説明

導電性ポリマー組成物、導電性加硫ゴム、並びに導電性ゴムローラ及び導電性ゴムベルト

【課題】 導電性ゴムローラ等に用いられる導電性ポリマー組成物の体積固有抵抗値を低くすると共に、圧縮永久ひずみも小さくし、かつ、製品使用後の焼却時等の有毒ガスの発生を抑え、環境に優しいゴム製品を得る。
【解決手段】 非ハロゲン系ポリマーと、スルホン酸、又は、グルコン酸等の非ハロゲン系第4級アンモニウム塩とを含む、非ハロゲン系である導電性ポリマー組成物により、導電性ゴムローラ等のゴム製品を作製する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性ポリマー組成物、導電性加硫ゴム、並びに導電性ゴムローラ及び導電性ゴムベルトに関し、詳しくは、コピ−機、プリンター等の帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、転写ベルト等に有効に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】コピ−機、プリンター等に用いる帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、転写ベルトにおいては、適度の安定した電気抵抗値を持たせる必要がある。従来、この種のローラやベルトに導電性を付与する方法として、ゴム中に金属酸化物の粉末やカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した電子導電性ゴムを用いる方法と、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを用いる方法がある。
【0003】上記導電性充填剤を配合した電子導電性ゴムを用いた導電性ローラまたは導電性ベルトにおいては、その電気抵抗値が印加電圧に依存し、一定の電気抵抗値を備えていない問題がある。特に、導電性充填剤としてカーボンブラックを使用した場合、カーボンブラックの添加量とゴムの体積固有抵抗との間に安定した相関関係が見られず、かつ、カーボンブラックの添加量のわずかな変化により電気抵抗値が急激に変化する領域があるため、電気抵抗値の制御が非常に困難になる。なお、導電性ゴム材料の体積固有抵抗とローラに成形後のローラ電気抵抗値とは後述するように定式で換算され、ローラ(あるいはベルト)の形状により変化する。
【0004】また、ゴム中で導電性充填剤が均一に分散し難いことから、ローラやベルトの周方向や幅方向で電気抵抗値がばらつきを持つという問題もある。さらに、電気抵抗値の大きなばらつきが低減されたとしても、μmオーダーの微少な範囲での電気抵抗値のばらつきは依然として存在する。このことから、デジタル化、カラー化等、高画質化の技術のめざましい最近においては、電子導電性ゴムでなく、イオン導電性ゴムの方が特に好んで用いられる傾向にある。
【0005】一方、上記イオン導電性ゴムの導電剤としては、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル構造を含む導電性オリゴマーや導電性可塑剤がある。しかし、上記導電剤を用いたイオン導電性ゴムでは、感光体を汚染しやすい問題がある。
【0006】上記以外に、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やウレタンゴムを用いる方法もあるが、ゴム材料の体積固有抵抗値は109.6Ωcm(ローラの電気抵抗値は108.2Ω)以上の抵抗値しか得られず、転写ベルトや転写ローラでもカラー用のもの等、比較的低い電気抵抗値が要求されるものには対応できない。
【0007】従って、上記した用途や、一部の帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ等にはエピクロルヒドリンゴムを単独または他の材料とブレンドして用いることが一般的であり、種々の提案がなされている。
【0008】また、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムに、過塩素酸イオン又は塩化物イオンを含む第4級アンモニウム塩を配合することにより、電離度を高め、より低い電気抵抗を実現しようという試みも種々なされている。
【0009】例えば、特開2000−17118号では、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の有機ゴムと、カーボンブラックと、過塩素酸第4級アンモニウム塩等の導電付与剤とを含有することを特徴とする導電性ポリマー組成物により、電気抵抗の位置ばらつきを少なくし、低硬度で圧縮永久ひずみを少なくすることが提案されている。
