説明

導電性ビード能動電界分極媒体型エアクリーナ

【課題】効率が向上したフィルタの提供。
【解決手段】プリーツフィルタ媒体14は、複数の平行な導電性ビード16,18を備えることにより、媒体を支持し、プリーツ面の間隔をあけている。隣り合う導電性ビード間に高電圧差を印加すると、フィルタ媒体中に静電界が誘導され、それによりフィルタの効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にエアクリーナ装置に関し、詳細には、静電界を利用して媒体および粒子を分極させることによって媒体の粒子捕集効率を向上させるエアクリーナを対象とする。
【背景技術】
【0002】
静電吸着の原理は、気流中に存在する汚染物質の除去を向上する目的で長年利用されている。静電気を利用したエアクリーナは主に3つに分類され、それらは静電集塵器、受動静電フィルタ、および能動電界分極媒体型エアクリーナであるが、別の名称で呼ばれることもある。
【0003】
静電集塵器では、粒子を帯電させ、その粒子を逆帯電および/または接地された捕集板で捕集する。
【0004】
受動静電フィルタ(エレクトレットとしても知られる)では、ある種の組み合わせの処理および/または固有の特性によって静電荷を持った媒体(または異なる種類の媒体の組み合わせ)が使用される。静電荷を持つ粒子がフィルタ媒体に入った際、これらの粒子は逆の静電荷を持つフィルタ媒体材に吸着される。
【0005】
能動電界分極媒体型エアクリーナは、2つの電極間の電圧差によって発生する静電界を利用する。この2電極間の静電界に誘電フィルタ媒体が配置される。静電界は媒体の繊維およびそれに侵入する粒子の両方を分極させ、それにより媒体およびエアクリーナの効率が向上する。誘電体とは、電気絶縁体、すなわち電流に対し高い抵抗性を有しかつ電気エネルギーを蓄積可能な物質である。誘電体はそれ自体に電界を集中させる傾向があり、それゆえに静電界を効率的に維持することができる。
【0006】
また、カナダ特許第1,272,453号公報では別の静電エアフィルタの構成が開示されている。この構成では使い捨ての矩形カートリッジが高圧電源に接続されており、このカートリッジは繊維状誘電体(プラスチックまたはガラス)からなる2層の間に挟まれた導電性内側中央スクリーンで構成されている。さらに、この2つの誘電層は、導電性材料からなる2つの外側スクリーンの間に挟まれている。導電性内側中央スクリーンを高電圧に引き上げることにより、導電性内側中央スクリーンと逆電位または接地電位に維持された2つの導電性外側スクリーンとの間に静電界が発生する。高圧静電界によって2つの誘電層の繊維が分極される。
【0007】
プリーツフィルタもまたよく知られている。プリーツフィルタは、フィルタ媒体からなるシートを折りたたみ、連なったプリーツをつくることによって形成される。ミニプリーツフィルタとして知られるプリーツフィルタの一種では、小さなプリーツが密に並んでいる。ミニプリーツフィルタの隣り合うプリーツ間の頂点間隔は20mm以下、通常5.0mmから7.0mmの範囲である。
【0008】
ミニプリーツエアフィルタは、空気間隔の非常に狭い(1/8インチ)7/8インチから1と1/4インチの深さのプリーツを一般に利用しているため、従来の深い波形プリーツより多くのフィルタ紙を標準フレームに詰め込むことができる。ミニプリーツフィルタの隣り合う折り目は、媒体の幅内で間隔をあけて配置された接着ビード、糸、リボン、テープ、または媒体からなる帯、あるいは、ガラス、発泡材、またはプラスチックからなる一続きの部品で間隔をあけて固定される。ミニプリーツフィルタには、同じフレーム寸法の深プリーツフィルタや波形分離フィルタのほぼ2倍の量のフィルタ紙が収容される。
【0009】
Riversによる米国特許第2,908,348号公報では、静電界を生成するための導電性の帯をプリーツ媒体に用いることが示されている。この帯は、プリーツフィルタ媒体中に静電界を生成する役目をする。
【0010】
Joannouによる米国特許第6,497,754号公報では、プリーツの折り目の上下端(頂点)に導電性の糸を取り付けたプリーツフィルタが示されている。プリーツの折り目の上下端間に高電圧を印加すると、プリーツフィルタ材中に静電界が発生する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性ビードを用いて支持および/または一体に保持され、静電界が内部に生成されるフィルタ媒体において具体化される。
