説明

導電性ペースト及び半導体装置

【課題】作業性が良好で、耐熱性、耐湿性、耐候性に優れ、かつ半導体素子と各種基材との接合において信頼性の高い物理的、電気的接合が可能な導電性ペースト、及びそのような導電性ペーストを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】導電性ペーストは、(A)可溶性ポリイミド樹脂、(B)溶剤及び(C)比表面積(SA)0.3〜1.3m/g、タップ密度(TD)3.0〜6.0g/cmのフレーク状銀粉を含有する。半導体装置は、そのような導電性ペーストにより、半導体素子を半導体素子支持部材上に接着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、一般に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂結合剤(バインダー)と導電性粉末とから構成され、各種電子部品の接着、コーティング、印刷による回路形成等に使用されている。熱硬化性樹脂である結合剤は、硬化剤により熱硬化して有機溶剤に不溶となり、また、耐熱性、耐湿性、耐候性等が付与される。
【0003】
また、半導体装置において、金属薄板(リードフレーム)上の所定部分にLED、IC、LSI等の半導体素子(以下、半導体チップとも称する)を接続する工程は、素子の長期信頼性に影響を与える重要な工程の一つである。従来から、この接続方法として、低融点の合金(半田)を用いてろう付けする方法、導電性ペーストを使用する方法等が用いられている。
【0004】
しかし、半田を使用する方法では、半田が飛散して電極等に付着し、その付着した半田が長期使用中に腐食して断線を招くおそれがある。一方、導電性ペーストを使用する方法は、半田法に比べて低温での作業性に優れ、電極等に飛散するといった問題が生ずることはない。
【0005】
しかし、従来の導電性ペーストの多くは、長期使用後の耐熱性及び耐湿性(長期耐熱性及び長期耐湿性)が不十分で、電極の腐食が促進され、断線不良を生じることが少なくなかった。また近年、電子機器は軽薄短小化が進んだ結果、自動車や屋外装置等に搭載されて使用されることが多くなり、それに伴いこれらの電子機器に使用される導電性ペーストにも長期耐熱性、長期耐湿性が強く求められるようになっている。
【0006】
そこで、例えば、長期耐熱性を向上させるため、3官能、4官能等の多官能型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格、アントラセン骨格等を有する多核型エポキシ樹脂を用いた導電性ペーストが開発されている。しかし、多官能型エポキシ樹脂を用いた導電性ペーストは、反応性が高いため作業性に劣り、多核型エポキシ樹脂は初期耐熱性に優れるものの、長期耐熱性は不十分であった。
【0007】
また、エポキシ樹脂に代えて、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、耐熱ポリイミドシリコーン樹脂等の他の樹脂材料を使用した導電性ペーストが開発されている。しかし、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂を使用したものでは、耐候性は改善されるものの、これらの樹脂は耐熱性が低いため、長期耐熱性のみならず初期耐熱性も低下する。また、耐熱ポリイミドシリコーン樹脂を使用したものでは、耐熱性は改善されるものの、半導体装置における半導体チップとリードフレーム材との接着強度、特に長期信頼性が必ずしも十分ではない。この接着強度の問題を解決するため、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物を添加したものも開発されているが、リードフレーム材の種類によっては十分な改善効果が得られないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−113059号公報
【特許文献2】特開2001−76534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、作業性が良好で、耐熱性、耐湿性、耐候性に優れ、かつ半導体素子と各種基材との接合においては信頼性の高い物理的、電気的接合が可能な導電性ペースト、及びそのような導電性ペーストを用いた高い信頼性を備えた半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、可溶性ポリイミド樹脂と、溶剤と、特定の物性、形状を有する銀粉とを含有する導電性ペースト及びそれを用いた装置により、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一態様に係る導電性ペーストは、(A)可溶性ポリイミド樹脂、(B)溶剤及び(C)比表面積(SA)0.3〜1.3m/g、タップ密度(TD)3.0〜6.0g/cmのフレーク状銀粉を含有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の他の一態様に係る半導体装置は、上記導電性ペーストにより、半導体素子が半導体素子支持部材上に接着されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、作業性が良好で、耐熱性、耐湿性、耐候性に優れ、かつ半導体素子と各種基材との接合においては信頼性の高い物理的、電気的接合が可能な導電性ペーストを得ることができ、また、本発明の他の一態様によれば、そのような導電性ペーストを用いた信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の導電性ペーストは、(A)可溶性ポリイミド樹脂、(B)溶剤及び(C)比表面積(SA)0.3〜1.3m/g、タップ密度(TD)3.0〜6.0g/cmのフレーク状銀粉を必須成分とするものである。
