説明

導電性ペイント組成物およびその製造方法

【課題】各種電子機器の内部素子から発生する電磁波による電磁波障害およびRFI問題を効果的に解決することができる電磁波遮蔽用導電性ペイント組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】a)水分散ポリウレタン分散液0.1〜60wt%、b)金属粉末:10〜60wt%、c)溶媒:10〜60wt%、d)レオロジーコントロール剤:0.1〜20wt%を含む導電性ペイント組成物および該組成物を塗布して得られる電磁波遮蔽用導電膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波遮蔽用導電性ペイント組成物およびその製造方法に係り、より詳しくは、導電性材料として金属粉末を含み、脂肪族多価酸と芳香族多価酸を混用して製造された水分散ポリウレタン分散液を含み、導電特性、粘度特性、素子付着性および耐磨耗性に優れた導電性ペイント組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信端末機、ノートブックPC、事務機器、医療機器などの各種電子機器の内部素子から発生する電磁波は、頭痛、視力低下、白血病、脳腫瘍、循環系異常、生殖機能低下、VDP症侯群誘発など、各種疾病に影響を及ぼすことができると報告されており、電磁波の人体に対する有害性論難が激しくなっている。また、電子製品の軽量化趨勢にしたがい、素子の集積度が増加するにつれて、各構成素子から発生する電磁波雑音(electromagnetic noise)は周辺素子の誤作動を引き起こして器機障害の原因となることもある。したがって、最近には、コンピューター、無線電話機、自動車、医療機器、マルチメディアプレーヤーなどの家庭用、事務用、産業用電子製品から発生する電磁波に対する遮蔽規格の強化と共にEMI(Electromagnetic Interference)およびRFI(Radio Frequency Interference)放出に対する規制も強化しているため、各種電子機器および部品の電磁波遮蔽対策が重要な課題として台頭している。
【0003】
電磁波を遮断する一般的な遮蔽方法としては、鍍金、真空蒸着、スプレーコーティングの方法がある。鍍金による電磁波遮蔽方法は久しい前から使用されて来たが、製造原価が高くて生産工程が複雑で環境汚染を誘発する問題点があるため、これに対する補完が要求されている。一方、真空蒸着による電磁波遮蔽方法は、費用が非常に高くて長期的な信頼性が問題となるため、極めて制限された場合にだけ使用されている。これに対し、金属粉末を使用したスプレーコーティングによる電磁波遮蔽方法は適用が容易で環境問題を解決することができるので、広く使用している趨勢である。
【0004】
スプレーコーティング法は、粘着性樹脂と伝導性金属の混合物を含むコーティング液を基材上にスプレーコートするもので、スプレーコーティングによって収得される導電性コーティング膜は優れた素子付着性と耐磨耗性を有しなければならない。電子器機の内部にコートされた後、金属粉末あるいはコートされた導電膜の一部が剥離して電子機器の回路に落ちれば、電子機器の作動に障害をもたらすことができる。特に、相対的に粗大粒子の銀がコートされた銅粉末を使用するスプレーコーティングの場合は、このような障害が一層酷くなる。
【0005】
携帯電話とノートブックPCの製造工程の特性上、導電性ペイントがコートされた後、完製品までの組立工程で、多くの作業者の手を必要とすることになる。たとえば、コーティング後、抵抗測定、外観検査、部品付着、基板付着、組立などの工程を挙げることができるが、このような工程を経る間、コーティング面にスクラッチが発生することができるので、コートされた導電膜の耐磨耗性も強力に要求される特性の一つである。
【0006】
金属粉末を使用したスプレーコーティング法では、フレーク状の銀粉末、ニッケル粉末、アルミニウム粉末などの金属粉末を使用して導電性ペイントを製造するが、金属粉末と残り成分間の密度差により、ペイントの製造後、金属粉末の沈降がほかのペイントに比べて易しく発生することができる。金属粉末の沈降が発生して金属とペイント溶液が層分離すると、さらに撹拌を行ってもペイント製造初期の均一な分散状態を回復することは難し
い。したがって、金属粉末を含む導電性ペイント組成物は高粘度特性を有しなければならない。導電性ペイントの粘度を高めれば金属の沈降を防止することができ、これにより、長期間にわたって初期の均一な分散状態を維持することができ、同一物性を表すことができるので、導電性ペイントの粘度を高めることも解決しなければならない課題である。
