説明

導電性パターン形成方法

【課題】低温での加熱により導電性に優れ、かつ良好な耐環境信頼性を有する導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】水性媒体中に平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子と非金属無機粒子を含有し、該金属超微粒子の平均粒子径D1(単位:nm)および該非金属無機粒子の平均粒子径D2(単位:nm)の比D1/D2が0.31〜6.0であり、かつ非金属無機粒子の含有量が全固形分量に対して3.0〜17質量%である導電性組成物を用い、基材上にパターンを形成し、該パターンを220〜480℃の条件下で加熱する事を特徴とする導電性パターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性組成物を用いた導電性パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材上に導電性パターンを形成する方法として、金属粉末とバインダーとから構成される導電性組成物を用いた導電性パターン形成方法が知られている。
【0003】
導電性組成物は、その用途により貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉等をバインダーと溶剤に混合し、これを用いて基材上にパターンを形成し、加熱する事により導電性パターンを形成する。一般的にバインダーは導電性パターン形成過程で固化し、導電性パターンの断線抑制や形状、強度を維持するために不可欠なものである。
【0004】
導電性パターン形成方法には加熱する温度の違いにより低温加熱型と高温加熱型とがある。高温加熱型導電性パターン形成方法は、バインダーとして有機樹脂の他にガラスフリットといった無機物を含む導電性組成物を用い、無機物が軟化又は溶融する温度以上の高温で加熱する事で導電性パターンを形成する方法である。加熱の際にはまず溶剤、次いで有機樹脂が除去されると共に無機物が軟化、流動して金属粉末間に浸透する。同時に接触している金属粉末同士が融着し導電性を発現させ、浸透した無機物が加熱後の冷却によって固化し導電性パターンの強度が向上する。
【0005】
高温加熱型導電性パターン形成方法として、例えば特開2011−129787号公報(特許文献1)には金属粒子と、セラミックス粒子と、前記金属粒子および前記セラミックス粒子が分散した水系分散媒とを含む事を特徴とする導電性パターン形成用インクを用いた導電性パターン形成方法が開示されている。該文献には導体パターン前駆体の加熱温度は600℃以上900℃以下が好ましい、との記載があり、実施例では890℃で30分間の焼結を実施している。しかしバインダーとして無機物を含む導電性組成物を用いる場合、電子部品の耐環境信頼性試験、例えばヒートサイクル試験に耐えうるような良好な耐環境信頼性を有する導電性パターンを形成できるが、一般的に500℃以上の高温で加熱する必要があるため、使用できる基材は高耐熱性を有するものに限定されるという課題があった。
【0006】
一方、低温加熱型導電性パターン形成方法は、バインダーとして熱硬化性有機樹脂を含む導電性組成物を用い、加熱処理で樹脂を硬化収縮させ、金属粉末同士を接触させて導電性を発現させ導電性パターンを形成する。バインダーとして熱硬化性有機樹脂を含む導電性組成物の加熱処理は500℃未満の比較的低温で行われるため耐熱性の低い基材への適用が可能であるが、形成された導電性パターンの耐環境信頼性が低下しやすいという課題があった。
【0007】
従って、低温での加熱により導電性に優れ、良好な耐環境信頼性を有する導電性パターン形成方法が求められていた。
【0008】
500℃以下の低温で軟化又は溶融する低融点ガラスフリットは広く製造されており、特開2006−147457号公報(特許文献2)には平均粒子径が0.1μm以上の酸化銀粒子と低融点ガラスフリットを含み、400℃から500℃の低温で焼成可能な導体ペーストが開示されている。該文献には低融点ガラスフリットとして硼珪酸鉛系ガラス、硼珪酸ビスマス系ガラス、燐酸塩系ガラス、バナジン酸塩系ガラスが好ましく使用できると記載されているが、硼珪酸鉛系ガラスは世界的に規制が進む鉛を含む点、硼珪酸ビスマス系ガラスやバナジン酸塩系ガラスは供給不安のあるレアメタルを含む点、燐酸塩系ガラスは化学的安定性が劣る点が問題であった。
【0009】
特表2008−527169号公報(特許文献3)には320℃以下の低温で焼成可能な金属超微粒子の水系分散物が開示され、レオロジー変性剤の一例としてコロイダルシリカが記載されている。また特開2011−025673号公報(特許文献4)には特定の粒径の金属粒子と特定の粒径の非金属無機粒子とを含む構造体が開示されている。しかしながら低温条件下での加熱により得られた導電性パターンの耐環境信頼性は十分満足できるものではなく、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−129787号公報
【特許文献2】特開2006−147457号公報
【特許文献3】特表2008−527169号公報
