説明

導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】周辺環境が広範に及んでもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献する導電性ローラ及び現像装置、並びに、広範な使用環境においてもかぶりのない高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成された弾性層3と、この弾性層3の外周面に形成されたウレタンコート層4とを備えてなる導電性ローラ1であって、ウレタンコート層4は、ウレタン樹脂と、ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の少なくとも1種のイオン液体と、ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部のカルボン酸金属化合物とを含有していることを特徴とする導電性ローラ1、この導電性ローラ1を備えて成る現像装置、並びに、この現像装置を備えて成る画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、周辺環境が広範に及んでもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献する導電性ローラ及び現像装置並びに広範な使用環境においてもかぶりのない高品質の画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は多種多様の各種ローラを備えている。前記各種ローラとして、例えば、導電性又は半導電性を有する導電性ローラ、比較的低硬度の弾性ローラ等が挙げられる。前記導電性ローラとしては、具体的には、感光体等の像担持体を一様に帯電させる帯電ローラ、現像剤を担持搬送して像担持体に供給する現像ローラ、現像ローラに現像剤を帯電させつつ供給する現像剤供給ローラ、記録紙等の記録体に転写された現像剤像を定着させる定着ローラ等が挙げられる。これらの各種ローラは、通常、その機能・用途等に応じて、異なる特性、例えば、硬度、電気抵抗率等を有している。
【0003】
このような導電性ローラとして、例えば、特許文献1には「イオン性液体を含むことを特徴とする半導電性部材」、具体的には「メチルイミダゾリウム塩とビニルモノマー又は(メタ)アクリレートとを含む帯電ロール」が記載されている(実施例参照)。
【0004】
また、特許文献2には「(A)〜(C)を必須成分とすることを特徴とする電子写真機器用導電性組成物を、導電性部材の少なくとも一部に用いたことを特徴とする電子写真機器用導電性部材。
(A)マトリックスポリマー。
(B)金属酸化物、金属炭化物およびDBP吸着量が100ml/100g以上のカーボンブラックからなる群から選ばれた少なくとも1つの導電性充填剤。
(C)イオン性液体。」が記載されている。
【0005】
特許文献2のイオン液体は、具体的には「1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、又は1−ヘキシルピリジニウムクロライド」である(実施例参照)。
【0006】
特許文献3には「イオン導電剤として、特定の一般式(1a)または一般式(1b)で表される第四級アンモニウム塩(但し、オクチルトリメチルアンモニウム塩を除く)を含有する材料を用いてなる帯電部材」が記載されている。前記第四級アンモニウム塩は、具体的には「Nに結合する4つのアルキル基のうち、いずれか1つが炭素数4、6、8のアルキル基であり、残りの3つがメチル基またはエチル基である(但し、オクチルトリメチルアンモニウム塩を除く)か、もしくはいずれか3つが炭素数4、6、8のアルキル基であり、残りの1つがメチル基またはエチル基である」第四級アンモニウム塩である(特許文献3の0011欄参照。)。
【0007】
さらに、特許文献4には「導電剤として少なくとも一種のイオン性液体を含有するゴム状弾性体からなる導電性ゴム部材をコア部材の周囲に設けたことを特徴とする導電性ロール」が記載され、特許文献5には「導電性基体と導電性の表面層とを有する接触帯電用の帯電部材であり、該表面層は、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂中に分散している導電性の樹脂粒子を含み、かつその表面に該樹脂粒子に由来する凸部を有し、該表面の表面粗さが、Rzjisで3μm以上、20μm以下であり、該樹脂粒子は、イオン導電剤を含有し、かつその平均粒子径が1μm以上、30μm以下であることを特徴とする帯電部」が記載されている。
【0008】
ところで、特許文献6には「DC帯電方式によって複数枚の画像出しを行った場合でも、トナー外添剤の付着に起因した過剰帯電の発生を抑制することができ、良好な帯電特性により、白もや状の画像不良が画像上に発生しない導電性部材」として、その請求項1に「少なくとも導電性支持体と、該導電性支持体を被覆している導電性弾性層と、を有している導電性部材であって、該導電性部材の表面層が、芳香族カルボン酸と3価の金属とからなる化合物を含有していることを特徴とする導電性部材」が、請求項6に「少なくとも導電性支持体と、該導電性支持体を被覆している導電性弾性層と、を有している導電性部材であって、該導電性部材の表面層が、芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸から選択される芳香族カルボン酸誘導体、該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物、及び無機陰イオンと無機陽イオンとから形成された無機化合物を有し、該芳香族カルボン酸誘導体、該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物及び該無機陰イオンの含有量をそれぞれA(wt.%)、B(wt.%)、C(ppm)としたとき、A、B、Cが下記条件
1/99≦A/B≦10/90
10≦C
を満足することを特徴とする導電性部材」がそれぞれ、記載されている。
【0009】
導電性ローラを備えた画像形成装置において、画像形成装置が設置された周囲の環境が変化すると、その内部の環境も変化するから、その内部に装着された導電性ローラの特性が変化して初期の機能を十分に発揮できないことがある。例えば、導電性ローラが現像ローラである場合には、その周辺の湿度が低下すると、所定の帯電量に帯電した現像剤を像担持体に所定量供給することができず、形成される白べた画像(無地画像とも称する。)等に不必要な現像剤が定着される現象(かぶりと称する)が生じることがある。この現象は特にモノクロ画像を印刷した後にカラー画像を印刷すると顕著に生じる。このように、画像形成装置に装着されたローラの周辺環境が変化すると、例えば、現像ローラの周辺湿度が低下すると、所望の画像が得られないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−191655号公報
【特許文献2】特開2005−220317号公報
【特許文献3】特許第3804476号明細書
【特許文献4】特開2003−202722号公報
【特許文献5】特開2008−276022号公報
【特許文献6】特開2005−315979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、本発明者のさらなる検討によれば、ローラの周辺湿度が低下する方向に変化するときに加えて周辺湿度が上昇する方向に変化するときにも無地画像にかぶりが発生することが見出された。例えば、イオン液体を含有する導電性ローラは周辺湿度が上昇する方向に変化してもかぶりが発生しやすく、イオン液体の含有量が多くなるほどかぶりが顕著に発生することが見出された。そして、本発明者は、低湿度環境におけるかぶりの発生と高湿度環境におけるかぶりの発生はトレードオフの関係にあって広範な使用環境においてかぶりのない画像を形成しにくいことを新たに見出した。
【0012】
この発明は、周辺環境が広範に及んでもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献する導電性ローラ及び現像装置を提供することを目的とする。
【0013】
この発明は、広範な使用環境においてもかぶりのない高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、新たに見出された課題を解決するために、低湿度環境におけるかぶりの発生は像担持体に供給される現像剤の帯電過剰が影響しているのではないかと推測して低湿度環境下で導電性ローラが発揮する「除電機能」に着目すると共に、また、高湿度環境におけるかぶりの発生は現像剤の帯電不足が影響しているのではないかと推測して高湿度環境下で導電性ローラが発揮する「帯電機能」に着目して、鋭意検討した。その結果、本発明者は、導電性ローラのウレタンコート層に特定量のイオン液体と特定量のカルボン酸金属化合物とを含有させると、イオン液体による除電特性とカルボン酸金属化合物による帯電特性とが相乗的に作用して、従来トレードオフの関係にあるとされていた低湿度環境下での「除電機能」と高湿度環境下での「帯電機能」とをバランスよく両立できることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明者は、低湿度環境において現像剤に付与する帯電量を一定にして画像品質をより一層向上させようとしてウレタンコート層にイオン液体を比較的多量に含有させると現像剤に付与する帯電量が低下して特に高湿度環境においてかぶりが発生しやすくなるものの、イオン液体に加えてカルボン酸金属化合物をウレタンコート層に含有させると、周辺環境にかかわらず現像剤に付与する帯電量の均一性を確保しつつも帯電量の低下を防止できることを見出して、本願発明を完成した。