【0017】
(A)成分の可溶性ポリイミド樹脂は、可溶性であればその分子構造や分子量等に制限されることなく使用される。一般には、(a-1)テトラカルボン酸またはその無水物と、(a-2)ジアミン化合物と、(a-3)変性シリコーンとを反応させて得られたものが使用される。
【0018】
(a-1)成分のテトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸等が挙げられる。(a-1)成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(a-1)成分としては、なかでも3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が好ましい。
【0019】
(a-2)成分のジアミン化合物としては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,3’−ジメチル−シクロヘキシルアミン)、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらのジアミン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(a-2)成分としては、なかでもジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0020】
(a-3)成分の変性シリコーンは、可溶性付与成分であり、分子鎖両末端にアミノ基を有するジアミノシリコーン、分子鎖両末端にカルボン酸基を有するジカルボキシルシリコーン、分子鎖両末端にエポキシ基を有するジエポキシシリコーン等が挙げられる。このような変性シリコーンの市販品を具体的に例示すると、ジアミノシリコーンとして、東レ・ダウコーニング(株)製のBY16−871、BY16−853等、ジカルボキシルシリコーンとして、東レ・ダウコーニング(株)製のBY16−750等、ジエポキシシリコーンとして、東レ・ダウコーニング(株)製のBY16−855等が挙げられる。これらの変性シリコーンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(a-3)成分としては、なかでもアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0021】
可溶性ポリイミド樹脂を合成するにあたっては、(a-1)テトラカルボン酸またはその無水物と、(a-2)ジアミン化合物と、(a-3)変性シリコーンとを、溶剤中で、例えば80℃以上の温度で重合反応させる。反応温度が80℃未満では、重合が十分に進まず、低分子量成分が多く生成するおそれがある。反応温度は、好ましくは100〜140℃であり、反応時間は、通常、2〜4時間である。
【0022】
反応は、(a-1)テトラカルボン酸またはその無水物1.0モルに対し、(a-2)ジアミン化合物を通常0.2〜0.8モル、好ましくは0.4〜0.6モルと、(a-3)変性シリコーンを通常0.2〜0.8モル、好ましくは0.4〜0.6モル反応させる。反応させる際に用いる溶剤は、特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用される。反応溶液中の(a-1)テトラカルボン酸またはその無水物等の溶質の濃度は、特に限定されないが、通常5〜25%、好ましくは10〜20%である。
【0023】
本発明の導電性ペーストには、応力の緩和や密着性付与等の目的で、上記(A)可溶性ポリイミド樹脂とともに、他の樹脂を配合することができる。この併用可能な他の樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、その配合量は、(A)可溶性ポリイミド樹脂100質量部対して、30質量部以下が好ましい。30質量部を超えると、硬化物にボイドが発生したり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。
【0024】
(B)成分の溶剤は、上記樹脂成分を溶解することができるものであり、前述した可溶性ポリイミド樹脂の合成で例示した溶剤と同様のものを使用することができる。すなわち、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用される。これらの溶剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。溶剤は、樹脂の溶解性、硬化温度、硬化時間等の条件に合わせ、樹脂の溶解度、沸点等を検討して選択することが好ましい。