【特許文献4】特開2011−025673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低温での加熱により導電性に優れ、かつ良好な耐環境信頼性を有する導電性パターン形成方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1.水性媒体中に平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子と非金属無機粒子を含有し、該金属超微粒子の平均粒子径D1(単位:nm)および該非金属無機粒子の平均粒子径D2(単位:nm)の比D1/D2が0.31〜6.0であり、かつ非金属無機粒子の含有量が全固形分量に対して3.0〜17質量%である導電性組成物を用い、基材上にパターンを形成し、該パターンを220〜480℃の条件下で加熱する事を特徴とする導電性パターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温での加熱により導電性に優れ、かつ良好な耐環境信頼性を有する導電性パターン形成方法を提供する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明者らは、水性媒体中に含有される平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子と、非金属無機粒子の平均粒子径が特定の関係にあり、非金属無機粒子の含有量が全固形分量に対し特定の範囲内にある導電性組成物を用いた場合、優れた導電性と、良好な耐環境信頼性を有する導電性パターンが形成できる事を見出した。
【0016】
本発明において導電性組成物が含有する水性媒体とは、固形分を除く分散媒成分の少なくとも50質量%以上が水である事を意味する。水以外に含まれる溶媒としては、アルコール類、グリコール類等の水と混和性の高い有機溶媒を例示する事ができる。
【0017】
本発明において、金属超微粒子の平均粒子径は、金属超微粒子の分散安定性の観点から、また得られる導電性の観点から0.1μm以下である事が必要であり、好ましくは0.05μm以下である。なお、金属超微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求める事ができる。詳細にはポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、金属超微粒子分散液を塗布、乾燥させ、走査型電子顕微鏡にて観察し、一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として求め、更にこれを平均し求める。
【0018】
金属超微粒子は、高い導電性、価格、生産性、扱いやすさ等の点から、主に銀から成る事が好ましい。ここで主に銀から成るとは、金属超微粒子中において、銀の占める割合が少なくとも50質量%以上である事を意味し、より好ましくは銀の占める割合が70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。銀以外に含まれる金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、ビスマスを挙げる事ができる。銀以外の金属は主に銀から成る金属超微粒子中に含まれていても良く、主に銀から成る金属超微粒子と銀以外の金属の超微粒子が混合されていても良い。
【0019】
金属超微粒子としては、不活性ガス中で金属を蒸発させガスとの衝突により冷却・凝縮し回収するガス中蒸発法、レーザー照射のエネルギーにより液中で蒸発・凝縮し回収するレーザーアブレーション法、水溶液中で溶液中金属イオンを還元し生成・回収する化学的還元法、有機金属化合物の熱分解による方法、金属塩化物の気相中での還元による方法、酸化物の水素中還元法等、公知の種々の方法により製造された物を好ましく用いる事ができる。本発明においては、導電性組成物の作製が容易になる点より化学的還元法で製造された物がより好ましい。
【0020】
化学還元法にて用いる還元剤としては特に限定されず、金属イオンを還元する事ができる公知の還元剤を選択すれば良い。ハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルフォネートカリウム塩、アスコルビン酸又はその塩、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン化合物、ホルマリン、ホスフィン酸又はその塩、酒石酸又はその塩、他にデキストリン、マルトース、グルコースなどの多糖類や二糖類、単糖類を例示する事ができる。
【0021】
金属超微粒子は分散安定性の観点から分散剤で被覆されている事が好ましい。例えば、American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889,M Carey Lea.に記載される方法においてはクエン酸が分散剤となっており、Experiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and lynn,J.E.に記載される方法においてはデキストリンが分散剤となっている。他に、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等の各種イオン性化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等の各種界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カラギーナン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイミン、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース類等の水溶性高分子類、脂肪酸やアミン等を持つ各種有機金属化合物類等を用いる事ができる。
【0022】
特に、デキストリン等の多糖類を還元剤および分散剤として兼用する事は、金属超微粒子製造時の原料品種の削減につながるため、生産性の観点から好ましい。多糖類を還元剤および分散剤として兼用する場合、その添加量は、金属イオン1モルに対して、10〜200gが好ましく、より好ましくは30〜110gである。