【0016】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された弾性層と前記弾性層の外周面に形成されたウレタンコート層とを備えてなる導電性ローラであって、前記ウレタンコート層は、ウレタン樹脂と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部のカルボン酸金属化合物とを含有していることを特徴とする導電性ローラであり、
請求項2は、請求項1に記載の導電性ローラとを備えて成ることを特徴とする現像装置であり、
請求項3は、請求項2に記載の現像装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る導電性ローラは、ウレタン樹脂と特定量のイオン液体と特定量のカルボン酸金属化合物とを含有しているから、画像形成装置に装着されたときに、通常の湿度、例えば相対湿度50%程度はもちろん低湿度環境(例えば相対湿度が50%未満、好ましくは20%以下)においても、また高湿度環境(例えば相対湿度が50%超、好ましくは70%以上)においても形成される画像にかぶりが発生することを実質的に抑えることができる。また、この発明に係る現像装置はこの発明に係る導電性ローラを備えて成る。したがって、この発明によれば、周辺環境が広範に及んでもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献する導電性ローラ及び現像装置を提供することができる。
【0018】
この発明に係る画像形成装置はこの発明に係る現像装置を備えて成る。したがって、この発明によれば、広範な使用環境においてもかぶりのない高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明に係る導電性ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る導電性ローラは、軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成され、ウレタン樹脂と少なくとも1種のイオン液体とカルボン酸金属化合物とを所定の割合で含有するウレタンコート層とを備えてなる。このように、導電性ローラが弾性層の外周面に前記ウレタンコート層を備えていると、導電性ローラは、その導電性、低湿度環境下での「除電機能」及び高湿度環境下での「帯電機能」を互いに大きく相殺することなく発揮でき、すなわち低湿度環境下でも高湿度環境下でも均一で所期の帯電量を現像剤に付与することができる。その結果、この発明に係る導電性ローラは、通常の湿度だけでなく低湿度環境下においてもまた高湿度環境下においても現像剤を所望のように均一に帯電させることができるから、画像形成装置の現像装置に装着されたときに、その周辺環境が広範に及んでも、形成される画像に発生しうるかぶりを防止できる。この発明において、「かぶりのない」とは画像にかぶりがまったくない場合に加えて画像に実用上問題のない許容できる程度のかぶりがある場合をも含む。
【0021】
さらに、イオン液体の種類によっては、例えばイオン液体が2つの水酸基を有するイオン液体である場合には、ウレタンコート層に現像剤が長期間にわたって表面に固着しにくいうえ、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像、特に最初に形成される画像に所望量の現像剤が定着されないスジ状の空白部(白筋とも称する。)が発生することを実質的に抑えることができる。
【0022】
この発明に係る導電性ローラにおいて、ウレタン樹脂とイオン液体とカルボン酸金属化合物とは、ウレタンコート層内に、互いに独立に存在していてもよく、また、これらが反応した反応体として存在していてもよく、複合体等として存在していてもよい。
【0023】
この発明に係る導電性ローラを、その一例を挙げて、説明する。この発明に係る導電性ローラの一例である導電性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成されたウレタンコート層4とを備えている。
【0024】
軸体2は、従来公知の導電性ローラにおける軸体と基本的に同様である。この軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体2は熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
【0025】
弾性層3は、従来公知の導電性ローラにおける弾性層と基本的に同様である。この弾性層3は、軸体2の外周面に後述する導電性組成物を硬化して成り、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度(JIS K6301)を有していると導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみにも優れる。
【0026】
弾性層3は、体積抵抗率が10〜10Ω・cmの範囲にあり、及び/又は、電気抵抗率が10〜10Ωの範囲にあるのが好ましい。弾性層3の体積抵抗率及び/又は電気抵抗率が前記範囲内にあると、導電性ローラ1を画像形成装置に装着しときに、現像剤を所望のように担持、供給して所望の品質を有する画像を形成することに貢献できる。前記体積抵抗率はJIS K6911に規定された方法(印加電圧を100V)に準じて測定することができる。前記電気抵抗率は、例えば、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、導電性ローラ1の弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定することができる。
【0027】
弾性層3は、被当接体との当接状態において被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる点で、その厚さは1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのが特に好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に弾性層3の厚さを厚くしすぎると弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると弾性層3の厚さは30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
【0028】
弾性層3を形成する導電性組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0029】
前記導電性組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。この付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)平均組成式:RSiO(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0030】
ウレタンコート層4は、導電性ローラ1の最外層として、好ましくは0.1〜50μmの層厚に、より好ましくは10〜25μmの層厚に、形成されている。このウレタンコート層は弾性層3の外周面に後述するウレタン樹脂組成物を硬化して成り、ウレタン樹脂に加えてピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体をウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の割合で含有すると共に、カルボン酸金属化合物をウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の割合で含有している。
【0031】
この発明において、イオン液体が後述する2つの水酸基を有するイオン液体(以下、水酸基含有イオン液体と称することがある。)である場合には、ウレタンコート層4は、水酸基含有イオン液体を含有するウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成される。したがって、このウレタンコート層4は、このウレタン樹脂組成物で形成されるウレタン樹脂とカルボン酸金属化合物とを含有し、このウレタン樹脂は、ウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン形成成分である、水酸基含有イオン液体とこの水酸基含有イオン液体以外のポリオールとポリイソシアネートとから形成される。このウレタン樹脂における水酸基含有イオン液体の含有量はポリオール及びポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜25質量部である。すなわち、ウレタンコート層4は、水酸基含有イオン液体以外のポリオール、ポリイソシアネート、並びに、前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜25質量部の水酸基含有イオン液体が反応してなるウレタン樹脂と、前記の合計含有量を100質量部としたときに1〜25質量部のカルボン酸金属化合物とを含有している。
