説明

導電性ペースト組成物

【課題】シートアタックを生じず、乾燥速度を従来品に比べ顕著に向上させても、粘度変化率が小さい導電性ペースト組成物を提供する。
【解決手段】ポリビニルブチラール樹脂を使用した誘電体グリーンシートに積層するための、少なくとも導電性金属粉末(A)、有機ビヒクル(B)、分散剤(C)、有機溶剤(D)、セラミック粉末(E)から構成される導電性ペーストであって、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム、又はそれらの合金から選ばれる1種の導電性金属粉末(A)と、エチルヒドロキシエチルセルロース、もしくはエチルヒドロキシエチルセルロースにエチルセルロースを組み合わせた混合樹脂を含む有機ビヒクル(B)と、溶解度パラメーターが8〜10で、かつ環状骨格の構造を有した特定の溶剤である有機溶剤(D)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートアタックが発生せず、乾燥速度を従来品に比べ顕著に高めても、その粘度変化率が小さい導電性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器の軽薄短小化に伴い、チップ部品である積層セラミックコンデンサ(以下MLCCと称す)についても、小型化、高容量化及び高性能化が望まれている。
これらを実現するための最も効果的な手段は、内部電極層と誘電体層を薄くして多層化を図ることである。
【0003】
この積層セラミックコンデンサの内部には、誘電体と内部電極が交互に重なった積層体が配置され、その積層体の外側に対向して、外部電極が積層セラミックコンデンサの両端部に取り付けられている。
使用される誘電体としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム等のぺロブスカイト型酸化物が用いられている。
【0004】
MLCCを構成する積層体の形成は、粉末化した誘電体を、ポリビニルブチラール、アクリル等の樹脂と溶剤からなる有機ビヒクル中に分散させてスラリー状にし、ドクターブレード法によりPETフィルム上にシート状に形成、乾燥した後(この乾燥したものは、一般には誘電体グリーンシートと呼ばれるが、単にグリーンシートと称す場合もある)、この誘電体グリーンシート表面に内部電極用金属ペーストを所定パターンに、スクリーン印刷法にて転写、次いで乾燥させて、内部電極と誘電体グリーンシートとが交互に重なるよう所定の枚数を重ねて、圧縮、圧着した後、その熱圧着体を目的の大きさに切断する。そして電気炉、一般にはベルト炉に装入して有機バインダー除去を目的に、通常、250〜330℃、空気雰囲気、窒素雰囲気、あるいは空気と窒素との混合気体下で熱処理を施して有機ビヒクルを燃焼させ、所定の積層体を形成する。
【0005】
ところで、従来、積層セラミックコンデンサの内部電極に、パラジウムや銀−パラジウム合金といった貴金属材料が使われてきたが、今日ではコストダウンのために、ニッケル、銅等の卑金属が用いられている。これら卑金属の内部電極を用いた積層セラミックコンデンサは、有機バインダー除去後、ニッケル、銅等が酸化されないように、中性ないしは還元雰囲気で、引き続き、850〜1350℃で焼成して内部電極、および誘電体を一体焼結させることが行われている。
【0006】
さらに、ニッケル、銅等の内部電極が形成された積層体は、その両端の端面をバレル研磨にて研磨し、内部電極を露出させた後、外部電極用ペーストを、前記研磨した端面に塗布、焼成して取り付け、表面にめっきを施して製品となる。
【0007】
MLCC用内部電極用導電性ペーストは、導電成分としての卑金属粉末、焼結調整剤としての誘電体セラミック粉末、有機バインダーとしての樹脂とそれを溶解する溶剤、さらに分散剤、添加剤から構成され、3本ロールによって混練し、混合分散することにより製造される。言い換えると、MLCC用内部電極用導電性ペーストは、有機バインダーとなる樹脂を有機溶剤に溶解して得られた有機ビヒクル中に金属粉末を分散させ、粘度を有機溶剤によって調整したものである。
【0008】
有機ビヒクルに使用される有機溶剤としては、一般にターピネオールやジヒドロターピネオールがよく用いられている。また有機バインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂やブチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル系樹脂が使用されている。
【0009】
ところで、このMLCC用内部電極用導電性ペーストは、内部電極を形成するために前述のように誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷されるが、MLCCの製造工程において、誘電体グリーンシートの焼成時に絶縁不良や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離を発生する等、深刻な製品の特性不良を引き起こすことが問題となっている。
【0010】
また、積層セラミックコンデンサの高容量化に伴い、誘電体グリーンシートの薄層化が進み、従来10〜20μmであったシート厚みは、近年では2〜5μmの厚みになるなど、より薄いものが使用されるようになってきている。
【0011】
即ち、内部電極用ペーストは、エチルセルロースを有機バインダーとして用い、その有機溶剤には主にターピネオールが使われているが、このターピネオールは、印刷乾燥工程の途中に塗膜中に残存し、誘電体グリーンシートに有機バインダーとして多用されているポリビニルブチラールを溶解させる作用がある。
このような内部電極ペーストによる誘電体グリーンシート中の有機バインダーに対する溶解作用は、「シートアタック」と称されている。
【0012】
この「シートアタック」により誘電体グリーンシート中のポリビニルブチラールが溶解すると、誘電体グリーンシートを膨潤、溶解させる。この「シートアタック」が大きい場合、シートの積層時にニッケルペースト印刷部分に穴が生じたり、焼成時に誘電体層と内部電極層が層間剥離したりするという不具合を生じる。これは誘電体グリーンシートが薄いほど「シートアタック」による影響が顕著である。
【0013】
「シートアタック」による影響で、MLCCの耐電圧性、絶縁性が低下し、目的とする静電容量が得られなかったり、負荷寿命特性が劣化したりする。従来、このような「シートアタック」を回避するために、導電ペーストの溶剤成分についての検討がなされてきた。
【0014】
例えば、溶剤として、ジヒドロターピニルアセテート(水素添加テルピネオールアセテート) を含有する導電性ペーストが提案されている(特許文献1参照)。また、溶剤としてイソボルニルアセテート、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレートなどのボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有する導電性ペーストが提案されている(特許文献2、3参照)。
【0015】
しかし、これらの溶剤は、シートアタック回避性については有効性が認められるが、一般的に用いられているターピネオールやジヒドロターピネオールと比較すると、乾燥速度が遅く、ペースト印刷後の乾燥性に劣る問題点があった。
【0016】
また、溶剤としてアルキレングリコールジアセテートおよびアルキレングリコールジプロピオネートを含有する導体性ペーストも提案されている(特許文献4、5、6参照)。
【0017】
ところで、誘電体グリーンシートには、柔軟性を持たせるために可塑剤等の添加剤を配合するが、近年のグリーンシートの薄層化により、グリーンシートの乾燥後の柔軟性を保持するために、シート中の可塑剤が乾燥時に蒸発消失しないようにペーストの乾燥温度をより低温化し、乾燥時間を短縮化したいという要求がある。誘電体グリーンシートにニッケルペーストを印刷した後の乾燥工程で乾燥状態が不十分であると、次工程においてシートの張り付きや破れ等の不具合を生じるためである。