【0023】
多糖類を用いる場合、還元反応が終了した段階で1,4−α−結合を不規則に切断するα−アミラーゼを作用させ、還元反応が終了した段階において残留している多糖類を低分子化する事も好ましい。α−アミラーゼを作用させる事により、限外濾過や遠心分離等の公知の方法を用い金属超微粒子分散液中の金属超微粒子の濃度を30質量%以上に高めた場合に顕著となる、金属超微粒子分散液の経時に伴う増粘挙動を抑制する事ができる他、導電性組成物中への不要な多糖類の残留を抑制し、耐環境信頼性の悪化を抑制できる。α−アミラーゼは、例えば天野エンザイム株式会社よりビオザイムF10SD、ビオザイムAとして市販されているα−アミラーゼを用いる事ができる。α−アミラーゼ添加前の金属超微粒子分散液は、α−アミラーゼに適したpH4〜10、20〜50℃に調整される事が好ましい。pHの調整には、酢酸等のカルボン酸類や硝酸を用いる事が好ましい。α−アミラーゼの添加量は、用いるデキストリン等の多糖類の質量に対し0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0024】
本発明において、非金属無機粒子とは無機物のうち金属の性質を持たない元素単独からなる粒子および金属の性質を持たない化合物からなる粒子である。非金属無機粒子として用いる事のできる材料としては、特に限定はされないが、例えばケイ素、ゲルマニウム、カーボンブラック等の単体、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ランタニウム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化チタニウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素等の窒化物、蛍石等のハロゲン化物、カオリナイトやモンモリロナイトなどの無機層状化合物、又はこれらの混合物等を挙げる事ができ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いる事ができる。
【0025】
上記の材料の中でも、導電性組成物中での化学的安定性、金属超微粒子の分散安定性への影響の観点から、非金属無機粒子は酸化物である事が好ましく、粒度分布の小さい粒子の入手が容易である事、コストが低い事から二酸化ケイ素である事が特に好ましい。また本発明の導電性組成物には複数種の非金属無機粒子を含有させる事ができるが、非金属無機粒子の合計量に対する酸化物の占める割合は少なくとも50質量%以上である事が好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0026】
非金属無機粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求める事ができる。詳細にはポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、非金属無機粒子分散液を塗布、乾燥させ、走査型電子顕微鏡にて観察し、一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として求め、更にこれを平均し求める。
【0027】
本発明における導電性組成物に含まれる金属超微粒子の平均粒子径D1(単位:nm)と、非金属無機粒子の平均粒子径D2(単位:nm)の比D1/D2は0.31〜6.0である。D1/D2が0.31未満あるいは6.0を超える場合、導電性パターンの導電性や耐環境信頼性が低下する場合がある。
【0028】
導電性組成物における非金属無機粒子の含有量は、導電性組成物の全固形分量に対して3.0〜17質量%である。非金属無機粒子の含有量が3.0質量%未満である場合、バインダーとしての効果が乏しくなり、導電性パターンの耐環境信頼性が低下する場合がある。非金属無機粒子の含有量が17質量%を超える場合、導電性パターン中に占めるバインダーが過剰となり、導電性パターンの導電性が低下する場合がある。
【0029】
本発明における導電性組成物には上記以外の含有物と併用して、公知の各種界面活性剤(例えばアルキル硫酸ナトリウム類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム類、フッ素系界面活性剤等)を添加して表面張力を調整する事ができ、乾燥を抑制するために高沸点溶媒(例えばエチレングリコールやプロピレングリコール等)を添加する事もできる。また、ポリアクリル酸等の増粘剤を用いて粘度を調整する事もできる。
【0030】
本発明における導電性組成物に対し、パターン形成時の成膜性改善や、導電性パターンのピンホール発生の抑制を目的として有機樹脂を添加する事も可能である。添加可能な有機時樹脂としては特に限定されず、ポリビニルアルコール類、ゼラチン類、多糖類等の水溶性樹脂や、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、SBR、NBR、MBR、ビニルピリジン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エポキシ樹脂等、公知の有機樹脂を例示できる。導電性パターンの耐環境信頼性への悪影響を低減する観点から、導電性組成物における有機樹脂の含有量は、導電性組成物の全固形分量に対して3.0質量%以下(0を含む)である事が好ましく、より好ましくは1.0質量%以下(0を含む)である。同様の観点から、導電性組成物に添加する有機樹脂の熱分解温度は加熱温度よりも低い事が好ましい。
