説明

導電性フィルム

【課題】表面反射が抑制されていて優れた透明性を呈し、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適な導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に、内部に空隙を有する見かけの屈折率が1.10〜1.35の低屈折率層および透明導電塗膜層をこの順に積層して、その波長550nmにおける表面反射率が4%以下、表面抵抗が10〜5×10Ω/□である導電性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、透明性に優れ、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)により形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの改良された透明導電性フィルムも、タッチパネルなどの用途分野では依然光線透過率が不十分であり、さらなる改善が求められている。従来フィルム等の光線透過率を上げるためには、屈折率が高い材料と低い材料とを組合わせ、光の干渉効果による反射防止を利用する方法が提案されているが、導電性高分子からなる透明導電塗膜層の屈折率は1.5前後であり、光学干渉によって十分な反射低減(透過上昇)を実現できるような低屈折率層や高屈折率層を湿式塗工によって得ることは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、表面反射が抑制され、優れた透明性を呈する導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明導電塗膜層と基材フィルムとの間に特定の屈折率を有する低屈折率層を設けた場合、光線透過率が向上して透明性に優れた導電性フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、内部に空隙を有する見かけの屈折率が1.10〜1.35の低屈折率層および透明導電塗膜層がこの順に積層された導電性フィルムであって、その波長550nmにおける表面反射率が4%以下で、かつ表面抵抗が10〜5×10Ω/□であることを特徴とする導電性フィルム。」が提供される。
【0010】
また好ましい態様として、該透明導電塗膜層が、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとから構成される導電性高分子を含有すること、該透明導電塗膜層が、下記一般式
【化2】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとから構成される導電性高分子と、テトラアルコキシシランおよびアルコキシ基以外の反応性の官能基を有するトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種のシラン化合物との反応性生物を含有すること、該シラン化合物が、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシランであること、該低屈折率層が平均粒径5〜200nmの有機/無機複合粒子からなること、該低屈折率層がフッ素原子と珪素原子とを含有していること、さらには、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層が基材フィルムと低屈折率層の間に設けられていること、の少なくとも一つを具備する導電性フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性フィルムは、透明導電塗膜層と基材フィルムとの間に、内部に空隙を有する特定の低屈折率層が形成されているため、光の表面反射率を低減させることができ、優れた透明性と導電性とを兼備した導電性フィルムを生産性良く提供することができる。また、本発明の透明導電性フィルムは、表面反射率が抑制されているので、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明の導電性フィルムの断面図、すなわち層構成の一例を示すものである。図1中、符号1は基材フィルム、符号2は低屈折率層、符号3は透明導電塗膜層を、符号4はハードコート層を示す。図1から分かるように、本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に低屈折率層が積層され、該低屈折率層の上にさらに透明導電塗膜層が積層されたものである。このような構成を有するものであれば、例えばハードコート層等の他の機能層が、本発明の目的を損なわない限りにおいて形成されていてもよく、図1(b)には透明導電塗膜層を形成した面とは反対側にハードコート層が設けられた例が示されている。
【0013】
このように本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、内部に空隙を有する見かけの屈折率が1.10〜1.35、好ましくは1.20〜1.35である低屈折率層および透明導電塗膜層がこの順で積層されている必要がある。この順序が逆になって、透明導電塗膜層の上に空隙を有する低屈折率層が積層されていると、十分な表面抵抗が確保できないだけでなく、反射率低減(透過率向上)の効果も得られなくなるので好ましくない。
【0014】
また本発明の透明導電性フィルムは、その全光線透過率が70%以上であることが好ましい。該全光線透過率が70%未満であると、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに、十分な透明性が得がたい。特に好ましい全光線透過率は75%以上、さらには80%以上である。このような全光線透過率は、後述の基材フィルム、透明導電塗膜層の選定によって適宜調整できる。
【0015】
さらに本発明の導電性フィルムは、その透明導電塗膜層の表面抵抗が10〜1×10Ω/□の範囲にあることが好ましい。該表面抵抗が上限を超えると、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに電極として十分に機能しなかったり、十分な電磁波シールド特性が得られなくなる。一方、下限未満にすることは製造工程が不安定になりやすいので好ましくない。好ましい表面抵抗は10〜5×10Ω/□、特に10〜9×10Ω/□の範囲である。
【0016】
以下、本発明の導電性フィルムを形成する各層について、さらに詳述する。
本発明における低屈折率層は、内部に空隙を有していて見かけの屈折率が1.10〜1.35の範囲となるものであれば任意であり、例えば、無機化合物と有機化合物との複合粒子、好ましくはその平均粒径が5〜200nmの複合粒子からなるものをあげることができる。ここで該複合粒子としては、有機化合物または有機化合物と無機化合物の複合化合物中に無機微粒子が分散されている形態、有機化合物または有機化合物と無機化合物の複合化合物によって表面もしくは内部が改質された無機微粒子を含有している形態、一部無機成分によって変性された有機化合物が層を形成している形態、有機物質と無機物質が縮合等によって直接結合した複合化合物が層を形成している形態、およびそれらの組合わせによる形態などをあげることができる。これらの中でも有機化合物もしくは有機/無機複合化合物によって表面もしくは内部を改質された無機化合物微粒子が、有機化合物、無機化合物もしくはそれらの複合化合物からなるバインダー成分に分散されている組成物が望ましい。また分散された無機化合物微粒子は、分散後に自身が持つ官能基を介して表面もしくは内部を改質する有機化合物または有機化合物と無機化合物の複合化合物もしくはこれら粒子を層内で固定せしめる成分と化学結合を形成してもよい。重要なことは、塗膜形成された低屈折率層が内部に空隙を有し、見かけの屈折率が前記範囲となることである。例え層の内部に空隙が存在していても、見かけの屈折率が前記範囲外となる場合には、十分な反射防止効果(透過率上昇効果)を得ることができないので好ましくない。
