説明

導電性ポリカーボネートコンポジット材料の製造方法

本発明は、酸官能化カーボンナノチューブを溶融ポリカーボネートに分散させる、熱可塑性ポリカーボネートおよびカーボンナノチューブベースの導電性ポリカーボネートコンポジット材料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸官能化カーボンナノチューブを溶融ポリカーボネートに分散させる、熱可塑性ポリカーボネートおよびカーボンナノチューブベースの導電性ポリカーボネートコンポジット材料の製造方法に関する。以下、カーボンナノチューブを要すればCNTと略記する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、高結晶性炭素の化学構造と広い表面積との両方に基づく多数の非常に優れた特性を有する。
【0003】
先行技術によると、カーボンナノチューブは、主に直径が3〜100nmであり、長さが直径の数倍である円筒状カーボンチューブを意味すると理解される。上記チューブは、規則正しい炭素原子の1以上の層を備え、さまざまなモルホロジーのコアを有する。上記カーボンナノチューブは例えば「カーボンフィブリル」または「中空カーボンファイバー」とも呼ばれる。
【0004】
カーボンナノチューブは技術文献で長い間知られている。一般的に飯島(文献:S.Iijima,Nature 354,56〜58,1991)がナノチューブの発見者と言われているが、この材料、特に、いくつかのグラファイトの層を有する繊維状グラファイト材料は、1970年代および1980年代前半から既に知られている。TatesおよびBaker(GB 1469930A1,1977およびEP 56004 A2)は、炭化水素の触媒分解による非常に細かい繊維状炭素の蒸着を最初に開示している。しかしながら、短鎖炭化水素ベースで製造されるこの炭素フィラメントは、その直径に関してあまり詳細に同定されていない。
【0005】
これらのカーボンナノチューブの常套の構造は、円筒型ではない。円筒構造の中で、シングルウォールモノ−カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ)とマルチウォール円筒状カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ)とを区別する。製造に関する通常の方法は、例えばアーク法(アーク放電)、レーザーアブレーション、蒸気相からの化学蒸着(CVD法)および蒸気相からの触媒化学蒸着(CCVD法)である。
【0006】
Iijima,Nature 354,1991,56〜8は、アーク法における2以上のグラファイト層を備え、継ぎ目なしに閉じられた円筒に丸められており、互いに挿入されているカーボンチューブの生成を開示している。回転ベクトルに依存して、カーボンファイバーの長手軸に関して炭素原子のキラル配置およびアキラル配置が可能である。
【0007】
単一の連続グラファイト層(いわゆるスクロール型)または中断されたグラフェン層(いわゆるタマネギ型)がナノチューブの構造の基盤であるカーボンチューブの構造は、Bacon等,J.Appl.Phys.34,1960年,283〜90によって最初に開示されている。この構造はスクロール型といわれている。対応する構造は、後にZhou等,Science,263,1994年,1744〜47およびLavin等,Carbon 40,2002年,1123〜30によっても発見されている。しかしながら、CNTの高い表面活性度は下記欠点を有する。CNTは機械的に非常に安定な凝集体を形成し、そのサイズは、マイクロメートル範囲であり、その結合の再分解は非常に困難である。従って、液体またはポリマーマトリクス中のCNTの解凝集の問題を解決する試みはこれまでなかった。
【0008】
Xiao−Lin Xie,Yiu−Wing MaiおよびXing−Ping Zhouは、2005年の総説“Materials Science and Engineering R 49,89〜112”にカーボンナノチューブの解凝集または凝集の回避、および良好な分散の重要性を開示している。常套の充填剤含量のポリマーの製造のための一般的な配合方法は、マイクロスケールの充填剤をナノスケールの充填剤で置き換え、高性能ポリマーを製造する最も単純な方法である。しかしながら、ナノ充填剤のポリマーマトリクスへの分散は、著しい凝集傾向のために非常に困難である。ポリマー/CNTコンポジットの分散を改良するために、高性能分散法、例えば超音波技術および高速剪断ユニット、を用いる。しばしば、超音波の使用が可能なように溶液で行われる。
【0009】
Hilding,Grulke,ZhangおよびLockwoodは、2003年の総説“Journal of Dispersion Science and Technology,第24巻,第1号,1〜41頁,2003年”に液体中のナノチューブの分散性および均質化の重要性を記載している。このカーボンナノチューブの製造方法では、機械的に絡み合ったかまたは凝集した異なるモルホロジーの混合物が生じる。凝集ナノ粒子は、異なる機械的特性を有する材料の開発のために、しばしば液体中で懸濁しなければならない。
【0010】