【0031】
導電性組成物を用いて基材上にパターンを形成する方法としては、特に限定されず、カーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式、ディップ方式等による塗布、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等による印刷等、公知の方法を用いる事ができる。またパターンを形成する前に、基材に対しコロナ放電やUV照射、常圧プラズマ等、公知の方法による表面改質を行う事ができる。
【0032】
基材上にベタ状のパターンを形成後、もしくは導電性パターンを形成後に、エッチングによるパターン化を行う場合は、公知の各種のフォトリソグラフィーや直接印刷によりレジスト層を形成し、硝酸第二鉄水溶液や、リン酸と硝酸の混酸溶液、硫酸セリウム水溶液等、公知の金属のエッチング溶液を用いて行う事が好ましい。
【0033】
本発明において基材は特に限定される事はなく、例えばポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セロファン、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、天然ゴム、ポリエチレンジオキシチオフェン、セルロース等の各種ポリマー、繊維、樹脂等からなる薄層、シート状あるいは立体状の各種成型物、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウケイ酸ガラス、サファイア等の各種ガラス、水晶、AlN、Al、SiC、SiN、MgO、BeO、ZrO、Y、ThO、CaO、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)、FTO、ITO、ZnO、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、砂、石等の無機材料からなる薄層や成型物、あるいは無機材料の粉末が焼結された各種セラミックスや、焼結前の無機材料粉末とバインダーが混練された一般的にグリーンシートと呼称されるシート、各種金属等を挙げる事ができ、必要に応じそれらを併用してもよい。基材の耐熱温度は200℃以上が好ましく、より好ましくは250℃以上である。
【0034】
本発明の導電性パターン形成方法において加熱とは、基材上でパターンを昇温させる事を意味し、かかるパターンは溶媒成分を含んでいても良い。従って本発明におけるパターンの加熱として、具体的にはパターン形成前の基材を加熱しておく事による加熱、パターン形成時の乾燥工程による加熱、パターンを乾燥した後の加熱、等が挙げられる。生産性の観点からパターンを乾燥した後の加熱が好ましい。パターンを乾燥した後の加熱工程には、パターンに導電性を発現させる事を目的とした加熱工程、パターン上に導電性接着剤を用いて部品を実装する際の熱圧着工程、パターン上へのはんだ等を用いた部品実装工程、パターン保護を目的としたソルダーレジスト硬化工程や熱ラミネート工程、加熱殺菌工程や電子部品の高温試験工程、等も含まれる他、前述の一般的にグリーンシートと呼称されるシートを基材に用いた場合には該シートを焼結する工程も含まれる。
【0035】
加熱方法としては、特に限定される事なく、ヒーター、熱媒による加熱、エネルギー線の照射、熱風、電磁誘導加熱等、公知の方法を用いる事ができる。
【0036】
基材上に形成されたパターンは、220〜480℃で加熱する。加熱温度が220℃未満あるいは480℃を超える場合、導電性パターンの導電性や耐環境信頼性が低下する場合がある。加熱時間は特に限定されないが、生産性の観点から10秒間以上8時間未満が好ましい。
【0037】
本発明の導電性パターン形成方法を利用する具体的用途としては、有機TFTのゲート、ソース、ドレイン電極の作製、有機EL素子の補助電極の作製、各種タッチパネルの周辺電極の作製、各種ディスプレイの表示電極およびアドレス電極の作製、有機化合物系太陽電池の集電電極の作製、電磁波シールド材の作製、水晶振動子上への金属構造の作製、等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0039】
《実施例1》
<銀超微粒子分散液1の作製>
10Lのステンレスビーカーに焙焼デキストリン(日澱化学株式会社製、デキストリンNo.3)653gと純水5772gを加え、約30分間撹拌し溶解した。その後、硝酸銀1582gを加え、約30分間撹拌し溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却し、水酸化カリウム730gを純水1007gに溶解した10℃の液を添加し、氷浴中で攪拌しながら1時間の還元反応を行った。得られた溶液に酢酸を添加し、pH=5.6に調整後、恒温水槽を用いて45℃に昇温し、ビオザイムF10SD(天野エンザイム株式会社製)を3.0g添加し1時間撹拌した。得られた液を遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液1を得た。含まれる銀超微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求めたところ20nmであり、収率は89%であった。
【0040】
<銀超微粒子分散液2の作製>
