説明

導電性ポリマー組成物及びその製造方法

【課題】十分な透明性を維持しつつ、特に導電性と耐久性に優れた透明導電膜を形成するための導電性ポリマー組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンの分散体、ドーパント及び水溶性有機化合物を含有する導電性ポリマー組成物であって、該ポリチオフェンの分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオフェンを主成分とする導電性ポリマー組成物及びその製造方法に関し、更に詳細には、導電性、耐久性が向上した透明導電膜を形成する際に適した導電性ポリマー組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、または電磁波シールド材などの基材のコーティング等に用いられている。
【0003】
最も広く応用されている透明導電膜はインジウム−スズの複合酸化物(ITO)の蒸着膜であるが、高温で成膜を行う必要があり、更に成膜コストが高いという問題点がある。塗布成膜法によるITO膜も、高温成膜が必要であり、その導電性はITOの分散度に左右され、ヘイズ値も必ずしも低くない。
【0004】
また、ITOなどの無機酸化物膜は、基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすい。
【0005】
有機材料の透明導電膜として、低温かつ低コストで成膜可能な導電性ポリマーを用いたものが提案されている。導電性ポリマーとしては、チオフェン、ピロール、アニリン、またはそれらの誘導体を化学酸化重合または電解酸化重合することによって合成したものが多く開示されており、その中でも特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などを中心とする3,4位置換チオフェンの重合体が導電性に優れ、一部実用化も進んでいる。
【0006】
上記PEDOTなどを含むチオフェン誘導体ポリマーの導電性を向上される技術として、特許文献1には水溶性有機化合物を添加することが開示されている。
【0007】
エチレングリコールやジメチルスルホキシドを添加することによって表面低効率が低下することが記載されているが、特に塗布成膜後のポリチオフェンの形態に考慮したポリチオフェン分散体の制御が施されてなく、満足できる導電性には至っていない。
【0008】
一方、導電性ポリマーの分散体の粒子径分布に着目した技術として、特許文献2には、可溶化高分子の分子量を制御することによって導電性ポリマー分散体の微小領域の粒子の体積濃度を増加させることが開示されている。
【0009】
分散体の微小粒子割合を上げることにより、多孔質体内部への浸透性を向上させ、更にドーパントとの組み合わせによって耐熱性も改善されることが記載されているが、直接的に導電性向上を意図した手段ではなく、更に分散体を一方的に微小化する方向性のみの技術であり、十分な導電性に至っているとは言えない。
【0010】
更に非特許文献1には、PEDOT分散体の複数の粒子径分布に着目し、ピークの粒子径が大きくなり更に半値幅も広くなるに従って、抵抗率が減少している実験結果(Fig.6)を開示しており、ゲル粒子の粒界が抵抗に起因しているとの記載がある。
【0011】
しかし、ここでは特に粒子径分布の1つの傾向性を開示したに過ぎず、この因子に着目して更なる導電性向上を追及しているものではない。
【特許文献1】WO2004/106404号公報
【特許文献2】特開2006−185973号公報
【非特許文献1】「Scientific importance,properties and growing applications of poly(3,4−ethylenedioxythiophene)」 Journal of Materials Chemistry,2005,15,2077−2088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述したような従来技術では解決できなかった課題を解決するものであり、本発明の目的は、十分な透明性を維持しつつ、特に導電性と耐久性に優れた透明導電膜を形成するための導電性ポリマー組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンの分散体、ドーパント及び水溶性有機化合物を含有する導電性ポリマー組成物であって、該ポリチオフェンの分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1〜C10のアルキル基であるか、またはR1及びR2とでC1〜C10のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されてもよい)
2.前記粒子径分布のピークの内、最も粒子径が小さいピーク(D1)が1nm以上30nm以下に存在し、小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))の少なくとも1つが50nm以上100nm以下に存在することを特徴とする前記1に記載の導電性ポリマー組成物。
【0017】