総説“Polymer Nanocomposites Containing Carbon Nanotubes,Macromolecules 2006,39,5194〜5205”の著者であるMoniruzzamanおよびWineyは、カーボンナノチューブを有するナノコンポジットの製造に関する当時の最新の先行技術および均質性の重要性を非常に包括的に開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、できるだけ多くの孤立CNTが存在するポリカーボネート−CNTコンポジット材料の製造方法であって、得られるポリマーコンポジット材料の機械的特性および電気的特性が改良されるポリカーボネート−CNTコンポジット材料の製造方法を開発することである。本発明の別の目的は、孤立CNTが存在し、CNTの凝集塊および凝集体ができるだけ少ししか存在しないCNT材料を製造することである。凝集塊および凝集体は、物理的におよび/または化学的に互いに結合した多数の粒子を含む小さな粒子(ここではCNTファイバー)の集積を意味すると理解される。凝集塊は、分散中に、凝集体よりも容易に個々の粒子に分解する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ポリカーボネート分子の酸官能化CNTの表面上への化学的グラフト化によって、材料の混合中の解凝集が高度に可能であり、CNTの再凝集が大いに妨げられることが分かった。
【0013】
本発明は、第1工程においてカーボンナノチューブを酸化剤で処理してCNT上に酸基を生じ、第2工程において酸官能化CNTをポリカーボネートおよびエステル交換触媒と混合し、第3工程においてこの混合物を溶融し、剪断力に曝すことを特徴とする、導電性カーボンナノチューブ−ポリカーボネートコンポジット材料の製造方法を提供する。
【0014】
使用される酸化剤は、好ましくは下記群の酸化剤である:硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウムおよび硫酸またはこれらの試薬の可能な混合物。好ましくは硝酸または硝酸と硫酸との混合物、特に好ましくは硝酸を使用する。
【0015】
全てのルイス酸および弱いブレンステッド酸が原理的にエステル交換の触媒に好適である。配位子は、好ましくはσ−πドナー特性を有するべきである。
【0016】
ポリカーボネートのカップリングに使用されるエステル交換触媒は、好ましくは下記群から選択されるエステル交換触媒である:チタンテトラブタノレート(titanium tetrabutanolate)、BF、AlCl、SiCl、PF、Ti4+、Cr3+、Fe3+、Cu2+、SiFおよびNa
【0017】
成分、酸官能化CNT、ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の第2工程および第3工程における混合、溶融および剪断力への曝露を1つの反応スペースにおいて行うと特に有利である。
【0018】
第3工程における剪断力への曝露をポリカーボネートのガラス転移温度よりも100℃上まで、好ましくは80℃上までの温度において行うと更に好ましい方法の追加の利点が現れる。
【0019】
本発明との関連で、カーボンナノチューブは、シングルウォールまたは円筒型の、スクロール型のもしくはタマネギ型構造を有するマルチウォールカーボンナノチューブである。好ましくは、円筒型、スクロール型またはそれらの混合物のマルチウォールカーボンナノチューブが用いられる。
【0020】
カーボンナノチューブは、特に完成コンパウンド中のポリマーとカーボンナノチューブとの混合物に対して0.01〜10wt.%、好ましくは0.1〜5wt.%の量で用いられる。マスターバッチでは、カーボンナノチューブの濃度は、要すれば、より高くてもよい。
【0021】
特に好ましくは、長さ対外径の比が5よりも大きく、好ましくは100よりも大きいカーボンナノチューブを使用する。
【0022】
カーボンナノチューブは、特に好ましくは、特に平均径0.05〜5mm、好ましくは0.1〜2mm、特に好ましくは0.2〜1mmの凝集塊の形態で用いられる。
【0023】
用いられるカーボンナノチューブは、特に好ましくは本質的に平均径3〜100nm、好ましくは5〜80nm、特に好ましくは6〜60nmである。
【0024】
本出願人は、1つの連続または中断グラフェン層しか有さない上記既知のスクロール型のCNTとは対照的に、スタックに組み合わされており、ロールアップされているいくつかのグラフェン層を備えるCNT構造体(マルチスクロール型)もまた発見した。これらのカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ凝集塊は、例えば、まだ非公開の願番10 2007 044 031.8のドイツ国特許出願の対象物である。その内容もまたこのCNTおよびその製造に関して、本明細書中、この出願の開示内容に含む。このCNT構造は、マルチウォール円筒状モノカーボンナノチューブの構造(円筒状MWNT)〜シングルウォール円筒状カーボンナノチューブの構造(円筒状SWNT)に相当する単純なスクロール型のカーボンナノチューブと関係がある。
【0025】
タマネギ型構造とは対照的に、これらのカーボンナノチューブ中の個々のグラフェンまたはグラファイト層は、断面で見ると、CNTの中央から外縁まで明らかに中断なく連続的に延びている。このことは、例えば他の材料のチューブ骨格への改良された早いインターカレーションを可能にできる。なぜなら、単純なスクロール構造を有するCNT(Carbon 34,1996,1301〜3)やタマネギ型構造を有するCNT(Science 263,1994,1744〜7)と比較して、より多くの開いたエッジがインターカレートの入口ゾーンとして利用可能であるからである。
