説明

導電性ペースト組成物およびプリント配線板

【課題】 1回の塗布作業で十分な厚さの塗布膜を形成させることが可能な導電性ペースト組成物の提供。従来より少ない塗布回数でも十分な高さのバンプを形成させることができる。
【解決手段】 フェノール樹脂、メラミン樹脂、導電性粉末、溶剤および水からなることを特徴とする導電性ペースト組成物、およびこの導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な導電性ペースト組成物およびプリント配線板に関するものである。好ましくは、本発明は、多層プリント配線板の層間接続に用いられる電極バンプの形成に特に適した導電性ペースト組成物およびそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性ペースト組成物は、エレクトロニクス分野において、IC回路用、導電性接着剤、電磁波シールド等多くの用途に使用されている。特に最近では、少なくとも一方の面の所定位置に導電性ペーストで作った円錐状導電バンプが設けられた第一の基板と、少なくとも一方の面に配線パターンが設けられた第二の基板とを、前記導電バンプが設けられた面および前記配線パターンが設けられた面を内側にして対向させ、前記第一の基板と前記第二の基板との間に絶縁体層を配置して積層体を構成し、該積層体を積層プレスすることにより絶縁体層の厚さ方向に前記バンプを貫通させて導電配線部を形成するプリント配線板の製造方法が提案されている(特開平6−350258号公報)。
【0003】
また、プリプレグ貫通性が良好、且つ貫通時およびプレス時に割れ欠けを発生せず、更に貫通後のバンプと配線パターンとの接着力が大きいバンプを作成でき、貫通型の導電配線部を有するプリント配線板製造において、歩留まりが高く接続信頼性が良好である導電性ペ−ストの提供として、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、導電粉末および溶剤を含有してなる導電性ペーストであって、該エポキシ樹脂の軟化点が80℃以上、130℃以下であるプリント配線板層間接続用導電性ペースト組成物が提案されている(特開2002−270033号公報)。
【0004】
また、高い硬度、割れ、配線パターンとの接続不良のないバンプを形成することのできるプリント配線板層間接続用接着性ペースト組成物を提供すべく、少なくともメラミン樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂のいずれか一つから選ばれる樹脂と導電粉末および180℃以上の沸点である2価アルコールおよび(または)3価アルコールを含むことを特徴とするプリント配線板層間接続用導電性ペースト組成物を用いることが提案されている(特開2003−77337号公報)。
【0005】
また、特許第3588400号公報により、スクリーン印刷後に装置、治具および容器を水で洗浄できる熱硬化性の導電性樹脂組成物の提供する例として、水溶性の熱硬化性樹脂、導電性粒子、2価アルコールを含むことを特徴とする導電性樹脂組成物が知られている。
【0006】
特開平9−286924号公報により、特許第3588400号と同様に、印刷後のスクリーン版等を水で洗浄できる導電性樹脂組成物として、水溶性の熱可塑性樹脂、平均粒径0.05〜50μmの導電性粒子、2価アルコールを含むものが知られている。
【0007】
特開2001−11388号公報により、印刷に用いた版を水で洗浄することができる水溶性樹脂、グリコール類を含む積層コンデンサ用電極ペースト組成物が知られている。
【0008】
特開2003−331648号公報および特開2004−265826号公報により、低温で焼成できる金属ペーストとして、周期律表3族〜15族金属の有機金属化合物とアルコール化合物、好ましくは、グリコール類を含む金属ペーストが知られている。
【特許文献1】特開平6−350258号公報
【特許文献2】特開2002−270033号公報
【特許文献3】特開2003−77337号公報
【特許文献4】特許第3588400号公報
【特許文献5】特開平9−286924号公報
【特許文献6】特開2001−11388号公報
【特許文献7】特開2003−331648号公報
【特許文献8】特開2004−265826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の特開平6−350258号公報に記載のような方法によって電極バンプを形成させる際に、特開2002−270033号公報および特開2003−77337号公報に開示されるような導電性ペースト組成物を用いる場合、1回の導電性ペースト組成物の塗布作業では絶縁層を貫通できるだけのバンプの高さが得られないため、導電性ペースト組成物の塗布作業を複数回行って重ね刷りをする必要があった。特に、絶縁層の貫通時およびプレス時にバンプの折れ、欠けを発生させないためにバンプ形状を過度に尖らせないようなペーストを使用するため、バンプの高さが得られず、重ね印刷の回数が増加しがちであった。
【0010】
特許第3588400号公報、特開平9−286924号公報および特開2001−11388号公報に記載の技術は水溶性樹脂を用いるものであり、また、特開2003−331648号公報および特開2004−265826号公報に記載の技術は焼成タイプの金属ペーストを用いるものであって、本発明のような非水溶性の非焼成タイプの導電性ペースト組成物であってかつ1回の塗布作業で十分な塗布厚さが得られるペースト組成物は、本発明者らが知る限りで従来得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性ペースト組成物を所定の成分によって形成することによって、上記課題に解決を与えようとするものである。
【0012】