【0017】
また、本発明の低屈折率層にはフッ素原子を含まれていることが好ましい。フッ素原子を含有する形態は特に限定されないが、例えば無機微粒子を改質する有機化合物、有機/無機複合化合物に含有されるのが好ましい。フッ素原子を含有する化合物の主成分としては有機化合物、無機化合物のどちらかに限定されるものではないが、フッ素原子を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体であることが好ましい。フッ素原子を含む単量体としては、例えばパーフルオロアルキル基を有する有機化合物、または構造の一部にパーフルオロアルキル基を含有する金属アルコキシド、もしくは構造の一部にパーフルオロアルキル基を持つ有機/無機複合体などがあげられる。パーフルオロアルキル基としてはパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基が好適である。このような単量体は1種または2種以上を用いることができる。これらフッ素原子を含む化合物は低屈折率層に含有された有機/無機複合粒子中でもよいし、それら粒子を固定するバインダー成分に含有されていてもよい。
【0018】
さらに本発明の低屈折率層は、珪素原子を含有していることが好ましい。珪素を含有する形態も特に限定されないが、例えば無機微粒子を改質する有機化合物、有機/無機複合化合物に含有されるのが好ましい。また、モノマー/ポリマーどちらの形態でも構わない。例としては珪素主鎖ポリマー、シランカップリング剤、およびシランカップリング剤の部分加水分解物または加水分解物の縮合によって得られた珪素酸化物ポリマーなどがあげられる。
【0019】
該低屈折率層の膜厚は特には限定されないが、好ましくは0.001〜1μm、さらに好ましくは0.005〜0.7μm、最も好ましくは0.01〜0.5μmである。
【0020】
次に、本発明における透明導電塗膜層は、表面抵抗を下げられ、かつ透明性も具備するものであれば特に制限されないが、下記一般式
【化3】

で表される繰返し単位からなるからなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される導電性高分子(a)からなることが好ましい。すなわち、この導電性高分子(a)はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物であることが好ましい。
【0021】
この導電性高分子(a)を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。具体例としては、アルキル置換されていてもよいメチレン基、炭素数1〜12のアルキル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。
【0022】
一方導電性高分子(a)を構成するポリアニオンとしては、高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸およびスルホン酸類は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらポリアニオンの中でもポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0023】
本発明における透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物は、上述の導電性高分子を主成分として水に分散させた分散液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
【0024】
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
【0025】
また得られる透明導電塗膜層の塗膜強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で透明導電塗膜層中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシランなどのテトラアルコキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。
【0026】
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0027】
さらに、上記の透明導電塗膜層形成用のコーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
【0028】
透明導電塗膜層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。熱硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、透明導電塗膜層の塗設はそれぞれを形成する成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に100〜150℃で20〜60秒間が好ましい。UV硬化性樹脂またはEB硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、一般的には予備乾燥を行った後、紫外線照射または電子線照射を行なう。
【0029】
また、かかる透明導電塗膜層を形成するための塗液を後述するアンカーコート層上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、該アンカーコート層表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
【0030】
なお、透明導電塗膜層の厚みは0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると、透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0031】
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称することがある。)などのポリエステル(全酸成分を基準として20モル%以下、好ましくは10モル%以下の第3成分を共重合していてもよい)やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などからなるフィルムが好適である。これらの基材フィルムのうち、機械特性や透明性、生産コストの点からポリエステル(PET、PENおよびそれらの共重合ポリエステル)フィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合には剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
【0032】
基材フィルムと前記低屈折率層との間の接着性を向上させるためにアンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート層としては、透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体などの高分子バインダーを例示することができる。なかでも、接着性の観点からポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を構成成分とする高分子バインダーが好ましい。
【0033】