【0007】
スプレーコーティングによる電磁波遮蔽方法の一つとして、アルキル鎖構造のみを有する水分散ポリウレタン分散液を含む導電性コーティング組成物が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。しかし、前記特許文献1の組成物に使用されるアルキル鎖構造の水分散ポリウレタン分散液は、日光または紫外線による黄変現象は発生しないが、芳香族官能基を有する鎖構造に比べて鎖間の凝集力が低くて素子付着性または耐磨耗性が低下する問題点を有し、粘度特性が金属粉末の均一な分散状態を維持するのに不十分な問題点を有する。
【特許文献1】米国特許第6、645、613号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、芳香族官能基を有する水分散ポリウレタン分散液を導入して高粘度の導電性ペイントを製造し、素子にコーティング/乾燥後、金属の素子付着性と導電膜の耐磨耗性を向上させた導電性ペイント組成物を提供することである。
【0009】
本発明のほかの目的は、素子付着性と耐磨耗性に優れた導電膜を提供することができる電磁波遮蔽用導電膜の製造方法を提供することである。
本発明のさらにほかの目的は、電磁波遮蔽性能が優秀で耐磨耗性に優れた電磁波遮蔽用導電膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明の一観点によれば、水分散ポリウレタン分散液、金属粉末、溶媒およびレオロジーコントロール剤を含む導電性ペイント組成物において、水分散ポリウレタン分散液が下記一般式1の水分散性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする、導電性ペイント組成物を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
前記式で、R1は、それぞれ独立に炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6
〜15の環状脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R4およびR5は、それぞれ独立に水素またはメチル基、R6は炭素数3または4の脂肪族炭化水素基、R7は水素または炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、R8は、それぞれ独立に炭素数1〜10
の脂肪族炭化水素基または炭素数3〜10の環状脂肪族炭化水素基、xは1〜20の整数、yとzの和は5〜200であり、
下記一般式2で表されるユニット数を1としたときに、n1:(n2+n4+n6):n3:n4の割合は0.2〜1.5:1.0〜3.0:0.01〜0.3:0.1〜1.0、n5の割合は0.1〜1.0であり、
前記ポリウレタン樹脂は、R3が芳香族炭化水素基である下記一般式3で表される繰り
返し単位とR3が脂肪族炭化水素基である該繰り返し単位を含む。
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
本発明のほかの観点によれば、前記導電性ペイント組成物を基材上に塗布する段階、およびこの塗布された基材を乾燥炉内で熱処理して乾燥させる段階を含むことを特徴とする、電磁波遮蔽用導電膜の製造方法を提供する。
【0016】
本発明のさらにほかの観点によれば、本発明の導電性ペイント組成物から製造された電磁波遮蔽用導電膜を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による導電性ペイント組成物は、ペイントの粘度が高く、導電膜の素子接着力と耐磨耗性に優れているので、電磁波遮蔽用導電膜への製造時、数MHz〜数GHz帯域の電磁波を遮断することができ、特に移動通信端末機、ノートブックPC、事務機器、医療機器などの内部素子から発生する電磁波による電磁波障害(EMI)および無線周波数障害(RFI)の問題を効果的に解決することができる著しい効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明による導電性ペイント組成物は、水分散ポリウレタン分散液、金属粉末、混合溶媒を含んでなり、必要に応じてレオロジーコントロール剤をさらに含むことができる。
【0019】
また、本発明の導電性ペイント組成物において、各成分の組成比は、水分散ポリウレタン分散液0.1〜60wt%;金属粉末:10〜60wt%;溶媒:10〜60wt%であることが望ましい。
【0020】
