法。
【0370】
かかる態様によれば、厚み方向について、基材から導電性高分子化合物の含有比率が減少しつつ、金属微粒子の含有比率が増加する傾斜組成構造を有する導電性パターンが形成されるので、基材と導電性パターンとの接合部分では導電性高分子化合物の含有比率が大きいことによる基材との密着性が確保され、かつ、金属微粒子の含有比率を増加させることで良好な電気的性能が発揮される。
【0371】
(第2態様):前記導電性パターンは、基材上に形成された電気配線である導電性パターン形成方法。
【0372】
かかる態様における電気配線は、基材上に形成された電子デバイス等を電気的に接続させる導電性パターンが含まれる。
【0373】
(第3態様):前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線である導電性パターン形成方法。
【0374】
かかる態様におけるドットの直径は、基材上に着弾した液滴の形状が安定した状態の値とする態様が好ましい。
【0375】
(第4態様):前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線を、前記電気配線の幅方向に複数本つなげた構造の電極である導電性パターン形成方法。
【0376】
かかる態様によれば、好ましい微細幅を有する電気配線を、該電気配線の幅方向につなげることで、電極を形成しうる。
【0377】
かかる態様における電極には、パッド、ランド、バンプと呼ばれる導電性パターンが含まれる。
【0378】
(第5態様):前記機能性液体は、75℃以上105℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む導電性パターン形成方法。
【0379】
かかる態様によれば、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制され、好ましい微細電気配線が形成される。
【0380】
(第6態様):前記機能性液体は、190℃以上290℃以下の沸点を有する高沸点溶媒を含む導電性パターン形成方法。
【0381】
かかる態様によれば、インクジェット方式による好ましい液体吐出が実現されるとともに、機能性液体によるパターン(ドット)の乾燥が最適化される。
【0382】
(第7態様):前記機能性液体によるパターンを形成する際に、前記基材は45℃以上75℃以下となるように加熱処理される導電性パターン形成方法。
【0383】
かかる態様によれば、基材を加熱することで、基材上における機能性液体の濡れ広がりが抑制される。
【0384】
(第8態様):前記機能性液体によるパターン形成において、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体の直径Dと、前記液体が基材上に着弾し、形状が安定した後のドットの直径Dと、前記基材上に形成された前記ドットのドット間ピッチWと、の関係は、次式D<W<Dを満たす導電性パターン形成方法。
【0385】
かかる態様によれば、ジャギーの発生やバルジの発生が回避された好ましい微細幅を有する導電性パターンを形成しうる。
【0386】
(第9態様):前記ドット直径Dと、前記ドット間ピッチWと、の関係は、次式W≦D/2を満たす導電性パターン形成方法。
【0387】
かかる態様によれば、さらに、均一な微細幅を有する導電性パターンを形成しうる。
【0388】
(第10態様):前記導電性パターンは、基材上に形成された電極である導電性パターン形成方法。
【0389】
かかる態様における電極とは、微細幅の電気配線の幅を超える幅を有する導電性パターンであり、パッド、ランド、バンプと呼ばれる導電性パターンが含まれる。
【0390】
(第11態様):前記電極は、前記導電性パターンを構成するドットの直径を超える幅を有する導電性パターン形成方法。
【0391】
かかる態様における電極は、該ドットの直径の2倍以上の幅を有する態様が好ましい。
【0392】
(第12態様):前記機能性液体によるパターン形成は、前記基材と前記インクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記機能性液体によるパターンを形成し、前記基材と前記インクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記機能性液体を離散的に配置させ、前記基材と前記インクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記機能性液体の間を補間する導電性パターン形成方法。
【0393】
かかる態様によれば、機能性液体が基材に着弾したときの着弾干渉が防止される。また、機能性液体(ドット)形状の変形により層が円環状に変形するコーヒー染みの発生を防止しうる。
【0394】
(第13態様):前記形成されたパターンを半乾燥させる半乾燥工程を含む導電性パターン形成方法。
【0395】
かかる態様によれば、各パターン間の境界近傍における拡散が生じ、各パターン間の密着性を向上させることができる。
【0396】
(第14態様):前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせる導電性パターン形成方法。
【0397】
かかる態様によれば、乾燥が速い液体が用いられる場合でも、好ましい半乾燥状態が実現されうる。
【0398】
(第15態様):前記形成されたパターンの乾燥の程度を測定する工程を備え、前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させる導電性パターン形成方法。
【0399】
かかる態様によれば、乾燥の進行が速い機能性液体を用いた場合であっても、乾燥の進行を抑制することで半乾燥状態にすることができ、各層間の境界近傍における拡散を促進させることができる。
【0400】
(第16態様):先のパターン形成後であり、次のパターン形成前に、混合液体における前記導電性高分子化合物と前記金属微粒子との拡散を促進させる補助液体を付与する補助液体付与工程を含む導電性パターン形成方法。
【0401】
かかる態様によれば、先に形成された層と後に形成された層との密着性が強化される。
【0402】
(第17態様):前記第1パターンは、導電性高分子化合物を含有し、前記金属微粒子を含有しない第1機能性液体により形成される導電性パターン形成方法。
【0403】
かかる態様によれば、導電性高分子化合部の接合性能、柔軟性がより効果的に発揮される。
【0404】
(第18態様):前記機能性液体によるパターンの形成後に、該形成されたパターンの外周部を次に吐出される機能性液体に対して撥液化する撥液化工程を含む導電性パターン形成方法。
【0405】
かかる態様によれば、次に吐出される機能性液体が下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0406】
(第19態様):前記機能性液体によるパターンの形成後に、該形成されたパターンの外周部に次に吐出される機能性液体を取り囲むための枠を設ける枠生成工程を含む導電性パターン形成方法。
【0407】
かかる態様によれば、次に吐出される機能性液体が下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0408】
(第20態様):前記基材の表面を最初に吐出される機能性液体に対して親液化する親液化工程を含む導電性パターン形成方法。
【0409】
かかる態様によれば、最初に吐出させた機能性液体の基材上における濡れ性を向上させることができる。
【0410】
