説明

導電性フイルムの製造方法

【課題】金属銀部を含む導電層を有し、延伸されて所望の構造に成形されながらも導電性に優れ、しかも導電層と支持体との密着性にも優れた導電性フイルムを、より少ない製造工程で得るための製造方法を提供する。
【解決手段】 支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cmの条件下で成形する工程を含み、
該金属銀部が、銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものである、導電性フイルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フイルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等は電磁波を発生する。この電磁波による人体への影響を防ぐために、電子機器中の電磁波発生源は、通常、電磁波シールド体(電磁波遮蔽体)に格納されている。この電磁波シールド体として、導電材を練りこんだ樹脂を所望の形状に成形したものや、予め成形した樹脂に導電材を塗装したものが知られている。しかし、導電材を練りこんだ樹脂を成形した電磁波シールド体は、導電性が十分でなく、導電性を上げるべく樹脂に練りこむ導電材の量を増やしても、電磁波シールド体から導電材が脱落しやすいために耐久性が十分でなかった。一方、予め成形した樹脂に導電材を塗装する方法は、工程が多く生産性に劣るものであった。
【0003】
電磁波シールド体に用いうる導電性フイルムとして、銀塩方式で製造されるフイルムが知られている。この導電性フイルムは、支持体に設けられたハロゲン化銀含有乳剤層を、金属銀からなる導電部を形成するように露光して製造される(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2004−221565号公報
【特許文献3】特開2007−95408号公報
【特許文献4】特開2006−332459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、銀塩方式で製造される導電性フイルムを通常の条件で所望の3次元構造に成形すると、成形における延伸により金属銀部に破断が生じやすく、成形された電磁波シールド体の導電性に劣ることを見い出した。
本発明は、金属銀部を含む導電層を有し、延伸されて所望の構造に成形されながらも導電性に優れ、しかも導電層と支持体との密着性にも優れた導電性フイルムを、より少ない製造工程で得るための製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記の手段によって達成された。
<1>支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cmの条件下で成形する工程を含み、
該金属銀部が、銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものである、導電性フイルムの製造方法。
<2>支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cm、かつ、延伸率Yと成形温度X(℃)が下記式(I)を満たす条件下で成形する工程を含む、導電性フイルムの製造方法。
Y≦0.0081X+0.4286 (I)
(但しXは80〜230である。)
<3>支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cm、かつ、延伸率Yと成形速度Z(mm/min)が下記式(II)を満たす条件下で成形する工程を含む、導電性フイルムの製造方法。
Y≦−0.0006Z+2.3494 (II)
(但しZは50〜1000である。)
<4>導電性フイルムの表面抵抗率が50Ω/sq以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5>真空成形、圧空成形又は熱プレス成形により成形する、<1>〜<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>相対湿度70%以上の雰囲気下で成形する、<1>〜<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7>金属銀部が、銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものである、<2>〜<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8>銀塩含有乳剤層における銀とバインダーの体積比(銀/バインダー)が1/1〜4/1である、<1>又は<7>に記載の製造方法。
<9>バインダーがゼラチンである、<8>に記載の製造方法。
<10>銀塩含有乳剤層がさらにアクリル系ラテックスを含む、<7>〜<9>のいずれかに記載の製造方法。
<11>導電層上に保護層を備える、<1>〜<10>のいずれかに記載の製造方法。
<12>金属銀部のパターンが、金属細線にて構成された多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンである、<1>〜<11>のいずれかに記載の製造方法。
<13>導電性基材フイルムが支持体と導電層との間に下塗り層を有する、<1>〜<12>のいずれかに記載の製造方法。
<14>前記下塗り層中の、アクリル系ラテックスとバインダーの質量比(アクリル系ラテックス/バインダー)が、1/0〜1/1である、<1>〜<13>いずれかに記載の製造方法。
<15>支持体がポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はアクリル樹脂であり、下塗り層がゼラチンを含む、<1>〜<14>いずれかに記載の製造方法。
<16>成形された導電性フイルムの全可視光透過率が70%以上である、<12>〜<15>のいずれかに記載の製造方法。
<17>
成形工程における延伸速度が1000mm/min以下である、<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法。