そこで、ペーストの乾燥速度を向上させるために、極性が低い石油系炭化水素系溶剤をブレンドした混合溶剤を使用することにより、極性が高い溶剤の比率を下げることが試みられている(特許文献7参照)。
【0018】
しかしながら、単に乾燥性だけを考えれば、沸点が低い物質、例えば沸点180℃以下の溶剤の選択も考えられるが、たとえば芳香族炭化水素系溶剤であるミネラルスピリットは引火点が低い溶剤であり(21℃≦引火点<70℃で消防法の「危険物第4類第二石油類」に該当)、このような溶剤を含有するペーストを扱う場合には作業環境上、引火の危険性を配慮し、またペースト製品の輸送時の安全性を配慮した輸送規則が適用されるから、このような引火点の低い溶剤は避けるべきである。
また、例えば脂肪族炭化水素系溶剤であるノルマルパラフィンは引火点>70℃の溶剤であり、消防法の「危険物第4類第三石油類」に該当するが、このような溶剤を含有するペーストは乾燥速度が不十分である。
【0019】
一方、導電性金属粉末およびセラミック粉末の微粒化が進むに伴い、凝集がし易くなるため、従来の3本ロールによる機械的せん断だけでは所望の分散状態が維持された導電性ペーストが製造でき難くなっている。そのため、乾燥凝集した導電性金属粉末やセラミック粉末等の無機粉末を有機ビヒクルおよび有機溶剤へ分散させるための3本ロール以外の手法として、ボールミルやビーズミル等で機械的に分散・粉砕させる手法が開示されている。
しかし、ビーズミルによる分散手法では、メディアによる導電性金属粉末の変形が生じる問題があり、ボールミルによる分散手法では、導電性金属粉末が強固な凝集である場合、十分に分散させることには限界がある。
また、3本ロール、ビーズミル、ボールミル以外の分散手法として、高圧ホモジナイザーを用いた導電性ペーストの製造方法が提案されている(特許文献8参照)。
【0020】
さらに、導電性ペーストを誘電体グリーンシート上に印刷、乾燥した時に、突起物の原因となる凝集物(無機粉末の未分散物、ビヒクル中に含まれる樹脂の未溶解物など)を除去するために、フィルターで濾過する工程を取り入れているが、一般的なスクリーン印刷用導電性ペーストの粘度は高いために「高精度なフィルターで濾過できない」、「所望の精度より落としたフィルターで濾過しなければならない」、「高精度なフィルターで濾過しても長時間かかる」等の問題が生じる。そこで改善策として、導電性ペーストを加熱したり、導電性ペースト中の主溶剤より低沸点の溶剤(特許文献9、段落[0025]に記載)を添加して粘度を低下させた状態でフィルター濾過する手法が提案されているが、このような工程を加えるとペーストの組成が変わったり、ペーストのレオロジーが安定しない等の恐れがある。
【0021】
一方、導電性金属粉末やセラミック粉末の微粒化が主流となっているが、微粒な無機粉末を分散させる以外に、微粒な無機粉末を使用した導電性ペーストにおいて経時による粘度変化の問題がある。ペースト粘度が変化すると、印刷性の変動が生じるため、印刷時に適正な膜厚や形状が得られなくなり、品質が安定した電極等を製造できなくなるからである。
【0022】
粘度変化を抑制する手法として、例えば、ターピニルアセテートを導電性ペーストの主溶剤として用いることで粘度変化を抑制するものが提案されている(例えば、特許文献10参照)。
この特許文献10では、エチルセルロースをターピニルアセテートで溶解したビヒクルを用いた導電性ペーストが提案されている。しかし、特許文献10、段落[0023]に記載される分散剤の含有に関し、もし分散剤が添加されない場合には、ニッケルなどの導電性金属粉末のような無機粉末表面への分散剤の吸着量が不十分であるため、その分散性が低下し、導電性ペーストの経時による粘度変化が制御できないあるいは不十分となるため、電極膜の薄層化には不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特許2976268号公報
【特許文献2】特開2002−270456号公報
【特許文献3】特開2006−202502号公報
【特許文献4】特開2007―43092号公報
【特許文献5】特開2008―78245号公報
【特許文献6】特開2010―56290号公報
【特許文献7】特開2007−19122号公報
【特許文献8】特開2010−49849号公報
【特許文献9】特許3744167号公報
【特許文献10】特開2006−12690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者は、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ね、ポリビニルブチラール樹脂を有機バインダーとして含有する誘電体グリーンシートに印刷される導電性ペーストにおいて、溶解度パラメーターが8〜10であり、かつ環状骨格の構造を有するシクロヘキシルプロピオネート、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンから選ばれても、あるいは環状骨格の構造を有するシクロヘキシルプロピオネート、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン、とジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、から選ばれた少なくとも1種類以上とを組み合わせても、「シートアタック」を生じることなく、かつ乾燥性が改善されることで、従来から知られる耐シートアタック溶剤単独より乾燥速度が向上したことを見出した。
【0025】
さらに、粘度安定性については、本発明で使用する有機溶剤に相溶性が良好である樹脂を溶解した有機ビヒクルを使用するため、有機ビヒクルが物理的に経時変化を起こし難くなるため、優れたペースト安定性を保つことができることも見出し、本発明を完成するに至ったもので、シートアタックを生じず、乾燥速度を従来品に比べ顕著に向上させても、粘度変化率が小さい導電性ペースト組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1の発明は、導電性金属粉末(A)、有機ビヒクル(B)、分散剤(C)、有機溶剤(D)、セラミック粉末(E)から構成される導電性ペーストであって、導電性金属粉末(A)は、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム、或いはそれらの合金から選ばれる1種の金属粉末であり、有機ビヒクル(B)は、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、もしくはエチルヒドロキシエチルセルロースにエチルセルロース(EC)を組み合わせた樹脂を含み、有機溶剤(D)は、溶解度パラメーターが8〜10であり、かつ環状骨格の構造を有し、かつグループ(I):シクロヘキシルプロピオネート(CHP)、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン(2−CHMJ)から選ばれる有機溶剤であることを特徴とするものである。
さらに本発明の導電性ペーストのもう一つは、導電性金属粉末(A)、有機ビヒクル(B)、分散剤(C)、有機溶剤(D)、セラミック粉末(E)から構成される導電性ペーストであって、有機溶剤(D)を、溶解度パラメーターが8〜10であり、かつ環状骨格の構造を有し、かつグループ(I):シクロヘキシルプロピオネート、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンと、グループ(II):ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテートから選ばれた少なくとも1種類以上とを組み合わせた混合溶剤としたことを特徴とするものである。
