説明

導電性プライマー塗料およびこれを用いる塗膜形成方法

【課題】 白色導電性フィラーの含有量を低減できるとともに、静電塗装工程での低インターバル化を実現できる導電性プライマー塗料とこれを用いた塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】 導電性プライマー塗料は、必須の樹脂として酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むとともに、粒子表面に導電層を有する柱状二酸化チタン粒子からなる白色導電性フィラーを含む導電性プライマー塗料において、前記柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μmの範囲にあるとともに、10μm以上の長軸径を有する粒子の含有量が15重量%以上である、ことを特徴とし、塗膜形成方法は、導電性プライマー塗料により形成された塗膜上に、静電塗装によりベース塗料を塗装する塗膜形成方法において、導電性プライマー塗料として上記の導電性プライマー塗料を用いる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン素材などのプラスチック素材に静電塗装によりベース塗料を塗装するに先立って素材表面に伝導性を付与するためのプライマー処理に適した導電性プライマー塗料およびこれを用いる塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用バンパー等のプラスチック基材の塗装方法として、近年、塗着効率に優れ、環境への塗料の排出が少ない静電塗装法が広く採用されるようになってきた。プラスチック基材は電気抵抗値が高い(1012〜1016Ω/□程度)ため、静電塗装の際は、プラスチック基材の表面電気抵抗値が10Ω/□未満となるように導電性を付与しておいて、静電塗装することが行われている。例えば、導電性フィラーを含有させた導電性プライマー塗料を用いて塗装することが行われている。
導電性フィラーとしては、一般に、導電カーボン、金属、導電性金属酸化物などの柱状、繊維状、球状等の粉末や粒子が配合されていた。これらの材料からなる粒子は、通電性が良いので、比較的少量で導電効果が得られるからである。しかし、これらの粒子からなる導電性フィラーは、塗膜の白色度、すなわち、明度を低下させるため、その上層塗膜の色調に影響を及ぼすという問題があった。
【0003】
このような事情に鑑み、塗膜の明度低下を起こさない導電性フィラーとして、アンチモンやリンをドーピングした酸化錫からなる導電層を酸化チタン粒子の表面に施してなる白色酸化チタン粒子を用いることが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特公平6-17231号公報
【特許文献2】特許第3357107号公報
【特許文献3】国際公開WO−A1−2005/012449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記提案にかかる酸化チタン系白色導電性フィラーは、酸化チタン粒子の使用により明度は向上(L値80以上)したものの、導電性が不十分であった。そのため、プライマー塗膜中の溶剤を十分に揮発させた状態、例えば、プライマー塗膜を焼付けた後でないと静電塗装に必要な導電性(10〜10Ω/□)を発揮できず、他方、プライマー塗膜を軽く乾燥させた状態で静電塗装に必要な導電性を得ようとすると、フィラー含有量が多くなり、その結果、塗膜凝集力の低下が見られ、また、安定した高明度が確保しづらいという問題が生じるほか、高価な導電性フィラーの使用量増大によるコストアップの問題も生じる。さらに、生産ラインにおいては、プライマー塗装後、短時間で上塗り静電塗装を行うことにより、生産性を上げることが望まれる。この意味でも、少量の使用でも、短時間の乾燥で、静電塗装に必要な導電性を発揮できる、導電性の高い白色導電性フィラーを含むプライマー塗料の開発が強く望まれていた。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、導電性の高い白色導電性フィラーを含む導電性プライマー塗料およびこれを用いた塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく種々、検討を重ねた。その過程で、フィラーの長軸径を大きくすれば導電性が高まるのではないかと着想した。従来の二酸化チタン系粒子の長軸径は精々、5μm程度であったが、これを2倍程度まで長くすると、導電性が著しく高まり、その結果、塗膜中のフィラー含有量の大幅低減が可能となり、例えば、顔料としての酸化チタンの増量を可能にし、高明度を安定的に得ることも可能となり、他方、塗膜抵抗値がより低位となるため、塗装工程でのインターバルの短縮化を達成できる見通しを得て、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる導電性プライマー塗料は、必須の樹脂として酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むとともに、粒子表面に導電層を有する柱状二酸化チタン粒子からなる白色導電性フィラーを含む導電性プライマー塗料において、前記柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μmの範囲にあるとともに、10μm以上の長軸径を有する粒子の含有量が15重量%以上である、ことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる塗膜形成方法は、導電性プライマー塗料により形成された塗膜上に、静電塗装によりベース塗料を塗装する塗膜形成方法において、前記導電性プライマー塗料として、上記本発明の導電性プライマー塗料を用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白色導電性フィラーの粒子本体として長軸径の長い柱状二酸化チタン粒子を採用し、この粒子本体に導電層を形成しているので、この白色導電性フィラーを含む導電性プライマー塗料は、L値80以上と高い明度を維持したまま、僅かな乾燥でも、静電塗装に必要な導電性を発揮することができ、そのため、静電塗装工程の低インターバル化を可能とさせるほか、導電性フィラー含有量を低減することができて、塗装コストの低減にも貢献することができるのである。導電性プライマー塗料において、白色導電性フィラーの含有量を少なくすることは、膜性能や膜平滑性に支障を生じさせることなく、着色顔料としての二酸化チタンの増量を可能とさせ、その結果、より高い明度の塗膜を実現させて、白色上塗りの意匠性の多様性、幅拡大を可能とさせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかる導電性プライマー塗料および塗膜形成方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔導電性プライマー塗料〕
本発明の導電性プライマー塗料は、必須の樹脂として酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むとともに白色導電性フィラーを含み、この白色導電性フィラーは、粒子表面に導電層を有する柱状二酸化チタン粒子からなり、この柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μmの範囲にあるとともに、10μm以上の長軸径を有する粒子の含有量が15重量%以上である。
<樹脂等>
本発明にかかる導電性プライマー塗料の樹脂として必須の酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂は、プライマー塗料のプラスチック素材に対する密着性を高めることができる。すなわち、この酸変性塩素化ポリオレフィンを含む導電性プライマー塗料は、ポリオレフィン基材に対して十分な密着性を有し、耐ガソホール性および耐高圧洗車性に優れるものとなり、そのため、自動車バンパー等のポリオレフィン基材の塗装用途に特に優れたものとなる。
【0010】
本発明の塗料では、上塗りとの付着性、耐高圧洗車性、膜凝集力、貯蔵安定性、顔料分散性などの向上や塗料用途の多面化などを図る目的で、必要に応じ、他の樹脂として、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂およびメラミン樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことができる。また、塗膜物性の向上などの目的で、硬化剤を含むことができる。硬化剤としては、ブロック型イソシアネートやカルボジイミドなどを用いることができる。
−酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂−
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)は、塩素化ポリオレフィン部分(a1)と、この塩素化ポリオレフィン部分(a1)に結合した酸変性部分(a2)とを含むポリオレフィン誘導体である。塩素化ポリオレフィン部分(a1)は、塩素原子が置換したポリオレフィンからなる部分であり、また、酸変性部分(a2)は、たとえば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の酸やその無水物の1種または2種以上に由来する基からなる。
【0011】
酸変性ポリオレフィン(A)を構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体、および、エチレンやプロピレン等の炭素数が8以下の不飽和アルキルのうち1つ以上を用いた共重合ポリオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが、入手のし易さ、プラスチック素材、とりわけポリプロピレン素材に対する密着性に優れる点から好ましい。ポリオレフィンは、2種以上を並存させても良い。
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)としては、限定する訳ではないが、その塩素含有率が18.0〜27.0質量%であり、酸変性部分の含有率が0.8〜7.0質量%であり、重量平均分子量が10,000〜80,000であるものが好ましい。
【0012】
酸変性塩素化ポリオレフィン(A)において、塩素含有率が18.0質量%未満であると、酸変性塩素化ポリオレフィン(A)が結晶化してしまい、プライマー塗料の貯蔵安定性が低下する傾向がある。他方、塩素含有率が27.0質量%を超えると、酸変性塩素化ポリオレフィン(A)の極性が高くなり、耐ガソホール性が低下する傾向がある。
