説明

導電性ペースト

【課題】 光学式外観検査方法により、配線パターンの良否判別の高精度化、高感度化に応えることが可能な導体配線を形成できる導電性ペースト、及び当該導電性ペーストを用いて形成された配線パターンの良否を検査する方法を提供する。
【解決手段】 導電性粒子、バインダー樹脂、及び蛍光物質を含有する導電性ペーストで、前記蛍光物質は、沸点が200℃以下の蛍光物質、特にcis−スチルベンが好ましい。本発明の導電性ペーストを用いて形成される配線パターン又は導体配線の検査方法であって、前記蛍光物質の励起波長を含む光を前記配線パターン又は導体配線が形成された基板に照射し、その反射光によりパターン又は配線部の存在を検出する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路パターンの形成に使用する導電性ペーストに関し、特に形成した導体配線パターンの良否の外観検査が容易な導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
固形分として主に金属粉末を含有する導電性ペーストは、印刷やビアホールへの充填等により電極、回路パターンを容易に形成できるため、エレクトロニクス分野で多く用いられている。導電性ペーストは、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末、カーボンブラック等の導電性フィラーを樹脂バインダー中に分散させたもので、スクリーン印刷等の種々の印刷方法、あるいはビアホール充填等により基板上に導体配線パターンを形成し、次いで樹脂を固化することにより、導体配線を形成する。
【0003】
このように、導電性ペーストを用いて形成した導体配線において、印刷時のかすれ、位置ずれ、にじみ、飛散、あるいは充填量の過不足により、かすれ、ブリッジなどを生じる場合がある。印刷充填パターンの配線のかすれは、断線の原因となり、飛散、ブリッジ、位置ずれは、電気的に誤接続をもたらすおそれがある。従って、このような欠陥が生じたプリント配線板は、出荷前の検査で、取り除く必要がある。
【0004】
導体の配線状態を検査する方法としては、例えば、特開平5−297050号公報(特許文献1)に、基板の所定部位に2つのスルーホールを穿設するとともに、同スルーホール内に充填される電気抵抗がカーボンより低い導電性ペーストにて導通状態とされる検査用ランドを設け、カーボン導体の印刷時にそれと同時に上記検査用ランド間に電気抵抗検査用のカーボン導体を形成し、検査用ランドから検査用カーボン導体の抵抗値を測定し、カーボン導体の配線状態を検査する検査方法が提案されている。
【0005】
また、特開2000−174416号公報(特許文献2)では、回路形成したプリント配線板を加熱処理することが提案されている。加熱処理により、断線しかかっている導体回路を破断させておくことで、その後に行う電気検査で、断線しかかりの導体回路を有するプリント配線板を検出し取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−297050号公報
【特許文献2】特開2000−174416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の検査方法では、検査用ランドを別途設ける必要があり、コストアップの要因となる。
また、特許文献2の方法では、断線しかかっている状態の不良品を有効に検出することはできるが、回路パターンの位置づれ、にじみ、飛散による配線の太幅化、これによると隣接配線との連通(ブリッジ)といった不良品を検出することはできない。
【0008】
このような事情から、回路パターンの不良の種類によらず、簡易に回路パターン欠陥を判別、検出できる検査方法が求められている。この点、光学式外観検査法は、非破壊検査であり、且つ回路パターンの欠陥の種類に特に依存せず、効率よく不良箇所を判別できることから、検査方法としては有効な方法であり、従来より行われている。
【0009】
しかしながら、外観検査は、近年の回路パターンの微細配線化に伴い、その検査精度、感度に対する要求が益々厳しくなってきている。
特に、近年、導電性粒子として、耐酸化性、導電性に優れるという点から、銀粉末、銅粉末、銀コート銅粉末が多く用いられているが、このような銀又は銅系粉末を用いた導電性ペーストが、銅張り基板上に印刷等される場合、紫外線〜可視光線領域の反射光を利用する外観検査では、反射光が、銅張り基板からの反射光であるのか、導電性粒子からの反射光であるのかを区別することが困難になっている。従って、近年の微細化された配線パターン、特に上記銀又は銅系粉末を用いる導電性ペーストから形成される配線パターンの良否の判別、不良品の検出に対する精度、感度向上が求められている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光学式外観検査方法による配線パターンの良否判別の高精度化、高感度化に応えることが可能な導体配線を形成できる導電性ペースト、及び形成された導体配線の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の導電性ペーストは、導電性粒子、バインダー樹脂、及び蛍光物質を含有する。前記蛍光物質は、沸点が200℃以下の蛍光物質であることが好ましく、特に、cis−スチルベンが好ましい。また、前記導電性粒子と前記蛍光物質の含有質量比(導電性粒子:蛍光物質)は、99.9:0.1〜97:3であることが好ましい。