【0032】
このウレタンコート層4は、ウレタン樹脂、イオン液体及びカルボン酸金属化合物の他に、所望により、各種ウレタン樹脂組成物に通常用いられる各種添加剤等を含有していてもよい。このような添加剤として、例えばカーボンブラック等の導電性付与剤、後述するウレタン樹脂組成物における他の成分例えば助剤等が任意成分として含有されることがある。また、ウレタンコート層4は特許文献5に記載されている「バインダー樹脂及び該バインダー樹脂中に分散している導電性の樹脂粒子」を実質的に含有していない。ここで、「実質的に含有していない」とは、前記導電性の樹脂粒子がウレタンコート層4にまったく含有されていない場合のみならず、効果を発揮しない程度に微量、例えばウレタン樹脂100質量部に対して5質量部以下で含有されている場合をも含む。ウレタンコート層4がカーボンブラックを含有する場合には、カーボンブラックのDBP吸着量が100mL/100g未満であるのが好ましい。このDBP吸着量はJIS K6217−4に準じて測定できる。
【0033】
ウレタンコート層4に含有されるウレタン樹脂、すなわち、ウレタンコート層4を形成するベース樹脂となるウレタン樹脂は、イオン液体が水酸基含有イオン液体でない場合には、公知のウレタン樹脂であればよく、通常、ポリオールとポリイソシアネートとから得られる。このポリオールはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールであるのが好ましく、このポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリオール及びポリイソシアネートの詳細はウレタン樹脂組成物において説明する。
【0034】
一方、ウレタンコート層4に含有されるウレタン樹脂は、前記イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、この水酸基含有イオン液体と前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの反応生成物であり、その主鎖又は側鎖に前記水酸基含有イオン液体、具体的には、その陽イオン部分が結合して成る。前記水酸基含有イオン液体の陰イオンは、ウレタンコート層4内に存在していれば、静電作用で陽イオンに結合して、又は、陽イオンの近傍に存在して、ウレタン樹脂の一部となっていてもよく、また、陽イオンから離れて存在し、ウレタン樹脂とは独立していてもよく、これら両方であってもよい。このようなウレタン樹脂は繰り返し単位(I)〜(III)からなる。すなわち、このウレタン樹脂は繰り返し単位(I)〜(III)を含有している。
(I) −O−A−O−
(II) Rol(−O−)
(III) Ris(−NHCO−)
【0035】
繰り返し単位(I)〜(III)において、繰り返し単位(I)は水酸基含有イオン液体の残基であって、陰イオンを含んでいてもいなくてもよく、Aは水酸基含有イオン液体の水酸基を除く残基である。繰り返し単位(II)はポリオールの残基で、Rolはポリオールの水酸基を除く残基で、nは2以上の整数であり、n個以上の前記(−O−)はそれぞれ独立にRolに結合している。繰り返し単位(III)はポリイソシアネートの残基で、Risはポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、mは2以上の整数であり、m個以上の(−NHCO−)はそれぞれ独立にRisに結合している。
【0036】
繰り返し単位(I)〜(III)はそれぞれ水酸基含有イオン液体、ポリオール及びポリイソシアネートに由来し、これらと基本的に同様である。したがって、例えば、繰り返し単位(I)は2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体の残基であるのが好ましく、繰り返し単位(II)はポリエステルジオール又はポリエーテルジオールの残基であるのが好ましく、繰り返し単位(III)は脂肪族ジイソシアネートの残基又は芳香族ポリイソシアネートの残基であるのが好ましい。ポリオール及び記ポリイソシアネートは水酸基を含有していないイオン液体におけるウレタン樹脂を形成するポリオール及びポリイソシアネートと基本的に同様であり、その詳細はウレタン樹脂組成物において説明する。
【0037】
ウレタン樹脂は、繰り返し単位(II)の質量及び繰り返し単位(III)の質量の合計質量を100質量部としたときに繰り返し単位(I)の質量が1〜25質量部となるように、繰り返し単位(I)〜(III)を有している。ここで、繰り返し単位(I)の質量は反応前の水酸基含有イオン液体(陰イオンを含む。)に換算したときの質量であり、繰り返し単位(II)の質量は反応前のポリオールに換算したときの質量であり、繰り返し単位(III)の質量は反応前のポリイソシアネートに換算したときの質量である。通常、このウレタン樹脂における各繰り返し単位(I)〜(III)の含有量はウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分及びイオン液体の含有量とほぼ一致する。
【0038】
ウレタンコート層4に含有されるイオン液体は、オニウム塩の1種であり、少なくとも室温付近の温度で液体状態にある高導電率を有する液体化合物であって「イオン性液体」とも称される。この発明において、イオン液体は、各種のイオン液体の中でも、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種である。イオン液体が前記群から選択される少なくとも1種であると低湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えて低湿度環境下においてかぶりのない画像を形成することに貢献できる。したがって、イオン液体は前記群から選択されるものであれば1種でも複数でもよい。このイオン液体はピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを陽イオンとする有機化合物である。
【0039】
ピリジニウム系イオン液体は、陽イオンとしてピリジン環を構成する窒素原子にアルキル基等が結合して成るピリジニウムイオンを基本骨格とするイオン液体であり、分子内に2つの水酸基を有していない。前記アルキル基は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
前記ピリジン環は、その環を構成する炭素原子に結合する水素原子がアルキル基で置換されたアルキル基置換ピリジン環であってもよい。前記水素原子を置換するアルキル基は、1つでも複数でもよく、前記ピリジン環を構成する窒素原子に結合するアルキル基と基本的に同様であり、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。水素原子を置換するアルキル基と窒素原子に結合するアルキル基とは同一でも異なっていてもよい。アルキル基置換ピリジン環として、具体的には、前記アルキル基として1つのメチルを有するα−ピコリン、β−ピコリン及びγ−ピコリン、前記アルキル基として1つのエチルを有するα−エチルピリジン、β−エチルピリジン及びγ−エチルピリジン、前記アルキル基として2つのメチルを有する2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン等が挙げられる。これらの中でもピリジン、γ−ピコリンであるのが好ましい。
【0041】
ピリジニウム系イオン液体を構成する陰イオンは、特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、BF、PF、CFSO(トリフルオロメタンスルホニルイオン)、(CFSO (ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン:TFSI)等が挙げられる。これらの中でも、有機酸陰イオンであるBF、PF、CFSO及び(CFSOが好ましく、(CFSOが特に好ましい。
【0042】
前記アルキル基で置換されていないピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アリルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0043】