<18>成形工程における延伸速度が300mm/min以下である、<17>に記載の製造方法。
<19>成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.4倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
<20>成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.6倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
<21>成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.8倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
<22>成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを2倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
<23>導電性基材フイルムが支持体と導電層との間に下塗り層を有する、<19>〜<22>のいずれかに記載の成型用導電性基材フイルム。
<24>前記下塗り層中の、アクリル系ラテックスとバインダーの質量比(アクリル系ラテックス/バインダー)が、1/0〜1/1である、<23>に記載の成型用導電性基材フイルム。
<25>成形用支持体がポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はアクリル樹脂であり、下塗り層がゼラチンを含む、<19>〜<24>のいずれかに記載の成型用導電性基材フイルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性フイルムの製造方法によれば、所望の形状に成形されながらも導電性に優れ、しかも耐久性の高い導電性フイルムをより少ない工程で得ることができる。
また、本発明の成形用導電性基材フイルムは、本発明の製造方法で所望の形態に成形することができ、当該成形後においても導電性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例2に記載の条件で導電性基材フイルムを延伸して得られた導電性フイルムの顕微鏡写真である。図1中aは金属銀部に破断がないもの、b及びcは金属銀部に破断があるものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の導電性フイルムの製造方法(以下、単に本発明の製造方法と呼ぶ。)について以下に詳細に説明する。
【0010】
本発明の製造方法は、支持体と金属銀部よりなる導電層とを有する導電性基材フイルムを、特定の荷重条件下で成形する工程を含み、これにより成形による金属銀部の破断が抑えられ、導電性に優れた導電性フイルムを製造することができる。
まず、本発明の導電性基材フイルムの各層の構成について説明する。
【0011】
[支持体]
本発明に用いる導電性基材フイルムの支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板などを挙げることができる。上記プラスチックフイルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。製造される導電性フイルムに透過性が要求される場合には、全可視光透過率は70〜100%であることが好ましく、85〜100%であることがより好ましく、90〜100%であることがさらに好ましく、PET、PC、アクリル樹脂を好適に用いることができる。また、加工性の観点からはPETを好適に用いることができる。上記支持体は、目的に応じて着色されていてもよい。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組合わせた多層フイルムとして用いることもできる。
【0012】
支持体には、該支持体に対して導電層を強固に接着させる目的で、予め、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザ処理、混酸処理、オゾン酸処理等の表面活性処理を施しておくことが好ましい。
例えば、後述するように、支持体上にハロゲン化銀含有乳剤層を設け、この乳剤層を露光、現像して金属銀部よりなる導電層を形成させる場合には、支持体と導電層との接着性(密着性)を確保するために、(1)前記表面活性処理を施した後、該表面上に直接ハロゲン化銀含有乳剤層を設ける方法、(2)一旦、前記表面活性処理を施した後、下塗り層を設け、該下塗り層上にハロゲン化銀含有乳剤層を設ける方法、が挙げられる。中でも、前記方法(2)により、支持体と導電層との密着性をより高めることができる。
【0013】
上記下塗り層は、単層でもよく2層以上でもよい。下塗り層は、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体からなってもよく、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンからなってもよいが、ゼラチンを含むことが好ましい。下塗り層は、支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールを含んでもよい。また、下塗り層がゼラチンを含む場合には、該下塗り層は、ゼラチン硬化剤としてクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを含んでもよい。また、下塗り層は、マット剤として、SiO、TiO、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子を含んでもよい。