本発明において、水分散ポリウレタン分散液は、導電性を付与する金属粉末を被コーティング素子に付着させ、乾燥後、導電膜がスクラッチに耐えることができる耐磨耗性を付
与する。
【0021】
一般に、ポリウレタンは、柔軟性、反発弾性、および耐磨耗性に優れ、強力な接着性などを持っているので、接着性を要求する多くの分野で使用されている。従来の接着剤、コーティング剤などとして使用するためのポリウレタンは、主に油性の状態に製造して使用した。油性状態に製造されるポリウレタンは適切な粘度で使用するために、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド、トルエンなどのような有機溶剤を溶媒として使用する。このように有機溶剤を溶媒として使用する場合には、大気および水質などの環境汚染を誘発させ、勤労者の健康および生産性を低下させ、引火点が非常に低い有機溶剤を使用するため、火災の危険性を持っている。
【0022】
このような問題のため、ポリウレタン主鎖にイオン基を付与する水分散ポリウレタン分散液を合成する自己油化方法が開発された。ポリウレタン主鎖にイオン基を付与する方法のなかで陽イオン系イオノマーを使用する方法としては、米国特許第4、016、123号、同第4、190、567号、同第4、277、383号および日本特開平5−320331号などに開示された方法があり、陰イオン系アイオノマーを使用する方法としては、米国特許第4、016、122号、同第4、914、148号および日本特開平5−39340号などに開示された方法があり、非イオン系を使用する方法としては、米国特許第4、794、147号に開示された方法がある。
【0023】
水分散ポリウレタン分散液は重合に使用されるポリオールの種類によっても区分することができるが、大きくはポリエーテル系、ポリエステル系およびアクリル系に分類される。これらのなかで、さまざまな素子に対する強い接着力を発現し、耐磨耗性などの機械的物性に優れたポリエステル系ポリオールが多く使用されている。ポリエステル系ポリオールは多価酸と多価アルコールを反応させて合成し、合成に用いられる多価酸としては、脂肪族のアジピン酸、芳香族のベンゾイン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸(trimellitic anhydride)などを用いることができる。
【0024】
本発明は、ポリオールを合成するにあたって、脂肪族多価酸と芳香族多価酸を混用することにより、脂肪族の利点である柔軟性と芳香族の利点である官能基間の強い凝集力と耐磨耗性を有するポリエステル系ポリオールを得ることができる。したがって、このようなポリオールを使用して製造された水分散ポリウレタン分散液を含む導電性ペイント組成物は、乾燥後、優れた素子付着性と耐磨耗性を有することができる。
【0025】
本発明で使用される水分散ポリウレタン分散液は芳香族多価酸と脂肪族多価酸を混用して合成した水分散ポリウレタン分散液であり、下記一般式1の構造を有することを特徴とする。
【0026】
【化4】

【0027】
前記式で、R1は、それぞれ独立に炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6
〜15の環状脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R4およびR5は、それぞれ独立に水素またはメチル基、R6は炭素数3または4の脂肪族炭化水素基、R7は水素または炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、R8は、それぞれ独立に炭素数1〜10
の脂肪族炭化水素基または炭素数3〜10の環状脂肪族炭化水素基、xは1〜20の整数、好ましくは2〜20であり、yとzの和は5〜200であり、
下記一般式2で表されるユニット数を1としたときに、n1:(n2+n4+n6):n3:n4の割合は0.2〜1.5:1.0〜3.0:0.01〜0.3:0.1〜1.0、n5の割合は0.1〜1.0であり、
前記ポリウレタン樹脂は、R3が芳香族炭化水素基である下記一般式3で表される繰り
返し単位とR3が脂肪族炭化水素基である該繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
ここで、前記ポリウレタン樹脂は、前記式1で表され、異なる構造を有する樹脂分子の混合物であってもよい。混合物のときは、n1〜n6は、混合物におけるそれぞれのユニット数の平均値である。
【0031】