したがって、本発明による導電性ペースト組成物は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、導電性粉末、溶剤および水からなること、を特徴とするものである。
【0013】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましい態様として、顔料、好ましくは体質顔料、をさらに含有するもの、を包含する。
【0014】
そして、このような本発明によるプリント配線板は、前記の導電性ペースト組成物を用いたこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性ペースト組成物によれば、1回の塗布作業で十分な厚さの塗布膜を形成させることが可能である。
【0016】
従って、従来より少ない塗布回数でも十分な高さのバンプを形成させることができる。
【0017】
よって、導電性ペースト組成物の重ね刷りの回数を削減することができ、生産性の向上を図ることができる。また、本発明による導電性ペースト組成物は非焼成タイプのものであることから、焼成作業を行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<導電性ペースト組成物>
本発明による導電性ペースト組成物は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、導電性粉末、溶剤および水からなる導電性ペースト組成物である。ここで、「からなる」とは、上記の必須成分(即ち、フェノール樹脂、メラミン樹脂、導電性粉末、溶剤および水)以外の他の成分が共存する導電性ペースト組成物を排除しない。すなわち、本発明による導電性ペースト組成物は、上記必須成分のみからなる導電性ペースト組成物、および、上記必須成分とこれらの必須成分以外の他の成分を含んでなる導電性ペースト組成物の両者を包含する。また、上記おいて、「導電性」とは、体積抵抗値が少なくとも1×10−3cm・Ω以下であることを意味する。
【0019】
本発明による導電性ペースト組成物は、粘度が150〜500Pa・s、特に200〜400Pa・s、であるものが好ましい。なお、この粘度は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、25℃で測定したときのものである。
【0020】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、チクソ指数が0.75〜1.0、特に0.80〜0.95、であるものが好ましい。なお、このチクソ指数は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、5rpm/min、25℃で測定した導電性ペーストの粘度より、チクソ指数計算式log(5rpm時の粘度値/10rpm時の粘度値)/log 〔10(rpm)/5(rpm)〕で算出したときのものである。チクソ指数は静置すると見掛け粘度が上がり、激しく混合すると見掛け粘度が低下して塗工しやすくなる性質をあらわす一指標である。
【0021】
(1)フェノール樹脂
本発明で使用されるフェノール樹脂としては、ノボラック型およびレゾール型のいずれのものを利用することができ、特にフェノール、クレゾール、キシレノール、ポリパラビニルフェノール、p−アルキルフェノール、クロルフェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、レゾルシン等のフェノール性水酸基を有するものにホルマリン、フルフラール等のアルデヒド類を付加、縮合した樹脂を挙げることができる。この中でも特にポリパラビニルフェノールが好ましい。
【0022】
(2)メラミン樹脂
本発明で使用されるメラミン樹脂としては、例えばメチロールメラミン、アルキル化メラミンを挙げることができる。
【0023】
(3)導電性粉末
本発明で使用される導電性粉末としては、各種の導電性微粉末、例えば銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉、白金粉、パラジウム粉、半田粉、前記金属の合金粉末等の金属粉末等を使用することができる。これらの導電性粉末は二種以上併用することもできる。また、金属以外の導電性粉末、例えばカーボン粉末、を使用することもできる。導電性粉末は、表面処理されたものであってもよい。
【0024】
導電性粉末の形態および大きさは、本発明の目的に反しない限り任意である。本発明では、例えば樹枝状、りん片状、球状、フレーク状の形態のもの、特に好ましくはリン片状と球状の混合物、を使用することができる。平均粒径は、0.5〜10μm、特に1.0〜5.0μm、のものが好ましい。
【0025】
(4)溶剤
本発明で使用される溶剤としては、例えば前記のフェノール樹脂、メラミン樹脂ならびに導電性粉末とともにペースト組成物を形成可能な各種の有機溶剤を用いることができる。そのような有機溶剤の好ましい具体例としては、例えばブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、チキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロンの単独またはこれらの混合溶剤を挙げることができる。
【0026】
(5)水
本発明で用いる水は、本発明の目的が達成できるならば任意のものを用いることができる。例えば、純水の他に水道水、精製水などを用いることができる。
【0027】
(6)上記以外の成分(任意成分)
