説明

導電性マスターバッチ及び導電性樹脂組成物

ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、導電性マスターバッチに関する。更に詳細には、本発明は、ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチに関する。本発明の導電性マスターバッチを用いると、耐熱性に優れ、且つ優れた導電性(従来、静電塗装を施されていた材料と同等以上の導電性、即ち、静電塗装可能なレベルの導電性)と耐衝撃性とを併せ持つ導電性樹脂組成物を得ることができる。そのような樹脂組成物は、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に有利に使用することができる。特に、上記の導電性樹脂組成物は、これを用いて自動車外板のような大型成形体を成形し、得られた成形体を静電塗装に付す場合、該成形体が熱変形を起こしにくいだけでなく、該成形体の耐衝撃性の低下が無く、且つ該樹脂組成物の優れた導電性により優れた塗面を形成することができるため、自動車外板(自動車フェンダーなど)製造用の樹脂組成物として極めて有用である。更に、本発明は、上記の樹脂組成物を効率的に製造する方法にも関する。
従来技術
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されているが、単独では成形加工性に劣っている。日本国特公昭45−997号公報には、これを改良するためにポリフェニレンエーテルにポリアミドを配合する技術が提案されており、現在では非常に多種多様な用途に使用される材料となっている。
最近になって、静電塗装可能な材料として、導電性を付与したポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイを用いた自動車の外装材(フェンダー・ドアパネル等)への用途展開が急速に進んでいる。例えば、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイで成形して製造された自動車フェンダーを用いることにより、自動車の安全性(歩行者保護)や変形回復性を向上させることが試みられている。
自動車の外装材料には、静電塗装可能なレベルの導電性、衝撃強度、耐熱性、流動性等の種々の特性が要求される。
ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイに導電性を付与する技術としては、例えば、日本国特開平2−201811号公報には、カーボンブラックを主としてポリアミド相中に含有させること、また予めカーボンブラックをポリアミド中へ均一分散させた後にポリフェニレンエーテルと混合することにより、表面抵抗を低下させる技術が開示されている。このようなカーボンブラック等の微粉体を高粘度物質にうまく均一に分散させる技術及び製品は、化学技術誌 MOL(日本国オーム社)昭和62年11月号 P.41〜46に提示されており、一般的であった。
日本国特開平8−48869号公報(米国特許第5,977,240号に対応)には、予めポリアミド−ポリフェニレンエーテルを相溶化させた後、カーボンブラックを配合する技術により、良好な衝撃強さ、良好な流動性および良好な(低い)体積抵抗率を有する組成物が得られることが開示されている。
また、日本国特開平4−300956号公報(EP506386に対応)には、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、カーボンブラック及び相溶性改良剤の配合割合を調整すると共にポリフェニレンエーテル及びポリアミドとして特定の相対粘度を有するものを用いることにより導電性及び加工性を良好にすることが記載されている。
国際公開第01/81473号パンフレットには、樹脂組成物中の導電用炭素系フィラー(ケッチェンブラック(KB))をポリフェニレンエーテル相中に粒状で存在させる技術が開示されている。この文献に記載のものにおいては、透過型電子顕微鏡を用いて2万倍の高倍率で樹脂組成物の組織を観察しているが、これは、20μmよりはるかに小さいKB粒子(50nm程度)の存在場所を観察しているに過ぎず、しかも、樹脂組成物の耐衝撃性については十分満足できる値が得られていない。また、マスターバッチを使用しているが、そのマスターバッチの形態については全く記載がない。
上述した技術では、樹脂組成物および成形体が、熱変形を起こしやすく、しかも従来材では、導電性および耐衝撃性の向上と熱変形量の低減をすべて同時に満足することはできなかった。特に、自動車外板のように、大型成形体を成形し、静電塗装をする工程を必要とし、熱変形量の低減、高衝撃性、さらに静電塗装可能なレベルの導電性が要求される用途に対して充分適用することができなかった。そのため、新たな技術の開発が待望されているのが現状であった。
発明の概要
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチ用いて導電性樹脂組成物を製造することにより、耐熱性に優れ、且つ優れた導電性(従来、静電塗装に供されていた材料と同等以上の導電性、即ち、静電塗装可能なレベルの導電性)と耐衝撃性とを併せ持つ導電性樹脂組成物が得られ、該導電性樹脂組成物の成形体を静電塗装に付しても、該成形体は熱変形を起こしにくいだけでなく、該成形体の耐衝撃性の低下が無く、且つ該樹脂組成物の優れた導電性により優れた塗面を形成することができることを見出した。以上の知見に基づき、本発明を完成した。
従って、本発明の1つの目的は、耐熱性に優れ、且つ優れた導電性(従来、静電塗装に供されていた材料と同等以上の導電性、即ち、静電塗装可能なレベルの導電性)と耐衝撃性とを併せ持つ樹脂組成物であって、そのような優れた物性のために、静電塗装に付しても、熱変形を起こしにくいだけでなく、耐衝撃性の低下が無く、且つ優れた塗面を形成することができる成形体の製造に用いることができる導電性樹脂組成物の製造に有利に用いることができる導電性マスターバッチを提供することにある。
本発明の他の1つの目的は、上記の導電性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の更に他の1つの目的は、上記の導電性樹脂組成物からなる射出成形体(自動車外板など)を提供することにある。
本発明の更に他の1つの目的は、上記の導電性樹脂組成物を効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、導電性マスターバッチの円柱状ペレットにおける導電性カーボンブラックの凝集粒子数の観察面を示す概略説明図である。
図2は、導電性マスターバッチの球状ペレットにおける導電性カーボンブラックの凝集粒子数の観察面を示す概略説明図である。
図3(a)は、比較例1で得られた導電性マスターバッチのペレット(PA/KB−MB1)の観察面を示す概略説明図である。
図3(b)は、図3(a)における観察面の光学顕微鏡写真(50倍)である。
図4(a)は、実施例1で得られた導電性マスターバッチのペレット(PA/KB−MB1)の観察面を示す概略説明図である。
図4(b)は、図4(a)における観察面の光学顕微鏡写真(50倍)である。
図4(c)は、図4(a)のペレットの表面粗さ(Ra)の測定方法を示す説明図である。
図5(a)は、自動車の前輪周辺の車体部(フェンダーを含む)を示す概略説明図である。
図5(b)は、図5(a)におけるフェンダー部分の1部の走査型プローブ顕微鏡写真である。
図5(c)は、図5(a)におけるフェンダー部分の1部の表面部の断面プロファイルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 ペレット切削面
1a ペレットの表面粗さ(Ra)(JIS B 0601(1982)に準拠した方法で求められる中心線平均粗さ、又はJIS B 0601(1994)に準拠した方法で求められる算術平均粗さ)を測定した部分
2 導電性カーボンブラック
3 ポリアミド
4 JIS B 0601(1982)に規定された中心線(JIS B 0601(1994)には「平均線」と記載されている)
5 ペレットの表面粗さ(Ra)
6 自動車フェンダー
7 表面粗さの測定箇所を含む、自動車フェンダーの一部
8 該自動車フェンダーの一部7の走査型プローブ顕微鏡写真における、表面粗さを測定した部分
9 自動車フェンダーの表面粗さ(自動車フェンダー表面部分の高さの最大値と最小値の差)
発明の詳細な説明
本発明によれば、ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチが提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチ。
2.光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が1〜50個存在することを特徴とする前項1に記載の導電性マスターバッチ。
3.光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が、2〜40個存在することを特徴とする前項1に記載の導電性マスターバッチ。
4.光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が、2〜30個存在することを特徴とする前項1に記載の導電性マスターバッチ。
5.導電性カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