ここで用いられるポリエステル樹脂としては、以下に示す多塩基酸とポリオールとからなるポリエステルを例示することができるが、特に水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。また、オキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。
【0034】
かかるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂は、例えば以下に示すオキサゾリン基を有するモノマーとポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとを共重合成分として含むもので、他の共重合成分を含んでいても構わない。
【0035】
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0036】
次にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が悪くなり、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化する。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0037】
アンカーコート層を形成するポリエステル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。アンカーコート層を形成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂が5重量%未満になるとアンカーコート層の凝集力が低下し、透明導電塗膜層の密着性が不十分になる場合がある。
【0038】
上記アンカーコート層中には脂肪族ワックスを0.5〜30重量%含有させることが好ましく、特に1〜10重量%含有させることが好ましい。この割合が0.5重量%より少ないとフィルム表面の滑性向上効果が認められなくなることがある。一方30重量%を越えると基材フィルムへの密着や、透明導電塗膜層に対するアンカーコート性が不足する場合がある。
【0039】
さらに、上記アンカーコート層中には平均粒子径が0.005〜0.5μmの範囲にある微粒子を0.1〜20重量%含有させることが好ましい。アンカーコート層中の微粒子の含有量が0.1重量%未満であると、フィルムの滑性が低下してロール状に巻き取ることが困難になることがあり。逆に20重量%を超えるとアンカーコート層の透明性が低下して、ディスプレイ/タッチパネル等の用途によっては使用できなくなることがある。なお、アンカーコート層を形成する高分子バインダーと微粒子との屈折率差は、反射防止効果およびヘイズの観点から0.02以下であることが好ましく、屈折率差がこれを超えて大きくなると得られる導電性フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0040】
次に、該アンカーコート層を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外に他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
【0041】
アンカーコート層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性やアンカーコート層の外観が悪化することがある。
【0042】
アンカーコート層を基材フィルムに塗工するには、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムを例に説明すると、その製造過程で実施するのが好ましく、特に配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0043】
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムにアンカーコート層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0044】
アンカーコート層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0045】
アンカーコート層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0046】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に、内部に空隙を有する低屈折率層および透明導電塗膜層がこの順序で積層されているものであるが、透明導電塗膜層が形成される側と反対の面に、必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0048】
(1)反射率、膜厚および屈折率
反射率については、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて試料導電性フィルムの透明導電塗膜層側の波長300〜800nmにおける反射率を測定した。
低屈折率層、透明導電塗膜層、アンカーコート層の膜厚および屈折率は、それぞれの層を形成した後に反射率を測定し、その測定値について、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより求めた。
〈反射率〉
◎:波長550nmにおける反射率が3%以下
○:波長550nmにおける反射率が3%超、4%以下
×:波長550nmにおける反射率が4%超
【0049】
(2)ガラス転移温度
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製 V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定する。
【0050】
(3)固有粘度
固有粘度(〔η〕dl/g)は25℃のo−クロロフェノール溶液で測定する。
【0051】
(4)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定し、下記の基準で評価した。
<全光線透過率>
○:全光線透過率≧70% ・・・透明性良好
×:全光線透過率<70% ・・・透明性不良
【0052】
(5)表面抵抗
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。
測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。また評価は以下の基準で行った。
○:表面抵抗が10〜10Ω/□の範囲にある
×:表面抵抗が10〜10Ω/□の範囲にない
【0053】
[実施例1]
<アンカーコート層形成用塗液の調整>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0054】
なお、かかるポリエステルは特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0055】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0056】
なお、かかるアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル水分散体を得た。
【0057】
添加剤:シリカフィラー(平均粒径100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
【0058】