【0010】さらに、特開平9−132677号では、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴムに、過塩素酸の第4級アンモニウム塩等を配合してなるゴム組成物により、ゴム組成物の導電性の付与及び電気抵抗値の制御を容易にすることが提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開2000−17118号の導電性ポリマー組成物では、電気抵抗のばらつきを少なくし、圧縮永久ひずみを低減できるものの、過塩素酸第4級アンモニウム塩を使用しており、組成物中に塩素を含むため、使用後に焼却処理したり、熱やせん断で分解してリサイクルしようとすると、有毒な塩化水素ガスや、処理条件によっては、ダイオキシンを発生する恐れがあるという問題がある。
【0012】また、特開平9−132677号のゴム組成物では、圧縮永久ひずみの低減が十分でない上に、過塩素酸第4級アンモニウム塩を使用しており、組成物中に塩素を含むため、上記同様に、使用後の焼却処理等により、有毒な塩化水素ガスや、ダイオキシンを発生する恐れがあるという問題がある。
【0013】さらに、イオン導電性ポリマーであるエピクロルヒドリンゴムは、クロロプレンゴム(CR)や塩素化ポリエチレン(CPE)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ビニル(PVC)と同様、ポリマー組成中にハロゲンの一つである塩素を含んでいる。従って、導電性ポリマーにおいて、エピクロルヒドリンゴムを用いた場合にも、上記同様に、有毒な塩化水素ガスや、ダイオキシンが発生する恐れがある。
【0014】近年、環境問題が非常に重要視され、有毒ガスやダイオキシンの発生が大きな社会問題ともなっている。このため、導電性ポリマー組成物においても、焼却時等に有毒ガスやダイオキシンを発生しない材料を開発することが早急に求められている。
【0015】また、導電性ポリマー組成物において、体積固有抵抗を低減するために、過塩素酸イオン又は塩化物イオン等のハロゲン(特に塩素)を含む第四級アンモニウム塩を配合した場合や、エピクロルヒドリンゴム等のハロゲン(特に塩素)を含む導電性ポリマーを配合した場合には、その塩素等のハロゲンの部分が副反応を起こす等の理由で、圧縮永久ひずみを著しく悪化させてしまうという問題もある。
【0016】本発明は、上記した問題に鑑みてなされたもので、焼却時等の有毒物発生を抑制し、また使用後に熱やせん断によって容易に分解できるようにすると共に、体積固有抵抗が低く、圧縮永久ひずみが小さい導電性ポリマー組成物及び導電性加硫ゴムを提供し、さらには、上記組成物を用い、耐久性や寸法安定性に優れ、かつ環境に優しい導電性ゴムローラ及び導電性ゴムベルトを提供することを課題としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、非ハロゲン系ポリマーと、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩とを含み、非ハロゲン系であることを特徴とする導電性ポリマー組成物を提供している。
【0018】上記のように、本発明の導電性ポリマー組成物は、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を用いており、基材ポリマーとハロゲン成分とが副反応を起こすことがないため、圧縮永久ひずみの低減と体積固有抵抗の低減を両立して実現することができる。また、非ハロゲン系ポリマー及び非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を用い、全体として非ハロゲン系としているため、使用後に焼却等の処理を行う場合においても、塩化水素ガス等の有害物質を発生する恐れが無い。これにより、従来のイオン導電性ゴムでは実現できなかった低抵抗で、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、寸法安定性が良く、環境にも優しい導電性ゴムローラあるいは導電性ゴムベルトを提供することができる。
【0019】上記非ハロゲン系第4級アンモニウム塩は、スルホン酸の第4級アンモニウム塩、又は、グルコン酸の第4級アンモニウム塩を、特に好適に用いることができる。上記理由は、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩の骨格構造について鋭意研究した結果、上記2種のアンモニウム塩は、特に電離度が高いため、効率良く低電気抵抗を実現でき、かつ、圧縮永久ひずみを小さくすることができる上に、感光体汚染も抑制することができることに因る。
【0020】非ハロゲン系第4級アンモニウム塩としては、上記2種以外にも、硫酸、硝酸等の第4級アンモニウム塩を用いることができる。このように、比較的強い酸の塩であり、塩素等のハロゲンを含まない構造を持つものが良い。