6.ペレット状であることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
7.該ペレットの表面の複数の箇所に関して、表面粗さ計を用いて測定した表面粗さ(Ra)の平均値が0.3〜2.0μmであることを特徴とする前項6に記載の導電性マスターバッチ。
8.該表面粗さ(Ra)の平均値が0.4〜1.5μmであることを特徴とする前項6に記載の導電性マスターバッチ。
9.該ペレットが円柱状であって、直径が1.5〜3.5mm、長さが2.0〜3.5mmであることを特徴とする前項7または8に記載の導電性マスターバッチ。
10.該導電性カーボンブラックの量が、該マスターバッチの重量に対して、5〜40重量%であることを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
11.該導電性カーボンブラックの量が、該マスターバッチの重量に対して、6〜10重量%であることを特徴とする前項10に記載の導電性マスターバッチ。
12.ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む導電性樹脂組成物であって、前項1〜11のいずれかに記載の導電性マスターバッチを、ポリフェニレンエーテル及び場合により付加量のポリアミドと溶融混練することにより製造されることを特徴とする導電性樹脂組成物。
13.導電性カーボンブラックの量が、導電性カーボンブラックを除く全ての成分の合計100重量部に対して0.2〜5重量部であることを特徴とする前項12に記載の導電性樹脂組成物。
14.自動車外板製造用であることを特徴とする前項12または13に記載の導電性樹脂組成物。
15.前項12〜14のいずれかに記載の導電性樹脂組成物からなる射出成形体。
16.前項12〜14のいずれかに記載の導電性樹脂組成物からなる自動車外板。
17.自動車フェンダーであることを特徴とする前項16に記載の自動車外板。
18.射出成形体であることを特徴とする前項17に記載の自動車外板。
19.該自動車外板の表面の複数の箇所に関して、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した表面粗さの平均値が、0.05〜1μmであって、但し該表面粗さは、該自動車外板表面の高さの最大値と最小値の差として定義される、ことを特徴とする前項18に記載の自動車外板。
20.ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む導電性樹脂組成物の製造方法であって、
(1)ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含み、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として存在する導電性マスターバッチを製造する工程、及び
(2)得られた導電性マスターバッチを、溶融状態のポリフェニレンエーテルに添加する工程
を含む方法。
21.該工程(2)において、ポリアミドを、該導電性マスターバッチの添加と同時に、溶融状態の該ポリフェニレンエーテルに添加することを特徴とする前項20に記載の方法。
22.導電性マスターバッチとして、前項1〜11のいずれかに記載の導電性マスターバッチを用いることを特徴とする前項20または21に記載の方法。
本発明の導電性マスターバッチ及び導電性樹脂組成物を構成する各成分について詳しく述べる。
本発明で使用することのできるポリアミドの種類としては、ポリマー主鎖中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては、脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を、単独で重合して得られるポリアミド、及び二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミドのいずれもが使用できる。
また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
特に本発明で有用に用いることのできるポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミド6/MXD(m−キシリレンジアミン)、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,Iなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。
好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6及び、それらの混合物である。
本発明で使用されるポリアミド樹脂の好ましい数平均分子量は5,000〜100,000であり、より好ましくは10,000〜30,000である。
本発明におけるポリアミド樹脂はこれらに限定されるものではなく、分子量の異なる複数のポリアミド樹脂の混合物であっても良い。例えば数平均分子量15,000未満の低分子量ポリアミドと、15,000以上の高分子量ポリアミドとの混合物等である。
ポリアミドの末端基は、ポリフェニレンエーテルとの反応に関与する。ポリアミド樹脂は末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、一般的にカルボキシル基濃度が高くなると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度が高くなると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。
本発明における、これらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基濃度比で、9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜1/9、更に好ましくは6/4〜1/9である。
また、末端のアミノ基の濃度としては少なくとも10ミリ当量/kgであることが好ましい。更に好ましくは30ミリ当量/kg以上である。
これらポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン類やジカルボン酸類、モノカルボン酸類などを添加する方法、あるいは、末端基の比率が異なる2種類以上のポリアミド樹脂の混合物により調整する方法等が挙げられる。
また、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で日本国特開平1−163262号公報に記載されているような金属系安定剤も使用することができる。
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルカリ金属のハロゲン化塩も金属系安定剤として好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミド100重量部に対して10重量部未満の量で添加してもかまわない。
本発明で使用できるポリフェニレンエーテルとは、下記式(1)の構造単位からなる、単独重合体及び/または共重合体である。

〔式中、Oは酸素原子、各Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級のC〜Cアルキル基、フェニル基、C〜Cハロアルキル基、C〜Cアミノアルキル基、C〜Cヒドロカルビロキシ基、又はハロヒドロカルビロキシ基(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表す。〕
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、日本国特公昭52−17880号公報に記載されているような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法が使用でき、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、日本国特開昭50−51197号公報及び同63−152628号公報等に記載されている製造方法等を挙げることができる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても、何ら問題なく使用することができる。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
また、本発明において使用できるポリフェニレンエーテルは、重合溶媒に起因する有機溶剤が、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して5重量%未満の量で残存していても構わない。これら重合溶媒に起因する有機溶剤は、重合後の乾燥工程で完全に除去するのは困難であり、通常数百ppmから数%の範囲で残存しているものである。ここでいう重合溶媒に起因する有機溶媒としては、トルエン、キシレンの各異性体、エチルベンゼン、炭素数1〜5のアルコール類、クロロホルム、ジクロルメタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の1種以上が挙げられる。
また、本発明において使用できるポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテル(以後、「変性ポリフェニレンエーテル」と称す)であっても構わない。