酸変性塩素化ポリオレフィン(A)において、酸変性部分の含有率が0.8重量%未満であると、熱融着性が低下するため、耐ガソホール性が低下する傾向がある。他方、酸変性部分の含有率が7.0重量%を超えると、酸変性基の量が多くなり過ぎて、耐水性および耐湿性が低下する傾向がある。
【0013】
酸変性塩素化ポリオレフィン(A)において、塩素含有率が18.0〜27.0質量%の範囲にあり、酸変性部分の含有率が0.8〜7.0質量%の範囲にあると、上述のように、塗膜の耐ガソホール性が向上する。しかし、塩素含有率が18.0〜27.0質量%というような少ない量であると、通常であれば、樹脂の結晶性が高くなり、プライマー塗料中での貯蔵安定性の低下が見られるが、酸変性塩素化ポリオレフィン(A)において、その重量平均分子量を10,000〜80,000と通常よりも低くしておくと、樹脂の結晶化が起きず、プライマー塗料の貯蔵安定性は十分に確保されるのである。
酸変性塩素化ポリオレフィン(A)において、その重量平均分子量が10,000未満であると、プライマー塗膜の強度が低下する傾向があり、他方、その重量平均分子量が80,000を超えると、ポリオレフィン基材に対するぬれ性が低くなり、耐ガソホール性が低下するとともに、プライマー塗の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0014】
酸変性塩素化ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィンを酸やその無水物および塩素と反応させて内部変性したものである。酸やその無水物と塩素はどちらを先に反応させてもよい。ポリオレフィンと塩素の反応は、たとえば、ポリオレフィンを含む溶液に塩素ガスを導入することによって行われる。また、ポリオレフィンと酸やその無水物との反応は、たとえば、過酸化物の存在下、ポリオレフィン(または塩素化ポリオレフィン)に酸やその無水物を反応させることによって行われる。
−他の樹脂等−
本発明にかかる導電性プライマー塗料においては、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂のほかに、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などを、併せて用いることが好ましい。これら他の樹脂を併せて用いると、1液型で貯蔵安定性にも優れ、高温での焼付けを要することなく、耐水性等の膜性能が良好な塗膜を形成することができ、しかも、硬化型塗料を上塗りした場合にも該上塗り塗膜の膜性能を損なうことのない、導電性プライマー塗料およびこれを用いた塗膜形成方法を提供することができるからである。
【0015】
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第1に、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)を挙げることができる。
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)は、酸変性塩素化ポリオレフィン部分(b1)と、この酸変性塩素化ポリオレフィン部分(b1)にグラフトしたガラス転移温度60℃以上のアクリル系重合鎖部分(b2)とを含むポリオレフィンであり、その重量平均分子量は好ましくは20,000〜200,000である。
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)中の酸変性塩素化ポリオレフィン部分(b1)とアクリル系重合鎖部分(b2)の重量比は、好ましくはb1/b2=5/95〜50/50であり、より好ましくは10/90〜30/70である。上記重量比が5/95未満であると、ポリオレフィン基材に対する密着性が低下する傾向がある。上記重量比が50/50を超えると、アクリル系重合鎖部分(b2)の重量比率が低くなり、耐高圧洗車性が低下する傾向がある。
【0016】
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)においては、その酸変性塩素化ポリオレフィン部分(b1)の塩素含有率の範囲は18.0〜27.0質量%であることができる。塩素含有率が18.0質量%未満であると、プライマー塗料の貯蔵安定性が低下する傾向があり、他方、塩素含有率が27.0質量%を超えると、ポリオレフィン基材に対する密着性が低下し、耐高圧洗車性が低下する傾向がある。
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)は、その重量平均分子量が20,000〜200,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、塗膜の強度が低く、高圧洗車を行うと高い水圧で塗膜がポリオレフィン基材表面から剥離する傾向がある。他方、重量平均分子量が200,000を超えると、ポリオレフィン基材に対してヌレ性が低下し、密着性が低下するとともに、粘度が高くなって塗装作業性が低下する傾向がある。
【0017】
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)は、前述した酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)において、ガラス転移温度60℃以上のアクリル系重合鎖部分(b2)をさらに含むため、プライマー塗膜が高弾性を有するようになって、耐高圧洗車性が向上するようになる。
アクリル系重合鎖部分(b2)のガラス転移温度が60℃未満であると、ポリオレフィン基材表面に形成された塗膜の強度が低くなり、高圧洗車を行うと、高い水圧で塗膜が基材表面から剥離する傾向がある。
アクリル系重合鎖部分(b2)は、アクリル系単量体に由来する構造単位を必須成分とするが、適宜、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体その他の単量体に由来する構造単位をさらに含んだ共重合体部分であってもよい。
【0018】
上記アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ置換アミド類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和塩基性単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体類;等が挙げられる。活性水素含有重合性アクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等へのε−カプロラクトン開環付加物;4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、p−ヒドロキシスチレン等の水酸基含有ビニル系単量体類;等が挙げられる。
【0019】
アクリル系単量体やその他の単量体に由来する構造単位は、いずれの場合も、アクリル系重合鎖部分(b2)のガラス転移温度が60℃以上になるように選択される。このように、ガラス転移温度の条件を満足するアクリル系重合鎖部分(b2)としては、たとえば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主成分とし、適宜、スチレンや、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシメチル等に由来する構造単位等を副成分として含むものがある。
アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)は、例えば、i)α,β−不飽和酸無水物で変性したポリオレフィンに、酸無水物基と反応する活性水素含有重合性モノマーを反応させた溶液中で、アクリル系モノマーをアクリル重合する方法、ii)ポリオレフィンもしくはα,β−不飽和酸無水物で変性したポリオレフィンの溶液中で、水素引抜き効果の高い過酸化物系の重合触媒を用いて、アクリル系モノマーをアクリル重合する方法、等により得ることができる。具体的には、例えば、塩素含有率18.0〜27.0質量%の酸変性塩素化ポリオレフィンを溶剤中で加熱溶解させておいて、過酸化物存在下、上記アクリル系単量体やその他の単量体をグラフト重合させることによって、上記アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)が得られるが、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)はこれらの製法によって得られたものに限定されるものではない。
【0020】
本発明にかかる導電性プライマー塗料において、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)とアクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)の重量比は、好ましくはA/B=90/10〜20/80であり、より好ましくは70/30〜40/60である。上記重量比が20/80未満であると、酸無水物変性塩素化ポリオレフィン(A)の配合割合が低くなり、耐ガソホール性が低下し、ガソリンまたはガソホールが付着した場合に容易に剥離が生じる傾向があり、他方、上記重量比が90/10を超えると、変性塩素化ポリオレフィン(B)の配合割合が低くなり、耐高圧洗車性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第2に、アルキッド樹脂を挙げることができる。アルキッド樹脂は、多価アルコールと、酸成分の一部が植物油の長鎖脂肪酸であってもよい多官能カルボン酸とのポリエステル化反応生成物である。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オレフィングリコール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジオレフィングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。前記多官能カルボン酸としては、例えば、フタル酸無水物、アジピン酸、マレイン酸無水物、イソフタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、トリメリット酸無水物、リノール酸、リノレイン酸、安息香酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0022】