3.前記粒子径分布のピークの内、最も粒子径が小さいピーク(D1)を有する粒子径分布領域と小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))を有する粒子径分布領域の固形分の体積比率が、50:50から10:90の範囲であることを特徴とする前記1又は2に記載の導電性ポリマー組成物。
【0018】
4.下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンの分散体、ドーパント及び水溶性有機化合物を含有する導電性ポリマー組成物の製造方法であって、該ポリチオフェンの分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有し、少なくとも最も粒子径が小さいピーク(D1)を有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と水溶性有機化合物を含有する混合体を作製し、小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))を有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と混合することを特徴とする導電性ポリマー組成物の製造方法。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1〜C10のアルキル基であるか、またはR1及びR2とでC1〜C10のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されてもよい)
即ち、本発明者らは、特定のチオフェン誘導体からなる導電性ポリマーの分散体において、その粒子径分布を制御し、更に水溶性有機化合物と組み合わせることによって、従来に達成できなかった優れた導電性を有する導電性ポリマー組成物を得ることを見いだし、本発明に至ったのである。
【発明の効果】
【0021】
十分な透明性を維持しつつ、特に導電性と耐久性に優れた透明導電膜を形成するための導電性ポリマー組成物及びその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
【0023】
<ポリチオフェン分散体>
[ポリチオフェン]
本発明の導電性ポリマー組成物は、主成分として含有される導電性ポリマーとして、前記一般式(1)で表されるチオフェン誘導体を繰り返し単位として含むポリチオフェンを使用する。
【0024】
一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子、C1〜C10のアルキル基、またはR1及びR2とで、C1〜C10のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は種々の置換基により任意に置換されてもよい。
【0025】
1〜C10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などが挙げられる。
【0026】
1及びR2が一緒になって形成されるC1〜C10のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基などが挙げられる。
【0027】
この内、1,2−エチレン基が特に好適である。
【0028】
また、C1〜C10のアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては、C1〜C12のアルキル基、フェニル基などが挙げられる。
【0029】
置換されたC1〜C10のアルキレン基としては、1,2−シクロヘキシレン基、2,3−ブチレン基などが挙げられる。
【0030】
このようなアルキレン基の代表例として、R1及びR2が一緒になって形成されるC1〜C12のアルキル基で置換された1,2−アルキレン基は、エテン、プロペン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、スチレン等の各基のα−オレフィン類を臭素化して得られる1,2−ジブロモアルカン類から誘導される。
【0031】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンとして、具体的には、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシ−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシ−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシ−4−エトキシチオフェン)などを挙げることができる。本発明では、上記の中でも特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いることが好ましい。
【0032】
または、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と上記ポリチオフェンの少なくとも1つ以上を混合して用いることも好ましい態様の1つである。
【0033】
一般式(1)で表されるチオフェン誘導体(モノマー)の合成方法としては公知の方法を適用することが可能で、例えば上記特許文献1に記載されている方法を参考にすることができる。
【0034】