ここでいう変性ポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
該変性ポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度でポリフェニレンエーテルと変性化合物とを溶融混練して反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物とを溶液中で反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)及び(2)の方法が好ましい。
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合と、カルボン酸基及び/又は酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。これらの内、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の1個または2個がエステルになっているものも使用可能である。
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基とを同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−二重結合と水酸基とを同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜5重量部である。
上記ラジカル開始剤の例としては、公知の有機過酸化物、ジアゾ化合物などが挙げられる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して0.001〜1重量部である。
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜5重量%が好ましい。より好ましくは0.1〜3重量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
また、変性されたポリフェニレンエーテル中に残存する変性化合物及び/または、変性化合物の重合体の量を減少させるために、該変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際に、必要に応じてアミド結合及び/またはアミノ基を有する化合物を添加しても構わない。
ここでいうアミド結合を有する化合物とは、分子構造中にアミド結合{−NH−C(=O)−}構造を有する化合物であり、アミノ基を有する化合物とは末端に{−NH}構造を有する化合物である。これら化合物の具体例としては、オクチルアミン、ノニルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、アニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、上記アミン類とカルボン酸、ジカルボン酸等との反応物、ε−カプロラクタム等のラクタム類及びポリアミド樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらアミド結合またはアミノ基を有する化合物を添加する際の好ましい添加量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して、0.001重量部以上、5重量部未満である。好ましくは0.01重量部以上、1重量部未満、より好ましくは0.01重量部以上、0.1重量部未満である。
次に本発明において使用することのできる導電性カーボンブラックについて説明する。本発明で使用する導電性カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上のカーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
また、本発明で使用できる導電性カーボンブラックはBET表面積が200cm/g以上のものが好ましく、更には400cm/g以上のものがより好ましい。市販されているものを例示すると、日本国ケッチェンブラックインターナショナルのケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等が挙げられる。
本発明の導電性マスターバッチは、ポリアミドと導電性カーボンブラックを溶融混練することによって得ることができる。
本発明の導電性マスターバッチは、ペレット状、粉末状、粒状のいずれでもかまわないが、好ましくは、ペレット形状であり、より好ましくは、ペレット径が1.5mm以上3.5mm以下、ペレット長さが2.0mm以上3.5mm以下の円柱状ペレットである。以下では、ペレット状の導電性マスターバッチを導電性マスターペレットという。
導電性マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの比率は、該マスターバッチの重量に対して、好ましくは5〜40重量%である。より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは6〜15重量%、最も好ましくは6〜10重量%である。特に、導電性マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの量が6〜10重量%であることが、導電性マスターバッチ中のポリアミドの分子量低下を防ぐと同時に、マスターバッチの生産性を向上させるため、最も好ましい。
本発明において重要なことは、該マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの少なくとも一部を長径が20〜100μmの凝集粒子として存在させることである。凝集粒子として存在させることにより、存在させない場合に比べて導電性が向上する。また、該凝集粒子の数としては、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、1〜100個存在することが必要である。好ましくは、1〜50個存在すること、さらに好ましくは2〜40個存在すること、最も好ましくは2〜30個存在することである。上記のサイズの凝集粒子が存在しないマスターバッチを樹脂組成物を製造した場合、導電性が低下する。一方、上記のサイズの凝集粒子が100個を超えるマスターバッチを用いて樹脂組成物を製造した場合、樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。また、本発明のマスターバッチは、長径が20μm未満の凝集粒子や、長径が100μmを超える凝集粒子を含んでいてもかまわない。
本発明において、長径が20μm未満の凝集粒子の数に関しては特に制限はない。長径が100μmを超える凝集粒子の数に関しても特に制限はないが、長径が20〜100μmの凝集粒子の数の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることが更に好ましい。
本発明における導電性カーボンブラックの凝集粒子の大きさおよび数は、図1及び図2に参照して以下に説明する方法で測定される。ペレット状のマスターバッチ(以下、屡々、「マスターペレット」と称す)をガラスナイフ装着のミクロトームにて鏡面に切削し、その切削面1を光学顕微鏡(例えば、日本国オリンパス社製「PME3」)を用いて50倍の倍率で反射光を観察し、写真撮影を行い、3mmについて、ポリアミドマトリックス3中に存在する、導電性カーボンブラックの長径が20μm以上100μm以下の凝集粒子2の数を目視で数える。ここで、マスターペレットの形状が円柱あるいは直方体の場合には、長辺に対してほぼ垂直な断面に切削し、観察を行う(図1参照)。
また、マスターペレットの形状が粒状あるいは球状等の場合には、ほぼ中心部を通過する断面に切削し、観察を行う(図2参照)。なお、観察する断面は、別々のペレットから3つ以上の断面を切り出して観察し、凝集粒子数は上記3つ以上の断面の平均値とする。この際、切り出した断面に存在する凝集粒子数にばらつきが多い場合には、観察する断面の数を5〜10個に増やして観察し、その平均値を求める。なお、観察する面積が3mmを確保できない場合は、面積の合計が3mmを確保できるように観察する面を増やして行うこととする。
本発明においては、上記マスターペレットの表面の複数の箇所に関して、表面粗さ計を用いて測定した表面粗さ(Ra)の平均値が0.3〜2.0μmであることが好ましい。より好ましくは、0.4〜1.5μmである。表面粗さ(Ra)の平均値が上記の範囲にあることにより、本発明のマスターバッチを用いた樹脂組成物の成形体を静電塗装に付した際にも、熱変形を起こしにくく、更に耐衝撃性を保持したまま、優れた導電性を発揮する。上記表面粗さ(Ra)の平均値が、0.3μm未満のマスターバッチを用いると、得られる樹脂組成物の導電性及び耐熱性が低下する傾向があり、2.0μmを超えるマスターバッチを用いると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向がある。
ここでいう表面粗さ計は、表面凹凸を測定する装置であり、表面粗さ計及び走査型プローブ顕微鏡を含むものである。
導電性マスターバッチは、同一の混練条件(樹脂温度、スクリュー回転数、吐出量など)であっても、押出機の種類やサイズなどによって、得られるマスターバッチ中の導電性カーボンブラックの凝集粒子数が異なる。そこで、マスターペレット中に存在する導電性カーボンブラックの凝集粒子数を本発明の範囲内にコントロールするために、ある混練条件で得られた導電性マスターペレットの表面粗さ(Ra)の平均値を測定し、上記の範囲になるように混練条件を制御する方法で、本発明の導電性マスターバッチを得るための混練条件を決定することができる。