【0025】
この(B)溶剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、100〜900質量部の範囲が好ましく、150〜400質量部の範囲がより好ましい。配合量が100質量部未満では、樹脂の高分子量化により樹脂析出のおそれがある。また、900質量部を超えると、硬化物中にボイドが発生したり、作業性が低下するおそれがある。
【0026】
(C)成分の銀粉は、比表面積(SA)が0.3〜1.3m/g、タップ密度(TD)が3.0〜6.0g/cmで、フレーク状のものであれば、市販の各種銀粉を使用することができる。
【0027】
銀粉の比表面積(SA)が0.3m/g以上であれば、導電性ペーストの形状保持性は良好であり、1.3m/g以下であれば、導電性ペーストの長期耐熱性を向上させることができるとともに、導電性ペーストの硬化物の体積抵抗率を低く保つことができる。また、銀粉の比表面積(SA)が1.3m/gを超えると、銀粉表面でのポリイミド樹脂の分解反応が起こりやすくなり、基材との接着力が低下するおそれがある。銀粉の比表面積(SA)は、0.5〜1.0m/gであることが好ましく、0.6〜0.8m/gであることがより好ましい。
【0028】
一方、銀粉のタップ密度(TD)が3.0g/cm以上であれば、導電性ペーストの硬化物の体積抵抗率を低く保つことができ、タップ密度(TD)が6.0g/cm以下であれば、導電性ペーストのチクソトロピー性が良好となり、導電性ペースト適用時における糸引きの発生が抑制される。銀粉のタップ密度(TD)は、3.0〜5.0m/gであることが好ましく、3.2〜4.0m/gであることがより好ましい。
【0029】
なお、銀粉は、比表面積(SA)、あるいはタップ密度(TD)が異なる2種以上の銀粉を混合して使用することができるが、その場合、混合物全体として上記要件を満足していればよい。すなわち、混合物の比表面積(SA)が0.3〜1.3m/gであって、タップ密度(TD)が3.0〜6.0g/cmであればよい。ここで、銀粉の比表面積(SA)は、B.E.T.Quantachrome Monosorbにて測定される、粉末の単位質量当たりの表面積(単位:m/g)であり、また、タップ密度(TD)は、Tap−Pak Volummeterにて測定される、振動させた容器内の粉末の単位体積当たりの質量(単位:g/cm)である。
【0030】
この(C)成分のフレーク状銀粉は、導電性ペーストの全固形分に対し、65〜95質量%の割合で配合されていることが好ましく、70〜93質量%の割合で配合されていることがより好ましい。(C)成分のフレーク状銀粉の割合が65〜95質量%の範囲であれば、作業性及び硬化物の導電性を向上させることができる。
【0031】
本発明の導電性ペーストには、上記(C)フレーク状銀粉とともに、他の導電性粉末を配合することができる。他の導電性粉末としては、例えば、ニッケル粉末、金粉末等が挙げられる。また、(C)成分以外の銀粉、例えば、球状銀粉、不定形銀粉、樹枝状銀粉等も配合することができる。これらの他の導電性粉末の含有量は、(C)フレーク状銀粉100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。30質量部を超えると、作業性が低下し、また、硬化物の体積抵抗が増加するおそれがある。
【0032】
本発明の導電性ペーストには、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種のペーストに一般に配合される、カップリング剤、硬化剤、硬化触媒、消泡剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、その他の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
本発明の導電性ペーストは、前記した(A)成分の可溶性ポリイミド樹脂、(B)成分の溶剤、(C)成分の銀粉、及び必要に応じて配合されるカップリング剤等の添加剤を十分に混合した後、さらにディスパース、ニーダー、3本ロールミル等により混練処理を行い、次いで、脱泡することにより、容易に調製することができる。なお、(A)成分の可溶性ポリイミド樹脂を合成した際の樹脂溶液をそのまま用い、この溶液に各種成分を加えて調製するようにしてもよい。
【0034】
本発明の導電性ペーストは、作業性が良好で、かつ耐熱性、耐湿性、耐候性に優れている。また、半導体素子と各種基材とを接合する接着剤として使用した場合に、基材の種類によらず、信頼性の高い物理的、電気的接合を行うことができる。
【0035】
次に、本発明の半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、例えば、本発明の導電性ペーストを介して半導体素子をリードフレームにマウントし、導電性ペーストを加熱硬化させた後、リードフレームのリード部と半導体素子上の電極とをワイヤボンディングにより接続し、次いで、これらを封止樹脂を用いて封止することにより製造することができる。ボンディングワイヤとしては、例えば、銅、金、アルミ、金合金、アルミ−シリコン等からなるワイヤが例示される。また、導電性ペーストを硬化させる際の温度は、通常、100〜250℃であり、1〜3時間程度加熱することが好ましい。