チオフェン誘導体(モノマー)を用いて後述する公知の重合方法によりポリチオフェンを作製し、本発明の導電性ポリマー組成物における上記ポリチオフェンの含有量としては特に制限は無く、任意に選択することができるが、塗布成膜時の取り扱い等の観点から0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
【0035】
[ポリチオフェン重合方法]
一般式(1)で表されるチオフェン誘導体(モノマー)を重合する方法としては、公知の方法を適用することが可能であるが、特に、後述するドーパントの存在下で、酸化重合法により重合することが導電性を向上する観点で好ましい。
【0036】
ドーパントの存在下で重合する場合、その使用量に特に限定は無いが、モノマー100質量部に対して50から1000質量部の範囲であることが好ましく、100から500質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0037】
重合反応を行う際の酸化剤としては公知の種々の酸化剤を使用することが可能で、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、無機酸化第二鉄塩、有機酸化第二鉄塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、過ホウ酸アルカリ塩、酸化銀、酸化セシウム、過酸化水素、オゾン、過酸化ベンゾイル、酸素など。
【0039】
これらの内、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが最も好適である。
【0040】
更に、酸化剤として、必要に応じて触媒量の金属イオン、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムイオンなどを添加しても良い。
【0041】
酸化剤の使用量は、モノマー1モル当たり1から5当量の範囲であることが好ましく、2から4当量の範囲であることが更に好ましい。
【0042】
重合時におけるpHは比較的低いことが好ましく、通常、pHは1.5以下とされる。
【0043】
上記酸化剤の中で、ペルオキソ二硫酸を選択した場合には、これを反応系に加えると通常、pHが1.5以下となるので好適である。反応系には、必要に応じて酸を加えることによりpHを調整することができる。
【0044】
酸としては、水溶性の無機酸及び有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸が使用できる。
【0045】
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などが挙げられる。
【0046】
有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
【0047】
重合反応に用いられる溶媒は水系溶媒であり、好ましくは水である。メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコール、アセトン又はアセトニトリルなどの水溶性の溶媒を水に添加して用いることも可能である。
【0048】
重合を行う際の反応混合液の温度は、0〜100℃であり、副反応を抑制する観点から、好ましくは0〜50℃、更に好ましくは0〜30℃である。
【0049】
重合反応を行う時間は、酸化剤の種類・量、重合温度、反応液のpHなどに依存して、5〜100時間であり、通常は、10〜40時間である。
【0050】
[ポリチオフェン分散体及びその作製方法]
本発明の導電性ポリマー組成物は、上述したポリチオフェンを分散体として含有し、その分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有している。
【0051】
少なくとも2つの凸部を有する粒子径分布であれば、そのピークとなる粒子径、半値幅、分布特性、ピークの数等に特に制限は無い。具体的には、横軸に粒子径、縦軸に頻度を表す模式図として表すと、例えば図1から図3に示すような粒子径分布であるが、これに限定されるものではない。
【0052】
次に、特に図4を用いて、本発明のポリチオフェン分散体の粒子径分布、及びそのような粒子径分布を有する分散体の作製方法をより詳細に説明する。
【0053】
図4に示す通り、最も小さいピークの粒子径をD1、2番目に小さいピークの粒子径をD2、更に3つ目以降のピークがある場合はその粒子径をD3…とすると、それぞれのピークの粒子径はどのような位置にあっても良いが、D1は1nm以上30nm以下に存在することが好ましく、D2以降の少なくとも1つは50nm以上100nm以下に存在することが好ましい。
【0054】
また、ヘイズを低く維持するためには、最も粒子径が大きいピークは300nm以下に存在することが好ましい。
【0055】
半値幅等についても特に限定は無いが、例えばD1を有する粒子径分布領域は比較的狭く、D2以降を有する粒子径分布領域の少なくとも1つは比較的広いという組み合わせは好ましい態様の1つである。
【0056】
少なくとも2つのピークを有する粒子径分布を形成するポリチオフェン分散体の作製方法としては、それぞれのピークを有する粒子径分布領域を形成する分散体を予め各々作製し、最終的に全てを混合する方法によって得ることができる。
【0057】