本発明におけるマスターペレットの表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601(1982)で規定された中心線平均粗さ(Ra)又はJIS B 0601(1994)で規定された算術平均粗さ(Ra)である。上記中心線平均粗さ(Ra)と算術平均粗さ(Ra)とは実質的に同じことを意味する。即ち、上記中心線平均粗さ(Ra)及び算術平均粗さ(Ra)は、表面粗さ計を用いて得られた粗さ曲線から、図4(c)に示すように、特定の測定長さに対応する部分を抜き取り、この部分における中心線4(この「中心線」は、JIS B 0601(1982)に記載のものであり、JIS B 0601(1994)には「平均線」と記載されている)と粗さ曲線との偏差の絶対値を算術平均した値である(上記の中心線は、後述するような測定機器が自動的に決定し、これに基づいて平均粗さ(Ra)が計算される)。但し、JIS B 0601(1994)は、JIS B 0601(1982)の改訂版であり、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定条件(粗さ曲線のカットオフ値)は、上記算術平均粗さ(Ra)のものと異なる。従って、同一サンプルに関して測定した中心線平均粗さ(Ra)と算術平均粗さ(Ra)は、若干異なる場合があるが、その相違は本発明で特に問題になるレベルではない。従って、本発明においては、上記中心線平均粗さ(Ra)と上記算術平均粗さ(Ra)のどちらかが上記の範囲にあればよい。
表面粗さ(Ra)は、例えば、以下のような方法で求めることができる。水平部を有するマスターペレットの場合は、表面粗さ計Surfcom579A(日本国東京精密(株)製)を用いて、測定長2.5mmの条件下でペレット側面水平部の表面粗さ(Ra)を測定する。なお、測定長2.5mmを確保できない場合には、測定点を増やすこととする。粒状等の水平部を有しないマスターペレットでは、走査型プローブ顕微鏡(日本国セイコーインスツルメンツ(株)製:SPA300HV)を用いて、ペレット表面凹凸像を80μm×80μmの範囲で観察し、3次元補正後の表面粗さを測定し、中心線平均粗さ(Ra)を求める。尚、本発明において(Ra)は、測定点数10点の平均値とする。
本発明でいう表面粗さ(Ra)の平均値は、ペレットの光沢度およびペレット中の導電性カーボンブラックの分散性と相関がある。すなわち、ペレット中に凝集体が実質的に存在しない場合、ペレットの表面光沢は高く、表面粗さは小さい値になる。一方、ペレット中に凝集体が存在する場合、ペレットの表面光沢は低く、表面粗さは大きい値になる。
導電性マスターバッチの好ましい製造方法としては、二軸押出機またはニーダーを使用して溶融混練する方法が好ましい。中でも特にポリアミドが溶融した後に導電性カーボンブラックを添加する方法が好ましく、具体例を挙げると、上流側と下流側にそれぞれ少なくとも1箇所の供給口を有する二軸押出機又はニーダーを使用し、上流側供給口よりポリアミドを供給し、溶融させた後、下流側供給口より導電性カーボンブラックを添加して溶融混練する方法、あるいは、上流側供給口よりポリアミドを供給し、溶融させた後、下流側供給口より導電性カーボンブラックとポリアミドを同時添加して溶融混練する方法等が挙げられる。
溶融混練温度は特に限定されるものではないが、例えば、350℃以上、350%以下の範囲から任意に選択することができる。
上記導電性マスターバッチを、ポリフェニレンエーテル及び場合により付加量のポリアミドと溶融混練することにより本発明の導電性樹脂組成物を得ることができる。
該組成物中の導電性カーボンブラックの好ましい量は、導電性カーボンブラックを除くすべての成分の量を100重量部とした際に、0.2〜5重量部であることが好ましい。さらに、0.2〜3重量部であると、耐衝撃性と流動性と導電性のバランスに優れ、より好ましい。
また、付加量のポリアミドに関しては、上記したものを用いることができるが、マスターバッチに用いたポリアミドと同じものであっても、異なるものであってもよい。
本発明の導電性樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂をポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100重量部に対し、50重量部未満の量であれば配合しても構わない。本発明でいうスチレン系熱可塑性樹脂としては、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100重量部に対して10重量部未満の量で添加しても構わない。添加剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの金属系安定剤、及びヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などの有機安定剤が挙げられる。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、衝撃改良材を配合しても構わない。
本発明の導電性樹脂組成物に使用することのできる衝撃改良材は、例えば、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックから構成される芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、その水素添加物及びエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる1種以上である。
本発明における芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体で使用することのできる芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
また、共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
衝撃改良材の具体例としては、SBS及びSEBSなどのブロック共重合体を挙げることができる。
該ブロック共重合体の共役ジエン化合物のソフトセグメント部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、10〜40%が最も好ましい。
上記ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]がA−B型、A−B−A型、A−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましい。また、これらの混合物であってももちろん構わない。
これらの中でもA−B−A型、A−B−A−B型がより好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
また、本発明の導電性樹脂組成物に使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を超えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体との混合物としても問題なく使用可能である。
本発明の導電性樹脂組成物に使用するブロック共重合体として、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物を使用することが望ましい。具体的には、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。より好ましくは、数平均分子量100,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量200,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。
本発明でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[例えば、GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[例えば、UV−41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量のことを指す。測定条件は次のとおりである。
(測定条件)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
カラム:サンプル側(K−G,K−800RL,K−800R)
リファレンス側(K−805L×2本)
流量:10ml/分
測定波長:254nm
圧力;15〜17kg/cm
この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜1.2の範囲内である。
これら低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体の重量比は、低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体=95/5〜5/95である。好ましくは90/10〜10/90である。