アルキッド樹脂は、例えば、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)について説明したのと同様の手法で、アクリル系重合鎖をグラフト化したものであっても良い。
アルキッド樹脂は、各種オイルで変性することにより改質されたものであってもよい。変性に用いることのできるオイルとしては、例えば、桐油、アマニ油、大豆油、べにばな油、ヒマシ油、コーン油、綿種油、ペララ油、ゴマ油、ココナツ油、脱水ヒマシ油、トール油等が挙げられる。
アルキッド樹脂を水性型として用いる場合、その樹脂固形分酸価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、10〜40mgKOH/gであることがより好ましい。樹脂固形分酸価が5mgKOH/g未満であると、アルキッド樹脂の水への分散性が不充分で、安定な水溶性樹脂になりにくく、一方、100mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性や耐候性が低下する恐れがある。
【0023】
アルキッド樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ(株)製ウォーターゾルシリーズのS118、S126、S346や、日本触媒(株)製アロロンシリーズの376、580や、日本触媒(株)製アクリセットシリーズのARL581、ARL580等が挙げられる。
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第3に、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂は、エポキシ基を1分子中に1個以上有する樹脂であれば、特に限定されるものではなく、塗料に用いられる従来からのエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、ビスフェノールにエピクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン等のポリオールにエピクロルヒドリンを付加させて得られるものなどがある。これらの水性化は、乳化剤を用いて強制乳化させたり、これらをカルボキシル変性したあと塩基性物質で中和したりなどして行う。水性化された市販品としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂では、シェルケミカル(株)製のエピレッツ3510W60、3515W60、3522W60、3540Wy55、880SAW−65等;ノボラック型エポキシ樹脂では、長瀬ケムテック(株)製のデナコールEM150、シェルケミカル(株)製のエピレッツ6006W70、5003W55、東都化成(株)製のWEX−5100等;ポリオールにエピクロルヒドリンを付加させたタイプでは、長瀬ケムテック(株)製のデナコールEX611、EX614、EX411、EX313等;が挙げられる。
【0024】
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第4に、アクリル樹脂を挙げることができる。アクリル系樹脂(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート等の炭化水素置換基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトンの開環付加物等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレートやメチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類などの(メタ)アクリル酸のエステル誘導体;スチレン;から選ばれる1種の単独重合体もしくは2種以上の共重合体等が挙げられる。
【0025】
アクリル系樹脂は、必要に応じて、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂等で変性されていてもよい。
アクリル系樹脂は、公知の方法によって得ることができ、例えば、重合開始剤を用いて通常の溶液重合法で得ることができる。また、重合温度や重合時間など重合の際の反応条件や、重合開始剤など重合の際の添加物についても、特に制限はなく、適宜設定すればよい。アクリル系樹脂の重量平均分子量は、2,000〜80,000であるのが好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が2,000未満であると、塗膜物性が低下する傾向があり、一方、80,000を超えると、塗装時の作業性を損なう恐れがある。
【0026】
アクリル樹脂の水性化は、塩基性物質を用いたり界面活性剤を用いたりなどする一般的な手法により行うことができる。
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第5に、ポリウレタン樹脂を挙げることができる。本発明に用いることのできるポリウレタン樹脂としては、塗料に一般的に用いられているものなら限定はされないが、イソシアネート基とポリオールを反応させて鎖延長されたポリウレタン樹脂が好ましい。上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ポリオールの市販品としては、ユリアーノ2377(荒川化学社製)、オレスターNL2249E(三井東圧社製)、アロタン181−M−60(日本触媒社製)などがある。水性型の導電性プライマー塗料に用いるポリウレタン樹脂としては、ポリオール変性物をエマルション化したものやディスパーション化したものが良い。ポリウレタン樹脂の市販品としては、DAOTAN VTW6465/36(ソルーシア社製)、スーパーフレックスシリーズ110、150、460S(第一工業製薬社製)、タケラックシリーズのタケラックXW−75−W165、−W166、−A170、−X35、アビシア社製のネオレッツR9649、R966などを挙げることが出来る。
【0027】
本発明の導電性プライマー塗料において、これら、酸変性塩素化ポリオレフィン(A)のほかに配合されるアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂など他の樹脂の配合量は、酸変性塩素化ポリオレフィン(A)とアクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)の合計100重量部に対して、他の樹脂100重量部以下となる程度が好ましい。
本発明にかかる導電性プライマー塗料において必須の樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン(A)以外の樹脂としては、第6に、メラミン樹脂を挙げることができる。メラミン樹脂は、架橋剤として作用するものであり、これにより、1液型で良好な貯蔵安定性を保持しつつ、耐水性等の膜性能が良好な塗膜を形成することができるからである。
【0028】
メラミン樹脂としては、トリアジン環を1分子中に1個以上有するメラミン樹脂であれば、特に制限されるものではない。例えば、メトキシメチロールメラミン、n−ブトキシメチロールメラミン、イソブトキシメチロールメラミン、メトキシブトキシメチロールメラミン、メトキシ/n−ブトキシ混合メチロールメラミン(メラミン骨格にメトキシ基およびn−ブトキシ基がエーテル化されたもの)、およびこれらの縮合物等のようなアルコキシメチロールメラミン類が挙げられる。これらの中でも、平均縮合度が1〜4であるメトキシメチロールメラミン、n−ブトキシメチロールメラミン、メトキシ/n−ブトキシ混合メチロールメラミンが好ましい。
【0029】
メラミン樹脂の含有量は、必須樹脂である酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し1〜20質量部であることが好ましい。メラミン樹脂の含有量が1質量部未満であると、得られる塗膜の耐水性が不充分となり、他方、メラミン樹脂の含有量が20質量部を超えると、塗料の貯蔵安定性が悪化するとともに、得られる塗膜も硬くて脆いものとなる傾向がある。
本発明にかかる導電性プライマー塗料においては、必要に応じ、ブロック型イソシアネートなどのイソシアネート系硬化剤その他の硬化剤を配合することができる。
イソシアネート硬化剤としては、例えば、住友バイエルウレタン社製のスミジュールN−7、スミジュールN3500、スミジュールN3200−90CX、また、旭化成社製のデュラネートTHA−100やデュラネート24A−90PX、日本ポリウレタン社製のコロネートFHやコロネート341などがあげられる。ブロック型イソシアネートとしては、住友バイエルウレタン社製のデスモデュールTPLS 2759やTPLS2135、TPLS2957など、日本ポリウレタン社製のコロネートBI 120、コロネートC2529、コロネートC2527、コロネートC2515等、また、旭化成社製のデュラネートMF−K60X、デスモデュールD−TPA−80E、MF−B60Xなどが挙げられる。
【0030】
溶剤型導電性プライマー塗料においては、上記イソシアネート系やブロック型イソシアネート硬化剤の両方が使えるが、水性系導電性プライマーにおいては、ブロック系イソシアネートを使うことが好ましい。
<白色導電性フィラー>
本発明にかかる導電性プライマー塗料に用いられる白色導電性フィラーは、粒子表面に導電層を有する柱状二酸化チタン粒子を粒子本体とし、この柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μmの範囲にあるとともに、10μm以上の長軸径を有する粒子の含有量が15重量%以上である、ことを特徴とする。
【0031】
上記において、「柱状」とは、典型的な角柱状、丸柱状のみでなく、棒状、紡錘状、針状、繊維状など、要するに、長さを有する形状(アスペクト比を有する形状)を指すものである。
白色導電性フィラーの粒子本体を構成する柱状二酸化チタン粒子は、その粒子表面にアンチモン、リンから選ばれる少なくとも1種の元素を固溶(ドープ)した酸化スズを含む導電層を有し、その被覆によって導電性を発揮する。
柱状二酸化チタン粒子の形状は電子顕微鏡写真で確認することができ、柱状二酸化チタン粒子の大きさは、少なくとも100個の粒子の長軸径、短軸径を計測して、それらの粒子をすべて角柱相当体と仮定し、下記式によって算出した値を重量平均長軸径、重量平均短軸径とする。
【0032】
重量平均長軸径=Σ(Ln・Ln・Dn)/Σ(Ln・Dn
重量平均短軸径=Σ(Dn・Ln・Dn)/Σ(Ln・Dn