【0027】
また、第1の発明における導電性金属粉末(A)は、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム、或いはそれらの合金から選ばれる金属粉末のうち1種であることを特徴とし、その導電性金属粉末(A)の粒径は、0.05〜0.5μmで、その含有量が、ペースト全量に対して30〜70重量%であることを特徴とするものである。
【0028】
さらに、第1の発明における有機ビヒクル(B)のエチルヒドロキシエチルセルロースにおけるエトキシル基含有率が56%以上であることを特徴とし、その有機ビヒクル(B)において使用する樹脂が、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)とエチルセルロース(EC)の混合比率(EHEC/EC)が1以上で、有機ビヒクル(B)中の樹脂の含有量が、ペースト全量に対して1〜5重量%であることを特徴とするものである。
【0029】
さらにまた、第1の発明におけるセラミック粉末がチタン酸バリウムで、そのセラミック粉末の粒径が、0.01〜0.2μmで、その含有量が、導電性金属粉末(A)100重量部に対して3〜25重量部あることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、積層セラミックコンデンサの内部電極用導電性ペーストにおいて、乾燥速度が速く、かつシートアタックが回避できる有機溶剤を使用し、かつ、その粘度変化率を抑えることが可能な導電性ペースト組成物を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】各種有機溶剤の蒸発速度をTG測定で確認した結果を示すグラフである。
【図2】シクロヘキシルプロピオネートとグループ(II)の各種有機溶剤を20:80で混合したときの蒸発速度をTG測定で確認した結果を示すグラフである。
【図3】2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンとグループ(II)の各種有機溶剤を20:80で混合したときの蒸発速度をTG測定で確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明における積層セラミックコンデンサの内部電極形成用の導電性ペーストは、バインダーを有機溶剤に溶解した有機ビヒクル中に導電性金属粉末およびセラミック粉末を分散させたペーストである。
【0033】
1.導電性金属粉末(A)
本発明において、導電性ペーストに用いられる導電性金属粉末としては、特に制限は無いが、積層セラミックコンデンサ等の積層部品の電極用であれば、例えばニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム等の金属粉末や、その合金を用いることができる。
特に高容量化を目的として電極の積層数を多くした高積層の積層セラミックコンデンサの内部電極では、これらの中でもコスト的に有利な、ニッケル、銅の使用が好ましい。
【0034】
その導電性金属粉末の粒径は、特に制限されないが、高積層、高容量化の積層セラミックコンデンサの内部電極用であれば、これら金属粉の平均粒径は0.05〜0.5μmが好ましい。この平均粒径は、走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真より求められる値である。平均粒径が0.5μmを超えると積層セラミックコンデンサの薄層化が難しくなる。また、平均粒径が0.05μmを下回ると、金属粉の表面活性が高くなりすぎて、適正な粘度特性が得られないか、導電性ペーストの長期保存中に変質する恐れがある。
【0035】
導電性ペースト中の導電性金属粉末の含有率は、ペースト全量に対して30〜70重量%とすることが好ましい。
その含有量が、30重量%未満では焼成時に電極膜の形成能力が低く、所定のコンデンサ容量を得ることが難しい。70重量%を超えると電極膜の薄層化が困難となる。
導電性粉末の含有率は、ペースト全量に対して40〜60重量%とすることがより好ましい。
【0036】
2.有機ビヒクル(B)
本発明において、有機ビヒクル(B)を構成する有機樹脂としては、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースにエチルセルロースを組み合わせた樹脂などのセルロース系樹脂を用いる。また、エチルヒドロキシエチルセルロースにおけるエトキシル基含有率が56%以上であることを特徴とする。
【0037】
このエチルヒドロキシエチルセルロースには、エトキシル基の含有率が40%以下の親水性のエチルヒドロキシエチルセルロースと、エトキシル基の含有率が56%以上の疎水性のエチルヒドロキシエチルセルロースがあり、本発明では有機溶剤に溶ける疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース(以後、エチルヒドロキシエチルセルロース)を用いるものである。エトキシル基含有率は、ASTM D4794−94で規定されるようなガスクロマトグラフ法によって測定するが、この分析法ではヒドロキシエチル基に由来するもの(−CHCHO−C)とエトキシル基に由来するもの(−OC)が区別無く測定されることから、本発明では、単位構造あたりにおける、これら「ヒドロキシエチル基に由来するもの」および「エトキシル基に由来するもの」の両者の分子量の総量の、総分子量に対する割合を「エトキシル基含有率」として定義している。
【0038】
なお、エチルヒドロキシエチルセルロースのエトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%未満である場合、(−CHCHO−)の長さとエトキシル基のバランスが低下し、有機溶剤との相溶性が悪くなるため、高粘度化したり、あるいは溶解しなくなる。
したがって、溶剤系に溶解するエチルヒドロキシエチルセルロースとしては、エトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%以上のエチルヒドロキシエチルセルロースを選択する必要がある。
【0039】
また本発明では、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースを本発明に係る有機溶剤に溶解して有機ビヒクルとするが、エチルヒドロキシエチルセルロースを有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとエチルセルロースを有機溶剤に溶解した有機ビヒクルの樹脂の混合比率(EHEC/EC)は、1以上であることを特徴とする。
【0040】
これは、本発明の導電性ペーストに用いる有機溶剤は、エチルセルロースとの相溶性が悪いため、エチルセルロースのみをバインダー樹脂として用いた場合の有機溶剤に対する溶解性が低く、得られた導電性ペーストは経時による粘度変化が大きくなる。一方、エチルヒドロキシエチルセルロースとの相溶性は良いため、有機溶剤に対する溶解性が高く、得られた導電性ペーストは経時による粘度変化率が小さくなる。
しかしながら、アルキレングリコールジアセテートおよびアルキレングリコールジプロピオネート(特許文献4、5、6参照)のような直鎖構造を有するグリコールエステル系溶剤(環状骨格の構造を有さない)は、その溶解度パラメータ(SP値)は8〜10であるが、本発明に使用するエチルヒドロキシエチルセルロースを溶解することができない。そのため、例えば本発明に使用するシクロヘキシルプロピオネート、2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテートの少なくとも1種類以上を混合し、樹脂との相溶性を変化させることでエチルヒドロキシエチルセルロースを溶解することができる。