(第21態様):前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われる導電性パターン形成方法。
【0411】
かかる態様によれば、基材の直上に最初に形成される層を適切に形成することができる。
【0412】
(第22態様):導電性高分子化合物を含有し、又は前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を所定の含有比率で含有した第1機能性液体を吐出させる第1インクジェットヘッドと、前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を含有し、前記第1機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第2機能性液体を吐出させる第2インクジェットヘッドと、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子を含有し、前記第2機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第3機能性液体を吐出させる第3インクジェットヘッドと、を含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体のそれぞれに対応する複数のインクジェットヘッドと、前記第1インクジェットヘッドから前記第1機能性液体を吐出させて、基材上に形成された第1パターン、前記第2インクジェットヘッドから前記第2機能性液体を吐出させて、前記第1パターン上に形成された第2パターン、前記第3インクジェットヘッドから前記第3機能性液体を吐出させて、前記第2パターン上に形成された第3パターンを少なくとも含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成するように前記複数のインクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、を備えた導電性パターン形成システム。
【0413】
かかる態様において、第2態様から第21態様のそれぞれを実現させる手段が具備される態様が好ましい。
【0414】
(第23態様):第1インクジェットヘッドから吐出させた導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体、又は前記導電性高分子化合物液体及び第2インクジェットヘッドから吐出させた金属微粒子を含有する金属微粒子液体が所定の混合比率で混合された液体を用いて第1パターンを形成する第1パターン形成工程と、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第1パターンの形成に用いられる液体に対して導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いた第2パターンを、前記第1パターン上に形成する第2パターン形成工程と、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第2パターンの形成に用いられる液体に対して、前記導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いた第3パターンを、前記第2パターン上に形成する第3パターン形成工程と、を含み、少なくとも前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンを含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成する導電性パターン形成方法。
【0415】
かかる態様によれば、第1態様に係る導電性パターン形成方法と同様の効果を得つつ、機能性液体の種類を減らすことができる。
【0416】
(第24態様):前記導電性パターンは、基材上に形成された電気配線である導電性パターン形成方法。
【0417】
(第25態様):前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線である導電性パターン形成方法。
【0418】
(第26態様):前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線を、前記電気配線の幅方向に複数本つなげた構造の電極である導電性パターン形成方法。
【0419】
(第27態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、先に吐出させた液体は、隣接するドットが重なるように配置されるとともに、混合比率の小さい液体は、先に吐出させた液体により形成された隣接するドットの中間位置に配置される導電性パターン形成方法。
【0420】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体及び金属微粒子液体の混合状態が良好となり、ジャギーレス、バルジレスの好ましい微細パターンが形成される。
【0421】
(第28態様):前記形成されたパターンは、前記第1パターンと同一のドット配置条件が適用される導電性パターン形成方法。
【0422】
かかる態様によれば、好ましい積層パターンを形成しうる。
【0423】
(第29態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、混合比率が小さい液体を混合比率が大きい液体よりも先に吐出させる導電性パターン形成方法。
【0424】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との良好な混合状態を得ることができる。
【0425】
(第30態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、表面張力が大きい液体を表面張力が小さい液体よりも先に吐出させる導電性パターン形成方法。
【0426】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との良好な混合状態を得ることができる。
【0427】
(第31態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方は、75℃以上105℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む導電性パターン形成方法。
【0428】
かかる態様によれば、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制され、好ましい微細電気配線が形成される。
【0429】
(第32態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方は、190℃以上290℃以下の沸点を有する高沸点溶媒を含む導電性パターン形成方法。
【0430】
(第33態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方によりパターンを形成する際に、前記基材は45℃以上75℃以下となるように加熱処理される導電性パターン形成方法。
【0431】
かかる態様によれば、インクジェット方式による好ましい液体吐出が実現されるとともに、機能性液体によるパターン(ドット)の乾燥が最適化される。
【0432】
(第34態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方によるパターン形成において、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体の直径Dと、前記液体が基材上に着弾し、形状が安定した後のドットの直径Dと、前記基材上に形成された前記ドットのドット間ピッチWと、の関係は、次式D<W<Dを満たす導電性パターン形成方法。