図4を例にすると、D1を有する粒子径分布領域を形成する分散体、及びD2を有する粒子径分布領域を形成する分散体を予め各々作製し、好ましくは後述する導電性ポリマー組成物の製造方法に従って、最終的に全てを混合する。
【0058】
このとき、それぞれの分散体の混合比に特に制限は無いが、キャリアを効率的に伝達させ導電性を向上させる観点から、D1を有する粒子径分布領域を形成する分散体とD2以降を有する粒子径分布領域を形成する分散体の固形分体積比率が、50:50から10:90の範囲であることが好ましい。
【0059】
次に、任意にピーク粒子径が制御された各々のポリチオフェン分散体の作製方法を説明する。
【0060】
一般式(1)で表されるチオフェン誘導体をドーパントの存在下で公知の方法で重合すると、通常、分散体の形態を有する高次構造として重合体を得ることができる。
【0061】
その際のポリチオフェン分散体の平均粒子径は、主に下記のような制御因子によって任意に制御することが可能であり、2つ以上の制御因子を組み合わせて制御することも好ましい態様の1つである。
【0062】
1.重合条件(温度、pH、反応液撹拌速度、酸化剤濃度・添加速度、…)
2.ドーパントの分子量
3.ドーパントのスルホン化率(ドーパントがポリスルホン酸である場合)
4.重合体(分散体)を微粒化する際の圧力・機械的エネルギー
5.重合体(分散体)の分散性を保持する分散剤や界面活性剤の種類・濃度
上記制御因子1〜5の内、特に2,3について詳細に説明する。
【0063】
ドーパントとして高分子化合物を使用する場合、ドーパントの重量平均分子量を制御することにより、ポリチオフェン分散体の粒子径分布を制御することができる。
【0064】
種々の重合条件やドーパントの種類などにより変動するので特定はできないが、概略の傾向として、ドーパントの重量平均分子量が約300000以下であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は100nm以下となり、重量平均分子量が約120000以下であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は50nm以下となり、質量平均分子量が約70000以下であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は30nm以下となる。
【0065】
ただし、分散性の観点からドーパントの質量平均分子量は5000以上であることが好ましい。
【0066】
ドーパントとしてポリスルホン酸を使用する場合、ドーパントのスルホン化率を制御することにより、ポリチオフェン分散体の粒子径分布を制御することができる。
【0067】
種々の重合条件やドーパントの種類などにより変動するので特定はできないが、概略の傾向として、ドーパントのスルホン化率が約70%以上であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は100nm以下となり、スルホン化率が約90%以上であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は50nm以下となり、スルホン化率が約98%以上であるとポリチオフェン分散体のピーク粒子径は30nm以下となる。ただし、導電性の観点からドーパントのスルホン化率は70%を下回らない方が好ましい。
【0068】
上述した制御因子1〜5については、1つの因子のみでポリチオフェン分散体の粒子径を制御しようとすると、最終的に透明導電膜の導電性や耐久性に悪影響を及ぼすことがあるので、適宜制御因子4を組み合わせるなど、複数の制御因子を併用して制御することが好ましい。
【0069】
本発明の導電性ポリマー組成物に含有されるポリチオフェン分散体の粒子径分布は、市販の粒度測定機を使用することが可能である。
【0070】
特に光子相関法やレーザー回折散乱法による測定機を用いることが好ましく、例えば具体的にはベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5を用いて粒子径分布を測定することができる。
【0071】
<ドーパント>
本発明の導電性ポリマー組成物には、ドーパントが含有されている。
【0072】
ドーパントとしては、本発明で導電性ポリマーとして用いられるポリチオフェンを酸化還元させることにより導電性を向上できるものであれば特に制限は無く、公知の種々の電子吸引性物質や電子供与性物質を適宜使用することができるが、電子吸引性物質を使用することが好ましい。
【0073】
電子吸引性物質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばルイス酸などを挙げることができる。
【0074】
ルイス酸としては、例えばスルホン酸化合物、ホウ酸化合物、リン酸化合物、塩素酸化合物などが挙げられる。
【0075】
スルホン酸化合物としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ショウ脳スルホン酸、ポリビニルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0076】
ホウ酸化合物としては、例えば、テトラフルオロホウ酸などが挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。