【0036】
図1は、このようにして得られた本発明の半導体装置の一例を示したものであり、銅フレーム等のリードフレーム1と半導体素子2の間に、本発明の導電性ペーストの硬化物である接着剤層3が介在されている。また、半導体素子2上の電極4とリードフレーム1のリード部5とがボンディングワイヤ6により接続されており、さらに、これらが封止樹脂7により封止されている。なお、接着剤層3の厚さとしては、10〜30μm程度が好ましい。
【0037】
本発明の半導体装置は、作業性が良好で、かつ耐熱性、耐湿性、耐候性に優れた硬化物を与え、さらに、基材の種類によらず大きな接着強度をもって物理的、電気的接合が可能な導電性ペーストにより、半導体素子が接着固定されているので、高い信頼性を具備している。
【0038】
このように本発明の導電性ペーストは、半導体素子を半導体素子支持部材上に接着するための接着剤として有用であるが、その他、各種電子部品の接着、コーティング、印刷による回路形成等にも広く使用することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において特に明示しない限り、「部」は「質量部」を示すものとする。また、銀粉の比表面積(SA)及びタップ密度(TD)は、下記の方法により測定した値である。
[比表面積(SA)]
B.E.T.Quantachrome Monosorbにて、粉末の単位質量当たりの表面積(単位:m/g)を測定した。
[タップ密度(TD)]
Tap−Pak Volummeterにて、振動させた容器内の粉末の単位体積当たりの質量を測定した(単位:g/cm)。
以下の実施例及び比較例で用いた材料は表1に示すとおりである。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例1)
テトラカルボン酸無水物(a)2.0部及びテトラカルボン酸無水物(b)2.0部と、ジアミン化合物(a)1.5部及び変性シリコーン1.5部とを、有機溶剤(a)16部中で溶解反応させ、粘稠な樹脂溶液を得た。この樹脂溶液にフレーク状の銀粉(c)77部を添加混合し、さらにニーダーで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペーストを調製した。
(実施例2)
テトラカルボン酸無水物(b)に代えてテトラカルボン酸無水物(c)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(実施例3)
ジアミン化合物(a)1.5部に代えて、ジアミン化合物(a)0.5部とジアミン化合物(b)1.0部を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(実施例4)
フレーク状の銀粉(c)に代えて、フレーク状の銀粉(d)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(実施例5)
フレーク状の銀粉(c)に代えて、フレーク状の銀粉(b)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(実施例6)
フレーク状の銀粉(c)77部に代えて、フレーク状の銀粉(b)38.5部とフレーク状の銀粉(d)38.5部を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
【0042】
(比較例1)
フレーク状の銀粉(c)に代えて、フレーク状の銀粉(e)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(比較例2)
フレーク状の銀粉(c)に代えて、フレーク状の銀粉(a)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(比較例3)
フレーク状の銀粉(c)に代えて、フレーク状の銀粉(f)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(比較例4)
変性シリコーンを配合せず、ジアミン化合物(a)の量を3部とした以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。
(比較例5)
エポキシ樹脂3.5部、硬化剤3.5部、硬化触媒0.2部、有機溶剤(b)3.0部及びフレーク状の銀粉(c)90部を十分に混合し、さらにニーダーで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペーストを調製した。
(比較例6)
エポキシ変性シリコーン樹脂6部、硬化剤1部、硬化触媒0.2部、有機溶剤(b)3.0部及びフレーク状の銀粉(c)90部を十分に混合し、さらにニーダーで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペーストを調製した。
【0043】
上記各実施例及び比較例で得られた導電性ペーストの特性(粘度、チクソトロピー性、作業性)と、その硬化物特性(銀含有率、接着強度、接着強度維持率、長期耐熱性、体積抵抗率、導電性)とを、下記に示す方法で測定評価した。
【0044】
<導電性ペーストの特性>
[粘度(η0.5rpm)]