【0433】
かかる態様によれば、ジャギーの発生やバルジの発生が回避された好ましい微細幅を有する導電性パターンを形成しうる。
【0434】
(第35態様):前記ドット直径Dと、前記ドット間ピッチWと、の関係は、次式W≦D/2を満たす導電性パターン形成方法。
【0435】
かかる態様によれば、さらに、均一な微細幅を有する導電性パターンを形成しうる。
【0436】
(第36態様):前記導電性パターンは、基材上に形成された電極である導電性パターン形成方法。
【0437】
(第37態様):前記電極は、前記導電性パターンを構成するドットの直径を超える幅を有する導電性パターン形成方法。
【0438】
(第38態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体によるパターン形成において、導電性高分子化合物液体を間歇吐出させて離散的に配置し、離散的に配置された前記導電性高分子化合物液体と同じ位置に前記金属微粒子液体を間歇吐出させ、さらに、前記金属微粒子液体を間歇吐出させた後に、離散的に配置された前記導電性高分子化合物液体の間を補間するように前記導電性高分子化合物液体を吐出させ、さらに、前記導電性高分子化合物液体の間を補間するように前記導電性高分子化合物液体を吐出させた導電性高分子化合物液体と同じ位置に、前記金属微粒子液体を吐出させる導電性パターン形成方法。
【0439】
かかる態様によれば、機能性液体が基材に着弾したときの着弾干渉を防止することで、着弾干渉による機能性液体(ドット)形状の変形による、層が円環状に変形するコーヒー染みの発生を防止しうる。
【0440】
(第39態様):前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体によるパターン形成において、前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させた液体の打滴位置に、他方のインクジェットヘッドから液体を吐出させる導電性パターン形成方法。
【0441】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との拡散混合が促進される。
【0442】
(第40態様):前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出前に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む導電性パターン形成方法。
【0443】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との層内における拡散が促進される。また、先に形成されている層との境界における拡散が促進される。
【0444】
かかる態様における補助液体は、導電性高分子化合物液体や金属微粒子液体の溶媒成分を適用可能である。
【0445】
(第41態様):前記第1インクジェットヘッドの吐出と前記第2インクジェットヘッドの吐出との間に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む導電性パターン形成方法。
【0446】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との層内における拡散が促進される。
【0447】
(第42態様):前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出後に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む導電性パターン形成方法。
【0448】
かかる態様によれば、導電性高分子化合物液体と金属微粒子液体との層内における拡散が促進される。また、次に形成される層との境界における拡散が促進される。
【0449】
(第43態様):前記基材の前記導電性高分子化合物液体又は前記金属微粒子液体が付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体からなるパターンを形成する際に、前記導電性高分子化合物液体の量と金属微粒子液体の量のうち、比率が小さい方を先に吐出させる導電性パターン形成方法。
【0450】
かかる態様によれば、前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の良好な濡れ広がりが実現される。
【0451】
(第44態様):前記第1機能性液体及び前記第2機能性液体からなるパターンを形成する際に、前記導電性高分子化合物液体の量と金属微粒子液体の量のうち、比率が大きい方を先に吐出させる導電性パターン形成方法。
【0452】
かかる態様によれば、先に吐出させた液体を十分に濡れ広がらせた状態で、後に吐出させる液体を混合させることができ、混合拡散が促進される。
【0453】
(第45態様):前記基材上において、前記第1インクジェットヘッドから吐出された導電性高分子化合物液体と前記第2インクジェットヘッドから吐出された金属微粒子液体とを拡散混合する拡散混合工程を含む導電性パターン形成方法。
【0454】
かかる態様の具体例として、超音波振動を付与する形態が挙げられる。
【0455】
(第46態様):導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体を吐出させる第1インクジェットヘッドと、金属微粒子を含有する金属微粒子液体を吐出させる第2インクジェットヘッドと、前記第1インクジェットヘッドから吐出させた導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体、又は前記導電性高分子化合物液体及び第2インクジェットヘッドから吐出させた金属微粒子を含有する金属微粒子液体が所定の混合比率で混合された液体を用いて形成された第1パターン、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第1パターンの形成に用いられる液体に対して導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いて前記第1パターン上に形成された第2パターン、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第2パターンの形成に用いられる液体に対して、前記導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記の混合比率を増加させた液体を用いて前記第2パターン上に形成された第3パターンを少なくとも含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成するように前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、を備えた導電性パターン形成システム。
【0456】
かかる態様において、第24態様から第45態様の各工程を実現する手段を具備する態様が好ましい。
【0457】
(第47態様):前記第1インクジェットヘッド及び/又は第2インクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、を備え、前記移動手段による相対移動時に、前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドインクから吐出させた後、前記変更手段により前記相対移動の向きを90°変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させる導電性パターン形成システム。