本発明で使用可能な前記式1の水分散ポリウレタン分散液の具体的な例はオルテック(Ortec)社のReactisol PS−3が挙げられる。本発明において、芳香族多価酸と脂肪族多価酸の混用比は99:1〜1:99範囲内にあることができる。すなわ
ち、R3が芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基を混用した(すなわち、含む)水分散ポ
リウレタン分散液であり、芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基の含量比が99:1〜1:99範囲内であることが好ましい。
【0032】
本発明の導電性ペイント組成物のうち、水分散ポリウレタン分散液の含量は0.2wt%〜60wt%、望ましくは0.5wt%〜40wt%(製品重さ基準)である。その含量が0.2wt%未満の場合は素子付着性と耐磨耗性が不良になる場合があり、60wt%を超過する場合は抵抗が上昇するおそれがある。
【0033】
本発明の導電性ペイント組成物に使用可能な金属粉末としては、銀粉末または銀のコートされた銅粉末を使用する。銀粉末の場合、平均粒度(D50)1〜10μmのフレーク状粉末を使用し、銀のコートされた銅粉末の場合、平均粒度(D50)5〜50μmのフレーク状粉末を使用する。本発明で使用される金属粉末の使用量は10wt%〜60wt%である。金属粉末が10wt%未満の場合は導電性が不良になる場合があり、60wt%を超過する場合は製造原価が上昇する場合がある。本発明で使用可能な金属粉末の具体的な例としては、フェロ社製のSF−70A、SF−9ED、SF−7A、SF−7E、SF−9、SF−15−2、HRP社製のSF−162などを挙げることができ、銀のコートされた銅粉末としては、フェロ社製のAgCu−200、AgCu−250、AgCu−300、AgCu−400などを挙げることができる。
【0034】
本発明において、導電性ペイント組成物の導電性を向上させるためには、平均粒度1〜4未満μmの銀粉末(以下“A粉末”という)と平均粒度4〜10μmの銀粉末(以下“B粉末”という)を混合して使用することが望ましい。これは、大きさの相違した粒子がよく接触して導電性が向上すると思われる。A粉末とB粉末を混合して使用する場合、A粉末とB粉末の混合割合は99.9:0.1〜20:80(w/w)の範囲内で選択することが望ましい。全体銀粉末のなかで、B粉末の割合が80重量%未満の場合は相違する大きさの粉末を混合することで所望の導電性上昇効果を得ることができない。
【0035】
本発明で使用可能な混合溶媒の例は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアセテート、メチルピロリドン、アセトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブを含み、これらの望ましい含量は10wt%〜60wt%範囲内である。主溶媒がメチルエチルケトン(MEK)のような腐食性の強い溶剤を使わないでマイルドな溶剤を使用するので、プラスチック面に影響をほとんど与えなく、作業者らの環境安全の側面でも良好である。また、沸点の低い溶媒を選択してスプレー塗装の後、低温の乾燥条件で大量生産が可能であるので、原価低減が可能である。
【0036】
本発明の導電性ペイント組成物は、必要に応じてレオロジーコントロール剤をさらに含むことができる。本発明で使用可能な望ましいレオロジーコントロール剤はアクリルポリマータイプであり、アルコール類の溶媒によく溶解され、導電性に影響を及ぼさないで金属の沈降防止およびスプレー作業性向上に効果がある。このようなレオロジーコントロール剤の具体的な例は、ノベオン(Noveon)社製のカルボポール(Carbo−pol)EZ−2である。本発明で使用可能な望ましいレオロジーコントロール剤はペースト化されたものである。本発明による導電性ペイント組成物にレオロジーコントロール剤を添加する場合、レオロジーコントロール剤の使用割合は0.1〜20wt%である。レオロジーコントロール剤の量が0.1wt%未満の場合は増粘効果が低下して金属の沈降が起こる場合があり、20wt%を超過する場合は樹脂との強い相互作用によって保存性が不良になり抵抗値上昇の原因となる場合がある。
【0037】
本発明のほかの観点によれば、本発明は電磁波遮蔽用導電膜の製造方法に係る。本発明の方法によって電磁波遮蔽用導電膜を製造する場合は、まず前記式1の水分散性ポリウレ
タン樹脂を含むポリウレタン分散液、金属粉末、溶媒およびレオロジーコントロール剤を含む導電性ペイント組成物を準備した後、これを基材上に塗布する。ついで、導電性ペイント組成物の塗布された基材を乾燥炉で熱処理して乾燥させる。