10Lのステンレスビーカーに焙焼デキストリン(日澱化学株式会社製、デキストリンNo.3)301gと純水6124gを加え、約30分間撹拌し溶解した。その後、硝酸銀1582gを加え、約30分間撹拌し溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却し、水酸化カリウム730gを純水1007gに溶解した10℃の液を添加し、氷浴中で攪拌しながら1時間の還元反応を行った。得られた溶液に酢酸を添加し、pH=5.6に調整後、恒温水槽を用いて45℃に昇温し、ビオザイムF10SD(天野エンザイム株式会社製)を3.0g添加し1時間撹拌した。得られた液を遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液2を得た。含まれる銀超微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求めたところ40nmであり、収率は87%であった。
【0041】
<導電性組成物の作製>
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXS(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は5nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物1を作製した。
【0042】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスS(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は10nm、固形分濃度30質量%)を1.6g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物2を作製した。
【0043】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のEG−ST(二酸化ケイ素エチレングリコール分散体、平均粒子径15nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物3を作製した。
【0044】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスC(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は15nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物4を作製した。
【0045】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスN−40(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は20nm、固形分濃度40質量%)を1.2g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物5を作製した。
【0046】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスAK−L(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は40nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物6を作製した。
【0047】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスOL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は50nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物7を作製した。
【0048】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は50nm、固形分濃度40質量%)を1.2g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物8を作製した。
【0049】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスZL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は90nm、固形分濃度40質量%)を1.2g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物9を作製した。
【0050】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、熱硬化性有機樹脂として第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス820(ウレタン樹脂水分散体、固形分濃度30質量%)を0.73g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物10を作製した。
【0051】
銀超微粒子分散液2を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXS(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は5nm、固形分濃度20質量%)を2.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物11を作製した。
【0052】
銀超微粒子分散液2を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスS(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は10nm、固形分濃度30質量%)を1.6g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物12を作製した。