当該下塗り層は、アクリル系ラテックスを含有することが好ましい。アクリル系ラテックスとしては、アクリル酸のアルキルエステル及びメタクリル酸のアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物を好適に用いることができる。なかでもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アセトキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アセトキシエチルメタクリレート等から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物が好ましい。
上記下塗り層は、バインダーとしてゼラチンを含有し、かつ、上記アクリル系ラテックスを含有することが好ましいが、アクリル系ラテックスを含有する場合において、ゼラチンは必ずしも必要ではない。当該下塗り層中のアクリル系ラテックスとバインダーの質量比(アクリル系ラテックス/バインダー)は1/0〜1/1であることが好ましく、1/0〜2/1であることがより好ましく、1/0〜3/1であることがさらに好ましく。1/0〜4/1であることが特に好ましい。下塗り層がアクリル系ラテックスを含有することで、導電層を支持体に、より強固に密着させることができる。
【0014】
[導電層]
本発明の導電性基材フイルムは、上記支持体に導電層が設けられている。導電層は支持体の片面に設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。当該導電層は、支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する銀塩含有乳剤層を所望の形状パターンで露光及び現像処理することで形成することができる。前記パターンを細線からなる多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンとすることで、細線状の導電部分とそれ以外の開口部分とを含む導電層を形成させることができ、これにより、導電層の光透過性を向上させることもできる。また、当該導電層は、銀塩含有乳剤層の全面に露光し、現像処理することで形成してもよい。また導電層は、支持体上に金属微粒子を含むペースト(触媒を含有)を印刷し、必要により、ペーストに金属めっきを行うことによって、導電層を形成してもよい。また、支持体上に、導電層をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成してもよい。
上記銀塩含有乳剤層は、ハロゲン化銀とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含んでもよい。上記銀塩含有乳剤層は1層でもよく、2層以上設けてもよい。乳剤層の厚さは、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
【0015】
(銀塩)
上記銀塩含有乳剤層における銀塩はハロゲン化銀である。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀を好適に用いることができる。また、塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀を主体としたハロゲン化銀も好適に用いることができる。ここで、「AgBrを主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成物中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。すなわち、AgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに、沃化物イオン、塩化物イオンを含有してもよい。他のハロゲン化銀(AgCl、AgI等)を主体としたハロゲン化銀についても、上記「AgBr」を当該他のハロゲン化銀に置き換えて解釈する。
銀塩含有乳剤層中のハロゲン化銀の含有量に特に制限はないが、銀に換算して0.1〜40g/m2であることが好ましく、0.5〜25g/m2であることがより好ましく、さらに3〜25g/m2、特に5〜20g/m2、殊更7〜15g/m2であることが好ましい。
【0016】
(バインダー)
上記銀塩含有乳剤層には、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーが含まれる。当該バインダーとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれを用いてもよいが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等を銀塩含有乳剤層のバインダーとして用いることができる。
本発明においては、上記銀塩含有乳剤層のバインダーとして、ゼラチンが好適に用いられる。
上記銀塩含有乳剤層中のバインダーの含有量に特に制限はなく、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができるが、銀(Ag)/バインダー(体積比)で1/1〜4/1であることが好ましく、1.5/1〜4/1であることがより好ましい。上記銀塩含有乳剤層中の銀/バインダー(体積比)を上記範囲内とすることで、成形後の金属銀部の破断をより確実に抑えることができる。
【0017】
(溶媒)
上記銀塩含有乳剤層の形成に用いられる溶媒に特に制限はなく、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
上記銀塩含有乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、銀塩含有乳剤層に含有される溶媒以外の成分の合計100質量部に対して30〜90質量部の範囲であり、50〜80質量部の範囲であることが好ましい。
【0018】
(アクリル系ラテックス)
上記銀塩含有乳剤層には、支持体との密着性を向上させる観点からアクリル系ラテックスを含有させることができる。アクリル系ラテックスとしては、アクリル酸のアルキルエステル及びメタクリル酸のアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物を好適に用いることができる。なかでもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アセトキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アセトキシエチルメタクリレート等等から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む重合体の水系媒体中の分散物が好ましい。