【0458】
かかる態様によれば、描画跡に起因する異方性の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0459】
1…フレキシブルフィルム、2…有機TFT、3…ソース配線、4…ドレイン配線、50…インクジェットヘッド、42…ヒータ制御部、44…ヒータ、72…システム制御部、84…吐出制御部、321…電気配線、322…パッド、323…ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子化合物を含有し、又は前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を所定の含有比率で含有した第1機能性液体を第1インクジェットヘッドから吐出させて、基材上に第1パターンを形成する第1パターン形成工程と、
前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を含有し、前記第1機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第2機能性液体を第2インクジェットヘッドから吐出させて、前記第1パターン上に第2パターンを形成する第2パターン形成工程と、
前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子を含有し、前記第2機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第3機能性液体を第3インクジェットヘッドから吐出させて、前記第2パターン上に第3パターンを形成する第3パターン形成工程と、
を含み、
少なくとも前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンを含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成する導電性パターン形成方法。
【請求項2】
前記導電性パターンは、基材上に形成された電気配線である請求項1に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項3】
前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線である請求項1又は2に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項4】
前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線を、前記電気配線の幅方向に複数本つなげた構造の電極である請求項3に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項5】
前記機能性液体は、75℃以上105℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項6】
前記機能性液体は、190℃以上290℃以下の沸点を有する高沸点溶媒を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項7】
前記機能性液体によるパターンを形成する際に、前記基材は45℃以上75℃以下となるように加熱処理される請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項8】
前記機能性液体によるパターン形成において、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体の直径Dと、前記液体が基材上に着弾し、形状が安定した後のドットの直径Dと、前記基材上に形成された前記ドットのドット間ピッチWと、の関係は、次式
<W<D
を満たす請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項9】
前記ドット直径Dと、前記ドット間ピッチWと、の関係は、次式
W≦D/2
を満たす請求項8に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項10】
前記導電性パターンは、基材上に形成された電極である請求項1に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項11】
前記電極は、前記導電性パターンを構成するドットの直径を超える幅を有する請求項10に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項12】
前記機能性液体によるパターン形成は、前記基材と前記インクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記機能性液体によるパターンを形成し、
前記基材と前記インクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記機能性液体を離散的に配置させ、前記基材と前記インクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記機能性液体の間を補間する請求項10又は11に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項13】
前記形成されたパターンを半乾燥させる半乾燥工程を含む請求項1から12のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項14】
前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせる請求項13に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項15】
前記形成されたパターンの乾燥の程度を測定する工程を備え、
前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させる請求項13又は14に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項16】
先のパターン形成後であり、次のパターン形成前に、混合液体における前記導電性高分子化合物と前記金属微粒子との拡散を促進させる補助液体を付与する補助液体付与工程を含む請求項1から15のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項17】
前記第1パターンは、導電性高分子化合物を含有し、前記金属微粒子を含有しない第1機能性液体により形成される請求項1から16のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項18】
前記機能性液体によるパターンの形成後に、該形成されたパターンの外周部を次に吐出される機能性液体に対して撥液化する撥液化工程を含む請求項1から17のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項19】
前記機能性液体によるパターンの形成後に、該形成されたパターンの外周部に次に吐出される機能性液体を取り囲むための枠を設ける枠生成工程を含む請求項1から18のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項20】