さらに、エチルヒドロキシエチルセルロースを有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとエチルセルロースを有機溶剤に溶解した有機ビヒクルの混合比率(EHEC/EC)が1まで
は、導電性ペーストの粘度変化率は抑えられるが、EHEC/EC混合比率においてEC−rich(ECの比率が大きくなる)にすると粘度変化率が大きくなるために本発明では使用できない。
【0041】
樹脂の配合量は、特に限定されないが、有機ビヒクル中において1〜30重量%となるように、適正な粘度の有機ビヒクルが作製できる。さらに樹脂の配合量は、有機ビヒクル中において5〜20重量%がより好ましい。
また、樹脂の導電性ペースト全量に対する含有量は、1〜5重量%が好ましい。1重量%未満だと、乾燥膜の強度が低下したり、積層時にペーストの電極パターン部と誘電体シートとの密着性が悪くなり剥がれやすくなる。一方、5重量%を超えると樹脂の含有量が多くなることによる脱バインダー性の悪化があり、好ましくない。
【0042】
3.分散剤(C)
導電性ペーストの分散剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性界面活性剤、高分子系分散剤など、導電性金属粉末やセラミック粉末をバインダーおよび有機溶剤中に微細化した状態で安定に分散させうる分散剤であればよく、公知の分散剤を使用することができる。
特に、これらの中でアニオン系分散剤が好ましく、たとえば、カルボン酸系分散剤、燐酸系分散剤、燐酸塩系分散剤などが挙げられる。
これらの分散剤は1種または2種以上組み合わせて用いても良く、アニオン系分散剤は、導電性金属粉末表面への吸着力が大きいため、その表面改質作用により無機成分の分散性を上げるのに寄与するので、塗膜の平滑性や乾燥膜密度を向上させる働きも有している。
【0043】
この分散剤の平均分子量は、200〜20000が好ましい。より好ましくは300〜10000である。
平均分子量が200より小さいと、粒子が十分な静電反発力が得られず、粒子の分散性や保存安定性が低下する場合がある。通常、分散剤が粒子表面に吸着して分散剤の吸着層を形成し、静電反発力や立体的反発力を粒子に付与することで、分散性に優れたペーストが得られる。しかし、時間の経過とともに粒子同士の衝突により、吸着層の反発力より勝って粒子同士が凝集すると考えられるため、平均分子量は200以上が良い。また、分子量が20000より大きいと、有機ビヒクル及び有機溶剤との相溶性が低下したり、粒子同士の凝集を招いたり、分散性・保存安定性の低下を引き起こす場合がある。また、ペースト粘度が高くなる問題も生じてしまう。
【0044】
分散剤の添加量は、導電性金属粉末に対する添加量として、無機物含有量100質量部に対して0.01〜2.00質量部が好ましく、0.20〜1.00質量部が更に好ましい。分散剤が0.01質量部未満では、十分な分散性が得にくくなる傾向がある。一方、2.00質量部を越えると乾燥性が悪くなり、また乾燥膜密度が低下する問題等が生じる。
【0045】
4.有機溶剤(D)
有機溶剤は、誘電体グリーンシートに内部電極用ペーストを印刷したとき、適度な乾燥性を有するものでなければならない。乾燥性だけを考えれば、単に沸点が低い物質、例えば沸点180℃以下の溶剤の選択も考えられるが、そのような溶剤は通常、引火点が低いものであり(例えば、21℃≦引火点<70℃で消防法の「危険物第4類第二石油類」に該当)、このような溶剤を含有するペーストを扱う場合には作業環境上、引火の危険性を配慮し、またペースト製品の輸送時の安全性を配慮した輸送規則が適用されるから、このような引火点の低い溶剤は避けるべきである。
【0046】
従来、主たる溶剤に対して、このような「危険物第4類第二石油類」に該当する低沸点の石油系の脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素からなる溶剤を一部添加することによって乾燥速度を改善する試みもされているが、一般にこのような炭化水素系の溶剤は、ポリビニルブチラール樹脂をほとんど溶解しないだけでなく、エチルセルロースも溶解しないものがほとんどである。そのため、その添加量によってはペースト組成中のエチルセルロースの溶解度が下がり、樹脂が析出しやすくなったり、粘度が経時変化したりするだけでなく、ペーストが時間と共に分離したりする現象が起こりやすくなるので好ましくない。
【0047】
本発明で用いる有機溶剤などの乾燥速度をTG測定した結果を図1に示す。
このTG測定では、各種溶剤を直径5mmφのアルミセルに約20mg入れ、TG/DTA装置(マック・サイエンス社製)で、室温から80℃ まで5℃/minで昇温したのち、そのまま80℃で保持した。雰囲気は空気を200ml/min流通する条件とした。
図1のグラフは、縦軸の左目盛りが溶剤の蒸発割合、同右目盛りが温度、横軸が時間を示す。線1は温度上昇を示す曲線、線2〜線6は、それぞれ、シクロヘキシルプロピオネート(線2;以下略、CHP)、2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン
(線3;以下略、2−CHMJ)、ターピネオール(線4;以下略、TPO)、イソボルニルアセテート(線5;以下略、IBA)、ジヒドロターピニルアセテート(線6;以下略、DHTA)の乾燥速度を示す曲線である。
【0048】
シクロヘキシルプロピオネート、2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンは、ターピネオール、イソボルニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテートと比較して乾燥速度が速いことがわかる。
なお、このTG/DTA装置による測定方法は、ペーストの乾燥性を直接評価するものではないが、溶剤の沸点だけでは判断できない乾燥速度を定量的に比較できるので、新たな溶剤を探索し、溶剤単体を評価、選択するために用いられている。
【0049】
グループ(I)およびグループ(II)の有機溶剤の混合割合は、ペーストの乾燥条件に特別な要求が無ければ、特に制限されず、乾燥性を考慮して混合比率を調整すればよい。
なお、本発明でいう溶解度パラメータ(SP値)とは、物性の極性を示す指標であり、液体の1molあたりの蒸発熱をΔH[cal]、モル体積をV[cm]とするとき、下記(1)式で定義される量をいう。
【0050】
【数1】

【0051】
この溶解度パラメータ(SP値)の数値が近いもの同士は、お互いに混ざりやすい(すなわち相溶性が高い)、逆にこの数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
さらに、有機溶媒の溶解度パラメーターが8.0未満では、本発明で使用するバインダー樹脂との相溶性が悪くなり、溶解できない。一方、有機溶媒の溶解度パラメーターが10.0を越えると、シートアタックを回避することが困難になる。
【0052】
たとえば、本発明で用いるグループ(I)のシクロヘキシルプロピオネートとグループ(II)の有機溶剤を20:80で混合した時の乾燥速度をTG測定した結果を図2に、グループ(I)の2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンとグループ(II)の有機溶剤を20:80で混合した時の乾燥速度をTG測定した結果を図3に示す。
【0053】
図2において線7は温度上昇を示す曲線、線8〜線9は、それぞれ、CHPとIBAの混合溶剤(線8)、CHPとDHTAの混合溶剤(線9)の乾燥速度を示す曲線である。
【0054】