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の成分を含むことができる。そのような必要に応じて含むことが可能な成分の具体例としては、次のような顔料や、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤、および、前記フェノール樹脂および(または)メラミン樹脂と混和可能な他の樹脂成分(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂)等を挙げることができる。
【0028】
顔料
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の有機または無機の顔料を含有することができ、そのような顔料によって導電性ペースト組成物の塗膜補強、機能付加、作業性改良、着色および増量等を図ることが可能になる。
【0029】
本発明では特に体質顔料、例えばマイクロシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の単独またはこれらの混合物を用いることができる。
【0030】
(7)配合割合
本発明による導電性ペースト組成物における各成分の配合比率は、下記の通りである(尚、下記において、樹脂成分の合計とは、フェノール樹脂およびメラミン樹脂の合計量を意味する。但し、フェノール樹脂あるいはメラミン樹脂以外の樹脂が存在する場合は、これら各樹脂成分の合計量を意味する)。
【0031】
溶剤の量は、樹脂成分の合計100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは35〜65質量部、である。
【0032】
導電性粉末の量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは300〜1100質量部、より好ましくは500〜900質量部、である。
【0033】
顔料の量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜25質量部、である。
【0034】
樹脂成分における、フェノール樹脂とメラミン樹脂との割合は、質量割合で表して、(フェノール樹脂)/(メラミン樹脂)が、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは60/40〜40/60、となる範囲である。
【0035】
水の量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは3〜12質量部、である。
【0036】
(8)導電性ペースト組成物の利用
本発明による導電性ペースト組成物は、良好な導電性を有するものであり、例えばスクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などの公知の印刷法によって基板上に印刷可能なものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来同様に広範な分野において利用可能なものである。
【0037】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、1回の印刷作業当たりの塗膜厚さが厚いものであることから、十分な厚さの導電性層を効率的に形成可能なものである。
【0038】
従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来より少ない塗布回数で、例えばただ1回の塗布回数でも、十分な高さのバンプを形成させることができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0039】
<プリント配線板>
本発明によるプリント配線板は、上記の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするものである。
【0040】
このような本発明によるプリント配線板は、好ましい態様として、上記導電性ペースト組成物から形成されたバンプによって層間の電気的接続がなされたプリント配線板を包含する。
【実施例】
【0041】
<実施例1および比較例1>
下記のフェノール樹脂、メラミン樹脂、銀粉、体質顔料、溶剤および水を表1記載の質量割合で混合し、3本ロールで充分に混錬して、本発明による導電性ペースト組成物を製造した。この導電性ペースト組成物の粘度およびチキソ指数は表1に記載される通りである。
【0042】
この導電性ペーストを使用し、スクリーン(孔版)印刷を行った。具体的には、φ220μmの孔を空けたアルミニウム製のメタルマスク版を使用し、硬度80°のウレタン樹脂製のスキージを使用し、雰囲気条件を温度20℃、湿度50%に環境を制御しつつ、印刷を行って、バンプを形成させた。
【0043】
形成されたバンプの高さおよび形状を評価した。結果は、表1に記載される通りである。
【表1】

【0044】
<評価>
上記の表1から明らかなように、実施例1ではバンプ高さが73μm(バンプ径:220μm)のバンプを形成でき、比較例1(バンプ高さ:58μm、バンプ径:220μm)に比べて、バンプ高さが26%と劇的にアップしていることが分かる。また、バンプ形状も円錐状の形状であり、良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂、メラミン樹脂、導電性粉末、溶剤および水からなることを特徴とする、導電性ペースト組成物。
【請求項2】
顔料、好ましくは体質顔料、をさらに含有する、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とする、プリント配線板。

【公開番号】特開2006−286362(P2006−286362A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103871(P2005−103871)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】