【0012】
本発明の検査方法は、上記本発明の導電性ペーストを用いて形成される配線パターン又は導体配線の検査方法であって、前記導電性ペーストに含有されている蛍光物質の励起波長を含む光を前記配線パターン又は導体配線が形成された基板に照射し、その反射光によりパターン又は配線部の存在を検出する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ペーストによれば、かすれ、ブリッジといった配線パターンの不良を、含有されている蛍光物質から発される蛍光を利用して、外観検査で判別することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
〔導電性ペースト〕
本発明の導電性ペーストは、必須成分として、導電性粒子、バインダー樹脂、及び蛍光物質を含有し、通常、溶剤に溶解された状態で用いられる。以下、各成分について説明する。
【0016】
(A)導電性粒子
本発明で用いられる導電性粒子は、金属単体、合金等の金属粒子、カーボン粒子などの導電性を示す粒子であり、形状としては、球状、楕円形、針状、平板状など、特に限定しない。
前記金属としては、白金、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、又はこれらの合金、銅粒子を銀で被覆した銀コート銅粉末などを用いることができ、特に、導電性、信頼性等の観点から、銀粉末、銅粉末、銀コート銅粉末が好ましく使用される。
【0017】
ここで、銀コート銅粉末とは、表面に銀層を形成した銅粉末である。表面に銀層を形成しているため、銅粉末単体に比べて導電性が向上する。銀粉末と同様に種々の形状のものを使用できるが、導電性を考慮すると平板状粒子を使用することが好ましい。また表面に銀と銅との合金層を備えている銀コート銅粉末とは、前記銀コート銅粉末の表面の銀層の一部又は全部を銅と合金化して、銀と銅との合金層としたものである。表面を銀と銅との合金層とすることで、粉末表面に銅原子が露出する確率が高くなり、マイグレーション抑制効果を高めることができる。このような粉末は、例えば銀コート銅粉末を湿式還元雰囲気中で加熱することによって得ることができる。
【0018】
(B)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、電気的絶縁性、耐熱性、耐湿性等に優れた樹脂が用いられる。具体的には、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等の1種又は2種以上混合して用いられる。
【0019】
上記樹脂のうち、耐熱性、電気的絶縁性に優れているという点から、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。エポキシ樹脂の種類としては、特に限定はされないが、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型等を骨格とするビスフェノール型のエポキシ樹脂、ナフタレン型のエポキシ樹脂、ノボラック型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、高分子量のエポキシ樹脂であるフェノキシ型のエポキシ樹脂を使用することもできる。
【0020】
バインダー樹脂とともに、バインダー樹脂を硬化させるための潜在性硬化剤が併せて用いられることが好ましい。
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0021】
上記潜在性硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および加熱による速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系の潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系の潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系の潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系の潜在性硬化剤が、特に好ましい。
【0022】
(C)蛍光物質
本発明で用いる蛍光物質としては、励起光の波長で蛍光を発する物質であればよく、例えば、490nm近傍の波長の光で励起するフルオロセイン(FDA)、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、イソシアネート誘導体、フィコエリスリン、ローダミングリーン、GFP(Green fluoresento protein)、YOYO1等が挙げられる。紫外線での励起の場合は、ダンシルクロリド、ダンシルヒドラジン、カスケードブルー、ヘキスト33、342、33258、33342等が挙げられる。
633nm近傍の励起であれば、アロフィコシアニン及びその誘導体等が好適に使用でいる。
【0023】