調製直後の導電性ペーストの粘度を、E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃、0.5rpmの条件で測定した。
[チクソトロピー性]
E型粘度計(3°コーン)を用い、25℃、5.0rpmの条件で粘度(η5rpm)を測定し、上で測定された粘度(η0.5rpm)との比η0.5rpm/η5rpmmを算出した。
[作業性]
下記の拡がり性及び形状保持性から評価した。
(イ)拡がり性
表面を銀メッキ処理した銅フレーム上に導電性ペーストを0.1mm塗布し、その上にプレパラート(18mm×18mmガラス板)を被せ、20gの加重を10秒間かけた際の、導電性ペーストの拡がり面積の直径を測定し、下記の判定基準で評価した。測定は25℃で行った。
○:7mm以上(良好)
△:5mm以下7mm未満
×:5mm未満(不良)
(ロ)形状保持性
表面を銀メッキ処理した銅フレーム上に導電性ペーストを塗布し、その後の塗布ダレ発生状況を調べ、下記の判定基準で評価した。測定は25℃で行った。
○:塗布後5分以内に発生せず
×:塗布後5分以内に発生
【0045】
<硬化物特性>
[初期接続強度]
表面を銀メッキ処理した銅フレーム上に導電性ペーストを10μm厚に塗布し、その上に2mm×2mmの半導体チップ(Si)をマウントし、200℃で60分間加熱硬化させ、接続サンプルを作製した。この接続サンプルについて、西進商事(株)製のダイシェア強度測定装置を用い、25℃でダイシェア強度を測定した。
[接続強度維持率]
上記と同様に作製した接続サンプルを200℃の温度下に500時間、1000時間及び1500時間置いた後の接続強度を、上記初期接続強度の場合と同様にして測定し、初期接続強度からの維持率を算出した。
[長期耐熱性]
上記で求めた1500時間後の接続強度維持率から、下記の判定基準で評価した。
○:接続強度維持率30%以上
△:接続強度維持率10%以上30%未満
×:接続強度維持率10%未満
[体積抵抗率]
スライドガラス上に導電性ペーストを厚さ10μm、幅2mm、長さ5mmに印刷し、200℃で60分間加熱硬化させ、この硬化物について、日商精密光学(株)製のデジタルマルチメータを用い、25℃で測定した。
[導電性]
上記で求めた体積抵抗率から、下記の判定基準で評価した。
○:1×10−4Ω・cm未満
△:1×10−4Ω・cm以上1×10−3Ω・cm未満
×:1×10−3Ω・cm以上
【0046】
各導電性ペーストの組成を表2に、また、各特性の測定評価結果を、銀粉の特性(比表面積(SA)、タップ密度(TD))とともに表3に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
表3から明らかなように、実施例の導電性ペーストは、作業性(拡がり性、形状保持性)、初期接着強度、長期耐熱性及び導電性の全てにおいて良好乃至略良好な特性を有しており、なかでも、タップ密度(TD)が3.2〜4.0g/cmの銀粉を用いた実施例1〜3では、特に良好な特性を有していた。一方、比較例では、初期接着強度、長期耐熱性及び導電性は良好であるものの、作業性(形状保持性)が不良である等、前記特性を全て満足するものはなかった。
【符号の説明】
【0050】
1…リードフレーム、2…半導体素子、3…接着剤層、4…電極、5…リード部、6…ボンディングワイヤ、7…封止樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)可溶性ポリイミド樹脂、(B)溶剤及び(C)比表面積(SA)0.3〜1.3m/g、タップ密度(TD)3.0〜6.0g/cmのフレーク状銀粉を含有することを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
全固形分に対し、前記(C)成分を65〜95質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記(C)成分のタップ密度(TD)が3.0〜5.0g/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の導電性ペースト。
【請求項4】
(A)成分が、(a-1)テトラカルボン酸またはその無水物と、(a-2)ジアミン化合物と、(a-3)変性シリコーンとの反応生成物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項5】
(a-1)成分がベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物を含み、かつ(a-2)成分がジアミノジフェニルエーテルを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の導電性ペーストにより、半導体素子を半導体素子支持部材上に接着してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−25947(P2013−25947A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158139(P2011−158139)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】