また、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。さらに、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ヘキサフルオロホスファートイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、1−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−ノニル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−デシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0044】
アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子にアルキル基等が結合して成るアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体であり、分子内に2つの水酸基を有していない。前記アルキル基はピリジニウム系イオン液体における窒素原子に結合する前記アルキル基と基本的に同様である。
【0045】
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、脂環式アミン化合物、脂肪族アミン化合物等が挙げられる。これらのアミン化合物からなるアンモニウムイオンとしては、例えば、Rイオン(4つのRは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であり、複数のRが環を形成していてもよい。)等が挙げられる。
【0046】
4つの前記アルキル基Rが同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N,N−テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0047】
3つの前記アルキル基Rが同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0048】
この発明において、このアミン系イオン液体は、前記した中でも、陰イオンとしてCFSO(トリフルオロメタンスルホニルイオン)であるのが好ましく、また、4つの前記Rすべてが炭素数3以下のアルキル基であるのが好ましい。
【0049】
水酸基含有イオン液体は、2つの水酸基を有しており、好ましくは末端に2つの水酸基を有している。このような2つの水酸基を有するイオン液体は、特に限定されず、例えば、2つの水酸基を有するアンモニウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するアミン系イオン液体、2つの水酸基を有するイミダゾリウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するイミダゾリウム系イオン液体、2つの水酸基を有するピリジニウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するピリジニウム系イオン液体等が挙げられる。前記ウレタン樹脂組成物に含有される水酸基含有イオン液体は1種でもよく複数でもよい。水酸基含有イオン液体における陰イオンは前記陰イオンと基本的に同様である。水酸基含有イオン液体の中でも、2つの水酸基を有するアミン系イオン液体、特に、2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体であるのが、低湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができるうえ、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを実質的に抑えることができる点で、好ましい。
【0050】
2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子に4つの置換基が結合して成る、2つの水酸基を有するアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体である。脂肪族系アミン化合物としては、例えば、脂環式アミン化合物及び脂肪族アミン化合物等が挙げられる。
【0051】
前記アンモニウムイオンとしては、例えば、(R11121314)Nイオン(R11、R12、R13及びR14の2つは同一でも異なっていてもよい、水酸基を1個有する炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族有機基であり、R11、R12、R13及びR14の残り2つは同一でも異なっていてもよい、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基であり、R11、R12、R13及びR14の2つで環を形成していてもよい。)等が挙げられる。
【0052】
11、R12、R13及びR14の2つの前記脂肪族有機基は、直鎖状の脂肪族有機基であるのが好ましく、水酸基以外の置換基を有していてもよい。前記脂肪族有機基としては、例えば、水酸基を1個有するアルキル基、水酸基を1個有するアルケニル基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。前記アルキル基及び前記アルケニル基は炭素数1〜40であるのが好ましく、前記ポリオキシアルキレン基は炭素数4〜16、例えばポリオキシエチレンの場合には重合度が2〜8であるのが好ましい。このような有機基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシエテニル基、ヒドロキシプロペニル基等のヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基等が挙げられる。この発明において、R11、R12、R13及びR14のうちの2つが同一の前記脂肪族有機基であるのが好ましい。
【0053】
11、R12、R13及びR14のうち前記脂肪族有機基以外の残り2つは、炭素数1〜40の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖状のアルキル基又はアルケニル基であるのが好ましい。前記アルキル基又は前記アルケニル基は置換基を有していてもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基等が挙げられる。
【0054】
前記2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体として、例えば、2つの2−ヒドロキシエチル基を有する脂肪族アミン系イオン液体、2つのポリオキシエチレン基を有する脂肪族アミン系イオン液体等が挙げられる。2つの2−ヒドロキシエチル基を有する脂肪族アミン系イオン液体としては、具体的には、例えば、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイル−エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0055】
2つのポリオキシエチレン基を有する脂肪族アミン系イオン液体としては、具体的には、例えば、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイル−ビス(ポリオキシエチレン)−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0056】
イオン液体は、後述するカルボン酸金属化合物による効果を大きく低減させることなく、低湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができる。そして、低湿度環境におけるかぶりの発生を抑えることが特に重要であれば、ピリジニウム系イオン液体から選択される少なくとも1種のイオン液体を採用するのが好ましく、低湿度環境におけるかぶりの発生と共に画像に待機又は停止後の前記白筋が発生することを抑えることが特に重要であれば、水酸基含有イオン液体、特に2つの水酸基を有するアミン系イオン液体を採用するのが好ましい。
【0057】
このイオン液体は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の割合でウレタンコート層4に含有されている。この発明においては、ウレタンコート層4はイオン液体に加えてカルボン酸金属化合物を含有しているから、イオン液体の存在によって発生しうる高湿度環境におけるかぶりを防止できる。したがって、イオン液体は従来よりも比較的多量に含有させることもでき、この発明においては、イオン液体の含有量は20質量部以上25質量部以下とすることができる。イオン液体の含有量が1質量部未満であると、イオン液体の効果が十分に得られず、低湿度環境におけるかぶりの発生を抑えることができないことがある。一方、イオン液体の含有量が25質量部を超えると、低湿度環境下又は高湿度環境下においてイオン液体がウレタンコート層4の表面にブリードアウトして所望量の現像剤が定着されないスジ状の空白部である白筋が発生することによって画像品質が低下することがある。また、イオン液体の含有量が25質量部を超えると後述するカルボン酸金属化合物が共存していても高湿度環境におけるかぶりが発生しやすくなることがある。イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合に、その含有量が25質量部を超えると、画像形成装置の待機後に形成される画像に白筋が発生して画像の品質が低下することがある。この発明において、低湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができ、所望により、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを効果的に抑えることができる点で、イオン液体の含有量はウレタン樹脂100質量部に対して9〜24質量部であるのが好ましい。通常、ウレタンコート層4におけるイオン液体の含有量はウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分100質量部に対するイオン液体の含有量とほぼ一致する。
