説明

導電性フィルム

【課題】 透明性および導電性に優れ、しかも透明導電性塗膜層の強度および耐溶剤性も良好な導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】 基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化1】


(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する塗膜であって、厚さ10〜70nmの表層部のSi元素含有量が10〜30重量%、残りの層のSi元素含有量が0〜7重量%である透明導電性塗膜層を形成し、全光線透過率が80%以上で、表面低効率が10〜1×10Ω/□である導電性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、透明性ならびに導電性およびその耐久性に優れ、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して、表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)によって形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないため、帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま非常に低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの導電性高分子を透明導電塗膜層として用いた導電性フィルムを種々の用途に応用する場合、基材フィルムに対する該塗膜の導電性、透明性、強度および耐溶剤性のすべてを高度に満足させることが困難なため、特に液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極として用いる場合にはさらなる改善が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、透明性および導電性に優れ、しかも透明導電塗膜層の強度および耐溶剤性も良好な導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明導電塗膜層の表層部分に硬化剤として作用するSi元素化合物を特定量含有させ、一方残りの透明導電塗膜層中の該Si元素含有化合物量を少なくさせれば、例えばタッチパネル用の基材として使用した場合の誤操作を抑制でき、また有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極として使用可能な透明性および導電性を有し、しかも耐溶剤性、強度にも優れたものが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する透明導電性塗膜が形成された導電性フィルムであって、該透明導電性塗膜の厚さが10〜70nmの表層部中のSi元素含有量が10〜30重量%、残りの層のSi元素含有量が0〜7重量%であり、かつ、導電性フィルムの全光線透過率が80%以上、表面抵抗率が10〜1×10Ω/□であることを特徴とする導電性フィルム。」が提供される。
【0010】
また好ましい態様として、該Si元素が、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシラン化合物に由来するものであること、基材フィルムがポリエステルフィルムであること、の少なくともひとつを具備する導電性フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性フィルムは、透明導電塗膜層の表層には架橋剤に由来するSi元素が多く、残りの透明導電塗膜層中のSi元素が少ないので、耐溶剤性と透明性および導電性とを高度なレベルで両立させることができる。したがって、本発明の透明導電性フィルムは、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における透明導電塗膜層は、下記一般式
【化2】