また、図3において線10は温度上昇を示す曲線、線11〜線12は、それぞれ、2−CHMJとIBAの混合溶剤(線11)、2−CHMJとDHTAの混合溶剤(線12)の乾燥速度を示す曲線である。
【0055】
これら混合溶剤のTG測定結果から、グループ(II)の有機溶剤にグループ(I)から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤を組み合わせることで、比較的低コストでありながら、一定の蒸発速度を満足し、乾燥性に対する問題も改善された有機溶剤とすることができる。
【0056】
5.セラミック粉末(E)
導電性ペーストに焼結抑制剤としてセラミック粉末を添加する場合、通常ペロブスカイト型酸化物であるBaTiOなどや、これに種々の添加物を添加したものから選択することができる。また、MLCC用の誘電体層グリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同組成、あるいは類似の組成も好ましい。このセラミック粉末は、固相法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など種々の製法により製造されたセラミック粉末を使用できる。また、必要に応じてセラミック粉末は、ビーズミルや高圧ホモジナイザーなどの装置により分散・粉砕処理を施したセラミックスラリを導電性ペーストに焼結抑制剤として添加することができる。
【0057】
用いるセラミック粉末の粒径は、0.01から0.2μmの範囲が望ましい。
そのセラミック粉末の粒径は、0.2μmを超えると乾燥膜密度が低下する。すなわち、乾燥膜では略球状のニッケル粉末粒子が積み重なって形成される隙間にセラミック粉末が充填されることから、セラミック粉末の粒径が0.2μmを超えると、略球状のニッケル粉末粒子の接触点間に入り込みにくくなり、所望の乾燥膜密度を得るのが難しくなり、さらに導電性ペーストの焼結開始温度をセラミック層の焼結開始温度まで遅延する効果も弱くなってしまう。
【0058】
一方、セラミック粉末の粒径が0.01μmを下回ると、導電性ペーストの焼結遅延効果が困難となり、デラミネーションやクラックなどの構造欠陥が生じる。さらに、上述の乾燥膜密度の低下やセラミック粉末の凝集粉末を起因に誘電体層の薄層化が困難になるなどのコンデンサの信頼性(絶縁抵抗の低下やショート率の上昇など)が悪化する問題が発生する。
本発明におけるセラミック粉末の平均粒径は、特に断らない限り走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真より求められる値である。
【0059】
このセラミック粉末の含有率は、導電性金属粉末100重量部に対して3〜25重量部が望ましい。
セラミック粉末の含有率が3重量部未満では、例えば、ニッケル粉末の焼結が制御できず、内部電極層と誘電体層の焼結収縮挙動のミスマッチが顕著になる。一方、セラミック粉末の含有率が25重量部を超えると、例えば、内部電極層から誘電体層中のセラミック粒子との焼結により誘電体層の厚みが膨張し、組成のずれが生じるため、誘電率の低下等の電気特性に悪影響を及ぼす。
また、セラミック粉末の含有量が3重量部より少ないと、内部電極の焼結が低温から始まってしまい、内部電極層と誘電体層との焼結温度の差が大きくなるため、焼成クラックが発生してしまう。
【0060】
6.その他添加剤
本発明における導電性ペーストには、粘度調整や適度な粘性などを付与するために、目的に応じて、有機溶剤や有機バインダーを添加しても良い。
この有機溶剤や有機バインダーとしては、基本的には導電性ペーストを構成するものが好ましい。さらに、必要に応じて消泡剤、可塑剤、増粘剤、キレート剤など導電性ペーストで公知の添加物を加えることもできる。
【0061】
7.導電性ペーストの製造
以下、本発明の導電性ペーストを作製する手順を説明する。
【0062】
[第1工程]
第1工程は、少なくとも導電性金属粉末、分散剤、及び有機溶剤を含有する導電性粗スラリを、混合攪拌した後、オリフィスを備えるノズルを通過させることにより分散処理する前処理分散工程である。
[第2工程]
第2工程は、第1工程で前処理分散された導電性スラリを高圧ホモジナイザーにより分散処理する分散工程である。
[第3工程]
第3工程は、第2工程において分散処理された導電性スラリをフィルターにより濾過する工程である。
[第4工程]
第4工程は、第3工程によりフィルター処理された導電性スラリに有機ビヒクルを添加、混合する工程である。
[第5工程]
第5工程は、第4工程により得られた導電性ペーストをフィルターにより濾過する工程である。
【0063】
以下、各工程を詳しく説明する。
[第1工程]
少なくとも導電性金属粉末、分散剤、および乾燥速度が異なる有機溶剤2種類を含む導電性粗スラリを、混合攪拌した後、高圧ホモジナイザーにより前処理分散を行う。
高圧ホモジナイザーのオリフィス径は、0.3〜1.0mm程度とするのが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6mm程度である。また、その形状は湾曲部や屈曲部のない摩耗し難い直線状が望ましく、オリフィスを形成する材料は、焼結ダイヤモンドや単結晶ダイヤモンド等のダイヤモンド、アルミナ、ジルコニア、カーボランダム等のセラミック材料、ステンレス、鉄、チタン等の金属が挙げられるが、その中でも摩耗し難い高硬度の材質のものが好ましい。
このオリフィス径が、0.3mmより小さい場合、前処理分散工程でノズル詰まりが発生する可能性があり、1.0mmより大きい場合、導電性金属粉末やセラミック粉末の表面の濡れが不十分になる。また、オリフィス径は、内径0.3〜1.0mmのノズルであれば組み合わせることができる。
【0064】
〔第2工程〕
第1工程によって前処理分散された導電性スラリを、高圧ホモジナイザーを用いてさらに分散するもの、その処理圧は50〜250MPaが好ましく、より好ましくは100〜200MPaで処理する。その圧力が50MPa未満では、オリフィスから噴出したジェット流の速度が不十分であるため、処理物にかかるエネルギーが弱く、分散不良となる。また、圧力が250MPa以下である理由は、分散機の部材の摩耗を抑制し、長期間の使用に耐えられるようにする観点から選択するものである。
【0065】
第2工程において分散処理を担う高圧ホモジナイザーは、高速ジェット流を発生させるために微細なオリフィスを利用するもので、そのオリフィス径は、生産性や装置の効率性から0.05〜0.4mm程度とするのが好ましく、また、その形状は湾曲部や屈曲部のない摩耗し難い直線状が望ましい。さらにオリフィスを形成する材料は、焼結ダイヤモンドや単結晶ダイヤモンド等のダイヤモンド、アルミナ、ジルコニア、カーボランダム等のセラミック材料、ステンレス、鉄、チタン等の金属が挙げられるが、その中でも摩耗し難い高硬度の材質のものが好ましい。
【0066】
通常、スラリのオリフィス内での通過速度が速ければ速いほどせん断力も大きくなり、粒子の粒径をより微細にすることができる。しかしながら、粒子の粒径が小さくなりすぎると、凝集が起こりやすくなるため、粒子を適度な粒径のままで維持するためには、オリフィス内およびオリフィス通過後にスラリにかかる応力が最適となるように、そのオリフィス通過速度を調整することが必要である。
この通過速度の調整は、オリフィス径、処理圧等の条件によって行うもので、スラリのオリフィス通過速度を100〜1000m/secの範囲に調整することにより、粒子を適度な微細粒径のままにして、凝集を防止することができる。
【0067】
また、スラリのオリフィス通過後の空間部内壁への衝突や、せん断力の不均一化を招く泡の発生を防止するために、背圧をかけながら、スラリを製造することもできる。さらに、スラリ温度が高くなると粒子の安定性が低下し、再凝集する等の問題が生じ、好ましくないため、スラリ温度の上昇を防止するために、冷却装置を装備することが好ましい。