上記銀塩含有乳剤層におけるラテックス/ゼラチン(質量比)は0.15/1〜2.0/1であることが好ましく、0.5/1〜1.0/1であることがより好ましい。
銀塩含有乳剤層がアクリル系ラテックスを含有することで、導電層が支持体に、より強固に密着しうる。
【0019】
(その他の添加剤)
上記銀塩含有乳剤層には、さらに各種添加剤が含まれてもよい。当該添加剤として、例えば、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などを挙げることができる。
【0020】
[保護層]
本発明に用いる導電性基材フイルムには、導電層上に保護層が設けられていてもよい。保護層を設けることで、導電性基材フイルム又は導電性フイルムからの導電層の脱落をより抑制することができる。保護層は、ゼラチンや高分子ポリマー等からなることが好ましい。保護層の厚みは0.02〜0.2μm以下であることが好ましく、0.05〜0.1μmであることがより好ましい。また、保護層は、導電層上に直接設けられていてもよいし、導電層上に下塗り層を設けてからその上に設けてもよい。
【0021】
[導電性基材フイルムの作製]
本発明に用いる導電性基材フイルムは、支持体上に設けられた銀塩含有乳剤層を所望のパターンに露光した後現像処理し、該支持体上に、所望の形状の金属銀部を含む導電層を形成させることで得られる。露光は銀塩含有乳剤層全体に行ってもよく、この場合には、支持体上全体に金属銀部が形成される。本発明において、露光、現像処理によって形成されるパターンは、メッシュ状で、且つ、直線が略直交した形態の直線格子パターンや、交差部間の導電部分が少なくとも1つの湾曲を有する波線格子パターン等であることが好ましい。導電層の金属銀部の形状がメッシュパターンである場合において、メッシュパターンのピッチ(金属銀部の線幅と開口部の幅の合計)に特に制限はないが、100〜600μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。また、金属銀部の形状がメッシュパターンである場合において、金属銀部の線幅は、0.5〜30μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0022】
(パターン露光)
銀塩含有乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。
【0023】
(現像処理)
銀塩含有乳剤層は、露光がなされた後、さらに現像処理が施される。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明では、露光及び現像処理を行うことによって、露光部分に導電部分(金属銀部)が形成されると共に、未露光部に開口部(光透過性部)が形成される。乳剤層への現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。乳剤層に対する定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0024】
本発明に用いる導電性基材フイルムでは、以下に列挙する公知文献に記載の技術を必要により適宜組合わせて使用することができる。
特開2004-221564号公報、特開2004-221565号公報、特開2007-200922号公報、特開2006-352073号公報、WO2006/001461A1号パンフレット、特開2007-129205号公報、特開2007-235115号公報、特開2007-207987号公報、特開2006-012935号公報、特開2006-010795号公報、特開2006-228469号公報、特開2006-332459号公報、特開2007-207987号公報、特開2007-226215号公報、WO2006/088059A1号パンフレット、特開2006-261315号公報、特開2007-072171号公報、特開2007-102200号公報、特開2006-228473号公報、特開2006-269795号公報、特開2006-267635号公報、特開2006-267627号公報、WO2006/098333号パンフレット、特開2006-324203号公報、特開2006-228478号公報、特開2006-228836号公報、特開2006-228480号公報、WO2006/098336A1号パンフレット、WO2006/098338A1号パンフレット、特開2007-009326号公報、特開2006-336057号公報、特開2006-339287号公報、特開2006-336090号公報、特開2006-336099号公報、特開2007-039738号公報、特開2007-039739号公報、特開2007-039740号公報、特開2007-002296号公報、特開2007-084886号公報、特開2007-092146号公報、特開2007-162118号公報、特開2007-200872号公報、特開2007-197809号公報、特開2007-270353号公報、特開2007-308761号公報、特開2006-286410号公報、特開2006-283133号公報、特開2006-283137号公報、特開2006-348351号公報、特開2007-270321号公報、特開2007-270322号公報、WO2006/098335A1号パンフレット、特開2007-088218号公報、特開2007-201378号公報、特開2007-335729号公報、WO2006/098334A1号パンフレット、特開2007-134439号公報、特開2007-149760号公報、特開2007-208133号公報、特開2007-178915号公報、特開2007-334325号公報、特開2007-310091号公報、特開2007-311646号公報、特開2007-013130号