説明

導電性ペーストおよびそれを用いた配線基板

【課題】チキソ剤などを添加することなくチキソ比を低下させて印刷性、導電性、密着性の両立したペーストを提供すること。
【解決手段】金属粉末成分、熱可塑性樹脂、分散媒からなるペーストであって、金属と樹脂の合計質量に対する金属の質量の割合が94〜98%を示すとともに、金属粒子の大きさは平均一次粒子径が50nm以下の金属粒子1の群と、100nm以上の金属粒子2の群により構成することによって達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインパターン形成に優れ、低温での焼成が可能な導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では電子機器のさらなる小型化に伴い、回路のファインパターン形成が従来にも増して求められるようになってきており、それに応じてファインパターン形成の可能なペーストが今までにも増して求められるようになってきた。
【0003】
また、耐熱性の劣るような基板にも配線を描けるように低温で焼結できるようなペーストの要望が高くなってきている。
【0004】
ファインパターン形成、低温焼結性を両立するための手法としては様々な方法が提案されているが、それらの方法の中でも有望なものの一つとして金属ナノ粒子を用いる手法が近年提案されるようになってきた。
【0005】
しかし、金属ナノ粒子のような新規の材料では従来用いられて来た分散方法そのものが合致しておらず、チキソ比が高くなることに伴い、印刷時の均一塗布性が悪化するため印刷精度が悪化し、その結果配線表面の平滑性が失われてしまうことがある。
【0006】
上述の不具合を解消するためには、大別して全く新たな分散プロセスを構築するか、あるいは分散剤等と言った添加物により、粒子に分散性を強制的に付与するという手法が考えられる。後者の例としては分散性やチキソ比をコントロールするために、特許文献1に記載されているようなチキソ剤などを用いる手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、チキソ剤などを用いる事で分散性やチキソ性は改善することが示されている。ただし、これらのものは高分子化合物であることが多いため、一般的には低温で分解され難く、金属ナノ粒子の焼結するような低温での熱処理では、除去されきらなかったチキソ剤が金属膜中に残存することがある。その結果として、基板への影響を避けるため低温で熱処理すると、金属ナノ粒子を使用したとしても導電性が確保されないという問題があった。
【0009】
そこで本発明の解決すべき技術的課題としては、チキソ剤などを添加することなくチキソ比を低下させて印刷性、導電性、密着性の両立したペーストを提供することと定めた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上述の課題が後述する構成により解決できうることを見いだし、本願発明を完成させた。
【0011】
すなわち第一の構成として、金属粉末成分、熱可塑性樹脂、分散媒からなるペーストであって、金属と樹脂の合計質量に対する金属の割合(以降F値ということもある。この値は、加熱処理後に蒸散する成分、すなわち分散媒を除いた樹脂と金属成分(金属)の総和における金属成分値を指す。具体的には、F値=(金属成分1の群(質量%)+金属成分2の群(質量%))/(金属成分1の群(質量%)+金属成分2の群(質量%)+樹脂成分(質量%))×100で与えられる値である)が94〜98%を示すとともに、透過型電子顕微鏡写真により計測される平均一次粒子径が50nm以下である金属粒子1の群と、レーザー回折法により計測される平均一次粒子径が100nm以上である金属粒子2の群により構成することによって達成することができる。
【0012】
加えて第二の構成として、25℃での回転数を1rpmと10rpmとしたときにおけるペーストの粘度の比(以後チキソ比ということもある)が2.0〜7.5である第一の構成に記載されたペーストである。
【0013】
第三の構成として、金属粒子1の表面には炭素数6〜8の脂肪酸が吸着している、第一または第二の構成に記載されたペーストである。
【0014】
第四の構成として、質量比として金属粒子1の全金属成分に対する質量割合が10〜90質量%である、第一ないし第三のいずれかの構成に記載されたペーストである。
【0015】
第五の構成として、ペーストを構成する樹脂はアクリル樹脂である、第一ないし第四のいずれかの構成に記載されたペーストである。
【0016】
第六の構成として、ペーストを構成する分散媒は、ペーストの重量を100としたとき、20〜40である第一ないし第五のいずれかの構成に記載されたペーストである。
【0017】
第七の構成として、上記第一ないし第六に記載のペーストを用いることにより得られる導電性回路が提供される。
【0018】
第八の構成として、導電性回路の表面粗さ(以後Raということもある)が3.0μm以下である、上記第七に記載の導電性回路が提供される。