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子の長軸径、Dnは第n番目の粒子の短軸径をそれぞれ表す。
柱状二酸化チタン粒子は、5.0μm未満の長軸径を有する粒子が40重量%以下であることが好ましく、また、粒子の重量平均短軸径が0.25〜1.0μmの範囲にあることが好ましい。
柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μm、好ましくは8.0〜14.0μm、より好ましくは9.0〜13.0μmの範囲にあり、10μm以上の長軸径を有する粒子が全体の15重量%以上、好ましくは全体の25重量%以上、より好ましくは全体の35重量%以上である。一方、長軸径の小さい粒子の含有量は少ないのが好ましい。例えば、5.0μm未満の粒子が40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。柱状二酸化チタン粒子の重量平均短軸径は、0.25〜1.0μmの範囲が好ましく、0.3〜0.8μmの範囲がより好ましい。柱状二酸化チタン粒子の軸比(重量平均長軸径/重量平均短軸径、いわゆるアスペクト比である)は、好ましくは3以上、より好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜40である。
【0033】
導電性に貢献する長さを有する、この柱状二酸化チタン粒子は、例えば、二酸化チタン粒子からなる第1の核晶の存在下、チタン化合物、アルカリ金属化合物およびオキシリン化合物を加熱焼成して第1の核晶を成長させる第1の工程と、成長させた第1の核晶を第2の核晶として用い、この第2の核晶の存在下、チタン化合物、アルカリ金属化合物およびオキシリン化合物を加熱焼成する第2の工程を経て、得ることができる。そして、この第2の工程を経て得られた上記十分な長さを有する柱状二酸化チタン粒子を懸濁した液に、スズ化合物を含む溶液とアンチモン、リンから選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を含む溶液を加えて、沈殿を生成させ、得られた生成物を加熱焼成すると、上記十分な長さを有する柱状二酸化チタン粒子の表面に、アンチモン、リンから選ばれる少なくとも1種の元素を固溶(ドープ)した酸化スズからなる導電層を形成することができる。
【0034】
柱状二酸化チタン粒子の表面に導電層、すなわち、導電性被覆を形成することは、公知の他の技術を用いることでも実現できる。
すなわち、アンチモン固溶酸化スズの被覆は、例えば、特開昭63−233016号公報に記載の方法を用いて実施することができる。特開昭63−233016号公報に記載の方法は、二酸化チタンの懸濁液に、塩化スズ溶液と塩化アンチモン溶液を添加し、塩化スズ、塩化アンチモンを加水分解して二酸化チタンの粒子表面に酸化スズ水和物および酸化アンチモン水和物の被覆層を形成した後、固液分離し、加熱焼成する方法である。この方法では、塩化スズ、塩化アンチモンの加水分解はアルカリを添加しながら懸濁液のpHが2〜6の範囲に保持するように行われるが、使用するスズ化合物、アンチモン化合物の種類によっては、懸濁液のpHが8〜12の範囲で中和してもよい。被覆層に含まれる酸化スズ水和物の量は、二酸化チタン粒子の表面積1m当り、SnO換算で0.005〜0.25gの範囲が好ましく、0.025〜0.15gの範囲がさらに好ましい。また、酸化アンチモン水和物の量は、酸化スズ水和物に対し、Sb/Sn原子比で0.008〜O.40の範囲が好ましく、更に好ましい範囲は0.04〜0.32である。加熱焼成には、流動炉、静置炉、ロ一夕リーキルン、トンネルキルン等の公知の加熱焼成炉を用いることができ、400〜800℃の範囲の温度で加熱焼成するのが好ましく、500〜700℃がより好ましい。また、焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気下、還元雰囲気下、不活性雰囲気下のいずれでもよく、大気中でもよい。酸化スズの被覆量は二酸化チタンに対してSnOとして1〜50重量%程度が好ましく、より好ましくは5〜30重量%程度である。アンチモンの含有量は酸化スズ(SnO)に対してSbとして5〜30重量%程度が好ましく、より好ましくは10〜25重量%程度である。
【0035】
リン固溶酸化スズの被覆は例えば、WO2005/008685号パンフレットに記載の方法を用いることができる。WO2005/008685号パンフレットに記載の方法は、二酸化チタンの懸濁液に、塩化スズ等のスズ化合物溶液とリン酸等のリン化合物溶液を添加し、スズ化合物、リン化合物を共沈させ、粒子表面に酸化スズ水和物およびリンの被覆層を形成した後、固液分離し、加熱焼成する方法である。この方法では、スズ化合物、リン化合物の共沈は、アルカリを用い、好ましくはpHが2〜6の範囲、または、pHが8〜12の範囲で中和することで行える。被覆層に含まれる酸化スズ水和物の量は、柱状二酸化チタン粒子の表面積1m当り、SnO換算で0.015〜0.3gの範囲が好ましく、0.03〜0.3gの範囲がより好ましく、0.05〜0.2gの範囲が更に好ましい。また、リンの量は、酸化スズ水和物に対し、P/Sn原子比で0.10〜0.50の範囲が好ましく、0.13〜0.40の範囲がより好ましい。加熱焼成には、流動炉、静置炉、ロ一夕リーキルン、トンネルキルン等の公知の加熱焼成炉を用いることができ、600〜950℃の範囲の温度で加熱焼成するのが好ましく、800〜900℃がより好ましい。また、焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気下、還元雰囲気下、不活性雰囲気下のいずれでもよいが、焼成後における冷却の際の雰囲気には注意が必要になる場合がある。すなわち、急冷の場合は、酸化性雰囲気下、還元雰囲気下、不活性雰囲気下のいずれでもよく特に酸素濃度を制御する必要がないが、徐冷の場合、低酸素濃度、還元雰囲気下、不活性雰囲気下で行うのが好ましい。酸化スズの被覆量は二酸化チタンに対してSnOとして1〜50重量%程度が好ましく、より好ましくは5〜30重量%程度である。リンの含有量は酸化スズに対してP/Sn原子比として0.10〜0.50程度が好ましく、より好ましくは0.13〜0.40程度である。
【0036】
なお、pH調整、中和等に用いる酸、アルカリには公知の化合物を用いることができる。そのような化合物としては、硫酸、塩酸、弗酸等の無機酸、酢酸、ギ酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム化合物等が挙げられる。
導電性プライマー塗料における白色導電性フィラーの含有量は、全固形分に対し3〜50質量%の範囲内であることが好ましい。白色導電性フィラーの含有量が3質量%未満であると静電塗装に必要な導電性(10〜10Ω/□)が得られにくい傾向があり、他方、白色導電性フィラーの含有量が50質量%を超えると塗膜の平滑性や密着性が低下する傾向がある。
<分散剤>
本発明の導電性プライマー塗料において用いられる白色導電性フィラーについては、その製造段階で1次粒子にするための分散を良好にすることと、その塗料中での2次凝集防止や沈降防止などの配慮から、分散剤として、カルボキシル基含有化合物、カルボキシルエステル含有化合物、スルホン基含有化合物、スルホン酸エステル含有化合物、リン酸基含有化合物、リン酸エステル含有化合物および上記各官能基やエステル基を含む樹脂などを使用することができる。水性型の導電性プライマー塗料においては、上記の水性化化合物もしくは樹脂のほかに、界面活性剤を用いることもできる。
<その他の配合物−添加剤−>
本発明の導電性プライマー塗料には、顔料を配合することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄系顔料、酸化クロム等の無機顔料;アゾ系顔料、アントラセン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペンツイミダゾロン系顔料等の有機顔料;アルミニウム系顔料(例えば、コーティングアルミなど)等の金属系顔料;マイカ系顔料;等が挙げられる。顔料は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
顔料の配合量は、白色導電性フィラーの配合量と合わせて、塗料中の全固形分に対する割合(PWC)でみて、20〜70質量%の範囲内とすることが好ましい。そして、具体的には、上記PWC20〜70質量%のうち、顔料の配合量は、顔料がTiOである場合、15〜67質量%である。TiOが15質量%未満であると、着色力が低く、隠蔽性が不充分となる傾向があり、他方、TiOが67質量%を超えると、得られる塗膜の平滑性や密着性が低下する恐れがある。
本発明の導電性プライマー塗料には、必要に応じて、塗料として通常添加される他の添加剤、例えば、安定剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤(例えば、シリカなど)、導電性充填剤(例えば、導電性カーボン、導電性フィラー、金属粉など)、有機改質剤、可塑剤、防腐・防徹剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。また、膜乾燥性等を向上させるために、セルロースアセテートブチレート等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。
<塗料化>
本発明の導電性プライマー塗料は、前述した各成分を通常の方法によって均一に混合することにより得ることができる。例えば、顔料を配合する場合には、顔料をあらかじめ一部または全部のビヒクル樹脂に必要なレベルまで分散させて顔料分散ペ−ストとしておき、この中に、残りの成分(前述した樹脂等、白色導電性フィラー、その他の配合物(添加剤)を順次もしくは一挙に添加し、均一に混合するようにすればよい。
【0038】
本発明の導電性プライマー塗料において、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)とアクリル重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(B)の合計配合量が、固形分基準で、全樹脂中の60質量%を下回ると、素材との密着性が低下する傾向がある。また、白色導電性フィラーと顔料の合計配合量(PWC)が20質量%を下回るとプラスチック基材の色や肌合いの隠蔽が不十分となる傾向があり、70質量%を超えるとプラスチック基材に対する付着強度が低下するとともに塗膜の凝集破壊が起きやすくなる傾向がある。