【0058】
ウレタンコート層4はイオン液体に加えてカルボン酸金属化合物を含有している。カルボン酸金属化合物がウレタンコート層4にイオン液体と共に含有されていると、低湿度環境におけるかぶりを発生させることなく高湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができる。特に、低湿度環境におけるかぶりの発生を効果的に抑えるためにイオン液体の含有量を多くしてもその効果を損ねることなく、高湿度環境におけるかぶりの発生を効果的に抑えることができる。このように、カルボン酸金属化合物がウレタンコート層4に含有されていると広い湿度範囲にわたってかぶりの発生を防止できる。カルボン酸金属化合物は1種でも複数でもよい。
【0059】
カルボン酸金属化合物におけるカルボン酸は、金属とイオン結合、共有結合又は配位結合によって金属塩、金属錯体等の金属化合物を形成するカルボン酸であればよく、各種のカルボン酸が挙げられる。このようなカルボン酸として、例えば、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、サリチル酸、安息香酸、アントラニル酸、フェニル酢酸、ナフトエ酸及びこれらの誘導体、また多価カルボン酸であるフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸及びこれらの誘導体等が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、EDTA、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。脂環式カルボン酸としては、例えば、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、一般的に安定な金属化合物を形成できる点で、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0060】
カルボン酸は各種の置換基を有していてもよく、例えば、金属塩又は金属錯体を形成しやすい水酸基又はアルコキシ基を有しているのが好ましく、カルボキシ基に対してβ位に水酸基又はアルコキシ基を有しているのが金属との安定な六員環金属塩又は金属錯体を形成できる点でより一層好ましく、水酸基を有しているのが特に好ましい。水酸基を有するカルボン酸として、例えば、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸及びそれらの誘導体等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシエタン酸、2−ヒドロキシプロパン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸等の脂環式ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0061】
このカルボン酸は、水酸基又はアルコキシ基に代えて、又は、加えて、他の置換基、例えば、脂肪族置換基又は芳香族基等を有していてもよい。脂肪族置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、s−ヘキシル基等が挙げられる。芳香族基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。カルボン酸は、このような他の置換基を1種又は複数種類有していてもよく、好ましくは脂肪族置換基、特に好ましくは同一の脂肪族置換基を複数有している。このような他の置換基を有するカルボン酸としては、例えば、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸等が挙げられる。アルキルサリチル酸としては、例えば、3−メチルサリチル酸、3−エチルサリチル酸、3−t−ブチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、5−エチルサリチル酸、5−t−ブチルサリチル酸等が挙げられる。ジアルキルサリチル酸としては、例えば、3,5−ジメチルサリチル酸、3,5−ジエチルサリチル酸、3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸等が挙げられる。
【0062】
カルボン酸金属化合物における金属は、カルボン酸とイオン結合、共有結合又は配位結合によって金属塩、金属錯体等の金属化合物を形成する金属であればよく、各種の金属が挙げられる。このような金属として、例えば、亜鉛、鉄、アルミニウム、クロム、ガリウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、銅、ニッケル、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、現像剤への帯電付与効果が高い点で、例えば、亜鉛、クロム等の金属が好ましく、亜鉛が特に好ましい。
【0063】
カルボン酸と金属とからなるカルボン酸金属化合物は、この発明の目的をよく達成できる点で、下記化学式(式中、Rは前記脂肪族置換基又は前記芳香族基である。)で表されるジアルキルサリチル酸と亜鉛とからなる亜鉛化合物、又は、下記化学式のZnをCrに置き換えたジアルキルサリチル酸とクロムとからなるクロム化合物であるのが好ましく、ジアルキルサリチル酸と亜鉛とからなる亜鉛化合物であるのが特に好ましい。このような亜鉛化合物としては、例えば、3,5−ジメチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジエチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸亜鉛等が挙げられ、3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸亜鉛が好ましい。このようなクロム化合物としては、例えば、3,5−ジメチルサリチル酸クロム、3,5−ジエチルサリチル酸クロム、3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸クロム等が挙げられ、3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸クロムが好ましい。
【0064】
【化1】

【0065】
このカルボン酸金属化合物は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の割合でウレタンコート層4に含有されている。カルボン酸金属化合物の含有量が1質量部未満であると、カルボン酸金属化合物の効果が十分に得られず、高湿度環境におけるかぶりの発生を抑えることができないことがある。一方、カルボン酸金属化合物の含有量が25質量部を超えると、ウレタンコート層4の表面にカルボン酸金属化合物がブリードアウトして白筋が発生することによって画像品質が低下することがある。この発明において、低湿度環境におけるかぶりの発生を効果的に抑えつつ高湿度環境におけるかぶりの発生も抑えることができる点で、カルボン酸金属化合物の含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して2〜15質量部であるのが好ましく、6〜14質量部であるのが特に好ましい。通常、ウレタンコート層4におけるカルボン酸金属化合物の含有量は、ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分100質量部に対するカルボン酸金属化合物の含有量とほぼ一致する。
【0066】
ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂を形成する前駆体であるウレタン調整成分と、所定量すなわちウレタン調整成分100質量部に対して1〜25質量部のイオン液体と、所定量すなわちウレタン調整成分100質量部に対して1〜25質量部のカルボン酸金属化合物と、所望により各種添加剤とを含有している。したがって、ウレタンコート層4は、ウレタン調整成分と、所定量のイオン液体と、所定量のカルボン酸金属化合物と、所望により各種添加剤とを含有するウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成されている。前記ウレタン樹脂組成物におけるイオン液体、カルボン酸金属化合物及び各種添加剤は前記した通りである。
【0067】