【0019】
第九の構成として、導電性回路の比抵抗値が10μΩ・cm以下である上記第七または第八に記載の導電性回路が提供される。
【発明の効果】
【0020】
上記の構成とすることにより、印刷性に優れた導電性ペーストを提供することができるとともに、該ペーストを使用することにより導電性が高く、かつ基板への密着性に優れた導電性回路を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線のデジタルマイクロスコープ写真(拡大倍率:500倍)
【図2】実施例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線の走査型電子顕微鏡写真(拡大倍率:50000倍)
【図3】実施例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線の表面粗さプロファイル
【図4】比較例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線のデジタルマイクロスコープ写真(拡大倍率:500倍)
【図5】比較例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線の走査型電子顕微鏡写真(拡大倍率:50000倍)
【図6】比較例1にかかるポリイミド基板上に形成した配線の表面粗さプロファイル
【図7】比較例2にかかるポリイミド基板上に形成した配線のデジタルマイクロスコープ写真(拡大倍率:500倍)
【図8】比較例2にかかるポリイミド基板上に形成した配線の走査型電子顕微鏡写真(拡大倍率:50000倍)
【図9】比較例2にかかるポリイミド基板上に形成した配線の表面粗さプロファイル
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<金属粒子1(ナノ粒子)の構成>
金属粒子1の粒子径は透過型電子顕微鏡もしくは高分解能の走査型電子顕微鏡により計測可能な粒子径(以降金属粒子1の一次粒子径ということがある)において、平均一次粒子径として1〜50nm、好ましくは1〜30nm、一層好ましくは1〜20nmである粒子を用いる。こうした粒子径のものを用いることにより、取り扱いが容易で、耐熱性の低い基板に影響を与えない程度の低温の熱処理条件で焼結し十分な導電性を付与できるようなペーストを得ることが出来る。
【0023】
このような範囲にある場合、平均一次粒子径の異なる粒子を併用しても構わない。その場合には先に示した1〜50nmの範囲に度数頻度のピークが2つ以上出現することがある。このように度数頻度のピークが2つ以上確認される場合、その一群を指して、「金属粒子1の群」という。
【0024】
金属ナノ粒子は、粒子表面の活性が大変高いため、金属表面があらわになっていると、隣接する粒子同士が焼結することがある。通常金属ナノ粒子の表面を有機化合物で被覆すれば、焼結が抑制されることから、金属ナノ粒子として独立に安定した状態で存在できることが知られている。しかし、この被覆する有機化合物の分子量が大きくなりすぎると、多少加熱しても分解もしくは蒸散しにくくなることが知られており、焼結膜の内部に残存することがある。そのような場合導電性に悪影響を及ぼすことから、こうしたものを使用すると導電剤としては不適切となることがある。
【0025】
逆に分子量が小さすぎる場合、粒子そのものが不安定で取扱いが不便なものとなるため、これら表面を被覆する有機化合物は適度な分子量を有する必要がある。しかし、上述のように低温焼結性を得るためには適度に短い分子鎖である必要がある。本発明では、これらの要求をともに満足するものとして、表面を構成する有機化合物は比較的低分子量のカルボン酸とすることを提案する。また、このカルボン酸はその結合形態として飽和、不飽和の種類を問わず、構造中に二重、三重結合を有するものであっても支障なく、場合により構造中に芳香族環を有していても良い。
【0026】
本発明では、脂肪酸のうちでも特に炭素数が6〜8の低炭素のカルボン酸、具体的にはヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ソルビン酸、安息香酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸程度の長さであることが特に好ましい。このような有機物が被覆された粒子、例えばヘキサン酸やソルビン酸が被覆された粒子であれば、粉末状態として得ることもできることため取扱いにも都合がよい。
【0027】
また、本発明では、1種類の有機物で被覆した金属ナノ粒子だけでなく、別々の有機物で被覆した金属ナノ粒子同士を混合して利用してもよい。例えば、飽和型脂肪酸を表面に被覆した金属ナノ粒子と不飽和型脂肪酸を表面に被覆した金属ナノ粒子を混合して用いることも好適である。
【0028】
<金属粒子2の群の構成>