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)を塗料化する場合、溶剤型では、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)をトルエン、ソルベッソ(エクソン社製溶剤の商品名)などの溶剤に溶かして用い、水性型では、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)を乳化などの手段で水に分散・溶解させて用いる。
【0039】
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)をエマルション化し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂エマルションとする方法としては、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)に、乳化剤、中和剤としての塩基性物質、必要により溶剤を加えて加熱またはそのままで溶解させ、市販の乳化機にて水中に乳化させるか、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)に、乳化剤、必要により溶剤を加えて加熱またはそのままで溶解させ、市販の乳化機にて塩基性物質を添加した水中に乳化させるようにすればよい。また、逆に、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)に、乳化剤、中和剤としての塩基性物質、必要により溶剤を加えて加熱またはそのままで溶解させた有機相に、水を攪拌下でゆっくりと添加して転相乳化させるか、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)に、乳化剤、必要により溶剤を加えて加熱またはそのままで溶解させた有機相に、塩基性物質を添加した水を攪拌下でゆっくりと添加して転相乳化させるようにしてもよい。
【0040】
エマルション化の際に用いる乳化剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなど)、ポリオキシエチレン脂肪族エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオレフィンポリオール、アルキロールアミド等のノニオン型乳化剤;アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン型乳化剤;アルキルベタイン(例えば、ステアリルベタイン、ラウリルベタインなど)、アルキルイミダゾリン等の両性乳化剤;ポリオキシエチレン基含有ウレタン樹脂、カルボン酸塩基含有ウレタン樹脂等の樹脂型乳化剤;イミダゾリンラウレート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン型乳化剤;等を挙げることができる。これらの中でも、親水性の高いイオン性極性基を有さないノニオン型乳化剤が、得られる塗膜により良好な耐水性を付与しうる点から好ましい。
【0041】
エマルション化に用いる前記乳化剤の使用量は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の量、塩基性物質や水の配合割合によって適宜設定すればよいが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して5〜50質量部とすることが好ましく、10〜30質量部とすることがより好ましい。5質量部未満であると、塗料の貯蔵安定性が低下するとともに、エマルション化の際に凝集や沈降が起こり易くなる恐れがあり、一方、50質量部を超えると、得られる塗膜中に乳化剤が多量に残存することになり、耐水性が低下する傾向がある。
エマルション化の際に用いる塩基性物質は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)が有する酸無水物基および/またはカルボキシル基に付加するか、および/または、これらの基を中和して、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の親水性を高め、エマルションの貯蔵安定性を向上させる働きをするものである。後述するように、水性塗料中に存在する塩基性物質のうち、第1級アミンおよびアンモニア以外の塩基性物質の量が10質量%以下であることが好ましいので、エマルション化の際に用いる塩基性物質の種類(1種でも2種以上でもよく、2種以上の場合はその比率も)は、第1級アミン化合物およびアンモニア以外の塩基性物質の含有量が全塩基性物質の10質量%以下となるように選択する必要がある。エマルション化の際に用いる塩基性物質として選択しうるものの具体例は後述する。
【0042】
エマルション化に用いる塩基性物質の使用量は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の量、乳化剤や水の配合割合に応じて、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)や乳化剤等に含まれる酸性官能基を充分に中和しうるよう適宜設定すればよい。例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)に含まれる酸性官能基1当量に対し、好ましくは0.5〜4当量とするのがよい。0.5当量未満であると、エマルション化が不充分となる傾向があり、一方、4当量を超えると、残存する塩基性物質が得られる塗膜の耐水性を低下させたり、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の脱塩素化を促進する恐れがある。
エマルション化の際に用いる水の使用量は、得られるエマルション全体の50〜95質量%とすることが好ましく、60〜85質量%とすることがより好ましく、65〜80質量%とすることが最も好ましい。50質量%未満であると、エマルション中の樹脂固形分が多くなりすぎ、凝集等が生じ易く、エマルションの貯蔵安定性が低下する傾向があり、一方、95質量%を超えると、塗料中の樹脂固形分が低くなり、塗装作業性が低下する恐れがある。
【0043】
エマルション化の際に用いることのできる溶剤としては、特に限定はないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤(市販品では、例えば、エクソン社製のソルベッソ100など);ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブ、オレフィングリコールモノメチルエーテル、ジオレフィングリコールモノメチルエーテル、オレフィングリコール−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール系またはオレフィングリコール系溶剤;等が挙げられる。
エマルション化に用いる溶剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A)と乳化剤の合計100質量部に対して15〜50質量部とすることが好ましい。15質量部未満であると、エマルション化の際に粘度が高くなりすぎてうまくエマルション化できなくなることがあり、一方、50質量部を超えると、エマルションが徐々に融着して安定性が悪くなる恐れがある。
【0044】
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂エマルションのpHは、エマルション化の際に用いる塩基性物質によって決まるのであるが、好ましくは7〜10.5、さらに好ましくは8〜10であるのがよい。pHが7未満であると、中和が不充分で、エマルションの貯蔵安定性が低下することがあり、一方、pHが10.5を超えると、得られる塗膜の耐水性が低下したり、遊離の塩基性物質が過剰に存在することとなり、臭気が強くて使用しにくくなることがある。
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂エマルション中の粒子(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A))の粒径は、特に限定されないが、0.03〜5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。ポリマー粒子の平均粒径が0.03μm未満であると、乳化剤が多量に必要となり、得られる塗膜の耐水性が低下する恐れがあり、一方、5μmを超えると、塗料の貯蔵安定性が悪くなる傾向があるとともに、膜の形成性が悪化して塗膜の平滑性が得られなくなる恐れがある。
【0045】
導電性プライマー塗料では、第1級アミン化合物およびアンモニア以外の塩基性物質の含有量が全塩基性物質の10質量%以下であることが好ましい。詳しくは、水性塗料を得る際には、塗料の安定性を保つため、通常、各ビヒクル(樹脂成分)の調製時もしくは塗料のpHを調整する時などに塩基性物質が使用されるのであるが、これら塗料を得る際に使用される全塩基性物質のうち、第1級アミン化合物およびアンモニア以外の塩基性物質の使用量を全塩基性物質の10質量%以下とすることが重要となるのである。好ましくは、第1級アミン化合物およびアンモニア以外の塩基性物質は全く含有していない態様、すなわち、水性塗料を得るのに使用する塩基性物質として第1級アミン化合物および/またはアンモニアのみを使用する態様が望ましい。第1級アミン化合物もしくはアンモニアであれば、水性塗料中に存在していても、メラミン樹脂による架橋を妨げることがなく、高温で焼付けできない用途においても耐水性などの膜物性が良好な塗膜を形成することができる。
【0046】
第1級アミン化合物としては、例えば、2−アミノ−2−メチルプロパノール、アリルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシル)オキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、イソプロパノールアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第1級アミン化合物およびアンモニア以外の塩基性物質とは、通常、水性塗料において樹脂等の中和剤やpH調整剤などとして汎用されている第2級アミン化合物や第3級アミン化合物などのことである。具体的には、例えば、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン等の第2級アミン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン化合物;等が挙げられる。