【0077】
塩素酸化合物としては、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸などが挙げられる。
【0078】
これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸が特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0079】
本発明の導電性ポリマー組成物におけるドーパントの含有量としては特に制限は無く、任意に選択することができるが、例えば5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
【0080】
前述したポリチオフェン重合の際に存在させたドーパントをそのまま導電性ポリマー組成物に持ち込んでも良く、またはイオン交換樹脂や種々ろ過法などにより含有量を適宜調整しても良い。
【0081】
最終的な透明導電膜の電気抵抗値を所望の程度に制御する目的で、導電性ポリマー組成物中のドーパントの含有量を適宜制御することは好ましい態様である。
【0082】
<水溶性有機化合物>
本発明の導電性ポリマー組成物には、水溶性有機化合物が含有されている。
【0083】
水溶性有機化合物としては、水溶性の有機化合物であれば特に制限は無く、公知のものから適宜選択することが可能である。
【0084】
水溶性の程度としては、例えば25℃の水に対し1質量%以上溶解するものが好ましく、5質量%以上溶解するものが更に好ましい。
【0085】
これら水溶性有機化合物の中で、導電性ポリマー組成物を透明導電膜にした際に表面低効率が顕著に低くなることから、特に酸素含有化合物を好ましく用いることができる。
【0086】
酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限は無く、例えば水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などを挙げることができる。
【0087】
水酸基含有化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でもエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
【0088】
カルボニル基含有化合物としては、例えばイソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0089】
エーテル基含有化合物としては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
スルホキシド基含有化合物としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0091】
これらの中でも、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0092】
水溶性有機化合物の沸点としては特に制限はなく、任意に選択することができるが、例えば120℃以上であることが好ましい。沸点が120℃以上であると、水溶性有機化合物の揮発がなく、導電性ポリマー組成物の電気抵抗率は十分である。
【0093】
本発明の導電性ポリマー組成物における水溶性有機化合物の含有量としては特に制限は無く、任意に選択することができるが、例えば0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0094】
<導電性ポリマー組成物及びその製造方法>
次に、本発明の導電性ポリマー組成物、及びその製造法について説明する。
【0095】
本発明の導電性ポリマー組成物は、ポリチオフェンの分散体とドーパントと水溶性有機化合物を含有し、ポリチオフェン分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有している。
【0096】
透明導電膜中で電子などのキャリアを効率的に伝達するためには、導電性ポリマー分散体の粒子径はより大きく、粒界が少ないほど有利と考えられ、導電膜中で大きい分散体の隙間を埋め導電性ポリマーを密に存在させるために粒子径の小さい分散が並存することが、キャリアの伝達に効率的で導電性向上に起因していると考えている。
【0097】
一方で、上述した水溶性有機化合物は、導電性ポリマー分散体粒子間の粒界に介在することによって、粒界に起因するシールド効果を抑制することによって導電性を向上させているという報告もある。
【0098】
本発明者らは、これらの考え方を応用し、鋭意検討を重ねることによって、本発明を完成するに至ったのである。
【0099】
本発明の導電性ポリマー組成物は、最終的に上述した要件を満たしていれば従来に無い高い導電性を発現し、その製造はどのような方法で製造しても良い。
(1)水溶性有機化合物を含有する母液にピーク粒子径の異なる各々分散体成分のポリチオフェン分散体を順次添加し混合する方法、
(2)ピーク粒子径の異なる各々分散体成分のポリチオフェン分散体を混合した後に水溶性有機化合物を添加し混合する方法、
(3)予め特定の分散体成分のポリチオフェン分散体に水溶性有機化合物を添加し混合した後に、残りの分散体成分のポリチオフェン分散体を混合する方法などを挙げることができる。