また、低分子量ブロック共重合体として、芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が20,000以上であるブロック共重合体を使用することで、耐熱性を向上させるという付加的な効果を得ることができる。
芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下式により求めることができる。
Mn(a)={Mn×a/(a+b)}/N
[上式中において、Mn(a)は芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体の数平均分子量、aはブロック共重合体中のすべての芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの重量%、bはブロック共重合体中のすべての共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの重量%、そしてNはブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。]
また、本発明において、低分子量ブロック共重合体の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの含有量の好ましい範囲は、55重量%以上90重量%未満である。低分子量ブロック共重合体に、この範囲内の芳香族ビニル重合体ブロックを持つブロック共重合体を用いることにより、耐熱性を向上させることができるため、より好適に使用することができる。
更に、本発明において、低分子量ブロック共重合体を、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55重量%以上90重量%未満の量で含有するブロック共重合体と、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを20重量%以上55重量%未満の量で含有するブロック共重合体との混合物とすることにより、流動性を向上させることが可能となる。
また、本発明の導電性樹脂組成物に使用するブロック共重合体中には、パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合する事により、樹脂組成物の加工性を向上させることができる。この際の好ましいパラフィンを主成分とするオイルの量はブロック共重合体100重量部に対して、1〜70重量部である。70重量部以上混合すると取り扱い性に劣る。
ここでいうパラフィンを主成分とするオイルとは、芳香環含有化合物、ナフテン環含有化合物及び、パラフィン系化合物の三者が組み合わさった重量平均分子量500〜10000の範囲の炭化水素系化合物の混合物であり、パラフィン系化合物の含有量が50重量%以上のものである。より好ましくは、パラフィン系化合物が50〜90重量%、ナフテン環含有化合物が10〜40重量%、芳香環含有化合物が5重量%以下のものである。
これら、パラフィンを主成分とするオイルは市販されており、例えば出光興産(株)製のPW380等が挙げられる。
これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等混合して用いても構わない。
本発明の導電性樹脂組成物に使用することのできるエチレン−α−オレフィン共重合体の例としては、日本国特開2001−302911号公報に記載されているエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。
また、本発明の導電性樹脂組成物に使用する衝撃改良材は、全部又は一部が変性された衝撃改良材であっても構わない。
ここでいう変性された衝撃改良材とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性された衝撃改良材を指す。
該変性された衝撃改良材の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で衝撃改良材の軟化点温度以上250℃以下の範囲の温度で衝撃改良材と変性化合物とを溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で衝撃改良材の軟化点以下の温度で、衝撃改良材と変性化合物とを溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で衝撃改良材の軟化点以下の温度で、衝撃改良材と変性化合物とを溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行なう方法が最も好ましい。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルについて述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明の導電性樹脂組成物におけるポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び衝撃改良材の好ましい量比は、これら3成分の合計を100重量部としたとき、ポリアミド30〜70重量部、ポリフェニレンエーテル20〜50重量部、衝撃改良材5〜30重量部の範囲内である。より好ましくは、ポリアミド40〜60重量部、ポリフェニレンエーテル30〜40重量部、衝撃改良材5〜15重量部の範囲内である。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、組成物の製造の際に相溶化剤を添加しても構わない。相溶化剤を使用する主な目的は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質(耐衝撃性、流動性など)を改良することである。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。
いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す事が望ましい。
本発明の導電性樹脂組成物において使用することのできる相溶化剤の例としては、日本国特開平8−48869号公報及び日本国特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、クエン酸が挙げられる。
本発明の導電性樹脂組成物において使用することのできる相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100重量部に対して0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.1〜10重量部である。
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
付加的成分の例を以下に挙げる。
ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、ガラス繊維など)、無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知の密着改良剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、着色用カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の導電性付与材、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
これらの成分の具体的な添加量は、ポリアミド及びポリフェニレンエーテルの合計100重量部に対して、合計で100重量部を超えない範囲である。
本発明の導電性樹脂組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が最も好ましい。
この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
本発明の好ましい導電性樹脂樹脂組成物の製造方法としては、上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より衝撃改良材、ポリフェニレンエーテルを供給し溶融混練した後、下流側供給口より導電性マスターバッチを供給し溶融混練する方法等が挙げられる。具体的には、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む導電性樹脂組成物の製造方法であって、
(1)ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含み、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として存在する導電性マスターバッチを製造する工程、及び
(2)得られた導電性マスターバッチを、溶融状態のポリフェニレンエーテルに添加する工程
を含む方法である。
また、上記の方法において、溶融状態のポリフェニレンエーテルに、該導電性マスターバッチとポリアミドを同時に添加することが好ましい。
このようにして得られる本発明の導電性樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品に成形することができる。