【0047】
本発明の導電性プライマー塗料を得る際に用いる塩基性物質としては、特に、2−アミノ−2−メチルプロパノール、アンモニアが、メラミン樹脂の硬化を阻害しにくいことから好ましい。
〔塗膜形成方法〕
本発明の塗膜形成方法は、導電性プライマー塗料により形成された塗膜に、上塗り塗料を塗装するものであり、導電性プライマー塗料として本発明の導電性プライマー塗料を用いるものである。導電性プライマー塗料として本発明の導電性プライマー塗料を用いることにより、白色導電性フィラーの含有量を低減することができ、また、静電塗装工程の低インターバル化を実現することができる。
【0048】
本発明の導電性プライマー塗料が対象とする素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィンのほか、アクリロニトリルスチレン(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチック素材が挙げられる。これらの中でも特に、ポリオレフィンが密着性の点から好適である。
本発明の導電性プライマー塗料を塗布する方法については、特に限定はなく、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転ディスク塗装、浸漬塗装、ハケ塗り塗装などの公知の方法を採用することができる。また、塗装時に静電をかけて、塗着効率を上げるようにしてもよい。
【0049】
導電性プライマー塗料の塗布量は、特に制限されないが、例えば、乾燥膜厚が2〜30μm、好ましくは5〜20μmなるようにするのがよい。乾燥膜厚が2μm未満であると、薄すぎて連続な均一膜を得られにくく、一方、30μmを超えると、耐水性等の膜性能が低下したり、塗布時にタレが生じたりすることがある。
本発明の塗膜形成方法では、本発明の導電性プライマー塗料をプラスチック基材に塗布したのち、30秒〜5分間、室温で放置し、次いで、上塗り塗装する。なお、プライマー処理に当たっては、必要に応じ、焼付けしても良いが、本発明の導電性プライマー塗料は、導電性の高い白色導電性フィラーを使用しているので、30〜90秒程度の短い室温乾燥のみでも、プラスチック基材の表面に静電塗装に必要な導電性(10〜10Ω/□)を与えることができる。導電性プライマー塗料の塗布後にプレヒートする場合、そのプレヒート条件は60〜80℃で2〜3分間であり、焼付けする場合は70〜100℃で15〜30分間である。
【0050】
導電性プライマー塗膜の上に塗装する上塗り塗料は、いわゆるベース塗料であってもよいし、クリヤー塗料であってもよい。言い換えれば、本発明の塗膜形成方法で形成される塗膜は、プライマー塗膜とベース塗膜とクリヤー塗膜からなる3層塗膜であってもよいし、プライマー塗膜とクリヤー塗膜からなる2層塗膜であってもよいのである。さらには、プライマー塗膜と着色ベース塗膜と透明着色ベース塗膜とクリヤー塗膜からなる4層塗膜であっても良いのである。
各塗料の塗布量については、特に制限はない。例えば、3層塗膜を形成する場合、ベース塗料、例えばホワイト性着色ベース塗料は、乾燥膜厚が8〜30μm、好ましくは10〜20μmなるようにするのがよく、クリヤー塗料は、乾燥膜厚が15〜80μm、好ましくは20〜50μmなるようにするのがよい。なお、各塗料の塗布方法については、本発明の導電性プライマー塗料について述べた通りとすればよい。
【0051】
各塗料の焼付け(乾燥)方法については、特に制限はなく、通常の方法に従って行なえばよい。例えば、3層塗膜を形成する場合には、導電性プライマー塗料の塗布後は室温ないし40〜140℃、好ましくは50〜100℃で乾燥し、ベース塗料の塗布後は乾燥せずに常温で放置し、クリヤー塗料の塗布後に、3層になった塗膜を70〜140℃で乾燥するようにすればよい。4層塗膜を形成する場合には、前述のとおりにプライマー塗装したのち、着色ベース塗料、例えばホワイト系着色ベース塗料を塗装し(乾燥膜厚8〜30μm)、室温で1〜10分間放置したのち、透明着色ベース塗料、例えばホワイト系透明着色ベース塗料を塗装し(乾燥膜厚8〜30μm)、ふたたび、室温で1〜10分間放置したのち、クリヤー塗装して(乾燥膜厚10〜80μm)、70〜140℃で乾燥する。必要に応じて、各乾燥の前後に、常温で放置したり、予備乾燥を行なったり、冷却したりする工程を含めてもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、特に断りのない限り、「質量部」を単に「部」と、「質量%」を単に「%」と、それぞれ記す。
[樹脂の製造]
樹脂A1(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂ワニス)の製造
攪拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、トルエン55部、酢酸n−ブチル25部および無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(商品名「ハードレンM128P」、東洋化成工業社製、塩素含有率21質量%、重量平均分子量40,000)20部を仕込み、攪拌しながら、内部液温度を110℃に昇温し、1時間加熱して、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂ワニス(樹脂A1)を得た。樹脂ワニス中の樹脂固形分は20%であった。
【0053】
樹脂固形分の測定法は以下のとおりである。
樹脂固形分(質量%)=[(Y)/(X)]×100
Xg:固形分測定用皿に採取した試料の量
Yg:採取した試料を110℃の乾燥器に入れ、3時間乾燥した後の固形化試料の量
樹脂A2(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂エマルション)の製造
撹拌羽根、温度計、温度制御サーミスター装置および冷却管を備えた反応装置に、樹脂A1製造の場合と同じ無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂「ハードレンM128P」240部、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル(「エマルゲン920」、花王社製)59部、芳香族炭化水素溶剤(「ソルベッソ100」、エクソン社製)62部、酢酸カービトール27部を仕込み、110℃で1時間加熱して溶解させた後、100℃以下に冷却し、ジメチルアミノエタノール5部を溶解している脱イオン水607部を1時間かけて滴下して転相乳化させたのち冷却し、400メッシュの網でろ過して、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(CPO)エマルションを得た。得られたCPOエマルションの不揮発分は30%であり、樹脂固形分(CPOエマルション中の酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量)は24%であった。
【0054】
樹脂B(アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂)の製造
樹脂A1の製造と同じ反応容器を用い、この反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル10部、トルエン65部、酢酸n−ブチル24部を仕込み、続いて、樹脂A1製造の場合と同じ無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂「ハードレンM128P」を20部仕込み、攪拌しながら、内部液温度を110℃に昇温した。ついで、メチルメタクリレート30部、メタクリル酸3部、n−ブチルメタクリレート47部からなる混合液と、プロピレングリコールモノメチルエーテル4部、トルエン12部、酢酸ーブチル5部およびt−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサナート2.2部からなる重合開始剤溶液とを、それぞれ、別個の滴下ロートに仕込み、反応容器内を110℃に維持しながら、3時間かけて滴下した。さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテル1部、トルエン2部、酢酸n−ブチル1部、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサナート0.3部からなる重合開始剤溶液を、2時間かけて滴下した。この間、反応容器内を攪拌しながら液温110℃に保持し、反応を完了した。樹脂Bの固形分は45%であった。
【0055】
樹脂C1(エポキシ樹脂エマルション溶液)の製造
撹拌機付き容器にエポキシ樹脂(商品名「ERI−REZ6006W−70」、ジャパンエポキシレジン社製、NV(不揮発分のこと、以下同じ)70%)500部を仕込み、撹拌下、脱イオン水200部を滴下し、その後、30分保持して、固形分50%のエポキシ樹脂エマルションを得た。
樹脂C2(溶剤型のアクリル樹脂)の製造
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル27.14部を仕込み、内温を110℃まで昇温して、撹拌を開始した。次いで、メタクリル酸2.3部、ヒドロキシエチルアクリレート14.49部、メチルメタクリレート20.89部、エチルアクリレート52.32部およびスチレンモノマー10部からなるモノマー溶液と、パーオキサイド系重合開始剤(商品名「カヤエステルO」、日本化薬社製)2.2部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル10部からなる重合開始剤溶液とを、それぞれ3時間かけて滴下し、重合を開始した。この間、内温は110℃を維持するようにした。滴下終了後、続いて、内温110℃を維持しながら、パーオキサイド系重合開始剤「カヤエステルO」0.3部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル5部からなる溶液を2時間かけて滴下して、重合を終了し、アクリル樹脂の溶液を得た。このアクリル樹脂は、固形分70.9%、酸価:10、重量平均分子量M:45,000のものであった。
【0056】

[白色導電性フィラーの製造]
柱状二酸化チタンの製造
(第1の工程)
二酸化チタンゾル乾燥粉砕物40部(TiO換算)、アルカリ金属化合物としての塩化ナトリウム40部およびオキシリン化合物としての第二リン酸ナトリウム(NaHPO)10部を用い、これらを均一に混合し、ルツボに入れて、電気炉内で825℃、3時間焼成した。得られた焼成物を脱イオン水中に投入し、1時間煮沸した後、濾過し、洗浄して可溶性塩類を除去し、乾燥、粉砕して、重量平均短軸径0.25μm、重量平均長軸径が3.4μmの二酸化チタン粒子(第1の核晶)を得た。