本発明における金属粒子2とは、その平均粒子径が0.1μmすなわち100nm以上の粒子を指す。その上限に関しては特段の定めはないが、微細配線を指向するため、最大でも10.0μmすなわち10000nm以下であることが好ましい。より好ましくは0.1〜8.0μm、さらに好ましくは0.2〜5.0μmのものを使用する。こうすることで、平均粒子径の大きな粒子の隙間部分に金属ナノ粒子が混在しやすくなる。上記の範囲内にある場合において、平均一次粒子径の異なる粒子を併用しても特段の影響はない。この場合先に示した0.1〜1.0μmの範囲に度数頻度のピークが2つ以上出現することになる。このように度数頻度のピークが2つ以上確認される場合、その一群を指して、「金属粒子2の群」という。
【0029】
なお、金属粒子2における平均粒径D50は、金属ナノ粒子群1の測定方法とは異なるものであり、銀粉試料0.3gをイソプロピルアルコール50mLに入れ、出力50W超音波洗浄器で5分間分散させた後、マイクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル−日機装製の9320−X100)によってレーザー回折法で測定した際のD50(累積50質量%粒径)の値である。
【0030】
金属粒子1および2は、金属粒子1の全金属成分に対する質量割合が10〜90質量%であるのが良く、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%、最も好ましくは40〜70質量%である。すなわち全金属に対する金属粒子2は90〜10質量%の範囲にある。
【0031】
<樹脂の選定>
本発明のペーストには配線の比抵抗をあげず、基板に対する密着性を確保するべく、必要最低限量の樹脂を添加する。樹脂は焼成後において、必要以上に残るのは好ましくないので焼成時にある程度分解が起こる熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂のなかでも、アクリル樹脂やポリエステル樹脂を添加するのが好ましい、具体的名称を挙げると次のようなものが知られているが、上述の性質を有する場合には、本欄に記載のもの以外のものの使用を排除するものではない。アクリル樹脂としては、三菱レイヨン株式会社のダイヤナールシリーズ、東亞合成株式会社製のARUFRONシリーズ、ポリエステル樹脂としては、東洋紡績株式会社製のバイロンシリーズ、荒川化学工業株式会社製のマルキードNo1が例示できる。より好ましくはアクリル樹脂が良い。
【0032】
樹脂の添加量としては、金属と樹脂の合計質量に対して2〜6質量%、好ましくは2〜5質量%の添加量とするのがよい。添加をする樹脂量が多すぎると、焼成後に樹脂が必要以上に配線中に残ってしまい、導電性にも多大な影響を与えるため好ましくない。一方添加量を少なくすると配線と基板との密着性が確保できないため、少なくとも2質量%程度の添加は必要である。
【0033】
<分散剤の選定>
本発明のペーストには分散剤を添加しなくともよいことに特徴をもつ。必要に応じて添加することもできるが、必要以上に添加をすると除去が不十分になるとともに、導電性にも多大な影響を与えるので好ましくない。
【0034】
<分散方法の選定>
また、分散液の分散方法としては、粒子の著しい改質を伴わないという条件下において、従来一般的に用いられてきている分散方法を用いることができる。具体的には、超音波分散、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式攪拌機などが例示でき、これらは単独あるいは複数を併用して使用することもできる。
【0035】
以下に本発明で用いた測定方法について説明をする。
(TEM像からの平均一次粒子径の測定)
乾燥状態の銀粒子(以下銀粒子)2質量部をシクロヘキサン96質量部とオレイン酸2質量部との混合溶液に添加し、超音波分散によって分散させた。分散溶液を支持膜付きCuマイクログリッドに滴下し、乾燥させることでTEM試料とした。作成したマイクログリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−100CXMark−II型)を使用し、100kVの加速電圧で、明視野で粒子を観察した像を、174,000倍で撮影した。
【0036】
平均一次粒子径の算出には、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製A像くん(登録商標))を用いた。この画像解析ソフトは色の濃淡で個々の粒子を識別するものであり、174,000倍のTEM像に対して「粒子の明度」を「暗」、「雑音除去フィルタ」を「有」、「円形しきい値」を「20」、「重なり度」を「50」の条件で円形粒子解析を行って一次粒子平均径を測定した。なお、TEM像中に凝結粒子や異形粒子が多数ある場合は、測定不能であるとした。
【0037】
(銀含有量測定)
灰ぶん測定用灰ざらに試料を0.3g以上秤量し、マッフル炉(FO310、ヤマト科学株式会社製)にて約10℃/minの速度で700℃まで昇温させ、粒子表面に存在する有機物を除去した。
【0038】