【0038】
本発明で使用可能な基材は、ポリカーボネート、ポリカーボネートアロイ、アクリロブタジエンスチレン(ABS)、アクリロブタジエンスチレン/ポリカーボネート共重合体(ABS/PC)、ポリフェニレンサルフェート(PPS)樹脂を含むが、必ずこれらに制限されるものではない。
【0039】
本発明において、前記乾燥段階は40〜70℃で行うことが望ましい。40℃未満で乾燥させると、塗膜の乾燥が不十分であるため、接着性不良および抵抗上昇の問題が発生する場合があり、十分な乾燥のために長期間を要するので、生産性の低下をきたすことができる。また、70℃を超過して乾燥させる時は、コーティング基材の形態変形およびバインダー樹脂の機能低下をもたらす場合がある。
【0040】
本発明の方法により、携帯電話、ノートブックPCなどのプラスチックハウジングにコートされる導電膜は脂肪族と芳香族の相違なる官能基を有する水分散ポリウレタン分散液を使用して優れた素子付着性と卓越した耐磨耗性を有する。
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明の望ましい具体例を説明するためのもので、本発明の保護範囲を制限するものと解釈されてはいけない。
【0042】
[実施例]
[レオロジーコントロール剤(カルボポールEZ−2)のペーストの製造例]
一定容器にエタノール950gを入れ、高速撹拌機によって700rpmで撹拌しながらカルボポールEZ−2 20gを加える。800rpmで30分間撹拌した後、アクゾ(Akzo)社製のEthomeen C−25 30gで中和させる。アミンの添加後
には、1000rpmで1時間撹拌して仕上げる。
【0043】
[実施例1]
ディスパーマットD−51580モデル(VMA GETZMANN GMBH社製)を使用して、前記式1の水分散ポリウレタン分散液(米国オルテック社製のReactisol PS−3)94gを添加した後、市販されている銀粉末(米国フェロ社製のSF−70A)186gを入れ、2000rpmで30分間撹拌して製造した。これにエタノール141gを入れ、500rpmで10分間混合した後、前記製造例で収得したカルボポールペースト57gを添加し1000rpmで30分間撹拌しながら粘度を調節した後、仕上げした。
【0044】
製造された試料をエタノール100vol%で希薄した後、横15cm、縦6cm、厚さ2mmのポリカーボネートシートに、乾燥塗膜の厚さが12.5μmとなるように、スプレーコーティングした後、コートされた試片を60℃の乾燥炉で15分間乾燥させた。収得されたコーティング試片の物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0045】
[実施例2]
ディスパーマットD−51580モデル(VMA GETZMANN GMBH社製)を使用してReactisol PS−3(米国オルテック社製)70gを添加した後、市販される銀のコートされた銅粉末(フェロ社製のAgCu−200)116gを入れ、1000rpmで30分間撹拌して製造した。これにエタノール279gを入れ、500rpmで10分間混合した後、カルボポールペースト12gを添加し、1000rpmで
30分間撹拌しながら粘度を調節した後、仕上げした。製造された試料は実施例1と同一方法で試片を製造し、物性を評価した。その結果を下記表1に共に示した。
【0046】
[実施例3]
ディスパーマットD−51580モデル(VMA GETZMANN GMBH社製)を使用してReactisol PS−3(米国オルテック社製)94gを添加した後、平均粒度が2μmの銀粉末(米国フェロ社製のSF−70A)と平均粒度5μmの銀粉末(米国フェロ社製のSF−10E)を混合し、銀粉末186gを入れて2000rpmで30分間撹拌して製造した。これにエタノール141gを入れ、500rpmで10分間混合した後、前記製造例で収得したカルボポールペースト57gを添加し、1000rpmで30分間撹拌しながら粘度を調節した後、仕上げした。製造された試料は実施例1と同一方法で試片を製造し、物性を評価した。その結果を下記表1に共に示した。
【0047】
[比較例1]
ディスパーマットD−51580モデル(VMA GETZMANN GMBH社製)を使用して、アルキル鎖構造のみを有する水分散ポリウレタン分散液(Reichhold社製のSpensol L512)94gを添加した後、市販される銀粉末(フェロ社製のSF−70A)186gを入れ、2000rpmで30分間撹拌して製造した。これにエタノール141gを入れ、500rpmで10分間混合した後、カルボポールペースト57gを添加し、1000rpmで30分間撹拌しながら粘度を調節した後、仕上げした。製造された試料は実施例1と同一方法で試片を製造し、物性を評価した。その結果を下記表1に共に示した。