で表される繰り返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される導電性高分子を含有している必要がある。すなわち、この導電性高分子はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物であることが、透明性と導電性に優れた透明導電塗膜層を形成するために必要である。
【0013】
ここで導電性高分子を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは、相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレン、2,3−ブチレンなど)があげられる。この1,2−アルキレン基は、α−オレフィン類(例えば、エテン、プロペン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンおよびスチレン)を臭素化して得られる1,2−ジブロモアルカン類から誘導される。RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な置換基は、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基であり、1,2−エチレン基が特に好適である。
【0014】
一方導電性高分子を構成するポリアニオンとしては、例えば高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸またはスルホン酸類は、ビニルカルボン酸類またはビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類、スチレンなどとの共重合体であってもよい。これらのポリアニオン中でも、ポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。なお、かかるポリアニオンの数平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲が適当であり、特に2,000〜500,000の範囲が好ましい。
【0015】
また、本発明の透明導電性塗膜には、塗膜の耐溶剤性を向上させる目的で、アルコキシシラン化合物のような架橋剤に由来するSi元素を含有している必要がある。かかるアルコキシシラン化合物は加水分解され、その後に縮合反応された形態で塗膜中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランがあげられ、特にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0016】
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0017】
本発明においては、上記透明導電性塗膜層中のSi元素含有量が、表層と残りの層との間で異なっていることが肝要で、厚さ10〜70nm、好ましくは15〜50nmの表層中のSi元素含有量が10〜30重量%、好ましくは10〜27重量%である必要があり、その余の塗膜中のSi元素含有量が0〜7重量%、好ましくは0〜5重量%の範囲である必要がある。ここで表層中のSi含有量が10重量%未満の場合には、透明導電性塗膜の耐溶剤性向上効果が不十分となり、逆に30重量%を超えると、耐溶剤性のそれ以上向上効果は小さくなるだけでなく、導電性および透明度が逆に大きく減少するので好ましくない。また、Si元素含有量が10〜30重量%である表層の厚さが10nm未満の場合には、表層の厚さが不十分となり、耐溶剤性の向上効果は不充分となるので好ましくない。一方透明導電性塗膜層のその余の塗膜中のSi元素含有量は、7重量%を越えると塗膜層の透明性および導電性が低下するので好ましくない。
【0018】
なお、上記の導電性高分子を含有する透明導電性塗膜には、導電性を向上させるという観点からジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが含まれていてもよい。また、分子内にアミド結合を有する室温では液体の水溶性化合物が含まれていてもよい。
【0019】
これらの化合物は、前記導電性高分子100重量部に対して、10〜1000重量部の範囲、好ましくは30〜600重量部の範囲含まれていることが好ましい。この含有量が10重量部未満の場合には、導電性能の向上効果が低下し、逆に1000重量部を超える場合には、塗膜のヘイズ値が増大して透明性が低下する、塗膜自体の強度が低下して簡単に剥離が生じ、フィルムをロール状に巻き取る際に塗膜が接触した裏面に簡単に転写してしまうなどの不具合が生じやすくなる。なお、ここでいう「導電性高分子100重量部に対して」とは、「導電性高分子の固形分100重量部に対して」という意味である。
【0020】
本発明では上記透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物としては、前記導電性高分子を主成分として水に分散させた分散液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
【0021】
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
【0022】
さらに、上記コーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
【0023】
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにこれらのブレンドおよび共重合体、ならびにフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂などからなるフィルムが好ましい。
【0024】
中でも、二軸配向したポリエステルフィルムが、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、電気的性質などに優れているので好ましく、特にポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン―2,6―ナフタレートが、高ヤング率である等の機械的特性に優れ、耐熱寸法安定性がよい等の熱的特性等に優れているのでより好ましい。なお、基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合は剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
【0025】
次に本発明の導電性フィルムは、その全光線(可視光線)透過率が80%以上、好ましくは83%以上であると同時に透明導電性塗膜側の表面抵抗率が10〜1×10Ω/□、好ましくは、50〜5×10Ω/□であることが必要である。全光線透過率が80%未満の場合には、透明性が不充分となり、例えばタッチパネルを作成しても暗く表示画面が見えにくくなるため好ましくない。また、表面抵抗率が1×10Ω/□を超える場合には、表面抵抗率が高すぎるため好ましくなく、逆に10Ω/□未満の場合には、導電性高分子の使用量が著しく増加するため製造コストが上がり経済的でない。
【0026】
以上に説明した本発明の導電性フィルムを製造するには、例えばアルコキシシラン化合物の含有量の異なる透明導電性塗膜層形成用のコーティング組成物を塗布すればよい。すなわち、アルコキシシラン化合物の含有量の少ないコーティング組成物を先ず塗布して乾燥し、次いでアルコキシシラン化合物の含有量の多いコーティング組成物を所望の厚さとなるように塗布して乾燥すればよい。
【0027】
透明導電塗膜層の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。加熱乾燥条件としては80〜160℃で10〜300秒間、特に100〜150℃で20〜120秒間が好ましい。
【0028】