【0068】
高圧ホモジナイザーにおける分散パス回数は、要求される粒子径、粒度分布等によって適宜選択することができる。なお、分散パス回数は、スラリを循環させるような装置の構成で行うことが好ましい。
【0069】
使用する高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)、Nano3000(株式会社美粒製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)、等がある。
【0070】
〔第3工程〕
第3工程は、第2工程の高圧ホモジナイザーで分散処理された導電性スラリを、所定規格のフィルターで濾過するものである。
フィルター濾過としては、99%カットろ過精度で、目開きが5μm以下のフィルターでろ過する。
目開きが5μmを超えるフィルターを用いた場合、無機物の未分散物、粗大粒子などが除去できなくなり、誘電体層の厚みより大きい物質が混入していると、ペースト塗膜表面に突起が生じるため、平滑性が低下する。そのため、平滑性に優れた導電性ペーストを得ることができない。
【0071】
なお、99%カット濾過精度で、目開きが5μm以下のフィルターにてろ過を行うとは、99%カット精度で5μmを超える粒子を99%以上補足することを意味する。
例えば、JIS8901規定試験用粉体7種(5mg/L分散液、10L/min)に基づいたシングルパステストが挙げられる。また、濾材としては、金属、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリプロピレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、ここで使用されるフィルター構造としては、メンブレンタイプ、プリーツタイプ、デプスタイプなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
〔第4工程〕
第4工程は、第3工程においてフィルター処理して得られた導電性スラリに有機ビヒクルを添加し、プラネタリーミキサ(プライミクス社製T.K.ハイビスディスパーミックス 3D-125型)や3本ロール等を用いて混合するものである。
【0073】
〔第5工程〕
第5工程は、第4工程で得られた混合物を所定規格のフィルターで濾過して導電性ペーストを作製するものである。
そのフィルター濾過としては、99%カットろ過精度で、目開きが50μm以下のフィルターでろ過する。目開きが50μmを超えるフィルターを用いた場合、ビヒクル中に含まれる樹脂の未溶解物が除去できなくなり、誘電体層の厚みより大きい物質が混入していると、ペースト塗膜表面に突起が生じるため、平滑性が低下する。そのため、平滑性に優れた導電性ペーストを得ることができない。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0075】
[導電性ペーストの特性]
(1)導電性ペーストの粘度変化率
本発明の導電性ペーストの粘度変化率は、導電性ペースト製造後の粘度を初期粘度とし、常温(25℃)で30日間静置した後、再度測定した粘度との粘度変化量を初期粘度で割り、百分率(%)で表している。なお、導電性ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1)の条件で測定し、粘度変化率は少ないほど好ましい。
【0076】
(2)評価用グリーンシート
ポリビニルブチラール樹脂が配合された、厚み約2μmのチタン酸バリウム系誘電体グリーンシートを準備し、これを用いて有機溶剤の特性を評価した。このグリーンシートは、約10μmのPETフィルム上にチタン酸バリウム系誘電体スラリーペーストをドクターブレードで乾燥膜厚が約2μmになるように塗布、乾燥させたものである。
【0077】
(3)乾燥性
このグリーンシート上に、乾燥膜厚が約2μmになるように調整してニッケル導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのシートを60℃で1分間乾燥させて電極パターンを形成した。
この導体ペーストの乾燥膜を上部から実体顕微鏡で観察し、乾燥体の表面の状態から乾燥性を確認した。なお、60℃1分の乾燥条件は、極薄のグリーンシート中の可塑剤が乾燥時に蒸発消失しないようにペーストの乾燥温度をより低温化し、乾燥時間を短縮化したいという要求に基づいたものであり、一般的な要求水準ではない。
完全に乾燥しているもの、表面が一部でも湿っているが乾燥しているものを「○」、全体が乾燥していないものを「×」と判定した。
【0078】
(4)シート剥離試験(シートアタック性)
グリーンシート上に、導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのシートを60℃で1分間乾燥させ電極パターンを形成させた。なお、60℃で1分の乾燥条件は、薄いグリーンシート中の可塑剤が乾燥時に蒸発消失しないようにペーストの乾燥温度をより低温化し、乾燥時間を短縮化したいという要請に基づいたものであり、一般的な要求水準ではない。
このグリーンシートの導電性ペーストを乾燥させた面に粘着テープを貼り付け、次いで粘着テープを剥がして、PETフィルム上から剥離し、導電性ペーストの印刷部が問題なく剥離されるか確認した。きれいに印刷部が剥離したものを「○」、印刷部が破れたものを「×」とした。
【0079】
(5)有機ビヒクル
有機ビヒクルa〜eは、バインダー樹脂成分としてエチルヒドロキシエチルセルロースを12.5mass%、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シクロヘキシルプロピオネート、2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン、ターピネオールを87.5mass%配合し、60℃に加熱して作製した。
【0080】
同様に、有機ビヒクルf〜iは、バインダー樹脂成分としてエチルセルロースを12.5mass%、有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シクロヘキシルプロピオネート、2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを87.5mass%配合し、60℃に加熱して作製した。実施例および比較例で使用する有機ビヒクルの一覧を表1に示す。
【0081】
【表1】

【実施例1】
【0082】
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネート(CHP)を10.00wt%、グループ(II)から選択した1種類(DHTA)を19.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0083】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%、有機ビヒクルaを19.12wt%加え、3本ロールを用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例2】
【0084】
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネート(CHP)を10.00wt%、グループ(II)から選択した1種類(IBA)を19.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0085】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%、有機ビヒクルbを19.12wt%加え、3本ロールを用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例3】