【0057】
次いで、得られた第1の核晶2部と、二酸化チタンゾル乾燥粉砕物38部(TiO換算)、アルカリ金属化合物としての塩化ナトリウム40部、オキシリン化合物としての第二リン酸ナトリウム(NaHPO)10部とを均一に混合し、ルツボに入れて、電気炉で825℃、3時間焼成することによって、第1の核晶を成長させた。そして、成長させた第1の核晶を脱イオン水中に投入し、1時間煮沸した後、濾過、洗浄して可溶性塩類を除去し、乾燥、粉砕して、さらに成長した第2の核晶(試料f0)を得た。
なお、第1の工程で使用した二酸化チタンゾルは、200g/リットル(TiO換算)の濃度の四塩化チタン水溶液を30℃に保持しながら、水酸化ナトリウム水溶液で中和してコロイド状の非晶質水酸化チタンを析出させ、このコロイド状水酸化チタンを70℃で5時間熟成してルチル型の微小チタニアゾルとしたものである。
(第2の工程)
前記のさらに成長させて得た第2の核晶(試料f0)15部と、前記の二酸化チタンゾル乾燥粉砕物(TiO換算)85部、アルカリ金属化合物としての塩化ナトリウム50部、オキシリン化合物としてのピロリン酸ナトリウム10部とを、均一に混合し、ルツボに入れて、電気炉で825℃、3時間焼成することにより、第2の核晶(試料f0)をさらに成長させた。次いで、焼成物を脱イオン水中に投入して懸濁液とし、この中に水酸化ナトリウム水溶液(200g/リットル)を添加して系のpHを13.0に調整した。その後、90℃で2時間撹拌するアルカリ処理を行ったのち、塩酸水溶液(100g/リットル)を添加して系のpHを7.0に調整し、そののち、濾過、洗浄した。得られたケーキを再び水中に投入して水懸濁液とした後、塩酸水溶液(100g/リットル)を添加してpHを1.0に調整し、90℃に加熱して2時間撹拌した後、濾過、洗浄、乾燥、粉砕して、柱状二酸化チタン粒子(試料F0)を得た。
【0058】
試料F0には、不純物としてリンが0.06%(P換算)含まれ、TiO純度は99.6%であった。

評価1(粉体特性の測定)
第1の工程で得られた二酸化チタン粒子(試料f0、第2の核晶)と第2の工程で得られた二酸化チタン粒子(試料F0)について、電子顕微鏡写真に基づき、150個の粒子の短軸径・長軸径、それらの粒度分布を測定した。また、BET法で比表面積を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、上記の2段階成長法によれば、重量平均長軸径が大きく、しかも、長軸径の小さな粒子の含有量の少ない、粒度分布の整った柱状二酸化チタン粒子が得られることが判る。

前述のようにして得られた2種類の二酸化チタン粒子(試料F0と試料f0)に対し、以下に述べるアンチモンドープ型かリンドープ型の導電層形成処理を別々に施して、それぞれの粒子表面に導電層を形成した。なお、このとき、実施例用の白色導電性フィラーF1,F2と比較例用の白色導電性フィラーf1,f2とに対する導電層付着量は二酸化チタン粒子単位表面積あたりで同一量となり、ドープ量も同一量となるようにしている。
【0061】
アンチモンドープ型の白色導電性フィラーF1(実施例用)の製造
粒子本体としての柱状二酸化チタン粒子F0を、脱イオン水に投入して濃度100g/リットルの懸濁液とし、この懸濁液1リットルを70℃の温度に加熱した後、この中に、50%塩化スズ水溶液23.5gと、塩化アンチモン1.3gを35%塩酸水溶液59gに溶解した溶液と、17%の水酸化ナトリウム水溶液とを、懸濁液のpHを2〜3に維持するようにしながら、60分間にわたって並行添加することにより、柱状二酸化チタン粒子の表面に、酸化スズと酸化アンチモンの水和物からなる被覆層(導電層)を形成させた。そして、沈殿物を濾過し洗浄することを、濾液の比抵抗が50μS/cmになるまで続け、その後、120℃の温度で一昼夜乾燥し、電気炉内で600℃、1時間焼成して、粒子表面がスズ6.3%(Sn0換算)、アンチモン0.8%(Sb換算)を含むアンチモン固溶酸化スズの導電層(粒子の表面積1m当りSn0量:0.028g、Sb/Sn=0.12)で被覆された実施例用の白色導電性フィラー(試料F1)を得た。
【0062】
アンチモンドープ型の白色導電性フィラーf1(比較例用)の製造
粒子本体としての二酸化チタン粒子f0を、脱イオン水に投入して濃度100g/リットルの懸濁液とし、この懸濁液1リットルを70℃の温度に加熱した後、この中に、50%塩化スズ水溶液38.0gと、塩化アンチモン2.0gを35%塩酸水溶液59gに溶解した溶液と、17%の水酸化ナトリウム水溶液とを、懸濁液のpHを2〜3に維持するようにしながら、60分間にわたって並行添加することにより、二酸化チタン粒子の表面に、酸化スズと酸化アンチモンの水和物からなる被覆層(導電層)を形成させた。そして、沈殿物を濾過し洗浄することを、濾液の比抵抗が50μS/cmになるまで続け、その後、120℃の温度で一昼夜乾燥し、電気炉内で600℃、1時間焼成して、粒子表面がスズ9.8%(Sn0換算)、アンチモン1.3%(Sb換算)を含むアンチモン固溶酸化スズの導電層(粒子の表面積1m当りSn0量:0.028g、Sb/Sn=0.12)で被覆された比較例用の白色導電性フィラー(試料f1)を得た。
【0063】
リンドープ型の白色導電性フィラーF2(実施例用)の製造
粒子本体としての柱状二酸化チタン粒子F0を、脱イオン水に投入して濃度100g/リットルの懸濁液とし、この懸濁液1リットルを70℃の温度に加熱した後、この中に、50%塩化スズ水溶液53.7gと、75%正リン酸2.2gを35%塩酸水溶液59gに溶解した溶液と、17%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pHを9〜10に維持しながら、60分間にわたって並行添加することにより、柱状二酸化チタン粒子の表面に、酸化錫の水和物とリンからなる被覆層(導電層)を形成させた。その後、そして、沈殿物を濾過し洗浄することを、濾液の比抵抗が50μS/cmになるまで続け、その後、120℃で一昼夜乾燥して電気炉内で、窒素雰囲気下、室温から900℃まで1時間で昇温し、900℃で1時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却して、スズ13.4%(SnO換算)、リン1.0%(P換算)を含むリン固溶酸化スズの導電層(粒子の表面積1m当りSnO量:0.065g、P/Sn=0.16)で被覆された実施例用の白色導電性フィラー(試料F2)を得た。
【0064】
リンドープ型の白色導電性フィラーf2(比較例用)の製造
粒子本体としての二酸化チタン粒子f0を、脱イオン水に投入して濃度100g/リットルの懸濁液とし、この懸濁液1リットルを70℃の温度に加熱した後、この中に、50%塩化スズ水溶液88.2gと、75%正リン酸3.6gを35%塩酸水溶液59gに溶解した溶液と、17%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pHを9〜10に維持しながら、60分間にわたって並行添加することにより、二酸化チタン粒子の表面に、酸化錫の水和物とリンからなる被覆層(導電層)を形成させた。その後、そして、沈殿物を濾過し洗浄することを、濾液の比抵抗が50μS/cmになるまで続け、その後、120℃で一昼夜乾燥して電気炉内で、窒素雰囲気下、室温から900℃まで1時間で昇温し、900℃で1時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却して、スズ20.0%(SnO換算)、リン1.5%(P換算)を含むリン固溶酸化スズの導電層(粒子の表面積1m当りSnO量:0.065g、P/Sn=0.16)で被覆された比較例用の白色導電性フィラー(試料f2)を得た。
【0065】

[顔料ペーストの製造]
顔料ペーストP1の製造
攪拌装置の付いた容器内で、表2の配合により、酸化チタン(商品名「CR95」石原産業社製)を攪拌しながら、樹脂B(アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂)に添加し、サンドグラインダーミルで30分間分散させて、固形分76%の顔料ペーストP1を得た。
顔料ペーストP2の製造
撹拌装置の付いた容器内で、表2の配合により、顔料ペーストP1製造の場合と同じ酸化チタン「CR95」を、樹脂A2(無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂エマルション、NV:24%)と樹脂C3(商品名「アロロン581」、日本触媒社製のアルキッド樹脂ディスパーション、固形分34.5%)との混合物に添加し、界面活性剤(商品名「サーフィノールGA」、エアープロダクト社製、NV:78%)、消泡剤(商品名「ノプコ8034L」、サンノプコ社製、NV:100%)および脱イオン水を添加した後、サンドグラインダーミルで30分間分散させて、固形分56%の顔料ペーストP2を得た。
【0066】
表2中の配合量の単位は全て重量部である。
【0067】
【表2】

【0068】
<実施例1〜4、実施例6、実施例8、比較例1〜3>
攪拌装置付き容器に、表3,4の配合で、顔料ペーストP1と樹脂A1(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂のワニス)と樹脂B(アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂)を仕込み、攪拌しながら、表3,4記載の白色導電性フィラーを添加し、30分間さらに撹絆して、導電性プライマー塗料を調製した。
表3,4中の配合成分の単位は全て質量部である。
<実施例5>
表3の配合で、上記実施例(例1〜4、6、8)および比較例(例1〜3)と同様にして、導電性プライマー塗料を調製し、そののち、樹脂C4(商品名「エピコート1001X−75」、油化シェルエポキシ社製のエポキシ樹脂、固形分75.0%)を添加した。
<実施例7>
撹拌機付き容器に、表3の配合で、樹脂A2(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂のエマルション)と樹脂C1(エポキシ樹脂エマルション)とバインダー樹脂C3(商品名「アロロン581」、日本触媒社製のアルキッド樹脂ディスパーション、固形分34.5%)を仕込み、撹拌しながら、表3の配合で、白色導電性フィラーを添加し、30分間保持した。その後、撹拌下、表3の配合で、顔料ペーストP2、増粘剤(商品名「プライマルASE−60」、日本アクリル化学社製)およびpH調整用アミン(商品名「AMP−90」、ダウケミカル社製)を添加し、30分間撹拌して、水性型の導電プライマー塗料を調製した。