これら各種部品としては、例えばICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、各種コンピューターおよびその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のフェンダー、ドアーパネル、フロントパネル、リアパネル、ロッカーパネル、リアバンパーパネル、バックドアガーニッシュ、エンブレムガーニッシュ、燃料注入口パネル、オーバーフェンダー、アウタードアハンドル、ドアミラーハウジング、ボンネンットエアインテーク、バンパー、バンパーガード、ルーフレール、ルーフレールレッグ、ピラー、ピラーカバー、ホイールカバー、スポイラー等に代表される各種エアロパーツ、各種モール、エンブレムといった外装部品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品等が挙げられる。
これらの中でも、静電塗装可能な自動車の外板部品に好適に使用可能であり、特に、自動車フェンダーに好適に使用できる。
本発明における自動車フェンダーとしての自動車外板においては、該自動車外板の表面の複数の箇所に関して、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した表面粗さ(但し該表面粗さは、該自動車外板表面の高さの最大値と最小値の差として定義される)の平均値が、0.05〜1μmであることが静電塗装後の外観に優れるため好ましい。
本発明における自動車フェンダーの表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(例えば、日本国セイコーインスツルメンツ(株)製:SPA300HV)を用いて、自動車フェンダーの外表面における形状の異なる部分を任意に8点抜き取り、20μm×20μm面内における表面凹凸像を観察し、3次元補正後の高さの最大値と最小値の差を測定し、8点の平均値として算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
(原料)
実施例及び比較例において使用した原料は次のとおりである。
(1)ポリアミド(以下、PAと略記)
(1−1)ポリアミド6(以下、PA6と略記)
商品名:UBEナイロン6 SF1013A
(日本国宇部興産(株)製)
(1−2)ポリアミド66(以下、PA66と略記)
数平均分子量=14,000
末端アミノ基濃度=30ミリ等量/kg
末端カルボキシル基濃度=100ミリ等量/kg
(2)導電性カーボンブラック(以下、KBと略記)
商品名:ケッチェンブラックEC−600JD
(日本国ケッチェンブラックインターナショナル社製)
(3)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(日本国旭化成(株)製)
(3−1)ポリフェニレンエーテル(以下、PPE−1と略記)
還元粘度:0.52dl/g
(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(3−2)ポリフェニレンエーテル(以下、PPE−2と略記)
還元粘度:0.42dl/g
(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(3−3)無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(以下、M−PPEと略記)
(PPE−2)100重量部に対して、ラジカル開始剤0.1重量部および無水マレイン酸1.5重量部を添加し、二軸押出機(ZSK−5、ドイツ国ウェルナー&フライデラー社製)を用いてシリンダー温度320℃で溶融混練してM−PPEを作製した。
なお、無水マレイン酸の付加率は、0.5%であった。
(4)ポリスチレン(以下、PSと略記)
商品名:A&Mポリスチレン 685(日本国A&Mスチレン社製)
(5)ブロック共重合体
(5−1)ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(以下、SEBS−1と略記)
数平均分子量=246,000
スチレン成分合計含有量=33%
(5−2)ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(以下、SEBS−2と略起)
数平均分子量=77,000
スチレン成分合計含有量=67%
(6)相溶化剤
(6−1)クエン酸(日本国和光純薬工業(株)製)
(6−2)無水マレイン酸(日本国三菱化学(株)製)
(測定方法)
以下に、導電性カーボンブラックの凝集粒子の数(以下「凝集粒子数」と略記する)、表面粗さ、耐衝撃性、耐熱性、導電性(表面抵抗率及び体積抵抗率)、導電塗装性及び熱変形量の測定方法について述べる。
(1)凝集粒子数
マスターバッチをガラスナイフ装着のミクロトームにて鏡面に切削し、その切削面を光学顕微鏡(PME3:日本国オリンパス社製)を用いて50倍の倍率で反射光を観察し、写真撮影を行い、3mmについて導電性カーボンブラックの長径が20μm以上100μm以下の凝集粒子数を目視で数えた。なお、30μm以上100μm以下あるいは100μm以上の凝集粒子数も同様に目視で数えた。ここで、マスターペレットの形状が円柱状であるため、長辺に対してほぼ垂直な断面に切削し観察を行った。また、観察する断面は、別々のペレットから3つの断面を切り出して観察し、凝集粒子数は3つの断面の平均値とした。ここで、切り出した3つの断面に存在する凝集粒子数のばらつきが殆どないことを合わせて確認した。
(2)ペレットの表面粗さ(Ra)の平均値
JIS B 0601(1994)に準拠し、表面粗さ計Surfcom579A(日本国東京精密(株)製)を用いて、マスターバッチのペレット側面水平部の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。測定条件として、触針に標準測定子(ダイアモンド製、先端R5μm)を用いて、触針の移動速度0.3mm/秒、測定長2.5mm、カットオフ値0.8mmの条件下で実施し、測定点数10点の平均値を算出した。
(3)Izod衝撃値および荷重たわみ温度
得られた樹脂組成物ペレットを、日本国東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)にて厚み3.2mm及び6.4mmの短冊成形片を成形した。ノッチ付きIzod衝撃試験は、ASTM D256に準拠し、厚み3.2mmのノッチ付衝撃強度を測定した。また、1.82MPaの荷重下における荷重たわみ温度(高荷重HDT)は、ASTM D648に準拠し、厚み6.4mmの試験片を用いて測定した。
(4)表面抵抗率および体積抵抗率−1
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)にて100×50×2.5mmの平板成形片を成形し、得られた成形片を高抵抗率計[MCP−HT450:三菱化学(株)製]を用いて、500Vの電圧で表面抵抗率及び体積抵抗率−1を測定した。測定は5個の異なる試験片に対して実施し、その加算平均をもって、それぞれ表面抵抗率、体積抵抗率とした。
(5)体積抵抗率−2
得られた樹脂組成物ペレットを、日本国特開平8−48869号公報の実施例に記載の方法に従い、日本国東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)を用いて、ダンベルバーとしてISO294の記載の如く成形した。この試験片の両端を折り取って均一な断面積10×4mm、長さ約70mmで両端に破断面をもつ部分を得た。ただし、試験片の折り取り方については日本国特開平8−48869号公報の実施例に記載がないため、−75〜−70℃のドライアイス/メタノールの中に、予めカッターナイフでキズをつけた試験片を1時間浸漬後、折り取る方法で行った。この両端の破断面に銀塗料(シルベスト、日本国日新EM(株)製)を塗布し、デジタル絶縁抵抗計[DG525:日本国三和電気計器(株)製]を用いて、250Vの印加電圧で両方の破断面間の体積抵抗率を測定した。測定は5個の異なる試験片に対して実施し、その加算平均をもって、体積抵抗率とした。
(6)自動車フェンダーの表面粗さ
自動車フェンダー用金型を用いて、シリンダー温度310℃、金型温度110℃で、自動車フェンダーを製造した。走査型プローブ顕微鏡(日本国セイコーインスツルメンツ(株)製:SPA300HV)を用いて、該自動車フェンダーの外表面における形状の異なる部分を任意に8点抜き取り、20μm×20μm面内における表面凹凸像を観察し、3次元補正後の高さの最大値と最小値の差を測定した。測定点8点の平均値を自動車フェンダーの表面粗さとした。なお、カンチレバーはSI−DF20(日本国セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、空気中、25℃、走査周波数0.5Hz、加振測定モード(DFM)、振動振幅0.8Vの条件下で行った。
(7)静電塗装性
上記(6)に記載の方法で得られた自動車フェンダーを自動車静電塗装工程に供し、静電塗装の可否及び塗膜の上塗外観(塗面の平滑性、鮮明度及び色調)を目視にて評価した。
(8)熱変形量
上記(6)に記載の方法で得られた自動車フェンダーを自動車車体に取り付け、自動車フェンダーとドア間のクリアランスの大小及び位置によるクリアランスの大きさのばらつきを目視にて観察し、静電塗装による熱履歴後の熱変形量を評価した。
比較例1