公報、特開2006-339526号公報、特開2007-116137号公報、特開2007-088219号公報、特開2007-207883号公報、特開2007-207893号公報、特開2007-207910号公報、特開2007-013130号公報、WO2007/001008号パンフレット、特開2005-302508号公報、特開2005-197234号公報、特開2008-218784号公報、特開2008-227350号公報、特開2008-227351号公報、特開2008-244067号公報、特開2008-267814号公報、特開2008-270405号公報、特開2008-277675号公報、特開2008-277676号公報、特開2008-282840号公報、特開2008-283029号公報、特開2008-288305号公報、特開2008-288419号公報、特開2008-300720号公報、特開2008-300721号公報、特開2009-4213号公報、特開2009-10001号公報、特開2009-16526号公報、特開2009-21334号公報、特開2009-26933号公報、特開2008-147507号公報、特開2008-159770号公報、特開2008-159771号公報、特開2008-171568号公報、特開2008-198388号公報、特開2008-218096号公報、特開2008-218264号公報、特開2008-224916号公報、特開2008-235224号公報、特開2008-235467号公報、特開2008-241987号公報、特開2008-251274号公報、特開2008-251275号公報、特開2008-252046号公報、特開2008-277428号公報、特開2009-21153号公報。
【0025】
[成形]
本発明の製造方法では、導電性基材フイルムは特定の条件下で所望の構造に成形され、これにより導電性フイルムが製造される。導電性基材フイルムが成形される形状は、2次元形状(平板状)であってもよいし、3次元形状(凹凸、曲面を有する形状)であってもよい。2次元形状の導電性フイルムは、平板状の導電性基材フイルムを特定の荷重条件下で、フイルム面と水平方向に延伸(伸長)して得ることができる。また、3次元形状の導電性フイルムは、平板状の導電性基材フイルムを、特定の荷重条件下で曲面形状、直方体形状、ボタン形状、円柱形状、又はこれらを組み合わせた形状等に成形することで得ることができる。
【0026】
導電性基材フイルムを特定の荷重条件下で2次元形状に成形するための方法としては、引張成形、真空成形、圧空成形、熱プレス成形等が挙げられる。導電性基材フイルムを特定の温度及び荷重条件下で2次元形状に成形するための成形装置としては、例えば、テンシロン万能試験機(エーアンドデイ社製)等が挙げられる。
また、導電性基材フイルムを特定の荷重条件下で3次元形状に成形するため方法として、例えば、真空成形、圧空成形、熱プレス成形等が挙げられる。導電性基材フイルムを特定の温度及び荷重条件下で3次元形状に延伸するための成形装置としては、例えば、超小型真空成形機 FVS−500型(脇坂エンジニアリング社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、荷重40〜100kg/cmの条件下で成形するが、40〜80kg/cmの条件下で成形することがより好ましく、50〜80kg/cmの条件下で成形することがより好ましい。本発明の製造方法では、導電性フイルムは、一般的な樹脂の成形条件よりもより大きな荷重下で成形されることが好ましい。荷重が小さすぎると、導電性基材フイルムを所望の形状に成形することが難しい。一方、荷重が大きすぎても、フイルムおよび導電膜が破断しうるため好ましくない。
ここで、荷重とは、成形時に導電性基材フイルムの単位面積当たりにかかる重量を意味する。すなわち、導電性基材フイルムを引張成形する場合には、導電性基材フイルムの引張方向に垂直な断面の単位面積当たりにかかる引張強度を意味する。真空成形においては真空引きした際に導電性基材フイルムの単位面積当たりにかかる負圧を意味し、圧空成形においては、導電性基材フイルムの単位面積当たりにかかる空気圧を意味する。
【0028】
本発明の製造方法では、導電性基材フイルムは、80〜230℃の温度下で成形することが好ましいが、120〜230℃の温度下で成形することが好ましく、130〜230℃の温度下で成形することがより好ましく、140〜230℃の温度下で成形することがさらに好ましく、150〜220℃の温度下で成形することが特に好ましい。すなわち、本発明の製造方法における導電性基材フイルムの成形温度は、一般的な樹脂の成形条件よりも高温であることが好ましい。温度が低すぎると、導電性基材フイルムの柔軟性が十分でなく、所望の形状に成形しにくく、また、成形により導電性が損なわれやすい。一方、温度が高すぎても、導電性基材フイルムが溶けてしまい好ましくない。
上記成形温度は、成形機の設定温度、すなわち、成形時の雰囲気の温度を意味する。
【0029】
本発明の製造方法では、成形により導電性基材フイルムを1.3倍以上延伸して導電性フイルムを製造することが好ましい。上記のような特定の条件下で成形することにより、導電性基材フイルムを1.3倍以上に延伸しながらも金属銀部の破断を防ぐことができる。通常、導電性基材フイルムを1.3倍以上延伸した場合には、導電層の金属銀部が破断してしまい、成形して得られる導電性フイルムの導電性が低下又は喪失してしまう。しかし、上記温度及び荷重条件下で成形すると、導電性基材フイルムを1.3倍以上に成形した場合であっても、導電層の金属銀部に破断が生じにくい。すなわち、上記のような特定の条件下で成形することで、従来に比べて導電性基材フイルムの成形の自由度が上がり、より柔軟に導電性フイルム形状の設計を行うことができる。
導電性基材フイルムの延伸率の上限に特に制限はないが、2.5倍以下、好ましくは2倍以下に延伸することにより、導電層の金属銀部の破断をより確実に防ぐことができる。