その後、自然放冷により炉内の温度が500℃以下となった段階で、灰ざらを取り出してデシケーター内で常温まで冷却する。冷却した試料重量と加熱処理前の重量を比較することで除去された有機物の量と銀含有量を算出した。
【0039】
(粘度測定)
作製したペーストについて、レオメーター(Reostress600、HAAKE社製)を用いて25℃、5rpmにおける粘度を測定した。また、あわせて1rpmと10rpmにおける粘度を測定して1rpmと10rpmにおける粘度の比を本発明においてはチキソ比と定義した。
【0040】
ペーストの粘度は、印刷を行う装置に適したものに合わせると良く、概ね0.1mPa・s〜1000Pa・sの範囲である。ペーストのチキソ比は高すぎるとレベリングせず配線表面に凹凸が残ってしまい、逆に低すぎると配線がダレ広がってしまうので、2.0〜7.5が好ましく、2.0〜7.0であることがより好ましく、2.0〜6.5であることがさらに好ましい。
【0041】
(配線の描画)
スクリーン印刷(MT−320T、マイクロテック社製)による配線描画を行った。線幅300μmの配線をポリイミドフィルム基板上に描画し、オーブン(DKM400、ヤマト科学株式会社製)で大気中200℃、60分間加熱して金属配線を形成させた。
【0042】
(配線の表面粗さ評価)
基板上に作成した配線について、表面粗さ(Ra)を表面粗度計(サーフコム1500D、株式会社東京精密製)を用いて測定した。また、測定の長さを1.0mm以上取った。得られた表面粗さの測定プロファイルを図3,図6,図9として示す。
【0043】
導電性回路において配線には凹凸が少ない、すなわち表面粗さ(Ra)の値が小さいことが好ましい。本発明に従うペーストを用いることによって、Raは3.0μm以下、あるいは2.5μm以下、さらには2.0μm以下という極めて平滑な配線を形成することが可能である。
【0044】
(配線の比抵抗測定)
基板上に作成した配線について、線抵抗をデジタルマルチメーター(ミリオームハイテスタ、日置電機株式会社製)、配線の厚みを表面粗度計(サーフコム1500D、株式会社東京精密製)、配線の幅をデジタルマイクロスコープ(VHX−900、株式会社キーエンス製)にて測定し比抵抗を算出した。なお比抵抗を算出する式(1)としては以下のようになる。

・・(1)
【0045】
本発明に従うペーストで描画した配線において上記の算出方法により得られる抵抗値は、10μΩ・cm以下であり、低いものでは8μΩ・cm以下といった小さい値を示す。10μΩ・cmよりも高い場合には、導電性にやや難があると言えるので好ましくない。
【0046】
(配線の密着性評価)
基板上の配線にセロハンテープ(幅24mm、ニチバン社製)を貼り付け、5kg重程度の荷重をかけ、配線にセロハンテープを貼り付ける。その後、配線とセロハンテープの間の気泡がなくなるよう該加重を擦過させることで、気泡を除去してテープと基板を密着させた。基板が固定できたらテープを持ち上げ、基板とテープの角度が約90度になるように注意しながら、約0.6秒の速度で一気に引き剥がす。
【0047】
少しでも剥離があると、断線などが生じやすく抵抗値に大きな影響を及ぼすので、剥離が全く確認されなければ○、一部でも剥離が確認された場合を×と評価した。
【実施例】
【0048】
以下、本発明による実施例について詳細に説明する。
【0049】
(銀粒子1分散ペーストAの作製)
樹脂としてアクリル樹脂BR−102(三菱レイヨン株式会社製)を5.0g用意し、分散媒であるテルピネオール(和光純薬工業株式会社製)44.0gに溶解し、この中にヘキサン酸(炭素数:6)で被覆された一次粒子の平均粒径が20nmの銀粒子95.0gを加え、手攪拌で混合した。
【0050】
均一に混合し色ムラや粉の塊がないことを確認した後、混合物を三本ロールミルに通し、混練脱泡を行って導電性ペーストを作成した。
【0051】
この銀粒子1分散ペーストAの銀濃度は64質量%、粘度は46Pa・s、チキソ比は7.7であった。物性等を表1に示した。
【0052】
(銀粒子2分散ペーストB−1の作製)
樹脂としてアクリル樹脂BR−102(三菱レイヨン株式会社製)を5.0g用意し、分散媒であるテルピネオール(和光純薬工業株式会社製)15.0gに溶解し、この中に一次粒子の平均粒径が800nmの市販されている球状銀粒子95.0gを加え、手攪拌で混合し、銀粒子1分散ペーストAと同様にして導電性ペーストB−1を作製した。
【0053】
この銀粒子2分散ペーストB−1の銀濃度は質量82%、粘度は51Pa・s、チキソ比は2.4であった。物性等を表1にあわせて示した。
【0054】
(銀粒子2分散ペーストB−2の作製)
樹脂としてアクリル樹脂BR−102(三菱レイヨン株式会社製)を5.0g用意し、分散媒であるテルピネオール(和光純薬工業株式会社製)19.0gに溶解し、この中に一次粒子の平均粒径が7700nmの市販されているフレーク状銀粒子95.0gを加え、手攪拌で混合し、銀粒子1分散ペーストAと同様にして導電性ペーストB−2を作製した。
【0055】