【0021】非ハロゲン系第4級アンモニウム塩として、具体的には、以下の式1(化1)で示される構造のものが挙げられる。
【0022】
【化1】


【0023】スルホン酸の第4級アンモニウム塩の具体例として、上記式中、Mがp−トルエンスルホン酸残基であるものが挙げられる。(商品名:KP−4728、花王(株)製)
グルコン酸の第4級アンモニウム塩の具体例として、上記式中、Mがグルコノラクトン酸残基であるものが挙げられる。(商品名:KP−4729、花王(株)製)
【0024】上記非ハロゲン系第4級アンモニウム塩の添加量は、使用するポリマーや非ハロゲン系第4級アンモニウム塩の種類により適宜定めることができる。
【0025】また、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩をブレンドすることにより、NBR、ウレタンゴム等、それ単独では低電気抵抗を実現できなかった非ハロゲン系ポリマーを含む導電性ポリマー組成物において、低電気抵抗を実現することができる。
【0026】上記非ハロゲン系ポリマーとしては、ウレタンゴム、NBR、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの共重合体(EO−PO−AGE共重合体)等、従来公知の非ハロゲン系導電性ポリマーから選択される1種または複数種の非ハロゲン系導電性ポリマーを使用することが好ましい。中でも、低電気抵抗を実現できるという観点より、ポリウレタン、NBR、EO−PO−AGE共重合体が好ましい。
【0027】また、低電気抵抗を損なわない範囲で、非ハロゲン系の導電性をもたないポリマーをブレンドしても構わない。上記非ハロゲン系の導電性をもたないポリマーの例としては、NR、IR、SBR、BR等の各種合成ゴム、あるいは、天然ゴム、さらには、SEBS、SEPS、SEEPS等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0028】上記非ハロゲン系ポリマーには、特にNBRを含んでいることが好ましい。NBRを含んでいることにより、イオンが動きやすくなり、イオンの輸送効率が高くなるので、体積固有抵抗を下げることができると共に、圧縮永久ひずみも低減することができる。またNBRとしては、高分子量NBRと液状NBRの混合物が特に好適に用いられる。
【0029】上記導電性ポリマー組成物を加硫した導電性加硫ゴムにおいて、JIS K6262に記載の加硫ゴムの永久ひずみ試験法にて、測定温度70℃、測定時間24時間で測定した圧縮永久ひずみの大きさが25%以下としている。これは、上記圧縮永久ひずみの値が25%より大きいと、ローラになった時の寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さないためである。特に、発泡体として用いる(スポンジにする)場合、発泡倍率や発泡形態によって幾分の差は生じるが、上記範囲であることが好ましい。
【0030】本発明の導電性ポリマー組成物は、その体積固有抵抗値を107.0Ωcm〜109.5Ωcmの範囲とすることが好ましい。これは、体積固有抵抗値が107.0Ωcmより小さい導電性ポリマー組成物をイオン導電性ゴムで実現することが困難であり、カーボン導電等電子導電性樹脂に頼るしかないためである。また、体積固有抵抗値が109.5Ωcmより大きいと、ゴムローラやゴムベルトとした際に、転写や帯電、トナー供給等の効率が低下し実用に適さなくなるという問題があるためである。なお、体積固有抵抗値の測定条件は、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下、印加電圧500Vとしている。
【0031】また、上記非ハロゲン系ポリマーとしては、エチレンオキサイド(EO)ユニット含有ポリマーが好ましい。導電性ポリマー組成物中、導電性が発揮されるのは、ポリマー中のオキソニウムイオンや金属陽イオン(例えばポリマー老化防止剤中に含まれるニッケルイオン等)、あるいはアンモニウムイオン(第4級アンモニウム塩による)が、エチレンオキサイドユニット等で安定化され、その部分の分子鎖のセグメント運動により運搬されることによるものである。従って、エチレンオキサイドユニット等の比率が高い方が多くのイオンを安定化でき、低抵抗化を実現できる。
【0032】上記効果は、NBRにおいても、同様である。NBRではシアノ基を有しているが、シアノ基は強い電子吸引性のため、π電子分布が窒素原子に偏っている。よって、シアノ基はマイナスにチャージされる。これに対し分子中の陽イオンが配向したマトリックスを形成する。このように、イオンがゴム分子の熱運動で送られて移動し、導電性が得られる。