【0086】
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネートを29.31wt%、を配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0087】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%、有機ビヒクルcを19.12wt%加え、3本ロールを用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例4】
【0088】
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネートを29.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0089】
次に、この前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%、有機ビヒクルcを9.56wt%と有機ビヒクルhを9.56wt%加え、3本ロールを用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例5】
【0090】
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネートを10.00wt%、グループ(II)から選択したイソボルニルアセテート(IBA)を19.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0091】
次に、この前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%、有機ビヒクルbを9.56wt%と有機ビヒクルgを9.56wt%加え、3本ロールを用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0092】
(比較例1)
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネートを10.00wt%、グループ(II)から選択したイソボルニルアセテートを19.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0093】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%に対して、有機ビヒクルbを5.74wt%と有機ビヒクルGを13.38wt%加え、3本ロールを用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0094】
(比較例2)
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を56.29wt%、セラミック粉末に粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を14.07wt%、アニオン系分散剤を0.33wt%、有機溶剤としてグループ(I)からシクロヘキシルプロピオネートを29.31wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0095】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.15mm、処理圧力150MPa、分散パス回数:3回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが3μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを80.88wt%に対して、有機ビヒクルcを5.74wt%と有機ビヒクルHを13.38wt%加え、3本ロールを用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0096】
表2に実施例1から実施例5と併せて、比較例1、比較例2に係る各種溶剤の組み合わせと組み合わせて作製した導電性ペーストの乾燥性、シートアタック試験、粘度変化率の評価結果を示す。
【0097】
【表2】

【実施例6】
【0098】
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを10.90wt%、グループ(II)から選択した1種類(DHTA:ジヒドロターピニルアセテート)を21.06wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0099】
次に、この前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルaを20.48wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例7】
【0100】
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを10.90wt%、グループ(II)から選択した1種類(IBA:イソボルニルアセテート)を21.06wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0101】
次に、この前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルbを20.48wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例8】
【0102】
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを31.96wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0103】
次に、この前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルdを20.48wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例9】
【0104】
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを31.96wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0105】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルdを10.24wt%と有機ビヒクルiを10.24wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【実施例10】
【0106】
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを10.90wt%、グループ(II)からジヒドロターピニルアセテートを21.06wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0107】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルaを10.24wt%と有機ビヒクルfを10.24wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0108】
(比較例3)