この銀粒子2分散ペーストB−2の銀濃度は質量79%、粘度は49Pa・s、チキソ比は2.0であった。物性等を表1にあわせて示した。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例1)
銀粒子1分散ペーストAと銀粒子2分散ペーストB−1を銀の質量比で5:5になるように混合し混合ペーストを作製した。得られた混合ペーストは、銀濃度は質量72%、粘度は30Pa・s、チキソ比は4.6であった。得られたペーストを用いて印刷試験に付し、印刷性、比抵抗、密着性について評価した。
【0058】
その結果得られた配線は、Raが1.3μm、比抵抗が6.4μΩ・cm、密着性が○であった。すなわち、平滑性、低抵抗、高密着という3つの要素を満たす配線を描画できた。得られた配線特性の結果を表2に示す。デジタルマイクロスコープによる配線の外観、走査電子顕微鏡写真、表面粗さプロファイルをそれぞれ図1〜3に示す。
【0059】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
表2に示すような混合比率でペーストを作成した以外は実施例1を繰り返し、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表2にあわせて示す。
比較例1、2については、デジタルマイクロスコープによる配線の外観、走査電子顕微鏡写真、表面粗さプロファイルをそれぞれ図4〜6、図7〜9に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
比較例のようにペーストAまたはBを単独で用いると、印刷性、平滑性、比抵抗、密着性などの観点で見ていくと1つないし2つの点では特性が出ていても要求される全ての特性を満足するようなペーストを得られることは無かった。
【0062】
ナノ粒子のみで形成したものは、走査型電子顕微鏡で見れば緻密な膜が形成されているように見えるが、外観ではかなり大きい紗の目といわれる凹凸が形成されている。また、このことは表面粗さのプロファイルを見ても明らかである。
【0063】
一方、ミクロン粒子のみで形成させたものは、走査型電子顕微鏡で見ても明らかなように凹凸が激しく、これは表面粗さプロファイルを見ても明らかにその傾向が確認される。
【0064】
それに対して、実施例のようにペーストAとBを混ぜ合わせることにより要求される全ての特性を満足するようなペーストを得られることがわかる。実施例1を代表して示した通り、表面は平坦で凹凸が少ないものが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に従う導電性ペーストはRFIDの配線などの各種配線形成に用いることが出来る。また、本発明に従う導電性ペーストは低温焼結が可能であるためフレキシブルなフィルムの上に配線を形成することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡写真により計測される平均一次粒子径が50nm以下の金属粒子1の群と、レーザー回折法により計測される平均一次粒子径が100nm以上の金属粒子2の群により構成される金属粉末成分、熱可塑性樹脂、分散媒からなり、金属と樹脂の合計質量に対する金属の質量の割合が94〜98%を示すペースト。
【請求項2】
25℃での回転数が1rpmと10rpmにおけるペーストの粘度の比が2.0〜7.5である、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
金属粒子1の表面には炭素数6〜8の脂肪酸が吸着している、請求項1または2のいずれかに記載されたペースト。
【請求項4】
質量比として金属粒子1の全金属成分に対する質量割合が10〜90質量%である、請求項1ないし3のいずれかに記載されたペースト。
【請求項5】
前記ペーストを構成する樹脂はアクリル樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載されたペースト。
【請求項6】
前記ペーストを構成する分散媒は、ペーストの重量を100としたとき、20〜40である、請求項1ないし5のいずれかに記載のペースト。
【請求項7】
前記金属粒子1は銀である、請求項1ないし6のいずれかに記載のペースト。
【請求項8】
請求項1ないし6に記載のペーストを用いることにより得られる導電性回路。
【請求項9】
導電性回路の表面粗さ(Ra)が3.0μm以下である請求項8に記載の導電性回路。
【請求項10】
導電性回路の比抵抗値が10μΩ・cm以下である請求項8または9のいずれかに記載の導電性回路。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−65783(P2011−65783A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213521(P2009−213521)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】