【0033】よって、上記非ハロゲン系ポリマーの好ましい組み合わせとして、NBRとEOの含有率が高いものが挙げられる。中でも、NBRと、EO含有率を高めたエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)三元共重合体とのブレンド物とするのが好ましい。これにより、体積固有抵抗を効率良く下げることができる。
【0034】上記EO−PO−AGE三元共重合体は力学物性が良好であり、かつEO−PO−AGE三元共重合体と相溶性の高いNBR、とりわけ中ニトリル、中高ニトリル、極高ニトリルの各種NBRをブレンドすると、圧縮永久ひずみや硬度等の物性の面でも非常に良好な組成物が得られる。
【0035】また、上記EO−PO−AGE三元共重合体を非ハロゲン系ポリマーとして用い、これに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合すると、効率良く、電気抵抗を低下することができるため、高価なEO−PO−AGE三元共重合体の使用量を減らして、低電気抵抗を実現できる。このように、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩と組み合わせることにより、コストも低減しながら効率よく電気抵抗を低下することができる。
【0036】加硫系としては、低電気抵抗と低汚染性とを両立できるので、硫黄加硫系が適している。促進剤の種類としては、ジベンゾチアジルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドを組み合わせていることが好ましい。なお、ジベンゾチアジルジスルフィドのかわりに2−メルカプトベンゾチアゾール等を用いてもよい。特に、硫黄(S)/ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)/テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、あるいは、硫黄(S)/2−メルカプトベンゾチアゾール(M)/テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)の加硫系を、NBRや、NBRとEOの含有率が高い高分子量のEO−PO−AGE3元共重合体のブレンド物に用いると、効率良く共架橋でき、感光体汚染を低減できるとともに、圧縮永久ひずみを低減するため好ましい。
【0037】加硫は、通常の方法によって行うことができ、たとえば水蒸気加圧下の加硫缶中で加硫しても、あるいはプレス加硫によって加硫しても良く、必要に応じて二次加硫を行っても良い。また、過酸化物加硫系により加硫することも可能であり、二次加硫と組み合わせることにより、低汚染性を実現することができる。
【0038】あるいは、塩素等のハロゲンを含まないウレタンゴムに上記非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を加えて導電性ポリマー組成物とする場合、ポリエーテルポリオール等に非ハロゲン系第4級アンモニウム塩と1,4ブタンジオール等のポリオール、必要に応じて界面活性剤や各種添加剤を加えて充分に攪拌する。攪拌した後、減圧下で脱泡した後に、イソシアネートとその反応触媒を加えて注型し、加温してキュアーすると所望のローラやベルトを得ることができる。
【0039】なお、ウレタンゴムに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を加えて導電性ポリマー組成物とする場合、上記に述べるように攪拌と注型、キュアーをすることにより、本発明の導電性ポリマー組成物を得ることができる。
【0040】本発明の導電性ポリマー組成物は、非ハロゲン系ポリマー及び非ハロゲン系第4級アンモニウム塩、加硫剤及び必要に応じて配合する各種配合剤(加硫促進剤、充填剤、受酸剤、老化防止剤等)とを含む非ハロゲン系の組成物であり、これらを溶融混練し、加硫することにより導電性加硫ゴムを製造している。溶融混練は通常の方法によって行うことができる。例えば、オープンロール、密閉式混練機等の公知のゴム混練装置を用いて40℃〜130℃で2〜10分程度、混練りしている。
【0041】上記導電性ポリマー組成物を加硫して得られた導電性加硫ゴムより、導電性ゴムローラおよび導電性ゴムベルトを成形している。本発明の導電性加硫ゴムは低い体積固有抵抗を有し、かつ圧縮永久ひずみが小さい点で優れている上に、非ハロゲン系であるので、焼却時に有毒ガスが発生しない。従って、これを用いた導電性ゴムローラにおいては、電気抵抗値が低いため、カラー用の転写ローラや帯電ローラ、トナー供給ローラや現像ローラ等、低い電気抵抗値が要求される場合に、特に好適に用いられ、熱やせん断によって分解させる時も有毒ガスを発生させず、環境に優しい製品を提供することができる。