ここで、導電性基材フイルムを1.3倍以上延伸する、とは、導電性フイルム面上において、成形により最も高い延伸率で延伸された延伸方向の両端を結ぶ線(面上に沿って引いた線)の最短長さが、成形前の導電性基材フイルムにおける対応する方向の両端を結ぶ線(面上に沿って引いた線)の最短長さを1としたときに、1.3以上となっていることを意味する。本発明において、導電性基材フイルムを1.3倍延伸したときの延伸率は、1.3となる(同様に、例えば、2倍延伸したときの延伸率は2となり、3倍延伸したときの延伸率は3となる。)
【0030】
本発明の製造方法では、成形における延伸速度が1000mm/min以下であることが好ましく、50〜1000mm/minであることがより好ましく、50〜300mm/minであることがさらに好ましい。ここで、延伸速度とは、導電性基材フイルム面上において、成形により最も高い延伸率で延伸された延伸方向への延伸速度を意味する。延伸速度が速すぎると、導電層の金属銀部が破断しやすく、延伸速度が遅すぎると、所望の形状に成形することが困難となり、また、生産性にも劣り好ましくない。延伸速度は一定であることが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、成形における延伸率Yと成形温度X(℃)は下記式(I)を満たすことが好ましい。
Y≦0.0081×X+0.4286 (I)
(但しXは80〜230である。)
上記式(I)を満たす条件下で成形することにより、導電膜の破断をより抑えることができる。
【0032】
また、当該成形における延伸率Yと成形速度Z(mm/min)は下記式(I)を満たすことが好ましい。
Y≦−0.0006Z+2.3494 (II)
(但しZは50〜1000である。)
上記式(II)を満たす条件下で成形することにより、導電膜の破断をより抑えることができる。
【0033】
本発明の製造方法において、成形は相対湿度70%以上、より好ましくは80〜95%の雰囲気下で行うことが好ましい。このような相対湿度下で成形することにより、バインダーである水溶性高分子(ゼラチン)が膨潤し、延伸されやすいという利点がある。
【0034】
本発明において、導電性基材フイルムの表面抵抗率(Ω/sq(□))をR1、導電性フイルムの表面抵抗率(Ω/sq)をR2とすると、R2/R1<3を満足することが好ましく、R2/R1<2を満足することがより好ましい。例えば、導電性基材フイルムを1.2倍延伸した場合、1.4延伸した場合、1.6倍延伸した場合、1.8倍延伸した場合、さらには2倍に延伸した場合であっても、R2/R1が上記条件を満たすことが好ましい。
また、R2は50Ω/sq以下であることが好ましく、0.01〜50Ω/sqであることがより好ましく、0.1〜30Ω/sqであることがさらに好ましく、0.1〜10Ω/sqであることが特に好ましい。
【0035】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において成分組成を表す%は特に断りのない限り質量%を意味する。
【実施例】
【0036】
調製例1 導電性基材フイルムの調製
[乳剤の調製]
・1液:
水 750mL
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液:
水 300mL
硝酸銀 150g
・3液:
水 300mL
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5mL
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7mL
【0037】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0038】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0039】
・4液:
水 100mL
硝酸銀 50g
・5液:
水 100mL
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0040】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。
【0041】
[乳剤層塗布液の調製]
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10-4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0042】
【化1】

【0043】
[透明基材フイルム調製]
厚さが75〜180μmのPETフイルム支持体の両面にコロナ放電処理を行い、表面親水化処理したものを用いた。
【0044】
[感光フイルムの調製]
上記のコロナ放電処理PETフイルムに、上記の乳剤層塗布液をAg7.8g/m、ゼラチン1.0g/mになるように塗布した。
【0045】
得られた感光フイルムは、乳剤層の銀/バインダー体積比率(銀/GEL比(vol))が1/1であった。
【0046】
[露光・現像処理]
次いで、上記感光フイルムにライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0047】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH10.5に調整
【0048】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25g/L
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8g/L
酢酸 5g/L
アンモニア水(27%) 1g/L
ヨウ化カリウム 2g/L
pH6.2に調整
【0049】
上記により導電性基材フイルムを得た。得られた導電性基材フイルムの表面抵抗率は20Ω/sqであった。
【0050】
実施例1 導電性基材フイルムの成形−1
上記調製例1で得られた導電性基材フイルムを30mm×100mmサイズにカットし、テンシロン万能試験機RTFシリーズ(エーアンドデイ社製)にセットして下記表1に記載の条件下で長軸方向に引張延伸した。延伸率は、マイクロスコープで金属銀部のメッシュピッチを測定することで算出し、延伸性はフイルムおよび導電膜が延伸率のとおり伸びるかどうかで判断した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1の結果から、荷重30kg/cm以下では、導電性基材フイルムを所望の延伸率で延伸させることができないのに対し、荷重40kg/cm以上では、フイルムを所望の延伸率で延伸させることができた。