<基材フィルムおよびアンカーコート層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に上述のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整し、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、塗膜の厚さはそれぞれ0.10μmであった。
【0059】
〈低屈折率層の形成〉
四つ口フラスコ内でイオン交換水179gにクエン酸1gを溶解させた液に、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン10gをゆっくりと添加し、全量投入後10分間の攪拌を行った。その溶液中に平均粒径60nmの中空シリカ粒IPA分散ゾル(固形分20%、触媒化成工業製)95gを攪拌しながら少量づつ混合し、全量投入後液温を60℃に保ち2時間攪拌を行うことで粒子の表面処理を行った。処理後、エバポレーターを用いて溶媒を除いた後、窒素雰囲気下120℃で2時間の乾燥を行い。表面処理中空シリカ粒子(S−1)を約20g得た。次にこのフラスコにメタノール900g、エタノール300gイオン交換水550g、2重量%の濃度のアンモニア水50gを加えて1時間攪拌した後、さらにテトラメトキシシラン162g、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン18gを加え、白濁した液が透明になるまで6時間の攪拌を行って加水分解反応を進行させてコーティング前駆液(A)を作成した。
【0060】
t−ブチルメタクリレート30g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート70g、ブチルアクリレート100gを窒素雰囲気下110℃の温度に保った酢酸ブチル200gに滴下ロートを用いて混合した溶液に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2gを添加し、液を2時間加熱することで共重合を行いコーティング前駆液(B)を得た。次にコーティング前駆液(A)180gに酢酸エチル320g、イソプロピルアルコール160g、レベリング剤としてシリコーンオイルを0.1g添加した溶液を3時間攪拌し、その溶液にコーティング前駆液(B)20gを滴下ロートを用いて徐々に混合し、全量滴下後3時間攪拌を行い、固形分濃度20%のコーティング主剤(C)を得た。コーティング主剤(C)5g、MIBK66.2g、イソシアネート系硬化剤0.12gを混合して10分攪拌することで固形分濃度1.5%のコーティング液(D)を調整した。コーティング液(D)をマイヤーバーにて塗工し、150℃の温度下1分で乾燥・硬化反応させて低屈折率層を得た。マイヤーバーの番手にて膜厚が45nmになるように調整した。得られた低屈折率層を顕微鏡で観察すると空隙部が観察され、また、その屈折率は1.260であった。
【0061】
<透明導電塗膜層の形成>
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)97部に対して3部のジエチレングリコールを添加した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、130℃で2分間の乾燥を行い、透明導電塗膜層を得た。得られた透明導電塗膜層の厚みは0.014μm、屈折率は1.50であった。得られた評価結果を表1および表2に示す。
【0062】
[実施例2および3]
低屈折率層および透明導電塗膜層の膜厚を表1記載のとおりに変更し、さらに実施例3においてはアンカーコート層を設けない以外は実施例1と同様に行った。得られた評価結果を表1および表2に示す。
【0063】
[実施例4]
基材フィルムを形成する材料として溶融ポリエチレン−2,6−ナフタレート([η]=0.65dl/g、Tg=121℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に実施例1で用いた塗液の濃度8.2%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.15μmであった。次いで、低屈折率層および透明導電塗膜層の膜厚が表1記載のとおりになるようにする以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。得られた評価結果を表1および表2に示す。
【0064】
[比較例1]
低屈折率層としてアクリル系HC(商品名 HC900: 大日精化製)をマイヤーバーを用いて塗工した以外は実施例2と同様の操作を行った。得られた低屈折率層の膜厚は0.25μm、屈折率は1.51であった。評価結果を表1および表2に示す。
【0065】
[比較例2]
低屈折層を形成しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1および表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
これらの表からわかるように、透明導電塗膜層の下に、層内に空隙部が形成された見かけの屈折率が特定範囲にある低屈折率層を設けることにより、表面反射を低減することができ、透明性の高い導電性フィルムが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上に説明した本発明の導電性フィルムは、優れた透明性および導電性を有しているので、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 基材フィルム
2 低屈折率層
3 透明導電塗膜層
4 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、内部に空隙を有する見かけの屈折率が1.10〜1.35の低屈折率層および透明導電塗膜層がこの順に積層された導電性フィルムであって、その波長550nmにおける表面反射率が4%以下で、かつ表面抵抗が10〜5×10Ω/□であることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
透明導電塗膜層が、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
該透明導電塗膜層が、下記一般式
【化2】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとから構成される導電性高分子と、テトラアルコキシシランおよびアルコキシ基以外の反応性の官能基を有するトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種のシラン化合物との反応生成物を含有する請求項1記載の導電性フィルム。
【請求項4】
低屈折率層が、平均粒径5〜200nmの有機/無機複合粒子からなる請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
低屈折率層が、フッ素原子と珪素原子とを含有する請求項1または4に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
基材フィルムと低屈折率層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の導電性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−294532(P2006−294532A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116706(P2005−116706)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】