【0042】上記導電性ゴムローラは、常法により作成でき、例えば、上記導電性ポリマー組成物(混練物)を単軸押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を160℃、10〜60分加硫したのち、芯金を挿入し表面を研磨した後、所要寸法にカットしてローラとする等の従来公知の種々の方法を用いることができる。加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めるとよい。また、加硫温度は必要に応じて上記温度に上下して定めてもよい。なお、ウレタンゴムの場合は、配合内容によるが、80℃で12時間、適度キュアーすると良い。
【0043】また、上記導電性ゴムベルトは、上記導電性ポリマー組成物(混練物)を、押出成形機によりベルト状に押し出して成形した後、160℃、10〜60分加硫を行って、ベルト本体を作成する等の従来公知の種々の方法を用いることができる。加硫温度は必要に応じて上記温度に上下して定めてもよい。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の第一実施形態の導電性ポリマー組成物は、非ハロゲン系ポリマー及び非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を含んでおり、非ハロゲン系の組成物としている。
【0045】上記非ハロゲン系ポリマーとして、エチレンオキサイドユニット含有ポリマーであるエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)三元共重合体と、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とのブレンド物を用いている。上記EO−PO−AGE三元共重合体において、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの共重合比率は、90モル%/4モル%/6モル%であり、数平均分子量Mnは80000としている。上記EO−PO−AGE三元共重合体を25重量部、アクリロニトリルブタジエンゴムを75重量部の割合で混合している。
【0046】上記非ハロゲン系第4級アンモニウム塩として、グルコノラクトン酸の第4級アンモニウム塩を5重量部配合している。
【0047】上記導電性ポリマー組成物に加え、加硫剤及び必要に応じて各種配合剤を配合した後、密閉式混練機等の公知のゴム混練装置を用いて溶融混練し、加硫している。これにより、導電性ゴムローラ等に用いられる導電性加硫ゴムを得ている。
【0048】上記導電性加硫ゴムは、JIS K6262に記載の加硫ゴムの永久ひずみ試験法において、測定温度70℃、測定時間24時間で測定した圧縮永久ひずみが22%である。
【0049】また、上記導電性加硫ゴムは、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下、印加電圧500Vの測定条件において、体積固有抵抗値が108.2である。
【0050】また、上記導電性ポリマー組成物を単軸押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を160℃、10〜60分加硫したのち、芯金を挿入し表面を研磨した後、所要寸法にカットして、転写用ローラとしている。図1に示すように、上記転写用の導電性ゴムローラ1は、略円筒形状であり、その内周には軸芯2が挿入されいる。
【0051】これにより、体積固有抵抗値が低く、圧縮永久ひずみも小さいため、寸法安定性、耐久性に優れ、かつ、非ハロゲン系であるため使用後の焼却等の場合にもハロゲンに起因する汚染物質が発生しない導電性ゴムローラを得ることができる。
【0052】なお、本実施形態においては、転写用ローラとして上記導電性ポリマー組成物より導電性ゴムローラを作成したが、該導電性ポリマー組成物は、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ等の導電性ゴムローラとして用いられることはいうまでもない。また、導電性ポリマー組成物に種々の発泡剤を配合して発泡ロール等として用いてもよい。
【0053】なお、非ハロゲン系ポリマーとして、上記EO−PO−AGE三元共重合体のみ、あるいはNBR、ウレタンゴム等を単独で用いてもよいし、他の成分とのブレンド等としてもよいことはいうまでもない。非ハロゲン系第4級アンモニウム塩として、スルホン酸の第4級アンモニウム塩等を用いてもよいことはいうまでもない。
【0054】また、図2に示すように、導電性ポリマー組成物より転写ベルト等の導電性ゴムベルト3を作成している。導電性ゴムベルト3は、2個以上のプーリー4によって張架状態とされ、回転移動する導電性ゴムベルト3の上側の直線状部分5に紙等のシート材6を担持して搬送し、また、感光体上に作られたトナー像をシート材に転写するものである。