【0026】
現在カーボンナノチューブの製造に関して知られている方法としては、アーク法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くで、カーボンブラック、アモルファスカーボンおよび直径の大きな繊維が副生成物として生成される。触媒法では、支持触媒粒子上の堆積とin situで生成される直径がナノメートル範囲の金属核上の堆積(いわゆるフロープロセス)との区別が行われる。反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒蒸着(以下、CCVD;触媒炭素蒸着(catalytic carbon vapour deposition))による製造の場合、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよび別の炭素含有遊離体が利用可能な炭素供与体として言及される。従って、触媒プロセスで得られるCNTが好ましく用いられる。
【0027】
触媒は、概して、金属、金属酸化物または分解性または還元性金属成分を含む。例えば、Fe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cuおよび別の亜族元素が先行技術で触媒用金属として言及されている。個々の金属は、通常、実際、カーボンナノチューブの形成を補助する傾向があるが、先行技術によると、上記金属の組み合わせベースの金属触媒を用いて高収率およびアモルファスカーボンの低い含量が有利に達成される。従って、混合触媒を使用して得られるCNTが好ましく用いられる。
【0028】
CNTの製造に特に有利な触媒システムは、Fe、Co、Mn、MoおよびNiの群からの2種類以上の元素を含む金属または金属化合物の組み合わせベースである。
【0029】
カーボンナノチューブの生成および生成されるチューブの特性は、触媒として使用される金属成分または数種類の金属成分の組み合わせ、任意に使用してもよい触媒支持材料および触媒と支持体との相互作用、遊離体ガスおよびその分圧、水素または別のガスの混合、反応温度および滞留時間および使用されるリアクターに複雑な方法で依存することが経験的に知られている。
【0030】
カーボンナノチューブの生成に特に好ましく用いられる方法は、WO 2006/050903 A2で知られている。
【0031】
これまで、様々な触媒システムを使用して言及した様々な方法で、様々な構造のカーボンナノチューブが製造され、これらは主にカーボンナノチューブパウダーとしてこのプロセスから除去できる。
【0032】
本発明に更に好ましく好適なカーボンナノチューブは、原則的に下記参考文献に記述されている方法によって得られる。
【0033】
直径100nmのカーボンナノチューブの製造は、最初にEP 205 556 B1に記載された。軽い(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核もしくは二核芳香族)炭化水素および炭素支持化合物を800℃〜900℃の温度において分解する鉄ベースの触媒が製造に用いられている。
【0034】
WO 86/03455 A1は、3.5〜70nmの一定の直径を有し、アスペクト比(長さ対直径の比)が100よりも大きく、コア領域を有する円筒状構造を有するカーボンフィラメントの製造を記載している。このフィブリルは、フィブリルの円筒軸周りに同心円状に配置された規則正しい炭素原子の多数の連続層で作られている。この円筒状ナノチューブは、CVD法によって炭素含有化合物から金属含有粒子によって850℃〜1,200℃の温度において製造されている。
【0035】
WO 2007/093337 A2は、更に円筒構造を有する常套のカーボンナノチューブの製造に好適な触媒の製造方法も開示している。この触媒を固定床で使用すると、比較的高収率の直径5〜30nmの円筒状カーボンナノチューブが得られる。
【0036】
円筒状カーボンナノチューブの製造に関する比較的異なる経路が、Oberlin,EndoおよびKoyamによって開示されている(Carbon 14,1976,133)。この開示では、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、が金属触媒上で反応する。生成されるカーボンチューブは、ほぼ触媒粒子の直径を有し、その上に更にあまりグラファイトの配置でない炭素が見られる特定のグラファイト中空コアを示す。このチューブ全体は、高温(2,500℃〜3,000℃)における処理によってグラファイト化されうる。
【0037】
今のところ上記方法のほとんど(アーク、スプレー熱分解またはCVD)がカーボンナノチューブの製造に使用される。しかしながら、シングルウォール円筒状カーボンナノチューブの製造は、装置の観点から非常に高価であり、既知の方法によって非常に低い生成速度で進行し、更にしばしば多くの副反応を伴い、このことは高い含量の望ましくない不純物をもたらす(すなわちそのような方法の収率は比較的低い。)。従って、そのようなカーボンナノチューブの製造もまた今のところ産業的に非常に高価であり、従って、それらは特に非常に特殊な用途に少量で用いられる。しかしながら、それらの本発明への使用は、現実的であるが、円筒型またはスクロール型のマルチウォールCNTの使用よりもあまり望ましくない。