【0053】
実施例2 導電性基材フイルムの成形−2
上記調製例1で得られた導電性基材フイルムを30mm×100mmサイズにカットし、テンシロン万能試験機RTFシリーズ(エーアンドデイ社製)にセットして下記表2に示す条件下で長軸方向に引張延伸した。得られた導電性フイルムの写真を図1に、評価結果を下記表2に示す。
金属銀部の破断の有無は、マイクロスコープによる観察により評価した。
また、表面抵抗率(R1及びR2)は、25℃、相対湿度45%の条件下で、ロレスタGP(三菱化学アナリック社製)を用いて測定した。
また、表2では、下記式(I)及び(II)のそれぞれの要件充足性についても評価し、下記式(I)又は(II)の要件を満たすものを○、満たさないものを×として記載した。
Y≦0.0081X+0.4286 (I)
Y≦−0.0006Z+2.3494 (II)
X:温度(℃)
Y:延伸率
Z:延伸速度(mm/min)
【0054】
【表2】

【0055】
表2の結果から、本発明の製造方法により、所望の形状に成形され、表面抵抗率の低い導電性フイルムが得られうることがわかった。また、上記式(I)及び(II)のいずれかの要件を満たすことにより、金属銀部の破断がより抑制され、双方の要件を満たす場合には、金属銀部の破断は生じなかった。なお、成形された導電性フイルムは、導電層と支持体との密着性が維持されていた。
【0056】
実施例3 導電性基材フイルムの成形−3
[ラテックス含有乳剤層塗布液の調製]
上記調製例1で用いた乳剤層塗布液に対し、ポリエチルアクリレートラテックス、コアシェル型ラテックス(コア:スチレン/ブタジエン共重合体(質量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート共重合体(質量比84/16)、コア/シェル比=50/50)又はアクリル酸・メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル・メタクリル酸2-ヒドロキシルエチル・スチレン重合体を、それぞれ下記表3に示すラテックス/ゼラチン比(質量比)になるように添加し、アクリル系ラテックスを含有する乳剤層塗布液を得た。
この乳剤層塗布液を用いて、調製例1と同様のメッシュ状のパターン露光、又は全面露光を行い、調製例1と同様の方法で導電性基材フイルムを得た。
全面露光により得られた導電性基材フイルムを30mm×100mmサイズにカットし、テンシロン万能試験機RTFシリーズ(エーアンドデイ社製)にセットして成型温度220℃、荷重50kg/cm、延伸速度500mm/minで2倍延伸し、得られた導電性フイルムについて表面抵抗率を調べた。また、メッシュパターン露光により得られた導電性基材フイルムについても同様の成形を行い、金属銀部の破断の有無を確認した。結果を下記表3に示す。
なお、上記のアクリル系ラテックスを含有しない乳剤層塗布液を用いて全面露光した場合には、得られた導電性基材フイルムの表面抵抗率は0.5Ω/sqであった。
【0057】
【表3】

【0058】
表3の結果から、アクリル系ラテックスを含有する銀塩含有乳剤層を露光して得た導電性基材フイルムは、本発明で規定する成形条件で2倍と高度に延伸しても、高い導電性を維持できることがわかった。
【0059】
実施例4 導電性基材フイルムの成形−4
銀塩含有乳剤層を全面露光した以外は調製例1と同様の方法で得た導電性基材フイルム(表面抵抗率0.5Ω/sq)を用いて、超小型真空成形機 FVS−500型(脇坂エンジニアリング社製)により真空成型(成形温度220℃、荷重60kg/cm)を行い導電性フイルム(直方体の箱型形状)を得た。この導電性フイルムを用いての電磁波シールド性を、MIL STD285に準拠した方法で測定した。結果を下記表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表4の結果から、本発明で規定する条件下で真空成型により高度に延伸した場合であっても、金属銀部の破断がない導電性フイルムが得られ、成形前(導電性基材フイルム)と同様の高い電磁波シールド能を有することがわかった。
【0062】
実施例5 下塗り層の検討
基板に、アクリル樹脂板として、アクリライト(登録商標、三菱レイヨン社製)を使用した。
このアクリル樹脂板上に、以下の組成の液を下塗り層として設けた。
下塗り層はバー塗布法で設けた。
【0063】
下塗り層塗布液
ゼラチン及びポリエチルアクリレートラテックス 下記表5に記載の質量比率になるように、かつ総量が30gになるように添加
界面活性剤 適宜添加
水 全量500mLとなるように添加
【0064】
上記下塗り層塗布液は3mL/mとなるようにアクリル樹脂板に塗布した。その後、実施例1で使用した乳剤層塗布液をAg7.8g/m、ゼラチン1.0g/mになるように塗布した。
得られた感光フイルムは、乳剤層の銀/バインダー体積比率(銀/GEL比(vol))が1/1であった。次いで、上記感光フイルムにライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0065】
得られた導電性基材フイルムについて、表面抵抗率を測定し、導電層の密着性をテープ密着で評価し、クロスカット法(JIS K5600-5-6(ISO2409))に準じてで5段階評価した(0から5にかけて、数値が高いほど密着性が悪いことを示す。)。結果を下記表5に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
表5の結果から、ラテックス/ゼラチン(質量比)が1/1以上のときに密着性評価が3以下となった。また、ラテックス/ゼラチン(質量比)が4/1以上のときには密着性評価が0となり、極めて良好な密着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cmの条件下で成形する工程を含み、