上記蛍光物質の他、アレクサフルオロ350(励起波長:346,蛍光波長:442),アレクサフルオロ430(励起波長:431,蛍光波長:541)等のアレクサフルオロ類;カルセイン(励起波長:495,蛍光波長:520)、カルセインブルー(励起波長:375,蛍光波長:435)、カルセイングリーン(励起波長:505,蛍光波長:532)等のカルセイン類;4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール HCI(DAPI、励起波長:372,蛍光波長:456)、7−アミノアクチノマイシンD(励起波長:555,蛍光波長:655)、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル酸(AMCA、励起波長:350,蛍光波長:450)、8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸Mg塩(ANS、励起波長:385,蛍光波長:485)、8−アニリノ−ナフタレンスルホン酸(ANS、励起波長:385,蛍光波長:485)、アクリジンオレンジ(励起波長:490,蛍光波長:530,640)、アクリジンイエロー(励起波長:470,蛍光波長:550)、アクリルフラビンSO2−PAS(励起波長:430,蛍光波長:515)、アクリルフラビン−フォイルゲン(励起波長:430,蛍光波長:515)、オーラミンO(励起波長:460,蛍光波長:550)、BCECF (励起波長:430/480,蛍光波長:530)、BCECF/AM (励起波長:500,蛍光波長:530)、ベルべリン硫酸塩(励起波長:430,蛍光波長:550)、ビス−アミノフェニル−オキサジゾール(BAO)−フォイルゲン(励起波長:380,蛍光波長:470)、BO PRO1(励起波長:462,蛍光波長:481)、BOBO1(励起波長:462,蛍光波長:481)、BODIPY FL(励起波長:503,蛍光波長:512)、BODIPY FLセラミド(励起波長:503,蛍光波長:512)、BTC(励起波長:400/480,蛍光波長:540)、カテコールアミン(励起波長:410,蛍光波長:480)、クロロフィル(励起波長:520,蛍光波長:650)、クロモマイシンA3(励起波長:450,蛍光波長:570)、コリフォスフィンO(励起波長:460,蛍光波長:575)、クマリンマレイミフド(CPM、励起波長:385,蛍光波長:465)、Cy2(励起波長:489,蛍光波長:506)、Cy3(励起波長:552,蛍光波長:565)、Cy3.5(励起波長:581,蛍光波長:596)、Di−4−ANEPPS(励起波長:440/505,蛍光波長:705)、Di−8−ANEPPS(励起波長:436/546,蛍光波長:713)、ジメチルアミノナフタレン−5−スルホン酸(DANS、励起波長:380,蛍光波長:520)、DiO(励起波長:484,蛍光波長:501)、ジフェニルヘキサトリエン(DPH、励起波長:351,蛍光波長:430、EBFP(励起波長:380,蛍光波長:440)、ECFP(励起波長:433,453,蛍光波長:475,501)、エオシンイソチオシアネート(励起波長:524,蛍光波長:548)、エチジウムブロマイド(励起波長:545,蛍光波長:605)、エバンスブルー(励起波長:550,蛍光波長:610)、EYFP(励起波長:513,蛍光波長:527)、FM 1−43(励起波長:488,蛍光波長:520)、Fura−2(励起波長:340/380,蛍光波長:510)、GFP(S65T)(励起波長:488,蛍光波長:510)、メロシアニン540(励起波長:500,蛍光波長:572)、ナノオレンジ(励起波長:485,蛍光波長:590)、NBD−Phallacidin(励起波長:465,蛍光波長:530)、ナイルレッド(励起波長:485−530,蛍光波長:525−605、オリボマイシン(励起波長:430,蛍光波長:545)、オレゴングリーン488(励起波長:496,蛍光波長:520)、フィコエリスリンB(PE−B)(励起波長:545,蛍光波長:576)、Propidium Iodide(励起波長:530,蛍光波長:615)、セロトニン(5HT)(励起波長:390,蛍光波長:530)、テトラサイクリン(励起波長:390,蛍光波長:560)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)(励起波長:541,蛍光波長:572)、テキサスレッド(励起波長:596,蛍光波長:620)、チアゾールオレンジ(励起波長:509,蛍光波長:533)、TOTO1(励起波長:514,蛍光波長:533)、TOTO3(励起波長:642,蛍光波長:661)、TO−PRO−3(励起波長:642,最大蛍光波長:661)、PKH26(励起波長:551,最大蛍光波長:567)、DCFH−DA(励起波長:488,最大蛍光波長:530)、DHR(励起波長:505,最大蛍光波長:534)などを用いてもよい。
【0024】
以上のような蛍光物質のうち、バインダー樹脂の加熱焼成時に揮発できるものであることが好ましい。加熱焼成時に揮発するタイプの蛍光物質を用いた場合、硬化後の導電性ペースト、すなわち、形成された導体配線における蛍光物質の影響を無視できる。従って、使用するバインダー樹脂の種類にもよるが、加熱焼成は、一般に150〜200℃程度で行われることから、沸点が200℃未満であることが好ましく、より好ましくは150℃未満の蛍光物質が好ましく用いられる。例えば、cis−スチルベン(沸点148℃、励起波長:406nm、蛍光波長:526nm)が好ましく用いられる。