【0038】
記載されている互いに挿入されている継ぎ目のない円筒状ナノチューブの形態またはスクロールもしくはタマネギ構造の形態のマルチウォールカーボンナノチューブの製造は、現在、主に触媒法を使用して商業的に比較的多量に行われている。この方法は、通常、上記アークおよび別の方法よりも高い収率を示し、現在、典型的にはkgスケール(世界中で数百キロ/日)で行われている。このようにして製造されるMWカーボンナノチューブは概してシングルウォールナノチューブよりも幾分安価であり、従って、例えば性能向上添加剤として別の材料の中で用いられる。
【0039】
本発明の方法を行うのに可能なポリカーボネートは、好ましくは、原則として、以下に言及されるタイプまたは下記ポリカーボネートの製造方法において言及されているタイプのポリカーボネートである。
【0040】
本発明によるポリカーボネートは、界面法によって製造される。このポリカーボネートの合成方法は、多くの場合、文献に記載されている。一例として、H Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク1964年33頁以降、Polymer Reviews,第10巻,“Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods”,Paul W Morgan,Interscience Publishers,ニューヨーク1965年,第VIII章,325頁、Dres.U.Grigo,K.Kircher and P.R.Muller“Polycarbonate”in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch,第3/1巻,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester,Carl Hanser Verlag Munich,ウィーン1992年,118〜145頁およびEP−A 0 517 044が参照される。
【0041】
この方法によると、最初に水性アルカリ溶液(または懸濁液)に導入されるビスフェノール(または様々なビスフェノールの混合物)の二ナトリウム塩のホスゲン化は、第2の層を形成する不活性有機溶媒または溶媒混合物の存在下において行われる。主に有機相中に存在する生じられるオリゴカーボネートは、好適な触媒を用いて縮合を行い、有機相中に溶解された高分子量ポリカーボネートを生じる。最後に有機相を分離し、ポリカーボネートを様々なワークアップ工程によって有機相から単離する。
【0042】
ポリカーボネートの製造に好適なジヒドロキシアリール化合物は、式(2)
HO−Z−OH (2)
〔式中、
Z は、炭素原子を6〜30個有し、1以上の芳香核を含んでいてもよく、置換されていてもよく、脂肪族もしくは脂環式基またはブリッジメンバーとしてのアルキルアリールもしくはヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族基である。〕
のジヒドロキシアリール化合物である。
【0043】
好ましくは、式(2)中、Zは、式(3)
【化1】

〔式中、
およびR は、互いに独立して、H、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ハロゲン、例えばClもしくはBr、またはそれぞれ任意に置換されていてもよいアリールもしくはアラルキルであり、好ましくはHまたはC〜C12−アルキル、特に好ましくはHまたはC〜C−アルキル、とりわけ好ましくはHまたはメチルであり、
X は、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたはC〜C−シクロアルキリデンであって、C〜C−アルキル、好ましくはメチルもしくはエチルによって置換されていてもよいものであるか、または更にC〜C12−アリーレンであって、任意にヘテロ原子を含む別の芳香環と縮合していてもよいものである。〕
の基である。
【0044】
好ましくは、Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、または式(3a)もしくは(3b)
【化2】

〔式中、
およびR は、それぞれのXに関して個々に選択され、互いに独立して水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、
n は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
但し、少なくとも1つの原子Xにおいて、RおよびRは、同時にアルキルである。〕
の基である。
【0045】
ジヒドロキシアリール化合物の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの核アルキル化および核ハロゲン化化合物である。
【0046】
本発明によって使用されるポリカーボネートの製造に好適なジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、およびそれらのアルキル化、核アルキル化および核ハロゲン化化合物である。