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを10.90wt%、グループ(II)からジヒドロターピニルアセテートを21.06wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0109】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルaを6.14wt%と有機ビヒクルFを14.34wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0110】
(比較例4)
導電性金属粉末に粒径0.08μmのニッケル粉末(Ni)を61.42wt%、セラミック粉末に粒径0.02μmのチタン酸バリウム(BT)を6.13wt%、アニオン系分散剤を0.49wt%、有機溶剤としてグループ(I)から2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサンを31.96wt%配合して、混合攪拌した後、オリフィス径が0.4mmのノズルに、導電性粗スラリを通過させて、機械的せん断を付与して前処理分散を施した。
【0111】
次に、前処理分散した導電性スラリを、オリフィス径0.09mm、処理圧力200MPa、分散パス回数:5回の条件による高圧ホモジナイザーによって分散処理を施して導電性スラリを作製した後、99%カット濾過精度で、目開きが1μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、次いで導電性スラリを79.52wt%に対して、有機ビヒクルdを20.48wt%加え、3本ロール等を用いて混合した。
最後に、99%カット濾過精度で、目開きが30μm以下のフィルターにより濾過処理を行い、所望の導電性ペーストを作製した。
【0112】
表3に実施例6から実施例10と併せて、比較例3、比較例4に係る各種溶剤の組み合わせと組み合わせて作製した導電性ペーストの乾燥性試験、シートアタック試験、粘度変化率の評価結果を示す。
【0113】
【表3】

【0114】
表2、表3から溶解度パラメーターが8〜10の有機溶剤とバインダー樹脂としてEHECを使用した導電性ペーストは、乾燥性が速く、かつ「シートアタック」が回避でき、さらに粘度変化率が小さいことがわかる。一方、溶解度パラメーターが10より大きい有機溶剤を使用した場合、「シートアタック」が回避できないことがわかる。また、溶解度パラメーターが8〜10の混合溶剤を使用しても、バインダー樹脂としてEHECの混合比率が50%未満(EC>EHEC)になると粘度変化率が大きくなることがわかる。
【0115】
これは、本発明の導電性ペーストに用いる有機溶剤は溶解度パラメーターが10より低くなると、「シートアタック」は回避できるが、ECとの溶解度パラメーターの差が大きくなる。そのため、有機溶剤との相溶性が悪くなり、粘度変化を抑える効力が低下するため、得られた導電性ペーストの粘度変化率が大きくなる。
【符号の説明】
【0116】
線1:温度上昇を示す曲線
線2:シクロヘキシルプロピオネート(CHP)の乾燥速度を示す曲線
線3:2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン(2−CHMJ)の乾燥速度を示す曲線
線4:ターピネオール(TPO)の乾燥速度を示す曲線
線5:イソボルニルアセテート(IBA)の乾燥速度を示す曲線
線6:ジヒドロターピニルアセテート(DHTA)の乾燥速度を示す曲線
線7:温度上昇を示す曲線
線8:CHPとIBAの混合溶剤の乾燥速度を示す曲線
線9:CHPとDHTAの混合溶剤の乾燥速度を示す曲線
線10:温度上昇を示す曲線
線11:2−CHMJとIBAの混合溶剤の乾燥速度を示す曲線
線12:2−CHMJとDHTAの混合溶剤の乾燥速度を示す曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粉末(A)、有機ビヒクル(B)、分散剤(C)、有機溶剤(D)、セラミック粉末(E)から構成される導電性ペーストであって、
前記導電性金属粉末(A)は、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム、或いはそれらの合金から選ばれる1種の金属粉末であり、
前記有機ビヒクル(B)は、エチルヒドロキシエチルセルロース、もしくはエチルヒドロキシエチルセルロースに、エチルセルロースを組み合わせた樹脂を含み、
前記有機溶剤(D)は、溶解度パラメーターが8〜10であり、かつ環状骨格の構造を有し、かつ下記のグループ(I)から選ばれる有機溶剤であることを特徴とする導電性ペースト組成物。

グループ(I):シクロヘキシルプロピオネート、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン。
【請求項2】
導電性金属粉末(A)、有機ビヒクル(B)、分散剤(C)、有機溶剤(D)、セラミック粉末(E)から構成される導電性ペーストであって、
前記導電性金属粉末(A)は、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウム、或いはそれらの合金から選ばれる1種の金属粉末であり、
前記有機ビヒクル(B)は、エチルヒドロキシエチルセルロース、もしくはエチルヒドロキシエチルセルロースに、エチルセルロースを組み合わせた樹脂を含み、
前記有機溶剤(D)は、溶解度パラメーターが8〜10を有し、かつ環状骨格の構造を有し、かつ下記のグループ(I)から選ばれる有機溶剤と、グループ(II)から選ばれる少なくとも1種類以上の有機溶剤とを組み合わせた混合溶剤であることを特徴とする導電性ペースト組成物。

グループ(I):シクロヘキシルプロピオネート、もしくは2−シクロヘキシル−4−メチル−1,3−ジオキサン。
グループ(II):ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート。
【請求項3】
前記導電性金属粉末(A)が、ニッケル、銅、金、銀、白金、パラジウムの金属粉末、或いはそれらの合金の金属粉末から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記導電性金属粉末(A)の粒径が、0.05〜0.5μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記導電性金属粉末(A)の含有量が、ペースト全量に対して30〜70重量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記有機ビヒクル(B)のエチルヒドロキシエチルセルロースにおけるエトキシル基含有率が、56%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
前記有機ビヒクル(B)において使用する樹脂が、エチルヒドロキシエチルセルロースとエチルセルロースの混合比率(EHEC/EC)が1以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項8】
前記有機ビヒクル(B)中の樹脂の含有量が、ペースト全量に対して1〜5重量%であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項9】
前記セラミック粉末が、チタン酸バリウム粉末であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項10】
前記セラミック粉末の粒径が、0.01〜0.2μmであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項11】
前記セラミック粉末の含有量が、導電性金属粉末(A)100重量部に対して3〜25重量部であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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