説明

導電性フィルム

【課題】耐光性に優れた導電性を有し、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適な導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】例えばポリチオフェンからなる透明導電塗膜層を、紫外線吸収剤を含有するポリエステルからなる基材フィルムの少なくとも片面に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、耐光性に優れ、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)により形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの改良された透明導電性フィルムも、例えばタッチパネルなどの用途分野では経時と共に導電性能が低下するという問題があり、さらなる改善が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、導電性能の経時劣化の小さい、耐久性に優れた導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明導電塗膜層を塗工する基材フィルム中に紫外線吸収剤を含有させれば、導電性能の劣化を抑制することができ、十分な実用性を有する導電性フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該基材フィルムが、紫外線吸収剤を含有するポリエステルからなることを特徴とする導電性フィルム。」が提供される。
【0010】
また好ましい態様として、紫外線吸収剤が、下記式(I)で表わされる環状イミノエステルおよび下記式(II)で表わされる環状イミノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物であること、
【化1】

(式(I)で、Xは2本の結合手が1位と2位の位置関係にある2価の芳香族残基であり、nは1、2または3であり、Rはn価の炭化水素残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい、またはRはn=2のとき直接結合であることができる。)
【化2】

(式(II)で、Aは下記式(II)-aで表わされる基であるかまたは下記式(II)-bで表わされる基であり、RおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xは4価の芳香族残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい。)
【化3】

【化4】

透明導電塗膜層が、下記一般式(化5)で表される繰り返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとの導電性高分子からなること、
【化5】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
全光線透過率が60%以上でかつ表面抵抗が10〜1×10Ω/□の範囲にあること、の少なくともいずれか一つを具備する導電性フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性フィルムは、基材フィルムが紫外線吸収剤を含有するポリエステルから構成されているため、使用時の導電性能の経時劣化が抑制される。したがって、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として使用した場合、耐久性に優れたものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明の導電性フィルムの好ましい態様である層構成の一例を示す断面図である。すなわち図1中、符号1は基材フィルム、符号3は透明導電塗膜層を示し、符号2、4は、それぞれ必要に応じて設けてもよいアンカーコート層およびハードコート層を示す。
【0013】
このように本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、透明導電塗膜層が積層されたものであるが、本発明においては、該基材フィルムは、紫外線吸収剤を含有するポリエステルから構成されている必要がある。
【0014】
[ポリエステルフィルム]
ここで用いられるポリエステルとしては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成される芳香族ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0015】
上記ポリエステルには、製膜時のフィルムの巻取り性や、必要に応じて設けられるアンカーコート層やハードコート層を塗設する際のフィルムの搬送性等をよくするため、必要に応じて滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることができる。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンコポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂等も透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0016】
[紫外線吸収剤]
本発明においては、導電性能の耐候性を向上させるため、上記ポリエステルには紫外線吸収剤を含有させる必要がある。この紫外線吸収剤としては、その種類を特に限定する必要はないが、下記式(I)で表わされる環状イミノエステルおよび下記式(II)で表わされる環状イミノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を、未反応の形態で含有していることが好ましい。
【0017】
【化6】

(式(I)で、Xは、上記式に表わされたXからの2本の結合手が1位、2位の位置関係にある、2価の芳香族残基であり、nは1、2または3であり、Rはn価の炭化水素残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい、またはRはn=2のとき直接結合であることができる。)
【0018】
【化7】

(式(II)で、Aは下記式(II)-aで表わされる基であるかまたは下記式(II)-bで表わされる基であり、RおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xは4価の芳香族残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい。)
【0019】
【化8】

【化9】

【0020】
かかる環状イミノエステルは紫外線吸収剤として公知の化合物であり、例えば特開昭59−12952号公報に記載されている。好ましく用いられる具体例としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0021】
(上記式(I)の化合物)
(n=1の場合の化合物)
2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−(p−(N−メチルカルボニル)フェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン。
【0022】
(n=2の場合の化合物)
2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−又は1,5−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、N−p−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フェニル、4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−p−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゾイル、4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン。
【0023】
(n=3の場合の化合物)
1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン
【0024】
(上記式(II)の化合物)
2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)。
【0025】
上記例示化合物のうち、上記式(I)の化合物、より好ましくはn=2の場合の上記式(I)の化合物、特に好ましくは下記式(I)−1で表わされる化合物が有利に用いられる。
【化10】