前記基材の表面を最初に吐出される機能性液体に対して親液化する親液化工程を含む請求項1から19のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項21】
前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われる請求項1から20のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項22】
導電性高分子化合物を含有し、又は前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を所定の含有比率で含有した第1機能性液体を吐出させる第1インクジェットヘッドと、
前記導電性高分子化合物及び金属微粒子を含有し、前記第1機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第2機能性液体を吐出させる第2インクジェットヘッドと、
前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子を含有し、前記第2機能性液体に対して前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた第3機能性液体を吐出させる第3インクジェットヘッドと、
を含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体のそれぞれに対応する複数のインクジェットヘッドと、
前記第1インクジェットヘッドから前記第1機能性液体を吐出させて、基材上に形成された第1パターン、前記第2インクジェットヘッドから前記第2機能性液体を吐出させて、前記第1パターン上に形成された第2パターン、前記第3インクジェットヘッドから前記第3機能性液体を吐出させて、前記第2パターン上に形成された第3パターンを少なくとも含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子の含有比率が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒子の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成するように前記複数のインクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
を備えた導電性パターン形成システム。
【請求項23】
第1インクジェットヘッドから吐出させた導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体、又は前記導電性高分子化合物液体及び第2インクジェットヘッドから吐出させた金属微粒子を含有する金属微粒子液体が所定の混合比率で混合された液体を用いて第1パターンを形成する第1パターン形成工程と、
前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第1パターンの形成に用いられる液体に対して導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いた第2パターンを、前記第1パターン上に形成する第2パターン形成工程と、
前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第2パターンの形成に用いられる液体に対して、前記導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いた第3パターンを、前記第2パターン上に形成する第3パターン形成工程と、
を含み、
少なくとも前記第1パターン、前記第2パターン及び前記第3パターンを含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成する導電性パターン形成方法。
【請求項24】
前記導電性パターンは、基材上に形成された電気配線である請求項23に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項25】
前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線である請求項23又は24に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項26】
前記導電性パターンは、前記導電性パターンを構成するドットの直径に対応する幅を有する電気配線を、前記電気配線の幅方向に複数本つなげた構造の電極である請求項25に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項27】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、先に吐出させた液体は、隣接するドットが重なるように配置されるとともに、混合比率の小さい液体は、先に吐出させた液体により形成された隣接するドットの中間位置に配置される請求項23から26のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項28】
前記形成されたパターンは、前記第1パターンと同一のドット配置条件が適用される請求項23から27のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項29】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、混合比率が小さい液体を混合比率が大きい液体よりも先に吐出させる請求項23から28のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項30】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体のうち、表面張力が大きい液体を表面張力が小さい液体よりも先に吐出させる請求項23から29のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項31】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方は、75℃以上105℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む請求項23から30のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項32】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方は、190℃以上290℃以下の沸点を有する高沸点溶媒を含む請求項23から31のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項33】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方によりパターンを形成する際に、前記基材は45℃以上75℃以下となるように加熱処理される請求項23から32のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項34】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体の少なくともいずれか一方によるパターン形成において、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体の直径Dと、前記液体が基材上に着弾し、形状が安定した後のドットの直径Dと、前記基材上に形成された前記ドットのドット間ピッチWと、の関係は、次式