【0100】
これらの中でも、前記した考え方に基づき、より顕著に導電性を向上させるためには、(3)の方法によって製造することが好ましく、特に、最も粒子径が小さいピークを有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と水溶性有機化合物を含有する混合体を予め作製し、小さい方から2つ目以降のピークを有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と混合する方法が最も好ましい。
【0101】
尚、ドーパントについてもどのようなタイミングで添加しても良いが、ドーパントについてはチオフェンを重合する際に存在させておき、そのまま導電性ポリマー組成物に持ち込まれることが好ましい。
【0102】
各々分散体成分のポリチオフェン分散体や水溶性有機化合物を混合する際の温度や撹拌条件などは、任意に選択して制御することが可能である。
【0103】
本発明の導電性ポリマー組成物の分散溶媒としては特に制限は無いが、水系の極性溶媒を使用することが好ましい。
【0104】
チオフェンの重合の際に使用した水系溶媒をそのまま持ち込むことが可能であり、適宜必要に応じて置換または追加することも可能である。
【0105】
水系の極性溶媒としては、具体的には、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0106】
これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、環境保護の観点から、環境負荷の小さい水やアルコール系溶媒が好ましい。
【0107】
本発明の導電性ポリマー組成物には、上述した必須の構成成分の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有しても良く、その添加するタイミングも任意に選択することが可能である。
【0108】
添加剤としては公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0109】
<透明導電膜及びその製造方法>
本発明の導電性ポリマー組成物を透明基材に塗布し成膜することによって、透明導電膜を形成することができる。
【0110】
透明基材としては特に制限はなく、その材料、形状、厚み等については公知のものから任意に選択することができるが、種々の用途への適用性を考慮すると可撓性を有する樹脂材料かならる透明フィルムを使用することが好ましい。
【0111】
前記透明フィルムとして使用される樹脂材料としては、公知のものから任意に選択することが可能で、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリオレフィンポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び可撓性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0112】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
本発明の導電性ポリマー組成物を用いて得られる透明導電膜の厚みについては特に制限は無く、任意に選択することが可能であるが、導電性、透明性、及び基材との接着性などを考慮すると、例えば0.01〜10μmが好ましく、0.1〜1μmが更に好ましい。
【0114】
透明導電膜の電気抵抗値としては、表面抵抗率として、10000Ω/□以下であることが好ましく、1000Ω/□以下であることが更に好ましく、100Ω/□以下であることが最も好ましい。表面抵抗率は、例えばJIS−K−6911、ASTM D257などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0115】
透明導電膜の可視光線透過率としては、70%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0116】
次に、本発明の導電性ポリマー組成物を用いて透明導電膜を製造する際の形成方法について説明する。
【0117】
透明導電膜の形成方法としては特に制限は無く、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0118】
塗布法としては特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などを挙げることができる。
【0119】
印刷法としては特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法などを挙げることができる。
【0120】
透明基材上に導電膜を形成した後に、熱風乾燥法など公知の方法により乾燥を行うことが好ましい。
【0121】
透明導電膜としては、本発明の導電性ポリマー組成物による透明導電膜が透明基材上の全面に形成されていても良いし、電極や配線パターンなどを形成するなど部分的に形成されていても良い。
【0122】