【0048】
[比較例2]
ディスパーマットD−51580モデル(VMA GETZMANN GMBH社製)を使用して、アルキル鎖構造のみを有する水分散ポリウレタン分散液(Reichhold社製のSpensol L512)70gを添加した後、市販される銀のコートされた銅粉末(フェロ社製のAgCu−200)116gを入れ、1000rpmで30分間撹拌して製造した。これにエタノール279gを入れ、500rpmで10分間混合した後、カルボポールペースト12gを添加し、1000rpmで30分間撹拌しながら粘度を調節した後、仕上げした。製造された試料は実施例1と同一方法で試片を製造し、物性を評価した。その結果を下記表1に共に示した。
【0049】
[参考例3]
スプレーコートされた試片を30℃の乾燥炉で15分間乾燥させたことを除き、実施例3と同一方法で試料を製造して物性を評価し、その結果を下記表1に共に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
[物性評価方法]
*抵抗:マルチメーターを用いて、単位面積当たり表面抵抗で評価した。
*接着力:ASTM D3359によって評価した。
【0052】
*耐磨耗性:Norman Tool INC社製の摩耗性テスト機(RCA Abrader)と1/4インチの幅を有するテープを使用し、コートされた導電膜に孔が生ずるまでの回転数で評価した。
【0053】
*粘度:BROOKFIELD社製の低粘度測定用(LVT)粘度計で測定し、測定条件は、3番スピンドルを使用して30RPMで測定した。粘度が10、000cPs以上の場合は、高粘度測定用(RVT)粘度計で測定し、測定条件は7番スピンドルを用いて20RPMで測定した。
【0054】
前記表1の結果から分かるように、従来のアルキル鎖構造のみを有する水分散ポリウレタン分散液を使用して製造された導電性ペイント(比較例1及び2)は、ペイントの粘度が低く、乾燥した導電膜の接着力と耐磨耗性が不良である一方、本発明により脂肪族多価酸と芳香族多価酸を混用して製造したポリエステル系ポリオールを使用して製造された水分散ポリウレタン分散液を含む導電性ペイント(実施例1〜3)は、ペイントの粘度が高く、導電膜の素子接着力と耐磨耗性に優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散ポリウレタン分散液、金属粉末、溶媒およびレオロジーコントロール剤を含む導電性ペイント組成物において、前記水分散ポリウレタン分散液が下記一般式1の水分散性ポリウレタン樹脂を含み、
【化1】

前記式で、R1は、それぞれ独立に炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6
〜15の環状脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R4およびR5は、それぞれ独立に水素またはメチル基、R6は炭素数3または4の脂肪族炭化水素基、R7は水素または炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、R8は、それぞれ独立に炭素数1〜10
の脂肪族炭化水素基または炭素数3〜10の環状脂肪族炭化水素基、xは1〜20の整数、yとzの和は5〜200であり、
下記一般式2で表されるユニット数を1としたときに、n1:(n2+n4+n6):n3:n4の割合は0.2〜1.5:1.0〜3.0:0.01〜0.3:0.1〜1.0、n5の割合は0.1〜1.0であり、
前記ポリウレタン樹脂は、R3が芳香族炭化水素基である下記一般式3で表される繰り
返し単位とR3が脂肪族炭化水素基である該繰り返し単位を含むことを特徴とする、導電
性ペイント組成物。
【化2】

【化3】

【請求項2】
前記組成物が
a)水分散ポリウレタン分散液0.1〜60wt%
b)金属粉末:10〜60wt%
c)溶媒:10〜60wt%
d)レオロジーコントロール剤:0.1〜20wt%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項3】
前記R3が芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基を含む水分散ポリウレタン分散液であ