【0025】
一方、加熱硬化後に検査される配線パターン形成用の導電性ペーストの場合には、融点、沸点が加熱焼成温度よりも高い蛍光物質を用いることが好ましい。このような高融点蛍光物質としては、例えば、紫外〜可視光で励起するウンベリフェロン(融点230℃)、紫外線で励起するクマリン(沸点297℃)や臭化エチジウム(融点260℃)などが挙げられる。
【0026】
以上のような蛍光物質の含有量は、印刷された導電性ペーストの外形を把握するのに必要十分量であればよく、多すぎると、導電性を損なうおそれがあることから、導電性粒子と蛍光物質の含有質量比で99.9:0.1〜97:3であることが好ましく、導電性粒子とバインダー樹脂の含有質量比で、85:15〜97:3であることが好ましい。
【0027】
(D)溶剤
バインダー樹脂を溶解するための溶剤としては、バインダー樹脂が可溶であり、導電性ペーストを塗布する基材に対して非腐食性の有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジオキソラン、ヘキサン、トリエチルアミン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、セロソルブ、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、キシレン、N−メチルピロリドン、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール、フタル酸ジエチル等の有機溶媒が好適に使用できる。なお、これらの溶剤を、数種類、組み合わせて使用することもできる。
【0028】
本発明の導電性ペーストの溶剤含有量は、使用方法(印刷方法、スルーホールへの充填タイプなど)に応じて適宜選択されるが、通常、樹脂固形分濃度で70〜95質量%となるように、溶剤が用いられる。
【0029】
(E)その他の添加剤
本発明の導電性ペーストは、上述の各成分の他、硬化促進剤、シランカップリング剤、難燃化剤、増粘剤、チクソトロピック剤、レベリング剤、可塑剤等の添加剤を、導電性ペーストの用途等に応じて適宜含有してもよい。
【0030】
例えば、スクリーン印刷等により連続印刷を行う際や導電性ペーストを貫通孔に充填する際に、耐乾燥性が重要な特性となるが、可塑剤を添加することにより、耐乾燥性を向上させることができる。この可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット誘導体、ピロメリット誘導体、ステアリン酸誘導体、オレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、リシノール誘導体、水素添加ヒマシ油およびその誘導体が好適に使用できる。導電性ペースト全体に対する可塑剤の含有量は、0.1重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上3重量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
〔導電性ペーストの調製〕
本発明の導電性ペーストの調製方法は特に限定しないが、通常、エポキシ樹脂等のバインダー樹脂を、ブチルカルビトールアセテート等の溶剤に溶解し、次いで、導電性粉末を添加するとともに、潜在性硬化剤、蛍光物質、その他の添加剤等を添加して混合し、三本ロールにより混練する方法が挙げられる。これにより、蛍光物質が分散した導電性ペーストが得られる。
【0032】
〔導体配線の形成〕
本発明の導電性ペーストは、例えば、基板上に、形状精度に優れた配線や電極等の電気回路を形成する場合に好適に使用される。具体的には、従来より公知の印刷方法(特に、好ましくはスクリーン印刷法)で、基板上に、本発明の導電性ペーストを塗布,印刷した後、スルーホールが形成された基板では、導電性ペーストを印刷充填した後、溶剤を乾燥し、次いで高温で焼成することにより、基材上に所望の配線や電極等の電気回路が形成された配線基板を得ることができる。
【0033】
導電性ペーストが適用される基材としては、ガラス基板、樹脂フィルム、樹脂基板等の基板の他、エッチング等により回路パターンが形成された銅張り基板などが挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、特に限定しないが、例えば、ポリアミドフィルムや、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエステルフィルムなどが用いられる。
上記樹脂基板としては、エポキシ樹脂基板、ポリイミド樹脂基板、フェノール樹脂基板などが用いられる。
【0034】
配線パターンが形成された金属箔としては、銅箔や銅合金(例えば、スズ含有銅合金、クロム含有銅合金、亜鉛含有銅合金、ジルコニウム含有銅合金、銀含有合金等)が好適に使用される。そして、この金属箔を、常法により、露光、エッチングして、加工することにより、所定の配線パターンが形成される。
【0035】