押出機上流側に1カ所、下流側に1カ所の供給口を有する二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&フライデラー社製(ドイツ)]を用いて、日本国特開平2−201811号公報の実施例に記載の方法に従い、シリンダー温度270℃設定下で、92重量部のポリアミド6と8重量部の導電性カーボンブラックを均一に溶融混練し、表面光沢のあるマスターバッチのペレット(マスターペレット)を作製した。ここで、マスターペレットの中心線平均粗さ(Ra)が0.3μm未満になるように、高いせん断力が発生するスクリュー構成の混練条件下で実施した。得られたマスターバッチ(以下、PA/KB−MB1と略記)中の導電性カーボンブラックの凝集粒子数およびペレット側面水平部の中心線平均粗さ(Ra)を測定した(図3(a)及び図3(b)参照)。また、得られた導電性マスターバッチを用いて、日本国特開平2−201811号公報の実施例に記載の方法に従い、シリンダー温度300℃に設定した条件下で、ポリアミド6、ポリフェニレンエーテル、導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを成形後、表面抵抗率及び体積抵抗率−1を測定した。各物性値を組成と共に表1に示す。
【実施例1】
二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&フライデラー社製(ドイツ)]のスクリュー構成を変更し、シリンダー温度270℃設定下で、92重量部のポリアミド6と8重量部の導電性カーボンブラックを溶融混練し、表面光沢の少ないポリアミド6/導電性カーボンブラックのマスターバッチのペレット(マスターペレット)を作製した。ここで、マスターペレットの中心線平均粗さ(Ra)が、0.3μm以上になるように、スクリュー構成、スクリュー回転数、吐出量等を調整して、比較例1と比較して弱い溶融混練条件下で実施した。得られたマスターバッチ(以下、PA/KB−MB2と略記)中の導電性カーボンブラックの凝集粒子数およびペレット側面水平部の中心線平均粗さ(Ra)を測定した(図4(a)、図4(b)及び図4(c)参照)。また、得られた導電性マスターバッチを用いて、比較例1と同様の方法でポリアミド6、ポリフェニレンエーテル、導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを成形後、表面抵抗率及び体積抵抗率−1を測定した。各物性値を組成と共に表1に示す。

表1において、比較例1は日本国特開平2−201811号公報に記載の材料を用い、実施例を忠実に再現したものである。即ち、導電性カーボンブラックをポリアミド中に均一に溶融混練し、押出し、マスターバッチのペレット(マスターペレット)を作った。このマスターペレット中には、長径20μm以上の導電性カーボンブラックの凝集粒子が1つも存在しなかった。更に、このマスターバッチを日本国特開平2−201811号公報の実施例に記載の条件で、ポリフェニレンーテル、クエン酸、ポリスチレン及びポリアミド6と2軸押出機を用いて押出し、ペレットを得たものである。
一方、実施例1は本発明の特徴の1つである長径20μm以上の導電性カーボンブラックの凝集粒子が16個存在するマスターペレットを作り、比較例1と同一の方法で、更にこれをポリフェニレンーテル、クエン酸、ポリスチレン及びポリアミド6と2軸押出機を用いて押出し、ペレットを得たものである。
比較例1と実施例1で得られたペレットを射出成形したものについて、表面抵抗率と体積抵抗率−1を測定したところ、表1に示す通り、日本国特開平2−201811号公報の実施例に相当する比較例1と比較して、本発明の実施例1は、表面抵抗率の値で2桁、体積抵抗率−1の値で3桁も低い値を示すため、導電性に優れることが明らかである。
このように、本発明のような導電性カーボンブラックの凝集粒子が存在するマスターバッチを用いることで、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物の導電性が著しく向上することが分かる。
比較例2
日本国特開平2−201811号公報の実施例に記載の方法に従い、シリンダー温度270℃に設定した条件下で、90重量部のポリアミド66と10重量部の導電性カーボンブラックを均一に溶融混練し、表面光沢のあるマスターバッチのペレットを作製した。ここで、マスターペレットの中心線平均粗さ(Ra)が、0.3μm未満になるように、高いせん断力が発生するスクリュー構成の混練条件下で実施した。得られたマスターバッチ(以下、PA/KB−MB3と略記)中の導電性カーボンブラックの凝集粒子数およびペレット側面水平部の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。また、押出機上流側1ヵ所と下流側に1ヵ所の供給口を備えた二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&フライデラー社製(ドイツ)]を用いて、シリンダー温度300℃に設定した条件下で、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル、ブロック共重合体を供給し溶融混練した後、下流側供給口よりポリアミド66と導電性マスターバッチ(PA/KB−MB3)を供給して、ポリアミド66、ポリフェニレンエーテル、導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを成形し、体積抵抗率−2、荷重たわみ温度およびIzod衝撃値を測定した。各物性値を組成と共に表2に示す。
比較例3
押出機上流側に1カ所と下流側に2カ所(下流側供給口の内、上流側の供給口を下流側第1供給口、下流側の供給口を下流側第2供給口とする)の供給口を有する二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&フライデラー社製(ドイツ)]を用いて、日本国特開平8−48869号公報に記載の方法に従い、二軸押出機の上流部供給口より、ポリフェニレンエーテル、ブロック共重合体を供給し、下流側第1供給口よりポリアミド66を供給し、ポリフェニレンエーテル−ポリアミドを温度300℃の条件下で相溶化させた後、下流側第2供給口より導電性カーボンブラックを添加して、ポリアミド66、ポリフェニレンエーテル、導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを成形し、体積抵抗率−2、荷重たわみ温度およびIzod衝撃値は前述の方法で測定した。各物性値を組成と共に表2に示す。
比較例4
日本国特開平8−48869号公報の請求項9に記載の方法に従い、押出機下流側第2供給口より導電性カーボンブラックの代わりにPA/KB−MB3のマスターバッチを表2に記載した配合組成で添加した以外は比較例3と同様に実施した。各物性値を組成と共に表2に示す。
【実施例2〜4】
二軸押出機のスクリュー構成を変更し、シリンダー温度270℃に設定した条件下で、90重量部のポリアミド66と10重量部の導電性カーボンブラックを溶融混練し、表面光沢の少ないマスターバッチのペレットをそれぞれ作製した。ここで、マスターペレットの中心線平均粗さ(Ra)が、0.3μm以上になるように、スクリュー構成、スクリュー回転数、吐出量等をそれぞれ調整して、比較例2と比較して弱い溶融混練条件下で実施した。得られたそれぞれのマスターバッチ(以下、PA/KB−MB4、PA/KB−MB5、PA/KB−MB6と略記)中の導電性カーボンブラックの凝集粒子数およびペレット側面水平部の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。また、得られたそれぞれの導電性マスターバッチを用いて、表2に記載した配合組成で添加した以外は比較例2と同様に実施した。各物性値を組成と共に表2に示す。
【実施例5】
押出機下流側第2供給口より導電性カーボンブラックの代わりにPA/KB−MB5のマスターバッチを表2に記載した配合組成で添加した以外は比較例3と同様に実施した。各物性値を組成と共に表2に示す。

表2において、比較例3は、日本国特開平8−48869号公報に開示された製造方法(請求項7、8、段落番号[0008]、[0010]及び[0011])と同一の製造方法である。即ち、側部流れ供給口を備えた1つの押出機(エクストルーダー)内で、相溶化されたポリフェニレンーテル−ポリアミドベース樹脂を製造する工程と、該相溶化されたポリフェニレンーテル−ポリアミドベース樹脂を少なくとも300℃の高温溶融状態にした後このベース樹脂中に導電性カーボンブラックを配合する工程とを組み合わせて製造する方法である。
一方、実施例2〜4は、ポリアミドと導電性カーボンブラックを含み、本発明の特徴の1つである導電性カーボンブラックの一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として存在する導電性マスターバッチを製造する工程と、溶融状態のポリフェニレンエーテルに該導電性マスターバッチとポリアミドを同時に配合する工程とをこの順に組み合わせて製造する方法である。
比較例3と実施例2〜4で得られたペレットを射出成形したものについて、体積抵抗率−2、高荷重HDTおよびIzod衝撃値を測定したところ、表2に示す通り、日本国特開平8−48869号公報の実施例の製造方法に相当する比較例3に対し、本発明の実施例2〜4は、体積抵抗率−2の値では同等であるが、荷重たわみ温度およびIzod衝撃値ではいずれも高い値を示すため、耐熱変形性および耐衝撃性に優れることが明らかである。