前記ウレタン調整成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとイソシアネートとの混合物が挙げられる。
【0068】
前記ポリオールは、分子内に好ましくは末端に水酸基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合にはイオン液体以外のポリオールであってポリウレタンの調製に通常使用される各種ポリオールであればよい。このようなポリオールとして、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、前記ポリオールはジオールであるのが好ましく、したがって、ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールであるのがさらに好ましく、ポリエステルジオールが特に好ましい。
【0069】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、800〜15000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0070】
前記ポリイソシアネートは、分子内に好ましくは末端にイソシアネート基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種ポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましい。イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、ポリイソシアネートはジイソシアネートであるのが好ましく、また画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また低湿度環境下においても高品質の画像を形成することができる点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、したがって、脂肪族ジイソシアネートであるのが特に好ましい。
【0071】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。前記誘導体としては、前記ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
【0072】
前記ポリオール及び含有される場合には前記水酸基含有イオン液体と前記ポリイソシアネートとの混合割合は、特に限定されないが、ポリオールに含まれる水酸基(OH)及び水酸基含有イオン液体に含まれる水酸基(OH)の合計モル数と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)のモル数との比率[NCO/OH]が0.7〜1.15であるのが好ましい。この比率[NCO/OH]は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。ただし、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比の3〜4倍相当量を配合してもよい。
【0073】
ウレタン樹脂組成物におけるイオン液体は、ポリオール及びポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜25質量部である。イオン液体の含有量が1質量部未満であると前記したようにイオン液体の効果が十分に得られないことがあり、一方、前記含有量が25質量部を超えると前記したように形成される画像の品質が低下することがある。低湿度環境におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができるうえ、所望により、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを効果的に抑えることができる点で、イオン液体の含有量はポリオール及びポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに9〜24質量部であるのが好ましい。
【0074】
ウレタン樹脂組成物におけるカルボン酸金属化合物は、ポリオール及びポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜25質量部である。カルボン酸金属化合物の含有量が1質量部未満であると前記したようにカルボン酸金属化合物の効果が十分に得られないことがあり、一方、前記含有量が25質量部を超えると前記したように形成される画像の品質が低下することがある。低湿度環境におけるかぶり及び高湿度環境におけるかぶりを抑えることができる点で、カルボン酸金属化合物の含有量は前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに2〜15質量部であるのが好ましく、6〜14質量部であるのが特に好ましい。
【0075】
ウレタン樹脂組成物には、ウレタン調整成分、イオン液体及びカルボン酸金属化合物に加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0076】
ウレタン樹脂組成物は、ウレタン調整成分とイオン液体とカルボン酸金属化合物と、所望により、溶媒、助剤等を適宜の方法で混合して得られる。
【0077】
この発明に係る導電性ローラの製造方法を、導電性ローラ1を例に挙げて、以下に説明する。
【0078】
導電性ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にウレタンコート層4を形成して、製造される。導電性ローラ1を製造するには、まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は弾性層3が形成される前にプライマーが塗布されてもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、弾性層3とウレタンコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
【0079】
弾性層3は前記導電性組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。導電性組成物の硬化方法は導電性組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、導電性組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、導電性組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。導電性組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫してもよい。また、導電性組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0080】
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3はウレタンコート層4が形成される前に前記プライマー層が形成されてもよい。
【0081】
ウレタンコート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、前記ウレタン樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工されたウレタン樹脂組成物を加熱硬化又は湿気硬化させて、形成される。ウレタン樹脂組成物の塗工は、例えば、ウレタン樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。ウレタン樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、ウレタン樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工されたウレタン樹脂組成物を硬化する方法は、ウレタン樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、前記塗工に代えて、ウレタン樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層されたウレタン樹脂組成物を硬化させる方法等が採用されることができる。
【0082】
導電性ローラ1は、ウレタン樹脂と、ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と、ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部のカルボン酸金属化合物とを含有しているウレタンコート層4を備えてなるから、前記したように、画像形成装置に装着されたときに、低湿度環境下でも高湿度環境下でも均一で所期の帯電量を現像剤に付与することができ、その周辺環境が広範に及んでもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献できる。すなわち、導電性ローラ1は、その周囲の湿度が低湿度に変化しても、また高湿度に変化してもかぶりのない高品質の画像を形成することに貢献できる。