【0012】
さらに本発明は、導電性ビードまたは部材を用いて支持され、プリーツ面の間隔があけられ、組立体全体に強度が付与され、多層媒体の場合には層が一体に保持され、そしてあらゆる場合において静電界が内部に生成されるプリーツフィルタ媒体において具体化される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、隣り合う導電性ビード間に高電圧差を印加することで、媒体中に静電界が生成され、それによってフィルタの効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る導電性ビードを含むミニプリーツフィルタである。
【図2A】本発明に係る導電性ビードを含むミニプリーツフィルタを一部模式的に示した等角図である。
【図2B】本発明に係る導電性ビードを含むプリーツなしフィルタを一部模式的に示した等角図である。
【図3】図2Bに示された本発明に係るフィルタのフィルタ媒体および導電性ビードの断面図である。
【図4】本発明に係るフィルタ媒体に静電界を印加するための第1実施形態を示している。
【図5】本発明に係るフィルタ媒体に静電界を印加するための第2実施形態を示している。
【図6】本発明に係るフィルタ媒体に静電界を印加するための第3実施形態を示している。
【図7】図2Aに示された本発明に係るフィルタのフィルタ媒体および導電性ビードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されたプリーツフィルタ10は、通常プラスチックや金属からなる剛性フレーム12を備え、プリーツフィルタ材14を取り囲んでいる。図示のフィルタは、プリーツを固定する平行な導電性ビードを備えたミニプリーツフィルタである。特に図1では、略平行の導電性ビード16、18が示されている。プリーツフィルタ材14を固定する平行な導電性ビードは、ミニプリーツフィルタ構造の大きさによって、1つ、2つ、あるいは多数あってもよい。
【0016】
図2Aに示されるように、プリーツフィルタ媒体14は、上下にそれぞれある上側導電性ビード16Aと下側導電性ビード16Bとによって固定されている。これら導電性ビード16A、16Bと平行に、1対の導電性ビード列、すなわち、上側導電性ビード18Aと下側導電性ビード18Bが隣り合って配置されている。平行な導電性ビード列は、通常フィルタ媒体14の各面において2分の1インチから4分の3インチの間隔をあけて配置される。
【0017】
図2Aのフィルタ媒体および導電性ビードの断面図が図7に示されている。フィルタ媒体14は、上下の導電性ビード16A、16Bの間に挟まれている。具体的には、フィルタ媒体14は、上側導電性ビード16Aによって固定されている。さらに、フィルタ媒体14は、下側導電性ビード16Bによって固定されている。
【0018】
図2Aと図4に示されるように、高圧電源108の一方の端子がフィルタ媒体14の上側で導電性ビード16A、16Bに接続されている。高圧電源108の他方の端子は、フィルタ媒体14の下側で導電性ビード18A、18Bに接続されている。実施形態の一例においては、導電性ビードに高電圧を印加したとき、3〜30kv/cmの範囲の静電界がフィルタ材14内に発生する。
【0019】
導電性ビードの間隔とそれに印加する電圧は、ある特定のフィルタ媒体対して所望の電界強度を与えるように適宜選択すればよい。導電性ビードを定格MERV11のプリーツ媒体に適用して静電界を形成した場合、粒子径0.3ミクロンでのフィルタ効率が31%から59%に増加(90%の増加)することがわかっている。
【0020】
本発明の導電性ビードは、バグあるいはストックフィルタなど、異なるフォームファクタのフィルタにも適用できる。さらに本発明の導電性ビードは、異なるフィルタ媒体からなるフィルタにも適用できる。たとえば、フィルタ媒体14は、摩擦電気尺度の異なる部分にある繊維で構成することができる(エレクトレット)。フィルタ媒体14は、基本的には1つのフィルタ材あるいは異なるフィルタ材の層で構成することができる。
【0021】
ここで用いているように「ビード」という用語は、接着剤、糸、リボン、テープ、または帯、あるいは、ガラス、発泡材、金属、またはプラスチックからなる一続きの部品などの任意の材料、さらには、フィルタ媒体の表面に付着して、またはフィルタ媒体の表面に付着させることで、その上にとどまり、フィルタ媒体を機械的に支持するその他任意の材料を意味する。
【0022】