該金属銀部が、銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものである、導電性フイルムの製造方法。
【請求項2】
支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cm、かつ、延伸率Yと成形温度X(℃)が下記式(I)を満たす条件下で成形する工程を含む、導電性フイルムの製造方法。
Y≦0.0081X+0.4286 (I)
(但しXは80〜230である。)
【請求項3】
支持体と、該支持体に設けられた、金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムを、荷重40〜100kg/cm、かつ、延伸率Yと成形速度Z(mm/min)が下記式(II)を満たす条件下で成形する工程を含む、導電性フイルムの製造方法。
Y≦−0.0006Z+2.3494 (II)
(但しZは50〜1000である。)
【請求項4】
導電性フイルムの表面抵抗率が50Ω/sq以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
真空成形、圧空成形又は熱プレス成形により成形する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
相対湿度70%以上の雰囲気下で成形する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
金属銀部が、銀塩含有乳剤層を露光し、現像処理することによって形成されたものである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
銀塩含有乳剤層における銀とバインダーの体積比(銀/バインダー)が1/1〜4/1である、請求項1又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
バインダーがゼラチンである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
銀塩含有乳剤層がさらにアクリル系ラテックスを含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
導電層上に保護層を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
金属銀部のパターンが、金属細線にて構成された多数の格子の交点を有するメッシュ状パターンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
導電性基材フイルムが支持体と導電層との間に下塗り層を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記下塗り層中の、アクリル系ラテックスとバインダーの質量比(アクリル系ラテックス/バインダー)が、1/0〜1/1である、請求項1〜13いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
支持体がポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はアクリル樹脂であり、下塗り層がゼラチンを含む、請求項1〜14いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
成形された導電性フイルムの全可視光透過率が70%以上である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
成形工程における延伸速度が1000mm/min以下である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
成形工程における延伸速度が300mm/min以下である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.4倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
【請求項20】
成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.6倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
【請求項21】
成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを1.8倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
【請求項22】
成型用支持体と、該支持体上に設けられた金属銀部を含む導電層とを少なくとも備えた導電性基材フイルムであって、
当該導電性基材フイルムの表面抵抗率R1(Ω/sq)と、当該導電性基材フイルムを2倍延伸させた後の表面抵抗率R2(Ω/sq)が、R2/R1<3を満たす、成型用導電性基材フイルム。
【請求項23】
導電性基材フイルムが支持体と導電層との間に下塗り層を有する、請求項19〜22のいずれか1項に記載の成型用導電性基材フイルム。
【請求項24】
前記下塗り層中の、アクリル系ラテックスとバインダーの質量比(アクリル系ラテックス/バインダー)が、1/0〜1/1である、請求項23に記載の成型用導電性基材フイルム。
【請求項25】
成形用支持体がポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はアクリル樹脂であり、下塗り層がゼラチンを含む、請求項19〜24のいずれか1項に記載の成型用導電性基材フイルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−12604(P2013−12604A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144700(P2011−144700)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】