【0055】以下、本発明の導電性ポリマー組成物の実施例1〜6及び比較例1〜6について詳述する。
【0056】実施例1〜5および比較例1〜4について、各々下記の表1及び表2に記載の配合からなる材料(配合薬品)を密閉式混練機(DS10−40MWA−S、(株)森山製作所製)により各配合量で混練した。上記混練機からリボン取りしたゴムをローラヘッド押出機により押し出してシート状に成形し、それを金型に仕込んで、160℃で最適時間プレス加硫し、物性評価用の加硫ゴムスラブシートを作製した。
【0057】
【表1】


【0058】
【表2】


【0059】また、実施例6、及び比較例5、6について、表3及び表4に記載の配合に基づき、ポリエーテルポリオールに第4級アンモニウム塩、1,4―ブタンジオール、シリコーン系界面活性剤を加えて汎用の攪拌機で攪拌し、各々を均一に分散させた。分散後、減圧下で脱泡した後に、イソシアネートとその反応触媒を加えて物性評価用のスラブシート作製金型に注型した。注型後、80℃で12時間キュアーし、同じく物性評価用のスラブシートを作製した。
【0060】
【表3】


【0061】
【表4】


【0062】上記各表中の上段(加硫促進剤まで)の数値は重量部である。塩素含有量の単位は重量%であり、圧縮永久ひずみの単位は%である。また、略語EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、AGEはアリルグリシジルエーテル、EPはエピクロルヒドリンを表す。
【0063】また、上記各表中、アクリロニトリルブタジエンゴムとは、通常のアクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に、液状アクリロニトリルブタジエンゴムを50重量部の割合で含有させたものを、各表中の重量部で用いた。
【0064】ハロゲン非含有第四級アンモニウム塩(非ハロゲン系第4級アンモニウム塩)1としては、上述したKP−4729(グルコノラクトン酸塩)を用いた。ハロゲン非含有第四級アンモニウム塩(非ハロゲン系第4級アンモニウム塩)2としては、上述したKP−4728(p−トルエンスルホン酸塩)を各々用いた。
【0065】比較例において、ハロゲン含有第四級アンモニウム塩1として、塩素を含む以下の式2(化2)で示される構造のもの(コータミン86Pコンク、花王(株)製)を用いた。
【0066】
【化2】


【0067】加硫促進剤1はジベンゾチアジルジスルフィド、加硫促進剤2はテトラメチルチウラムモノスルフィド、加硫促進剤3はN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、加硫促進剤4は2−(4′−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、加硫促進剤5はN,N′−ジエチルチオ尿素とした。
【0068】(実施例1乃至実施例6)非ハロゲン系ポリマーとして、アクリロニトリルブタジエンゴムのみ(実施例3)、又は、スチレンブタジエンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴム、又は、EO−PO−AGE三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムを表1に示す配合比にてブレンドして用いた(実施例1〜2、実施例4〜5)。これに、上述した非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を、表1に示す配合比にてブレンドし、上記方法により導電性ポリマー組成物からなる試験片を得た。また、ポリエーテルポリオールとして、分岐を持つ表3に記載のポリエーテルポリオールを用い、さらに短鎖のポリオールとして、1,4―ブタンジオールを用い、これに上述した非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を表3に示す配合比にてブレンドし、上記方法により導電性ポリウレタン組成物からなる試験片を得た(実施例6)。
【0069】(比較例1乃至比較例3)比較例1は、EO−PO−AGE三元共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムを表2に示す配合比にて用い、ハロゲン含有第四級アンモニウム塩を配合した。比較例2は、EO−PO−AGE三元共重合体は用いず、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムを配合し、第四級アンモニウム塩は配合しなかった。非ハロゲン系ポリマーとして、比較例3はアクリロニトリルブタジエンゴムのみを用い、また、比較例4はスチレンブタジエンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムのブレンドを用い、共に第4級アンモニウム塩は配合しなかった。