り、芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基の含量比が99:1〜1:99範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項4】
前記芳香族炭化水素基が、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸(trimellitic anhydride)からなる群より選択され化合物から誘導される基である
ことを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項5】
前記金属粉末が、平均粒度1〜4未満μmの銀粉末と平均粒度4〜10μmの銀粉末の混合粉末であることを特徴とする、請求項2に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアセテート、メチルピロリドン、アセトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、およびブチルセロソルブからなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項7】
前記レオロジーコントロール剤がアクリルポリマーであることを特徴とする、請求項2に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項8】
前記レオロジーコントロール剤がペースト化されたものであることを特徴とする、請求項7に記載の導電性ペイント組成物。
【請求項9】
(a)下記一般式1の水分散性ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン分散液、金属粉末、溶媒およびレオロジーコントロール剤を含む導電性ペイント組成物を基材上に塗布する段階と、
【化4】

(前記式で、R1は、それぞれ独立に炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数
6〜15の環状脂肪族炭化水素基、R2は炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R4およびR5は、それぞれ独立に水素またはメチル基、R6は炭素数3または4の脂肪族炭化水素基、
7は水素または炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、R8は、それぞれ独立に炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数3〜10の環状脂肪族炭化水素基、xは1〜20の整
数、yとzの和は5〜200であり、
下記一般式2で表されるユニット数を1としたときに、n1:(n2+n4+n6):n3:n4の割合は0.2〜1.5:1.0〜3.0:0.01〜0.3:0.1〜1.0、n5の割合は0.1〜1.0であり、
前記ポリウレタン樹脂は、R3が芳香族炭化水素基である下記一般式3で表される繰り
返し単位とR3が脂肪族炭化水素基である該繰り返し単位を含む。)
【化5】

【化6】

(b)前記段階で収得した塗布された基材を乾燥炉内で熱処理して乾燥させる段階と、を含むことを特徴とする、電磁波遮蔽用導電膜の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥段階が40℃〜70℃の温度で行われることを特徴とする、請求項9に記載の電磁波遮蔽用導電膜の製造方法。
【請求項11】
前記基材が、ポリカーボネート、ポリカーボネートアロイ、アクリロブタジエンスチレン(ABS)、アクリロブタジエンスチレン/ポリカーボネート共重合体(ABS/PC)、およびポリフェニレンサルフェート(PPS)樹脂からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の電磁波遮蔽用導電膜の製造方法。
【請求項12】
請求項9の方法によって製造されたことを特徴とする、電磁波遮蔽用導電膜。
【請求項13】
請求項9の方法によって製造された電磁波遮蔽用導電膜を含むことを特徴とする、電磁波遮蔽用基材。

【公開番号】特開2006−144003(P2006−144003A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311165(P2005−311165)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【出願人】(506059263)オルテック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】