(式中、Rは2価の芳香族炭化水素残基である。)
【0026】
式(I)−1の化合物としては、なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
【0027】
これら環状イミノエステルの紫外線吸収特性は、例えばその代表的化合物について特開昭59−12952号公報に記載されているので、それを援用する。
【0028】
かかる環状イミノエステルは、ポリエステルに対して優れた相溶性を有するが、ポリエステルの末端水酸基と反応する能力を有する。そこで、これらの環状イミノエステルが実質的に未反応な状態で含有されるように、環状イミノエステルとポリエステルとを注意深く混合させることが求められる。ただし、ポリエステルとして、主たる割合の末端基がカルボキシル基であるポリエステルや、末端水酸基が該環状イミノエステルと反応性の無い末端封鎖剤で封鎖されているポリエステルを用いる場合、環状イミノエステルを未反応の状態で含有する組成物を製造するのに特別の注意を払う必要はない。末端基の主たる割合が水酸基であるポリエステルを用いる場合には、溶融混合の時間は、下記式(1)および式(2)を満足するように、短時間で完了するようにするのが望ましい。
Logt≦−0.008T+4.8 ……(1)
Tm<T<320 ……(2)
(式(1)及び(2)中、tは溶融混合時間(秒)、Tは溶融混合温度(℃)、Tmはポリエステルの溶融温度(℃)である。)
【0029】
この場合、環状イミノエステルとポリエステルとが少しの割合で反応する可能性があるが、この反応によってポリエステルの分子量は大きくなるので、この割合によっては可視光吸収剤によるポリエステルの劣化による分子量低下を防ぐことが可能である。なお、環状イミノエステルがポリエステルと反応した場合、紫外線吸収波長領域が、一般に、未反応の状態の紫外線吸収波長領域より低波長側にずれる傾向を示し、それ故高波長側の紫外線を透過する傾向をもつ。
【0030】
前記環状イミノエステルは、適量を添加する場合、昇華物が殆どないので、製膜でダイ周辺を汚すことが少なく、紫外線から380nm付近の光線を吸収するのでフィルムの着色がなく、フィルムの劣化や導電性能の劣化を防止する特性に優れている。
【0031】
次に、本発明における透明導電塗膜層は、表面抵抗を下げられ、かつ透明性も具備するものであれば特に制限されないが、下記一般式
【化11】

で表される繰返し単位からなるからなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される導電性高分子(a)からなることが好ましい。すなわち、この導電性高分子(a)はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物であることが好ましい。
【0032】
この導電性高分子(a)を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。具体例としては、アルキル置換されていてもよいメチレン基、炭素数1〜12のアルキル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。
【0033】
一方導電性高分子(a)を構成するポリアニオンとしては、高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸およびスルホン酸類は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらポリアニオンの中でもポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0034】
本発明における透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物は、上述の導電性高分子を主成分として水に分散させた分散液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
【0035】
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
【0036】
また得られる透明導電塗膜層の塗膜強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で透明導電塗膜層中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシランなどのテトラアルコキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。
【0037】
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0038】
さらに、上記の透明導電塗膜層形成用のコーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
【0039】
透明導電塗膜層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。熱硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、透明導電塗膜層の塗設はそれぞれを形成する成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に100〜150℃で20〜60秒間が好ましい。UV硬化性樹脂またはEB硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、一般的には予備乾燥を行った後、紫外線照射または電子線照射を行なう。
【0040】
また、かかる透明導電塗膜層を形成するための塗液を後述するアンカーコート層上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、該アンカーコート層表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
【0041】
なお、透明導電塗膜層の厚みは0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0042】
本発明においては、基材フィルムと透明導電性塗膜との間の接着性を向上させるためにアンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート層としては、透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体などの高分子バインダーを例示することができる。なかでも、接着性の観点からポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を構成成分とする高分子バインダーが好ましい。
【0043】
ここで用いられるポリエステル樹脂としては、多塩基酸とポリオールとからなるポリエステル、特に水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。また、オキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。
【0044】
なおオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂は、例えば以下に示すオキサゾリン基を有するモノマーとポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとを共重合成分として含むもので、他の共重合成分を含んでいても構わない。
【0045】
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0046】
一方ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が悪くなり、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化する。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0047】
アンカーコート層を形成するポリエステル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。アンカーコート層を形成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂が5重量%未満になるとアンカーコート層の凝集力が低下し、透明導電塗膜層の密着性が不十分になる場合がある。
【0048】
上記アンカーコート層中には脂肪族ワックスを0.5〜30重量%含有させることが好ましく、特に1〜10重量%含有させることが好ましい。この割合が0.5重量%より少ないとフィルム表面の滑性向上効果が認められなくなることがある。一方30重量%を越えると基材フィルムへの密着や、透明導電塗膜層に対するアンカーコート性が不足する場合がある。
【0049】
さらに、上記アンカーコート層中には平均粒子径が0.005〜0.5μmの範囲にある微粒子を0.1〜20重量%含有させることが好ましい。アンカーコート層中の微粒子の含有量が0.1重量%未満であると、フィルムの滑性が低下してロール状に巻き取ることが困難になることがあり。逆に20重量%を超えるとアンカーコート層の透明性が低下して、ディスプレイ/タッチパネル等の用途によっては使用できなくなることがある。なお、アンカーコート層を形成する高分子バインダーと微粒子との屈折率差は、反射防止効果およびヘイズの観点から0.02以下であることが好ましく、屈折率差がこれを超えて大きくなると得られる導電性フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0050】
次に、該アンカーコート層を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外に他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
【0051】
アンカーコート層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性やアンカーコート層の外観が悪化することがある。
【0052】
アンカーコート層を基材フィルムに塗工するには、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、特に配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0053】
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムにアンカーコート層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0054】
アンカーコート層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0055】
アンカーコート層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0056】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に透明導電塗膜層が積層されているものであるが、透明導電塗膜層が形成される側と反対の面に、必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0058】
(1)膜厚
透明導電塗膜層およびアンカーコート層の厚みは、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)によって、300〜800nmの反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより膜厚を求めた。
紫外線吸収剤を含有するポリエステルを主成分とする基材フィルムの厚みは打点式の膜厚計によって測定し、任意に選んだ10点の平均値を用いた。
【0059】
(2)ガラス転移温度
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製 V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定する。
【0060】
(3)固有粘度
固有粘度(〔η〕dl/g)は25℃のo−クロロフェノール溶液で測定する。
【0061】
(4)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定し、下記の基準で評価した。
○:全光線透過率≧60% ・・・透明性良好
×:全光線透過率<60% ・・・透明性不良
【0062】
(5)表面抵抗
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。
【0063】
(6)耐光性
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)性、WEL−SUN−HCL型)を使用し、JIS−K−6783bに準じて、1000時間(屋外曝露1年間に相当)照射することにより屋外曝露促進試験を行う。処理後、三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して表面抵抗を測定した。
◎:照射後表面抵抗≦照射前表面抵抗の2倍・・・耐光性良好
○:照射前表面抵抗の2倍<照射後表面抵抗≦照射前表面抵抗の3倍・・・耐光性十分
×:照射後表面抵抗>照射前表面抵抗の3倍・・・耐光性不十分
【0064】
[実施例1]
<紫外線吸収剤を含有するポリエステルフィルムの形成>
下記式(A)に示す紫外線吸収剤を1重量%含有するポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62)を押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させて熱固定を行い、厚さ188μmの基材フィルムを得た。
【0065】
【化12】