また、かかる透明導電塗膜層を形成する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、基材フィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
【0029】
なお、透明導電塗膜層の厚みは、前記表層の厚さを除いて0.01μm以上、特に0.02μm以上とすることが好ましく、また、前記表層の厚さを含めた全厚さは0.30μm以下、特に0.25μm以下とすることが好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると、透明性が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0030】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に、表層中とその余の層中とでSi元素含有量が異なるポリチオフェン系の透明導電性塗膜層が積層されていることが必要であるが、透明導電塗膜層が形成される側と反対の面には必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0032】
(1)表面抵抗率
JIS K6911にしたがい、三菱化学(株)製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。
【0033】
(2)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定した。
【0034】
(3)塗膜強度
塗膜を親指にて同一場所を3回こすり、塗膜の状態を目視で観察し、以下のとおり判定した。なお、(◎)、(○)を耐削れ性良好とした。
(◎): 塗膜上にこすりはがれかけた跡が全く観察されない。
(○): 塗膜上にこすりはがれかけた白い跡がわずかに観察される。
(△): 塗膜上にこすりはがれかけた白い跡が若干観察される。
(×): 塗膜上にこすりはがれた跡がはっきり観察される。
【0035】
(4)耐溶剤性
エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンとをそれぞれしみ込ませたガーゼを、手拭にて5回拭いた後、塗膜の状態を目視にて評価した。判定は以下の規準で行った
なお、(◎)、(○)を耐溶剤性良好とした。
(◎): 塗膜が全く取られていない。
(○): 塗膜がわずかに取られている。
(△): 塗膜が半分程度取られている。
(×): 塗膜がほとんど取れている。
【0036】
(5)帯電防止塗膜の厚み、Si元素の含有量
導電性フィルムから、ミクロトームULTRACUT−Sでフィルム表面に対し垂直に超薄膜切片を切り出し、この超薄膜切片を透過型電子顕微鏡 日立H−8100で加速電圧100kVで観察・撮影して層厚を測定した。さらに、同一試料を用いて、X線マイクロアナライザー EDAX GENESIS4000にてSi元素の含有量を測定した。
【0037】
[実施例1]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を1.3重量%含む水分散体(BaytronP:バイエルAG製)100重量部にジエチレングリコール3重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.1重量部、界面活性剤として、プラスコートRY−2(互応化学工業製)を1重量部加えたコーティング組成物を、マイヤーバーを用いて基材フィルム(PETフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名O3PF8W−100)上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って膜の厚さが150nmの透明導電性塗膜層を形成した。
【0038】
次いで、(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を1.3重量%含む水分散体(BaytronP:バイエルAG製)100重量部にジエチレングリコール3重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを2重量部、界面活性剤として、プラスコートRY−2(互応化学工業製)を1重量部加えた導電コーティング組成物を、マイヤーバーを用いて再度塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って全透明導電性塗膜層の厚さが175nmの導電性フイルムを得た。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2、比較例1]
実施例1において、第1の塗布厚さと第2の塗布厚さとを表1に記載のとおりとする以外は同様の操作を行い、全厚さが175nmの透明導電塗膜層を形成した。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例2〜4]
実施例1において、第1または第2の塗液中の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン含有量を変更して塗膜中のSi含有量が表1期際のとおりととする以外は同様の操作を行い、全厚さが175nmの透明導電性塗膜層を形成した。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
【0041】
[比較例5]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を1.3重量%含む水分散体(BaytronP:バイエルAG製)100重量部にジエチレングリコール3重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1重量部、界面活性剤として、プラスコートRY−2(互応化学工業製)を1重量部加えたコーティング組成物を、マイヤーバーを用いて基材フィルム(PETフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名O3PF8W−100)上に塗工し、140℃で1分間乾燥して塗膜厚さが175nmの導電性フイルムを得た。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から明らかなように、本発明の導電性フィルムは、透明性、導電性に優れていると同時に、塗膜の強度および耐溶剤性が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上に説明した本発明の導電性フィルムによれば、優れた透明性、導電性を有すると同時に、透明導電塗膜層の強度および耐溶剤性にも優れているので、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する透明導電性塗膜が形成された導電性フィルムであって、該透明導電性塗膜の厚さが10〜70nmの表層部中のSi元素含有量が10〜30重量%、残りの層のSi元素含有量が0〜7重量%であり、かつ、導電性フィルムの全光線透過率が80%以上、表面抵抗率が10〜1×10Ω/□であることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
Si元素が、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシラン化合物に由来するものである請求項1記載の導電性フィルム。
【請求項3】
基材フィルムがポリエステルフィルムである請求項1または2記載の導電性フィルム。

【公開番号】特開2006−289780(P2006−289780A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113538(P2005−113538)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】