【0047】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0048】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0049】
これらのジフェノールおよび別の好適なジフェノールは、例えばUS−A 2 999 835、3 148 172、2 991 273、3 271 367、4 982 014および2 999 846、ドイツ国公開特許第1 570 703号、第2 063 050号、第2 036 052号、第2 211 956号および第3 832 396号、フランス国特許明細書第1 561 518号、モノグラフ“H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク1964年,28頁以降;102頁以降”、および“D.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000年,72頁以降”に記載されている。
【0050】
ホモポリカーボネートの場合、1種類のジフェノールのみを用い、コポリカーボネートの場合、2種類以上のジフェノールを用いる。使用されるジフェノールは、別の化学薬品および合成に添加される助剤物質と同様に、その合成、処理および貯蔵に由来する不純物で汚染されていてもよい。しかしながら、できるだけ純粋な原料を扱うことが望ましい。
【0051】
分子量の調節に必要とされる単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールもしくはアルキルフェノール、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノール、iso−オクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸の酸塩化物またはこれらの連鎖停止剤の混合物を、ビスフェノレートと共に反応に供給するか、またはホスゲンもしくはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する所望の時点においてまたは、連鎖停止剤として酸塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合、生じるポリマーの十分なフェノール性末端基が利用可能な合成の所望の時点において添加する。しかしながら、好ましくは連鎖停止剤は、ホスゲン化後にホスゲンが存在しないが触媒がまだ計量添加されていない位置もしくは時点において添加されるか、または触媒の前に、触媒と共にもしくは触媒と平行して計量添加される。
【0052】
同様に、使用される分枝剤または分枝剤混合物は、通常、連鎖停止剤の前に、合成に添加される。トリスフェノール、第4級(quaternary)フェノールまたはトリ−もしくはテトラカルボン酸の酸塩化物、またはこれらのポリフェノールもしくは酸塩化物の混合物が通常使用される。
【0053】
使用される3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のいくつかは、例えば、
フロログルシノール、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、
1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、
1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、
トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、
2,2−ビス−(4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、
2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、
テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン
である。
【0054】
別の三官能性化合物のいくつかは、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0055】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0056】
界面合成において使用される触媒は、第3級アミン、特にトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジンまたはN−i/p−プロピルピペリジン;第4級アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム/トリブチルベンジルアンモニウム/テトラエチルアンモニウム ヒドロキシド/クロリド/ブロミド/ハイドロゲンスルフェート/テトラフルオロボレート;およびこれらのアンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物である。これらの化合物は、典型的な界面触媒として文献に記載されており、市販されており、当業者によく知られている。触媒は、単独で、混合物で、または並んで連続して、要すればホスゲン化前に合成に添加してもよいが、オニウム化合物またはオニウム化合物の混合物を触媒として使用しない場合、ホスゲンの導入後の計量添加が好ましい。従って、ホスゲンの計量添加前の添加が好ましい。触媒の計量添加は、実質的に、不活性溶媒中で、好ましくはポリカーボネート合成の溶媒中で、または更に水性溶液として、第3級アミンの場合、酸、好ましくは鉱酸、特に塩化水素酸、とのアンモニウム塩として行ってもよい。数種類の触媒を使用するかまたは触媒の総量の部分量を計量添加する場合、もちろん様々な位置または様々な時間において異なる計量添加の方法を行うことも可能である。使用される触媒の総量は、用いられるビスフェノールのモルに対して0.001〜10mol%、好ましくは0.01〜8mol%、特に好ましくは0.05〜5mol%である。