導電性ペーストの配線の形成方法としては、スクリーン印刷、凹版印刷、平板印刷、ディスペンサー、インクジェット等が例示される。基板上に、これらの方法により、導電性ペーストの回路パターンを印刷、又はスルーホール等へ充填した後、乾燥により溶剤を揮発し、加熱焼成して、硬化させる。
【0036】
〔検査方法〕
本発明の導電性ペーストを用いて形成された配線パターン又は導体配線は、光学式外観検査装置にて、微細な欠陥を検査することができる。
検査は、導電性ペーストの印刷・充填後、加熱硬化前、あるいは加熱硬化により導体配線が形成された後に、光学式外観検査装置にて行われる。
【0037】
検査装置に用いられる光源の種類、すなわち白色光、紫外線、さらに波長の短いDUV光など、特に限定せず、導電性ペーストに用いられている蛍光物質を励起できる光を放出する光源であればよい。
形成された配線部分と基板のコントラスト、光源からの光に対する反射率(%)の違いにより、パターン又は導体配線を検出することができる。基板が銅箔の場合、紫外〜可視光領域での銅箔の反射は50〜100%であるため、通常、導電性ペーストまたは導体配線との反射率の差が小さくなり、区別が困難となるが、蛍光物質からの蛍光は銅箔の反射光と明確に区別することが可能である。また、より波長の短い光を光源に用いることで、基板からの反射光が低くなるので、導電性ペーストに含まれる蛍光物質からの蛍光との区別が容易になる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
(1)導電性ペーストの調製及び配線パターンの形成
表1に示すように、導電性粒子(銀コート銅粒子)、バインダー樹脂(エポキシ樹脂)、蛍光物質(cis−スチルベン)、潜在性硬化剤(旭化成イーマテリアル社のノバキュアHX3941HP)、溶剤(ブチルカルビトールアセテート)を、表1に示すように配合し、3本ロールで混合して、樹脂固形分含有率86.4質量%の導電性ペーストを調製した。
調製した導電性ペーストを用いて、銅貼り積層板上に、かすれが発生している線(幅:100μm)を100μm間隔で10本、ブリッジが生じた線の組合せを10本、スクリーン印刷(ニューロング社のLS−150を使用)により形成した。その後、70℃で30分間乾燥した。乾燥後、下記方法により、形成された配線パターンを外観検査した。
【0040】
(2)配線パターンの検査
オムロン社のVT−RNSIIを用いて、かすれ、ブリッジが生じている線が区別できるか否かを観察した。かすれ又はブリッジが生じている線を1本でも検出できなかった検査をNGとして、100回繰り返し検査を行ったうちのNG回数をカウントした。NGカウント数を、表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1からわかるように、蛍光物質を含有させた導電性ペースト(実施例)を用いて形成された配線パターンでは、かすれ、ブリッジが生じている線を高精度に判別することができたが、蛍光物質を含有しない導電性ペースト(比較例)を用いて形成した配線パターンでは、かすれ、ブリッジを判別できない場合が1割弱程度あった。よって、蛍光物質を含有させた本発明の導電性ペーストを用いることにより、簡易な外観検査で、配線ペーストの不良を検出できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の導電性ペーストを用いて形成された配線パターンまたは導体配線は、蛍光物質を含有しているので、配線パターンのかすれ、ブリッジ等の外観欠陥を、光学式外観検査装置を用いて、高速且つ高感度に判別でき、しかもファインパターン配線や、銅箔と区別が困難な銅系粒子を含有する導電性ペーストを用いて形成される配線パターンの外観検査であっても、同様に適用できる。従って、配線パターン製造現場において、安価で且つ便利な外観検査で、不良製品の出荷率を低減できるので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子、バインダー樹脂、及び蛍光物質を含有する導電性ペースト。
【請求項2】
前記蛍光物質は、沸点が200℃以下の蛍光物質である請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記蛍光物質は、cis−スチルベンである請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性粒子と前記蛍光物質の含有質量比(導電性粒子:蛍光物質)は、99.9:0.1〜97:3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成される配線パターン又は導体配線の検査方法であって、
前記導電性ペーストに含有されている蛍光物質の励起波長を含む光を前記配線パターン又は導体配線が形成された基板に照射し、その反射光によりパターン又は配線部の存在を検出する工程を含む検査方法。

【公開番号】特開2013−25971(P2013−25971A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158650(P2011−158650)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【復代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
【Fターム(参考)】