図2Bと図3は、本発明の導電性ビードを用いた略平面のフィルタ媒体20を示している。特に平面フィルタ媒体20は、上下にそれぞれある上側導電性ビード22Aと下側導電性ビード22Bとによって支持されている。これら導電性ビード22A、22Bと平行に、1対の導電性ビード列、すなわち、上側導電性ビード24Aと下側導電性ビード24Bが隣り合って配置され、これらによっても平面フィルタ媒体20は支持される。
【0023】
高圧電源108の一方の端子は、フィルタ媒体20の上側で導電性ビード22A、22Bに接続されている。高圧電源108の他方の端子は、フィルタ媒体20の下側で導電性ビード24A、24Bに接続されている。
【0024】
フィルタ媒体の上下にある導電性ビードに高圧電源108を接続する別の方法が図5と図6に示されている。図5では、高圧電源108の一方の端子が、フィルタ媒体14の下側にある第1導電性ビード16Bに接続されている。高圧電源108の他方の端子は、フィルタ媒体14の上側にある第2導電性ビード18Aに接続されている。フィルタ媒体14上で互い違いに位置する導電体に高電圧を印加するようにした場合、静電界はフィルタ媒体14中を通過し、より強い静電界をフィルタ媒体14内部に生成することができる。
【0025】
図6では、高圧電源108の一方の端子が、第1導電性ビード16Aに接続されている。高圧電源108の他方の端子は、第1導電性ビード16Aとフィルタ媒体14の同じ側にある第2導電性ビード18Aに接続されている。フィルタ媒体14の同じ側にある導電体に高電圧を印加するようにした場合、高圧電源108への接続が容易になる。
【0026】
他の組み合わせによる接続も可能である。たとえば、高圧電源108の一方の端子をフィルタ媒体14の上下にある複数の導電体に接続し、高圧電源108の他方の端子をフィルタ媒体14の上下いずれかにある1つの導電体に接続することもできる。
【0027】
本発明を利用することで、能動電界分極媒体型エアクリーナの製造が容易になり、それゆえ購入するのにより経済的となることが期待できる。本発明の導電性ビードは、平面媒体とプリーツ媒体のいずれにも適用できるが、導電性接着ビードを一体化したミニプリーツフィルタ構造が特に有利である。
【0028】
上記において開示された発明は、様々な用途に利用でき、HVAC装置、独立型のフィルタ/ファン装置、産業用エアクリーナ装置、集塵装置などの用途が挙げられ、かつこれらに限られるものでない。上記の実施形態では主に平面フィルタ構造について説明したが、本発明は他の構造にも適用でき、V字状配列の多重平面パネル群、相互接続されたパネルおよびV字状配列装置群、集塵装置用の円筒形フィルタなどが挙げられ、かつこれらに限られるものでない。またこれらのいずれについても、装置の上流側あるいは下流側で電離または分極アレイと連結することで、効率を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ材からなるシートと、
前記フィルタ材からなるシートに適用され、前記フィルタ材を支持する第1導電性ビードと、
前記フィルタ材からなるシートに適用され、前記フィルタ材を支持する、前記第1導電性ビードと略平行の第2導電性ビードとを備え、
前記第1および第2導電性ビードがそれぞれ前記フィルタ材からなるシートの反対側に適用され、
前記第1導電性ビードと前記第2導電性ビードとの間に、前記シート内を通過する静電界を生成させる電圧差を印加する高圧電源を備えるフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ材からなるシートがフィルタ材からなるミニプリーツシートである請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ材からなるシートが静電荷を帯びる固有の性質を有するエレクトレット材である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ材からなるシートが摩擦電気尺度の異なる部分にある繊維からなるエレクトレット材である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1導電性ビードおよび前記第2導電性ビードのうち一方が、接着剤、糸、リボン、テープ、帯、ガラス、発泡材、プラスチックからなる群のうち1つから略構成される請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1導電性ビードおよび前記第2導電性ビードのうち一方が、前記フィルタ材からなるシートの表面に付着してその上にとどまり、前記フィルタ材からなるシートを機械的に支持する導電性材料から略構成される請求項1に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記フィルタ材からなるシートがミニプリーツシート以外のプリーツシートである請求項1に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記フィルタ材からなるシートが略平面状である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記フィルタ材からなるシートが複数の層を有する請求項1に記載のフィルタ。
【請求項10】
上側と下側を有するフィルタ材からなるプリーツシートと、
前記フィルタ材からなるプリーツシートの前記上側に適用され、前記フィルタ材からなるプリーツシートを支持する第1導電性ビードと、
前記フィルタ材からなるプリーツシートの前記下側に適用され、前記フィルタ材からなるプリーツシートを支持する、前記第1導電性ビードと略平行の第2導電性ビードと、
前記フィルタ材からなるプリーツシートの前記上側に適用され、前記フィルタ材からなるプリーツシートを支持する第3導電性ビードと、
前記フィルタ材からなるプリーツシートの前記下側に適用され、前記フィルタ材からなるプリーツシートを支持する、前記第1導電性ビードと略平行の第4導電性ビードとを備え、
前記第1導電性ビードと前記第2導電性ビードとの間、および、前記第3導電性ビードと前記第4導電性ビードとの間に、前記シート内を通過する静電界を生成させる電圧差を印加する高圧電源を備えるフィルタ。
【請求項11】
前記フィルタ材からなるプリーツシートが静電荷を帯びる固有の性質を有するエレクトレット材である請求項10に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記フィルタ材からなるプリーツシートが摩擦電気尺度の異なる部分にある繊維からなるエレクトレット材である請求項10に記載のフィルタ。
【請求項13】
前記第1、第2、第3、第4導電性ビードのうち1つが、接着剤、糸、リボン、テープ、帯、ガラス、発泡材、プラスチックからなる群のうち1つから略構成される請求項10に記載のフィルタ。
【請求項14】
前記第1、第2、第3、第4導電性ビードのうち1つが、前記フィルタ材からなるプリーツシートの表面に付着してその上にとどまり、前記フィルタ材からなるプリーツシートを機械的に支持する導電性材料から略構成される請求項10に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記フィルタ材からなるシートがミニプリーツシートである請求項10に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記フィルタ材からなるシートがミニプリーツシート以外のプリーツシートである請求項10に記載のフィルタ。
【請求項17】
前記フィルタ材からなるシートが略平面状である請求項10に記載のフィルタ。
【請求項18】
バグフィルタと、
該バグフィルタに適用され、該バグフィルタを支持する第1導電性ビードと、
前記バグフィルタに適用され、該バグフィルタを支持する、前記第1導電性ビードと略平行の第2導電性ビードとを備え、
前記第1および第2導電性ビードがそれぞれ前記バグフィルタの反対側に適用され、
前記第1導電性ビードと前記第2導電性ビードとの間に、前記バグフィルタ内を通過する静電界を生成させる電圧差を印加する高圧電源を備えるフィルタ。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−101223(P2012−101223A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1024(P2012−1024)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2008−548880(P2008−548880)の分割
【原出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(508196162)エンヴァイロメンタル マネジメント コンフェデレーション インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】