【0057】
ポリカーボネートに常套の添加剤を本発明によるポリカーボネートに常套の量で添加してもよい。添加剤の添加は、使用期間や色を長く保つのに役立つ(安定剤)か、加工を単純にするのに役立つ(例えば離型剤、流動助剤、帯電防止剤)か、またはポリマーの特性をあるストレスへの曝露に適合させるのに役立つ(耐衝撃性改良剤、例えばゴム;防炎加工剤、着色剤、グラスファイバー)。
【0058】
これらの添加剤はポリマー溶融物に個々に添加しても所望の混合物で添加してもいくつかの異なる混合物で添加してもよく、特にポリマーの単離中にまたはグラニュールの溶融後にいわゆる配合工程中に直接添加する。この関連で、添加剤または添加剤混合物は、ポリマー溶融物に固体として、すなわちパウダーとして、または溶融物として添加されうる。別のタイプの計量添加は、添加剤または添加剤混合物のマスターバッチまたはマスターバッチの混合物の使用である。
【0059】
好適な添加剤は、例えば“Additives for Plastics Handbook,John Murphy,Elsevier,オックスフォード1999年”や“Plastics Additives Handbook,Hans Zweifel,Hanser,ミュンヘン2001年”に記載されている。
【0060】
好ましい熱安定剤は、例えば通常有機基が完全にまたは部分的に任意に置換されていてもよい芳香族基からなる有機ホスファイト、ホスホネートおよびホスファンである。用いられる紫外線安定剤は、例えば置換ベンゾトリアゾールである。これらおよび別の安定剤は単独で使用されても組み合わせで使用されてもよく、上記形態でポリマーに添加される。
【0061】
更に加工助剤、例えば通常長鎖脂肪酸の誘導体である離型剤、を添加してもよい。例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレートおよびグリセロールモノステアレートが好ましい。これらは、単独でまたは混合物で使用され、好ましくは組成物の重量に対して0.02〜1wt.%の量で使用される。
【0062】
好適な難燃添加剤は、ホスフェートエステル、すなわち、トリフェニルホスフェート、レソルシノール二リン酸エステル、臭素含有化合物、例えば臭素化リン酸エステル、臭素化オリゴカーボネートおよびポリカーボネート、および好ましくはフッ素化有機スルホン酸の塩である。
【0063】
好適な耐衝撃性改良剤は、例えばポリブタジエンゴム、アクリレートゴム(好ましくはエチルまたはブチルアクリレートゴム)およびエチレン/プロピレンゴムの少なくとも1種類から選択される1以上のグラフトベース、並びにスチレン、アクリロニトリルおよびアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)の群のモノマーの少なくとも1種類から選択されるグラフトモノマーを含むグラフトポリマー、またはメチルメタクリレートもしくはスチレン/アクリロニトリルがグラフトしているシロキサンとアクリレートとの相互浸透ネットワークである。
【0064】
更に、着色剤、例えば有機染料もしくは顔料、または無機顔料、IR吸収剤を、個々に、混合物でまたは安定剤、グラスファイバー、ガラス(中空)ビーズもしくは無機充填剤との組み合わせで添加してもよい。
【0065】
この新規の方法を用いてポリカーボネートマトリクスにおけるカーボンナノチューブの孤立が可能になる。しかしながら、このコンポジット材料を更にポリカーボネート被覆孤立カーボンナノチューブを製造するために使用してもよい。
【0066】
実際、本発明は、更に、上記新規の方法から得られるポリカーボネート−カーボンナノチューブコンポジット材料を溶媒中に溶解し、得られる溶液を遠心分離し、孤立させられたポリカーボネート被覆カーボンナノチューブを溶液から分離させることを特徴とする、ポリカーボネート被覆カーボンナノチューブの製造方法も提供する。
【0067】
この関連で、好ましい方法は、溶媒が下記群から選択されることを特徴とする:塩化メチレン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミド、好ましくはジメチルホルムアミド。
【実施例】
【0068】
出発物質:(処方)
【0069】
(a)カーボンナノチューブ(CNT)
製造:
カーボンナノチューブ(タイプBaytubesTMCNT WFA 147;製造業者:Bayer MaterialScience AG)を還流のもと65%強度硝酸で1時間処理し、次に水で洗浄水が中性になるまで数回洗浄し、次に乾燥した。このようにして製造されたカーボンナノチューブは定量的な酸官能価がBaytubesTM1グラムあたり酸基1meq.であり、下記6つの濃度で用いた(ポリマー+カーボンナノチューブの混合物に対する。):