本発明の導電性ポリマー組成物を用いて得られた透明導電膜の用途としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、コンデンサー、二次電池、接続用部材、高分子半導体素子、帯電防止コーティング、帯電防止包装材等の帯電防止材、電磁波シールド材、更に、転写ベルト、現像ロール、帯電ロール、転写ロール等の電子写真機器部品等に用いることができる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0124】
実施例1
<ポリチオフェン分散体の作製>
(分散体1の作製)
ポリスチレンスルホン酸[PSS]22.2部を含む1887部の水溶液に、49部の1%硫酸鉄(III)水溶液、30部の濃硝酸、8.8部の3,4−エチレンジオキシチオフェン及び121部の10.9%のペルオキソ二硫酸水溶液を添加した。
【0125】
このときの反応混合物のpHは0.82であった。
【0126】
この反応混合物を18℃で19時間攪拌した。
【0127】
次いで、この反応混合物にイオン交換樹脂を加えて2時間攪拌した後、イオン交換樹脂をろ別して脱塩を行い、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水系分散体(固形分1.42%)を得た。
【0128】
ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5を用いて粒子径分布を測定した結果、ピーク粒子径は26nmであった。これを分散体1とした。
【0129】
(分散体2の作製)
ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量とスルホン化率を変更して調整した以外は分散体1と同様に作製し、分散体2を得た。分散体2のピーク粒子径は43nmであった。
【0130】
(分散体3の作製)
ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量とスルホン化率を変更して調整した以外は分散体1と同様に作製し、分散体3を得た。分散体3のピーク粒子径は57nmであった。
【0131】
<導電性ポリマー組成物の作製>
(比較;導電性ポリマー組成物1の作製)
ポリチオフェン分散体1に、水溶性有機化合物としてジメチルスルホキシドを添加してその含有量を3質量%とした。
【0132】
各成分が均一になるまで1時間撹拌し、導電性ポリマー組成物を作製し、これを導電性ポリマー組成物1とした。
【0133】
(比較;導電性ポリマー組成物2の作製)
ポリチオフェン分散体1を分散体3に変更した以外は組成物1と同様に作製し、導電性ポリマー組成物2を得た。
【0134】
(比較;導電性ポリマー組成物3の作製)
ポリチオフェン分散体1とポリチオフェン分散体2を混合し、それぞれの分散体成分の固形分体積比率が60:40とした。
【0135】
各成分が均一になるまで1時間撹拌し、導電性ポリマー組成物を作製し、これを導電性ポリマー組成物3とした。
【0136】
(本発明;導電性ポリマー組成物4の作製)
ポリチオフェン分散体1に、水溶性有機化合物としてジメチルスルホキシドを添加してその含有量を3質量%とし、各成分が均一になるまで1時間撹拌した。
【0137】
次いで、ポリチオフェン分散体2を混合し、それぞれの分散体成分の固形分体積比率を60:40とした。各成分が均一になるまで更に1時間撹拌し、導電性ポリマー組成物を作製し、これを導電性ポリマー組成物4とした。
【0138】
(本発明;導電性ポリマー組成物5の作製)
それぞれの分散体成分の固形分体積比を30:70に変更した以外は導電性ポリマー組成物4と同様に作製し、導電性ポリマー組成物5を得た。
【0139】
(本発明;導電性ポリマー組成物6の作製)
ポリチオフェン分散体2を分散体3に変更した以外は導電性ポリマー組成物4と同様に作製し、導電性ポリマー組成物6を得た。
【0140】
(本発明;導電性ポリマー組成物7の作製)
それぞれの分散体成分の固形分体積比を30:70に変更した以外は導電性ポリマー組成物6と同様に作製し、導電性ポリマー組成物7を得た。
【0141】
(本発明;導電性ポリマー組成物8の作製)
水溶性有機化合物をジメチルスルホキシドからエチレングリコールに変更した以外は導電性ポリマー組成物7と同様に作製し、導電性ポリマー組成物8を得た。
【0142】
(本発明;導電性ポリマー組成物9の作製)
ポリチオフェン分散体1に、水溶性有機化合物としてジメチルスルホキシドを添加してその含有量を3質量%とし、各成分が均一になるまで1時間撹拌した。次いで、ポリチオフェン分散体2及び分散体3を混合し、それぞれの分散体成分の固形分体積比率を60:20:20とした。各成分が均一になるまで更に1時間撹拌し、導電性ポリマー組成物を作製し、これを導電性ポリマー組成物9とした。
【0143】
(本発明;導電性ポリマー組成物10の作製)
それぞれの分散体成分の固形分体積比を30:30:40に変更した以外は導電性ポリマー組成物9と同様に作製し、導電性ポリマー組成物10を得た。
【0144】
<透明導電膜の作製>
透明基材としてポリエチレンテレフタレート樹脂(厚さ188μm、東レ社製)を使用し、該透明基材上に、前記導電性ポリマー組成物をバーコーター(No.9、ウエット膜圧20μm)を用いてバーコート法により塗布した。
【0145】
その後、120℃の環境下で10分間加熱乾燥することにより、本発明の透明導電膜(厚み:約0.4μm)を作製した。前記導電性ポリマー組成物1〜10のそれぞれについて同様に透明導電膜を作製し、表1に示す通りそれぞれ試料1〜10とした。