【0083】
この導電性ローラ1は、水酸基含有イオン液体を含有するウレタンコート層4を備えている場合には、前記かぶりの発生防止に加えて、画像形成装置に装着された導電性ローラ1が像担持体等の被当接体に接触又は圧接した状態で画像形成装置がたとえ長期間、例えば、5日以上にわたって継続して待機又は停止してもその後に画像形成装置が稼動して形成される画像に白筋が発生することを実質的に抑えることができる。導電性ローラ1がこのような優れた効果を奏するのは、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続しても、ウレタンコート層4中に存在するイオン液体がウレタンコート層4内を移動しにくく、また導電性ローラ1が当接する被当接体に移行しにくいため、ウレタンコート層4の均一性を損なうことも被当接体を汚染することもないことによるものではないかと、本願発明者らは推測している。
【0084】
このように導電性ローラ1は、例えば現像ローラ等の導電性ローラとして画像形成装置に装着されると、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また低湿度環境下においても低湿度環境下においても画像形成装置が高品質の画像を形成することに貢献することができる。また、導電性ローラ1は、ウレタンコート層4に1〜25質量部のイオン液体を含有していても、特に20質量部以上含有していてもウレタンコート層4からイオン液体がブリードアウトしにくい。その結果、導電性ローラ1が当接する被当接体を汚染することがなく高品質の画像を形成することに貢献することができる。
【0085】
このように、導電性ローラ1はその周囲が低湿度であっても高湿度であってもかぶりの発生を実質的に抑えることができるうえ、所望により、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても白筋の発生を実質的に抑えることができるから、例えば、自身の表面に、所望の帯電量に帯電した現像剤を均一な厚さに担持して像担持体に供給するという作用・機能を発揮する必要のある現像ローラ及び現像剤供給ローラとして好適に用いられ、特に、像担持体等の被当接体に接触又は圧接した状態で装着される現像ローラ及び現像剤供給ローラとして好適に用いられる。
【0086】
また、導電性ローラ1は、高湿度環境におけるかぶりが発生しやすいモノクロ画像形成装置に装着されても高湿度環境におけるかぶりの発生を効果的に防止することができる。したがって、この導電性ローラ1はカラー画像形成装置だけでなくモノクロ画像形成装置に好適に装着される。
【0087】
次に、この発明に係る導電性ローラ1を備えた現像装置(以下、この発明に係る現像装置と称することがある。)の一例、及び、この一例の現像装置を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。
【0088】
この画像形成装置10は、図2に示されるように、この発明に係る現像装置20B、20C、20M及び20Yを備えている。現像装置20B、20C、20M及び20Y並びに画像形成装置10において、導電性ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。この画像形成装置10は、図2に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが2本の支持ローラ42に巻回された転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。現像ユニットC、M及びYは現像装置Bと基本的に同様に構成されている。
【0089】
現像装置20Bは、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えて成る。この現像装置20Bは、現像剤担持体23Bとしての導電性ローラ1が像担持体11Bに当接又は圧接するように、画像形成装置10に装着されている。このときの導電性ローラ1と像担持体11Bとのニップ幅は、通常、導電性ローラ1の周方向長さが0.1〜2mmとなるように調整される。現像装置20C、20M及び20Yは現像装置20Bと基本的に同様に構成されている。
【0090】
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yは、いずれも、摩擦により帯電可能な現像剤であって、例えば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
【0091】
定着手段30は、記録体16の搬送方向下流であって現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には記録体16を収容するカセット41が設置されている。
【0092】
画像形成装置10は以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0093】
現像装置20B、20C、20M及び20Yはいずれも現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして導電性ローラ1を備えているから、現像装置内部の湿度、例えば現像剤担持体23の周囲の湿度が低湿度に変化しても、また高湿度に変化してもかぶりのない高品質の画像を画像形成装置10が形成することに貢献できる。
【0094】
このタンデム型画像形成装置10は、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着されているから、通常の湿度はもちろん低湿度環境下においても、また高湿度環境下においてもかぶりが実質的にない高品質の画像を形成することができる。また、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着されていると、イオン液体又はカルボン酸金属化合物がブリードアウトして像担持体11を汚染することもなく、このタンデム型画像形成装置10は高品質の画像を形成できる。またタンデム型画像形成装置10を長期間にわたって待機又は停止しても導電性ローラ1のウレタンコート層4の均一性を損なうこともなく、このタンデム型画像形成装置10は待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続したとしても白筋が実質的にない高品質の画像を形成できる。
【0095】
画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。なお、画像形成装置10においてはこの発明に係る導電性ローラを現像剤担持体23の一例である現像ローラとして用いた例を参照して説明したが、現像剤供給ローラとしてこの発明に係る導電性ローラを用いても同様に高品質の画像を形成することができる。
【0096】
この発明に係る導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る導電性ローラは、弾性層とウレタンコート層との間に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層とウレタンコート層とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0097】
画像形成装置10は電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る導電性ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。定着手段30は、熱ローラ定着装置、加熱定着装置、圧力定着装置等が採用されてもよい。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
【0099】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に成形した。液体射出成形において付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層3を形成した。
【0100】
下記組成を有するウレタンコート層4形成用のウレタン樹脂組成物を調製した。ウレタン樹脂組成物において、下記ポリオール及び下記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときのイオン液体及びカルボン酸金属化合物の含有量(質量部)を「換算含有量(質量部)」と表記して第1表に示す。
【0101】
・ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)14質量部
・縮合系ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との混合モル比[COOH/OH]=12/13、前記測定方法で測定された数平均分子量は前記範囲内にあった。)28質量部(ポリイソシアネートと縮合系ポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]=1.1/1)
・ピリジニウム系イオン液体として「C−C13[(CFSON] (N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(関東化学株式会社製)」4質量部