0.01wt.%、0.1wt.%、1.0wt.%、2.0wt.%、5.0wt.%および10wt.%
【0070】
(b)ポリカーボネート(PC)
使用したポリカーボネート成分は、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)である(タイプMakrolonTM2808;製造業者:Bayer MaterialScience AG)。
【0071】
(c)エステル交換触媒
エステル化またはエステル交換の触媒に、Ti(IV)ブトキシド(Ti(OBu)、CAS:5593−70−4)をいずれの場合もポリマー+カーボンナノチューブ+エステル交換触媒の混合物全体に対して0.1wt.%の量で用いた。
【0072】
実験手順
二重反転二軸混練ユニットを有し、容積50mLのニーダー(製造業者:Haake、タイプHaake Rheomix R600P)を開始温度約220℃に予熱した。この温度に到達すると、ニーダーを始動させ、ポリカーボネートとカーボンナノチューブと触媒との混合物(約45g)を、ホッパーを通じて上から30秒間で回転混練フックの間に添加した。ニーダーシャフトの回転速度は100rpmであった。
【0073】
3成分(ポリカーボネート、カーボンナノチューブおよびTi(OBu))の添加を完了すると、時間を開始した。反応、処理および混合の継続時間を30分間にセットした。30分を超えて反応時間を延長することは、潜在的に高いグラフト度をもたらすが、同時にポリマーの大きな分解をもたらす。対照的に、短い処理時間は、より少ないグラフトおよび材料に対するより少ないダメージをもたらす。
【0074】
30分の反応時間後、混練動作を停止させ、ニーダーを開けた。生じられるコンポジットは、混練チャンバーおよび混練フックからスパチュラによって溶融状態で機械的に掻き出されうる。除去処理を約10分間行い、その間生成物は周囲温度において溶融状態のままであった。短い継続時間および/または不活性ガス雰囲気に関する除去の最適化が大きな工業規模においても必要である。
【0075】
除去後、材料を室温に自然冷却し、冷却状態で更に分析しうる。
【0076】
透過型電子顕微鏡(TEM)写真は、6つの実験のナノコンポジットの80μmの薄片においてカーボンナノチューブの分散を示した。チューブが非常に均質に分散され、互いに孤立して存在することが分かった。このナノチューブの製造プロセス中に生じられる凝集体は分解され、新しい凝集体の生成傾向がうまく妨げられた。ナノテクノロジーの利点が最適な形で利用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程においてカーボンナノチューブを酸化剤で処理してCNT上に酸基を生じ、第2工程において酸官能化CNTをポリカーボネートおよびエステル交換触媒と混合し、第3工程において該混合物を溶融し、剪断力に曝すことを特徴とする、導電性カーボンナノチューブ−ポリカーボネートコンポジット材料の製造方法。
【請求項2】
硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウムおよび硫酸またはこれらの試薬の可能な混合物を酸化剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該エステル交換触媒が、チタンテトラブタノレート、BF、AlCl、SiCl、PF、Ti4+、Cr3+、Fe3+、Cu2+、SiFおよびNaの群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第2および第3工程における成分の混合、溶融および剪断力への曝露を1つの反応スペースにおいて行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第3工程における剪断力への曝露を、ポリカーボネートのガラス転移温度よりも100℃上まで、好ましくは80℃上までの温度において行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリカーボネート−カーボンナノチューブコンポジット材料を溶媒に溶解し、得られる溶液を遠心分離し、ポリカーボネート被覆孤立カーボンナノチューブを該溶液から分離することを特徴とする、ポリカーボネート被覆カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項7】
該溶媒が、塩化メチレン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミドの群から選択され、好ましくはジメチルホルムアミドであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505476(P2011−505476A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536355(P2010−536355)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009969
【国際公開番号】WO2009/071220
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】