【0146】
<透明導電膜の評価>
1.表面抵抗率
表面抵抗率は、JIS−K−6911に準じて〔三菱化学社製、MCP−T600(商品名)〕を用いて、試料1〜10のそれぞれについて室温(約25℃)下にて測定した。各試料の表面抵抗率の測定結果を表1に示した。
【0147】
2.導電度変化
試料1〜10のそれぞれについて、導電度をJIS−K−7194に準じて4探針方式の電導度測定器〔三菱化学社製、MCP−T600(商品名)〕により室温(約25℃)下にて測定した。
【0148】
次に、高温貯蔵試験として各試料を130℃の恒温槽中に貯蔵し、24時間後に試料を取り出して再度導電度を測定し、高温貯蔵による導電度の変化を評価した。
【0149】
導電度の変化としては、貯蔵後の導電度値を初期導電度(高温貯蔵試験前に測定した導電度値)で割り、百分率で示した。各試料の導電度変化の算出結果を表1に示した。
【0150】
【表1】

【0151】
表1より、ポリチオフェン分散体の粒子径分布が2つ以上のピークを有し、更に水溶性有機化合物を含有する本発明の導電性ポリマー組成物を使用して作製した透明導電膜(試料4〜10)は、比較の導電膜に対し表面抵抗率が下がり導電性が向上した。
【0152】
更に、導電度変化についても本発明の透明導電膜は減少が少なく、耐久性が向上した。
【0153】
更に、本発明の透明導電膜の中でも、最も粒子径が小さいピークが30nm以下に存在し、小さい方から2つ目以降のピークの少なくとも1つが50nm以上に存在する導電性ポリマー組成物を使用して作製した透明導電膜(試料6〜10)は、導電性及び耐久性が更に向上した。
【0154】
また、本発明の透明導電膜の中でも、最も粒子径が小さいピークを有する粒子径分布領域と小さい方から2つ目以降のピークを有する粒子径分布領域の固形分の体積比率が50:50から10:90の範囲である導電性ポリマー組成物を使用して作製した透明導電膜(試料5,7,10)は、最も粒子径が小さいピークを有する粒子径分布領域の体積比率が半分を上回る導電性ポリマー組成物を使用して作製した透明導電膜(試料4,6,9)より、導電性及び耐久性が更に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の導電性ポリマー組成物に含有されるポリチオフェン分散体の一例を示す粒子径分布曲線である。
【図2】本発明の導電性ポリマー組成物に含有されるポリチオフェン分散体の各粒子径分布領域の分散体成分を模式的に示した一例を示す粒子径分布曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンの分散体、ドーパント及び水溶性有機化合物を含有する導電性ポリマー組成物であって、該ポリチオフェンの分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1〜C10のアルキル基であるか、またはR1及びR2とでC1〜C10のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されてもよい)
【請求項2】
前記粒子径分布のピークの内、最も粒子径が小さいピーク(D1)が1nm以上30nm以下に存在し、小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))の少なくとも1つが50nm以上100nm以下に存在することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記粒子径分布のピークの内、最も粒子径が小さいピーク(D1)を有する粒子径分布領域と小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))を有する粒子径分布領域の固形分の体積比率が、50:50から10:90の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェンの分散体、ドーパント及び水溶性有機化合物を含有する導電性ポリマー組成物の製造方法であって、該ポリチオフェンの分散体の粒子径分布が少なくとも2つのピークを有し、少なくとも最も粒子径が小さいピーク(D1)を有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と水溶性有機化合物を含有する混合体を作製し、小さい方から2つ目以降のピーク(D2〜Dn(3つのピークを有する時、n=3))を有する粒子径分布領域を形成する分散体成分と混合することを特徴とする導電性ポリマー組成物の製造方法。
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1〜C10のアルキル基であるか、またはR1及びR2とでC1〜C10のアルキレン基を形成し、該アルキレン基は任意に置換されてもよい)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−257934(P2008−257934A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97131(P2007−97131)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】