<W<D
を満たす請求項23から33のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項35】
前記ドット直径Dと、前記ドット間ピッチWと、の関係は、次式
W≦D/2
を満たす請求項34に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項36】
前記導電性パターンは、基材上に形成された電極である請求項23に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項37】
前記電極は、前記導電性パターンを構成するドットの直径を超える幅を有する請求項36に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項38】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体によるパターン形成において、導電性高分子化合物液体を間歇吐出させて離散的に配置し、
離散的に配置された前記導電性高分子化合物液体と同じ位置に前記金属微粒子液体を間歇吐出させ、
さらに、前記金属微粒子液体を間歇吐出させた後に、離散的に配置された前記導電性高分子化合物液体の間を補間するように前記導電性高分子化合物液体を吐出させ、
さらに、前記導電性高分子化合物液体の間を補間するように前記導電性高分子化合物液体を吐出させた導電性高分子化合物液体と同じ位置に、前記金属微粒子液体を吐出させる請求項36又は37に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項39】
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体によるパターン形成において、前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させた液体の打滴位置に、他方のインクジェットヘッドから液体を吐出させる請求項36から37のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項40】
前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出前に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む請求項36から39のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項41】
前記第1インクジェットヘッドの吐出と前記第2インクジェットヘッドの吐出との間に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む請求項36から39のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項42】
前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出後に、補助液体を付与する補助液体付与工程を含む請求項36から39のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項43】
前記基材の前記導電性高分子化合物液体又は前記金属微粒子液体が付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、
前記導電性高分子化合物液体及び前記金属微粒子液体からなるパターンを形成する際に、前記導電性高分子化合物液体の量と金属微粒子液体の量のうち、比率が小さい方を先に吐出させる請求項36から42のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項44】
前記第1機能性液体及び前記第2機能性液体からなるパターンを形成する際に、前記導電性高分子化合物液体の量と金属微粒子液体の量のうち、比率が大きい方を先に吐出させる請求項36から43のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項45】
前記基材上において、前記第1インクジェットヘッドから吐出された導電性高分子化合物液体と前記第2インクジェットヘッドから吐出された金属微粒子液体とを拡散混合する拡散混合工程を含む請求項36から44のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項46】
導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体を吐出させる第1インクジェットヘッドと、
金属微粒子を含有する金属微粒子液体を吐出させる第2インクジェットヘッドと、
前記第1インクジェットヘッドから吐出させた導電性高分子化合物を含有する導電性高分子化合物液体、又は前記導電性高分子化合物液体及び第2インクジェットヘッドから吐出させた金属微粒子を含有する金属微粒子液体が所定の混合比率で混合された液体を用いて形成された第1パターン、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第1パターンの形成に用いられる液体に対して導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いて前記第1パターン上に形成された第2パターン、前記第1インクジェットヘッドから前記導電性高分子化合物液体を吐出させるとともに、前記第2インクジェットヘッドから前記金属微粒子液体を吐出させ、前記第2パターンの形成に用いられる液体に対して、前記導電性高分子化合物液体の混合比率を減少させ、前記金属微粒子液体の混合比率を増加させた液体を用いて前記第2パターン上に形成された第3パターンを少なくとも含み、前記導電性高分子化合物及び前記金属微粒子が異なる3種類以上の機能性液体を用いて、厚み方向について、前記基材から前記導電性高分子化合物の含有比率を減少させつつ、前記金属微粒の含有比率を増加させた傾斜組成を有する導電性パターンを形成するように前記第1インクジェットヘッド及び前記第2インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
を備えた導電性パターン形成システム。
【請求項47】
前記第1インクジェットヘッド及び/又は第2インクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、
前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、
を備え、
前記移動手段による相対移動時に、前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドインクから吐出させた後、
前記変更手段により前記相対移動の向きを90°変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させる請求項46に記載の導電性パターン形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−110315(P2013−110315A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255279(P2011−255279)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】