【0066】
<透明導電塗膜層の形成>
導電性ポリマーとしてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)を、マイヤーバーを用いて上記の基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行い、透明導電塗膜層を得た。透明導電塗膜層の厚みは0.15μmであった。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
上記式(A)に示す紫外線吸収剤を1重量%含有するポリエチレン−2,6−ナフタレート([η]=0.65dl/g、Tg=121℃)を用いた以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
<アンカーコート層形成用塗液の調整>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0069】
なお、かかるポリエステルは、特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0070】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0071】
なお、かかるアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル水分散体を得た。
【0072】
添加剤:シリカフィラー(平均粒系100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
【0073】
<基材フィルムおよびアンカーコート層の形成>
上記式(A)に示す紫外線吸収剤を1重量%含有する溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に上述のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整し、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.10μmであった。
【0074】
<透明導電塗膜層の形成>
導電性ポリマーとしてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%とを含んだポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って透明導電塗膜層を得た。透明導電塗膜層の厚みは0.15μmであった。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
<基材フィルムの形成>
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62)を押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、このフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、厚さ188μmの基材フィルムを得た。
【0076】
<透明導電塗膜層の形成>
導電性ポリマーとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%とを含んだポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)を用い、マイヤーバーで上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行って透明導電塗膜層を得た。該透明導電塗膜層の厚みは0.15μmであった。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
ポリエステルとしてポリエチレン−2,6−ナフタレート([η]=0.66dl/g、Tg=121℃)を用いた以外は比較例1と同様の操作を繰り返した。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
この表から明らかなように、本発明の導電性フィルムは、紫外線を照射した後でも十分な導電性を有しており、実用的に十分な耐光性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上に説明した本発明の導電性フィルムは、実用的に十分な耐光性を有しているので、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 基材ポリエステルフィルム
2 アンカーコート層
3 透明導電塗膜層
4 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該基材フィルムが、紫外線吸収剤を含有するポリエステルからなることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
紫外線吸収剤が、下記式(I)で表わされる環状イミノエステル及び下記式(II)で表わされる環状イミノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の導電性フィルム。
【化1】

(式(I)で、Xは2本の結合手が1位と2位の位置関係にある2価の芳香族残基であり、nは1、2または3であり、Rはn価の炭化水素残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい、またはRはn=2のとき直接結合であることができる。)
【化2】

(式(II)で、Aは下記式(II)-aで表わされる基であるかまたは下記式(II)-bで表わされる基であり、RおよびRは同一もしくは異なり1価の炭化水素残基であり、Xは4価の芳香族残基で、これはさらにヘテロ原子を含有していてもよい。)
【化3】

【化4】

【請求項3】
透明導電塗膜層が、下記一般式
【化5】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンと、ポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
基材フィルムと透明導電塗膜層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の導電性フィルム。
【請求項5】
導電性フィルムの全光線透過率が60%以上で、表面抵抗が10〜1×10Ω/□である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−294533(P2006−294533A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116707(P2005−116707)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】