このように、導電性カーボンブラックの凝集粒子が存在する本発明のマスターバッチを用いることで、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む樹脂組成物の荷重たわみ温度(HDT)が向上し、かつ、耐衝撃性を保持したまま高い導電性を達成することが可能であった。なお、本実験において、100μm以上の導電性カーボンブラックの凝集粒子は存在しなかった。また、実施例3および実施例5について、メルトフローレイト(MFR:ASTM D1238に準拠した、温度280℃、荷重5kgの条件下での10分間あたりの流出量)を測定した。その結果、実施例3のMFRは、24(g/10min)であり、実施例5のMFRは、19(g/10min)であった。すなわち、(1)ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含み、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として存在する導電性マスターバッチを製造する工程、及び(2)得られた導電性マスターバッチを、付加量のポリアミドと共に溶融状態のポリフェニレンエーテルに添加する工程を含む製造方法により、導電性、耐衝撃性、耐熱変形性および流動性に優れた導電性樹脂組成物を得ることが可能であった。
比較例5
比較例2の導電性樹脂組成物を用いて、自動車フェンダーを成形し、自動車塗装工程を通した。その結果、比較例2のフェンダーについては静電塗装性が劣っていた。また、熱変形量が大きく、実用に耐えるものではなかった。具体的には、自動車フェンダーとドアの間のクリアランスが大きく、位置によるばらつきも大きかった。
比較例6
比較例3の導電性樹脂組成物を用いて、自動車フェンダーを成形し、自動車塗装工程を通した。その結果、比較例3のフェンダーについては熱変形量が大きく、実用に耐えるものではなかった。具体的には、自動車フェンダーとドアの間のクリアランスが大きく、位置によるばらつきも大きかった。
【実施例6】
実施例2の導電性樹脂組成物を用いて、自動車フェンダーを成形し、自動車塗装工程を通した。その結果、実施例2のフェンダーは、熱変形量が極めて小さく(自動車フェンダーとドアの間のクリアランスが小さく、位置によるばらつきも小さく等間隔であった)、更に静電塗装性も満足できるものであり、耐衝撃性も含めて十分実用に耐えうるものであった。なお、実施例2のフェンダーの表面粗さは、0.65μmであり、静電塗装後の外観も良好であった(図5(a)、図5(b)及び図5(c)参照)。
【産業上の利用可能性】
本発明の導電性マスターバッチを用いると、耐熱性に優れ、且つ優れた導電性(従来、静電塗装に供されていた材料と同等以上の導電性、即ち、静電塗装可能なレベルの導電性)と耐衝撃性とを併せ持つ導電性樹脂組成物を得ることができる。そのような樹脂組成物は、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に有利に使用することができる。特に、本発明のマスターバッチを用いて得られた導電性樹脂組成物を用いて、自動車外板のような大型成形体を成形し、得られた成形体を静電塗装に付す場合、該成形体は熱変形を起こしにくいだけでなく、該成形体の耐衝撃性の低下が無く、且つ該成形体の優れた導電性により優れた塗面を形成することができるため、自動車外板(自動車フェンダーなど)製造用の樹脂組成物として極めて有用である。
【図1】

【図2】










【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含む導電性マスターバッチであって、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在することを特徴とする導電性マスターバッチ。
【請求項2】
光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が1〜50個存在することを特徴とする請求項1に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項3】
光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が、2〜40個存在することを特徴とする請求項1に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項4】
光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性カーボンブラックの凝集粒子が、2〜30個存在することを特徴とする請求項1に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項5】
導電性カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
【請求項6】
ペレット状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
【請求項7】
該ペレットの表面の複数の箇所に関して、表面粗さ計を用いて測定した表面粗さ(Ra)の平均値が0.3〜2.0μmであることを特徴とする請求項6に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項8】
該表面粗さ(Ra)の平均値が0.4〜1.5μmであることを特徴とする請求項6に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項9】
該ペレットが円柱状であって、直径が1.5〜3.5mm、長さが2.0〜3.5mmであることを特徴とする請求項7または8に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項10】
該導電性カーボンブラックの量が、該マスターバッチの重量に対して、5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電性マスターバッチ。
【請求項11】
該導電性カーボンブラックの量が、該マスターバッチの重量に対して、6〜10重量%であることを特徴とする請求項10に記載の導電性マスターバッチ。
【請求項12】
ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む導電性樹脂組成物であって、請求項1〜11のいずれかに記載の導電性マスターバッチを、ポリフェニレンエーテル及び場合により付加量のポリアミドと溶融混練することにより製造されることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項13】
導電性カーボンブラックの量が、導電性カーボンブラックを除く全ての成分の合計100重量部に対して0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項12に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項14】
自動車外板製造用であることを特徴とする請求項12または13に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の導電性樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項16】
請求項12〜14のいずれかに記載の導電性樹脂組成物からなる自動車外板。
【請求項17】
自動車フェンダーであることを特徴とする請求項16に記載の自動車外板。
【請求項18】
射出成形体であることを特徴とする請求項17に記載の自動車外板。
【請求項19】
該自動車外板の表面の複数の箇所に関して、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した表面粗さの平均値が、0.05〜1μmであって、但し該表面粗さは、該自動車外板表面の高さの最大値と最小値の差として定義される、ことを特徴とする請求項18に記載の自動車外板。
【請求項20】
ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び導電性カーボンブラックを含む導電性樹脂組成物の製造方法であって、
(1)ポリアミドと導電性カーボンブラックとを含み、該導電性カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として存在する導電性マスターバッチを製造する工程、及び
(2)得られた導電性マスターバッチを、溶融状態のポリフェニレンエーテルに添加する工程
を含む方法。
【請求項21】
該工程(2)において、ポリアミドを、該導電性マスターバッチの添加と同時に、溶融状態の該ポリフェニレンエーテルに添加することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
導電性マスターバッチとして、請求項1〜11のいずれかに記載の導電性マスターバッチを用いることを特徴とする請求項20または21に記載の方法。

【国際公開番号】WO2004/060980
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506704(P2005−506704)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009104
【国際出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【特許番号】特許第3705599号(P3705599)
【特許公報発行日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】