【0070】上記のように作成した各実施例及び各比較例の導電性ポリマー組成物からなる試験片について、下記の特性測定を行った。その結果を上記表1及び表2の下段に示す。
【0071】(体積固有抵抗値の測定)上記の様に加硫ゴムスラブシート(130mm×130mm×2mm)を作成し、アドバンテストコーポレーション社製のデジタル超高抵抗微小電流計R-8340Aを用いて、23℃相対湿度55%の恒温恒湿条件下、印加電圧500Vとして、JIS K6911に記載の体積抵抗率(体積固有抵抗値)ρV(Ωcm)を測定した。なお、表1、表2には、体積固有抵抗値を常用対数値で示している。
【0072】なお、単層の均一なソリッドローラの場合には、ローラ電気抵抗R(Ω)は、次式の様に表すことができる。
R(Ω) = (ρV/2πν)log10(r1/r2)
上記式中、ρVは体積固有抵抗(Ω・cm)であり、νはロールゴム幅(cm)であり、r1はロール外径(mm)、r2はシャフト外径(mm)である。例えば、ローラの寸法が、r1=15、r2=6、ν=21.8である場合、これらの値を代入すると、理論上、次式の様になる。
log10 R(Ω) = −2.5 + log10 ρVよって、体積固有抵抗値(Ωcm)が107.0〜109.5(Ωcm)であれば、上記寸法のソリッドの転写ローラでは、そのローラ電気抵抗値R(Ω)が104.5〜107.0(Ω)となる。但し、実測値では、上式中の数値2.5は1.3〜2.0となり、ローラ電気抵抗値R(Ω)は105.0〜108.2(Ω)となる。
【0073】(圧縮永久ひずみの測定)JIS K6262「加硫ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定に従い、温度70℃、24時間で測定した。
【0074】表1から分かるように、実施例1〜実施例2及び実施例5はエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの共重合比率が90モル%/4モル%/6モル%であり、数平均分子量Mnが8万であるエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(EO−PO−AGE共重合体)をアクリロニトリルブタジエンゴムに対して重量比25:75、75:25で混合した非ハロゲン系ポリマーに、さらに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合した本発明の導電性ポリマー組成物であり、実施例3はアクリロニトリルブタジエンゴムのみを非ハロゲン系ポリマーとして使用し、さらに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合した本発明の導電性ポリマー組成物である。また、実施例4はアクリロニトリルブタジエンゴムとスチレンブタジエンゴムのブレンド物を非ハロゲン系ポリマーとして使用し、さらに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合したものであり、同じく本発明の導電性ポリマー組成物である。実施例6も表3からわかるように、非塩素、非ハロゲンのポリウレタンに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を含有したものであり、同じく本発明の導電性ポリマー組成物である。
【0075】実施例1〜実施例6の導電性ポリマー組成物からなる試験片は、体積固有抵抗値が107.7Ωcm〜109.0Ωcm及び圧縮永久ひずみは9.8%〜25%であり、このように、実施例1〜実施例6は体積固有抵抗値が低く、圧縮永久ひずみが小さいという優れた特性を有していることが確認できた。また、実施例1〜6は全て塩素含有率は0.0%であり、塩素を含有しないので、使用後の処理時における塩化水素、ダイオキシン発生の問題がないことも確認できた。
【0076】このように、導電性ポリマーを用いているので、低電気抵抗を実現でき、さらに非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合することにより、実施例1、2においては、高価なEO−PO−AGE三元共重合体の使用量を減らして、低電気抵抗を実現でき、コスト的にも有利であった。
【0077】また、実施例3はアクリロニトリルブタジエンゴムのみをポリマーとして使用しているので、実施例1〜2及び実施例4〜6に比べ、圧縮永久ひずみが9.8%と、特に小さかった。また、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合することにより、従来NBR単独では実現できなかった低電気抵抗が得られた。