【0053】
<パターンの作製>
導電性組成物1から12を厚み1.0mmのソーダガラスにワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり4.0gとなるよう塗布、乾燥しパターン1から12を作製した。
【0054】
<導電性パターンの作製>
パターン1から12を電気炉に入れ、300℃で30分間加熱し、導電性パターン1から12を得た。
【0055】
<耐環境信頼性評価>
導電性パターン1から12にヒートサイクル試験を実施し、導電性変化率を評価した。導電性変化率が小さいほど、耐環境信頼性が良好である事を意味する。なお、ヒートサイクル試験は低温(−30℃)保持時間1時間→昇温(−30℃から80℃まで)1時間→高温(80℃)保持時間1時間→降温(80℃から−30℃まで)1時間を1サイクルとし、10サイクル実施した。導電性の評価は株式会社三菱化学アナリテック製ロレスタ−GPを用いてシート抵抗値を測定した。導電性変化率の評価結果を、D1/D2値、導電性組成物の全固形分量に対する非金属無機粒子の含有量、ヒートサイクル試験前の初期シート抵抗値と併せて表1に記す。なお、D1は金属超微粒子の平均粒子径(単位:nm)、D2は非金属無機粒子の平均粒子径(単位:nm)である。導電性変化率は、以下の数式より求めた。
導電性変化率=(ヒートサイクル試験後のシート抵抗値−初期シート抵抗値)/初期シート抵抗値×100
【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果から明らかなように、本発明により高い導電性を有し、耐環境信頼性が良好な導電性パターンの形成が可能である事が判る。
【0058】
《実施例2》
<導電性組成物の作製>
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は50nm、固形分濃度40質量%)を3.4g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物13を作製した。
【0059】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は50nm、固形分濃度40質量%)を0.16g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物14を作製した。
【0060】
銀超微粒子分散液1を9.5g取り、純水、0.0040gの界面活性剤を加え、非金属無機粒子として日産化学工業株式会社製のスノーテックスXL(二酸化ケイ素水分散体、電子顕微鏡下での観察により求めた平均粒子径は50nm、固形分濃度40質量%)を0.50g加え、銀の固形分濃度が30質量%の導電性組成物15を作製した。
【0061】
<パターンの作製>
導電性組成物13から15を厚み1.0mmのソーダガラスにワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり4.0gとなるよう塗布、乾燥しパターン13から15を作製した。
【0062】
<導電性パターンの作製>
パターン13から15を電気炉に入れ、300℃で30分間加熱し、導電性パターン13から15を得た。
【0063】
<耐環境信頼性評価>
導電性パターン13から15に対して、導電性パターン1から12に対してと同様にヒートサイクル試験を実施し、導電性変化率を評価した。導電性変化率の評価結果を、D1/D2値、導電性組成物の全固形分量に対する非金属無機粒子の含有量、ヒートサイクル試験前の初期シート抵抗値と併せて表2に記す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2の結果から明らかなように、本発明により高い導電性を有し、耐環境信頼性が良好な導電性パターンの形成が可能である事が判る。
【0066】
《実施例3》
<導電性パターンの作製>
パターン8と同様のパターンを複数作製し、200℃、240℃、460℃、500℃に設定した電気炉でそれぞれ30分間加熱し、導電性パターン16から19を作製した。
【0067】
<耐環境信頼性評価>
導電性パターン16から19に対して、導電性パターン1から12に対してと同様にヒートサイクル試験を実施し、導電性変化率を評価した。導電性変化率の評価結果を、加熱温度、初期シート抵抗値と併せて表3に記す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3の結果から明らかなように、本発明により高い導電性を有し、耐環境信頼性が良好な導電性パターンの形成が可能である事が判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子と非金属無機粒子を含有し、該金属超微粒子の平均粒子径D1(単位:nm)および該非金属無機粒子の平均粒子径D2(単位:nm)の比D1/D2が0.31〜6.0であり、かつ非金属無機粒子の含有量が全固形分量に対して3.0〜17質量%である導電性組成物を用い、基材上にパターンを形成し、該パターンを220〜480℃の条件下で加熱する事を特徴とする導電性パターン形成方法。

【公開番号】特開2013−93100(P2013−93100A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232589(P2011−232589)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】