・カルボン酸金属化合物として「3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸亜鉛(商品名「BONTRON E−84」、オリエント化学工業株式会社製)」4質量部
・ジブチル錫ジラウレート(商品名「ジ−n−ブチルすずジラウレート」、昭和化学株式会社製)0.03質量部
・シリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)4質量部
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#4500」、東海カーボン株式会社製)3質量部
【0102】
このようにして調製したウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚22μmのウレタンコート層4を形成した。このようにして実施例1の導電性ローラを製造した。
【0103】
(実施例2〜5)
前記カルボン酸金属化合物のウレタン組成物中の含有量を1質量部、2質量部、8質量部及び10質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして導電性ローラをそれぞれ製造した。
【0104】
(実施例6〜9)
前記イオン液体のウレタン組成物中の含有量を2質量部、6質量部、8質量部及び10質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして導電性ローラをそれぞれ製造した。
【0105】
(実施例11〜19)
イオン液体として前記「C−C13[(CFSON]」に代えてアミン系イオン液体である「(CH[(CFSON] (N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、関東化学株式会社製」」を用いたこと以外は実施例1〜9と基本的に同様にして導電性ローラをそれぞれ製造した。
【0106】
(実施例21)
カルボン酸金属化合物として前記「3,5−ジ(t−ブチル)サリチル酸亜鉛」に代えて「3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸クロム(商品名「BONTRON S−34」、オリエント化学工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と基本的に同様にして導電性ローラを製造した。
【0107】
(比較例1)
前記ピリジニウム系イオン液体を含有させないこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例1の導電性ローラを製造した。
(比較例2)
前記ピリジニウム系イオン液体を含有させず、前記カーボンブラックのウレタン組成物中の含有量を6質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例2の導電性ローラを製造した。
(比較例3及び4)
前記ピリジニウム系イオン液体のウレタン組成物中の含有量を0.2質量部及び12質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして導電性ローラをそれぞれ製造した。
【0108】
(参考例1)
前記カルボン酸金属化合物を含有させないこと以外は実施例1と基本的に同様にして参考例1の導電性ローラを製造した。
(参考例2及び3)
前記カルボン酸金属化合物のウレタン組成物中の含有量を0.2質量部及び12質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして導電性ローラをそれぞれ製造した。
【0109】
(低湿度環境下におけるかぶり評価)
製造した各導電性ローラを現像ローラとして非磁性一成分電子写真方式のプリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)に装着し、23℃の低湿度環境下(相対湿度10%)で24時間静置した。なお、このプリンターは「接触式画像形成装置」の1つであり、装着されている現像装置は所謂「接触式現像装置」であってプラス帯電現像剤が収容されている。その後、前記プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、カラー設定を「標準」に設定して、モノクロモードにて白べた画像を100枚連続して印刷した。その直後にカラーモードに設定変更して白べた画像を1枚印刷した。このカラーモードで印刷した白べた画像の汚れ具合をかぶりとして目視にて評価した。評価は、白べた画像全面に汚れが皆無であった場合を「◎」、白べた画像に実用上問題がない程度にわずかに汚れが認められた場合を「○」、白べた画像に実用上問題がない程度に多少汚れが認められた場合を「△」、白べた画像に実用上許容できないほど汚れが認められた場合を「×」とした。これらの評価結果を「低湿かぶり」として第1表に示す。
【0110】
(高湿度環境下におけるかぶり評価)
32.5℃の高湿度環境下(相対湿度80%)で評価したこと以外は「低湿度環境下におけるかぶり評価」と基本的に同様にして高湿度環境下におけるかぶり評価を行った。これらの評価結果を「高湿かぶり」として第1表に示す。
【0111】
(画質評価1)
画質評価1として高湿度環境におけるブリードアウト防止による白筋の有無を評価した。具体的には、製造した各導電性ローラを現像ローラとして非磁性一成分電子写真方式のプリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)に装着し、その周辺環境を32.5℃の高湿度環境下(相対湿度80%)に設定して5日間稼動することなく静置した。その後、前記プリンターから像担持体を取り出して目視で確認したところ像担持体の汚染は確認できなかった。この像担持体を前記プリンターに装着し直して、前記プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、カラー設定を「カラーモード」に設定して、カラー画像1枚印刷した。このカラー画像中の白筋の有無を目視にて評価した。評価は、カラー画像に白筋が皆無であった場合を「◎」、カラー画像に実用上問題がない程度にわずかに白筋が認められた場合を「○」、カラー画像に実用上問題がない程度に多少の白筋が認められた場合を「△」、カラー画像に実用上許容できないほど白筋が認められた場合を「×」とした。
【0112】
(画質評価2)
画質評価2として低湿度環境におけるブリードアウト防止による白筋の有無を評価した。具体的には、23.0℃の低湿度環境下(相対湿度10%)で評価したこと以外は「画質評価1」と基本的に同様にして低湿度環境下における白筋の評価を行った。
【0113】
(総合評価)
高湿度環境又は低湿度環境におけるブリードアウト防止による白筋の有無の総合評価(第1表において「画質評価」と表記する。)は、画質評価1及び画質評価2の評価結果が「◎及び◎」又は「◎及び○」であった場合を「◎」、画質評価1及び画質評価2の評価結果が「○及び○」又は「○及び△」であった場合を「○」、画質評価1及び画質評価2の評価結果が「△及び△」であった場合を「△」、画質評価1及び画質評価2の評価結果が「×及び×」又は「△及び×」であった場合を「×」とした。その結果を第1表に示す。
【0114】
【表1】

【符号の説明】
【0115】
1 導電性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 ウレタンコート層
6 転写搬送ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20 現像装置
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
24B、24C、24M、24Y 現像剤規制部材
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
36 無端ベルト
41 カセット
42 支持ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された弾性層と前記弾性層の外周面に形成されたウレタンコート層とを備えてなる導電性ローラであって、
前記ウレタンコート層は、ウレタン樹脂と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部の、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜25質量部のカルボン酸金属化合物とを含有していることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ローラとを備えて成ることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159807(P2012−159807A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21293(P2011−21293)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】