【0078】一方、表2に示すように、比較例1は、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩に代えて、塩素を含むハロゲン含有第四級アンモニウム塩を配合した点のみが実施例1の配合と異なる組成物であるが、塩素を含むハロゲン含有第四級アンモニウム塩を配合しているため、圧縮永久ひずみが30%と大きく、スペックアウトして不適であった。またハロゲン含有第四級アンモニウム塩を配合しているので、塩素を含有するため、使用後の処理時において、塩化水素やダイオキシンが発生する問題が生じてしまう。
【0079】比較例2は、アクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムを配合し、第四級アンモニウム塩を配合しない組成物であるが、塩素を含有しているエピクロルヒドリンゴムを配合しているので、使用後の処理時において、塩化水素やダイオキシンが発生する問題が生じてしまう。
【0080】比較例3乃至比較例5は、ハロゲンを含有しない導電性ポリマー組成物であるが、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を配合していないため、体積固有抵抗値が109.6Ωcm以上と高く、スペックアウトして不適であった。
【0081】比較例6は、ハロゲン含有第4級アンモニウム塩を配合した点のみが実施例6と異なる組成物であるが圧縮永久ひずみが29%と大きく不適であった。また、塩素を含有するため、使用後の処理時において塩化水素やダイオキシンが発生する問題が生じてしまう。
【0082】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明によれば、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩を用いるので、低い体積固有抵抗を得られる上に、圧縮永久ひずみを低減することができる。また、非ハロゲン系ポリマーと非ハロゲン系第4級アンモニウム塩とを含み、全体として非ハロゲン系であるために、使用後に焼却等の処理を行う場合においても、塩化水素ガス等のハロゲン由来の有害物質が発生する恐れが無い、環境に良い導電性ポリマー組成物とすることができる。
【0083】このように、体積固有抵抗値が低く、耐久性や寸法安定性等の実用性に優れるため、本発明の導電性ポリマー組成物を用いたゴムローラやゴムベルトは、転写ベルトや転写ローラにおいて好適に用いることができる。特に、カラー用、高画質用のもの等、低抵抗を要求されるようなプロセスでも、導電性ゴムローラ及び導電性ゴムベルトとして好適に使用することができ、また、使用後に熱やせん断によって容易に分解できるため、環境に優しい製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの概略図である。
【図2】本発明の導電性ゴムベルトの概略図である。
【符号の説明】
1 導電性ゴムローラ
2 軸芯
3 導電性ゴムベルト
4 プーリー
5 直線状部分
6 シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非ハロゲン系ポリマーと、非ハロゲン系第4級アンモニウム塩とを含み、非ハロゲン系であることを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項2】 上記非ハロゲン系第4級アンモニウム塩は、スルホン酸の第4級アンモニウム塩、又は、グルコン酸の第4級アンモニウム塩である請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の導電性ポリマー組成物を加硫した導電性加硫ゴムにおいて、JIS K6262に記載の加硫ゴムの永久ひずみ試験法にて、測定温度70℃、測定時間24時間で測定した圧縮永久ひずみの大きさが25%以下である導電性加硫ゴム。
【請求項4】 請求項3に記載の導電性加硫ゴムを用いることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項5】 請求項3に記載の導電性加硫ゴムを用いることを特徴とする導電性ゴムベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−226711(P2002−226711A)
【公開日】平成14年8月14日(2002.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−25898(P2001−25898)
【出願日】平成13年2月1日(2001.2.1)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】