<実施例9>
表3の配合で、上記実施例(例1〜4、6、8)および比較例(例1〜3)と同様にして、導電性プライマー塗料を調製し、そののち、樹脂C2(溶剤型のアクリル樹脂)と硬化剤C5(商品名「デュラネートMF−K60X」、旭化成社製のブロックイソシアネート(ポリイソシアネート活性メチレンブロック体)、固形分60.0%)を添加した。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
上のようにして得られた導電性プライマー塗料を用い、以下のようにして、試験片のプライマー処理を行った。

実施例1〜6、実施例8、実施例9および比較例1〜3で得られた溶剤型の導電性プライマー塗料を、#4フォードカップを用い、20℃で14秒となるよう、シンナーで希釈し、イソプロパノールで洗浄したのち、乾燥した75×150×3mmのポリプロピレン製試験片に、乾燥膜厚10μmとなるようエアースプレー塗装した。
また、実施例7で得られた水性型の導電プライマー塗料を、#4フォードカップを用い、25℃で30秒となるよう、脱イオン水で希釈し、イソプロパノールで洗浄したのち、乾燥した75×150×3mmのポリプロピレン製試験片に、乾燥膜厚10μmとなるようエアースプレー塗装した。そして、80℃×6分プレヒートした。
【0072】

上のようにして導電性プライマー塗装を施した試験片に対し、以下の順序で、上塗り塗装を施した。

4C1B工程(溶剤型)
導電性プライマー塗料による塗装(乾燥膜厚10μm) → 室温でセッティング90秒 → アクリル系白色カラーベース塗料(商品名「R303」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚15μm) → 室温でセッティング60秒 → 透明着色ベース塗料としてのアクリル系マイカベース塗料(商品名「R303」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚10μm) → 室温でセッティング5分 → アクリルウレタン系クリヤー塗料(商品名「R249−103」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚25μm) → 室温でセッティング10分 → 90℃×30分焼付け
3C1B工程(溶剤型)
導電性プライマー塗料による塗装(乾燥膜厚10μm) → 室温でセッティング90秒 → アクリル系マイカベース塗料(商品名「R303」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚15μm) → 室温でセッティング5分 → アクリルウレタン系クリヤー塗料(商品名「R249−103」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚25μm) → 室温でセッティング10分 → 90℃×30分焼付け
3C1B工程(水性型)
水性導電性プライマー塗料による塗装(乾燥膜厚10μm) → 80℃×6分プレヒート → 水性ベース塗料による塗装(乾燥膜厚15μm) → 80℃×3分プレヒート → アクリルウレタン系クリヤー塗料(商品名「R249−103」、日本ビー・ケミカル社製)による塗装(乾燥膜厚25μm) → 室温でセッティング10分 → 90℃×30分焼付け

ここで、3C1B工程(水性型)に用いた水性ベース塗料は、以下のようにして調製されたものである。
【0073】
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル27.14部仕込み、内温を110℃まで昇温し、撹拌を開始した。次いで、メタクリル酸2.3部、ヒドロキシエチルアクリレート14.49部、メチルメタクリレート20.89部、エチルアクリレート52.32部およびスチレンモノマー10部からなるモノマー溶液と、パーオキサイド系重合開始剤(商品名「カヤエステルO」、日本化薬社製)2.2部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル10部からなる重合開始剤溶液とを、それぞれ3時間かけて滴下し、重合を開始した。この間、内温は110℃を維持するようにした。滴下終了後、続いて、内温110℃を維持しながら、パーオキサイド系重合開始剤「カヤエステルO」0.3部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル5部からなる溶液を2時間かけて滴下して、重合を終了することにより、水性アクリル系樹脂の溶液を得た。該水性アクリル系樹脂は、NVが30.0%、KOH溶液滴定法で求めた酸価が10、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量が45,000であった。
【0074】
次いで、攪拌機を備えた容器に、上記水性アクリル系樹脂樹脂溶液(NV30.0%)100部を仕込み、攪拌下で、顔料としてのマイカ(商品名「イリオジン103WNT」、メルクジャパン社製)2部を添加した。マイカ粒子が充分にほぐれた時点で、さらに、攪拌下で、消泡剤(商品名「サーフィノール440」、エアープロダクツ社製)1.25部、増粘剤(商品名「アクリゾールASE60」、Rohm & Haas 社製)0.47部、脱イオン水33.8部を順に添加して、全ての添加を完了したのち、さらに1時間、攪拌して、水性ベース塗料を得た。

上に述べるようにして得られた塗膜試験片について、以下の評価を行い、結果を表5,6に纏めた。
<密着性>
試験片に対し、JIS K5400に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。結果を以下の試験項目と基準で評価した。
【0075】
初期密着性: 塗装焼付け24時間後に試験実施
耐水2次密着性: 塗装焼付け24時間後に耐水槽(40℃)に240時間投入後、
試験片を取り出して24時間後に試験実施
評価基準は下記の通りである。
○: 剥離、カット部の欠け無し
△: 剥離、カット部の欠けが100枡中1〜3枡認められる。
× :剥離、カット部の欠けが100枡中4枡以上認められる。
<導電性>
得られたポリオレフィン製試験片のwet塗膜の抵抗値を、テスター「kaise/insulation tester SK3013」を用い、塗装を終えてから、30秒経過後、90秒経過後および80℃×30分間焼付け乾燥後の3点で測定した。
【0076】
評価基準は下記の通りである。
○: 1×10Ω/□≧
△: 1×10Ω/□ 〜 1×10Ω/□
×: 1×10Ω/□≦
<仕上がり肌評価>
目視判断で評価する。
評価基準は下記の通りである。
○: レベリング良く滑らかな仕上がり肌
×: 著しいラウンド肌
<塗膜明度(L値)>
ポリオレフィン製試験片の表面に形成されている導電性プライマー塗膜のL値をミノルタ社製色彩色差計「CR300」を用いて測定した。L値80以上を合格範囲とする。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる導電性プライマー塗料および塗膜形成方法は、プラスチック素材、とりわけポリオレフィン素材に対して好適に使用することができ、例えば、自動車バンパー等の用途に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の樹脂として酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むとともに、粒子表面に導電層を有する柱状二酸化チタン粒子からなる白色導電性フィラーを含む導電性プライマー塗料において、前記柱状二酸化チタン粒子は、その重量平均長軸径が7.0〜15.0μmの範囲にあるとともに、10μm以上の長軸径を有する粒子の含有量が15重量%以上である、ことを特徴とする、導電性プライマー塗料。
【請求項2】
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂のほかに、アクリル系重合鎖グラフト酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂およびメラミン樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の導電性プライマー塗料。
【請求項3】
必須の硬化剤としてブロック型イソシアネートを含む、請求項1または2に記載の導電性プライマー塗料。
【請求項4】
柱状二酸化チタン粒子表面の導電層が、酸化スズにアンチモンがドープされてなる層である、請求項1から3までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料。
【請求項5】
柱状二酸化チタン粒子表面の導電層が、酸化スズにリンがドープされてなる層であってアンチモンを含まない、請求項1から3までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料。
【請求項6】
柱状二酸化チタン粒子は、5.0μm未満の長軸径を有する粒子の含有量が40質量%以下である、請求項1から5までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料。
【請求項7】
柱状二酸化チタン粒子は、そのアスペクト比が3以上である、請求項1から6までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料。
【請求項8】
白色導電性フィラーの含有量が、塗料固形分に対し3〜50質量%である、請求項1から7までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料。
【請求項9】
導電性プライマー塗料により形成された塗膜上に、静電塗装によりベース塗料を塗装する塗膜形成方法において、前記導電性プライマー塗料として請求項1から8までのいずれかに記載の導電性プライマー塗料を用いる、ことを特徴とする、塗膜形成方法。
【請求項10】
導電性プライマー塗料が溶剤型であって、該塗料による塗膜を室温下で30〜90秒乾燥したのち、静電塗装によりベース塗料を塗装する、請求項9に記載の塗膜形成方法。

【公開番号】特開2007−238719(P2007−238719A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61793(P2006−61793)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】